スピノサド資料 Ⅰ. 評価対象農薬の概要 1. 物質概要 1 スピノシン A 化学名 (IUPAC) 水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準として環境大臣が定める基準の設定に関する資料 スピノサド (2R,3aS,5aR,5bS,9S,13S,14R,16aS,16b S)-2-(6- デオキシ

Similar documents
水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準の設定に関する資料

水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準の設定に関する資料

評価対象農薬の概要 別紙 1 1. 物質概要 一般名 ビール酵母抽出グルカン CAS 1 分子式 (C6H10O5)x 分子量複数の糖が連なった多糖である NO. 該当なし 2 構造式 1 : 平均分子量及び分子量分布 : 可溶化できないため平均分子量及び分子量分布は測定できないが 水溶性成分に係る

資料 3-1 リスク評価 ( 一次 ) 評価 Ⅱ における 1,2,4- トリメチルベンゼンの 評価結果 ( 案 ) について ( 生態影響 ) < 評価結果及び今後の対応について > 1,2,4- トリメチルベンゼン ( 以下 TMB という ) について 生態影響に係る有害性評価として 既存の有

資料2 食品衛生法に基づく魚介類への残留基準の設定に対応した水質汚濁に係る農薬登録保留基準の改定について(農薬小委員会報告)

Ⅵ 魚類急性毒性試験

[17]N,N-ジメチルドデシルアミン=N=オキシド

農薬リスクコミュニケーション 農薬の環境影響について はじめに 島根大学 散布された農薬のゆくえは? リスク, 生態リスクって? どんな取り組みがされている? 影響評価の考え方と課題 おわりに 山本広基 1 はじめに なぜ農薬が使われる? 病害虫 雑草防除の必要性 農耕地の生態系は自然の生態系と全く

Pyrisma T40-27 SW Color Space Indigo

Microsoft Word - Colorstream F20-51 SW Lava Red

Microsoft Word - 063final.doc

Microsoft Word - Pyrisma T40-26 SW Color Space Magenta

Microsoft Word - Miraval 5401 Royal Twinkle

Microsoft Word - Iriodin Ultra Rutile Copper Pearl SW

パーキンソン病治療ガイドライン2002

研修コーナー

表 1 除草剤の作用機構分類別の藻類等の感受性差 1 作用機構分類 調査剤数 2 ムレミカヅキモに比べ感受性が顕著に高い種 アセチル CoA カルボキシラ 1 顕著な感受性差が明らかでない ーゼ (ACCase) 阻害 A アセト乳酸合成酵素 (ALS) 阻害 B 7 Lemna spp. ( ウキ

参考 < これまでの合同会合における検討経緯 > 1 第 1 回合同会合 ( 平成 15 年 1 月 21 日 ) 了承事項 1 平成 14 年末に都道府県及びインターネットを通じて行った調査で情報提供のあった資材のうち 食酢 重曹 及び 天敵 ( 使用される場所の周辺で採取されたもの ) の 3

安全データシート

Microsoft Word - EPI _suite_概要&マニュアル.doc

資料 7 厚生労働省発薬生 0301 第 79 号平成 31 年 3 月 1 日 薬事 食品衛生審議会会長橋田充殿 厚生労働大臣 根本匠 諮問書 下記の事項について 毒物及び劇物取締法 ( 昭和 25 年法律第 303 号 ) 第 23 条の 2 の規定に基づき 貴会の意見を求めます 記 ヘキサン酸

TG201 光源 72 時間培養 一定時間 代謝速度が一定なら 生長速度も一定 生長速度 r = Ln(X(72h)/X(0h))/3day = 1.5 (90 倍 )~1.8(225 倍 ) 毒性値 ErC50: 生長速度が 50% となる 濃度

Microsoft Word - Colorona Imperial Topaz

テンプレート

Microsoft Word - Colorona Glitter Bronze

Taro-課長3986号施行070402

参考 ( 案 ) 優先評価化学物質のリスク評価 ( 一次 ) 人健康影響に係る評価 Ⅱ 物理化学的性状等の詳細資料 1,3- ブタジエン 優先評価化学物質通し番号 平成 2

Colorona Mica Black

<4D F736F F D C6E30385F A B B83932E444F43>

第90回日本感染症学会学術講演会抄録(I)

圃場試験場所 : 県農業研究センター 作物残留試験 ( C-N ) 圃場試験明細書 1/6 圃場試験明細書 1. 分析対象物質 およびその代謝物 2. 被験物質 (1) 名称 液剤 (2) 有効成分名および含有率 :10% (3) ロット番号 ABC 試験作物名オクラ品種名アーリーファ

Ł\”ƒ-2005

Microsoft Word - r

<4D F736F F D C482CC31816A E63289F18C9F93A289EF5F8B638E96985E81698A6D92E894C5816A2E646F63>

KATE

Microsoft Word - カルコール0898(Octan-1-ol)GPS安全性要約書最終版.docx

Oxynex K Liquid Cosmetic antioxidant formulation for fats and oils

GPS 安全性要約書 苛性ソーダ(48%)

安全データシートダウ アグロサイエンス日本株式会社 化学品の名称 : リクルート IV AG 発行日 : 2017/08/29 印刷日 : 2017/08/29 ダウ アグロサイエンス日本株式会社は この製品の使用者が 重要な情報を記載しているこの (M) SDS を熟読され ご理解されるようお願い

<4D F736F F D EF97708E9197BF81468AC28BAB89658BBF955D89BF B FA967B8CEA94C5816A E392E33302E444F43>

Microsoft Word - 299final.doc

RonaCare Biotin Plus.rtf


3M 皮膚貼付用両面粘着テープ # /10/25 3M Article Information Sheet Copyright,2018,3M Company All right reserved. 本情報は 3M の製品を適切にご使用頂くために作成したものです 複製ないしダウンロー

Microsoft Word - 029final.doc

テンプレート

リンゴ黒星病、うどんこ病防除にサルバトーレME、フルーツセイバーが有効である

目次 1. はじめに 2. 化審法における生態毒性試験 3. 化審法におけるリスク評価手法と評価結果 4. その他の情報 2

,309 t 22,069 t 7,240 t µg/l µg/l < ,431-70, , , mg/l m

ページ : 2/9 3. 組成及び成分情報 化学特性 単一製品 混合物の区別 : 単一製品 雲母グループ鉱物 CAS 番号 : 有害性は特になし 4. 応急措置 [ 一般的なアドバイス ]: 汚れた衣服は取り替える [ 吸入した場合 ]: 粉塵を吸入して具合が悪くなった場合 新

Microsoft PowerPoint - 補足資料(セット版-2).ppt

危険有害性情報長期継続的影響によって水生生物に毒性 注意書き 安全対策環境への放出を避けること 応急措置漏出物を回収すること 廃棄残余内容物 容器等は産業廃棄物として適正に廃棄すること 他の有害危険性 3. 組成及び成分情報 化学物質 混合物の区別 : 混合物 化学名 CASRN 化審法番号安衛法番

資料3  農薬の気中濃度評価値の設定について(案)

豚丹毒 ( アジュバント加 ) 不活化ワクチン ( シード ) 平成 23 年 2 月 8 日 ( 告示第 358 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した豚丹毒菌の培養菌液を不活化し アルミニウムゲルアジュバントを添加したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株 名称豚丹

別添 新医薬品開発における環境影響評価に関するガイダンス 1 目的ヒト用医薬品の有効成分として用いられる化学物質は 医薬品が本来の目的による使用や未使用の医薬品として廃棄されることにともない 環境中に排出された際には 医薬品成分としてもつ生理作用に加えて 化学物質としての化学的 物理的及び生物学的な

安全データシート ページ : 1/12 BASF 安全データシート日付 / 改訂 : バージョン : 4.1 製品 : Cycocel Pro / サイコセル PRO ( /SDS_CPA_JP/JA) 印刷日 製品及び会社情報 Cyc

パナテスト ラットβ2マイクログロブリン

安全データシート

PowerPoint プレゼンテーション

あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

Microsoft Word - r rtf

ハチハチフロアブル, OAT アグリオ株式会社, OAT0138-7, 2014/06/09 1/5 安全データシート 作成日 : 2014 年 6 月 9 日 1. 製品及び会社情報製品名会社名住所担当部署電話 : 088(684)0220 FAX : 088(686)7055 : ハチハチフロア

薬事法第 2 条第 1 4 項に規定する指定薬物及び同法第 7 6 条の4 に規定する医療等の用途を定める省令の一部改正について ( 施行通知 ) -- 末尾 [ 付録 ] < 厚生労働省 2014 年 1 月 10 日 >


第三章 環境リスクとその評価

CAS O C O * DOP* DEHP 2- C O O * n- C 24 H 38 O CH 2 CH 2 CH 2 CH 3 CH (CH 2 ) % 2- A BHT , 4

CERT化学2013前期_問題

製品安全データシート(MSDS)

アクリルフォーム / 接着剤なし 応急措置 応急措置 吸入した場合応急処置は不要 皮膚に付着した場合応急処置は不要 眼に入った場合応急処置は不要 飲み込んだ場合応急処置は不要 予想できる急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状毒性学的影響についてはセクション 11 を参照 応急措置を

3M ペトリフィルム E. coli および大腸菌群数測定用プレート (EC プレート ) 安全データシート Copyright,2019,3M Company All right reserved. 本情報は 3M の製品を適切にご使用頂くために作成したものです 複製ないしダウンロードする場合には

ページ : 2/11 注意喚起語 : 警告 危険有害性情報 : H320 H302 H317 H402 注意書き ( 安全対策 ): P280 P261 P272 P270 P264 注意書き ( 応急措置 ): P305 + P351 + P338 P303 + P352 P333 + P311

ペトリフィルム (TM) SEC プレート 安全データシート Copyright,2016,3M Company All right reserved. 本情報は 3M の製品を適切にご使用頂くために作成したものです 複製ないしダウンロードする場合には 以下の条件をお守り下さい (1) 当社から書面

アザミウマ類の薬剤検定1

品目 1 エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト ( 別名 EPN) 及びこれを含有する製剤エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト (EPN) (1) 燃焼法 ( ア ) 木粉 ( おが屑 ) 等に吸収させてアフターバーナー及びスクラバーを具備した焼却炉で焼却する ( イ )

pdf エンドトキシン試験法

GPS 安全性要約書 塩酸(35%)

成分 CAS 番号 重量 % 金属蒸着積層フィルム なし 応急措置 応急措置 吸入した場合応急処置は不要 皮膚に付着した場合応急処置は不要 眼に入った場合応急処置は不要 飲み込んだ場合応急処置は不要 予想できる急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状毒性学的影響についてはセクション

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

GHS ラベル要素絵表示 注意喚起語 警告 危険有害性情報 H315 - 皮膚刺激 H317 - アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ H319 - 強い眼刺激 H335 - 呼吸器への刺激のおそれ H410 - 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 注意書き - 予防 取扱い後は顔 手 露

成分 CAS 番号 重量 % シリコーン処理紙 不明 グアーガム ポリプロピレンフィルム 不明 営業秘密 2-8 接着剤 - 下部フィルム 営業秘密 1-5 ヒンジテープ 不明 1-5 培地栄養成分 不明 1-3 ピルビン酸ナトリウム 113-

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

安全データシート 発行日 改訂日 版 5 製品特定名 セクション1: 製品および会社情報 製品名 10X DAB Substrate その他の識別手段 製品コード登録番号 S3052 利用可能な情報はない 化学薬品の推奨用途および使用制限 特定用途推奨され


注意喚起語 : 危険! 危険有害性情報吸入すると有毒 発がんのおそれ 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 注意書き 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと 粉じん / 煙 / ガス / ミスト / 蒸気 / スプレーの吸入を避けること

輸出先国の残留農薬基準値の調査方法 と結果及び今後の留意点 独立行政法人農業 食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所金谷茶業研究拠点 石川浩一 1

Electrically Conductive Cushion Gasket ECG-7033/7053/7073 安全データシート Copyright,2016,3M Company All right reserved. 本情報は 3M の製品を適切にご使用頂くために作成したものです 複製ないし

平成 29 年度大学院博士前期課程入学試験問題 生物工学 I 基礎生物化学 生物化学工学から 1 科目選択ただし 内部受験生は生物化学工学を必ず選択すること 解答には 問題ごとに1 枚の解答用紙を使用しなさい 余った解答用紙にも受験番号を記載しなさい 試験終了時に回収します 受験番号

ポリシロキサン営業秘密 < 3 4. 応急措置 応急措置 吸入した場合応急処置は不要 皮膚に付着した場合応急処置は不要 眼に入った場合応急処置は不要 飲み込んだ場合応急処置は不要 予想できる急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状毒性学的影響についてはセクション 11 を参照 応急措置を要する者の

SDS:K9221ZA;0.1mol/L NaCl 標準液

ライトストリンク RMF35, RMFH35, NRMF35, NRMFH35 安全データシート Copyright,2017,3M Company All right reserved. 本情報は 3M の製品を適切にご使用頂くために作成したものです 複製ないしダウンロードする場合には 以下の条件

3M クリーナーねんど 安全データシート Copyright,2016,3M Company All right reserved. 本情報は 3M の製品を適切にご使用頂くために作成したものです 複製ないしダウンロードする場合には 以下の条件をお守り下さい (1) 当社から書面による事

ピルシカイニド塩酸塩カプセル 50mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにピルジカイニド塩酸塩水和物は Vaughan Williams らの分類のクラスⅠCに属し 心筋の Na チャンネル抑制作用により抗不整脈作用を示す また 消化管から速やかに

資料 2-3 ジエタノールアミンの測定 分析手法に関する検討結果報告書 - 1 -

Japan Diamide WG

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

ライトストリンク RMF63, RMFH63, NRMF63, NRMFH63 安全データシート Copyright,2017,3M Company All right reserved. 本情報は 3M の製品を適切にご使用頂くために作成したものです 複製ないしダウンロードする場合には 以下の条件

ダイノックフィルム (HG,VM,AM,VM-MT シリース ), IWB-600 安全データシート Copyright,2018,3M Company All right reserved. 本情報は 3M の製品を適切にご使用頂くために作成したものです 複製ないしダウンロードする場合には 以下の

安全デ-タシート  

イソプロピルアルコール ( 株 ) トクヤマ 2014 年 2 月 20 日 1/5 GPS/JIPS 安全性要約書 イソプロピルアルコール 要旨イソプロピルアルコール ( 以下 IPA と略します ) は 常温で芳香がある無色の液体で 水と自由に混和します 引火性があるので火気には注意が必要です

生態毒性予測システム KATE(KAshinhou Tool for Ecotoxicity) 概要 2 詳しくは

Transcription:

Ⅰ. 評価対象農薬の概要 1. 物質概要 1 スピノシン A 化学名 (IUPAC) 水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準として環境大臣が定める基準の設定に関する資料 スピノサド (2R,3aS,5aR,5bS,9S,13S,14R,16aS,16b S)-2-(6- デオキシ -2,3,4- トリ -O - メチル -α-l- マンノ ピラノシルオキシ )-13-(4- ジメチルアミノ -2,3,4,6- テトラデ オキシ -β-d- エリスロピラノシルオキシ )-9- エチル -2,3,3a,5 a,5b,6,7,9,10,11,12,13,14,15,16a,16b - ヘキサデカヒドロ -14- メチル -1H-as- インダセノ [3,2-d] オ キサシクロドデシン -7,15- ジオン 分子式 C 41H 65NO 10 分子量 732.0 CAS NO. 131929-60-7 構造式 131929-60-7 1

2スピノシンD (2S,3aR,5aS,5bS,9S,13S,14R,16aS,16b S)-2-(6-デオキシ-2,3,4-トリ-O-メチル-α-L-マンノピラノシルオキシ )-13-(4-ジメチルアミノ-2,3,4,6-テトラデオ化学名キシ-β-D-エリスロピラノシルオキシ )-9-エチル-2,3,3a,5a, (IUPAC) 5b,6,7,9,10,11,12,13,14,15,16a,16b-ヘキサデカヒドロ-4,14-ジメチル-1H-as -インダセノ[3,2-d] オキサシクロドデシン-7,15-ジオン分子式 C 42H 67NO 10 分子量 746.0 CAS NO. 131929-63-0 構造式 2. 作用機構等スピノサドは 土壌放線菌由来のスピノシン系殺虫剤であり その作用機構は昆虫のニコチン性アセチルコリン受容体に結合し 昆虫の神経伝達に関与して 不随意筋の収縮を引き起こし 衰弱させて死に至らしめる また GABA 受容体の機能にも影響すると考えられている スピノサドは スピノシン A 及びスピノシン D であり 原体中にそれぞれ 72% 以上及び 4% 以上 (2 成分の合計で 82% 以上 ) 含まれる 本邦での初回登録は 1999 年である 製剤は粒剤及び水和剤が 適用農作物等は稲 果樹 野菜 花き 芝 せり等がある 原体の国内生産量は 5.0t( 平成 26 年度 ) 2.3t( 平成 27 年度 ) 原体の輸入量は 17.3t( 平成 26 年度 ) 14.4t( 平成 27 年度 ) 12.1t( 平成 28 年度 ) であった 年度は農薬年度 ( 前年 10 月 ~ 当該年 9 月 ) 出典 : 農薬要覧 -2017-(( 一社 ) 日本植物防疫協会 ) 2

3. 各種物性 1 スピノシン A 外観 臭気類白色固体 無臭 土壌吸着係数 K F ads OC = 570-4,200 融点 84-99.5 logpow = 3.9(23 蒸留水) オクタノール logpow = 2.8(23 ph5) / 水分配係数 logpow = 4.0(23 ph7) logpow = 5.2(23 ph9) BCF = 110 沸点 150 から分解するため測定不能 生物濃縮性 蒸気圧 3.0 10-8 Pa(25 ) 密度 30 日間安定 (25 ph5) 加水分解性水中光分解性 pka 8.10(20 ) 半減期水溶解度 648 日 (25 ph7) 200 日 (25 ph9) 半減期 0.93 日 ( 試験濃度 :19.0 ng/ml) BCF = 84 ( 試験濃度 :5.0 ng/ml) 0.51 g/cm 3 (20 スピノサドとして ) 2.90 10 5 μg/l(20 ph5) 2.35 10 5 μg/l(20 ph7) 8.94 10 4 μg/l(20 ph8.0-8.6) 1.6 10 4 μg/l(20 ph9) ( 滅菌緩衝液 ph7 25 自然光( 北緯 39.8 ) 200-460nm) 0.18 日 ( 自然水 ph9.2 25 自然光( 北緯 39.9 )) 3

2スピノシンD 外観 臭気類白色固体 無臭 ads 土壌吸着係数 K F OC = 1,300 融点 161.5-170 logpow = 4.4(23 蒸留水) オクタノール logpow = 3.2(23 ph5) / 水分配係数 logpow = 4.5(23 ph7) logpow = 5.2(23 ph9) BCF = 120 沸点 150 から分解するため測定不能 生物濃縮性 蒸気圧 2.0 10-8 Pa(25 ) 密度 30 日間安定 加水分解性水中光分解性 pka 7.87(20 ) (25 ;ph5 7) 水溶解度半減期 259 日 (25 ph9) 半減期 0.82 日 ( 試験濃度 :33 ng/ml) BCF = 100 ( 試験濃度 :8.2 ng/ml) 0.51 g/cm 3 (20 スピノサドとして ) 2.87 10 4 μg/l(20 ph5) 3.0 10 2 μg/l(20 ph7) 5.0 10 2 μg/l (20 ph8.0-8.6) 50μg/L(20 ph9) ( 滅菌緩衝液 ph7 25 自然光( 北緯 39.8 ) 200-460nm) 0.18 日 ( 自然水 ph9.2 25 自然光( 北緯 39.9 )) 4

Ⅱ. 水産動植物への毒性 1. 魚類 (1) 魚類急性毒性試験 [ⅰ]( コイ ) コイを用いた魚類急性毒性試験が実施され 96hLC 50 = 3,490μg/L であった 表 1 魚類急性毒性試験結果 ( コイ ) 被験物質 原体 供試生物 コイ (Cyprinus carpio) 10 尾 / 群 暴露方法 流水式 暴露期間 96h 設定濃度 (μg/l) 0 780 1,300 2,160 3,600 6,000 10,000 ( 有効成分換算値 ) 実測濃度 (μg/l) 0 707 1,090 1,930 3,260 5,350 9,150 ( 算術平均値 有効成分換算値 ) 死亡数 / 供試生物数 0/10 0/10 0/10 1/10 2/10 10/10 10/10 (96h 後 ; 尾 ) 助剤 なし LC 50(μg/L) 3,490(95% 信頼限界 2,800-4,330μg/L)( 実測濃度 ( 有効成分換算値 ) に基づく ) (2) 魚類急性毒性試験 [ⅱ]( ニジマス ) ニジマスを用いた魚類急性毒性試験が実施され 96hLC 50 =30,000μg/L であった 被験物質供試生物暴露方法暴露期間設定濃度 (μg/l) ( 有効成分換算値 ) 実測濃度 (μg/l) ( 幾何平均値 有効成分換算値 ) 死亡数 / 供試生物数 (96h 後 ; 尾 ) 助剤 LC 50(μg/L) 表 2 魚類急性毒性試験結果 ( ニジマス ) 原体 ニジマス (Oncorhynchus mykiss) 10 尾 / 群 止水式 96h 0 5,300 7,100 9,500 12,700 16,900 22,500 30,000 40,000 0 5,220 7,270 9,530 12,700 17,000 22,800 30,100 40,600 0/10 0/10 1/10 0/10 1/10 0/10 2/10 5/10 10/10 なし 30,000(95% 信頼限界 17,000-41,000)( 実測濃度 ( 有効成分換算値 ) に基 づく ) 5

(3) 魚類急性毒性試験 [ⅲ]( ブルーギル ) ブルーギルを用いた魚類急性毒性試験が実施され 96hLC 50 = 5,940μg/L であった 被験物質供試生物暴露方法暴露期間設定濃度 (μg/l) ( 有効成分換算値 ) 実測濃度 (μg/l) ( 幾何平均値 有効成分換算値 ) 死亡数 / 供試生物数 (96h 後 ; 尾 ) 助剤 LC 50(μg/L) 表 3 魚類急性毒性試験結果 ( ブルーギル ) 原体ブルーギル (Lepomis macrochirus) 10 尾 / 群止水式 96h 0 1,000 2,500 5,000 6,500 8,000 9,500 0 940 2,080 4,560 7,020 7,280 9,030 0/10 0/10 0/10 0/10 8/10 10/10 10/10 アセトン 0.5mL/L 5,940(95% 信頼限界 5,600-6,300)( 実測濃度 ( 有効成分換算値 ) に基づく ) 6

2. 甲殻類等 (1) ミジンコ類急性遊泳阻害試験 [ⅰ]( オオミジンコ ) オオミジンコを用いたミジンコ類急性遊泳阻害試験が実施され 48hEC 50 = 14,000 μg/l であった 表 4 ミジンコ類急性遊泳阻害試験結果 被験物質 原体 供試生物 オオミジンコ (Daphnia magna) 20 頭 / 群 暴露方法 半止水式 ( 暴露開始 24 時間後に換水 ) 暴露期間 48h 設定濃度 (μg/l) 0 27.7 39.5 56.4 80.5 115 164 ( 有効成分換算値 ) 234 334 477 681 973 1,390 1,990 2,840 4,050 5,780 8,260 11,800 16,800 24,000 34,300 49,000 70,000 100,000 実測濃度 (μg/l) 0 20.8 25.3 39.7 57.2 82.3 132 ( 幾何平均値 195 301 448 631 879 1,280 1,840 有効成分換算値 ) 2,690 3,910 5,690 8,080 11,800 16,500 23,700 33,500 48,200 68,500 96,300 遊泳阻害数 / 供試生物 0/20 0/20 0/20 0/20 0/20 0/20 0/20 数 (48h 後 ; 頭 ) 1/20 0/20 4/20 3/20 4/20 1/20 4/20 8/20 0/20 6/20 8/20 9/20 11/20 13/20 20/20 19/20 20/20 20/20 助剤 なし EC 50(μg/L) 14,000(95% 信頼限界 1,840-33,500)( 実測濃度 ( 有効成分換算値 ) に 基づく ) 7

(2) ユスリカ幼虫急性遊泳阻害試験 [ⅱ]( ユスリカ幼虫 ) ユスリカ幼虫を用いたユスリカ幼虫急性遊泳阻害試験が実施され 48hEC 50 > 32μg/L であった 表 5 ユスリカ幼虫急性遊泳阻害試験結果 被験物質 原体 供試生物 ドブユスリカ (Chironomus riparius) 20 頭 / 群 暴露方法 半止水式 ( 暴露開始 24 時間後に換水 ) 暴露期間 48h 設定濃度 (μg/l) 0 0.35 0.78 1.7 3.8 8.3 18 40 ( 有効成分換算値 ) 実測濃度 (μg/l) 0 0.32 0.54 1.0 2.3 5.0 12 32 ( 幾何平均値 有効成分換算値 ) 遊泳阻害数 / 供試生 1/20 0/20 2/20 2/20 1/20 2/20 2/20 7/20 物数 (48h 後 ; 頭 ) 助剤 なし EC 50(μg/L) >32( 実測濃度 ( 有効成分換算値 ) に基づく ) 3. 藻類 (1) 藻類生長阻害試験 [ⅰ]( ムレミカヅキモ ) Pseudokirchneriella subcapitata を用いた藻類生長阻害試験が実施され 72hErC 50 > 20,300 μg/l であった 表 6 藻類生長阻害試験結果 被験物質 原体 供試生物 P. subcapitata 初期生物量 1.0 10 4 cells/ml 暴露方法 振とう培養 暴露期間 168h 設定濃度 (μg/l 0 4,000 7,000 12,000 20,000 36,000 ( 有効成分換算値 ) 60,000 100,000 実測濃度 (μg/l) 0 4,300 11,100 12,100 20,300 35,400 ( 幾何平均値有効成分換算値 ) 60,700 105,000 72h 後生物量 46.4 37.0 34.0 30.3 30.8 28.7 ( 10 4 cells/ml) 31.5 22.8 0-72h 生長阻害率 5.2 7.3 10.8 11.0 11.8 (%) 9.7 18.4 助剤 なし ErC 50(μg/L) >20,300( 実測濃度 ( 有効成分換算値 ) に基づく ) 8

Ⅲ. 水産動植物被害予測濃度 ( 水産 PEC) 1. 製剤の種類及び適用農作物等農薬登録情報提供システム (( 独 ) 農林水産消費安全技術センター ) によれば 本農薬は製剤として粒剤及び水和剤があり 適用農作物等は稲 果樹 野菜 花き 芝 せり等がある 2. 水産 PEC の算出 (1) 水田使用時の PEC 水田使用時において PEC が最も高くなる使用方法 ( 下表左欄 ) について 第 1 段階の PEC を算出する 算出に当たっては 農薬取締法テストガイドラインに準拠して下表右欄のパラメーターを用いた 表 7 PEC 算出に関する使用方法及びパラメーター ( 水田使用第 1 段階 ) PEC 算出に関する使用方法 適用農作物等 せり 各パラメーターの値 I: 単回 単位面積当たりの有効成分 量 ( 有効成分 g/ha) ( 左側の最大使用量に 有効成分濃度 を乗じた上で 単位を調整した値 ( 製剤の密度は 1g/mL として算出 )) 150 剤型 25% 水和剤ドリフト量考慮 当該剤の単回 単位面積当たりの最大使用量地上防除 / 航空防除の別使用方法 60mL/10a A p: 農薬使用面積 (ha) (5,000 倍に希釈し 50 た薬剤を10a 当たり f p: 使用方法による農薬流出係数 (-) 300L 散布 ) 0.5 地上防除 T e: 毒性試験期間 (day) 2 茎葉散布 これらのパラメーターより水田使用時の PEC は以下のとおりとなる 水田 PEC Tier1 による算出結果 1.1 μg/l 9

(2) 非水田使用時の PEC 非水田使用時において PEC が最も高くなる使用方法 ( 下表左欄 ) について 第 1 段階の PEC を算出する 算出に当たっては 農薬取締法テストガイドラインに準拠して下表右欄のパラメーターを用いた PEC 算出に関する使用方法 適用農作物等果樹 表 8 PEC 算出に関する使用方法及びパラメーター ( 非水田使用第 1 段階 : 河川ドリフト ) 各パラメーターの値 I: 単回 単位面積当たりの有効成分量 ( 有効成分 g/ha) ( 左側の最大使用量に 有効成分濃度を 乗じた上で 単位を調整した値 ( 製剤の密度は 1g/mL として算出 )) 700 剤型 20% 水和剤 D river: 河川ドリフト率 (%) 3.4 当該剤の単回 単位面積当たりの最大使用量地上防除 / 航空防除の別 350mL/10a (2,000 倍に希釈した Z river:1 日河川ドリフト面積 (ha/day) 0.12 薬剤を 10a 当たり 700L 散布 ) N drift: ドリフト寄与日数 (day) 2 地上防除 R u: 畑地からの農薬流出率 (%) - 使用方法散布 A u: 農薬散布面積 (ha) f u: 施用法による農薬流出係数 (-) - - これらのパラメーターより 非水田使用時の PEC は以下のとおりとなる 非水田 PEC Tier1 による算出結果 0.011 μg/l (3) 水産 PEC 算出結果 (1) 及び (2) より 最も値の大きい水田使用時の PEC 算出結果から 水産 PEC は 1.1 μg/l となる 10

Ⅳ. 総合評価 1. 水産動植物の被害防止に係る登録保留基準値 各生物種の LC 50 EC 50 は以下のとおりであった 魚類 [ⅰ]( コイ急性毒性 ) 96hLC 50 = 3,490 μg/l 魚類 [ⅱ]( ニジマス急性毒性 ) 96hLC 50 = 30,000 μg/l 魚類 [ⅲ]( ブルーギル急性毒性 ) 96hLC 50 = 5,940 μg/l 甲殻類等 [ⅰ]( オオミジンコ急性遊泳阻害 ) 48hEC 50 = 14,000 μg/l 甲殻類等 [ⅱ]( ユスリカ幼虫急性遊泳阻害 ) 48hEC 50 > 32 μg/l 藻類 [ⅰ]( ムレミカヅキモ生長阻害 ) 72hErC 50 > 20,300 μg/l 魚類急性影響濃度 (AECf) については 最小である魚類 [ⅰ] の LC 50 (3,490μ g/l) を採用し 3 種 (3 上目 3 目 3 科 ) 以上の生物種試験が行われた場合に該当することから 不確実係数は通常の 10 ではなく 3 種 ~6 種の生物種のデータが得られた場合に使用する 4 を適用し LC 50 を 4 で除した 872μg/L とした 甲殻類等急性影響濃度 (AECd) については 甲殻類等 [ⅱ] の EC 50 (>32μg/L) を採用し 不確実係数 10 で除した >3.2μg/L とした 藻類急性影響濃度 (AECa) については 藻類 [ⅰ] の ErC 50 (>20,300μg/L) を採用し >20,300μg/L とした これらのうち最小の AECd より 登録保留基準値は 3.2μg/L とする 2. リスク評価水産 PEC は 1.1μg/L であり 登録保留基準値 3.2μg/L を超えていないことを確認した < 検討経緯 > 平成 29 年 2 月 3 日平成 28 年度水産動植物農薬登録保留基準設定検討会 ( 第 6 回 ) 平成 30 年 2 月 9 日平成 29 年度水産動植物農薬登録保留基準設定検討会 ( 第 6 回 ) 平成 30 年 3 月 9 日中央環境審議会土壌農薬部会農薬小委員会 ( 第 62 回 ) 11