第45回中期経済予測 要旨

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別紙2

経済財政モデル の概要 経済財政モデル は マクロ経済だけでなく 国 地方の財政 社会保障を一体かつ整合的に分析を行うためのツールとして開発 人口減少下での財政や社会保障の持続可能性の検証が重要な課題となる中で 政策審議 検討に寄与することを目的とした 5~10 年程度の中長期分析用の計量モデル 短

平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

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長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

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スライド 1

金融政策決定会合における主な意見

つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる

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エコノミスト便り

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図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

IT 人材需給に関する調査 ( 概要 ) 平成 31 年 4 月経済産業省情報技術利用促進課 1. 調査の目的 実施体制 未来投資戦略 2017 ( 平成 29 年 6 月 9 日閣議決定 ) に基づき 第四次産業革命下で求められる人材の必要性やミスマッチの状況を明確化するため 経済産業省 厚生労働

経済・物価情勢の展望(2018年1月)

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

現代資本主義論

2 / 6 不安が生じたため 景気は腰折れをしてしまった 確かに 97 年度は消費増税以外の負担増もあったため 消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない しかし 前回 2014 年の消費税率 3% の引き上げは それだけで8 兆円以上の負担増になり 家計にも相当大きな負担がのしかかった

我が国中小企業の課題と対応策

経済・物価情勢の展望(2017年10月)

平成23年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

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2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

本日の主な内容 1.. 総論 主要国の GDP 成長率 人口伸び率 主要国の経済規模 2.. 日本経済の見通し 人口動態と労働力人口 潜在成長率と実質 GDP 成長率 GDP ギャップと物価上昇率 日本経済再生への処方箋 1

日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

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エコノミスト便り【欧州経済】ユーロ圏はどのように財政を再建したか

1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

IMF世界経済見通し 2015 年 4月 第 章 要旨

[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

経済 財政 社会保障の一体的建て直し 強い経済 税収の基盤 重要な成長分野 健康 分野で需要と雇用を創出 成長を実現する予算編成 持続可能な財政の下で可能となる消費 保険料の基盤 社会不安の最小化 強い財政 最大の支出項目 安定財源の確保による持続可能な 社会保障制度の確立 ( 抜本的税制改革による

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ブラジル中国インド インドネシア ロシア 図表 新興国の消費者物価上昇率 ( 単位 :%)( 資料 :IMF 世界経済見通し ) 通常であれば 成長率が低下すれば 国内の需給バランスが緩和し むしろ物価は低下するのが自然である しかし 中国以外の カ国は逆に物価上

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Economic Trends    マクロ経済分析レポート

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

第 1 四半期の売上収益は 1,677 億円となり 前年からプラス 6.5% 102 億円の増収となりました 売上収益における為替の影響は 前年 で約マイナス 9 億円でしたので ほぼ影響はありませんでした 事業セグメント利益は 175 億円となり 前年から 26 億円の減益となりました 在庫未実現

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各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

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GDP + subsektorer (kvartal)

目次はじめに 1. 賃金上昇動向とその要因 賃金上昇の影響 最後に はじめに CLMV RIM 213 Vol.13 No.48 51

平成 30 年 5 月 21 日 ( 月 ) 平成 30 年第 6 回経済財政諮問会議資料 4-1( 加藤臨時議員提出資料 ) 資料 年を見据えた社会保障の将来見通し ( 議論の素材 ) 平成 30 年 5 月 28 日 厚生労働省

経済・物価情勢の展望(2016年10月)

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歳入総額 区分 平成 年度の財政フレーム ( 単位 : 百万円 ) 30 年度 31 年度 合計 構成比 構成比 構成比 263, % 265, % 529, % 一般財源特別区税特別区交付金その他特定財源国 都支出金繰入金特別区債 167

月例経済報告

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 金 25, 2, 15, 12, 営業利益率 経常利益率 額 15, 9, 当期純利益率 6. 1, 6, 4. 5, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 8 社 214 年度 215 年度前年度差 ( 単位 : 億円 ) 前年

物価の動向 輸入物価は 2 年に入り 為替レートの円安方向への動きがあったものの 原油や石炭 等の国際価格が下落したことなどから横ばいとなった後 2 年 1 月期をピークとし て下落している このような輸入物価の動きもあり 緩やかに上昇していた国内企業物価は 2 年 1 月期より下落した 年平均でみ

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(5月号)~輸出は好調も、旧正月の影響を均せば増勢鈍化

タイトル

生産性 イノベーション関係指標の国際比較 平成 29 年 11 月 9 日 財務総合政策研究所酒巻哲朗 1

(3) 可処分所得の計算 可処分所得とは 家計で自由に使える手取収入のことである 給与所得者 の可処分所得は 次の計算式から求められる 給与所得者の可処分所得は 年収 ( 勤務先の給料 賞与 ) から 社会保険料と所得税 住民税を差し引いた額である なお 生命保険や火災保険などの民間保険の保険料およ

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税・社会保障等を通じた受益と負担について

1 概 況

日本経済の中期見通し(2016~2030年度)

月例経済報告

ヘッジ付き米国債利回りが一時マイナスに-為替変動リスクのヘッジコスト上昇とその理由

当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

2. 利益剰余金 ( 内部留保 ) 中部の 1 企業当たりの利益剰余金を見ると 製造業 非製造業ともに平成 24 年度以降増加傾向となっており 平成 27 年度は 過去 10 年間で最高額となっている 全国と比較すると 全産業及び製造業は 過去 10 年間全国を上回った状況が続いているものの 非製造

【16】ゼロからわかる「世界経済の動き」_1704.indd

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経済見通し

2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(1月号)~輸出の好調続くも新型スマホ関連がピークアウトへ

第1章

2030年のアジア

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(217 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

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経済変動論 0

14 日本 ( 社人研推計 ) 日本 ( 国連推計 ) 韓国中国イタリアドイツ英国フランススウェーデン 米国 図 1. 1 主要国の高齢化率の推移と将来推計 ( 国立社会保障 人口問題研究所 資料による ) 高齢者を支える

資料 1-2 中長期の経済財政に関する試算 ( 平成 29 年 7 月 18 日経済財政諮問会議提出 ) 本試算は 経済財政諮問会議の審議のための参考として 内閣府が作成し 提出するものである 内閣府

<貿易見通し>

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

目 次 (1) 財政事情 1 (2) 一般会計税収 歳出総額及び公債発行額の推移 2 (3) 公債発行額 公債依存度の推移 3 (4) 公債残高の累増 4 (5) 国及び地方の長期債務残高 5 (6) 利払費と金利の推移 6 (7) 一般会計歳出の主要経費の推移 7 (8) 一般会計歳入の推移 8

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資料1 小動物獣医師数の需給バランスの展望

人口減少と将来の労働力不足について(資料編)

平成 23 年 3 月期 決算説明資料 平成 23 年 6 月 27 日 Copyright(C)2011SHOWA SYSTEM ENGINEERING Corporation, All Rights Reserved

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(216 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

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マーケット フォーカス経済 : 中国 2019/ 5/9 投資情報部シニアエコノミスト呂福明 4 月製造業 PMI は 2 ヵ月連続 50 を超えたが やや低下 4 月 30 日 中国政府が発表した4 月製造業購買担当者指数 (PMI) は前月比 0.4ポイントの 50.1となり 伸び率がやや鈍化し

図 3 世界の GDP 成長率の実績と見通し ( 出所 ) Capital in the 21st century by Thomas Piketty ホームページ 図 4 世界の資本所得比率の実績と見通し ( 出所 ) Capital in the 21st century by Thomas P

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今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

<貿易見通し>

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[ 調査の実施要領 ] 調査時点 製 造 業 鉱 業 建 設 業 運送業 ( 除水運 ) 水 運 業 倉 庫 業 情 報 通 信 業 ガ ス 供 給 業 不 動 産 業 宿泊 飲食サービス業 卸 売 業 小 売 業 サ ー ビ ス 業 2015 年 3 月中旬 調査対象当公庫 ( 中小企業事業 )

1. 成長率 可処分所得 社会の満足度 一人当たり成長は先進国でトップクラス 一人当たり可処分所得は着実に増加 社会の満足度は過去最高 生産年齢人口一人当たり実質 GDP 成長率 ( 年平均 ) (%)

日本の低金利の状況が続く中 外貨の好金利で運用し 当面の間 なるべく ふやす 外貨への関心が高まっているのをご存知ですか そして将来は たくわえた資産を 実は 家計における外貨資産は20年で約4倍に増加しています 商商商商品品品品パパパパンンンンフフフフレレレレッッッットトトト 詳細は P.25-2

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Transcription:

内需を支える人材力投資へ ~ 収縮する経済を抜け出す鍵とは ~ 中期予測班 日本経済は 海外経済が好調に推移してきたことにも支えられ 景気拡大を続けてきたが 足元では変調の兆しもある 中期的には 海外景気に依存して成長していくことはできない 世界経済が冷え込むのは 一部の国で保護主義的な政策が掲げられていることが大きい 短期的にもすでに影響は出ており 経済消耗戦の様相を見せてきた また 中長期的には欧州やアジアの国々で高齢化が進み 成長が鈍化すると想定する 国内に目を向けると 高齢化や情報化が進むにつれ 消費や投資の内容は変化してきている 特に医療や介護をはじめ人的サービスの需要が増えており こうした分野については 人手の確保とともに生産性を引き上げられなければ 需要拡大に十分応えることができない そのためには 情報通信技術 (ICT) やロボティクスを中心とした新技術により 労働集約型の産業体質を変える必要がある 足元では 省力化投資などの国内設備投資も上向いてきているが 企業収益の伸びと比べれば緩やかである また 新技術の導入やそれに伴う人への教育など 人材がもつ力を高める投資が不十分であれば 生産性を引き上げることはできず 人手不足で収縮していく経済状況から脱却することはできない 厳しい海外経済の環境が見込まれる中 国内の需要変化に対応した投資や人材活用 内外の人材をいかに獲得していくかが求められる それが 経済活性化へ向かう鍵となるだろう 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 実質成長率と寄与度 ( 年平均伸び率 % 寄与度% ポイント ) 外需内需実質 GDP 成長率実質 GDP 成長率 ( 改革シナリオ ) 予測 労働力人口と潜在成長率 ( 年平均伸び率 %) 3.0 潜在成長率潜在成長率 ( 改革シナリオ ) 労働力人口 2.0 労働力人口 ( 改革シナリオ ) 予測 1.0 0.0-1.0-1.0 91 96 01 06 11 標準改革標準改革標準改革 -95-00 -05-10 -15 16 21 26-20 -25-30 ( 注 ) 潜在成長率は後方 3 年移動平均 ( 年度 ) ( 資料 ) 日本経済研究センター推計 91-95 96-00 01-05 06-10 11-15 16-20 21-25 26-30 ( 年度 ) - 2 -

標準シナリオ 労働力人口が減少する中 実質成長率はゼロ % 台の半ばに 消費税率を 10% に引き上げても 基礎的財政収支は名目 GDP 比 2% の赤字が続く 成長力 : 潜在成長率は 2020 年代にはゼロ % 台半ばに低下 潜在成長率は 2010 年代後半の 1% 程度から緩やかに低下する 全要素生産性の伸び率については 予測期間中を通して ほぼ現状並みの 0% 台半ばと想定した 生産年齢人口の減少から労働力の潜在成長への寄与は逓減するため 20 年代の潜在成長率の伸びは全要素生産性の伸びとほぼ同程度の 0% 台半ばになる 実質経済成長率は 20 年代の平均で 1% 未満となり 潜在成長率と同程度で推移する 物価 : 消費者物価上昇率は 2020 年代後半には 1% 台で推移する 供給制約が徐々に厳しくなり 需要超過の状況となるため GDP ギャップは 1% 台となる 消費者物価上昇率は 2020 年代後半には 1% 台で推移する 金融緩和的状況が継続する 労働 : 一人当たり雇用者報酬の伸びは 1% 程度 失業率は 2% 台で推移 一人当たり名目雇用者報酬の伸びは 1% 程度で 消費者物価上昇率と同程度となるため 実質で見ると横ばいで推移する 労働力人口の減少もあり 労働分配率は緩やかに低下する 失業率は 2% 台で推移する 財政収支 : 基礎的財政収支でみて名目 GDP 比 2% 半ばの赤字が続く 足元の緩やかな景気回復に伴う税収増加等の影響や 消費税率の引き上げに伴う税収増により 2020 年までに収支は緩やかに改善する しかし 20 年以降については 高齢化等の影響による社会保障費支出の拡大もあり 改善は滞る 結果 国 地方政府合わせた基礎的財政収支は予測期間を通して名目 GDP 比で 2% 台の赤字を見込む 経常収支 : 投資の増勢が見込めず 経常収支黒字が拡大する 貯蓄投資バランスは 現在のアンバランスが拡大する 法人部門では 企業所得が拡大する一方で投資の増勢が緩やかなため 貯蓄超過が続く 家計は 高齢化の進展から貯蓄を取り崩す世帯の割合が増え 貯蓄率が減少する 対海外については 世界経済の成長率が減速していくことから 輸出額の伸びは 2020 年代以降緩やかになるものの 内需の減少に伴い輸入額の増加も緩やかなものとなるため 貿易赤字は拡大しない 30 年には 経常収支の黒字は名目 GDP 比 5% にまで拡大する - 3 -

産業 : 製造業は内需先細りで外需頼みへ 医療 福祉では大幅な雇用増標準シナリオの下での各産業の国内生産の姿を産業連関モデルによって予測した 日本の製造業は国内需要の先細りや厳しい海外経済環境を受け 輸出競争力を持つ 生産用機械 産業用電気機器 その他の輸送機械 1 への依存度が相対的に高まる また 超高齢化の進展で 医療 福祉 2 の従事者に対する需要は拡大を続けるが 人口減少による働き手の減少から労働者の確保が課題になる < 経済環境の前提 > 世界経済 : 国際通貨基金 (IMF) の予測 (2018 年 10 月及び 19 年 1 月改訂 ) のベースケースを参考とする 世界経済は 20 年代前半まで実質年率 3% 台の成長が続く 30 年には 2.6% まで減速する 名目為替レートは緩やかに円高方向に進み 30 年に 100 円 / ドル程度となる 原油価格については 国際エネルギー機関 (International Energy Agency: IEA) の World Energy Outlook や米国エネルギー情報局 (U.S. Energy Information Administration: EIA)Annual Energy Outlook を参考に 116 ドル / バレル程度まで上昇する 環太平洋経済連携協定 (CPTPP) については 20 年前半に 11 ヵ国すべてで発効し 30 年には効果が発現する 人口 : 国立社会保障 人口問題研究所の出生中位 死亡中位推計 (17 年 4 月推計 ) に基づく 日本への移住外国人は 足元の 10 万人超の純流入がしばらく続くと見込まれるが 20 年代には上記推計に織り込まれている外国人入国超過数 ( 年間 7 万人程度 ) となる 労働力人口は 緩やかに減少する 財政 : 消費税率は 19 年 10 月に 10% へ引き上げた後 同水準で据え置く 軽減税率導入も織り込んでいる 法人実効税率は 18 年度以降 29.7% で据え置く 名目公共投資は年平均約 1% 増加する 1 自動車関連以外の輸送機械 ( 船舶 鉄道 航空機 産業用運搬車両など ) とその関連産業 2 産業予測では総務省の産業連関表の部門名に合わせて 産業名に 医療 福祉 を用いる 医療 福祉 には 医療 介護に加えて 年金や健康保険などの 社会保険事業 社会福祉事務所 保育所 児童相談所 老人ホーム 障害者支援施設などの 社会福祉 を含む - 4 -

改革シナリオ 新規技術導入や人的スキル向上により生産性が上昇し 実質成長率は 2% 程度に高まる 企業の成長期待が高まり 設備投資が活発化する 労働生産性の上昇に伴い 賃金が上昇するため 海外からの労働力も増える 成長力 : 人的投資が生産性を押し上げ 2% 成長へサービス業における ICT の効率的な投資や内外から新しく労働に参加してくる人材への教育も充実し 全要素生産性上昇率も 1% にまで高まる 人手不足への対応とともに 成長期待の高まりにより 企業の投資行動も積極化する 実質経済成長率は 2030 年には 2% 程度にまで高まる 労働 : 労働力率は上昇し 海外からの労働参加も増える高齢者と女性の労働力率の上昇が大きい 男性については 60-64 歳の労働力率が現在の 55-59 歳の水準に 65-69 歳の労働力率が現在の 60-64 歳の水準に上昇すると想定 女性は子育て年齢層 ( 特に 30-44 歳 ) の労働力率が高まる 2020 年代後半には外国人の流入が年 25 万人の水準となる 結果 労働力人口は増加に転じる 実質でみた一人当たりの雇用者報酬の伸びは 全要素生産性の伸びを反映しプラスで推移する 物価 : 消費者物価上昇率は 1% 台で推移する 賃金上昇率の高まりを背景に 物価上昇率 ( 消費税率の引き上げ分を除く ) は 1% 台半ばとなる 財政収支 : 消費税率引き上げ等により 2030 年には赤字を解消する需要が拡大する介護や保育 教育に応じるための財源として 2021 年以降 30 年までの 10 年間でさらに 5% の消費税率引き上げを行う 結果 国 地方政府合わせた基礎的財政収支は 30 年までに赤字を解消する 経常収支 : 投資や輸出入が安定的に推移し 名目 GDP 比 4% 程度で推移する企業の国内設備投資の増加により 貯蓄超過は徐々に緩和する 家計貯蓄率は旺盛な消費により 2020 年台後半にマイナスとなる 旺盛な内需を背景に輸入の伸びがわずかに上回り 貿易 サービス収支は赤字となる 経常収支は名目 GDP 比 4% 程度で推移した後 30 年には 3% 台にまで縮小する - 5 -

< 経済環境の前提 > 人口 :2020 年代以降 外国人入国超過数が年間 25 万人程度となる 財政 : 消費税率は 19 年 10 月に 10% へ引き上げ後 21 年度から毎年 0.5% ずつ引き上げ 30 年度に 15% に達する 法人実効税率は 21 年以降 25% となる 予測概要 標準シナリオ 項目 ( 年度 ) 年平均伸び率 * は期間平均 06-10 11-15 16-20 21-25 26-30 実質成長率 0.0 1.0 1.0 0.7 0.6 名目成長率 -1.0 1.3 1.2 1.2 1.4 消費者物価指数 ( 総合 伸び率 ) -0.1 0.7 0.7 1.0 1.3 一人当たり雇用者報酬 ( 伸び率 ) -0.8 0.3 1.0 1.2 1.4 労働力人口 ( 伸び率 ) -0.1 0.0 0.6-0.5-0.4 完全失業率 * 4.4 3.9 2.6 2.3 2.0 国 地方の基礎的財政収支 ( 名目 GDP 比 )* -4.0-4.8-2.6-2.6-2.4 国 地方の債務残高 ( 名目 GDP 比 )* 148.6 182.7 191.9 194.9 197.3 経常収支 ( 名目 GDP 比 )* 3.6 1.6 3.8 4.2 4.8 改革シナリオ 項目 ( 年度 ) 年平均伸び率 * は期間平均 06-10 11-15 16-20 21-25 26-30 実質成長率 0.0 1.0 1.0 1.4 1.8 名目成長率 -1.0 1.3 1.2 2.2 2.8 消費者物価指数 ( 総合 伸び率 ) -0.1 0.7 0.7 1.5 1.9 一人当たり雇用者報酬 ( 伸び率 ) -0.8 0.3 1.0 1.6 2.3 労働力人口 ( 伸び率 ) -0.1 0.0 0.6 0.2 0.3 完全失業率 * 4.4 3.9 2.6 2.2 2.1 国 地方の基礎的財政収支 ( 名目 GDP 比 )* -4.0-4.8-2.6-2.2-0.7 国 地方の債務残高 ( 名目 GDP 比 )* 148.6 182.7 191.9 189.5 176.4 経常収支 ( 名目 GDP 比 )* 3.6 1.6 3.8 4.1 3.7 ( 注 ) 1. 単位 % 2. 一人当たり雇用者報酬を算出する際の雇用者数は労働力調査ベース - 6 -