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照会先:厚生省生活衛生局

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長野県主要農作物等種子条例 ( 仮称 ) 骨子 ( 案 ) に関する参考資料 1 骨子 ( 案 ) の項目と種子の生産供給の仕組み 主要農作物種子法 ( 以下 種子法 という ) で規定されていた項目については 長野県主要農作物等種子条例 ( 仮称 ) の骨子 ( 案 ) において すべて盛り込むこ

(2) 主たる栽培地域 栽培方法 流通実態及び用途 主たる栽培地域現在 トウモロコシは 北緯 58 度から南緯 40 度に至る範囲で栽培可能であり 米国 中国 ブラジル アルゼンチン及びヨーロッパ諸国などを中心に 全世界で広く栽培されている ( 戸澤,2005 OECD,2003) 国連食糧農業機関

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取組の詳細 作期の異なる品種導入による作期分散 記載例 品種名や収穫時期等について 26 年度に比べ作期が分散することが確認できるよう記載 主食用米について 新たに導入する品種 継続使用する品種全てを記載 26 年度と 27 年度の品種ごとの作付面積を記載し 下に合計作付面積を記載 ( 行が足りない


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71 平成 27 年度の SBS 米の輸入入札状況 ( 単位 : 実トン ) 全体 丸米 砕米 入札回数輸入予定数量応札数量落札数量輸入予定数量応札数量落札数量輸入予定数量応札数量落札数量 第 1 回 (27 年 9 月 16 日 ) 4, ,000 2, ,000 2

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表 1. 夏作用ロールベールサイレージ対応草種の選定ポイント草種選定要素草種 1) 発芽時の平均気温モアコンディショナー耐湿性 1) 再生利用 1)2) 短期間栽培 スーダングラス 15 以上 要 スーダン型ソルガム 15 以上 要 アワ類 15 以上 不要 ヒエ類 15 以上 要 ローズグラス 1

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DNA 抽出条件かき取った花粉 1~3 粒程度を 3 μl の抽出液 (10 mm Tris/HCl [ph8.0] 10 mm EDTA 0.01% SDS 0.2 mg/ml Proteinase K) に懸濁し 37 C 60 min そして 95 C 10 min の処理を行うことで DNA


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第1 予算編成の基本的な考え方

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0.表紙


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2 3 2

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Transcription:

農業技術の進歩と効果 ( 講義メモ 9 ページの補足 ) 1. 米国の経験 ( トウモロコシ ) 1930 年代トウモロコシの主産地コーンベルト (CB) 旧 CB: アイオワ, イリノイ, インディアナ, オハイオ新 CB: ネブラスカ, カンザス 技術進歩のセット = 1 品種改良 + 2 化学肥料 ( 肥培管理 )+ 3かんがい 1 品種改良高収量品種 high yielding varieties( ハイブリッド コーン, 交雑種 ) の導入 トウモロコシの特性と交雑の意味通常, 風に運ばれた他の株 ( 個体 ) の花粉を受粉 受精して子実をつける ( 他殖性作物 ). ただし, 自己の花粉では受精できないという特性 ( 自家不和合性 ) を有しているわけではなく, 自家受粉 ( 自殖 ) も可能 しすい 自殖によって得られた種子が発芽した個体は, 両親よりも草丈や雌穂が小さくなる 自殖を繰り返すことで形質が安定化 ( 特性が揃う ) 自殖系統 : 特性は揃っているが, 草丈や雌穂が小さくなる ( 劣性の顕在化 ) 異なる自殖系統を交配 ( 雑種強勢 : 両親よりも生育が旺盛で, 収量が増大すること ) 両親の良いところを受け継いだ高収量交雑種の可能性 交雑種 ( ハイブリッド ) 単交雑品種 : 両親は ( 自殖系統 自殖系統 ) 複交雑品種 : 両親は ( 単交雑種 単交雑種 ) 親である単交雑種よりも収量などで劣る傾向 自然 ( 放任, 自由 ) 受粉品種 : 遺伝的性質が一定の範囲に収まる品種 複交雑品種 (1930 年代 ~1960 年代 ) 単交雑品種 (1960 年代後半 ~) 交雑種の開発は主に民間の種子会社による ( 交雑種の優れた性質を利用し続けるためには, 毎年, 種子を更新する必要があるため ) 自殖系統の種子生産能力( 収量 ) が低かった時期 (1950 年代まで ) には, 種子会社が単交雑品種を安価に供給できなかったので, 代わりに収量などの点で単交雑品種に比べて劣るが価格の安い複交雑品種が普及した その後, 自殖系統の種子生産能力が改良されて, 単交雑品種が普及するようになった 1

2 化学肥料と肥培管理技術 化学肥料の増投 (1940 年代中盤 ~) その後, 除草剤使用量の増加, 密植化, 機械化による適期作業の実現 3かんがい地下水の揚水によるかんがいネブラスカ, カンザス ( 旧コーンベルト4 州の西側乾燥地帯,High Plains) 1950 年代の干ばつを契機に増加 うねま 1) 畝間かんがい ( 畝と畝の間に通水する ) ゲーティド パイプやディッチによって畝の端まで配水する土壌の保水性, 圃場の均平化が必要 2) センターピボット ( スプリンクラー ) ピボットを中心に, 車輪付きアームを回転させて配水する本格的な普及は1970 年代以降傾斜地や砂地でも利用可能 作付面積の拡大効果 乾燥地 かんがい農地高収量品種の導入が可能穀倉地帯化 新コーンベルト 1960 年代後半以降, 旧コーンベルト4 州 ( 主に天水栽培 ) との単収格差が解消 米国の農業地域 ( 参考 ) (1) トウモロコシ地帯 ( トウモロコシ, 大豆 : コーンベルト ) 中西部アイオワ, イリノイ, インディアナ, オハイオ ( 旧 CB4 州 ) ネブラスカ, カンザス ( 新 CB2 州 ) (2) 小麦地帯 ( グレートプレーンズ, プレーリー ) 内陸部 1 北部 春小麦 春に播種, 秋に収穫ノースダコタ, サウスダコタ, モンタナ 2 南部 冬小麦 秋に播種, 翌年の春 ~ 初夏に収穫ネブラスカ, カンザス, コロラド, オクラホマ, テキサス (3) 酪農地帯ニューイングランド地方メーン, ニューハンプシャー, バーモント, マサチューセッツ, ロードアイランド, コネティカット, および五大湖周辺 (4) 綿花地帯 ( コットンベルト ) 南部ノースカロライナ ( 東海岸 )~テキサス 2

2. メキシコの経験 ( 小麦, トウモロコシ ) 1940 年代 1 品種改良国際トウモロコシ コムギ改良センター (International Maize and Wheat Improvement Center,Centro Internacional de Mejoramiento de Maiz y Trigo,CIMMYT) の設立 :1963 年ロックフェラー財団による高収量品種の開発プログラム 1950 年代以降, 特に小麦で成功 ( 黒さび病抵抗性, 短稈性の導入 ) メキシコ小麦, トウモロコシ交雑品種の開発 普及平均単収 : 小麦 (1940 年 :763kg / ha 1960 年 :1,341kg / ha) トウモロコシ (1940 年 :626kg / ha 1960 年 :839kg / ha) メキシコ小麦は,1960 年代中盤頃からアジア, ラテンアメリカ, アフリカでも栽培普及の過程で, 各国の現地品種との交配などによる改良を重ねた 3. アジアの経験 ( コメ, 小麦 ) 1960 年代技術進歩のセット = 1 品種改良 + 2 化学肥料 + 3かんがい + 4 資金供給 1コメの品種改良 1960 年代前半まで, 単収は日本の3 分の1 程度在来種インディカ ( 長粒種 ) の栽培草丈が細長い ( 長稈 ) 肥料の増投 倒伏肥料を多投しても増収には繋がらない 新品種導入の必要性 国際稲作研究所 (International Rice Research Institute, IRRI) の設立 :1962 年メキシコでの小麦の成功を受けたロックフェラー財団とフォード財団の共同事業 1960 年代後半に高収量品種 (IR 系統,IRRIの改良品種) を開発 IR8から普及草丈が短く ( 短稈 ), 茎が太い ( 強稈 ) 葉が直立( 効率的光合成 ) 2 化学肥料耐肥性品種 ( 多肥性品種 ) の栽培で, 肥料の増投は高収量を引き出すための条件 3かんがい雨水, 河川水を用いた在来農法からかんがい農法への転換地下水の揚水 ( 井戸 )+ 用水路によるかんがい 3

インド北西部 ( ウッタルプラディシュ, パンジャブ ) やバングラデシュなどの乾燥地 穀倉地帯化 4 資金供給新技術にアクセスするための条件低利貸付政策 ( 制度金融 ) の実施により, 新技術を採用するための資金 ( 種子や肥料などの購入資金 ) を低利で貸し付け ( 資本制限の緩和措置 ) 近年の問題米国 ( ネブラスカ, カンザス州などの中部, カリフォルニア州などの西部 ) やアジア ( インド北西部, バングラデシュなど ) など, もともと乾燥地を地下水の揚水によって穀倉地帯化した地域では, 地下水の水位低下や塩水化, 井戸の枯渇が発生し始めている また, 米国ではバイオ燃料用エタノール生産のため, 原料トウモロコシ需要が増加 トウモロコシ生産は大量の水を要するため, 地下水のさらなる減少が懸念されている 4

資料 :USDA, NASS の HP より転載. http://www.nass.usda.gov/charts_and_maps/crops_county/images/cr-ha08-rgbchor.gif 補図 1 米国のトウモロコシの生産地域 資料 : 米国農業センサス HP より転載. http://www.agcensus.usda.gov/publications/2007/online_highlights/county_profiles/index.asp 補図 2 米国地図 5

12 t/ha 10 8 単交雑品種 1960 年代中盤頃 ~ 6 4 2 自然受粉品種 ~1930 年代 複交雑品種 1930 年代 ~1960 年代 0 1870 1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 資料 :USDA, Crop Production Historical Track Records, 2009 補図 3 トウモロコシの平均単収 ( 米国 ) 資料 :Plant and Soil Sciences elibrary, University of Nebraska Lincoln (http://plantandsoil.unl.edu/croptechnology2005/pages/index.jsp) の中の K. Russell and L. Sandall, Corn Breeding: Lessons From the Past より転載. http://plantandsoil.unl.edu/croptechnology2005/userfiles/image/siteimages/b73mo17,hybridearssm.gif 補図 4 トウモロコシの雌穂 ( 自殖系統と単交雑品種 ) ( 自殖系統 B73( 左 ), ハイブリッド B73 Mo17( 中 ), 自殖系統 MO17( 右 )) 6

400 350 300 万 ha かんがい比率 ( 右軸 ) 全体 かんがい % 100 90 80 70 250 60 200 50 150 40 30 100 20 50 10 0 1947 1951 1955 1959 1963 1967 1971 1975 1979 1983 1987 1991 1995 1999 2003 2007 0 資料 :USDA National Agricultural Statistics Service, Quick Stats 補図 5 トウモロコシの収穫面積 ( ネブラスカ州 ) 7

資料 :Hastings Irrigation Pipe Company の HP より転載. http://www.hipco-ne.com/images/gated.gif 補図 6 ゲーティド パイプ 資料 : 米国農務省の HP より転載. http://www.nrcs.usda.gov/news/thisweek/images/irrigationsmal.jpg 補図 7 ディッチとサイフォン チューブ 8

資料 : 米国地質調査所 (USGS) の HP より転載. 上 :http://water.usgs.gov/ogw/gwrp/images/photos/cent_pivot_corn1.jpg 下 :http://water.usgs.gov/ogw/gwrp/images/photos/slide2.jpg 補図 8 センターピボット ( 上はネブラスカ, 下はカンザス ) 9

6 t/ha 5 4 メキシコインドパキスタン 3 2 1 0 1948-50 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 資料 :FAO, Statistics Division, World Crop and Livestock Statistics 1948-85. FAO, FAOSTAT 補図 9 メキシコ, インド, パキスタンの小麦の単収 資料 : 速水佑次郎 開発経済学 ( 新版 ) 創文社,2000,p.97 より転載. 補図 10 コメの高収量品種 ( 近代品種 ) と在来品種 10