森林・河川等の環境中における 放射性セシウムの動き

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タイトル

森林の放射性セシウム分布の現状と今後の見通し 国立研究開発法人森林研究 整備機構 森林総合研究所三浦覚 平成 30 年 11 月 17 日平成 30 年度 福島の森林 林業再生に向けたシンポジウム 1 本日の内容 放射性セシウム分布の現状 1) 7 年間の推移と現状 2) 木材の汚染 3) 野生の山

淀川水系流域委員会第 71 回委員会 (H20.1 審議参考資料 1-2 河川管理者提供資料

1 海水 (1) 平成 30 年 2 月の放射性セシウム 海水の放射性セシウム濃度 (Cs )(BqL) 平成 30 年 平成 29 年 4 月 ~ 平成 30 年 1 月 平成 25 ~28 年度 ~0.073 ~ ~0.

資料4 検討対象水域の水質予測結果について

環境科学部年報(第16号)-04本文-学位論文の概要.indd

水質

水質

平成 27 年 9 月埼玉県東松山環境管理事務所 東松山工業団地における土壌 地下水汚染 平成 23~25 年度地下水モニタリングの結果について 要旨県が平成 20 年度から 23 年度まで東松山工業団地 ( 新郷公園及びその周辺 ) で実施した調査で確認された土壌 地下水汚染 ( 揮発性有機化合物

降下物中の 放射性物質 セシウムとヨウ素の降下量 福島県の経時変化 単位 MBq/km2/月 福島県双葉郡 I-131 Cs Cs-137 3 8,000,000 環境モニタリング 6,000,000 4,000,000 2,000,000 0 震災の影響等により 測定時期が2011年7

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いて一市町村当たり2 箇所の計 18 箇所で それぞれ実施してきています これまでの調査の結果 環境放射線量 ( 空間線量率 ) は 調査開始時の平成 26 年度から平成 29 年度までの変化率の平均は 44.5% となっています 計算により求められる物理学的減衰による低減率 35.1% と比較する

ダムの運用改善の対応状況 資料 5-1 近畿地方整備局 平成 24 年度の取り組み 風屋ダム 池原ダム 電源開発 ( 株 ) は 学識者及び河川管理者からなる ダム操作に関する技術検討会 を設置し ダム運用の改善策を検討 平成 9 年に設定した目安水位 ( 自主運用 ) の低下を図り ダムの空き容量

本文(横組)2/YAX334AU

S1:Chl-a 濃度 18.6μg/L S1:Chl-a 濃度 15.4μg/L B3:Chl-a 濃度 19.5μg/L B3:Chl-a 濃度 11.0μg/L B2:Chl-a 濃度実測値 33.7μg/L 現況 注 ) 調整池は現況の計算対象外である S1:Chl-a 濃度 16.6μg/

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はじめに 2011 年 3 月 11 日に起きた東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う東京電力 ( 株 ) 福島第一原子力発電所事故により福島県は甚大な被害を受け この前例のない原子力災害からの環境の回復と県民が将来にわたり安心して暮らせる環境を創造することが喫緊の課題となった この課題を克服するために

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河口域の栄養塩動態 国土交通省国土技術政策総合研究所沿岸海洋研究部海洋環境研究室主任研岡田知也 国土交通省国土技術政策総合研究所

S1:Chl-a 濃度 8.5μg/L S1:Chl-a 濃度 8.4μg/L B3:Chl-a 濃度 8.0μg/L B3:Chl-a 濃度 7.5μg/L B2:Chl-a 濃度実測値 67.0μg/L 現況 注 ) 調整池は現況の計算対象外である S1:Chl-a 濃度 8.7μg/L S1:

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PowerPoint プレゼンテーション

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[ノート]

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( 続紙 1 ) 京都大学博士 ( 農学 ) 氏名根田遼太 Spatial structures of nitrous oxide fluxes from soil and its determining factors in Acacia mangium plantation 論文題目 (Acac

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漂流・漂着ゴミに係る国内削減方策モデル調査地域検討会

2 号機及び 3 号機 PCV - 分析内容 原子炉格納容器 (PCV) 内部調査 (2 号機平成 25 年 8 月 3 号機平成 27 年 10 月 ) にて採取された (LI-2RB5-1~2 LI-3RB5-1~2) を試料として 以下の核種を分析した 3 H, Co, 90 Sr, 94 N

近畿地方整備局 資料配付 配布日時 平成 23 年 9 月 8 日 17 時 30 分 件名土砂災害防止法に基づく土砂災害緊急情報について 概 要 土砂災害防止法に基づく 土砂災害緊急情報をお知らせします 本日 夕方から雨が予想されており 今後の降雨の状況により 河道閉塞部分での越流が始まり 土石流

福島第1原子力発電所事故に伴う 131 Iと 137 Csの大気放出量に関する試算(II)

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学んで、考えてみよう 除染・放射線のこと 使い方

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の洪水調節計画は 河川整備基本方針レベルの洪水から決められており ダムによる洪水調節効果を発揮する 遊水地案 は 遊水地の洪水調節計画は大戸川の河川整備計画レベルの洪水から決めることを想定しており 遊水地による洪水調節効果が完全には発揮されないことがある 瀬田川新堰案 は 瀬田川新堰の洪水調節計画は

平成24年度農研機構シンポジウム資料|牛肉における放射性セシウムの飼料からの移行について

東日本大震災における施設の被災 3 東北地方太平洋沖地震の浸水範囲とハザードマップの比較 4

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日時 場所 参加者 NPO21 世紀水倶楽部 2013 研究集会 陸域における放射性物質の挙動を探る 報告平成 25 年 7 月 19 日 ( 金 ) 13:30-17:00 ( 公財 ) 日本下水道新技術機構会議室 51 名 1 亀田理事長挨拶当法人は今年 10 周年を迎えた パンフレットも新しく

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本稿では 福島第一原発事故の約 3 か月後か Bq L と低い放射能濃度であった 以上 ら観測を開始した金沢大学環日本海域環境研究 の観測結果より 河川水の Cs 全放射能濃度 センター低レベル放射能実験施設の測定結果を は流域の放射性 Cs 沈着量に依存して変動する 中心に 現在までの

マコガレイ中のセシウムの放射能濃度 ( 東電による 20km 圏調査 ) 厚労東電産地東電 No. No. 都道府県採取地採取 / 流通品魚種等採取部位採取日公表日公表 S1~S8: 刺し網 検査結果 (Bq/kg) ( グラフ用 ) ヨウ素 -131 セシウム計 セシウム -134 セシウム -1

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南相馬市における玄米の基準値超過の発生要因調査 平成 27 年 5 月 26 日 農林水産省福島県東北農業研究センター農業環境技術研究所

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4. 堆砂

1. 概 要 (2) 気象 水象状況 (1) 塩害防除の状況 1 気象 ( 観測地点 ; 利根川河口堰管理所 ) 1 堰上流基準地点 (26km) 表層の塩化物イオン濃度 雨量 上旬 中旬 下旬 総雨量 最多 1 時間雨量 発生日時 最大値 98 ppm ( 4 月 5 日 ) 平均値 71 ppm

概 要 2015 年 4 月 液体及びダストを中心に敷地境界外に影響を与える可能性があるリスクを広く対象としたリスク総点検を実施し, リスク低減対策の取組みは, 環境変化等を反映し適宜見直しを行っている リスク低減対策未着手の項目 ( 下記 1) については, 月末時点で 10 項目であ

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0.45m1.00m 1.00m 1.00m 0.33m 0.33m 0.33m 0.45m 1.00m 2

あおぞら彩時記 2017 第 5 号今号の話題 トリオ : 地方勤務の先輩記者からの質問です 気象庁は今年度 (H 29 年度 )7 月 4 日から これまで発表していた土砂災害警戒判定メッシュ情報に加え 浸水害や洪水害の危険度の高まりが一目で分かる 危険度分布 の提供を開始したというのは本当ですか

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資料 3-1 リスク評価 ( 一次 ) 評価 Ⅱ における 1,2,4- トリメチルベンゼンの 評価結果 ( 案 ) について ( 生態影響 ) < 評価結果及び今後の対応について > 1,2,4- トリメチルベンゼン ( 以下 TMB という ) について 生態影響に係る有害性評価として 既存の有

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福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第350 報)

Transcription:

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森林 どんなことをしているの? 2 森林や河川 湖 海などの様々な環境における放射性物質 ( 主に放射性セシウム ) の分布と動きの調査 予測モデルの開発 室内試験 分析 土壌採取樹木の採取流出量の観測 河川 貯水池 放射能の測定 化学組成の分析 データ解析 モデル構築 河川流量の観測 試料の前処理 ため池での採水 採泥 成果の公開

https://ramap.jmc.or.jp/map (2018.11.15 時点 ) 10 km どこを調べているの? 3 広瀬川 山木屋地区森林 松ヶ房ダム 太田川上流域 大柿ダム 真野ダム 十万山森林 坂下ダム滝川ダム 荻地区森林 宇多川 真野川 横川ダム太田川小高川 双葉町ため池大熊町ため池 請戸川 高瀬川前田川 1F NPP 熊川 富岡川 井出川木戸川 福島県国立環境研究所 県内の広域多地点における放射性セシウム濃度の経年変化の把握と広瀬川流域での既往数値モデルによる出水時等の動態予測 浜通り北部の河川流域における渓流域 河川水 ダム湖水 底質を定期的にモニタリングし 自然生態系への移行プロセス解明 定量評価原子力機構 浜通り南部地域を中心とし 森林 河川 ダム湖 河口域といった各環境コンポーネント間の放射性セシウム移行状況の包括的な理解を通じたストック & フロー解析 観測データの取得と移行メカニズム理解に立脚した現象論モデルの構築 現象論モデルによる様々な自然現象や環境条件に応じた放射性セシウム移行挙動のケーススタディ

これまでにわかってきたこと森林 4 森林からの流出状況 森林渓流における土砂流出の様子 晴天時 降雨時 セシウム流出は 主に土壌粒子に付着した状態 ( 懸濁態 ) で発生 雨の降り方に強く依存 ただし 台風等の大規模降雨時を考慮しても流出は限定的 森林流域からのセシウム 137 流出状況 137 Cs 沈着量 (kbq/m 2 ) 流出土砂 137 Cs 濃度 (kbq/kg) 流出土砂 137 Cs 流出量 (kbq/m 2 ) 年間流出率 (%) 太田川上流 (24 か月間 ) 宇多川上流 (36 か月間 ) 1,900 170 61~130 6.8~9.3 8.8 0.51 0.08~0.38 0.04~0.16 観測期間 : 太田川上流 :2014 年 1 月 1 日 ~2015 年 12 月 31 日宇多川上流 :2012 年 9 月 15 日 ~2015 年 9 月 15 日

これまでにわかってきたこと 森林 5 森林内の放射性セシウムの分布 ( スギ林 ) 伐倒調査の試験地 ( スギ林 ) 森林の地下部の放射性セシウムの分布 セシウム 137 沈着量の割合 * 地下のセシウム 137 総量に対する割合を示しています 地上部 スギ立木 ( スギ立木 ) 地下部 森林土壌 ( 落葉落枝と土壌 ) 心材辺材樹皮枝針葉 鉱質土層 腐植層 落葉落枝層 0 100 200 300 400 セシウム137 沈着量の分布 (kbq/m 2 ) (2015 年 10 月試料採取 ) 落葉落枝腐植層 土壌層 0-3 cm 3-6 cm 6-10 cm 木部 ( 心材 ) 外樹皮形成層木部 ( 辺材 ) 内樹皮 土壌の断面 地上部 ( スギ立木 ) << 地下部 ( 落葉落枝 土壌 )( 沈着量の約 9 割 ) 地下部のセシウム 137 は土壌の表層に多く存在

懸濁態セシウム 137 濃度 (kbq/kg) ( 対数表示 ) 100 10 1 0.1 0 これまでにわかってきたこと河川 6 阿武隈川水系の例 1 2 理論的減衰 [ 137 Cs 半減期 (30.1 年 )] 懸濁態 137 Cs 濃度の経年変化 事故からの経過年数 (2018 年 7 月採取分まで ) 2018 年時点では 事故直後と比較して濃度が 1/10 以下に低下 懸濁態セシウム 137 濃度は低下する傾向にあるものの 濃度の低下傾向は地点により差が見られる ( 土地利用や除染状況など ) 2018 年 3 月 3 4 5 6 7 8 河川水の採水 河川水のろ過 < 土壌粒子と水を分離 > 土壌粒子に付着 懸濁態セシウム 水に溶け込んでいる 溶存態セシウム

これまでにわかってきたこと 溶存態セシウム 137 濃度の経年変化 溶存態セシウム 137 濃度 (Bq/L) 0.3 0.2 0.1 太田川 0.4 0.3 0.2 0.1 0 0 河川 請戸川 7 流域沈着量に対する流出率 (%) 溶存態セシウム137 濃度は 夏季に相対的に高く 冬季に低い季節変動を示し 季節変動の上下幅は 時間とともに狭まっている 全般的に濃度は低下している 河川を通じた年間流出率 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 ダム有り 2014 年度 2015 年度 2016 年度 ダム無し 請戸川太田川富岡川高瀬川小高川熊川前田川 河川を通じた年間流出量は流域沈着量の 0.04~0.5% 多くは出水時に懸濁態として流出 懸濁態セシウムの移動はダムにより抑制されている

溶存態 137 Cs 濃度 (Bq/L) (kbq/kg) 100 10 1 0.1 0.01 これまでにわかってきたこと ( 対数表示 ) 10000 1000 100 10 1 貯水池 8 双葉町大熊町ため池 大柿ダム横川ダム 坂下ダム滝川ダム 3 4 5 6 7 ダ事故からの経過年数 ため池懸濁態 137Cs 濃度 ム湖貯水池 8 溶存態セシウム 137 濃度 ダム湖では 1 Bq/L 以下 帰還困難区域のため池では概ね 1 Bq/L 以上 食品中の放射性物質の基準値 ( 食品衛生法 ) 飲料水 10 Bq/kg 夏季に上昇し 冬季に低下する季節変動を示す 季節変動による夏季と冬季の濃度差は オーダーが変わるほどではない 懸濁態セシウム 137 濃度 概ね 10 4 ~10 6 Bq/kg の範囲 明瞭な季節変動は確認できない

これまでにわかってきたこと ダム湖におけるセシウム 137 の貯留作用 貯水池 9 流入 GBq:10 9 Bq 宇多川湖 ( 宇多川 ) ( 期間 :2014.1.1-2014.12.31) 溶存態 0.66GBq 懸濁態 4.1GBq 横川ダム湖 ( 太田川 ) ( 期間 :2014.1.1-2014.12.31) 溶存態懸濁態 37GBq 130GBq 国土地理院の空中写真を使用 国土地理院の空中写真を使用 放流 0.57GBq 0.3GBq 33GBq 12GBq ダム集水域の初期沈着量に比べ 放流セシウム 137 量は 0.01% 程度 (4 年間の観測結果 ;2014~2017 年 ) 懸濁態セシウムの大部分は湖底に沈降 堆積し 下流へ移動しない 主要なダムは十分な土砂の堆積容量を有している 底質からのセシウム溶出や集水域の環境変化による影響を確認するため 定期的かつ長期的なモニタリングが必須

セシウム濃度の予測をするモデルを開発 10 ある場所における河川水 ( 取水口 ) のセシウム濃度を予測 1 時間降水量 (mm) 浮遊物質の濃度 mg/l) 137 Cs 濃度 (Bq/L) 40 20 0 降水量の経時変化 現象論モデルによる予測結果 浮遊物質濃度の経時変化 水中セシウム 137 濃度の経時変化 約 370mm/ 日 ( やや強い雨 ) 約 130 mm/ 日 約 50 mm/ 日 ( 弱い雨 ) 1 日当たりの降雨量 大 ) 約 370mm( やや強い雨 ) 中 ) 約 130 mm 小 ) 約 50 mm( 弱い雨 ) ある降雨量のとき 河川水に含まれる放射性セシウム濃度がどれくらいになるのか予測 浮遊物質濃度に対してセシウム濃度がどの程度か推定 浮遊物質濃度の目安となる濁度を現地で測定することで セシウム濃度をある程度予測できる 降雨の後 取水制限は何時間くらいとすべきか 頭首工での取水管理に役立てられる情報 経過時間 原子力機構 より https://simu.jaea.go.jp/simulation/index.html

セシウムの起源と濃度を予測するモデルを開発 11 淡水魚のセシウムの起源と今後のセシウム濃度を予測 河川水中の 137 Cs 濃度 ( 対数表示 ) ( 対数表示 ) 淡水魚の 137 Cs 濃度 現象論モデルによる予測結果土壌 有機物とともに流出 森林各部の放射性セシウム濃度の経時変化を実測値に基づき設定 河川水のセシウム 137 濃度と淡水魚 ( アユ ) のセシウム 137 濃度を現象論モデルで予測 淡水魚の放射性セシウム濃度は 河川へ直接落ちる落葉と林床の落葉層から河川へ流入する落葉の二つが主に寄与 このようなセシウム供給源や経路の特定は 将来予測や対策の検討に役立つことが期待 原子力機構 より https://simu.jaea.go.jp/simulation/index.html

まとめ 今後の予定 12 環境動態部門では これまでの取組 ( フェーズ 1) により 環境中の放射性セシウム濃度は ゆっくりと減少しています 半分の濃度になるまでに数年かかります 環境中における放射性セシウムの動きは非常に遅く 現在の場所に長くとどまる可能性があります ダムは 河川を通じた放射性セシウムの移動を抑制しています 河川水や農林水産物の放射性セシウム濃度について 現象論モデルの開発により 今後の推移やこれまで観測されていない条件での予測ができるようになりました これから ( フェーズ 2) は ということが分かってきました どのようなメカニズムで農林水産物 ( 樹木 山菜 淡水魚 ) へ放射性セシウムが移動していくのか 環境と農林水産物の放射性セシウム濃度は 今後どのように推移していく見込か 予測の結果は確かなのか 調査研究の成果を分かりやすく整理 解説し それを広めていくための取組 に重点をおいて 関係機関と協力しつつ 調査 研究を進めていきます