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WRC-19 における高周波数帯 (24.25-86GHz) での携帯電話周波数の確保に向けて 株式会社 NTT ドコモ 無線アクセス開発部担当部長 あたらし新 ひろゆき博行 1. はじめに 国際電気通信連合 (ITU:International Telecommunication Union) の世界無線通信会議 (WRC:World Radiocommunication Conference) では 各国が用いる携帯電話周波数をできるだけ共通化するため ITUの無線通信規則において IMT(International Mobile Telecommunication) の名称で周波数の特定を行う取組みが続けられている WRCの結果を受けて 多くの国では 地域や自国の状況を踏まえて 特定済みのIMT 周波数の中から自国の携帯電話周波数を選択することが一般的となっており 携帯電話の普及 拡大とともに周波数の共通化 ( ハーモナイゼーション ) が実現されてきている 2015 年 11 月に開催された WRC-15では IMT 周波数の追加特定の審議 ( 議題 1.1) が行われるとともに 2019 年の WRC(WRC-19) において高周波数帯 (24.25-86GHz) でのIMT 周波数の追加特定の審議を行う新議題 (WRC-19 議題 1.13) が合意された 本稿では WRC-19 議題 1.13の設立の背景や WRC-15での新議題設立の審議状況 並び にその後の ITU 無線通信部門 (ITU-R:ITU-Radiocommunication Sector) における検討状況を概説する 最後に WRC-19の審議に向けた展望を説明する 2.WRC-19 議題 1.13 設立の背景 世界的に第 5 世代移動通信システム (5G) の研究開発が活発化している このような動きを受け ITU-Rにおいても 携帯電話システムであるIMT が2020 年及びそれ以降にどのように拡張 発展していくかについて 2012 年頃から研究が開始された その研究結果は 2015 年 10 月に 勧告 ITU-R M.2380 IMT Vision Framework and overall objectives of the future development of IMT for 2020 and beyond としてまとめられている 現在は この勧告 ITU-R M.2380で示されたビジョンを具現化するため IMTの新たな無線インタフェース技術に関する標準化の検討が開始されている 本標準化は 図 1 に示すとおり 外部の仕様作成団体と連携して 2020 年に新たなITU-R 勧告案を完成させる予定で検討が進められて 図 1.ITU-R における新たな IMT 無線インタフェース技術の標準化スケジュール ITU ジャーナル Vol. 46 No. 6(2016, 6) 21

スポットライト いる なお ITU-Rでは 新たな無線インタフェース技術の勧告化に際して 図 2に示すように IMT-2020 という名称を用いることとし 作成する正式なITU-R 文書 ( 勧告 報告等 ) では 5G という名称を用いない方針となっている これは 何を判断基準にして 5G と呼ぶかについては システムを導入する各国主管庁や通信事業者の考え方 戦略等に依存しており ITU-Rが正式文書により携帯電話システムの世代の定義を示すことは望ましくないという考え方に基づいたものである 5G( あるいはIMT-2020) の研究開発では これまで携帯電話が利用してきた周波数 ( およそ 450MHz から 3-4GHz まで ) だけではなく より高い周波数 ( およそ6GHz 以上 ) にもシステム導入を可能とするための技術検討が盛んに行われている これらの研究開発のニーズに応えるため 高周波数帯においてIMT 周波数を特定することの重要性 必要性が各国で認識され WRC-15に対し多くの主管庁からWRC-19 の新議題を設立する提案が行われた 3.WRC-15 における審議状況 WRCでは 無線通信規則を改正する審議のほかに 次回及び次々回のWRCの議題を選定する審議も行われる 高周波数帯におけるIMT 周波数の追加特定の新議題提案についても WRC-15で審議が行われた この新議題の設立については WRC-19 向けに 下記六つの各地域の検討団体の全てから地域共同提案が行われた - 欧州郵便電気通信主管庁会議 (CEPT:European Conference of Postal and Telecommunications Administrations) - ロシア地域電気通信共同体 (RCC:Regional Commonwealth in the field of Communications) - アフリカ電気通信連合 (ATU:African Telecommunication Union) - アラブ周波数管理グループ (ASMG:Arab Spectrum Management Group) - 米州電気通信会議 (CITEL:The Inter-American Telecommunication Commission) - アジア太平洋電気通信共同体 (APT:Asia-Pacific Telecommunity) ただし 具体的な地域共同提案の内容は図 3に示すとおり 高周波数帯のどの周波数を検討対象とするかの考え方が大きく異なっていた また 一部の国からは地域共同提案以外の個別提案も提出された 日本からはシンガポールと共同で APT 共同提案の周波数に加えて 6-8.5GHz 10-10.5GHz 14.4-15.35GHz 25.5-29.5GHz 及び 37-39GHz の周波数を検討対象に含めるべきとの提案を行った WRC-15の審議において 特に意見調整が難航した周波数は 6-20GHz 及び 27.5-29.5GHz である 日本からは 25GHz 程度以上の周波数に検討を限定することは IMT の将来開発や経済的なシステム展開に制約が加わる可能性があり 6-20GHzの周波数レンジの中のいくつかの周波数についても 新議題の検討対象に含めるべきとの主張を行った 日本の主張に対しては アフリカ 北欧諸国の一部からの支持があったものの 6-20GHzの周波数は各国で幅広く利用されており 将来を含め IMT 周波数として確保できる可能性は低いとの意見が多数派を占め 検討対象の周波数としては合意されなかった また 27.5-29.5GHzについては 韓国 米国が 5Gの導入周波数として検討を行っており WRC-19 新議題の検討対象とすることを強く主張したものの 衛星通信に使われている周波数であるため 同様に IMT 周波数として確保できる可能性は低いとの意見が多数派を占め 検討対象周波数としては合意されなかった 図 2.IMT-2020 の名称について 22 ITU ジャーナル Vol. 46 No. 6(2016, 6)

図 3. 各地域の検討団体から提案された検討対象の周波数レンジ 図 4.WRC-19 議題 1.13 の検討対象として合意された周波数レンジ 最終的にWRC-19 議題 1.13の議題名称は to consider identification of frequency bands for the future development of International Mobile Telecommunications(IMT), including possible additional allocations to the mobile service on a primary basis, in accordance with Resolution 238(WRC-15) の表現で合意され 検討対象の周波数レンジは図 4のとおりとなった この周波数レンジは 合意された議題に付随する決議 238(WRC-15) Studies on frequency-related matters for International Mobile Telecommunications identification including possible additional allocations to the mobile services on a primary basis in portion(s)of the frequency range between 24.25 and 86 GHz for the future development of International Mobile Telecommunications for 2020 and beyond の中で ITU-Rへ要請された研究項目の一つとして記載が行われている 4.WRC-15 後の ITU-R における検討状況 図 5に WRC-19に向けた ITU-Rでの研究の進め方に関する全体の流れを示す WRC-15 後の翌週に開催された第 1 回 WRC-19 準備会合 (CPM19-1:First session of the Conference Preparatory Meeting for WRC-19) において 決議 238 (WRC-15) の中でITU-Rに要請された研究項目の進め方についての審議が行われた まずITU-R 内のどの研究委員会 / 作業部会が WRC-19 議題 1.13の責任グループとなって研究の取りまとめを行うかについてが 議論となった 主な意見としては 1IMT 関連の議題であることから 第 5 研究委員会 (SG5:Study Group 5) の中でIMT の研究を行っている5D 作業部会 (WP 5D:Working Party 5D) を責任グループにすべきとの意見と 2 幅広い周波数帯で既存業務との共用検討を行う必要があることから 関連する複数の Study Groupのもとに議題 1.13 専門の新たな合同作業部会 (Joint Task Group) を設置して責任グループとすべきとの意見 が示された 議論の結果 双方の意見の中間をとる形で SG5の中に議題 1.13 専門の新たな作業部会 (TG 5/1:Task Group 5/1) を設置し 責任グループとして検討を進めることが合意された TG5/1では 24.25-86GHzに含まれる各周波数帯において IMTと既存業務との周波数共用検討を行うとともに 第 2 回 WRC-19 準備会合 (CPM19-2) へ提出する研究 ITU ジャーナル Vol. 46 No. 6(2016, 6) 23

スポットライト 図 5.WRC-19 に向けた ITU-R での研究の進め方に関する全体図 結果の取りまとめレポート案 (CPMテキスト案 ) の作成が行われる また 以下の関連グループが TG5/1に対して必要な検討結果を2017 年 3 月 31 日までに提供し WRC-19に向けた研究をサポートすることが合意されている 1.WP 5D: 124.65-86GHzにおける IMTの周波数需要 (spectrum needs) の研究結果 2 既存業務との周波数の共用検討に必要なIMT 関連のパラメータ 2. 第 3 研究委員会 (SG3) の中の関連作業部会 : 周波数の共用検討に必要な伝搬モデル 3. その他の関連作業部会 : IMTとの周波数の共用検討に必要な既存業務のパラメータこのうち WP 5Dの1の検討に関連し 過去のWRCでの IMT 周波数の追加特定の議論では モバイルトラフィック増に対応するための周波数要求条件 (spectrum requirements) として同様の検討が行われてきた しかしながら 決議 238(WRC-15) で要請された研究では 24.25-86GHzにおける IMTの周波数需要 (spectrum needs) の算出が求められており モバイルトラフィックの増加という観点だけではなく 高周波数帯を利用する際に想定される新たな利用シーン等を踏まえた検討を行っていく必要があると考えられる また WP 5Dの2の検討については 2020 年にかけてIMT-2020として新たな無線インタフェース技術の検討が並行して行われている状況下で 周波数共用検討に必要なパラメータを 2017 年 3 月末までに先行して取りまとめる必要がある これを実現するには 高周波数帯における IMT-2020 基地局と端末の関連パラメータ ( 最大送信電力 送信帯域幅 不要発射の強度等 ) について 5Gの利用シーンを踏まえて 早期に取りまとめていくことが肝要となる また 電波伝搬を扱うSG3の関連作業部会では 周波数共用検討に必要な伝搬モデルの検討が行われることとなっている IMTのような移動通信を想定した高周波数帯の伝搬モデルは 既存の ITU-R 勧告でカバーされていない可能性もあり 議論のポイントの一つになると考えられる 図 6にWRC-19に向けたITU-Rの検討スケジュールの概要を示す 本スケジュールは CPM19-2 WRC-19の日程が確定していないため 現時点の想定である CPM19-2 及びWRC-19では各種文書の6か国語への翻訳等のための準備期間が必要となることを踏まえると TG5/1で詳細検討が可能な実効的な期間は 2017 年前半から2018 年までの約 1 年 ~ 2 年弱の期間となる 一方 WRC-19 議題 1.13では24.25-86GHzの中から 多数の周波数の検討を行っていく必要がある したがって 検討する周波数の優先度等をあらかじめ考慮しておくことも ポイントになると考えられる 24 ITU ジャーナル Vol. 46 No. 6(2016, 6)

図 6.WRC-19 に向けた ITU-R の検討スケジュール ( 想定 ) 5. おわりに WRCにおける IMT 周波数の特定は 世界共通の周波数の特定を目指すものである しかしながら WRCでの議論を経るたびに 世界各国の合意形成が難しくなり 共通の周波数特定が困難となってきている 例えば 図 7に示すとおり 直近の WRC-15 議題 1.1の審議では 一部の国のみに特定を行うケースが非常に多くなっている これは世界の国々の間で 携帯電話の普及状況等に起因した周波数需要の違いや 既存業務での周波数の利用状況の違いにも起因して 合意形成を図ることが難しくなってきているためである 一部の国のみにIMT 周波数を特定するケースが多くなることを考えた場合 今後は 1 回のWRCで世界共通の特定を理想的に目指すのではなく 主要マーケットを有する国との連携を行って まずそれらの国に対してIMT 周波数の特定を目指すという考え方もあると考えられる 一部の国に対するIMT 周波数の特定にとどまった場合でも それらの国での当該周波数の利用が進み 携帯電話のエコシステムが確立されれば 次のWRCのタイミングにおいて特定国の拡大を期待することができる 実際に WRC-07 で一部の国に特定された周波数 (694/698-790MHz 及び 3400-3600MHz) が WRC-15において特定国が拡大し ほぼ世界共通の周波数となったという事例もある ただし このような考え方を採用する場合でも IMT 周波数の特定を希望する国は 周辺国との事前調整を十分に行っておくことが重要である 図 7.WRCにおけるIMT 周波数の特定状況以上を踏まえ WRC-19に向けた残り 3 年程度の準備期間において より多くの国 地域と協調したITU-R による技術検討結果の導出や IMT 周波数の特定に対する相互理解をより一層進めていくことが重要となる WRC-15などの過去の経験を活かしつつ 日本として望ましい結果が得られるように 関係各位の協力を得ながら対応を行っていきたい (2016 年 2 月 16 日 ITU-R 研究会より ) ITU ジャーナル Vol. 46 No. 6(2016, 6) 25