Floodway の運用から見るミシシッピ川の洪水防御 北海道大学工学研究院環境フィールド工学部門水工水文学研究室清水康行 ( スライド作成 解析実施田中甫幸 ) ミシシッピ川と Cairo の場所 1
年表 1927 年 Mississippi River 大洪水 1928 年 Mississippi River and Tributaries (MR&T) Project 発足 1932 年 Floodway 完成 1937 年 Floodway 初運用 (1937 年洪水 ) 74 年間 2011 年 Floodway 運用 (74 年ぶり ) 1927 年 Mississippi River 大洪水 ミシシッピ川の堤防は 145 カ所で決壊し 70,000 km² が洪水に襲われた 一帯は 10m の深さで浸水し 7 つの州で 246 人が死亡 被害総額 4 億円以上の被害を出した 2
Mississippi River and Tributaries (MR&T) Project 発足 1927 年の Mississippi River の大洪水を受けて技術方針を変えた. 新しくできた治水計画は The Mississippi River & Tributaries (MR&T) Project と呼は れ, それによって堤防の整備, 放水路の整備, 遊水地の整備なと さまさ まな整備が進んた. MR&T フ ロシ ェクトは 1927 年の大洪水を受けて, 米国政府は Mississippi River における低地において, 包括的で統一した強固な洪水対策を掲け, かつ船舶の航行に支障をきたさないシステムを作ることとなり,1928 年に発足した. 氾濫を防く 広大な堤防や, 氾濫水をそらし堤防への影響を和らけ る放水路, 堤防の安定化, 洪水管理基準, 河川の直線化や掘削なと の河川改修, 遊水地, 排水機場なと を含む多岐に渡る対策がなされた. MR&T のフ ロシ ェクトエリアには約 400 万人の人々が住んでおり, また面積は 35,000 平方マイル (90,650 km2) と広大であり, アメリカの洪水対策の中でも空前の規模のものであった. Birds Point-New Madrid Floodway Birds Point-New Madrid Floodway とは計画高水位を超えた洪水から Cairo や Illinois にある堤防や町を守るために作られた. MR&T フ ロシ ェクトにおいて ミシシッピ川の堤防の嵩上け なと の案も挙け られたが コストが一番かからない Floodway が Cairo 周辺の治水として用いられた この Floodway によって 550,000 立方フート毎秒 (16,000 m3/s) の流量を迂回させることができ, それにより,Cairo 付近の水位を 7 フィート (2.1m) 下け ることが見積もられた. 3
ミシシッピ川の計画流量 1,810,000 [cu ft/s] = 66835 [m 3 /s] [cu ft/s] =cubic feet per second 4
Floodway の構造 5
Floodway の初運用 1937 年洪水 the Bird's Point-New Madrid floodway area near Anniston, Mo. 1937 なぜ 74 年に渡って Floodway が用いられることがなかったのか? 貯水池 ( ダム ) の治水効果のため (Kentucky Lakes, Barkley Lake) Floodway 内の住民や地主の抵抗 補償問題と用地取得 6
2011 年洪水の様子 2011 年洪水の様子 7
2011 年洪水の様子 2,011 年 Floodway の運用 8
Floodway 堤防爆発 5 月 2 日には Cairo における Ohio River の水位は 1937 年洪水の 59.5 フィート (18.1m) しのぐ,61 フィート (18.6m) に増水することが予想された.5 月 4 日もしくは 5 日には Cairo の堤防よりも少しだけ低い 63 フィート (19.2m) に達することが予想された. この水位上昇を受けて,MR&T プロジェクトの Birds Point-New Madrid Floodway の運用計画を受け, Mississippi River Commission は堤防の爆破の準備と発破を指示した. これによって,Cairo やその周辺の水位を下げ, 堤防を守ることを意図した. 工兵隊は数時間かけて液体状の発破剤を堤防の中に染み込ませ発破剤の充填作業を行った.5 月 2 日の 21 時に発破の最終準備を行い,2011 年 5 月 2 日午後 10 時を過ぎた際に, 発破部隊が 発破をかけ ( 図 -2),Cairo 南部の堤防 Birds Point, Mo., levee. に2マイル (3.2km) の穴を開けた. blowing a two-mile (3.2km) hole 破堤後 decrease 3~4 feet (0.91~1.22m) 堤防爆破によって Floodway 内に洪水流が流れ込んだ それによって Floodway は洪水した 9
衛星画像 2011.4.29 2011.5.3 Floodway 現地調査 2011.12.19@Cairo,IL 10
現在の Cairo Cairo の繁華街はかつての繁栄とはかけ離れ ゴーストタウンと化していた 伝統的な建物も多いが ほとんどが空き家となっていた 11
かつての Cairo Cairo はかつて川運の要所として繁栄していたが 川運から陸上交通へとシフトすると衰退していった 1920 年には 15,203 人いた人口は 2009 年には 2,996 人まで落ち込んだ Ohio River と Mississippi River の合流地点であるカイロは輪中によって守られており 街の入口には水門が設けられている 12
Floodway 爆破箇所の現場 爆破箇所の現場ではすでに堤防が簡易的に修復されていた 爆破箇所は 3.6km にもわたっており 全容を見ることは出来なかった 13
流された家 Floodway 内には農家の家や倉庫などの建物があるが Floodway の運用によって流された家もあった 14
家は基礎を残し 500m 程流されて 木に引っかかって止まった その他の被害 15
Flood Simulation of Floodway Governing Equations Equation of Continuity Eddy viscosity coefficient Equation of Motion Areriver bed sheer stress κ 16
Water Depth [m] Observed Water Level at Cairo, Illinois 4.28 (8:00) - 5.8 (8:00) 流量は 63400 [m3/s] として計算した Date 0 0 52 Bomber Cell 100 Grid 17
Bomber Cell 計算にあたり Bomber Cell を定義した 一定時間が経過したら障害物セルがなくなるというものである 計算結果 堤防の爆破と同時に一気に Floodway 内に洪水が入り混んでいる様子が分かる それによって ミシシッピ川の赤で示された高水が一気に下がることが確認できる 10m 0m 18
10m After 2days Floodway の運用によってミシシッピ川の赤で示された高水が小さくなっているのが確認できる 0m 水位の変化 場所にもよるが 計算ではミシシッピ川の水位は 2.5m~3.5m ほど下がった 19
衛星画像との比較 10m 0m 運用前 衛星画像との比較 10m 運用後 0m 20
実測値との比較 Point31 Point35 Point33 Point14 Point38 Point19 Point15 Point22 21
Point35 Sensor35 22
Point33 Sensor33 23
Point14 Sensor14 24
Point22 Sensor22 25
Point15 Sensor15 26
Point19 Sensor19 27
Water Level 結論 計算は下流部においては Floodway の下流の構造物の条件が正確にわかっていなかったので 背水の影響を強く受けていたが 上流部の結果は良好であった iric を用いた計算でも Floodway によって洪水位の低下が確認でき Floodway の治水的効果が確認できた 28
運用基準 Cairo Gage の水位によって判断がなされる 56 フィートに達した時 爆破のための機材が運び出される 59 フィートになったら 堤防に火薬を詰める その作業は 60 フィートに達する前に完了することとなっている Cairo の計測器の水位が 61 フィート (18.6m) に達し, またさらなる水位の上昇が予想される場合,Mississippi River Commission 委員長の指示に従い, 発破によって堤防に切れ目を入れる 補償 Floodway の地主は Floodway の運用の際に損害を受けた場合補償される ( 砂利の撤去費用 家屋の損失等 ) 具体的な賠償額については不明 29
情報公開 Facebook を通じて情報公開がなされていた 30