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世界初! 着衣を介護するロボットシステムを開発! ~ 人がやって見せた動作を真似て被介護者に合わせ自律的に改善超高齢社会の支援ツールとして期待 ~ 概要 我が国の超高齢社会において 介護職従事者の不足が問題となる中 高齢者あるいは身体障害者のクオリティ オブ ライフ (QoL 生活の質) の向上にロボットを活用することが期待されている 奈良先端科学技術大学院大学 ( 学長 : 磯貝彰 ) 情報科学研究科数理情報学研究室の柴田智広准教授のグループは 着衣を介護するロボットの開発に成功した 衣服の着脱動作は日常における必須の生活動作であるが 高齢者や片麻痺患者にとっては 上肢の可動域や運動能力が制限されるので容易ではない さらに ロボットによる着衣支援の場合は 柔軟な物体である衣服を 複雑な形状や摩擦を持ち 姿勢も絶えず変動する被介護者と接触しながら移動させるため 最適な動作を予め計算することが困難である という技術的課題があった そこで柴田准教授らのグループは まず着衣介護の動作を人間が実際にやって見せ 次いでロボットがその動作をもとにした強化学習と呼ばれる試行錯誤的な探索を行うことにより 被介護者に適した動作をできるだけ少ない試行回数で獲得することができる双腕ロボットシステムを開発した この研究成果の詳細は 2011 年 10 月 26 日からスロベニアで開催されるヒューマノイド ( 人型ロボット ) 研究に関する最も重要な国際会議である 11th IEEE-RAS International Conference on Humanoid Robots で発表される 本研究内容についてコメント出来る方 産業技術総合研究所知能システム研究部門サービスロボティクス研究グループ松本吉央研究グループ長 ATR 脳情報研究所ブレインロボットインタフェース研究室室長森本淳 Jožef Stefan Institute, Department of Automatics, Biocybernetics, and Robotics. Senior researcher Dr. Aleš Ude 本プレスリリースに関するお問い合わせ先 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科数理情報学研究室 准教授柴田智広 TEL 0743-72-5981 FAX 0743-72-5989 E-mail tom@is.naist.jp 課題 衣服の着衣動作は 我々が生活を送る上で必ず行わなければならない重要な日常生活動作の一つである しかし 上肢の可動域や運動能力が制限される高齢者や片麻痺患者にとっては容易ではないため 衣服の着衣介護は介護者の重要な仕事の一つとして 多くの介護テキストでもその方法が紹介されている ロボットによる着衣支援を行うためには 介護動作中に柔軟物体である衣服を 複雑な形状や摩擦を持ち姿勢も絶えず変動する被介護者と接触しながら移動させるので 最適な動作を予め計算することが困難である という技術的課題が存在した

解決手法 人間の持つ高度な制御能力と ロボットの自律的学習能力を組み合わせることによって 前述の課題を解決した すなわち 着衣介護の動作を人間が実際にやって見せる (Teaching by Showing) ことは容易である しかし前述の課題があるため ロボットが人に教えられた動作をそっくり真似たとしても 着衣介護に失敗する可能性は十分にある そこで本研究では ロボットが人に教えられた ( 図 B 参照 ) 動作を出発点として 強化学習という試行錯誤的な学習アルゴリズムを適用し 被介護者に適した動作をできるだけ少ない試行回数で獲得することができる双腕ロボットシステムを開発した 強化学習のためには (1) ロボットが着衣状態を認識し (2) その状態によって表現される試行の良さを評価し (3) 試行の評価値にしたがって腕の制御方法を改善する必要がある 柔軟物体である衣服の形状は一般的には高次元空間で表現されるが それでは理論的に非現実的な学習時間が必要となる そこで 本研究では 2 つの物体間の絡まり状態を表現する空間表現 (Topology coordinates と呼ばれる ) を用い 着衣状態をわずか 3 つの変数で表現した また 強化学習によって変化させる腕の制御パラメータ数も理論的に少なく抑える必要があり 本研究では ヒトの最適軌道生成モデルとして知られる 躍度最小軌道制御法 を用いることにより 学習パラメータは各腕について1つに絞り込むことができた 実験結果 開発したロボットシステム ( 図 A) は 各 7 自由度を持つ双腕のロボットに 衣服と被介護者の絡まり状態を認識するための 光学式モーションキャプチャシステム を組み合わせて構成した 衣服には半袖 T シャツを用いた 基礎実験では 人間の代替として柔らかいタイプのマネキンを用いた 一試行の開始時の状態は 図 A に示したようにマネキンが T シャツに袖を通した状態となっている 学習実験は 人間がロボットに教示した時のマネキンの姿勢を少し変化させて行った その結果 わずか数回の試行により 着衣に成功するための腕の運動の軌道を学習することができた ( 図 C) 今後の展開 これまで QoL 向上のためのロボティクスとして 外骨格ロボットによるパワーアシストやリハビリ補助などの研究が盛んに行われてきたが それに比較すると介護作業を行うロボットの研究はまだ盛んとは言えない 日常生活に必要な機能は非常に多い上に 介護従事者不足の問題が解消される見通しも無いため 介護を代行したり補助したりするロボットのニーズは大きいと考えられる 我々の研究グループでは 既に実際の人間を被験者として実験を開始しており 良好な結果を得つつある また 衣服の素材 非介護者の姿勢や体格に応じた実験を多数行なっていく予定である 実験サンプルが多数集まれば 新しい衣服や被介護者に際しても 教示や学習の負荷がさらに減らせる可能性がある 実験サンプルから統計学習をしておくことによって 新しい衣服や被験者の組み合わせに対して どのような運動軌道が良いかをうまく予測できるようになると考えられるからである 実際に提案システムを社会で役立てるには 低価格化 安全性 そして小型化が重要な課題である 少なくとも モーションキャプチャシステムについては マイクロソフトのコントローラーを使わない体感型のセンサ Kinect のようにこれらの条件を満たしたセンサに置き換えられると期待している

図 A 開発した着衣介護ロボットシステム 図 B 着衣介護動作の教示

図 C 学習初期と学習後の着衣介護の様子