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平成 30 年度救急業務のあり方に関する検討会報告書の概要 消防庁救急企画室 はじめに 消防庁救急企画室では 高齢化を背景として救急需要が増大する中 救急車の適正利用の推進や救急業務の円滑な実施と質の向上等 救急業務を安定的かつ持続的に提供し救命率の向上を図ることを目的に 平成 30 年度救急業務のあり方に関する検討会 ( 座長 : 山本保博一般財団法人救急振興財団会長 ) を開催しました 検討会では 救急業務を取り巻く諸課題やその対応策について 有識者を交えて3 回にわたり検討を行いました 今回 平成 31 年 3 月にまとめられた検討会報告書の概要について紹介します 1. 検討の背景と目的 平成 30 年中における全国の救急自動車による救急出動件数は約 661 万件 搬送人員は約 596 万人で いずれも過去最多を更新しました 救急出動件数の増加等を要因に 救急活動時間は延伸傾向にあり 平成 29 年中の病院収容所要時間 (119 番通報から病院等に収容するまでに要した時間 ) は39.3 分となっています このような背景から 救急業務を安定的かつ持続的に提供していくための課題に対応するため 今年度の検討会では 救急車の適正利用の推進 救急業務図表平成 30 年度救急業務のあり方に関する検討会主要検討項目 の円滑な実施と質の向上 等を目的に 検討項目 ( 図表参照 ) について検討を行いました 2. 各検討事項の概要 (1) 傷病者の意思に沿った救急現場における心肺蘇生の実施 近年 高齢者の救急需要が増加する中で 救急現場において 傷病者の家族等から本人の心肺蘇生の中止の意思を示される事案が生じており 一刻を争う差し迫った状況の中 救急隊が対応に苦慮することが課題となっています このような事案については 全国救急隊員シンポジウム等で議論されるなど 救急関係者による議論や研究が活発に行われ その成果も出てきています こうしたことを背景として 今年度は検討部会を設置し 心肺蘇生を望まない傷病者への救急隊の対応に関する実態調査 を実施し 全国の現状を把握するとともに 救急現場における心肺蘇生を望まない傷病者への対応の現状等のヒアリングを実施しました ~ 心肺蘇生を望まない傷病者への救急隊の対応に関する実態調査 ( 抜粋 )~ 心肺機能停止状態である傷病者の家族等から 傷病者本人が心肺蘇生を拒否する意思表示をしていたことを伝えられた場合の対応方針について 対応方針を 定めている と回答した消防本部は 45.6%(332 本部 ) 定めていない と回答した消防本部は54.4%(396 本部 ) となっている 対応方針の策定の有無 消防の動き '19 年 5 月号 - 4 -

心肺機能停止状態である傷病者の家族等から 傷病者本人が心肺蘇生を拒否する意思表示をしていたと伝えられた事案の経験の有無について 平成 29 年中に事案があった と回答した消防本部が最多で55.4%(403 本部 ) 次いで 平成 29 年中に事案がなかった それ以前には事案があった ( と思われる ) と回答した消防本部は29.3%(213 本部 ) 平成 29 年中に事案はなかった それ以前にも事案はなかった ( と思われる ) と回答した消防本部が15.0%(109 本部 ) となっている 傷病者の家族等から傷病者本人は心肺蘇生を望まないと伝えられた事案の有無 傷病者は心肺機能停止状態であるが 傷病者本人が心肺蘇生を拒否する意思表示をしていたことを 家族等から伝えられた事案について 消防本部での集計の実施の有無は 集計している が 5.8%(42 本部 ) 集計していない が 94.0%(684 本部 ) となっている 傷病者の家族等から傷病者本人は心肺蘇生を望まないと伝えられた事案の集計の有無 ら 今後 事案の実態調査を更に進めていくことが望まれます (2) 救急活動時間延伸の要因分析 救急出動件数は 一貫して増加を続けており 平成 29 年中の救急自動車による救急出動件数は約 634 万件と過去最多を更新し 10 年前に比べ19.9% 増加しています 一方で 救急隊数は10 年前に比べ 6.1% の増加にとどまっています 救急自動車による現場到着所要時間は全国平均で 8.6 分 病院収容所要時間は全国平均で39.3 分となり 救急出動件数の増加とともに救急活動時間は延伸傾向にあることから 救急活動時間の延伸の要因と短縮に向けた取組について 消防本部へのアンケート調査や救急現場実態調査等により現状を把握し 救急活動時間の延伸要因についての調査 短縮に向けた取組の検討及び先進的事例の収集を行うこととしました アンケート調査及び救急現場実態調査から 各フェーズにおける救急活動時間延伸の要因として 入電から現場到着 では 救急要請の増加による直近隊の不在 道路渋滞に伴う現場到着の遅延等が挙げられ また 現場到着から現場出発 では 救急救命処置の拡大に伴う現場活動時間の延伸 傷病者等からのニーズの多様化による医療機関選定に伴う連絡回数及び連絡時間の増加並びに医療機関側から求められる情報量の増加等があげられました 救急活動時間の状況について 救急現場等で 傷病者の家族等から 傷病者本人は心肺蘇生を望まないと伝えられる事案について 今回 初めての全国の消防本部の実態調査を実施しました また 既に長期間にわたり心肺蘇生を中止する運用を行っている消防本部について 事案の詳細や救急隊の対応状況など対応 取組を調査しました 今後 今回の全国実態調査の結果や取組事例などをもとに 傷病者の家族等から傷病者本人は心肺蘇生を望まないと伝えられる事案について 検討を進めていきます また 今回の全国実態調査によれば このような事案について集計している本部は42 本部と少なく まだ十分に明らかになったとは言い難い面があることか 救急活動を 4 つのフェ - ズ (1 入電から現場到着 2 現場到着から現場出発 3 現場出発から医師引継 4 医師引継から病院引揚げ ) に分けた場合 現場活動時間が延伸 ( 又は延伸傾向 ) のフェーズ及びそのフェーズにおいて考えられる延伸の要因 < 複数回答 > N = 728 消防の動き '19 年 5 月号 - 5 -

また 各消防本部における救急活動時間短縮に向けた取組として 通信指令員による迅速な出動指令などの通信指令との連携 携行資器材の選択などの救急活動の工夫 医療機関との顔の見える関係の構築など 様々な取組が行われていることが把握できました 一方で 安易に時間短縮を推し進めることによる 事故の発生や救急活動の質の低下について懸念する声もあり 救急活動時間の短縮は取組むべき重要な課題であるものの 救急活動時間の短縮のみを目的とした救急活動は 傷病者に不利益を生じさせる可能性があることに留意する必要があるとされ 傷病者の病態等を踏まえ 時間短縮のみではない 効率的 効果的な救急活動を目指す必要があり 各地域における延伸要因をそれぞれが把握し 活動時間の効率化を図ることが望まれるとされました (3) 7119( 救急安心センター事業 ) の充実 7119( 救急安心センタ- 事業 ) は 住民が急な病気やケガの際に 専門家が相談に応じる電話相談窓口であり 救急車の適正利用を促すとともに 住民が適切なタイミングで医療機関を受診する上で極めて有効な事業で 平成 31 年 1 月末日現在 全国 14 地域で事業が実施されており 国民の約 42.3% がカバ-されています 平成 30 年度の検討会では 7119の統計項目について整理を行いました 団体の基本情報については 事業展開のための資料として活用するとともに 相談ごとに収集した項目を加え各実施団体で共有し 事業の更なる効率化を目指すことが期待されました また プロトコール改定に係る項目や 事業の効果の把握については 今後とも消防庁が積極的に関与することが望ましいとされました その他 実施団体からは検証体制の必要性の指摘があったほか 本事業への都道府県の関与のあり方 SNSの活用などについて意見交換がなされ 7119を いつでも どこでも 同一番号で相談が行えるもの とするため 今後は これまで導入があまり進んでいない人口集積地以外の地域での一層の普及を図る必要があり こうした地域における課題を整理し導入したときの効果を検討することが有効であると考えられるとされました また 7119を適切に実施していくためには 効果の検証や関係機関 ( 行政機関 医師会等 ) の連携のあり方に等について検討を続けることも重要であると考えられるとされました 7119 救急安心センター事業 ) 等の実施状況 消防の動き '19 年 5 月号 - 6 -

(4) 緊急度判定の実施 平成 29 年度の検討会では 119 番通報時及び救急現場のいずれにおいても 救急出動 搬送の要否に係る緊急度判定を実施していく具体的な方策として 緊急度判定を行う上での対応マニュアル ( 緊急度に応じた対応のあり方 接遇 説明 記録の残し方 ) の作成や教育体制のあり方についての検討が必要であるとされました このことから 平成 30 年度は 119 番通報時及び救急現場での救急出動 搬送の要否に係る緊急度判定についての実施状況 緊急度判定を実施するに当たっての対応マニュアル 救急隊員や通信指令員への教育等についての実態調査を実施し 課題の整理を行いました 平成 29 年度からの3 年間のスケジュール また 教育体制については 各所属や消防学校等の様々な場面での 救急業務に携わる職員の生涯教育という観点から 教育カリキュラムや教育の到達目標等が必要であると考えられ 今後 救急業務に携わる職員が 緊急度判定を習熟 実践するための効果的な教育体制についての議論が望まれます (5) 救急隊の感染防止対策 平成 29 年度に消防庁が実施した 感染症対策に関する現況調査 の結果によれば 感染防止対策マニュアルの整備や感染防止に関する研修を実施している消防本部は 全国の約半数であるなど 消防機関における感染防止対策は必ずしも十分とは言えない状況が示されています 感染防止対策マニュアルの整備の有無 次年度のモデル地域において 平成 30 年度作成した119 番通報時 救急現場における緊急度判定の導入及び運用手引き ( 案 ) や 検証に必要とされる記録 緊急度判定の有用性及び精度の検証方法を活用しながら実施 検証を行い その結果等を踏まえて修正を行った上で手引きや緊急度判定の有用性 精度の評価方法等を全国に情報提供していくことが必要であるとされました 職員の感染防止に関する責任者の有無 緊急度判定の導入及び運用手引き ( 案 ) (119 番通報時 ) ( 救急現場 ) こうしたことから 救急隊の感染防止対策の体制整備 充実を図ることを目的として 既存の消防本部のマニュアルに共通した記載項目等を基本として 最新の医学的知見を踏まえた血液 体液等への曝露時の対処方法や資器材の消毒方法等を集約し 救急活動に際して実効性のある感染防止対策マニュアルを作成しました 消防の動き '19 年 5 月号 - 7 -

感染防止対策マニュアル また 消防機関における感染防止管理体制や感染防止管理に係る医学的な質の保証について例示しました 今後 全国の消防本部においては 本検討会において作成された感染防止対策マニュアルを参考として マニュアルの整備や見直しを進めることが望まれます また マニュアルの整備だけではなく 各本部での感染防止管理体制の構築や 研修等による感染防止に対する意識付け等によって 救急隊員自身の感染症に対する安全確保や 傷病者等への感染拡大防止を目的とした 実効性のある感染防止対策が行われることが期待されます おわりに 平成 30 年度の検討会においては 傷病者の意思に沿った救急現場における心肺蘇生の実施に関する各消防本部における現状の把握をはじめ 救急活動時間延伸の要因と短縮に向けた取組状況の把握 7119に関する統計項目の整理 来年度実施予定の緊急度判定の実施 検証に向けた効果測定方法等の検討 救急隊の感染防止対策マニュアルの作成及び感染防止管理体制など 多岐にわたる検討のほか 救急業務に関するフォローアップとして 各地域の救急業務への取組状況の把握など 救急業務のあり方について多くの成果をまとめることができました 本報告書が各地域で有効活用され 救急救命体制の充実 強化の一助となり 我が国の救命率の向上につながることを期待しています (6) 救急業務に関するフォローアップ 救急業務に関する取組状況について 救急業務に関するフォローアップとして アンケート調査により全国の実態を把握するとともに 都道府県の担当部局とともに消防本部を個別訪問し 現状及び課題の認識の共有並びに必要な助言を行いました 来年度も引き続き アンケート調査及び個別訪問によるフォローアップを継続することで 救急業務の全国的なレベルアップを図っていきます 問合わせ先消防庁救急企画室 TEL: 03-5253-7529 消防の動き '19 年 5 月号 - 8 -