第 3 回次世代スパコンについて知る集い 2010 年 6 月 12 日 at 日本未来館 未来の新幹線づくり 静かな新幹線車両をめざして JR 東日本研究開発センター先端鉄道システム開発センター 栗田健
JR 東日本の新幹線ネットワーク 秋田新幹線 (127.3km) ( 新在直通タイプ ) 新函館へ 新青森 八戸 東北新幹線新青森延伸 (2010 年 12 月 ) 北陸新幹線金沢延伸 山形新幹線 (148.6km) ( 新在直通タイプ ) 秋田 新庄 盛岡 上越新幹線 (303.6km) 上越富山へ長野 新潟 高崎 福島 山形 新潟 仙台 東北新幹線 (631.9km) 大宮 長野新幹線 (117.4km) 上野 東京 現在 営業キロ 新在直通タイプ 1052.9 km + 275.9 km 将来 営業キロ 新在直通タイプ 1194.4 km + 275.9 km
速度 (km/h) JR 東日本おける高速化の歩み 450 400 350 300 250 200 210km/h (1982 年 ) 国鉄 319km/h (961 系 1979 年 ) 240km/h (1985 年 ) 425km/h(STAR21 1993 年 ) JR 試験最高速度 398km/h 345.8km/h(400 系 1991 年 ) FASTECH360(2005 年 ) 320km/h (2013 年 ) 275km/h(1990 年 ) 営業最高速度 300km/h (2011 年 ) 150 100 50 東北上越新幹線開業 東北新幹線上野開業 東北新幹線東京開業 山形新幹線開業 秋田新幹線開業 長野新幹線開業 東北新幹線八戸延伸 東北新幹線新青森延伸 0 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2013 年
新幹線高速化の技術的課題 走行速度の向上駆動システム粘着集電系システム など 信頼性の確保台車及び台車部品ブレーキシステム自然災害に対する安全性 構造物強度 など 騒音の低減 騒音の低減トンネル微気圧波の低減 地盤振動の低減地盤振動の低減 環境との調和 など など 左右 上下振動の低減曲線通過時の乗心地向上車内静粛性の向上 アメニティーの高い室内 など 快適性の向上
騒音の低減
新幹線の騒音源 集電系音 車両上部空力音 車両上部からの空力音 パンタグラフ空力音 スパーク音 摺動音 先頭部空力音 構造物音 構造物の振動放射音 車両下部音 車両下部 台車からの空力音 転動音 ギア音
集電系音対策 E2 系 1000 番代搭載パンタグラフの音源探査 風 PS207 型パンタグラフ 風洞実験結果 (1kHz 帯域 )
集電系音対策新型低騒音パンタグラフ 台枠中央の部材集中を解消 主枠の片持ち支持 ( くの字 主枠型パンタグラフ ) さらに中間ヒンジ省略 見かけ上 一本の主枠に ( 一本 主枠型パンタグラフ ) (a) くの字 主枠型 (PS9037) (b) 一本 主枠型 (PS9038)
集電系音対策パンタグラフ遮音板 &1 パンタグラフ集電走行 パンタグラフ配置 使用方法 上昇パンタ 降下パンタ 上昇パンタ 降下パンタ FASTECH360S FASTECH360Z パンタグラフ遮音板 多分割すり板 走行方向 ( 下り走行の場合 ) すり板 ばね
車両下部音対策車両下部吸音構造 車両下部音の低減 多重反射音 車体下部に吸音パネルを取り付け吸音する 車体下部 吸音パネル パンチングメタル + ハニカムコア + パンチングメタル 多孔質材 吸音パネルの構造 側スカート部 床下フサギ板 車両への吸音パネルの取り付け状況
トンネル微気圧波の低減
トンネル微気圧波とは 圧縮波の形成伝播放射 Train Entrance Tunnel Exit Sound Velocity 圧縮波 p(t) 微気圧波 P(t) 微気圧波の発生メカニズム
トンネル微気圧波とは トンネル内圧力と圧力勾配 圧力 p 圧力勾配 dp/dt 時間 t 時間 t トンネル微気圧波 P の大きさはトンネル出口の圧力勾配 dp/dt ( 圧力の時間変化率 ) の最大値に比例する P (dp/dt) max
トンネル微気圧波低減の考え方 ピークを平坦にする 車両先頭部形状 緩衝工の最適化 圧力勾配 面積を減らす 車体断面積の縮小 時間 時間幅を拡大する 先頭車両のロングノーズ化 緩衝工の設置 延伸
営業車両の先頭形状比較 車体断面積 (m 2 ) 先頭部長さ (m) 200 系 12.2 4.7 E2 系 11.2 9.1 200 系 : 最高速度 240km/h (1982~) E2 系 : 最高速度 275km/h (JR 東日本の最新営業車両 )
軸対称 CFD による先頭形状の最適化 トンネル 開口部 緩衝工 列車モデル 開口部幅 開口部 CFD とは Computational Fluid Dynamics の略で 流体支配方程式をコンピュータを使って 数値的に解くこと
断面積 (m 2 ) 軸対称 CFD による先頭形状の最適化結果 E2 系 12 FASTECH360S (Stream-line) FASTECH360S (Arrow-line) 10 8 6 4 2 E2 TYPE1 TYPE2 0 0 2 4 6 8 10 12 14 16 先頭からの距離 (m)
3700 mm 3650 mm FASTECH360S のトンネル微気圧波対策 車両断面積の縮小 ( 客室スペースの確保 ) E2 系 11.2 m2 FASTECH360S 10.8 m2 先頭部長さ :16 m ロングノーズ化 先頭部長さ 16m 2 つの先頭形状 Arrow-line & Stream-line 8 号車 Arrow-line 1 号車 Stream-line E2 系の先頭部長さ : 9.1 m
E5 系量産先行車 (FASTECH 技術の主な反映項目 ) パンタグラフ パンタグラフ遮音板 E954 形式アローライン先頭形状 全周ホロ スノープラウ形状 車体 制御器 新型アクチュエーターによる動揺防止 動揺検知 センサ 台車 ブレーキ装置 車体側スカート吸音パネル 車体傾斜装置 動揺防止制御装置 ( 電気式 )
空力騒音低減のアプローチ 音源探査 知識と経験に基づく複数の対策案 風洞実験 ( トライ & エラー ) 現車試験 これまで目立っていた音源は対策済み 転換へ 風 風 空力騒音発生メカニズムの解明およびそれに基づく対策策定 1. 音源となる流体現象把握 実験では困難 CFD による流れ場の空間情報把握 2. 発生メカニズムに基づく対策案策定 CFD ( 風洞実験 ) 現車試験
スーパーコンピュータを使った 解析事例 1
車間部 ( 車両連結部 ) 空力騒音シミュレーション メッシュ数 :1 億 5000 万要素 (6 面体要素 ) コンピュータ : 地球シミュレータ ( スーパーコンピュータ ) 計算コード :FrontFlow/blue( 革新的シミュレーションソフトウェアの研究開発 プロジェクト このシミュレーションは文部科学省平成 18 年度先端大型研究施設活用プログラム 地球シミュレータ戦略活用プログラム の一環として実施した
シミュレーション結果 (1 億 5000 万点要素 ) このシミュレーションは文部科学省平成 18 年度先端大型研究施設活用プログラム 地球シミュレータ戦略活用プログラム の一環として実施した
シミュレーション結果 (2500 万点要素 ) このシミュレーションは文部科学省平成 18 年度先端大型研究施設活用プログラム 地球シミュレータ戦略活用プログラム の一環として実施した
音源分布 低周波域 このシミュレーションは文部科学省平成 18 年度先端大型研究施設活用プログラム 地球シミュレータ戦略活用プログラム の一環として実施した 高周波域 騒音予測
PSD [db/δf] 空力騒音のスペクトル ( 風洞実験との比較 ) 50 40 30 20 10 0-10 -20-30 シミュレーション (1 億 5000 万点 ) シミュレーション ( 2500 万点 ) 風洞実験 (1/20 scale model) 0 500 1000 1500 現車換算周波数 [Hz] 0 5000 10000 15000 Frequency [Hz] 高周波音まで定量予測するためにはスーパーコンピュータが必要である シミュレーションの産業利用の可能性を示すことができた
スーパーコンピュータを使った 解析事例 2
パンタグラフ舟体周りの解析 舟体 舟支え 多分割すり板 主枠 ホーン 舟支えカバー メッシュ数 : 約 7000 万要素 (4 面体要素 ) コンピュータ : 地球シミュレータ ( スーパーコンピュータ ) 計算コード :FrontFlow/blue( 革新的シミュレーションソフトウェアの研究開発 プロジェクト
パンタグラフ舟体周りの流速変動と圧力変動 流速変動 圧力変動 このシミュレーションは文部科学省平成 20 年度先端大型研究施設戦略活用プログラム 地球シミュレータ産業戦略利用プログラム の一環として実施した
スーパーコンピューティングへの期待 http://www.top500.org/ より 10 年で 1000 倍処理能力向上 1000 倍詳細な計算ができる ( 複雑形状の計算ができる ) まるごとシミュレーション 1/1000 の時間で計算できる ( 多ケースの計算ができる ) 最適設計
スーパーコンピューティングへの期待 シミュレーションと最適化 未来の新幹線車両づくりへ