シェール開発で石油 ガス輸出国に 返り咲くアルゼンチン 沖合鉱区入札も活況を呈す 2019 年 5 月 16 日独立行政法人石油天然ガス 金属鉱物資源機構調査部舩木弥和子
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本日の内容 進展するシェール開発 Eagle Ford に匹敵する Vaca Muerta シェール Macri 政権 非在来型ガス開発を促進 生産量はまだ少ないが急激に増加中 5 年間で石油生産倍増 天然ガス生産 80% 増を計画 チリ ブラジルへパイプラインガス輸出再開 LNG 輸出開始へ 経済状況悪化により新たな課題発生 石油会社はシェールオイル開発を優先 活況を呈する沖合鉱区入札 30 年ぶりの沖合鉱区入札にメジャーズ等 IOC が応札 3
進展するシェール開発 Eagle Ford に匹敵する Vaca Muerta シェール 技術的回収可能量 堆積盆地別シェール技術的回収可能量 シェールガス 802Tcf( 世界 2 位 ) シェールオイル 265 億 bbl(4 位 ) Vaca Muerta と Eagle Ford の比較 Vaca Muerta TOC (%) 3~10 3~5 Eagle Ford 層厚 (m) 30~450 30~100 地層圧力 (psi) 4500 ~9500 4500 ~8500 出所 :Pasado, presente y futuro de la energía en Argentinaを基に作成出所 :EIA Technical Recoverable Shale Oil and Shale Gas Resourcesを基にJOGMEC 作成 4
進展するシェール開発 Macri 政権 非在来型ガス開発を促進 連邦政府 Neuquén 州 石油会社 労働組合は 2017 年初にガス価格等で合意 連邦政府 : 新規坑井から生産される非在来型ガスの井戸元価格を 2018 年末まで 7.50 ドル /MMBtu それ以降は年に 50 セント /MMBtu ずつ引き下げ 2021 年に 6 ドル /MMBtu となるよう補助金を出す (2022 年以降は市場価格 ) インフラ投資 Neuquén 州政府 : 企業の税率据え置き道路整備のための投資 石油会社 :2017 年 50 億ドル 2018 年以降年 100~150 億ドルを非在来型探鉱 開発に投資 労働組合 : 労働争議を減らすこと等で生産性を向上させる 石油増産のインセンティブは廃止 (2015 年補助金導入 ) 天然ガス確認埋蔵量 生産量 消費量 石油確認埋蔵量 生産量 消費量 出所 :BP Statistical Review of World Energy June 2018 5
進展するシェール開発生産量はまだ少ないが急激に増加中 シェールガス生産量 :2018 年 6 月 20MMm3/d 2019 年 2 月 31MMm3/d シェールオイル生産量 :2018 年 6 月 4.8 万 b/d 2018 年 12 月 7.8 万 b/d シェールガス生産量 シェールオイル生産量 出所 :Pasado, presente y futuro de la energía en Argentina を加工 6
進展するシェール開発 5 年間で石油生産倍増 天然ガス生産 80% 増を計画 天然ガス生産量推移と見通し 石油生産量推移と見通し エネルギー省は Vaca Muerta シェールの開発で 2023 年までにアルゼンチンの天然ガス生産量を 238MMm3/d 石油生産量を 100 万 b/d に増やし ガス 100 MMm3/d 石油 50 万 b/d を輸出する計画を発表 (2018 年 8 月 ) 出所 :Pasado, presente y futuro de la energía en Argentinaを加工 7
進展するシェール開発チリ ブラジルへパイプラインガス輸出再開 主要な天然ガスパイプライン 天然ガス生産急増 ガスパイプラインの輸送能力が不足新規ガスパイプライン建設遅延も影響 ボリビアからのパイプラインガス輸入減少 契約量削減 LNG 輸入減少 FSRU1 基の offload 決定 天然ガス国内需要が季節により変動 不需要期には生産停止も パイプラインガス輸出再開 YPF Total Pan American Energy Pluspetrol 等がチリに Wintershall がブラジルにガスを供給 各種資料を基に作成 8
進展するシェール開発 LNG 輸出開始へ YPF は Exmar と FLNG の長期傭船契約を締結 (2018 年 11 月 21 日 ) Tango FLNG を 10 年間傭船 元 Caribbean FLNG( コロンビア ) 液化能力 50 万トン / 年 最大年間 8 カーゴの出荷が可能 YPF の投資額 2,000 万ドル 2019 年 2 月 Bahia Blanca 港に到着 2019 年第 2~3 四半期の稼働開始を計画 チリ経由で LNG 輸出を行う可能性も検討 ボリビア産ガスをアルゼンチンで液化する計画も浮上 ボリビア国営 YPFB がアルゼンチンの液化プラント建設に投資 ボリビア産ガスを液化することで両国大統領合意 2019 年中にはシェールオイルの輸出も開始へ 9
進展するシェール開発経済状況悪化により新たな課題発生 2018 年 4 月下旬以降 経済状況悪化 政府は国際通貨基金 (I MF) から 560 億ドルの融資枠を獲得 経済破綻を回避 政策金利は 60% 国内での資金調達コストは非常に高水準 非在来型ガスに対する補助金削減 プロジェクト承認時に石油会社が生産できると申請した数量についてのみ補助金を支払う 新規プロジェクトは補助金の対象としない 新経済パッケージ発表 (2019 年 4 月 17 日 ) インフレ抑制のため 電気 公共交通機関と共に天然ガスの価格を凍結 2019 年末まで継続予定 2019 年 10 月の大統領選挙で Macri 大統領の再選は? 4 月 24 日 国債相場急落 25 日 外国為替市場でペソは過去最安値更新 デフォルト懸念広がる世論調査では Fernández 前大統領が優位 10
進展するシェール開発石油会社はシェールオイル開発を優先 VacaMuerta シェールから撤退する企業はほとんどない メジャーズは開発を継続 Medanito: デフォルト寸前となるが 融資を得 シェール開発継続 Retamco Operating: 共同事業者がなく Parva Negra Oeste 鉱区から撤退 11 月実施の Neuquen 州の入札に応札なし シェールオイル開発を優先する企業が増加 Shell: アルゼンチンの下流資産売却 VacaMuerta シェール ( シェールオイル ) 中心に上流に特化 YPF:2019 年の投資額を引き下げ シェールオイルに注力 Wintershall:2019 年の投資額 6 億ドルに変化はないが石油にシフト 理由 ガスに関する政策の頻繁な変更 ガス輸送のボトルネック発生 ( 石油は余力あり ) 等 11
進展するシェール開発 Vaca Muerta シェール主要鉱区の最近の開発状況各種資料を基に作成 鉱区参加企業開発 生産状況 Loma Campana Cruz de Lorena Sierras Blancas Coiron Amarga Sur Oeste Coiron Amargo Sur Este La Amarga Chica Bandurria Sur YPF Chevron Shell O&GDevelopment GyP Neuquen Pan American Energy Madalena Energy YPF Petronas YPF Schlumberger 2010 年パイロット生産 2013 年フルスケール開発 2019 年開発第 2 フェーズ着手 2019 年は生産井 40 坑掘削 生産量を 2018 年上半期 4.3 万 boe/d 2019 年末 5.9 万 boe/d 2023 年 12 万 boe/d とする計画 2018 年 12 月にフルスケール開発承認 5 年間に 30 億ドルを投じ 304 坑を掘削 生産量を 2021 年までに 4 万 boe/d 2020 年代中頃までに 7 万 boe/d に増加させる計画 ピーク生産量 10 万 b/d 4 年間のパイロットプロジェクトに 1.24 億ドルを投じ水平坑井 5 坑掘削 インフラ整備 結果次第で 3 坑掘削 開発時 12 億ドルを投じ 87 坑掘削 2024 年に 9 万 b/d を生産する計画 2015 年パイロット生産 2018 年末フルスケール開発開始 4 年間に 23 億ドルを投じる計画 2019 年は生産井 39 坑掘削 生産量を 2019 年に 2 万 boe/d に倍増 2022 年に 6 万 boe/d に増加させる計画 2015 年パイロット生産開始 フルスケール開発実施中 2019 年は生産井 8 坑掘削 生産目標 :2019 年末 1 万 boe/d ピーク時 6.5 万 b/d Bajada del Palo Vista Oil & Gas パイロットフェーズは実施せず フルスケールの開発に着手 最初 のdrilling pad(4 坑 ) から 6,500 boe/dを生産中 4 年間に20 億ドル以 上を投じ150 坑以上を掘削する計画 La Calera YPF Pluspetrol 2018 年 8 月末より1.8 億ドルを投じパイロットプロジェクト実施 開発段階では22 億ドルを投じ207 坑を掘削する計画 ピーク生産量は 10 MMm3/dを計画 12
進展するシェール開発 Vaca Muerta シェール主要鉱区図 各種資料を基に作成 13
活況を呈する沖合鉱区入札 30 年ぶりの沖合鉱区入札にメジャーズ等 IOC が応札 30 年ぶりに沖合鉱区の入札を実施 (2019 年 4 月 16 日応札 発表 ) 対象は Western Malvinas Basin Austral Marina Basin Northern Argentine Basin の 38 鉱区 15 社が入札資格を取得 18 鉱区に 13 社が応札 5 月 16 日に正式付与 落札額合計 7.18 億ドル 政府は石油会社が参加しやすい条件を設定 未探鉱エリアを広く公開 契約締結 8 年後に鉱区面積の半分を返還 契約期間の最初の 4 年間は掘削義務なし 地震探鉱を実施等 高い技術力と十分な資金を持つ企業を誘致するのに成功 沖合の経験があるサービス会社がない 3D 地震探鉱がほぼ未実施 港湾の浚渫作業が必要 VacaMuerta シェールよりコスト高等課題も 14
活況を呈する沖合鉱区入札入札対象鉱区図及び結果 鉱区 CAN 102 CAN 107 CAN 108 CAN 109 CAN 111 CAN 113 CAN 114 AUS 105 AUS 106 MLO 113 MLO 114 MLO 117 MLO 118 MLO 119 MLO 121 MLO 122 MLO 123 MLO 124 入札企業 ( 上段 pre-award) YPF Equinor Shell Qatar Petroleum Equinor Shell Qatar Petroleum Total BP Total BP Equinor YPF Equinor Equinor ExxonMobil Qatar Petroleum Tullow Pluspetrol Wintershall ExxonMobil Qatar Petroleum ExxonMobil Qatar Petroleum ExxonMobil Qatar Petroleum Tullow Pluspetrol Wintershall ExxonMobil Qatar Petroleum Equinor Eni Mitsui Tullow Total YPF Equinor Total YPF Equinor Eni Mitsui Tecpetrol Equinor YPF 各種資料を基に作成 15
まとめ Vaca Muerta シェールの生産量が急増を始めた 政府はシェール開発を進めることで 今後 5 年間でアルゼンチンの石油生産量を倍増 天然ガス生産量を 80% 増加させる計画 生産増を受け チリやブラジルへのパイプラインガス輸出が再開され 間もなく LNG 輸出も開始される ただし アルゼンチンの経済状況が悪化していることから 非在来型ガスに対する補助金が削減されたり ガス価格が凍結されたりしている 多くの石油会社はシェールオイル開発を優先している 一方 30 年ぶりに実施された沖合鉱区入札には メジャーズ等 IOC が応札 活況を呈した 経済開放政策を推し進めてきた Macri 政権だが 経済状況悪化で 10 月 27 日の大統領選挙での再選が危ぶまれる Fernández 前大統領の就任期間中にはガス価格が低く抑えられた時期があり 選出されることになれば シェール開発に影響が生じる可能性がある 16