Microsoft Word - p3-p7_研究報告_本文-1-ヘッダー付き

Similar documents
降圧コンバータIC のスナバ回路 : パワーマネジメント

スライド 1

回路シミュレーションに必要な電子部品の SPICE モデル 回路シミュレータでシミュレーションを行うためには 使用する部品に対応した SPICE モデル が必要です SPICE モデルは 回路のシミュレーションを行うために必要な電子部品の振る舞い が記述されており いわば 回路シミュレーション用の部

RMS(Root Mean Square value 実効値 ) 実効値は AC の電圧と電流両方の値を規定する 最も一般的で便利な値です AC 波形の実効値はその波形から得られる パワーのレベルを示すものであり AC 信号の最も重要な属性となります 実効値の計算は AC の電流波形と それによって

LTspice/SwitcherCADⅢマニュアル

第 5 章復調回路 古橋武 5.1 組み立て 5.2 理論 ダイオードの特性と復調波形 バイアス回路と復調波形 復調回路 (II) 5.3 倍電圧検波回路 倍電圧検波回路 (I) バイアス回路付き倍電圧検波回路 本稿の Web ページ ht

図 2.Cat2 ケーブルの減衰特性 通常伝送線路の減衰特性は 1-1) 式のように 3つのパラメータで近似されます DC 抵抗表皮効果誘電損失 A + f*b + f*c 1-1) ところが仕様書の特性を見ると0~825MHz までは-5dB でフラット 5.1GHz までは直線的な減衰になってい

スライド 1

Microsoft Word - プロービングの鉄則.doc

<8AEE B43979D985F F196DA C8E323893FA>

スライド 1

オペアンプの容量負荷による発振について

レベルシフト回路の作成

絶対最大定格 (T a =25 ) 項目記号定格単位 入力電圧 V IN 消費電力 P D (7805~7810) 35 (7812~7815) 35 (7818~7824) 40 TO-220F 16(T C 70 ) TO (T C 25 ) 1(Ta=25 ) V W 接合部温度

NJM78L00 3 端子正定電圧電源 概要高利得誤差増幅器, 温度補償回路, 定電圧ダイオードなどにより構成され, さらに内部に電流制限回路, 熱暴走に対する保護回路を有する, 高性能安定化電源用素子で, ツェナーダイオード / 抵抗の組合せ回路に比べ出力インピーダンスが改良され, 無効電流が小さ

周波数特性解析

NJM78L00S 3 端子正定電圧電源 概要 NJM78L00S は Io=100mA の 3 端子正定電圧電源です 既存の NJM78L00 と比較し 出力電圧精度の向上 動作温度範囲の拡大 セラミックコンデンサ対応および 3.3V の出力電圧もラインアップしました 外形図 特長 出力電流 10

INDEX PAGE. 静電気放電イミュニティ試験 3 Electrostatic Discharge Immunity Test (IEC ) 2. 放射性無線周波数電磁界イミュニティ試験 4 Radiated Radio Frequency Electromagnetic Fiel

アナログ回路 I 参考資料 版 LTspice を用いたアナログ回路 I の再現 第 2 回目の内容 電通大 先進理工 坂本克好 [ 目的と内容について ] この文章の目的は 電気通信大学 先進理工学科におけるアナログ回路 I の第二回目の実験内容について LTspice を用

RLC 共振回路 概要 RLC 回路は, ラジオや通信工学, 発信器などに広く使われる. この回路の目的は, 特定の周波数のときに大きな電流を得ることである. 使い方には, 周波数を設定し外へ発する, 外部からの周波数に合わせて同調する, がある. このように, 周波数を扱うことから, 交流を考える

3.5 トランジスタ基本増幅回路 ベース接地基本増幅回路 C 1 C n n 2 R E p v V 2 v R E p 1 v EE 0 VCC 結合コンデンサ ベース接地基本増幅回路 V EE =0, V CC =0として交流分の回路 (C 1, C 2 により短絡 ) トランジスタ

基本的なノイズ発生メカニズムとその対策 電源 GND バウンス CMOS デジタル回路におけるスイッチング動作に伴い 駆動 MOS トランジスタのソース / ドレインに過渡的な充放電電流 及び貫通電流が生じます これが電源 GND に流れ込む際 配線の抵抗成分 及びインダクタンス成分によって電源電圧

Microsoft Word - SPARQアプリケーションノートGating_3.docx

NJM78M00 3 端子正定電圧電源 概要 NJM78M00 シリーズは,NJM78L00 シリーズを更に高性能化した安定化電源用 ICです 出力電流が 500mA と大きいので, 余裕ある回路設計が可能になります 用途はテレビ, ステレオ, 等の民生用機器から通信機, 測定器等の工業用電子機器迄

インダクタンス起因ノイズのトレンドークロストークと di/dt ノイズ JEITA EDA 技術専門委員会 DMD 研究会ノイズフリーデザインタスクグループ 山縣暢英 ( ソニー ) 貝原光男 ( リコー ) 蜂屋孝太郎 (NEC) 小野信任 ( セイコーインスツルメンツ )

Microsoft PowerPoint - kasuga-workshop2017料(2017) - コピー.pptx

第 11 回 R, C, L で構成される回路その 3 + SPICE 演習 目標 : SPICE シミュレーションを使ってみる LR 回路の特性 C と L の両方を含む回路 共振回路 今回は講義中に SPICE シミュレーションの演習を併せて行う これまでの RC,CR 回路に加え,L と R

Microsoft PowerPoint pptx

p.3 p 各種パラメータとデータシート N Package Power Dissipation 670mW ( N Package)

DF2B29FU_J_

Microsoft Word -

DF10G5M4N_J_

DF2B6.8FS_J_

回路シミュレーションと技術支援ツール

アクティブフィルタ テスト容易化設計

IEC シリーズ イミュニティ試験規格の概要

Microsoft Word - CES0030-3_part2_

測定器の持つ誤差 と 使い方による誤差

DF2B26M4SL_J_

Microsoft PowerPoint pptx

11 J (HXX) JISC (201X) 家庭用及びこれに類する電気機器の安全性 第 2212 部 : 家庭用吸入器の個別要求事項 J603352J12(H21) JISC : J (HXX) JIS C (2

アジェンダ 1. イントロダクション 2. アナログ回路での単位 db などの見方 考え方 3. SPICEツールNI Multisim の基本機能 4. 周波数特性の検討 5. 異常発振してしまう原理 6. まとめ 2 Analog Devices Proprietary Information

EFE SERIES 基ユ板a_EFE_1 記載内容は 改良その他により予告なく変更する場合がありますので あらかじめご了承ください EFE 3 UL EN 電圧 CSA C22.2 EN (300M ) N 特長 型名呼称方法 デジタル制御回

電子回路I_8.ppt

Microsoft PowerPoint - 車載EMC規格概略2014.pptx

フィードバック ~ 様々な電子回路の性質 ~ 実験 (1) 目的実験 (1) では 非反転増幅器の増幅率や位相差が 回路を構成する抵抗値や入力信号の周波数によってどのように変わるのかを調べる 実験方法 図 1 のような自由振動回路を組み オペアンプの + 入力端子を接地したときの出力電圧 が 0 と

Microsoft PowerPoint - 9.Analog.ppt

アナログパネルメータ TRM-45,TRM-50,TRM-55,TRM-65,TRM-65C TRR-45,TRR-50,TRR-55,TRR-65,TRR-65C TRM-45 TRM-45( インデックス付 ) 形名 TRM-45 TRR-45 TRM-50 TRR-50 TRM-55 TRR-

スライド 1

INDEX PAGE. 静電気放電イミュニティ試験 3 Electrostatic Discharge Immunity Test (IEC ) 2. 放射性無線周波数電磁界イミュニティ試験 4 Radiated Radio Frequency Electromagnetic Fiel

INDEX PAGE 1. 静電気放電イミュニティ試験 3 Electrostatic Discharge Immunity Test (IEC ) 2. 放射性無線周波数電磁界イミュニティ試験 4 Radiated Radio Frequency Electromagnetic F

スライド タイトルなし

I N D E X PAGE 1. イミュニティ試験結果サマリ R-1 Summary of Immunity Test Result

Microsoft Word - H doc

<4D F736F F D B4389F D985F F4B89DB91E88250>

Microsoft Word - LTSpice入門_V104.doc

スライド 1

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft PowerPoint pptx

TITAN マルチコンタクト プローブ TITAN マルチコンタクト プローブは MPI の独自の TITAN RF プロービング技術をさらに発展させた RF/ マイクロ波デバイス特性評価用プローブです 最大 15 コンタクトまでのプロービングが可能で 各コンタクトは RF ロジック バイパス電源の

(3) E-I 特性の傾きが出力コンダクタンス である 添え字 は utput( 出力 ) を意味する (4) E-BE 特性の傾きが電圧帰還率 r である 添え字 r は rrs( 逆 ) を表す 定数の値は, トランジスタの種類によって異なるばかりでなく, 同一のトランジスタでも,I, E, 周

600 V系スーパージャンクション パワーMOSFET TO-247-4Lパッケージのシミュレーションによる解析

Microsoft PowerPoint - T72080_Exp-I-4_Report_180905

電流プローブと計測の基礎 (Tektronix 編 ) 電圧波形は違うのが当たり前 オームの法則 ( 図 1) により 電流は抵抗器によって電圧に変換することができます 電流波形を観測 するとき 電流経路に抵抗器を挿入し電圧に変換後 電圧波形として電圧プローブで観測する手法が あります この手法にお

エラー動作 スピンドル動作 スピンドルエラーの計測は 通常 複数の軸にあるセンサーによって行われる これらの計測の仕組みを理解するために これらのセンサーの 1つを検討する シングル非接触式センサーは 回転する対象物がセンサー方向またはセンサー反対方向に移動する1 軸上の対象物の変位を測定する 計測

Microsoft PowerPoint - 集積デバイス工学7.ppt

電子回路I_6.ppt

TC74HC14AP/AF

TOS_Safety_test(JEC1).book

ディエンベディングとは冶具やケーブルによる観測信号の劣化を S パラメータデータを利用して計算により補正する TX 冶具ケーブル 被測定物の出力 De-Embedding 冶具 ケーブル等の影響を受けた波形 冶具 ケーブル等の S パラメータデータ TX 被測定物の出力 冶具 ケーブル等の影響のない

elm1117hh_jp.indd

Microsoft Word - TC4011BP_BF_BFT_J_P8_060601_.doc

Microsoft PowerPoint - ch3

VF-P7-...J..9005

TC74HC4017AP/AF

TC7WT126FU

パワー MOSFET 寄生発振 振動 Application Note パワー MOSFET 寄生発振 振動 概要 本資料はパワー MOSFET の寄生発振 振動現象と対策について述べたものです Toshiba Electronic Devices & Storage Corpo

Microsoft PowerPoint - 【最終提出版】 MATLAB_EXPO2014講演資料_ルネサス菅原.pptx

EMC設備案内_2017版

アジェンダ 前編 1. イントロダクション 2. 大きさ を表すデシベル (db) と dbm の考え方 3. dbm をちょっと基本クイズで考える 4. db に関連して出てくる用語 5. 電圧と電流は伝送線路内を波として伝わっていく 後編 6. 伝送線路と特性インピーダンス 7. 電圧と電流が反

Series catalog

INDEX PAGE 1. 静電気放電イミュニティ試験 3 Electrostatic Discharge Immunity Test (IEC ) 2. 放射性無線周波数電磁界イミュニティ試験 5 Radiated, Radio Frequency, Electromagnetic

InfiniiSimによるオシロスコープの観測点移動

Microsoft Word - H26mse-bese-exp_no1.docx

INDEX PAGE. 静電気放電イミュニティ試験 3 Electrostatic Discharge Immunity Test (IEC ) 2. 放射性無線周波数電磁界イミュニティ試験 4 Radiated Radio-Frequency Electromagnetic Fiel

Microsoft PowerPoint - 4.CMOSLogic.ppt

モータ HILS の概要 1 はじめに モータ HILS の需要 自動車の電子化及び 電気自動車やハイブリッド車の実用化に伴い モータの使用数が増大しています 従来行われていた駆動用モータ単体のシミュレーション レシプロエンジンとモータの駆動力分配制御シミュレーションの利用に加え パワーウインドやサ

IBIS

NJU7291 概要 ウォッチドッグタイマ内蔵システムリセット IC NJU7291 は 電源電圧の瞬断や低下などの異常を瞬時に検出して リセット信号を発生する電源電圧監視用 IC です ウォッチドッグタイマが内蔵されており 各種マイコンシステムに フェイル セーフ機能を持たせることができます 特徴

フロントエンド IC 付光センサ S CR S CR 各種光量の検出に適した小型 APD Si APD とプリアンプを一体化した小型光デバイスです 外乱光の影響を低減するための DC フィードバック回路を内蔵していま す また 優れたノイズ特性 周波数特性を実現しています

Microsoft Word - TC4538BP_BF_J_2002_040917_.doc

Microsoft Word - IR1011_MS1472-J-00_ doc

第 5 章 推奨配線及びレイアウト 内容ページ 1. 応用回路例 プリント基板設計における推奨パターン及び注意点 Fuji Electric Co., Ltd. MT6M12343 Rev.1.0 Dec

出力電圧ランク 品名 出力電圧 品名 出力電圧 品名 出力電圧 NJU774*F15 1.5V NJU774*F28 2.8V NJU774*F4 4.V NJU774*F18 1.8V NJU774*F29 2.9V NJU774*F45 4.5V NJU774*F19 1.9V NJU774*F

INDEX PH50A280-* PAGE 1. 静電気放電イミュニティ試験 Electrostatic discharge immunity test (IEC ) E-1 2. 放射性無線周波数電磁界イミュニティ試験 E-3 Radiated, radio-frequency,

49Z qxd (Page 1)

__________________

TC74HC00AP/AF

2. λ/2 73Ω 36Ω 2 LF λ/4 36kHz λ/4 36kHz 2, 200/4 = 550m ( ) 0 30m λ = 2, 200m /200 /00 λ/ dB 3. λ/4 ( ) (a) C 0 l [cm] r [cm] 2 l 0 C 0 = [F] (2

(Microsoft PowerPoint - H-6_TIF2013_USB2_F [\214\335\212\267\203\202\201[\203h])

Transcription:

各世代静電気放電試験機の相違明確化 生産技術室名和礼成, 足達幹雄 技術支援室城之内一茂 Difference clarification of each generation electrostatic discharge simulator Yukinari NAWA,Mikio ADACHI and Kazushige JOUNOUCHI 電気 電子機器は, 他機器や自然ノイズなどからの外来ノイズにより, 誤動作を起こすことがあるため, 耐ノイズ試験が種々規格化されており, 特に静電気放電イミュニティ試験については歴史もあり, 当所と東葛テクノプラザであわせて, 新旧 3 機種の静電気放電試験機を有している その放電電流波形の相違を, 試験規格であるIEC 1) 61000-4-2に記載されている波形観測用治具を用い, オシロスコープで波形観測を行い, さらに試験機の波形パラメータである放電抵抗値や蓄積容量値の違い, リターンケーブルの接地等の条件の違いによる変化の程度を検証した 1. はじめに電気 電子機器は, 外来ノイズにより誤動作を起こすことがあるため, 耐ノイズ ( イミュニティ ) 試験が規格化されており, 製品の開発途上で活用されている 特に静電気放電イミュニティ試験については, 最も古い歴史があり, 当所でも1986 年に最初の試験機を導入している その後,1995 年にIEC61000-4-2として国際規格化され,2008 年には改訂版のIEC61000-4-2 Ed.2が発行され, 当研究所や東葛テクノプラザにおいて, それぞれに対応した試験機を導入しており, 現在, 東葛テクノプラザを含めて, 新旧 3 機種の試験機が存在している 規格には, 放電電流波形の規定があるため, その検証を目的に波形観測用治具を導入し, オシロスコープで波形観測できるようにした さらに種々の条件変化に対する波形変化の影響を検証し, 新旧 3 機種の相違を明確にした 2. 実験 2.1 波形観測用治具の整備 IEC61000-4-2で規定されている負荷抵抗器, およびIEC61000-4-2 Ed.2で規定されている電流波形観測ターゲットを導入し,1.2m 角のアルミ板に取付け, 静電気放電試験機の放電ガンを波形観測用治具の中心に対し, 接触放電し, 治具の裏側から, 同軸ケーブルを介して接続したオシロスコープで波形観測を行った なお IEC 規格の波形パラメ ータである放電抵抗値と蓄積容量値は,R=330Ω, C=150pFだが, その他の組合せやリターンケーブルの接地の有無等, 種々の条件変化のもとで波形観測を行った なお放電出力は +2kVとし, オシロスコープの入力インピーダンスは 50Ωに設定し, 実験を行った 波形観測用治具の外観と測定方法の概要を図 1, 図 2に示す また使用した静電気放電試験機とオシロスコープを表 1, 表 2に示す 図.1 波形観測用治具 波形観測用治具取付板放電ガン波形観測用治具オシロスコープ静電気放電試験機リターンケーブル 図.2 波形観測イメージ表.1 使用機器一覧 機器名 製造者 型番 導入年 ノイズ研究所 ESS-2002EX 2010 静電気放電許容 BIGBANG 5000 型 1998 度試験装置 ノイズ研究所 ESS-625S 1986 3

表.2 使用機器一覧 機器名製造者型番帯域幅 Agilent Technologies DSO9254A 2.5GHz オシロスコープ Hewlett Packard 54845A 1.5GHz IWATSU DS-5110 100MHz 2.2 種々の条件変化による波形観測表 1の新旧 3 機種の静電気放電試験機の放電波形を表 2で用意した3 機種のオシロスコープを使って確認した 条件変化のパラメータとして, 波形パラメータの元となる, 放電抵抗値や蓄積容量値の種類, リターンケーブルのグランド板への接地の有無の違いを考慮した それぞれの場合における放電電流波形データを記録し, 変化の程度を検証した 図.5 500Ω,150pF 3. 結果及び考察 3.1 放電抵抗値と蓄積容量値による違いまず, 波形パラメータの元となる放電抵抗値と蓄積容量値の種類について, 当所で所持している放電抵抗 (330Ω,500Ω,2kΩ) と蓄積容量 (150pF,330pF) の全組合せ6 種類についての波形を図 3~ 図 8に示す なおIEC61000-4-2では330 Ω,150pF が規定値である なお, 図は, 静電気試験機はBIGBANG, オシロスコープは 54845Aで, 波形観測用治具はEd.2 用ターゲットを使用した時のものである 図.6 500Ω,330pF 図.7 2kΩ,150pF 図.3 330Ω,150pF(IEC 準拠 ) 図.8 2kΩ,330pF 図.4 330Ω,330pF 3.2 リターンケーブルの接地による違い次に, リターンケーブルのグランド板への接地状態について, 接地状態と非接地状態における波形を図 9, 図 10に示す なお, 図は, 静電気試験機はBIGBANG, オシロスコープはDSO9254A5 で, 波形観測用治具はEd.2 用ターゲットを使用した時のものである 4

図.9 リターンケーブル接地 図.13 DS-5110 3.4 静電気放電試験機による違い次に, 新旧 3 機種の静電気放電試験機による放電電流波形の違いを図 14~ 図 16に示す なお, 図は, オシロスコープはDSO9254A, リターンケーブルは接地状態で, 波形観測用治具はEd.2 用ターゲットを使用した時のものである 図.10 リターンケーブル非接地 3.3 オシロスコープによる違い次に, 帯域幅の違うオシロスコープ 3 機種による放電電流波形の違いを図 11~ 図 13に示す なお, 図は, 静電気試験機はESS-2002EX, リターンケーブルは接地状態で, 波形観測用治具は Ed.2 用ターゲットを使用した時のものである 図.14 ESS-2002EX 図.11 DSO9254A 図.15 BIGBANG3000 図.12 54845A 図.16 ESS-625S 5

3.5 波形観測用治具による違い最後に, 波形観測用治具の違いによる放電電流波形の違いを図 17, 図 18に示す なお, 図は, 静電気試験機はBIGBANG, リターンケーブルは接地状態で, オシロスコープはDSO9254A を使用した時のものである IEC 規格を全く満たしてないことがわかる 3.5は, インピーダンスの違いにより, 観測される出力電圧は違ってくるが, ほぼ同じ波形形状で観測された オシロスコープの時間軸を拡大すると, 治具に起因するリンギングを確認できるが,Ed.2のターゲットの方が小さいので,Ed.1の負荷抵抗器よりも周波数特性が改善されている 以上をまとめると, 図 19の通りとなる 図.17 Ed.2 準拠ターゲット 図.19 波形変化の影響について 図.18 Ed.1 準拠負荷抵抗器 3.1から, 放電抵抗値は, 抵抗が高いほど波形の高さを抑え, 蓄積容量値は, 容量値が大きいほど波形の波尾長が長くなることがわかる これは規格に記載されている等価回路が,RC 直列回路であることからも理解できる 3.2から, リターンケーブルの接地や配線の取り回しは, 主に波形の後部に対し影響を与えることがわかる 3.3では, 帯域幅の違いにより,DS-5110 では第 1ピークが捉えられないことがわかる ( 図 13) 第 1ピークはナノ秒オーダーの鋭い立上りを持つため, 規格では,2GHz 以上の帯域幅のオシロスコープを要求しているが, デイリーチェック等, 簡易な用途においては,54845A(1.5GHz) でも問題なく使用できうる 3.4から,ESS-2002EX とBIGBANG5000 型は, ほぼ同様の波形出力であり, 第 1ピークの立上りも規格内に収まっているため, どちらの機種も,IEC6 1000-4-2 Ed.2の基準を満たしていることがわかる 一方,ESS-625Sは立上りが遅く ( 図 16), 3.6 第 1ピークの鋭さの検証規格に記載されている単純なRC 直列の等価回路では, 第 1ピークの発生は再現できないため, 放電チップやリターンケーブル自体が持つ自己インダクタンス成分と, グランド間との寄生容量成分も考慮した等価回路を作り,LTSpice 2) で過渡解析を行ったところ, 第 1ピークを再現できるようになり, 各々のパラメータ ( 抵抗 容量 インダクタンス値 ) を種々の要因と想定し, 変化させることにより, 実測との整合も得られた 図 20に等価回路, 図 21に解析の一例を示す 図.20 LTSpice 上の等価回路例 6

からの静電気放電の等価回路の定数決定法 : 静電気学会誌,36,1(2012)14-19 4) 秋山雪治, 戸澤幸大, 石田武志 :ESDガンの等価回路のモデル改良 (IEC61000-4-2 Ed. 2.0 対応 ): エレクトロニクス実装学会誌 Vol14 No.4(2011) 図.21 解析例 (Lt=13.4nH,Lc=2.3uH) 4. まとめ新旧 3 機種の静電気放電試験機の, 放電電流波形を, オシロスコープを使って確認し, 当所の現有機種 (BIGBANG5000 型 ) が, 試験規格 IEC61000-4- 2およびEd.2で規定されている, 出力電流波形に適合していることを確認した また試験機の波形パラメータである, 放電抵抗値や蓄積容量値の種類, リターンケーブルのグランドへの接地方法等, 種々の条件変化における波形観測や, 等価回路シミュレーションにより, 波形変化の要因と傾向を把握することもでき, 今後の再現性の高い試験実施の可能性が期待される IEC 1) 国際電気標準会議,IEC(International Electrotechnical Commission) とは, 電気 電子技術に関する規格を策定する国際的な標準化団体 1906 年に設立され, 約 80カ国が参加している 本部は, スイス ジュネーブ 各国の工業規格の標準化機関などが参加しており, 日本からは日本工業標準調査会 (JISC) が参加している 電気工学や電子工学, およびその応用分野, 関連産業分野を対象に国際標準を定めている LTSpice 2) リニアテクノロジー社が提供している 無料かつ素子数の制限のない SPICE 系の回路シミ ュレータ 参考文献 1) JIS C 61000-4-2:2012(IEC 61000-4-2:2008) 一般財団法人日本規格協会 2) 室田修男 : 人体帯電モデル型静電気試験機の放電電流特性電子情報通信学会論文誌 96/11 Vol.J79-B-II No.11 3) 廣瀬元, 吉田孝博, 増井典明 : 各種放電源 7