- 38 - 皮 膚 第 29 巻 第 1 号 昭 和 62 年 2 月 38-46 進 行 性 指 掌 角 皮 症 ( 土 肥 三 宅 )の 電 子 顕 微 鏡 的 観 察 青 島 敏 行 尾 口 基 48 歳, 主 婦 の 進 行 性 指 掌 角 皮 症 を 電 顕 的 に 観 察 した 角 質 細 胞 内 に 核 の 残 存, 多 数 の 正 円 形 空 胞 が みられ, ケラチン 模 様 は 不 明 瞭 であった ケラトヒアリン 頼 粒 は 小 型, 円 形 で 数 も 少 ない 移 行 細 胞 も 観 察 された 表 皮 細 胞 の 細 胞 融 解 変 性 像 および 岡 部 に 接 するランゲルハンス 細 胞, 細 胞 質 内 デス 毛 ゾーム, さらに 表 皮 細 胞 がapoptosisに 向 う 所 見 も 認 められた 細 胞 内, 細 胞 間 浮 腫 は 軽 度 で, こ れらの 電 顕 像 は 一 次 刺 激 性 接 触 皮 膚 炎 のそれに 類 似 し, 本 症 がアレルギー 性 接 触 皮 膚 炎 でないことが 推 定 された キーワード: 進 行 性 指 掌 角 皮 症 ー 電 顕 I. 緒 言 進 行 性 指 掌 角 皮 症 ( 土 肥 三 宅 ) は1 92 4 年 発 行 の 土 肥 の 教 科 書 に 記 載 された 疾 患 であり, 乾 燥 性 手 掌 皮 膚 炎 ( 於 保 ), 肢 端 乾 燥 症 ( 旭 ) とも 呼 ばれるが1J, 現 在 では 手 混 疹 ( 主 婦 湿 疹 ) の 一 型 とされる しかし, 手 に 生 ず る 湿 疹 性, 乾 燥 性 病 変 をすべて 手 湿 疹, 主 婦 湿 疹 とする には 無 理 があり, 進 行 性 指 掌 角 皮 症 は 一 つの e ntit yと して 残 したい 病 名 で ある それにしても 三 宅 の 原 著 論 文 が, 種 々の 事 情 によって 終 に 世 に 出 ることがなかった2) ことは 残 念 である 本 症 の 病 理 組 織 学 的 研 究 は, てか, 試 料 採 取 の 困 難 さもあっ これまで 北 村 の 観 察 の 他, わずかにあるのみであ るあ4) そして 電 顕 的 研 究 はないように 思 われる 今 回, 私 共 は 本 症 の 皮 疹 を 電 顕 形 態 学 的 に 詳 細 に 観 察 する 機 会 を 得 たので, について 記 載 する とくに 角 化 の 状 態, 表 皮 細 胞 の 変 化 等 Il. 症 例 48 歳, 主 婦 10 年 前, 卵 巣 刻 出 術 後, 指 腹, 手 掌 lこ 皮 疹 を 生 じた 臨 床 所 見 右 全 指 腹, T oshiyu ki AOS HIMA, M. D. 右 手 掌 の 指 l 乙 近 い 部 大 津 赤 十 字 病 院 皮 膚 科 ( 主 任 : 青 島 敏 行 部 長 ) 520 大 津 市 長 等 1 丁 目 1-35 M ot oi OGUC HI, M. D. 関 西 医 科 大 学 皮 膚 科 学 教 室 ( 主 任 : 朝 田 康 夫 教 授 ) 57 0 守 口 市 文 関 町 1 番 地 昭 和 61 年 11 月 22 日 掲 載 決 定 分, 左 1~3 指 腹 に 角 質 増 殖, 落 屑, 亀 裂 が 認 められ る( 第 1 図 ) 屡 痔 はなく, 指 背, 手 背 に 皮 疹 はみられ ない 左 2 指 末 指 節 掌 面 より 試 料 を 採 取 した 光 顕 所 見 角 質 増 殖 がみられ, 全 体 に 不 全 角 化 が 著 明, 瞭 で, 角 質 層 中 層 は HE 染 色 にて 青 染 し, 透 明 層 は 不 明 穎 粒 層 のケラトヒプリン 穎 粒 (KHG)は 少 ない 有 線 層 肥 厚 があり, 真 皮 l 乙 小 円 形 細 胞 浸 i 問 が 軽 度 みら れ, 表 皮 内 には 浸 潤 していない 真 皮 上 層 の 血 管 は 拡 張 している( 第 2 図 ) 方 法 ill. 電 顕 所 見 生 検 試 料 を29ぢグ ルタールアルデヒド (0. 0 5M リン 酸 緩 衝 液, ph 7. 2 ) で2 時 間 固 定 後, 上 記 緩 衝 液 (0. lm サッカロース 加 )を 用 いて 一 昼 夜 水 洗, 1 %オスミウム 酸 (0.lM サッカ 戸 ース 加 リン 酸 緩 衝 液, ph 7. 2 )にて 1. 5 時 間, 後 回 定 し, エタノール 系 列 にて 脱 水, S purr エポキシ 樹 脂 に 包 埋 した P ort e r-blum 型 超 ミクロトー ムを 使 って 超 薄 切 片 を 作 成 し, 酢 酸 ウラニールとクエン 酸 鉛 i 乙 て 染 色 後, 目 立 HS 結 果 角 質 層, が 多 く, 9 型 電 子 顕 微 鏡 で 観 察 した 穎 粒 層 ::角 質 細 胞 内 iこ 核 の 残 存 しているもの 細 胞 質 内 に 多 数 の 正 円 形 に 近 い 空 胞 が 存 在 す る( 第 3 図 ) ケラチンパターンは 明 瞭 ではなく, 核 周 囲 に 微 細 穎 粒 が 集 合 している 核 の 多 くは 長 円 不 整 形 で あるが, 切 れ 込 みを 有 するものもある( 第 4 図 ) 細 胞 周 辺 は 凹 凸 著 しく, 鋸 歯 状 を 呈 する 移 行 細 胞 も 稀 lこ 観
皮 膚 第 29 巻 第 1 c,;- 昭 和 62 年 2 月 - 39 - 第 1 図 臨 床 所 見 指 腹, 三子 掌 のー 部 lこ 角 質 増 殖, 落 府, 亀 裂 が 認 められる 第 3 図 角 質 細 胞 [ 切 に 核 が;i,Qイ干し, 多 数 のIE 円 形 空 胞 がZH亡するつ ( x 5, 000) 第 2 図 )'(JI員 所 見 者 明 な 不 全 角 化, 中 等 度 の 了 1 林 層 JI 巴 厚 がみられる
- 40 - 皮 膚 第 29 巻 第 1 号 昭 和 62 年 2 月 第 4 図 切 れ 込 みのある 核 を 有 する 角 質 細 胞 η ( 16, 000) 第 5 図 移 行 細 胞 が 観 察 され, 層 板 頼 粒 ( 矢 印 )の 層 状 構 造 ; 土 不 明 瞭 である ( 16, 000) 第 6 図 ケラトヒプリン 頼 粒 は 小 さく, 円 形 で 数 も 少 ない ( 4, 500)
皮 膚 第 29 巻 第 1 号 昭 和 62 年 2 月 41 一一 第 7 図 表 皮 細 胞 の 細 胞 融 解 変 性 がみられる 同 部 にはリボゾームと 忠 土 れる 微 細 穎 粒 が, わずかに 存 在 するのみである ( 28, 000) 第 8 図 ランポルハンス 細 胞 頼 粒 はこの 写 ア 立 とでは 明 らかではないが, その 他 の 電 顕 形 態 学 的 特 徴 からラ ンゲソLハンス 細 胞 と 考 えられる 細 胞 が, 細 胞 融 解 変 性 部 lと 援 して 存 在 する ( 10,000)
42ー 皮 膚 第 29 巻 第 1 号 一 昭 和 62i]二会2 月 第 9 図 電 子 密 度 の 高 い 核 と 細 胞 質 の 間 に 空 隙 を 生 第 10 図 表 皮 来日 胞 内 の 空 隙, 細 胞 聞 の 聞 大 は 程 度 認 じ, 細 胞 内 小 出 官 に 代 って 空 胞 を 有 する 表 められる ( 6,000) 皮 細 胞 (X9, 000) 第 11 図 疋 常 ヒト 手 竿: 表 皮 不 整 形 で 大 型 iのケラトヒアリン 頼 粍 が 多 数 観 察 されゐ., ( x 15, 000)
皮 膚 第 29 巻 第 1 号 昭 和 62 年 2 月 - 43 - 察 され, 層 板 穎 粒 ( 矢 印 ) はやや 増 加 しているものの, 層 状 構 造 が 不 明 瞭 である( 第 5 図 ) KH Gは 小 型 で, デ スモゾームの 径 よりも 小 さく, 円 形 で 数 も 少 ない( 第 6 図 ) 有 線 膚, 基 底 層 : 表 皮 細 胞 細 胞 質 の 一 部 が 膨 出 し, 細 胞 内 小 器 官 を 全 く 欠 く 細 胞 融 解 変 性 像 が 観 察 された 同 部 にはトノフィラメントもみられず, リボゾームと 思 わ れる 微 細 穎 粒 がわずかに 存 在 するのみであり, 細 胞 表 面 にデスモゾームも 認 められない( 第 T 図 ) 有 線 層 上 層 にあって, 電 子 密 度 の 低 い 核 質 からなる 不 整 形 の 核 と, よく 発 達 した 細 胞 内 小 器 官 を 含 む 電 子 密 度 の 低 い 胞 体 を 有 し, トノフィラメントそ 欠 き, 周 聞 の 表 皮 細 胞 との 問!<::デスモゾームを 認 めず, 突 起 のために 不 規 則 な 輪 廓 を とる 細 胞 一一 ランゲルハンス 細 胞 穎 粒 はこの 切 片 上 では 明 らかではないが, 電 顕 形 態 学 的 特 徴 からランゲ ルハン ス 総 胞 と 考 えられる 細 胞 が, 前 述 の 細 胞 融 解 変 性 部 lこ 接 して 観 察 された( 第 8 図 また, この 細 胞 融 解 変 性 部 内 iζ 細 胞 質 内 デスモゾーム( 矢 印 )が 認 められた その 周 辺 に 存 在 する 表 皮 細 胞 は 形 態 学 的 に 正 常 である さらに, 核, 細 胞 質 の 電 子 密 度 が 高 く, 核 と 細 胞 質 の 問 に 空 隙 を 生 じ, 細 胞 質 内 に 空 胞 を 有 する 細 胞 が 散 見 さ れた( 第 9 函 ) またトノフィラメシトが 凝 集 して 細 胞 質 の 一 部 を 占 める 細 胞 も 観 察 された 表 皮 細 胞 内 の 空 隙, 細 胞 問 の 聞 大 は 軽 度 認 められるが( 第 10 図 ), 細 胞 問 の 他 の 細 胞 としては, ランゲ ルハソス 細 胞, 単 球 がわ ずかにみられるのみである 正 常 ヒト 手 掌 皮 膚 : 対 照 として36 歳, 男 子 の 左 手 掌 小 指 球 部 の 正 常 皮 膚 を 採 取, 本 症 皮 疹 と 同 様 の 操 作 l 乙 て 観 察 した 角 質 細 胞 の 電 子 密 度 は 中 等 度 で, 最 下 層 の 角 質 細 胞 に 電 子 密 度 の 高 い 微 細 頼 粒 の 集 合 した 不 整 形 物 質 が 認 められる 部 位 があり, 核 が 残 存 するものもあるつ 空 胞, 裂 隙 は 著 明 ではない KH G は 穎 粒 層 下 層 ではi 高 状 で, 周 辺 にリボゾームの 付 着 する 小 型 のものも 散 見 され るが, 角 層 近 くでは 不 整 形 の 大 型 のものが 観 察 される ( 第 11 図 ) IV. 考 察 1. 進 行 性 指 掌 角 皮 症 の 位 置 づけ 今 村 らは 子 の 湿 疹 を8 型 lこ 分 類 し,その 第 2 型 が 本 症 に 相 当 するとし, アトピー 素 因 との 関 係 は 否 定 的 として いる5l また 森 山 は 手 の 湿 疹, 皮 膚 炎 をアレルギー 性, 次 刺 激 性, 物 理 的 接 触 皮 膚 炎, アトピー 性 皮 膚 炎, 異 汗 性: 湿 疹, 混 合 型 の6 裂 に 分 類 し, 本 症 は 物 理 的 接 触 皮 膚 炎 ( 角 度 症 型 皮 膚 炎 ) にあたると 記 している6) さら に 須 貝 は 本 症 を 洗 剤 に 類 よる 累 積 刺 激 皮 膚 炎 と 考 えてお りわ, 上 回 は 手 湿 疹 を 湿 疹 i 干 t@ 型, 接 触!支 腐 炎 型, 進 行 性 指 掌 角 皮 症 型 の3つに 分 けている 8l 疹, 主 婦 湿 疹 の 中 で, 手 掌, 指 腹 l 乙 限 局 し, 要 するに 手 i 湿 手 背, 指 背 lこ 及 ばず, 角 化,l 朝 紅, 落 屑, 亀 裂 はあるものの, 小 水 子信, 築 i 夜 性 丘 疹, 産 俸 を 欠 くものを 進 行 性 指 掌 角 皮 症 と して 異 論 はないものと 思 われる 接 触 アレルギーとの 関 係 は 否 定 的 である5l 本 症 とアトピー 素 因 や 自 験 伊 jもk 記 の 点 から 本 症 としてよく, 卵 巣 刻 出 術 後 生 じたことは 性 ホルモンとの 関 係 が 推 定 される このような 女 性 ホル モンとの 因 果 関 係 を 支 持 する 説 もあるll 2. 光 額 所 見 本 症 の 組 織 像 に 関 する 研 究 は 少 ないが, 北 村 によれば 不 全 角 化, 角 質 層 の 染 色 異 常 を 示 し, 汗 管 周 囲 性 の 細 胞 浸 潤 の{ 也 は 真 皮 lこ 著 明 な 細 胞 i受i 関 を 認 めず, 海 綿 状 態 もみられないとされるお 自 験 例 も 大 体 同 様 の 所 見 であ り, 湿 疹 性 変 化 は 少 ない しかし, 篠 は 組 織 学 的 に 本 症 を 角 層 変 性 を 伴 う 湿 疹 反 応 とし, 表 皮 の 変 化 はi 毎 綿 状 小 水 チ白からわずかの 浮 腫 まであると 述 べている 9l 累 積 性 接 触 皮 膚 炎 に 関 しては, 著 者 ーらが 化 学 薬 品 により 高 度 な 角 質 増 殖 を 呈 した49 歳, 男 子 例 を 報 告 した10) その 組 織 像 では 真 j 支 に 小 円 形 細 胞 がわずかにみられるのみで, 海 綿 状 態, 表 皮 内 への 細 胞 浸 潤 は 認 められず, 有 線 層 肥 厚 と 高 度 な 角 質 増 殖 (41ll 皿 ) を 示 したが, 不 全 角 化 は 観 察 されなかった f 象 は 本 症 に 類 似 する 角 層 の 状 態 を 除 いては,これらの 醐 t 著 明 な 不 全 角 化 は 尋 常 性 乾 癖, 尋 常 性 沈 資 にみられ, 不 全 角 化 の 研 究 によく 用 いられるが,Ju ve ni le Pla Der matos is( 若 年 性 足 底 皮 膚 炎 )にも 観 察 されているlll この 疾 患 はatop icw inter feet ntar とも 呼 ばれ,その 他 の 組 織 所 見 として 乾 癖 様 の 有 線 層 肥 厚, 真 皮 i受i 間 細 胞 が 汗 管 表 皮 流 入 部 lこ 局 在, 表 皮 内 の 炎 症 変 化 がa rosyr c ing ium lこ 局 在 することが 示 されlll' これは 進 行 性 指 掌 角 皮 症 に 類 似 する 少 し 呉 なる しかし 海 綿 状 態, 水 癌 形 成 がある 点 lllは この 若 年 性 足 底 皮 膚 炎 に[却して, 安 田 は アトピー 素 因 が 関 係 しているのではないかと 述 べてい る121 三子 掌 足 底 の 遠 いはあるものの, 臨 床 的 に 類 似 す る 本 痕 と 若 年 性 足 底 皮 膚 炎 は, 組 織 学 的 には 湿 疹 反 応 の 有 無 により 異 なるようである 3. 電 顕 所 見 手 の 皮 膚 炎 lこは 大 別 すればアレルギー 性, 非 アレルギ -i 生 ( 一 次 刺 激 性 ) の2つがある3 本 研 究 の 目 的 は, 電 顕 形 態 学 的 に 進 行 性 指 掌 角 度 症 がそのどちらであるかを 探 究 することにある Me de nic a によれば, 一 次 刺 激 性 接 触 皮 膚 炎 の 電 践 的 変 化 として,1) 細 胞 膜 と 基 底 板 の 間 での 表 皮 真 皮 分 離,2 ) 表 皮 細 胞 の 壊 死,3) 真 皮 lこ 多 核 白
- 44 皮 膚 第 29 巻 第 1 号 昭 和 62 年 2 月 血 球 の 浸 j 問,4) 海 綿 状 態, secondary ly s 凶 mne の 欠 如 が 自 験 例 のKHGは 小 さく, 数 も 少 なく, 正 常 手 掌 表 皮 みられ, 一 方, アレルギー 性 接 触 皮 膚 炎 では,1) 表 皮 真 の 電 顕 像 とくらべて 明 らかな 差 がみられた なお, この 皮 の 分 離, 表 皮 細 胞 の 壊 死 はみられない,2) 表 皮 に 海 綿 ようなKHGの 状 態 は 累 積 性 接 触 皮 膚 炎 でも 同 様 で あっ 状 態, secondary ly sosom eを 有 す,3 ) 真 皮 j受 潤 細 胞 に 多 た2 5) くの 好 塩 基 球 を 含 む,4 ) 単 球,リγパ 球 が 真 皮, 表 皮 l 乙 同 時 に 現 われ,これらはしばしば 接 触 する,5)マグロフ ァージが 遅 れて 出 現 し, 蹴 ondary ly sosom e lこ 満 たされ るとされる13) 自 験 例 の 電 顕 像 は 一 次 刺 激 性 接 触 皮 膚 炎 のそれに 類 似 する 以 上 の 電 顕 所 見 から 考 えて, 進 行 性 指 掌 角 度 症 は 角 化 機 転 l 乙 異 常 を 伴 った, 非 アレルギー 性 接 触 皮 膚 炎 に 近 い 疾 患 であり,アレルギー 性 の 湿 疹 反 応 ではないことが 推 定 された しかし, 本 研 究 は1 例 のみの 観 察 のためデー タとして 不 十 分 なことは 確 かであり, 今 後, 更 なる 症 例 さらに,Komu raらはグロトン 油 皮 膚 炎, 急 性 放 射 線 皮 膚 炎,j 商 状 類 乾 癖 においては, トノフィラメント 束 が 集 積 し, 核 周 囲 lζ 渦 巻 状 となり, 時 には 細 胞 全 体 を 占 め, 細 胞 質 内 デスモゾーム, gapjunc ti on も 観 察 され, 有 株 細 胞 は 細 胞 融 解 変 性 を 示 すと 述 べ, これらの 所 見 は 一 次 刺 激 反 応 に 特 徴 的 で, アレルギー 性 接 触 皮 膚 炎 では の 積 み 重 ねが 必 要 であろう ただ, 女 性 の 手 掌 からの 試 料 採 取 は 極 めて 困 難 なことも 事 実 である 本 論 文 の 要 旨 は 第 36 回 日 本 皮 膚 科 学 会 中 部 支 部 総 会 (1985 年 10 月 12~13 日, 大 津 市 )にて 発 表 しだ 金 戸 三 枝, 浜 田 郁 子 両 嬢 の 技 術 的 御 援 助 に 感 謝 致 します 認 められないと 記 している14J また, このような 像 は 指 漏 性 湿 疹 15J,ジ ベルばら 色 枇 糠 疹 16), 続 発 性 肢 端 皮 膚 炎 17)にも 認 められている 自 験 例 においては 異 常 角 化 は 軽 度 なものの, 細 胞 融 解 変 性 は 高 度 で, 細 胞 質 内 デ スモゾームも 観 察 され, 本 症 が 一 次 刺 激 性 皮 膚 炎 である ことが 示 唆 された また, この 融 解 変 性 部 とヲンゲルハ ンス 細 胞 が 接 着 する 像 がみられた このような 所 見 は 滴 状 類 乾 癖 18)' ジ ベルばら 色 枇 糠 疹 1619), こも 報 告 され ており, 一 次 刺 激 に 対 するランゲノレハンス 細 胞 の 何 らか の 働 きが 推 定 される 文 獄 1. 星 健 二 : 進 行 性 指 掌 角 皮 症, 現 代 皮 膚 科 学 大 系 ( 山 村 雄 一, 他 編 入 14A. 中 山 書 店, 東 京,1981, 180-184. z. 三 宅 勇 : 進 行 性 指 掌 角 度 症 ( 土 肥 三 宅 ) と 私 の 立 場, 皮 泌,4: 734-736, 1936. 3. 北 村 精 一 : 所 謁 進 行 性 指 掌 角 皮 症 ( 土 肥 三 宅 )ノ 臨 休 的 誼 病 理 学 的 研 究, 日 皮 泌 誌,29: 975-1010, 1929. 細 胞 壊 死 は 形 態 学 的 に 異 なる2 つの 方 式, 即 ちn ec rosi sと apoptosi sに 分 類 されうる20J これらはそれぞれ coagulative necrosi s ( 凝 固 壊 死 ), shrin kage necrosi s ( 縮 少 壊 死 ) と 呼 ばれていたもので, necrosi sは 細 胞 内 部 の 求 恒 性 の 崩 壊 によって 起 る 細 胞 破 壊 を 意 味 し, 単 独 より も 集 団 的 に 細 胞 を 侵 し, 生 体 内 での 診 出 性 炎 症 を 引 起 す 一 方, ap op tosi sは 単 独 の 細 胞 に 起 り, 核 グロマチ ン, 細 胞 質 の 濃 縮 がみられるが, 小 器 官 は 保 持 され, 隣 接 する 細 胞 によって 食 食 される20) W 民 don は 信 平 苔 需産 のCi vattebodyの 微 細 構 造 が 典 型 的 な apoptosisであることを 最 初 に 指 摘 した21) なお, 電 顕 的 にはKerrらが 記 載 している apoptotic cellは, 通 常 dy skeratotic cell などと 呼 ばれる 核 グロマチンが 凝 集 し, 胞 体 の 濃 縮 した 細 胞 であり22 九 線 維 性 の 集 塊 として 観 察 される 本 来 の Ci vattebody とは 必 ずしも 同 ーのものではなく, 両 者 の 関 係 については 異 論 を 唱 える 意 見 もある23, 2 由 しかしながら 自 験 例 にみられた, 電 子 密 度 の 高 い 細 胞 質 と 核 周 囲 の 空 隙, 核 辺 縁 の 凹 凸, 細 胞 質 内 に 空 胞 を 有 し, 細 胞 内 小 器 官 の 少 ない 表 皮 細 胞 は apoptosi sに 向 う 過 程 のように 思 われる 4. 永 井 隆 吉, 石 原 勝, 小 嶋 理 一, 安 田 利 顕 : 座 談 会, 手 の 湿 疹 様 変 化, 皮 膚 臨 床, 10: 232 244, 1968. 5. 今 村 貞 夫, 荻 野 篤 彦, 米 沢 郁 雄, 高 橋 千 恵 : 手 の 湿 疹 の 統 計 的 観 察 一 主 としてアトピー 素 因 との 関 係 を 中 心 として 一, 皮 紀 要,67: 41 49, 1972. 6. 森 山 マサ ミ: 手 の 湿 疹, 皮 膚 炎 に 関 する 研 究, 日 医 大 誌,41 : 12-24, 197 4. 7. 須 貝 哲 郎 : 接 触 皮 膚 炎 とパッチテスト, 皮 膚,19: 210-222, 1977. 8. 上 田 宏, 矢 崎 喜 朔, 沼 井 勝 彦, 早 川 律 子, 小 林 美 恵 : 洗 剤 パッチテストよりみ た 手 病 変 の 検 討, 皮 膚,20 : 215-223, 1978. 9. 篠 力 : 進 行 性 指 掌 角 皮 症 の2' 3の 問 題 点, 皮 膚,26: 179, 1984. 10. 尾 口 基, 大 野 佐 代 子, 尾 崎 元 昭, 青 島 敏 行 : 著 し い 角 質 増 殖 を 示 した 累 積 性 接 触 皮 膚 炎 の1 例, 皮 膚 臨 床, 25: 313-316, 1983. 11. Ashton, R. E., Jone s, R. R. an d Griffiths, A. : Ju v eni le Plan tar D erm atosi s, Arch. D erm atol.,
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- 46 - 皮 j膏 第 29 巻 第 1 号 昭 和 62 年 2 月 Ultrastructural Observation of Keratodermia Tylodes Palmaris Progressiva Toshiyuki Aoshima Division of Dermatology, Otsu Red Cr,臨Hospital (Chief : Dr. T. Aoshima) Motoi Oguchi Department of Dermatology, Kansai Medical University (Director : Prof. Y. Asada) Key words : keratodermiaりlodes palmaris Progressiva-electron microscoρy epidermal cell adjacent to Langerhans cell, intracytoplasmic desmosome and apoptosis. Intra- and intercellular edema was slight. These electron microscopic findings -cytolytic degeneration and apoptosis-resembled those of A case of keratodermia tylodes palmaris progressiva (Dohi-Miyake) was studied ultrastructurally. In the horny layer remnant of the nucleus and numerous round vacuoles were observed, and the keratine pattern was obscure. The granular layer contained only a few primary irritant contact dermatitis. Thus we small, round keratohyaline granules. Transitional cells were also observed. In the prickle sp 巴 culated that this disease was not allergic contact dermatitis. cell layer, we found cytolytic degeneration of