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17★ 訪問看護計画書及び訪問看護報告書等の取扱いについて(平成十二年三月三十日 老企 厚生労働省老人保健福祉局企画課長通知)

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Microsoft Word - Q&A(訪問リハ).doc

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厚生労働省による 平成 30 年度介護報酬改定に関する Q&A(Vol.1) に対する 八王子介護支援専門員連絡協議会からの質問内容と八王子市からの回答 Q1 訪問看護ステーションによるリハビリのみの提供の場合の考え方について厚労省 Q&A(Vol.1) での該当項目問 21 問 22 問 23 A

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まちの新しい介護保険について 1. 制度のしくみについて 東温市 ( 保険者 ) 制度を運営し 介護サービスを整備します 要介護認定を行います 保険料を徴収し 保険証を交付します 東温市地域包括支援センター ( 東温市社会福祉協議会内 ) ~ 高齢者への総合的な支援 ( 包括的支援事業 )~ 介護予

体制強化加算の施設基準にて 社会福祉士については 退院調整に関する 3 年以上の経験を有する者 であること とあるが この経験は 一般病棟等での退院調整の経験でもよいのか ( 疑義解釈その 1 問 49: 平成 26 年 3 月 31 日 ) ( 答 ) よい 体制強化加算の施設基準にて 当該病棟に

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高齢化率が上昇する中 認定看護師は患者への直接的な看護だけでなく看護職への指導 看護体制づくりなどのさまざまな場面におけるキーパーソンとして 今後もさらなる活躍が期待されます 高齢者の生活を支える主な分野と所属状況は 以下の通りです 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師 脳卒中発症直後から 患者の

点検項目 点検事項 点検結果 リハビリテーションマネジメント加算 Ⅰ 計画の定期的評価 見直し 約 3 月毎に実施 リハビリテーションマネジメント加算 Ⅱ ( リハビリテーションマネジメント加算 Ⅰ の要件に加え ) 居宅介護支援事業者を通じて他のサービス事業者への情報伝達 利用者の興味 関心 身体

Ⅰ 通所リハビリテーション業務基準 通所リハビリテーションのリハビリ部門に関わる介護報酬 1. 基本報酬 ( 通所リハビリテーション費 ) 別紙コード表参照 個別リハビリテーションに関して平成 27 年度の介護報酬改定において 個別リハビリテーション実施加算が本体報酬に包括化された趣旨を踏まえ 利用

介護老人保健施設 契約書

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居宅介護支援事業者向け説明会

Microsoft PowerPoint - 05短時間の身体介護 調査結果概要((5)短時間の身体介護)0320

医師等の確保対策に関する行政評価・監視結果報告書 第4-1

グループ紹介 上尾中央医科グループ 上尾中央医科グループは 関東圏を中心とする病院 老健 学校 研究所などからなる関東有数の医療機関グループです * 理念 : 愛し愛される病院 施設 * 施設 : 病院 27 老健 20 学校 3 等 * 総病床数 :9,167 床 * 総職員数 :15,534 詳

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訪問リハビリテーションに関する調査の概要

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ポートフォリオ分析レポート 2018/1/12 調査名 患者満足度調査 ( 病院 - 入院 ) KPI 7. 家族や知人に当院を紹介したいと思いますか 対象集団 施設名大阪みなと中央病院 分析対象 入院環境について (1) 人数 77 名男性 37 名女性 30 名 A B C D E F G H

Clinical Indicator 2016 FUNABASHI MUNICIPAL REHABILITATION HOSPITAL

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スライド 1

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第 4 回医療情報化に関するタスクフォース 在宅医療 介護における情報連携の推進 議論のポイント 第 4 回タスクフォースにおいては 在宅医療 介護において共有すべき情報について リハビリ病院 介護施設 ケアマネジャー 在宅診療を行う医師のそれぞれの立場から 具体的な項目が挙げられるとともに 持続的

平成 24 年度診療報酬説明会リハビリテーション関連 平成 24 年 4 月 21 日 公益社団法人 高知県理学療法士協会 医療部

加算 栄養改善加算 ( 月 2 回を限度 ) 栄養スクリーニング加算 口腔機能向上加算 ( 月 2 回を限度 ) 5 円 重度療養管理加算 要介護 であって 別に厚生労働大が定める状態である者に対して 医学的管理のもと 通所リハビリテーションを行った場合 100 円 中重度者ケア体制加算

Microsoft Word 年度シニア 呼吸器内科 2014.docx

リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

認知症医療従事者等向け研修事業要領

訪問介護事業所の役割 1 訪問介護計画や手順書への記載居宅サービス計画に通院介助及び院内介助の必要性が位置付けられている場合に限り 訪問介護サービスとして 介助が必要な利用者が 自宅から病院 受診手続きから診察 薬の受け取り 帰宅までの一連の行為を円滑に行うために訪問介護員が行うべき援助内容を訪問介


第1回_建築のデザインを考える_その1

7 時間以上 8 時間未満 922 単位 / 回 介護予防通所リハビリテーション 変更前 変更後 要支援 Ⅰ 1812 単位 / 月 1712 単位 / 月 要支援 Ⅱ 3715 単位 / 月 3615 単位 / 月 リハビリテーションマネジメント加算 (Ⅰ) の見直し リハビリテーションマネジメン

営に関する基準 省令についての解釈通知および標準様式通知の別紙 4に示された 23の項目を 具備すること とされています 独自 自社のアセスメントシートを使用する場合は 項目がそろっているか再確認が必要です どのツールでも 的確な課題が導きだされることが重要です アセスメントツールを変更する場合は

0275難病情報センターのご案内_表面#4-03

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A5 定刻に評価するためには その時刻に責任をもって特定の担当者が評価を行うことが必要 となる Q6 正看護師 准看護師 保健師 助産師以外に医師 セラピストなどが評価してもよいか A6 よい ただし 医療職に限られ 評価者は所定の研修を修了した者 あるいはその者が実施した院内研修を受けた者であるこ

各論第 3 章介護保険 保健福祉サービスの充実

平成20年度春の家居宅介護支援事業所事業計画

Microsoft Word - 体裁修正 【登録後修正版】説明資料(案)

06 参考資料1 平成30年度介護報酬改定における各サービス毎の改定事項について

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利用者基本情報 基本情報 作成担当者 : 相談日年月日 ( ) 来 所 電話 その他 ( ) 初回 再来 ( 前 / ) 本人の現況在宅 入院又は入所中 ( ) フリガナ 本人氏名 男 女 M T S 年月日生 ( ) 歳 Tel ( ) 住 所 Fax ( ) 日常生活 障害高齢者の日常生活自立度

介護における尊厳の保持 自立支援 9 時間 介護職が 利用者の尊厳のある暮らしを支える専門職であることを自覚し 自立支援 介 護予防という介護 福祉サービスを提供するにあたっての基本的視点及びやってはいけ ない行動例を理解している 1 人権と尊厳を支える介護 人権と尊厳の保持 ICF QOL ノーマ

退院調整看護師に関する実態調査

書類点検等における通所介護事業所への主な指摘事項について

複数名訪問看護加算 (1 人以上の看護職員等と同 2 人以上による訪問看護を行う場合 行 ) 看護師等と訪問 看護師等と訪問 4,500 円 30 分未満 254 単位 准看護師と訪問 3,800 円 30 分以上 402 単位 看護補助者と訪問 ( 別に厚生労働省が定める場合 看護補助者と訪問 を

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一般看護師領域 キャリアレベル ミドル (Ⅲ) 退院支援看護師育成プログラム ~ 希望を地域へつなぐ ~

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資料 1( 調査票 ) 在宅介護実態調査調査票 被保険者番号 A 票の聞き取りを行った相手の方は どなたですか ( 複数選択可 ) 1. 調査対象者本人 2. 主な介護者となっている家族 親族 3. 主な介護者以外の家族 親族 4. 調査対象者のケアマネジャー 5. その他 A 票 認定調査員が 概

軽度者に対する対象外種目の 福祉用具貸与取扱いの手引き 平成 25 年 4 月 綾瀬市福祉部高齢介護課

スライド 1

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問題です 訪問看護って? 指示があるまで開けないでね!

私たちの人生 病気やケガのリスクと 経済的影響は? 50 ( 千人 ) 1, 通院入院 ( 歳 )

簡易型 ADL 評価スケール S-スコア入力支援ソフト Version.1 は宮城県気仙沼保健福祉事務所 ( 気仙沼圏域地域リハビリテーション広域支援センター ) のホームページからダウンロードして御利用ください

看護職員が看護補助者との同行訪問により訪問看護を実施する場合 利用者の身体的理由においても算定可能になりました 算定対象 1 別表第七に掲げる者 ( 厚生労働大臣が定める疾病等 2 表第八に掲げる者 ( 特別管理加算の対象者 ) 3 特別訪問看護指示書による訪問看護を受けている者 4 暴力行為 著し

リハビリテーションマネジメント加算 計画の進捗状況を定期的に評価し 必要に応じ見直しを実施 ( 初回評価は約 2 週間以内 その後は約 3 月毎に実施 ) 介護支援専門員を通じ その他サービス事業者に 利用者の日常生活の留意点や介護の工夫等の情報を伝達 利用者の興味 関心 身体の状況 家屋の状況 家

小児_各論1の2_x1a形式

< 集計分析結果 > ( 単純集計版 ) 在宅介護実態調査の集計結果 ~ 第 7 期介護保険事業計画の策定に向けて ~ 平成 29 年 9 月 <5 万人以上 10 万人未満 >


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通所リハビリテーションとは 介護保険で認定を受けられた要支援 要介護の方を対象に機能訓練 歩行訓練や日常生活訓練 脳への刺激で認知症予防などを目的に リハビリテーション ( 以下 リハビリ ) を行う通いのサービスです 通所リハビリテーション ( 以下 通所リハビリ ) は 利用者様が可能な限り自宅

届出書 体制等状況一覧表 ( 別紙 1-3) の添付書類一覧 定期巡回 随時対応型訪問介護看護 中山間地域等における小規模事業所加算 11 月当たりの平均延訪問回算定表 前年度の 4 月 ~2 月分 緊急時訪問看護加算 特別管理体制 ターミナルケア体制 サービス提供体制強化加算 (Ⅰ) サービス提供

老年看護学実習

平成30年度介護報酬改定における各サービス毎の改定事項について

平成26年度診療報酬改定 <リハビリテーション>

特別養護老人ホーム 優雅 社会福祉法人 桜寿会 ( 特別養護老人ホーム優雅 ) 福島県南会津郡南会津町田島字北下原 111 番 TEL: FAX: ( 郡山オフィス ) 福島県郡山市菜根一丁目 22 番 10 号 T

麹町 2 級以上 介護職員初任者研修 介護福祉士のいずれかあれば尚可 神田佐久間町 2 級以上 介護職員初任者研修 介護福祉士のいずれかあれば尚可 社会福祉法人新生寿会ありすの杜きのこ南麻布 麹町 2 級以上 介護職員初任者研修 介護福祉士のいずれかあれば尚可

文字数と行数を指定テンプレート

基本料金明細 金額 基本利用料 ( 利用者負担金 ) 訪問看護基本療養費 (Ⅰ) 週 3 日まで (1 日 1 回につき ) 週 4 日目以降緩和 褥瘡ケアの専門看護師 ( 同一日に共同の訪問看護 ) 1 割負担 2 割負担 3 割負担 5, ,110 1,665 6,

地域医療連携パスの概念

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要支援 介護保険負担額 (1 割月額 ) 介護保険負担額 (2 割月額 ) 要支援 1 1,843 円 要支援 1 3,686 円 要支援 2 3,779 円 要支援 2 7,557 円 サービス加算について (2 割負担の方は約 2 倍の料金となります ) 項目金額単位適用 内容 運動機能向上加算

【最終版】医療経営学会議配付資料 pptx

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平成17年度社会福祉法人多花楽会事業計画(案)

Microsoft PowerPoint - 松本第10章 ケアマネジメントに必要な医療との連携及び多職種協働の意義(松本提出)

入所利用料 NO.2 単価新 老人訪問看護指示加算 300 円 / 回 訪問看護ステーションに対し医師が訪問看護指示書を交付した場合 緊急時治療管理 認知症情報提供加算 511 円 / 日緊急的な治療管理を行なった場合 (3 日限度 ) 350 円 / 回認知症疾患医療センター等に紹介した場合 地域

通所リハ生活行為向上リハ加算 1 2,000 1 月につき 通所リハ生活行為向上リハ加算 2 1,000 1 月につき 通所リハ若年性認知症受入加算 60 1 日につき 通所リハ栄養改善加算 150 月 2 回限度 通所

Clinical Indicator 2017 FUNABASHI MUNICIPAL REHABILITATION HOSPITAL

点検項目点検事項点検結果 リハビリテーションマネジメント加算 (Ⅰ) 計画の進捗状況を定期的に評価し 必要に応じ見直しを実施 ( 初回評価は約 2 週間以内 その後は約 3 月毎に実施 ) 介護支援専門員を通じ その他サービス事業者に 利用者の日常生活の留意点や介護の工夫等の情報を伝達 利用者の興味

チーム新規登録ガイド.indd

Microsoft Word - シラバス.doc

通所リハ生活行為向上リハ加算 1 2,000 1 月につき 通所リハ生活行為向上リハ加算 2 1,000 1 月につき 通所リハ若年性認知症受入加算 60 1 日につき 通所リハ栄養改善加算 150 月 2 回限度 通所

Microsoft Word - 退院後生活環境相談員

政策課題分析シリーズ14(本文2)

2 経口移行加算の充実 経口移行加算については 経管栄養により食事を摂取している入所者の摂食 嚥 下機能を踏まえた経口移行支援を充実させる 経口移行加算 (1 日につき ) 28 単位 (1 日につき ) 28 単位 算定要件等 ( 変更点のみ ) 経口移行計画に従い 医師の指示を受けた管理栄養士又

Transcription:

STEP3 外来 地域 社会資源との連携 調整 連載最終回となる今回は, 宇都宮 1) による退院支援のプロセス3 段階のうち [STEP3: 外来 地域 社会資源との連携 調整 ] について, 連載第 2 回 ( 本誌 Vol.29,No.1) 第 3 回 ( 本誌 Vol.29,No.2) の同事例 ( 表 ) を用いて紹介する 入退院支援に関する記録の全体像を資料 1に示す STEP3とは, 患者 家族のニーズと社会資源を適合させ, 合意に基づき療養場所 療養方法を決定する段階を指す この段階では, STEP2で明らかになった課題に対する支援内容や継続する課題について, 地域関係者へ適切に引き継ぎを行う必要がある これまで3 回にわたり, 当院の入退院支援に関する記録の実際を紹介してきた しかし, 効果的な退院支援に結び付くような記録の活用については, まだ多くの課題が残されている 本稿では, 記録の活用についてのPFM(Patient Flow Management) 委員会での取り組みについても紹介する 療養環境の準備 調整 退院調整担当者の決定 地域 社会資源との連携 調整は, 患者 家族が希望する退院後の療養場所に応じて退院調整担当者を決めている 担当者は, 病状やADL に大きな変化がなく元の施設へ戻る場合は病棟 看護師, 在宅調整は退院調整看護師, 転院調整 は医療相談員 (MSW) である この事例では, 本人の 自宅に帰りたい と いう思いを家族も尊重し自宅退院となったた め, 退院調整看護師が担当した 退院前カンファレンス 退院前カンファレンスは, 患者 家族, 院内 27

と地域関係者が集まり, 退院後の生活について確認 検討を行う場である 話し合った内容は, 電子カルテの経過記録と アセスメントシート 入退院支援計画書 カンファレンス記録 のカンファレンス記録に記載する この事例では, 患者 家族にカンファレンスの目的や診療報酬上の負担について説明し, 同意を得てから日時 参加者を決定した また, 地域関係者には, 現在の病状や本人 家族の希望について事前に情報提供を行った カンファレンスは本人, 孫, 長男妻, ケアマネジャー, 訪問看護師, 主治医, 病棟看護師, 退院調整担当看護師が参加した 退院前カンファレンスの記録 ( 電子カルテの経過記録 )( 資料 2) 内容としては, 開催場所, 開催時間, 参加者, 診療報酬算定名 ( 介護支援連携指導料または退院時共同指導料 ), 退院までの課題, 話し合った内容などについて記載する この事例では, カンファレンスに参加した主治医から病状の経過説明と医療上の課題や注意 28

事項について説明され, 訪問看護師からは健康管理上必要な事項について質問があり, それらの内容について記載した 検討事項には, 退院後は一人暮らしのため夜間の排泄や入浴方法について記載した ただし, ここでは簡潔に記載し, 詳細はカンファレンス記録( アセスメントシート 入退院支援計画書 カンファレンス記録 ) 参照 とした カンファレンス記録 ( アセスメントシート 退院支援計画書 カンファレンス記録 )( 資料 3) カンファレンス記録は, 退院後も継続する課題や必要な支援について検討した結果を共有するための記録である カンファレンスに参加した病棟看護師または地域連携部門の担当者が作成し, 患者 家族 地域関係者に説明の上, 提供する ❶ID, 氏名, 生年月日 ( 自動記載 ) ❷ 退院前カンファレンスの実施日 ❸カンファレンスの種類介護支援連携指導料 退院時共同指導料の該当欄にチェックする この事例では, ケアマネジャーと訪問看護師の参加があり, 介護支援連携指導料, 退院時共同指導料にチェックを入れた ❹ 患者以外の相談者患者以外の退院後の療養にかかわる家族や地域関係者などを入力する 在宅療養でない場合などは, 施設関係者を入力する場合もある この事例では, キーパーソンに当たる孫と長男の氏名 続柄を入力した ❺ 担当者氏名医師, 担当看護師の名前を記載するほか, かかわりのある院内多職種にチェックを入れる 退院支援にかかわる認定看護師 ( 認知症看護や摂食 嚥下障害看護, 糖尿病看護など ) がいれ ばチェックを入れ, 氏名を入力する この事例では, 主治医と担当看護師の名前を入力すると同時に, 薬剤師, 栄養士, PT, OT,STにチェックを入れた ❻ 現在利用中のサービス基本情報で収集した介護保険, 障害者手帳, 難病に関する申請の有無をチェックする 介護保険サービスについては, 要介護度, 利用中のサービス, ケアマネジャーの事業所と氏名を入力する この事例では, 入院前にすでに介護保険の申請はされていたが, 介護度の認定は決定していなかったため, 暫定という形で担当ケアマネジャーから事前に情報提供があった よって, 介護保険は 申請中 にチェックすると同時に, 事業所名 担当者名を入力した また, 利用中のサービスは 訪問介護 と 福祉用具 にチェックを入れた 障害者手帳 難病申請は該当しなかった ❼ 退院にかかわる課題退院にかかわる課題について収集した情報を基に, 退院にかかわる医療上の課題 介護上の課題を整理してチェックを入れ, チェックだけでは伝わりにくい点は [ 具体的内容 ] に入力する この事例では, 医療上の課題を 有 とし, 次の項目にチェックを入れた 自己注射 創傷 リハビリ 食事 栄養管理( 減塩 塩分 6g 食) 服薬管理また, 介護上の課題も 有 として, 次の項目にチェックを入れた [ 日常生活動作 ] 食事 清潔 29

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更衣/ 整容 移動/ 移乗 排泄( トイレ, ポータブルトイレ, おむつ ) [ 手段的日常生活動作 ] 食事準備 買い物 洗濯 掃除 [ 具体的内容 ] は, 足の浮腫は治療で改善したが, 退院後は週 1 回自己注射を継続する必要があることや食事管理が重要であること, 環境調整の必要性などを入力した ❽ 退院後利用が予測される社会福祉サービス等話し合いで決定した退院後利用する社会福祉サービスにチェックを入れる この事例では, 利用する 制度 は介護保険にチェックを入れた 社会福祉サービス は, 訪問介護, 訪問入浴, 福祉用具, 在宅改修, ショートステイ, デイケア デイサービス, 配食サービスにチェックを入れた また, 夜間の排泄の問題や入浴について検討した内容を空欄に入力した 医療サービス は, 自己注射や健康管理の必要性から訪問看護, 日常生活動作の維持 向上の必要性から訪問リハビリにチェックを入れた ❾ 備考退院日程や退院までの準備, 今後の治療方針, 退院指導の進捗, 本人や家族の希望 不安などを入力する この事例では退院日程のほか, 退院後に管理が必要な事項, 退院後の通院先, 褥瘡の経過, 自己注射指導に関する進捗について入力した ❿ 患者側の参加者氏名患者側のカンファレンスの参加者名を入力する その際, 退院後のケアプランを共有することについて患者 家族の承諾を得る この事例では本人, 孫, 長男妻の氏名 続柄 を入力した ケアプランを共有することについ ては, カンファレンスの場で承諾を得た ⓫ 院内, 地域関係者の参加者 この事例では, 地域関係者はケアマネジャー と訪問看護師の参加があり, それぞれの氏名と 事業所 訪問看護ステーション名を入力した 院内参加者は医師, 病棟看護師, 退院調整担当 看護師の氏名を入力した 意思決定支援 方向性の共有 退院支援担当は, 退院後の療養を担う地域関 係機関との相談により, 退院日 退院手段 退 院時に必要な書類などを決定し, 患者にかかわ る院内の多職種に伝達する必要がある その伝 達方法として, 退院決定テンプレート ( 資料 4) を活用している 退院決定テンプレートは, 伝達 することの多い項目がチェック式になっている この事例では, 家族の迎えの都合に合わせて 退院日時を決定した また, 退院後は訪問看護 師が介入する予定であり, 看護介入の経過やリ ハビリテーションの経過を伝達するため, 看護 サマリーやリハビリ手帳の作成を病棟看護師, 理学療法士それぞれに依頼した さらに, 入院 前は患者は階段昇降がかなり大変だったが, 治 31

療により浮腫がだいぶ軽減したことから, 階段昇降は家族の介助により可能であることを確認し, 移送手段は一般のタクシーとなった これら院内の多職種で共有すべき事項について, 退院決定テンプレートに入力した 委員会での取り組みと今後の課題 PFM 委員会では, その活動において事例検討や知識習得のための勉強会を行い, 退院支援に関する課題についても話し合っている 2018 年度は各病棟から挙げられた入退院支援に関する問題点を次の3つに整理し, グループ活動による取り組みを行った 1. アセスメントシートへの記載が不十分である ( 入退院支援に必要な情報の不足 ) 2. 看護診断を立案できていないため, 退院指導の経過が分かりづらい 3. 医師からの病状説明の内容や自己決定支援についての記録が不十分である 1に対しては, アセスメントシートの中で特に記載できていない個所について, 記載例を示したものをポスターにまとめて各病棟に提示した 2に対しては, 退院指導が必要な患者 家族の状況に応じた看護診断の立案例を示した 3に対しては, 記録が不十分な要因に着目し, 退院支援への関心を高める意識改革に取り組んだ 具体的には, EveryDay 退院支援 という標語を作成し, 本日の受け持ちに退院支援対象者がいるか, 家族やケアマネジャーに確認することはないか, 他職種と積極的にコミュニケーションを図っているかなどについて呼びかけることから始めた これらの取り組みによって, アセスメントシートで空欄が多かった受容支援 自立支援欄への記載が増えたことや, 療養に関する本人や家族の希望欄が単に 自宅 ではなく, 本人 家族の家に帰りたい思いを言葉で記載すること が多くなったなど, 少しずつ取り組みの成果と しての手応えを感じている 入退院支援を充実 発展させていくために は, 今後も各病棟の PFM 委員が中心となって, 現場で発信 働きかけていくことが重要である と考える 本連載では 4 回にわたって当院の入退院支援 に関する記録を紹介した 超高齢社会を迎え, 国が推し進めている地域 包括ケアシステムの流れに沿って, 今後ますま す効率的な入退院支援が求められる 2018 年 度診療報酬改定でも, 退院支援加算から入退院 支援加算へと名称 算定要件が変更された 当 院においても, 入院前から早期にかかわれるよ うサポートセンター体制の見直しを行い, 別組 織だった地域医療連携室と患者サポートセン ターを 2019 年度, 患者支援センター として 組織統合した これまで入院してから行うことが常だった情 報収集は, 入院前から多職種でかかわれるよう な体制づくりへとシフトしはじめている 本連 載でこれまで紹介した入退院支援に関する記録 は, 退院支援のプロセスを理解しやすく導ける ように作成したものである 入院前からの情報 が適切に病棟へ引き継がれ, 入退院支援のプロ セスが継続され, 効率的な流れをサポートでき るよう, 今後も現状の問題点を整理し, 病院全 体で取り組んでいきたいと考える 32