課題名 実施機関 担当者氏名 平成 26 年度 1-(1) 砂質浅海域における環境及び生物多様性調査 Part Ⅱ (*PartⅡは内田執筆) 主担当 : 日本海区水産研究所資源生産部生産環境部 G 従担当 : 瀬戸内海区水産研究所生産環境部藻場 干潟 G : 瀬戸内海区水産研究所生産環境部環境動態 G : 増養殖研究所資源生産部生態系 G 協力機関 : 東京海洋大学千葉県水産総合研究センター東京湾漁業研究所愛知県水産試験場兵庫県農林水産技術総合センター水産技術センター大分県漁業協同組合中津支店熊本県水産研究センター高田宜武 阿部信一郎 ( 日水研 ) 内田基晴 手塚尚明 辻野睦 重田利拓 ( 瀬戸水研 ) 石樋由香 黒木洋明 丹羽健太郎 渡部諭史 寺本航 ( 増養殖研 ) 協力者 : 鈴木秀和 ( 海洋大 ) 1. 目的本事業における生物多様性評価手法実証調査のうち 干潟 ( 砂質浅海域 ) 調査は 漁業との関連性を考察することを容易にするためにアサリ漁場に焦点を絞って実施している アサリ漁場の調査は 統計資料を用いて 19 カ所 ( 図 1-7) を対象に行った 一方 現場調査は 213 年及び 214 年の夏季に 7 漁場 ( 有明熊本 214 中津 213, 214 廿日市 213, 赤穂 213, 214 一色 213, 214 横浜市海の公園 213, 盤津 214) を対象に実施した 統計資料を用いた調査では アサリの漁業生産量を 各々の漁場面積もしくは干潟面積で除して単位面積当たりのアサリ生産量 ( 以下アサリ生産量 ) を求めた 次に 計算されたアサリ生産量と環境因子とりわけ貧栄養度指標との関連性について相関を調べた また アサリ生産量と調査によって得られたマクロべントス量 メイオベントス個体数等の生物情報との関連性を調べた TN:19 stations ( + ) Chla:16 stations ( ) 図 1-7 統計資料調査を実施した国内 19 カ所のアサリ漁場 ( 砂質浅海域漁場 )
2. 方法 1) アサリの漁業生産量 : 農林水産統計から引用し 主に 29-211 年の平均値を用いて解析を行った 横浜市海の公園のアサリ生産量は アサリ等による漁場浄化機能調査事業報告書 ( 神奈川県環境農政局水 緑部水産課,211) を用いた 2) 干潟面積 : 海域生物環境調査報告書第 1 巻干潟 ( 環境庁自然保護局 海中公園センター 1994 年 ) を引用した 浜名湖については 資源の評価 動向予測によるアサリ漁業管理に関する研究 ( 霜村胤日人 静岡県水産技術研究所 平成 24 年度事業報告 ) に記載された漁場面積を引用した 一色干潟は 全漁場面積 26.5h( 愛知県資料 ) から 潮下帯面積 1h( 佐々木克之 海洋と生物 118:44-48 1998) を差し引いた値 16.5h を用いた 3) 漁場の全窒素量 (TN): 環境省広域総合水質調査および熊本県浅海定線データのうち 29-211 の 3 年間の平均値を使用した アサリ漁場に最も近い採水定点の値を使用した 4) 漁場のクロロフィル濃度 (Chla): 環境省広域総合水質調査および熊本県浅海定線データのうち 29-211 の 3 年間の平均値を使用した アサリ漁場に最も近い採水定点の値を使用した 3. 結果 1) アサリ生産量の概況 :19 個所のアサリ漁場における単位面積あたり生産量を比較した結果 瀬戸内海 (.1-45.1t/km 2 ) および有明海 (1.8-65.7t/km 2 ) の漁場において生産量が低いことが明らかとなった ( 図 1-8) アサリ生産量は 海域の TN 値 ( 図 1-9) 及び Chla 濃度 ( 図 1-1) と正の相関が認められた 29-211 年のアサリ生産量と TN 値との関係から得られた回帰式に瀬戸内海の 7 漁場の 1983-1985 年の同値を重ねてプロットした結果, この期間で起こった TN 値の比較的穏やかな低減 (7 漁場平均.25mg/L.186mg/L) により, アサリの生産量が激減すること ( 同平均 841t 1.3t/km 2 ) をよく説明した ( 図 1-11) 以上の結果より, 国内アサリ漁場の生産量の低減は, 漁場の貧栄養化に伴う餌料生物の低減との関連性が高いと考えられた このように環境及び生物特性に傾度をもった干潟漁場において 生物多様性評価手法の実証調査を実施した 有明海 瀬戸内海 伊勢三河湾 東京湾浜名湖東北 北海道 4563 449 968 6 アサリ生産量 t/km 2 3 図 1-8 国内干潟漁場 (19 カ所 ) におけるアサリ生産量の比較
アサリ生産性 (t km -2 ) 29-211 アサリ生産性 (t/ km 2 ) 29-211 1. 1. 1. 1. 1..1.1.1 y = 3693.6x - 641.37 R² =.6952. 1. 2. TN (mg/l, 29-211) 図 1-9 29-211 年における国内干潟漁場 (19 カ所 ) での全窒素量 (TN) とアサリ生産量の関係 TN: 環境省広域総合水質調査における漁場近傍定点における海水中 TN の値を使用 1. 1. 1. 1. 1..1.1.1 y = 159.97x - 64.88 R² =.4182 1 2 Chla 濃度 (μ g/l, 29-211) 図 1-1 国内干潟漁場 (16 カ所 ) におけるクロロフィル a 濃度 (Chla) とアサリ生産量の関係 Chla: 環境省広域総合水質調査および熊本県浅海定線調査における漁場近傍定点における海水中 Chla の値を使用
メイオベントス個体数 (ind./132cm 3 ) メイオベントス個体数 (ind./132cm 3 ) アサリ生産性 (t/ km 2 ) 29-211 29-211 1983-1985 線形 (29-211) 1. 1. 1. 1. 1..1.1.1 1983-1985 TN:.25mg/L アサリ生産量 :841t/km 2 29-211 TN:.186mg/L アサリ生産量 :1.3t/km 2 y = 3693.6x - 641.37 R 2 =.6952..5 1. 1.5 2. TN (mg/l, 29-211, 1983-1985) 図 1-11 図 1-9 のグラフ (29-211 年の値を使用 ) に 1983-1985 年における瀬戸 内海 7 漁場の値を上書きして示したグラフ TN: 環境省広域総合水質調査における漁場近傍定点における海水中 TN の値を使用 2) マクロベントス量とメイオベントスとの相関 :213 年および 214 年度の現場調査で得られたマクロベントス量 ( 湿重量 ) とメイオベントス量 ( 個体数 ) との間には そのままでは有意な相関がみられなかった ( 図 1-12a) しかし 稚貝放流を行っていて人為的な影響が強いとみなされる 廿日市 一色および盤津の調査点を除外して解析すると有意な相関がみられた ( 図 1-12b) マクロベントスの分布量は 漁獲圧の影響を受けやすいため メイオベントスの分布量をマクロベントスの生産量の評価指標として利用することが考えられる とりわけ 線虫はメイオベントスの中で主要な位置を占めるため 線虫の分布量を指標生物として利用することが考えられる 2 15 1 5 12 (a) 1 8 6 4 2 5 1 (b) 放流漁場除外 y = 7.159x + 5165.9 R² =.4234 P=.3 5 1 図 1-12 国内干潟漁場におけるマクロベントス分布量 ( 湿重量密度 ) とメイオベント ス分布量 ( 個体数密度 ) の関係 (a)7 漁場での結果 (b) 稚貝放流漁場を除外した 4 漁場 での結果 マクロベントス重量 (g wet/4 cm 3 ) マクロベントス重量 (g wet/4 cm 3 ) (a) 7 漁場 ( 熊本 中津 廿日市 赤穂 一色 海の公園 盤津 ) (b) 4 漁場 ( 熊本 中津 赤穂 海の公園 )
4. 成果の発表 活用等内田基晴 : 国内アサリ漁場における生産性と生物多様性の比較 平成 26 年度瀬戸内海区水産研究所成果発表会 (214.1) 内田基晴 辻野睦 手塚尚明 : 国内アサリ漁場の栄養塩, 生物量 多様性の比較と漁場評価手法の開発 第 3 回アサリ研究会 (215 年 2 月予定 ) 内田基晴 辻野睦 手塚尚明 重田利拓 高田宣武 丹羽健太郎 黒木洋明 石樋由香 ) 安信秀樹 宮脇大 内川純一 鳥羽光晴 アサリの生産量の低減は海域の貧栄養化と強く関連 アサリ漁場の全国比較から 平成 26 年度日本水産学会春季大会講演要旨集 (215 年 3 月予定 ) 5. 事業推進上の問題点等特になし 6. 次年度の計画 Part Ⅰで記載