[ 生物化学工学 ] 1. ある酵素を高分子担体に包括固定し, 基質を連続供給する CSTR( 完全混合槽型リアクター,Cntinuus Stirred Tnk Rectr) および PFR( 栓流型カラムリアクター,Plug Flw Rectr) 反応器を構築する. この酵素反応は Michelis-Menten 式に従い, 阻害剤は存在しないとすると, 同じ流速での反応の転化率は PFR の方が大きくなる. この理由を 200 字以内で酵素反応工学的に説明せよ. 2. ある微生物の胞子が 10 5 個 /ml の濃度で含まれる胞子懸濁液を熱殺菌する. 胞子の死滅は一次反応に従い, 熱死滅速度定数 kt [1/min] は下記のアレニウスの式で与えられた. lg kt = -E /(2.303 RT) C 種々の温度で加熱殺菌したところ, この胞子のアレニウス定数 E は E =124.5 (kj/ml), また C = 16.9 (-),R = 0.0083 (kj/ml K) であった. 昇温にかかる時間は無視できるとして,120,2 分の熱処理後の残存胞子濃度を求めよ. また 110 で同じ残存胞子濃度を達成するためには何分熱処理すべきか答えよ. 3.Michelis-Menten 式に従うある加水分解酵素を緩衝液に溶解し, ある基質の加水分解反応を行う. この酵素は阻害剤 I によって不拮抗阻害 ( 反拮抗阻害, uncmpetitive inhibitin) を受ける. この基質に対する Km は 2mM, この溶液の最大酵素反応速度 Vm は 10mM/min, 阻害剤の阻害定数は 5mM である. 次の問いに答えよ. (1) 反応液中の基質濃度 10mM, 阻害剤が含まれない時, 酵素反応初速度を計算せよ. (2) 阻害剤が 0.2mM 含まれる時, 同じ反応速度を達成するために必要な基質濃度を求めよ. 4. グルコースを唯一の制限基質とする合成培地を調製し, ある単一微生物を, 完全混合培養槽を用いたケモスタットで培養した. 希釈率一定として連続供給したところ定常状態が得られた. さらに培養を続けたところ, 微生物が変異し, 変異株が優先種になったため定常状態における菌体濃度が上昇した. この微生物の増殖は Mnd の式に従い, 増殖阻害を引き起こす物質はない. この変異株は, 変異により微生物反応速度論で使われる3つのパラメーター, 増殖収率 (YX/S), 最大比増殖速度 ( mx), 飽和定数 (Ks) のいずれかが変化したと考えられる. どのように変化した変異体が得られたかについて, 微生物反応速度式を用いて, パラメーターごとに説明せよ.
[ 生物物理化学 ] 必要に応じて以下の数値を使用せよ. アボガドロ数 A = 6.0 10 23 ml - 1, 素電荷 e = 1.6 10-19 C, 電子の質量 me = 9.1 10-31kg, プランク定数 h = 6.6 10-34 Js, 気体定数 R = 8.314 JK - 1ml - 1,0 K =-273.15, ファラデー定数 F = 9.649 10 4 C ml -1 1. 原子炉や加速器を使って発生させる中性子線は, そのド ブロイ波の性質によって X 線と同様に回折するため, 結晶構造解析に用いることが出来る. 中性子に関する以下の問いに答えなさい. 特に指示の無い数値は SI 単位系で有効数字 2 桁で答えること. (1) 中性子の質量はいくらか概算せよ. (2) ド ブロイ波長が 1A である中性子の速度はいくらか. (3) そのエネルギーは何電子ボルトか. 2. 以下の設問に答えよ. (1) ピルビン酸, ピルビン酸イオン, 水素イオンの 25,1ml l - 1 の標準状態の水溶液における標準生成エンタルピー と標準生成ギブス自由エネルギー G は, 以下の表のとおりである. 物質名化学式 /kj ml - 1 G /kj ml - 1 ピルビン酸 C343-608 -487 ピルビン酸イオン C333 - -596-472 水素イオン 0 0 この表の数値をもとに, 標準状態 (25 ) におけるピルビン酸の pk ( = lg10 K ) を求めよ. なお, ここで K は酸解離定数で酸 A の共役塩基を A としたときに, 解離反応 A A にお ける平衡定数である. (2)(1) の表の数値を使って,37 におけるピルビン酸の p K を計算せよ. なお, 計算では, 表中 の標準生成エンタルピーの値が,25 から 37 の間で一定として, ファントホッフの式 ( ln K ) = を使用せよ. 2 T RT p (3) 解糖系においてピルビン酸は以下の反応により AD により還元されて乳酸となる. ピルビン酸 AD AD 25,p7 におけるこの反応の平衡定数を 25,p7における次の2つの標準電極電位 E 求めよ. ピルビン酸 2 2e 乳酸 E ' = 0. 185 V AD 2e AD E ' = 0.315 V ' から 3. 次のページの図は, トリオースリン酸イソメラーゼの分子構造のリボンモデルである. このタンパク質について次の問いに答えなさい.
(1) この酵素分子は, どのような相互作用で三次元の分子構造が形成されているか述べなさい. 説明は構造の階層性にも留意すること. (2) この構造を持つ酵素の活性部位は, 一般にどこにあると考えられるか. 理由も付して説明しなさい. (3) 下に示した2つのアミノ酸配列は, トリオースリン酸イソメラーゼと,βバレル構造を持つ他のタンパク質のβバレル構造の一部のストランドを並べて示したものである. この2つのうちで, トリオースリン酸イソメラーゼのβバレルを形成しているアミノ酸配列は, どちらと考えられるか. 理由も付して説明しなさい. 4. ホモ2 量体型の DA 結合モチーフが DA の回文配列を認識する場合, 回文の部分が次の () のように, 間に認識されない任意のスペーサー配列を挟んで離れている場合や,(b) のようにスペーサー配列を持たず隣接している場合がある. () ---ATCGTTXXXXXXAACGAT--- X は, 任意の塩基. ---TAGCAAXXXXXXTTGCTA--- (b) ---ATCGTTAACGAT--- ---TAGCAATTGCTA--- これらの回文配列を認識する DA 結合モチーフに関する以下の設問に答えよ. (1)(),(b) それぞれの回文配列を認識可能と考えられる DA 結合モチーフの名称を (),(b) それぞれについて1つずつ挙げよ. (2) これらの回文配列の認識が,DA 結合モチーフ中の認識へリックスにより,DA の主溝において行われると仮定して,(),(b) それぞれの場合について,DA 結合モチーフ 2 量体と DA の相互作用を模式図で表せ. 模式図では, 主溝と認識へリックスの相対位置がはっきり分かるように配慮せよ. (3)DA 結合モチーフと DA 間には様々な相互作用があるが, この内, 水素結合と静電相互作用について, それぞれの相互作用でよく使われるアミノ酸の名称を,2つの相互作用それぞれについて 2 つずつ挙げよ. また, DA 側でそれぞれの相互作用に関与する部位はどこか. その部位の名称を2つの相互作用それぞれについて1つずつ書け.
[ 生物材料化学 ] 1. オリゴヌクレオチドに関連する以下の問題に答えよ. (1) リボースの 2 位をアセチル基で保護したモノマーを使用して, 下図のようなジヌクレオチド前駆体を固相担体上で合成し,28% アンモニア水を加えて 8 時間 55 に保ったところ, 目的とする DMT 基で保護されたウリジンの二量体の収率は非常に低かった. その理由を述べよ. DMT = DMT CC 3 P CC3 55 8 時間 C (2) アンチセンス法 ( アンチセンス DA) に基づく遺伝子発現の抑制と,RA 干渉による遺伝子発現の抑制について, それぞれ説明せよ. 2. 高分子に関する以下の問題に答えよ. (1) 過酸化ベンゾイル (BP) を重合開始剤として使用する場合は, ラジカルを発生させるために加熱する必要がある. 一方,- ジメチル -p- トルイジン (DMPT) を BP に加えると, 常温でもラジカル重合が可能になる.DMPT と BP によるラジカル発生の機構を記せ. (2) 一般にラジカル重合は, 十分脱気後に行うと迅速に進行する. 例えばゲル電気泳動で使用するポリアクリルアミドゲルの調製で, アクリルアミドと架橋剤の水溶液を十分に脱気してから重合開始剤を添加すると, 急速にゲル化が進む. その理由を述べよ. (3) ポリ塩化ビニルは, 水道の配管に使用できるほど硬くすることも, 輸液用チューブに使用できるほど柔らかくすることも出来る. 強度 ( 硬さ ) を制御したポリ塩化ビニルは, どのように合成されるのか答えよ. 3. ペプチドの化学合成に関する以下の問題に答えよ. (1) α- アミノ酸 -- カルボン酸無水物の開環重合機構を記せ. ( 次ページに続く )
(2) オリゴペプチドの固相合成ではオリゴヌクレオチドの固相合成と異なり, 担体からの切り出し 脱保護ではアンモニアのような強塩基を使用せず, トリフルオロ酢酸のような強酸が用いられる. なぜオリゴペプチド合成では強塩基が使用できないのか, 理由を述べよ. 4. 分子認識材料に関する以下の問題に答えよ. (1) シクロデキストリンは, 水以外の有機溶媒中では, その空洞内に疎水性分子を取り込む能力が著しく低下する. その理由を述べよ. (2) 人工腎臓 ( 人工透析 ) に用いる血液透析膜として要求される性能を列挙せよ. また血液透析膜として実用化されている材料 ( 高分子 ) を一つ挙げよ. なお材料 ( 高分子 ) を化学式で答える必要はない.
[ 生物有機化学 ] 1. ロタウスタリン 1 は酸性水溶液で処理すると加水分解してシアノヒドリン 2 を生成する. 2 は不安定であるため, すぐに分解して, シアン化水素を放出する. 以下の問いに答え よ. 1 2 C 2 cynhydrin 2 3 C (1) ロタウスタリン 1 のシアノ基のついた 2 位の炭素の絶対配置を示せ. (2) 1 の加水分解の反応機構を電子の巻き矢印を使って説明せよ. 生成するシアノヒドリン 2 を化学構造式で示せ. (3) シアノヒドリン 2 は不安定なため, 容易に分解してある化合物 3 とシアン化水素になる.3 を化学構造式で示せ. 2. 安息香酸とジアゾメタンを反応させるとメチルエステルが生成する. 以下の問いに答えよ. PhC 2 C 2 2 PhC 2 Me (1) ジアゾメタンの共鳴構造を全て示せ. (2) メチルエステルが生成する反応の反応機構を電子の巻き矢印を使って説明せよ. 3. 次の反応はモルヒネの生合成の 1 段階である. この反応は酸触媒により起こるとして, この反応機構を電子の巻き矢印を使って説明せよ. 2 C 4. リシン生合成経路の最後の段階は mes-2,6-ジアミノピメリン酸の脱炭酸である. この反応は酵素 ( 2 -enzyme) 以外にピリドキサールリン酸 (PLP) を補酵素として必要とする. この反応機構を電子の巻き矢印を使って説明せよ. また, 生成するリシンの絶対配置は S であるが, 不斉誘起はどの段階で起こるのか説明せよ. 2 3 P C 3 3 2 C C 2 PLP 2 enzyme 3 3 C 2