オーエスキー病 Aujeszky's disease 新生豚の急性致死性疾病, 成豚では軽症 不顕性感染耐過豚が感染源となる 宿主 : 豚, イノシシ ( 牛, 犬, 猫, ウサギ, マウス, その他の家畜 野生動物 ) 病原 : 豚ヘルペスウイルス 1 (Herpesviridae,Varicellovirus) 疫学 : 世界各地で発生 日本も常在化 ( 除北海道 ) したが 現在は減少傾向にある 感染様式 : 経気道, 経口感染 注 : 仮性狂犬病 (Pseudorabies) とも呼ばれている
潜伏期 :2~5 日 症状 : 若齢豚ほど重篤な症状を示し, 死亡率も高い 哺乳豚 : 発熱 嘔吐 急性脳脊髄炎 成豚 : 発熱 嘔吐 呼吸器症状 妊娠豚 : 死産, 流産 豚以外の動物では急性脳脊髄炎, 掻痒症が認められ, ほぼ 100% 死亡 予後 : 通常は 2~14 日で回復 ( 妊娠豚は死流産が起こる ) 神経症状や重度の呼吸器症状を起こした個体は予後不良 予防 : 生ワクチン, 不活化ワクチンを接種 ワクチンはそのワクチン抗体と野外ウイルス抗体とを識別することができるものを使用 ( 限定的に用いられている )
病理診断 : 肉眼病変は乏しい 脳膜の充出血と脳脊髄液の増量, リンパ節の充出血, 腎の点状出血, 肝の小壊死巣などが認められる 組織学的には核内封入体を伴う非化膿性脳炎, 神経炎, 扁桃炎, 肝脾副腎の巣状壊死などが主な病変 病原診断 : 発病豚の脳, 扁桃の凍結切片の蛍光抗体染色, 上記材料からのウイルス分離 ウイルスの同定 ウサギ接種試験 ( ウサギは 43~72 時間で死亡 ) 血清診断 : 中和テスト,ELISA, ラテックス凝集反応, 間接蛍光抗体法
哺乳豚では神経症状を起こすことが多い 発熱 嘔吐 急性脳脊髄炎が見られる
妊娠初期の感染では流産 後期の感染では黒子 白子などが混在する死産が多い
豚以外の動物では感染部位に瘙痒症を示し 後に致死的な急性脳脊髄炎を起こす
扁桃組織に核内封入体が形成される
伝染性胃腸炎 transmissible gastroenteritis of swine 嘔吐, 水溶性下痢, 脱水 乳汁免疫 宿主 : 豚, いのしし病原 : 伝染性胃腸炎ウイルス (Coronaviridae, Coronavirus1 群 ) 疫学 : 米国 ヨーロッパ 日本 冬季に流行する 日本では 1990 年以降激減感染様式 : 経口感染 予防 : 母子免疫か子豚への生ワクチンの経口投与 ( 生後 3 日以内 ) 治療 : なし 抗生物質の投与により症状を軽減
臨床潜伏期 :1~8 日症状 : 成豚, 子豚を問わずに感染し, 急激な水様下痢を起こし, 短時日のうちに豚舎全体の豚が罹病 食欲不振, 嘔吐を認める 母豚は泌乳の停止 予後死亡率 : 生後 5 日以内 :100% 生後 5~20 日以内 :60% 生後 20~45 日以内 :30% 成豚および離乳後の豚では 2~9 日の経過で回復 ( 死亡するものはまれ )
病理診断 : 肉眼的変化は乏しいが, 消化管に漿液性, カタル性炎症, 絨毛萎縮がみられ, 腎実質細胞に変性 病原診断 : 発病初期の子豚の小腸凍結切片について蛍光抗体法, または下痢便, 小腸乳剤を豚腎細胞,CPK 細胞に接種して蛍光抗体法を用いて抗原検出 血清診断 : 発病期と回復期のペア血清について抗体の上昇を調べる 中和テスト, 間接 HA 反応
哺乳豚は下痢による脱水状態で死亡することが多い
急激な水様性の下痢を起す
小腸の絨毛萎縮
豚エンテロウイルス性脳脊髄炎 porcine enterovirus polioencephalomyelitis 多様な神経症状を示すが, 大半は不顕性感染 重篤例では全身性の痙攣を呈し, 死亡する場合あり 宿主 : 豚, いのしし 病原 : 豚テシオウイルス (Picornaviridae,Teschovirus) 豚エンテロウイルス (Picornaviridae,Enterovirus) 疫学 : 世界各国の養豚地域に高率に浸潤日本の農場においても高率に浸潤 感染様式 : 経口感染 予防 : ワクチンなし 治療 : 対症療法
病原体豚テシオウイルス (Porcine Teschovirus: PTV) 豚エンテロウイルス -A (Porcine Enterovirus-A: PEV-A) 豚エンテロウイルス -B (Porcine Enterovirus-B: PEV-B) 新分類 旧分類 PTV PEV-1~7, 11~13 PEV-A PEV-8 PEV-B PEV-9, 10
潜伏期 : 不顕性感染が多く潜伏期 発症機序は不明 症状 : 発熱 運動失調 後躯麻痺重篤になると痙攣 昏睡 ただし大半は不顕性感染 予後 : 重篤例であれば予後不良 ( 発症後 3~4 日で死亡 ) 回復しても麻痺などが残る例もある 病理診断 : 肉眼的変化に乏しい 中枢神経の組織学的変化は特徴的 ( 一般の非化膿性脳炎像がみられ, 神経細胞の変性壊死, 神経食現象も起こる ) 病原診断 : 発病豚の脊髄脳幹, 小脳からのウイルス分離 血清診断 : 中和テスト ( 分離ウイルスの血清型決定以上の診断的価値はない )
運動失調 後躯麻痺を起こした発症豚
豚繁殖 呼吸障害症候群 porcine reproductive and respiratory syndorome (PRRS) 繁殖障害 ( 死産 虚弱児出産 ) 呼吸障害 ( 呼吸器症状 間質性肺炎 ) 宿主 : 豚, いのしし病原 : 豚繁殖 呼吸障害症候群ウイルス (Arteriviridae,Arterivirus) 疫学 : 世界各地で発生 日本にも常在感染様式 : 経気道 ( 鼻汁や呼気中に多量のウイルスが含まれる ) 感染 交尾感染症状 : 発熱, 眼瞼浮腫, 呼吸器症状, 耳 腹部のチアノーゼ ( 発生率 1% 程度 ), 妊娠豚では流産および死産 予後 :1~8 週で回復 子豚は不良であることが多い 二次感染の病原体の種類により異なる
病理診断 : 子豚では明瞭な間質性肺炎 多くの場合, 二次感染を伴うので, 病理所見は多様 病原診断 : 発病豚の血清, 肺, 扁桃, 脾, リンパ節からのウイルス分離 肺組織の免疫組織染色による抗原検出 分離材料による RT-PCR 血清診断 : 間接蛍光抗体法,ELISA, 中和テスト 予防 : 生ウイルスワクチンも市販されているが, 有効性は不十分 ( オールイン オールアウトと空舎消毒を基本とした子豚集団の早期離乳隔離育成 ) 治療 : 呼吸器病は併発感染症に対し適切な治療を行う 繁殖障害の治療法はなし
豚繁殖 呼吸障害症候群で見られる流産 胎齢が揃っているときが多いが 白子や黒子が混じるときもある
豚繁殖 呼吸障害症候群で見られる肺炎肺全域で黄褐色から赤色の硬化が見られる
間質性肺炎が見られる
高病原性 PRRS(Highly Pathogenic PRRS) 2006 年 中国において Pig high fever disease と呼ばれる高致死率の豚疾病が発生し 200 万頭以上が感染 40 万頭以上が死亡したと報告された 当該発病豚より共通して豚繁殖 呼吸障害症候群 (PRRS) ウイルスが分離された 従来の育成 肥育豚の呼吸器病や母豚に死流産などの繁殖障害を主徴とする PRRS とは異なり 離乳豚 育成 肥育豚 母豚 雄豚のどのステージにあっても高致死率を示す 高病原性 PRRS は 中国 ベトナム フィリピン カンボジア ラオスでも発生が報告されている
高病原性 PRRS では脾臓の腫大と出血が見られる
豚水疱疹 vesicular exanthema of swine 口蹄疫類似疾患で, 発熱と水疱形成を主徴とする 宿主 : 豚, いのしし,( 海生動物 ) 病原 : 豚水疱疹ウイルス (Caliciviridae,Vesivirus) 疫学 : 米国で 1932~56 年まで アイスランドで 1955 年に発生したのみ 日本は発生なし 1973 年に類似ウイルスがアシカから分離されている 感染様式 : 接触感染, 経口感染潜伏期 :18~72 時間症状 : 口蹄疫, 豚水胞病, 水胞性口炎によく似ており, 臨床的に区別できない ( 脳炎 心筋症 下痢 流産を起こしたという報告がある )
予後 :1~2 週で回復, 予後良好 病理診断 : 鼻鏡およびその周辺 口唇 口蓋 舌粘膜 蹄部の水疱とびらん 通常は内部臓器に著変なし 病原診断 : 水疱上皮, 水疱内容からのウイルス分離と電子顕微鏡観察 血清診断 : 中和テスト 予防 : ワクチンなし 感染豚の隔離と淘汰 残飯給餌の禁止 治療 : なし
Calicivirus は正 20 面体のビリオンの面部がへこんでいる
豚流行性下痢 porcine epidemic diarrhea 豚の急性下痢症 宿主 : 豚, いのしし 病原 : 豚流行性下痢ウイルス (Coronaviridae,Coronavirus 1 群 ) 疫学 : 1970 年代に英国とベルギーで発生 その後 ドイツ, フランス, オランダ, スイス, ブルガリア, タイ, 台湾, 韓国で流行 日本では 1982 年に初発 2013 年に米国で発生 オーストラリアには発生なし 日本は 1980 年代に散発的な発生 1990 年に大きな流行 2013 年に沖縄県と茨城県で発生し 全国に広がる 感染様式 : 経口感染
潜伏期 :22~36 時間 症状 : 下痢 ( 水様性 ), 食欲不振, 発熱, 泌乳停止, 稀に嘔吐 予後 : 哺乳豚 ( 生後 10 日以内 ) は高率に死亡, 成豚は良好 病理診断 : 小腸壁の菲薄化, 小腸絨毛の萎縮, 絨毛上皮細胞の空胞化, 扁平化 抗血清を用いた免疫組織化学染色で抗原陽性細胞が染色される 病原診断 : 電子顕微鏡および免疫電顕法による糞便中のウイルス確認 Vero 細胞によるウイルス分離 血清診断 : 中和テスト, 間接蛍光抗体法 予防 : 一般的な衛生対策, ワクチン接種 治療 : なし
豚流行性下痢は伝染性胃腸炎と同様に哺乳豚の水様性下痢が特徴
豚流行性下痢と伝染性胃腸炎は ともに腸粘膜上皮細胞に抗原が検出される
伝染性胃腸炎ウイルスにはコロナウイルスの特徴のある突起が見られる