Legal and Tax Report FXレバレッジ 規 制 最 大 25 倍 の 意 味 2009 年 8 月 19 日 全 5 頁 制 度 調 査 部 是 枝 俊 悟 取 引 開 始 時 レバレッジ 10~20 倍 程 度 で 取 引 する 投 資 家 にも 影 響 [ 要 約 ] 8 月 3 日 に 金 融 商 品 取 引 業 等 に 関 する 内 閣 府 令 の 一 部 を 改 正 する 内 閣 府 令 ( 以 下 改 正 府 令 )が 公 布 された 改 正 府 令 により 外 国 為 替 証 拠 金 取 引 (FX)のレバレッジが 2010 年 8 月 よ り 最 大 50 倍 2011 年 8 月 より 最 大 25 倍 に 規 制 される このレバレッジ 規 制 は 改 正 府 令 では 維 持 必 要 預 託 額 として 定 められている 維 持 必 要 預 託 額 は 建 玉 を 維 持 し 続 けるために 毎 営 業 日 の 一 定 時 間 において 必 ず 維 持 されなければな らない 預 託 額 である したがって 取 引 開 始 時 のレバレッジとは 意 味 が 異 なる 一 般 的 に FX 業 者 が 表 示 しているレバレッジ 水 準 は 取 引 開 始 時 のレバレッジである 改 正 府 令 のレバレッジ 規 制 における 最 大 25 倍 という 水 準 は 例 えば ロスカットの 証 拠 金 維 持 率 を 50%と 設 定 した 場 合 取 引 開 始 時 レバレッジに 換 算 すると 12.5 倍 程 度 に 相 当 する 改 正 府 令 が 完 全 施 行 される 2011 年 8 月 までには 現 在 レバレッジ 25 倍 超 で 取 引 を 行 っている 投 資 家 だけでなく 10~20 倍 程 度 で 取 引 を 行 っている 投 資 家 も 投 資 スタイルの 見 直 しが 必 要 になっ てくるだろう 1. 改 正 府 令 におけるレバレッジ 制 限 のスケジュール 2009 年 8 月 3 日 に 金 融 商 品 取 引 業 等 に 関 する 内 閣 府 令 の 一 部 を 改 正 する 内 閣 府 令 ( 以 下 改 正 府 令 ) が 公 布 された 改 正 府 令 では 取 引 所 取 引 店 頭 取 引 ともにFXを 行 う 際 の 証 拠 金 の 水 準 (すなわちレバレッ ジの 水 準 )について 制 限 を 設 けた 改 正 府 令 について 金 融 庁 は 1 日 の 為 替 の 価 格 変 動 をカバーできる 水 準 を 証 拠 金 として 確 保 することを 基 本 として 個 人 顧 客 を 相 手 方 とする 外 国 為 替 証 拠 金 (FX) 取 引 等 について 取 引 所 取 引 店 頭 取 引 共 通 の 規 制 として 想 定 元 本 の4% 以 上 の 証 拠 金 の 預 託 を 受 けずに 業 者 が 取 引 を 行 うことを 禁 止 するものです 1 と 説 明 している なお 施 行 は 2010 年 8 月 1 日 とし 施 行 から 1 年 以 内 (2011 年 7 月 31 日 まで)は 移 行 措 置 とし て 想 定 元 本 の2% 以 上 の 預 託 を 受 ければよいとしている 最 低 でも 取 引 額 の4%を 証 拠 金 として 預 託 しなければならないため 投 資 家 がFX 取 引 でかけられるレバレッ ジは 最 大 で 25 倍 以 内 ということになる 改 正 府 令 に 示 されたレバレッジ 制 限 のスケジュールは 次 のページの 図 表 1のようにまとめられる 1 金 融 庁 ホームページの 2009 年 5 月 29 日 のリリースによる http://www.fsa.go.jp/news/20/syouken/20090529-3.html 株 式 会 社 大 和 総 研 丸 の 内 オフィス 100-6756 東 京 都 千 代 田 区 丸 の 内 一 丁 目 9 番 1 号 グラントウキョウノースタワー このレポートは 投 資 の 参 考 となる 情 報 提 供 を 目 的 としたもので 投 資 勧 誘 を 意 図 するものではありません 投 資 の 決 定 はご 自 身 の 判 断 と 責 任 でなされますようお 願 い 申 し 上 げます 記 載 された 意 見 や 予 測 等 は 作 成 時 点 のものであり 正 確 性 完 全 性 を 保 証 するものではなく 今 後 予 告 なく 変 更 されることがあります 内 容 に 関 する 一 切 の 権 利 は 大 和 総 研 にあります 事 前 の 了 承 なく 複 製 または 転 送 等 を 行 わないようお 願 いします 本 レポートご 利 用 に 際 しては 最 終 ページの 記 載 もご 覧 ください 株 式 レーティング 記 号 は 今 後 6ヶ 月 程 度 のパフォー マンスがTOPIXの 騰 落 率 と 比 べて 1=15% 以 上 上 回 る 2=5%~15% 上 回 る 3=±5% 未 満 4=5%~15% 下 回 る 5=15% 以 上 下 回 る と 判 断 したものです
2 / 5 図 表 1 改 正 府 令 案 2におけるレバレッジ 制 限 のスケジュール また 証 拠 金 額 として4%の 数 値 の 規 定 の 他 に または 外 国 為 替 相 場 の 変 動 を 適 切 に 反 映 させた 額 とあるが これについて 金 融 庁 は 相 場 が 急 変 しボラティリテイが 大 きくなった 際 には 比 率 を 引 上 げ 逆 に 相 場 が 安 定 化 し ボラティリテイが 小 さくなった 際 には 比 率 を 引 下 げることも 想 定 している 模 様 である 2.4%(25 倍 )という 水 準 の 意 味 図 表 2は 大 和 証 券 が 提 供 しているFX ダイワFX における 2008 年 7 月 ~2009 年 6 月 までの 過 去 1 年 間 においてドル/ 円 の 為 替 相 場 の 1 日 の 変 動 率 2 を 示 したものである グラフでは 前 日 終 値 と 当 日 終 値 の 差 の 比 率 および 当 日 の 高 安 の 差 の 比 率 の2つを 示 している 前 日 終 値 と 当 日 終 値 の 差 の 比 率 は ある 日 の 市 場 終 値 で 売 り 買 いを 行 い 次 の 日 の 終 値 で 反 対 売 買 で 決 済 をした 場 合 の 想 定 元 本 に 対 する 損 益 の 割 合 (ただしスワップポイントは 考 慮 していない)を 示 す ( 株 式 取 引 における 終 値 の 1 日 の 変 動 率 に 相 当 する) 当 日 高 安 の 差 の 比 率 は ある 日 の 最 も 高 い 価 格 と 最 も 安 い 価 格 の 比 率 ( 高 値 / 安 値 )である これ は 1 日 のうちに 建 玉 を 反 対 売 買 するデートレードを 行 った 際 に 想 定 しうる 最 も 大 きな 利 益 または 損 失 の 割 合 である( 株 式 取 引 における ザラ 場 の 1 日 の 高 安 の 比 率 に 相 当 する) 2 ダイワFX の bid 値 の 日 足 データをもとに 前 日 終 値 からの 当 日 終 値 までの 変 化 率 の 絶 対 値 と 当 日 の 高 値 と 安 値 の 比 率 の 両 方 を 示 した なお 実 際 の 取 引 においては bid と ask のスプレッドがあることにより 1 日 の 取 引 における 損 失 が 為 替 相 場 の1 日 の 変 動 率 よりも 大 きくなる 可 能 性 がある また 取 引 を 行 う 業 者 によりそれぞれ 気 配 値 は 異 なる ため 為 替 相 場 の1 日 の 変 動 率 も 若 干 の 違 いがある
3 / 5 図 表 2 ドル/ 円 為 替 相 場 の 1 日 の 変 動 率 の 推 移 過 去 1 年 間 の 全 260 営 業 日 のうち 98.4%にあたる 256 営 業 日 については 終 値 ザラ 場 ともに 1 日 の 変 動 率 が4% 以 内 に 収 まっていたが 4 営 業 日 については 1 日 の 変 動 率 が4%を 超 えることがあった このうち 1 営 業 日 は 終 値 でもザラ 場 でも4%を 超 えており 3 営 業 日 はザラ 場 のみ4%を 超 えていた そして 4 営 業 日 全 てが 2008 年 下 半 期 にあたり 2009 年 に 入 ってからは 6 月 末 まで 1 度 も 変 動 率 が4% を 超 えた 日 はない 金 融 庁 が 発 表 したパブリックコメントでは 証 拠 金 額 を 想 定 元 本 の4% 以 上 としたことの 意 味 を 以 下 の ように 証 拠 金 規 制 導 入 の 趣 旨 からは 1 日 の 為 替 の 価 格 変 動 をカバーできる 水 準 を 基 本 とすることが 適 当 と 考 えられます 具 体 的 には このため 一 番 取 引 量 の 多 い 米 ドル- 円 について 平 成 17 年 に FX に 登 録 制 度 を 導 入 した 後 の 半 年 間 毎 に 見 て 最 も 変 動 の 激 しかった 平 成 20 年 下 半 期 を 基 準 に 1 日 の 為 替 の 価 格 変 動 をカバーする 水 準 を 勘 案 して 4% 以 上 としたものです 3 と 説 明 している 3. 取 引 開 始 時 レバレッジと 実 効 レバレッジ 改 正 府 令 で 規 定 されている 証 拠 金 額 ( 改 正 府 令 の 第 117 条 8 項 に 規 定 される 維 持 必 要 預 託 額 )とは 当 初 ポジションを 建 てたときだけでなく その 後 も 営 業 日 ごとに 一 定 の 時 刻 ( 例 えば 終 値 )において 顧 客 の 損 益 を 計 算 して( 値 洗 いして) 損 益 を 加 減 算 後 の 証 拠 金 額 が 想 定 元 本 の4% 以 上 となっていなけ
4 / 5 ればならない( 改 正 府 令 第 117 条 1 項 28 号 ) したがって この 最 大 レバレッジの 25 倍 は 日 々の 実 効 レバレッジ のことであり FX 業 者 が 一 般 に 表 示 している 取 引 開 始 時 の 取 引 金 額 / 証 拠 金 額 で 計 算 される 取 引 開 始 時 のレバレッジ( 以 下 取 引 開 始 時 レバレッジ )とは 異 なる 取 引 開 始 時 レバレッジ と 実 効 レバレッジ の 違 いについて 例 をあげて 説 明 する 投 資 家 Aが X 月 1 日 に 1 ドル=100 円 のときに 1 万 ドルを 売 って 円 を 買 うというポジションを 取 ったとす る この 投 資 家 は レバレッジ 20 倍 コース を 選 択 していたため 取 引 金 額 の 100 万 円 (1 万 ドル 100 円 ) の 20 分 の1 5 万 円 を 証 拠 金 として 差 し 入 れることで 取 引 を 開 始 することができる これが 取 引 開 始 時 レバレッジ である 翌 日 の X 月 2 日 為 替 相 場 は 2 円 の 円 高 となり 1 ドル=98 円 となった この 時 点 で 投 資 家 Aは 2 万 円 (1 万 ドル 2 円 )の 評 価 損 が 発 生 している したがって 差 し 入 れた 証 拠 金 額 から 評 価 損 を 差 し 引 いた 実 質 の 証 拠 金 額 は 3 万 円 ということになる このとき 1 万 ドルを 売 って 円 を 買 うポジションの 取 引 金 額 は 98 万 円 (1 万 ドル 98 円 )であるので 取 引 金 額 を 実 質 の 証 拠 金 額 で 割 ると 32.7 倍 (98 万 円 /3 万 円 )となっている こ れが 実 効 レバレッジ である 図 表 3 取 引 開 始 時 レバレッジ と 実 効 レバレッジ の 違 い 実 効 レバレッジ は 取 引 開 始 後 評 価 益 が 発 生 すると 倍 率 が 下 がり 評 価 損 が 発 生 すると 倍 率 が 上 がる ここで 先 の 例 を 見 ると 投 資 家 Aの 行 った 取 引 は X 月 1 日 の 取 引 開 始 時 レバレッジは 20 倍 であるが そ の 翌 日 の X 月 2 日 における 実 効 レバレッジ は 32.7 倍 となっている 改 正 府 令 では 2011 年 8 月 以 降 実 効 レバレッジ を 毎 営 業 日 一 定 の 時 刻 に 測 定 し 25 倍 超 となっている 場 合 は 直 ちに 追 加 証 拠 金 を 差 し 入 れ るか 反 対 売 買 により 建 玉 を 解 消 (ロスカット)しなければならない 図 表 2のドル/ 円 為 替 相 場 の 1 日 の 変 動 率 の 推 移 を 見 ると 2009 年 上 半 期 は 終 値 でもザラ 場 でも4% 以 上 3 2009 年 7 月 31 日 発 表 の パブリックコメントの 概 要 及 びそれに 対 する 金 融 庁 の 考 え 方 No.59-63
5 / 5 の 変 動 があった 日 はないが 2% 以 上 の 変 動 があった 日 は 終 値 で 3 営 業 日 ザラ 場 では 21 営 業 日 あり 1 日 に2% 程 度 為 替 相 場 が 変 動 する 日 はしばしばあることがわかる 取 引 開 始 時 レバレッジ を 20 倍 として 取 引 を 行 っていた 場 合 従 来 ( 及 び 経 過 期 間 中 )なら 取 引 開 始 時 から2% 相 場 が 投 資 家 にとって 不 利 な 方 向 に 動 いたとしてもロスカットの 必 要 性 はなかった(ない)が 2011 年 8 月 以 降 はこの 場 合 直 ちに 追 証 を 入 れる かロスカットするかをしなくてはならなくなる このように 取 引 開 始 時 レバレッジ 20 倍 の 取 引 を 行 っている 投 資 家 であっても 改 正 府 令 の 影 響 を 受 け ることになる 4. 取 引 開 始 時 レバレッジ と 最 大 実 効 レバレッジ の 関 係 取 引 開 始 時 レバレッジ と 実 効 レバレッジ の 違 いを 考 慮 すると 2011 年 8 月 以 降 取 引 開 始 時 レバ レッジ を 25 倍 として 取 引 を 行 うことは あまり 現 実 的 ではないと 考 えられる 仮 に 取 引 開 始 時 レバレ ッジ を 25 倍 とした 場 合 翌 日 の 一 定 時 刻 に 僅 かでも 評 価 損 が 発 生 している 場 合 には 直 ちに 追 証 の 差 入 か ロスカットを 行 わなければならなくなる 実 際 には 取 引 開 始 時 レバレッジ は 改 正 府 令 に 規 定 される 実 効 レバレッジ の 最 大 値 の 25 倍 からある 程 度 バッファーを 持 った 値 に 設 定 されるものと 考 えられる 金 融 商 品 取 引 業 等 に 関 する 内 閣 府 令 4 では FX 業 者 にロスカットルールの 整 備 が 求 められている たとえば 大 和 証 券 が 提 供 している ダイワFX においては ロスカットの 水 準 を 証 拠 金 維 持 率 ( 実 質 証 拠 金 / 取 引 開 始 時 の 必 要 証 拠 金 額 )の 20%~50% 5 から 投 資 家 が 選 べるようになっている ロスカットの 証 拠 金 維 持 率 を 50%と 設 定 した 場 合 取 引 開 始 時 の 証 拠 金 額 の 約 50%の 評 価 損 が 生 じた 場 合 に ロスカットが 行 われる その 場 合 そのロスカットが 行 われる 寸 前 においては 実 効 レバレッジ は 取 引 開 始 時 レバレッジ の 約 2 倍 になっていることになる したがって 取 引 開 始 時 レバレッジ を20 倍 ロスカットの 水 準 を 証 拠 金 維 持 率 の 50%とする 取 引 は 実 効 レバレッジ が 最 大 40 倍 程 度 まで 拡 大 しうることとなり 2011 年 8 月 以 降 は 行 えなくなる ロスカットの 水 準 を 証 拠 金 維 持 率 の 50% とする 場 合 取 引 開 始 時 レバレッジを 12.5 倍 程 度 としなければ 実 効 レバレッジ を 最 大 25 倍 以 内 に 抑 えることができない( 逆 に 取 引 開 始 時 レバレッジを 20 倍 とするた めには ロスカットの 水 準 を 証 拠 金 維 持 率 の 75% としなければならない) このように 現 在 取 引 開 始 時 レバレッジ を 10~20 倍 程 度 として 取 引 を 行 っている 投 資 家 であっても 2011 年 8 月 以 降 はロスカットの 水 準 を 変 えるなど 投 資 スタイルの 変 更 をしなければならなくなると 考 えられる 改 正 府 令 が 完 全 施 行 される 2011 年 8 月 に 向 けて 低 レバレッジ 取 引 も 含 めて FX 業 者 の 取 引 システムおよ び 投 資 家 の 投 資 スタイルの 見 直 しが 必 要 になってくるだろう 4 当 該 改 正 について 2009 年 7 月 3 日 公 布 2009 年 8 月 1 日 より 施 行 されている(ただし 既 存 業 者 については 2010 年 1 月 末 まで 経 過 措 置 あり) 5 ただし レバレッジ 50 倍 を 選 択 した 場 合 は ロスカット 水 準 は 証 拠 金 維 持 率 の 50%となる