地域における新たな民泊のあり方 中間報告 平成 28 年 11 月
目 次 目次 1 1 はじめに 2 2 民泊をめぐる現状 3 (1) 外国人来道者数の増加 3 (2) 客室稼働率の高まり 4 (3) インターネットを介した民泊サービスの状況 4 (4) 農家民宿 農家民泊の状況 8 3 民泊をめぐる課題 9 4 国の検討経過等 10 (1) 民泊サービス のあり方に関する検討会 10 (2) 規制緩和に関する動き 12 5 地域における新たな民泊のあり方 13 (1) 基本的な考え方 13 (2) タイプ別方針 14 (3) ふれあい民泊 の展開例 17 (4) 当面の取組 18 1
1 はじめに 民泊 とは 旅行者が宿泊先として 個人の自宅や別荘 マンションの空き室などに宿泊することをいう この 民泊 は 近年インターネットを介して 空き室を短期間貸したい人と旅行者をマッチングするサービスの出現により 世界各地で広がりを見せており 日本でも急速に利用者が増加している 日本では 有償で反復継続して宿泊サービスを提供する場合 旅館業法の許可が必要となるが インターネット上で紹介される 民泊 で この許可対象物件に該当するものであっても 現状では許可を受けずにサービスを提供しているものが多数あり 都市部のマンションの空き室を利用した民泊では 騒音やゴミ問題など近隣住民とのトラブルが発生して 社会問題となっているものもある 民泊 の利用が増えている背景として 急増する訪日外国人観光客による 都市部での深刻なホテル不足があり この宿泊需要に対応する新たな宿泊サービとして注目されるとともに 増加する空き家の有効活用方策としても期待が高まっており 旅行者及び地域住民の安全 安心を確保しつつ 新たな宿泊体系としての 民泊サービス の活用が適切に図られるよう 早急なルールづくりが求められている このような状況を受け 国において 関係省庁及び有識者による民泊サービスのあり方についての検討が進められ 適切な規制の下でニーズに応えた民泊を推進できるよう 既存の旅館業法とは別の法制度が構築されることとなった 道においても 国の法規制の検討状況を踏まえながら 安全 安心な管理 運営体制を備え 北海道の魅力を活かした多様な旅行ニーズに対応できる民泊を検討していくこととし 平成 28 年 4 月に庁内横断的な検討会を設置した 本報告書は 本道の民泊をとりまく状況や課題を整理し これまでの農林漁家民宿 などで蓄積してきたノウハウを活かしながら 地域における新たな民泊のあり方につ いて明示し その普及を図っていくことを目的としている 2
2 民泊をめぐる現状 (1) 外国人来道者数の増加 4 年間 (H23 H27) で約 3.5 倍の増加 今後ますます 受入環境の整備を図ることが課題北海道を訪れる外国人観光客は 近年著しく増加しており H27 年度は 200 万人を突破した 平成 23 年度の 57 万人から 4 年間で 3.5 倍となっている 外国人来道者数の推移 [ 北海道 : 観光入込客数調査 ] 3.5 倍 1541 2080 千人 1153 591 711 689 675 742 570 790 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 国は 2003 年 (H15 年 ) から ビジット ジャパン キャンペーン を実施するなど 観光立国の実現を成長戦略の柱として位置づけ 受入環境の整備を進めている 2016 年 3 月には 従来の政府目標を大幅に前倒しし 2020 年に訪日外国人数を現在の目標の 2 倍である 4,000 万人に 2030 年には 6,000 万人に増やす新たな目標値が示されたことを受け さらなる受入環境の整備が課題となっている 参考訪日外客数の推移 [ 日本政府観光局 (JNTO)] 目標値 6,000 万人 千人 目標値 4,000 万人 21,359 6,377 8,708 10,983 14,670 H23 H24 H25 H26 H27 H32(2020) H42(2030) 3
(2) 客室稼働率の高まり 全道平均は ハイシーズンで全国平均を上回り 時期による変動が大きい 札幌市のハイシーズンでは 80% を超えるなど都市部での稼働率が高い全道平均の客室稼働率は 2 月と夏季シーズン (6 月 ~9 月 ) に全国平均を上回って客室稼働率が高くなっており 閑散期との変動が大きいのが特徴となっている 札幌市のハイシーズンでは 80% を超えるなど 都市部での稼働率の高さが平均を引き上げている 100 % 宿泊施設の客室稼働率の比較 [ 宿泊旅行統計調査 ] ( 従業者数 10 人以上の施設 ) 90 80 70 60 50 40 札幌市全道全国 (3) インターネットを介した民泊サービスの状況 1 国内の状況 [Airbnb データ ] 国内で Airbnb への登録は約 2 万 6 千件 うち東京都などの 5 都道府県で 82% 北海道は全国第 4 位の登録数 様々な国の民泊マッチングサイトが存在世界最大手の民泊マッチングサイト Airbnb ( エアビーアンドビー ) は 2016 年 3 月時点で 日本を含む世界 190 カ国 3 万 4 千都市 200 万物件が登録され 6 千万人が利用している 2016 年 4 月 1 日時点における登録物件に関する都道府県別の割合では 東京都が 38%(11,965 件 ) 大阪府が 26%(8,341 件 ) 京都府が 11%(3,618 件 ) 北海道が 3% (1,034 件 ) 福岡県が 3%(950 件 ) と 5 都道府県で約 82% を占め 北海道は全国 4 番目となっている 4
Airbnb 登録物件の都道府県割合 2016.4.1 時点 [Airbnb 公表データより ] 北海道 3% 福岡県 3% その他 18% 東京都 38% 京都府 12% 大阪府 26% Airbnb 以外にも アメリカ ヨーロッパ 中国など世界各国のマッチングサ イトが存在するほか 日本国内を対象としたサイトも開設されている 主な民泊サイト 本社所在地サイト名アメリカ Airbnb( エアビーアンドビー ) FLIPKEY( フリップキー ) HomeAway( ホームアウェイ ) VacationRentals.com( バケーション レンタル ドットコム ) ヨーロッパ Wimdu( ウィムドゥ )[ ドイツ ] 9flats( ナインフラッツ )[ ドイツ ] HouseTrip( ハウストリップ )[ スイス ] アジア大魚 ( フィッシュトリップ )[ 中国 ] 途家網 ( トゥジア )[ 中国 ] 自在客 ( ジザイケ )[ 中国 ] Roomorama( ルーモラマ )[ シンガポール ] 日本 STAY JAPAN とまりーな Roomstay( ルームステイ ) 5
2 道内の状況 [AirLABO データ ] 全道の登録物件数は 1 年間で 3.7 倍と急増 物件タイプは マンション アパートが少なく 一軒家 民宿が多い 札幌市内と倶知安町 ニセコ町などのスキーリゾート地域の登録数が多い国内のAirbnbの物件情報を独自に収集し 情報提供を行っている AirLABO(http://airlabo.jp) のデータをもとに道内の状況をみると 2015 年 7 月から 2016 年 6 月の 1 年間に全道の登録物件数は 3.7 倍となっている これは全国の 4 倍とほぼ同じく 急速に増加している 直近 1 年間の Airbnb の登録物件数の伸び ( 北海道 ) [ AirLABO データ (H28.6.22) より ] 1400 1200 1173 件 1000 800 全道 3.7 倍 600 400 311 200 0 H27 年 7 月 H28 年 6 月 40,000 35,000 直近 1 年間の Airbnb の登録物件数の伸び ( 全国 ) [ AirLABO データ (H28.6.22) より ] 合計 38,377 件 30,000 25,000 20,000 全国 4 倍 その他, 23,052 15,000 10,000 5,000 0 合計 9,419 その他, 5,127 東京都, 3,981 H27 年 7 月 北海道, 311 東京都, 14,152 H28 年 6 月 北海道, 1,173 6
民宿の割合が高い 物件のタイプ別割合 ( 全道 ) [ AirLABO データ (H28.6.22) より ] 民宿 6% その他 9% 一軒家 29% マンション アパート 56% 物件のタイプ別割合 ( 全国 ) [ AirLABO データ (H28.6.22) より ] 民宿 3% その他 5% 一軒家 21% 全道の物件タイプは 全国と比べて マンション アパートの割合が低く 一軒家 マンション アパート 71% 道内で登録物件が多い市町村は 札幌市 63%(732 件 ) 倶知安町 11%(126 件 ) ニセコ町 5%(54 件 ) 小樽市 3%(35 件 ) 函館市 2%(27 件 ) となっている 札幌市が全体の6 割と 大半を占めるほか 倶知安町 ニセコ町などのスキーリゾート地域の登録数が多いことが特徴となっている 道内市町村別割合 [ AirLABO データ (H28.6.22) より ] 小樽市 3% ニセコ町 5% その他 17% 函館市 2% 倶知安町 11% 札幌市 62% 7
(4) 農家民宿 農家民泊の状況 農家民宿は H17 年から大きく増加 延べ利用者数の6 割は教育旅行での利用農家民宿は 平成 15 年から旅館業法の面積要件の撤廃などが行われたことから 平成 17 年から大きく増加している 教育旅行 など生活体験等を行い無償で宿泊させる農家民泊については 平成 23 年に旅館業法の適用除外が明確になったことなどから近年増加している ( 教育旅行 : 小学校 中学校 高校の学校行事として位置づけられている旅行とし 修学旅行や農業体験学習などをいう ) 件 1200 農家民宿 農家民泊施設数の推移 [ 北海道 : グリーン ツーリズム関連施設調査 ] 1000 800 600 400 452 625 705 718 200 44 46 116 196 223 265 335 411 454 456 469 475 0 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 農家民泊教育旅行など生活体験等を行い無償で宿泊させるもの ( 旅館業法適用外 ) 農家民宿農山漁村余暇法に基づく農林漁業体験民宿 ( 旅館業法の許可有り ) 農家民泊については H24~ 調査実施 また 平成 26 年の本道における農家民宿 農家民泊に宿泊した延べ人数は 35,750 人で その利用の 6 割は 教育旅行の利用となっている 農家民宿 農家民泊の利用延べ人数 (H26) [ グリーン ツーリズム関連施設調査など ] 民泊 ( 教育旅行 ), 8,779, 24% 民宿 ( 一般旅行 ), 14,206, 40% 民宿 ( 教育旅行 ), 12,765, 36% 8
3 民泊をめぐる課題 民泊仲介サイトの一般での利用が広がるも 無許可物件の掲載など違法な状況 都市部では 騒音やゴミ出しなどのマナーに関する近隣住民とのトラブルが発生 地方では 人口減少 高齢化などが進み 空き家が増加するなどの課題が顕在化 インターネット上で民泊を貸したい人と借りたい人をマッチングするサービス ( 以下 民泊仲介サイト という ) が国内においても普及しており 掲載されている中には 本来必要な旅館業の許可を得ていない物件も多数掲載されるなど 違法な状況のまま 一般での利用は広がっている また 民泊仲介サイトの運営など 宿泊サービスの利用に関する新たな形態に現行法が対応しておらず 民泊サービスの適正な実施を図るためのルール整備が追いついていない状況である 道保健所における指導件数は H26 年度 5 件 H27 年度 46 件 H28 年度 (7 月末時点 )41 件と増加しているが 民泊仲介サイトでは 民泊営業を行っている場所などが特定できない場合もあり 実態を把握するのが困難である 都市部においては 外国人観光客の増加に伴い ハイシーズンでは宿泊施設が不足するとともに 宿泊価格の高騰が生じている 宿泊需要の高まりから 民泊をビジネスとして注目する動きもあり 共同住宅の複数の空き室を所有して民泊サービスを提供する者や 民泊管理を一括して請け負う空き家所有者向けのサービスも発生している 札幌市内のマンションの空き室を利用した民泊において 騒音やゴミ出しなどのマナーに関する近隣住民とのトラブルが発生しているケースがあるほか 都市部では特に 感染症の蔓延やテロ等の悪用などへの危険性について指摘されている なお 東京 大阪 京都では旅館業法の無許可営業により業者が摘発されているケースもある 地方においては 人口減少 高齢化が進み 空き家の増加など 地域の活力不足が課題となっている また 全道的には 外国人来道者数は増加しているが その滞在地は主要な観光都市にとどまっており 地方への観光客誘導が求められるが 宿泊の受け皿が十分でない 安定して経営する事業者がいないといった課題もある 9
4 国の検討経過等 (1) 民泊サービス のあり方に関する検討会平成 27 年秋以降 内閣府の規制改革会議及び関係省庁による検討会などにおいて 民泊の規制緩和と法整備について議論され 方向性が取りまとめられた 日本再興戦略 2015 (H27.6.30 閣議決定 ) シェアリングエコノミー等の新たな市場の活性化 規制改革実施計画 (H27.6.30 閣議決定 ) インターネットを通じ宿泊者を募集する一般住宅 別荘等を活用した宿泊サービスの提供 内閣官房 内閣府 厚労省 観光庁 IT の利活用に関する制度整備検討会 IT を活用した新たなサービス ( シェアリングエコノミー ) に対応した制度整備の検討 H27.10.30 第 Ⅰ 期検討の方向性 H27.12.10 第 Ⅰ 期中間整理 ( 案 ) H28. 2.22 第 Ⅱ 期中間整理 ( 案 ) 国家戦略特区 外国人滞在施設経営事業 H28.1 東京都大田区で条例施行 H28.4 大阪府で条例施行 シェアリングエコノミー検討会議 民間団体等による自主的なルール整備の検討 H28.7.8 検討会議について H27.7.25 事業者からのヒアリング H28.8.3 事業者からのヒアリング H28.8.31 自治体からのプレゼン 規制改革会議 シェアリングエコノミーの推進 H27.10.05 関係省庁からヒアリング H27.11.19 ホームシェアの必要性 H27.12.21 民泊サービスの課題 H28. 4. 8 民泊サービス のあり方検討会の中間整理 H28. 5.19 規制改革に関する第 4 次答申 地域活性化 WG H27.10.29 民泊をめぐる現状 H27.11. 9 民泊関連規制 H27.11.25 民泊事業者からヒアリング H27.12. 9 関係省庁ヒアリング H27.12.22 IT の利活用に関する制度整備検討会中間整理 H28. 1.15 マンション管理組合 旅行業界の状況 H28. 2. 5 早急に取り組むべき課題と中期的な課題とを整理 H28. 4. 5 民泊協会ヒアリング 民泊サービス のあり方に関する検討会 関係省庁による民泊の実態の把握等を行った上で旅館 ホテルとの競争条件を含め 幅広い観点から検討し結論を得る H27.11.27 議論の背景 論点の整理 H27.12.14 民泊事業者 関係団体からヒアリング H27.12.21 民泊事業者 関係団体からヒアリング H28. 1.12 民泊事業者からヒアリング H28. 1.25 行政庁からのヒアリング H28. 2.29 早急に取り組むべき課題 中期的に検討すべき課題 H28. 3.15 民泊サービス のあり方について ( 中間整理 ) H28. 4.12 民泊事業者からヒアリング H28. 4.22 中期的に検討すべき課題 H28. 5.13 民泊サービスの制度設計 H28. 5.23 規制改革に関する第 4 次答申 H28. 6.10 必要な法整備 H28. 6.20 民泊サービス のあり方について ( 最終報告書 ) 日本再興戦略 2015 (H28.6.2 閣議決定 ) 民泊サービスのルール整備等 規制改革実施計画 (H28.6.2 閣議決定 ) 住宅を活用した宿泊サービスの法制度を整備 既存の旅館業法とは別の法整備を検討 (2017 年通常国会提出予定 ) 10
規制改革実施計画 (H27.6.30 閣議決定 ) において インターネットを通じ宿泊者を募集する一般住宅 別荘等を活用した民泊サービスについては 関係省庁において実態の把握等を行った上で 旅館 ホテルとの競争条件を含め幅広い観点から検討し 結論を得る ( 平成 27 年検討開始 平成 28 年末結論 ) と位置づけられたことを受け 平成 27 年 11 月に厚生労働省及び観光庁所管による 民泊サービス のあり方に関する検討会 が設置された 有識者や業界団体の代表者などを構成員とし 事業者からのヒアリングなど 状況把握や課題の整理を行い 平成 28 年 6 月 20 日に 民泊サービスの制度設計を示した最終報告書をまとめている 報告書では 旅館業法とは別の法制度を整備するとしており 平成 29 年の通常国会への提出をめざすとされている 民泊サービス のあり方に関する検討会最終報告書の概要 方向性 旅館業法等の現行制度における規制のあり方を見直し 仲介事業者等に対する規制を含めた制度体系の構築 対象となる民泊 住宅を活用した宿泊サービスの提供 一日単位で利用させる 一定の要件 ( 年間提供日数の上限 180 日以下 ) の範囲内で有償かつ反復継続するもの ( 一定の要件を超えるものは 旅館業法の営業許可とする ) 住宅専用地域でも実施可能 ( ただし 地域の実情に応じて条例等により実施できないこととすることも可能 ) 規制内容 家主居住型家主不在型 ホストが住宅内に居住 ( 住宅提供者による管理 ) 行政庁への届出 名簿の作成 備え付け 標識の掲示 行政庁への情報提供など ホスト不在期間中の貸出 ( 管理者への委託 ) 管理者の行政庁への登録 行政庁への届出 名簿の作成 備え付け 標識の掲示 行政庁への情報提供など 行政庁 報告徴収 立入検査 業務停止命令 登録取消し等の処分 法令違反への罰則 仲介 事業者 行政庁への登録 民泊であることをサイト上に表示 取引条件の説明義務 行政庁への情報提供など 行政庁 報告徴収 立入検査 業務停止命令 登録取消し等の処分 法令違反への罰則 公表 11
(2) 規制緩和に関する動き イベント民泊 小規模な簡易宿所の客室面積 玄関帳場の設置に関する緩和 東京都大田区 大阪府で特区民泊を運用 道では 国及び独自の緩和措置により農家民宿や教育旅行を推進 旅館業法関係 1イベント開催時の取扱い (H27.7.1 通知 ) 年 1 回 (2~3 日程度 ) のイベント開催時に 開催地の自治体の要請等により自宅を提供する場合 業 に当たらない 2 簡易宿所の面積要件の緩和 (H28.4.1 施行 ) 客室延床面積の基準について 33 m2以上としていたところ 宿泊者の数を 10 人未満とする場合には 3.3 m2 宿泊者の数以上に緩和 3 玄関帳場設置の緩和 (H28.4.1 施行 ) 宿泊者の数を 10 人未満とする場合には 宿泊者の本人確認や緊急時の対応体制など一定の管理体制が確保されることを条件として 玄関帳場の設置を要しない 国家戦略特区 外国人旅客の滞在に適した施設 ( 民泊施設 ) を 賃貸借契約に基づき 条例で定めた期間 (6 泊 7 日 ~9 泊 10 日以上 なお H28.10.31 から 2 泊 3 日以上 ) 使用させ 宿泊サービスを提供する事業については 国家戦略特区内において旅館業法の規定が適用されない 東京都大田区 大阪府 大阪市が特区制度を実施しており 認定事業者は 大田区 26 件 大阪府 4 件 (H28.11.1 時点 ) 農林漁家民宿関係 1 国における規制緩和 (H15~H28) 客室床面積の緩和 農業体験サービスを旅行業の対象外とする取扱の明確化 消防用設備等の設置基準の柔軟な対応 建築基準法上の取扱の明確化 食品衛生法上の取扱の緩和 教育旅行受入における旅館業法適用除外の取扱の明確化 農林漁業者以外の者への適用拡大など 2 道における独自の取組 北海道チャレンジパートナー特区 (H19) 計画認定を受けた市町村で 計画に位置づけられた農業体験民宿については 営業用厨房設置の不要などの緩和措置 教育旅行受入の取扱 (H24) 教育旅行の受入の安全性確保のための取り決めとして 地域協議会等の組織に関すること 安全 衛生の確保に関すること 受入実績の把握と個人情報の管理に関すること 食事の提供に関すること 体験学習の対価に関することを規定し 通知 12
5 地域における新たな民泊のあり方 (1) 基本的な考え方 旅行者が安心 安全に宿泊できる環境を備えつつ 本道の暮らしや文化を伝え 道民との交流を深める契機となるものであること 道民の生活環境や既存の宿泊サービスと調和し 本道の魅力を活かしたまちの活性化や交流人口の増加など地域に潤いをもたらす一助となるものであること 民泊サービスは 住宅を活用した宿泊サービスであり 地域に住む人と同じ環境の中に滞在し 人や暮らしと直接触れあうことができることが特徴としてあげられる これは 旅行者に 北海道の魅力を知ってもらい 道民との交流を深める良い機会となるものである 本道においては これまでも 農山漁村の自然や文化に触れ そこに暮らす人々との交流を促進するグリーン ツーリズムの推進を図ってきたところであり 農山村漁家民宿に関しては 道のチャレンジパートナー特区制度を活用して規制緩和を進めるなど 全道各地に取組が広がっている 本道は 雄大な自然を背景とする美しい景観や 豊かな食文化 独自の気候風土など 多様なツーリズムの展開が可能であり 民泊サービスの活用により これまで宿泊施設が十分でなかった地域など 滞在型の観光地として認識されていなかった地域においても 新たな観光地としての魅力を構築できる可能性がある 既存のホテル 旅館などの宿泊施設との役割分担を図り 宿泊サービスに多様な選択肢を与え 新たな宿泊需要へとつなげることで 地域の活性化に結びつくものが求められている 一方で これまでホテルや旅館などの立地が規制されていた住居専用地域においても 今後は民泊サービスの提供が可能となってくる ゴミ捨てのマナーや騒音など近隣住民とのトラブルの発生など 民泊への不安を感じている住民や地域もあり 民泊が地域に受け入れられ 共存を図っていくためには 生活する人々の暮らしと調和し お互いが気持ちよく過ごすことができるルールづくりが必要とされる 国の検討においても 衛生管理面 テロ等悪用防止などの安全性の確保 地域住民及び宿泊者とのトラブル防止 急増する宿泊需要や空きキャパシティの有効活用など地域活性化への対応があげられており 今後整備される民泊の法制度の内容を遵守する必要がある これらを踏まえ 地域における新たな民泊の基本的な考え方を 既存の資源をうまく活用するという シェアリングエコノミー の理念のもと 本道を旅行する方々が安心 安全に宿泊できる環境を備えつつ 本道の暮らしや文化を伝え 道民との交流を深める契機となるものであること また 道民の生活環境や既存の宿泊サービスと調和し 本道の魅力を活かしたまちの活性化や交流人口の増加など 地域に潤いをもたらす一助となるものであることとし 推進を図る 13
(2) タイプ別方針国の 民泊サービス のあり方に関する検討会 最終報告書では 民泊の規制体系として 家主居住型 と 家主不在型 に区別した上で 適正な規制を課すことを提言しており 本報告書においても その区分を用いて整理する なお 家主不在型 については 既存の資源を有効活用し共有する シェアリングエコノミーの概念に基づく空き家活用タイプを基本とするが そのうち 地方の空き家などを活用し地域との交流を図るものを ホームステイ ファームイン ( 農家民宿 ) などのホストとの交流を図るものとあわせ ふれあい民泊 タイプと分類する また 家主不在型 のうち マンション の空き室などを活用するなど 居住エリアにおいて民泊サービスを提供するものについては まちなか民泊 タイプと分類することとし この2つのタイプについて特徴と課題を整理し 方針を設定する 民泊の分類 新法に基づく民泊など 住宅を活用した宿泊サービスの提供 年間提供日数の上限など一定の要件の範囲内でサービス提供を行うもの ( その他 フロント設置を緩和された簡易宿所 農山漁村余暇法に基づく農林漁家民宿のほか 農家民泊やイベント民泊も含む ) ホテル 旅館 簡易宿所など 旅館業法の許可を受けた事業者による宿泊サービスの提供 フロントサービスの提供があるほか 宿泊施設として一定の整備基準を満たしている ホテル等のタイプによっては 食事サービス 大浴場付きなど ニーズに合わせたサービスを受けることができる 家主居住型 家主不在型 ホームステイ ファームインなど 地方の空き家の活用など マンション 空き室の活用など 主に地方部 ふれあい民泊 タイプ ホストとの交流や 文化 暮らしの体験など 地域とのふれあいを楽しむ 主に都市部 まちなか民泊 タイプ ルールを守った利用で 居住環境との調和を図る 管理規約で民泊の利用を許諾しているもの 14
ふれあい民泊 タイプ [ ホームステイ ファームイン ( 農家民宿 ) 地方の空き家活用など ] 方針 北海道の文化や人との交流を図るホームステイ 農村の暮らしや農業とのふれあいを体験できる農家民宿などをさらに推進していく 空き家等を活用した民泊により まちの活性化や交流人口の増加など 地域が潤うしかけとなるよう 地域の実情に応じた取組を進める 特徴 1( ホームステイ ファームイン ( 農家民宿 ) など ) 外国人留学生などが日本の文化や暮らしを体験するホームステイは 国際交流の関係機関を中心に全道各地で取組が行われ 留学生が道民との交流を図る貴重な機会となっている 農家民宿 農家民泊の取組は近年増加しており 本道ならではの豊かな自然の中で営まれる農業とのふれあいに対するニーズの高さを反映していると考えられる 民泊は 文化 暮らしの体験や人との交流 新しい価値観を学ぶことを目的とした新しい旅行のスタイルとして若い世代を中心に認知されており ゲストとの交流を目的に民泊の運営をはじめる人やホスト同士のネットワーク構築など広がりを見せている 特徴 2( 地方の空き家活用など ) 急増する訪日外国人旅行者をはじめとする観光客を主要観光地から地方へ分散させ 地方創生につなげる政策が進められており 地方における宿泊需要への対応が必要とされている 中国人観光客の主たる訪日目的が買い物から 食や文化の体験に移りつつあると言われており 民泊がそのニーズに対応できるサービスとしても注目されている 課題の例 受入農家にとっては 受入負担が大きい 十分な PR ができないなどが課題 近年 短期の外国人留学生が増加しており ホームステイの受入先や滞在先が不足 民泊に利用できる空き家の把握と権利関係の整理が必要 民泊管理の担い手 運用のしくみが必要 地域の観光情報の効果的な発信 対応策の例 農家民宿 農家民泊に関する地域ぐるみの受入体制づくり 多様な組織によるサポート体制の構築 空き家を民泊として運営する仕組みの構築 運営母体として 観光協会 商工会 地域協議会 ホテル 旅館などが考えられる 地域の活性化と結びつけた連携体制づくり 地域の飲食店や体験メニュー 物産販売などと連携した地域着地型旅行商品の企画 安心 安全な宿泊サービスの提供 家主不在型については 家主居住型に比べ 安心 安全への対応が不十分となりがちであることから 現地での総合窓口となるフロント機能を設置し 旅行者からの問い合わせや現地でのトラブルに対応できるものとする 15
まちなか民泊 タイプ [ マンションの空き室活用など ] 方針 近隣住民の暮らしや既存の宿泊サービスとの役割分担に配慮することを前提とする 特徴 地下鉄駅周辺で RC 造 4~5 階建ての賃貸専用マンションにおいて民泊利用が多い 共同住宅の複数の空き室を所有( 借り上げ ) し ビジネスとして展開している事業者 ( 個人 ) もいる 中には1 棟すべて民泊として経営しているものもあり ウィークリーマンションや中短期滞在向け家具家電付き賃貸住宅との区別がつかないものもある 外国人オーナーの物件で民泊しているものがある 仲介サイトでは ホスト側もゲストの過去の宿泊におけるトラブルやマナー違反がないか評価を確認することができるが 民泊運営を一括して外部委託しているような場合 ゲストに対するチェックが厳しく働いていない場合がある トラブルや課題の例 マンション棟内に不特定の観光客が出入りしており どの住戸が民泊利用されているかもわからず 住民が不安を感じている 夜間 早朝の騒音やゴミ出しのマナー違反などにより 近隣住民とのトラブルが発生している 共用玄関のオートロック解除を不特定多数が利用していることに不安を感じている マンションの管理規約で転貸の禁止や住宅以外の利用禁止を規定しているが 民泊利用されている 外国人旅行者で冬期の水落しや暖房機器の取扱が不慣れな場合 トラブルが多い 対応策の例 民泊標識の掲示 民泊を近隣に認知してもらう ゲストが宿泊先を見つけやすい 管理者連絡先の掲示 問題発生時の連絡窓口 緊急連絡先の明確化 利用マナーの周知徹底 住民の生活に配慮した利用ルールの作成 周知徹底 防犯対策 カギやロック解除の適切な管理 部外者への侵入対策 犯罪の防止 管理者における身元確認 台帳作成 16
(3) ふれあい民泊 の展開例自宅の一部を利用したホームステイや改修した空き家などを宿泊受け皿とし 地域の飲食店や温泉 体験メニューと組み合わせることで 地元の人とのふれあいや地域の暮らし 文化を体験することを目的とした旅行サービスを提供する 旅行者が安心して利用できるように フロント機能を担う総合窓口を地域に設置し 旅行者にきめ細かく対応する 宿泊受け皿 宿泊施設は 民泊新法 に合致する民泊もしくは旅館業法に基づく簡易宿所を想定 A: 家主在住タイプ ( ファームインなど ) B: 家主不在タイプ ( 空き家など ) 宿泊以外のメニュー 飲食店 付随的旅行商品 温 泉 体 験 土産品 ホスト 管理会社 ( 不動産会社 建設会社など ) 改修 修繕 衛生管理 ( 清掃 ベッドメイキングなど ) は別途業務委託でも可 ) 2 予約希望情報通知 3 予約受付 業務提供 別途紹介もしくは旅行商品としてパッケージ 宿泊以外のメニューの例〇飲食店 : 飲食店マップ ( 割引券付き ) 〇温泉 : 入浴券 ( 割引や特典付き ) 〇体験 : ワイナリー巡り 農業体験 そば打ち体験 フットパス スノーシュー ツーリング オープンガーデン〇土産品 : 地元野菜のマルシェ 地域特産品 窓口業務委託 フロント機能 ( 観光協会 商工会 地域協議会 ホテル 旅館など ) フロント機能については 旅行者のための運送サービスや宿泊施設の手配など旅行業に該当するもの以外の業務とする フロント機能の業務の例 旅行者へのサービス 総合窓口 鍵の受け渡し ホストへのつなぎ 付随的旅行商品の手配 地域情報の紹介 ホスト側へのサービス web サイトへの登録 フロント窓口の代行 付随的旅行商品の紹介, 販売 WEB サイトへの登録 Web サイト ( 信頼性の高い仲介事業者 ) 5 当日鍵の受け渡しホストへのつなぎ地域情報の紹介 6 付属的旅行商品の支払い 1 ネット予約 3 予約受付完了通知 4 宿泊代金 利用者 利用の流れ 1~4 事前 5~6 当日 17
(4) 当面の取組 地域における新たな民泊の基本的な考え方 タイプ別方針に基づき 北海道にふさ わしい民泊を展開していくため 当面として次の取組を進めていく 1 仲介事業者との協力体制の構築民泊のゲストはもちろん ホストにとっても信頼性の高いプラットフォームとしての民泊仲介サイトが欠かせないものであることから 民泊新法の運用や地域における新たな民泊の推進に関し 民泊仲介サイトの運営事業者との協力体制構築に向け 協議などを行っていく 2 関係する団体等の意見把握地域における新たな民泊の推進にあたっては 道民の生活環境 既存の宿泊サービスとの調和が重要であることから ホテル 旅館などの宿泊施設の事業者による団体 旅行業の事業者による団体 マンション管理の団体などからご意見を伺い 今後の取組の推進に反映させていく 3モデルとなる取組を促進ホストとの交流や 文化 暮らしの体験など 地域との交流やふれあいを楽しむ民泊を地域において進めていくため ふれあい民泊 の展開例などを活用し 市町村におけるモデルとなる取組を促進していく 18