73 学 習 記 録 帳 が 英 語 学 習 者 の 動 機 づけに 及 ぼす 効 果 The effects of Learning Record on learners motivation 加 藤 澄 恵 Sumie Kato 1.はじめに 大 学 全 入 時 代 が 叫 ばれる 中 大 学 生 の 学 びの 質 が 危 惧 され 中 央 教 育 審 議 会 は2012 年 8 月 28 日 平 野 文 科 相 (2012 年 8 月 当 時 )に 対 し 1 現 在 4 年 の 教 員 養 成 期 間 を 大 学 院 修 士 レベルの6 年 に 延 長 2 勉 強 時 間 が 増 えるよう 大 学 教 育 の 質 を 転 換 の2 点 を 答 申 した 2 の 勉 強 時 間 が 増 えるよう 大 学 教 育 の 質 を 転 換 との 意 見 の 中 で 具 体 的 には 中 央 教 育 審 議 会 の 大 学 分 科 会 大 学 教 育 部 会 は 学 生 の 勉 強 時 間 を 調 べたり 勉 強 時 間 を 増 やす 方 策 を 講 じたりした 大 学 を 財 政 面 で 優 遇 するべきとする 素 案 をまとめた 勉 強 しな い 学 生 を 放 置 する 大 学 に 改 善 を 促 す 狙 いで 大 学 生 の 勉 強 時 間 を 増 やし 大 学 生 を 勉 強 さ せるためである 日 本 の 大 学 生 は 国 際 比 較 でも 勉 強 時 間 が 短 いとされ 日 本 の 学 生 が 主 体 的 に 勉 強 する 時 間 は1 日 に 講 義 を 含 めて4.6 時 間 とするデータをもとに 必 要 時 間 の 半 分 程 度 と 分 析 した また 米 国 では 1 週 間 当 たり 学 習 する 時 間 は58.4% の 学 生 が11 時 間 以 上 と 答 えたのに 対 し 日 本 の 学 生 は11 時 間 以 上 学 習 すると 答 えたのはわずか4.8%であ る (Yomiuri Online News) 学 習 者 の 主 体 的 な 学 びを 促 すためにも 学 習 者 の 学 習 時 間 を 増 加 させ 学 習 時 間 という 量 だけではなく 学 びの 質 をも 向 上 させるため 学 習 者 の 学 習 に 対 する 動 機 づけも 上 げる 必 要 性 がある 動 機 づけと 学 習 とは 切 っても 切 り 離 せない 存 在 である 高 い 動 機 づ けを 持 った 学 習 は 高 いレベルの 達 成 度 が 得 られる 学 習 者 に 高 い 動 機 づけをすることは 教 育 的 達 成 ともいえる(Gage & Berliner, 1998) また Krashen 等 (Krashen & Terrell, 1983)は 言 語 習 得 における 情 意 フィルター(Affective filter)の 重 要 性 を 指 摘 し 学 習 者 の 動 機 が 低 いとき 過 度 に 緊 張 しているとき 学 習 に 不 安 を 感 じているときなど この 情 意 フィルターは 高 くなり 言 語 習 得 が 妨 げられるのだと 考 えられる 動 機 づけは 学 習 者 の 障 害 を 乗 り 切 る 自 信 を 高 め 成 功 を 得 るための 努 力 を 促 進 すると 述 べている また 動 機 づけは 難 しいタスクを 乗 り 切 る 心 理 的 サポートでもあり また 学 習 者 が 途 中 であき らめないようにサポートすることも 促 進 するものでもある(Gagne & Driscoll, 1988) 動 機 づけの 最 も 重 要 な 要 素 とは 学 習 に 対 する 否 定 的 な 感 情 学 習 への 方 向 づけなどを 肯 定 的 な 学 習 態 度 自 己 効 力 に 変 更 するものであると 考 えられる(McCombs, 1988 ) 動 機 づ けされた 学 習 者 は 学 習 に 対 する 肯 定 的 な 態 度 で 学 習 に 臨 み そして 学 習 の 成 功 へと 導 び
74 かれるのである 学 生 の 学 習 時 間 を 増 加 させる 方 法 は 授 業 時 毎 時 間 に 試 験 をする 宿 題 を 課 すなどが 挙 げられるが 学 習 時 間 を 増 加 させるだけではなく 学 習 者 に 学 習 する 動 機 づけをさせ 最 終 目 的 として 学 習 効 果 を 期 待 したい そのため 試 験 宿 題 などの 導 入 ではなく 学 習 時 間 を 増 加 させまた 学 習 者 の 動 機 づけを 助 長 させるアクティビティーの 導 入 を 考 える 必 要 性 があ る 2. 本 研 究 の 目 的 大 学 の 語 学 教 育 において 第 2 言 語 学 習 の 影 響 があるものとして 動 機 づけが 広 く 論 議 さ れている その 多 くは 動 機 付 けの 分 類 動 機 づけに 影 響 を 与 える 諸 要 因 ( 性 差 学 習 環 境 性 格 学 習 ストラテジーなど)であり 学 習 時 間 の 増 加 による 学 習 者 の 動 機 づけに 関 する 研 究 はほとんど 行 われていない そのような 現 状 を 鑑 み 本 研 究 では 英 語 学 習 者 の 学 習 時 間 の 増 加 による 動 機 づけの 調 査 を 行 いその 効 果 を 検 証 する もし 学 習 時 間 の 増 加 による 英 語 学 習 者 の 動 機 づけが 明 らかになれば 教 師 が 学 習 者 に 対 して 授 業 のあり 方 を 構 築 することができると 考 えられる 具 体 的 には 次 の3 点 である 1) 学 習 記 録 帳 の 利 用 が 学 習 者 の 学 習 時 間 を 増 加 することができるのか 2) 学 習 記 録 帳 の 利 用 が 成 績 に 反 映 されるか 否 かで 学 習 者 の 学 習 時 間 の 増 加 や 動 機 づけに 違 いはあるのか 3) 学 習 記 録 帳 の 利 用 が 学 習 者 の 動 機 づけに 効 果 があるのかを 考 察 する 3. 調 査 協 力 者 調 査 協 力 者 は 国 立 大 学 で 学 ぶ 日 本 人 大 学 生 ( 非 英 語 専 攻 )1 年 生 ~4 年 生 65 名 である 調 査 協 力 者 を2 群 に 分 け リスニング 量 に 応 じて 成 績 に 反 映 される(L2 群 36 名 )と 成 績 に 反 映 されない(L1 群 29 名 )である つまりL2 群 は 毎 週 のリスニング 量 に 応 じ てその 量 が 成 績 に 反 映 される 群 であり L1 群 は 毎 週 聴 くリスニング 量 は 全 く 成 績 に 反 映 されない 群 である 調 査 協 力 者 は 本 研 究 の15 週 間 授 業 外 でリスニングを 聴 いた 両 群 のリスニング 熟 達 度 の 等 質 性 を 調 べるために TOEICのリスニングセクション Part 2の 問 題 30 問 が 与 えられた TOEICリスニングセクションPart2の 問 題 は 短 い 会 話 を 聞 いてその 内 容 についての 質 問 に 答 える 小 問 である その 結 果 L2 群 (n = 36, M = 16.5, SD = 4.1)とL1 群 (n = 29, M = 17.6, SD = 4.3)の 間 で 統 計 的 には 有 意 の 差 は 見 られなかった(t = 2.1, df = 67, p = 0.0) そのため 両 群 のリスニング 能 力 はほぼ 同 じ であったと 考 えられる 4.データ 収 集 データ 収 集 には 質 問 紙 を 使 用 した 質 問 紙 では リスニング 表 提 出 についての 学 生 の 動 機 づけを 調 査 した 全 6 項 目 5 段 階 のリカートスケールを 作 成 した アンケートは
75 学 期 終 了 時 に 実 施 した アンケートは 無 記 名 で 2012 年 7 月 に 大 学 で 実 施 した クラス 開 始 時 にアンケートはコースの 成 績 評 価 とは 一 切 関 係 せず 研 究 目 的 のものであることを 断 った 上 で 回 答 用 紙 の 記 入 方 法 を 示 し 質 問 用 紙 と 回 答 用 紙 を 配 布 した 授 業 で 収 集 し たアンケートによるデータは 集 計 し 論 文 に 使 用 することに 同 意 を 得 た 尚 回 収 率 は 合 計 100%であった 5. 手 続 きと 授 業 の 実 施 調 査 が 行 われた 授 業 は 1~4 年 次 の 必 修 科 目 であり リスニング 力 スピーキング 力 の 向 上 を 目 指 したクラスである 授 業 実 施 期 間 は15 週 であった アンケートは14 週 目 に 行 っ た 具 体 的 な 授 業 の 内 容 は 以 下 のとおりである (1) 教 科 書 は Dale FullerのAIRWAVES Advanced Macmillan Language Houseを 使 用 し 付 属 のCDを 用 いて 授 業 を 行 った リスニングの 種 類 は アメリカの 大 学 の 講 義 形 式 になっており レベルは 上 級 である 授 業 で 扱 うトピックは12ユニットから なり Art Appreciation, Social Issues of the Day, A Closer Look at Democracy, Understanding Economic Systemsなど 社 会 学 経 済 学 教 育 学 など 多 様 である リス ニング 量 は1ユニット 約 20 分 である 1ユニットが5つのパートに 分 かれており 教 科 書 にはそれぞれのパートによって 問 題 がある 自 主 学 習 用 のリスニングはCDから 音 声 を 聴 くものではなく いわゆるPodcastを 利 用 した 学 習 方 法 で 学 習 者 は 指 定 さ れたウェブページから 登 録 を 行 い 音 声 を 各 自 のPCやMP3 スマートフォンなどに ダウンロードし 学 期 内 で 扱 うすべてのユニットを 好 きな 時 に 好 きな 場 所 で 聴 くこと ができた (2) 1 週 目 は 学 習 記 録 帳 の 書 き 方 音 声 ダウンロードの 仕 方 などの 説 明 を 行 い 学 習 活 動 は2 週 目 から 実 施 した なおリスニングの 時 間 量 は 自 己 申 告 である 筆 者 が 作 成 し た 聴 いた 時 間 を 記 録 するリスニング 表 を 授 業 初 日 に 個 々に 配 布 し 毎 週 授 業 開 始 時 に 回 収 し 教 員 が 印 を 押 し 授 業 の 最 後 に 学 生 に 返 却 した 学 習 者 が1 週 間 まとめてで はなく 毎 日 聴 いた 量 を 記 入 できるよう 工 夫 しながら リスニング 表 を 作 成 した (Appendix1を 参 照 ) (3) 調 査 協 力 者 は リスニングの 聴 く 量 に 合 わせて 成 績 に 反 映 されるグループと 成 績 に は 反 映 されないグループの2つのグループに 分 け 実 施 された 成 績 に 反 映 されるグ ループが36 名 されないグループが29 人 である 6. 分 析 の 方 法 質 問 紙 による 項 目 ごとの 度 数 と%による 単 純 集 計 を 行 い 回 答 傾 向 の 特 徴 を 調 査 した 調 査 協 力 者 間 (L2 群 とL1 群 )の 質 問 紙 の 結 果 のt 検 定 を 行 い 2 群 間 のデータの 平 均 値 と 標 準 偏 差 を 調 査 した 学 習 記 録 帳 と 学 習 者 の 動 機 づけについては 学 習 記 録 帳 で 学 習 時 間 が 増 えた 調 査 協 力 者 とそうでない 調 査 協 力 者 の 両 群 間 の 比 較 はマン ホイットニーの
76 u 検 定 ( 両 側 検 定 )を 用 い 有 意 水 準 5%にて 行 った 質 問 紙 による 質 的 観 点 からも 調 査 を 行 った 7. 結 果 と 考 察 表 1~6は L2 群 とL1 群 全 体 の 質 問 紙 による 項 目 ごとの 度 数 と%による 単 純 集 計 である 表 1は 学 生 の 学 習 時 間 が 増 加 したのかを 示 している L2 群 は 83% L1 群 は72% 全 体 では78%の 学 生 が 学 習 時 間 が 増 加 したと 答 えている 本 研 究 の 第 1の 目 的 ( 学 習 記 録 帳 の 利 用 が 学 習 者 の 学 習 時 間 を 増 加 することができるのか)を 検 討 すると 回 答 の 平 均 値 が 全 体 で3.9 L2 群 が4.1 L1 群 が3.7であった 表 1. 項 目 1)リスニング 表 を 記 録 し 提 出 することで 学 習 時 間 が 増 えた L2 群 (%) L1 群 (%) 全 体 (%) {5} 42 20 32 {4} 41 52 46 {3} 8 14 11 {2} 3 7 5 {1} 6 7 6 注 {5} はい {4} どちらかといえばはい {3} {1} いいえ どちらでもない {2} どちらかといえばいいえ 両 群 ともに 学 習 記 録 帳 の 使 用 により 学 習 時 間 が 大 幅 に 増 加 したことが 本 研 究 から 示 唆 さ れた 本 研 究 第 2の 目 的 ( 学 習 記 録 帳 の 利 用 が 成 績 に 反 映 されるか 否 かで 学 習 者 の 学 習 時 間 の 増 加 や 動 機 づけに 違 いはあるのか を 検 討 すると L2 群 とL1 群 の 有 意 水 準 5%で 対 応 のあるt 検 定 を 行 った 結 果 両 群 との 差 は 有 意 ではなかった 表 7に 示 す 本 研 究 に おいて 学 習 時 間 を 記 録 し 提 出 することは 自 己 申 告 であったため 成 績 に 反 映 されるか 否 かは 自 律 学 習 には 影 響 がないと 言 える 表 2は 学 生 の 自 己 分 析 での 学 習 成 果 の 結 果 である L2 群 は 41% L1 群 は 21% 全 体 では 33%の 学 生 が 自 己 分 析 で 学 習 記 録 による 授 業 形 態 の 学 習 の 成 果 を 示 して いる
77 表 2. 項 目 2)リスニング 表 を 記 録 し 提 出 することで 自 己 分 析 をして 英 語 能 力 に 伸 び や 成 果 があった L2 群 (%) L1 群 (%) 全 体 (%) {5} 8 0 5 {4} 33 21 28 {3} 47 51 49 {2} 6 21 12 {1} 6 7 6 注 目 されたいのがL2 群 で 47% L1 群 で51% 全 体 で 約 5 割 の 学 生 がどちらでもな いと 答 えている 回 答 の 平 均 値 が 全 体 で3.1 L2 群 が3.3 L1 群 が2.9であった 有 意 水 準 5%で 対 応 のあるt 検 定 を 行 った 結 果 両 群 との 差 は 有 意 であった 表 7に 示 す 英 語 の 能 力 は 目 に 見 えてわかるものではなくあくまでも 自 己 分 析 での 判 断 ゆえ 自 身 の 英 語 能 力 の 成 果 を 判 断 するのが 難 しく 約 半 分 の 学 生 がどちらでもないと 指 示 したと 考 えられる 表 3は 学 習 記 録 帳 による 学 習 への 動 機 づけについての 項 目 である L2 群 は 63% L1 群 は 51% 全 体 では 58%の 学 生 が 学 習 記 録 帳 の 記 録 を 熱 心 に 取 り 組 んだと 述 べ ている 表 3. 項 目 3)リスニング 表 を 記 録 し 提 出 することを 熱 心 に 取 り 組 んだ L2 群 (%) L1 群 (%) 全 体 (%) {5} 25 14 20 {4} 38 37 38 {3} 31 28 29 {2} 3 14 8 {1} 3 7 5 回 答 の 平 均 値 が 全 体 で3.6 L2 群 が3.8 L1 群 が3.4であった L2 群 とL1 群 の 有 意 水 準 5%で 対 応 のあるt 検 定 を 行 った 結 果 両 群 との 差 は 有 意 ではなかった 表 7に 示 す 表 4は 学 生 が 自 発 的 に 学 習 記 録 帳 での 学 習 に 自 発 的 に 取 り 組 んだかを 示 している L 2 群 は 80% L1 群 は69% 全 体 では 75%の 学 生 が 学 習 記 録 によって 自 発 的 に 学 習 を 行 ったと 述 べている
78 表 4. 項 目 4)リスニング 表 を 記 録 し 提 出 することで 自 発 的 に 学 習 した L2 群 (%) L1 群 (%) 全 体 (%) {5} 36 28 32 {4} 44 41 43 {3} 14 21 17 {2} 0 7 3 {1} 6 3 5 回 答 の 平 均 値 が 全 体 で4.0 L2 群 が4.1 L1 群 が3.8であった L2 群 とL1 群 の 有 意 水 準 5%で 対 応 のあるt 検 定 を 行 った 結 果 両 群 との 差 は 有 意 ではなかった 表 7に 示 す 表 5は 学 生 の 学 習 記 録 帳 による 学 習 形 態 への 満 足 度 を 示 している L2 群 は 83% L1 群 は90% 全 体 では 86%の 学 生 が 学 習 記 録 帳 による 学 習 形 態 はよかったと 述 べて いる 表 5. 項 目 5)リスニング 表 を 記 録 し 提 出 することは よかった L2 群 (%) L1 群 (%) 全 体 (%) {5} 42 38 40 {4} 41 52 46 {3} 14 3 9 {2} 3 7 5 {1} 0 0 0 9 割 近 い 学 生 が 学 習 記 録 帳 による 学 習 形 態 に 満 足 していることがわかる 質 問 紙 によ るコメントからも( 自 己 申 告 なので 本 当 の 時 間 を 素 直 に 提 出 できた 勉 強 量 が 目 に 見 える のは 良 い リスニング 表 が1 日 ずつ 区 切 られているのが 良 かった 記 録 することで 勉 強 量 や 何 曜 日 に 勉 強 するのかが 自 覚 できる 通 学 の 時 間 を 有 意 義 に 使 うことができた) 学 習 記 録 帳 による 学 習 形 態 がよかったのかが 示 唆 される 回 答 の 平 均 値 が 全 体 L2 群 L1 群 すべてが4.2であった L2 群 とL1 群 の 有 意 水 準 5%で 対 応 のあるt 検 定 を 行 った 結 果 両 群 との 差 は 有 意 ではなかった 表 7に 示 す 表 6は 学 習 記 録 帳 での 学 習 形 態 が 学 生 の 学 習 への 充 実 感 を 示 している L2 群 は 70% L1 群 は 72% 全 体 では 70%の 学 生 が 学 習 記 録 帳 に 学 習 記 録 をすることにより 学 習 をしたという 充 実 感 が 得 られたと 述 べている
79 表 6. 項 目 6)リスニング 表 を 記 録 することで 学 習 をした という 充 実 感 が 得 られた L2 群 (%) L1 群 (%) 全 体 (%) {5} 28 24 26 {4} 42 48 44 {3} 19 14 17 {2} 8 7 8 {1} 3 7 5 回 答 の 平 均 値 が 全 体 L2 群 L1 群 すべてが3.8であった L2 群 とL1 群 の 有 意 水 準 5% で 対 応 のあるt 検 定 を 行 った 結 果 両 群 との 差 は 有 意 ではなかった 表 7に 示 す 以 上 の 結 果 から 学 習 記 録 帳 の 導 入 により 学 習 者 への 動 機 づけに 効 果 があったことがこの 研 究 から 示 唆 された 質 問 項 目 5(リスニング 表 を 記 録 し 提 出 することは よかった)では 9 割 近 い 学 生 が 学 習 記 録 帳 による 学 習 形 態 に 満 足 していることがわかる これは 質 問 紙 によ るコメントからも 支 持 される( 予 習 をしっかり 行 うことができた 学 習 しようという 意 欲 や やらなければという 義 務 感 があり 勉 強 できた 自 発 的 に 勉 強 できた 勉 強 したという 充 実 感 が 得 られた 自 律 学 習 を 進 めるいい 機 会 になった 記 録 することで 毎 日 少 しずつで もやろうという 意 欲 がわいた) ただし データ 分 析 においては 他 の 要 因 例 えば 学 習 者 の 態 度 動 機 づけ 性 格 認 知 スタイル 学 習 ストラテジー 性 別 などの 影 響 を 受 けている ということを 無 視 している 点 が 本 研 究 デザインの 限 界 であることを 付 記 する
80 表 7.アンケート 項 目 別 集 計 結 果 と 対 応 のあるt 検 定 の 結 果 全 体 ( n = 65) L2 群 (n= 36) L1 群 (n= 29) 変 化 量 t p 項 目 M (SD) M (SD) M (SD) Q1 リスニング 表 を 記 録 し 提 出 することで 学 習 時 間 が 増 えた 3.9 (1.09) 4.1 (1.06) 3.7 (1.10) 0.4 2.0 0.16 Q2 リスニング 表 を 記 録 し 提 出 することで 自 己 分 析 をして 英 語 能 力 に 伸 びや 成 果 があった Q3 リスニング 表 を 記 録 し 提 出 することを 熱 心 に 取 り 組 んだ 3.1 (0.91) 3.3 (0.93) 2.9 (0.83) 0.4 2.0 0.04 3.6 (1.04) 3.8 (0.95) 3.4 (1.12) 0.4 2.0 0.10 Q4 リスニング 表 を 記 録 し 提 出 することで 自 発 的 に 学 習 した 4.0 (1.02) 4.1 (1.01) 3.8 (1.04) 0.3 2.0 0.38 Q5 リスニング 表 を 記 録 し 提 出 することは よかった 4.2 (0.80) 4.2 (0.80) 4.2(0.82) 0.0 2.0 0.94 Q6 リスニング 表 を 記 録 することで 学 習 をした という 充 実 感 が 得 られた 3.8 (1.06) 3.8 (1.03) 3.8 (1.12) 0.0 2.0 0.78 注 : 有 意 水 準 5%とした 両 側 検 定 本 研 究 目 的 の3つ 目 である 学 習 記 録 帳 の 利 用 が 学 習 者 の 動 機 づけに 効 果 があるのかを 考 察 する 質 問 項 目 1のリスニング 表 を 記 録 し 提 出 することで 学 習 時 間 が 増 えたに は い と 回 答 した 学 習 者 と いいえ と 回 答 した 学 習 者 に 分 けて 質 問 項 目 3,4,5,6へ の 回 答 の 平 均 値 を 調 査 し 両 群 間 の 比 較 はマン ホイットニーの U 検 定 ( 両 側 検 定 )を 用 い 有 意 水 準 5%にて 行 った マン ホイットニーの U 検 定 を 行 った 結 果, 項 目 3,4,5, 6すべてに 両 群 に 有 意 水 準 5%のもとで, 両 群 の 中 央 値 には 有 意 な 差 が 認 められた 表 8 に 示 す 動 機 づけ 理 論 の 中 に 学 習 者 が 自 分 の 行 動 の 決 定 にどれだけ 関 与 しているかなど が 含 ま れ る 自 己 決 定 理 論 (Self-Determination Theory 以 下 SDT) が あ る( 八 島, 2004) SDTでは 学 習 者 の 動 機 づけが 高 まる 条 件 として 自 律 性 (autonomy) 有 能 性 (competence) 関 係 性 (relatedness)を 挙 げる 学 習 者 は 学 習 の 決 定 権 は 自 分 にあり 自 ら 進 んで 学 びたいという 自 律 性 を 持 ち 学 習 の 中 で できた わかった という 有 能 性 を 感 じ 他 者 と 共 に 学 ぶという 関 係 性 を 持 つことで 動 機 づけが 高 まるということである 学 習 記 録 帳 に 学 習 時 間 を 記 録 し 提 出 することで 学 習 者 の 自 律 性 が 芽 生 え 有 能 性 を 感 じ
81 動 機 づけが 高 められたことがこの 研 究 から 示 唆 された 同 様 の 指 摘 は 東 北 大 学 の 平 成 20 年 度 質 の 高 い 大 学 教 育 推 進 プログラムの 取 組 事 例 にもある 学 習 等 達 成 度 記 録 簿 を 導 入 した 結 果 教 育 効 果 が 一 層 向 上 したとの 報 告 がある 表 8. 学 習 記 録 帳 の 利 用 が 学 習 者 の 動 機 づけに 与 える 影 響 の 平 均 値 とマン ホイットニー のU 検 定 の 結 果 項 目 項 目 1の 回 答 平 均 値 u 3 5 1 4 5 1 5 5 1 6 5 1 4.4 1.5 4.7 1.3 4.8 3.8 4.4 3 161.7 ** 145.9 ** 120.9 ** 154.7 * * p <.05.(5% 水 準 で 有 意 ) ** p <.01(1% 水 準 で 有 意 ) 項 目 3)リスニング 表 を 記 録 し 提 出 することを 熱 心 に 取 り 組 んだ 項 目 4)リスニング 表 を 記 録 し 提 出 することで 自 発 的 に 学 習 した 項 目 5)リスニング 表 を 記 録 し 提 出 することは よかった 項 目 6)リスニング 表 を 記 録 することで 学 習 をした という 充 実 感 が 得 られた 質 問 紙 によるコメントの 主 のものは 以 下 のとおりである 学 生 の 自 由 欄 の 自 己 診 断 からのコメント 予 習 をしっかり 行 うことができた 自 己 申 告 なので 本 当 の 時 間 を 素 直 に 提 出 できた 勉 強 量 が 目 に 見 えるのは 良 い リスニング 表 が1 日 ずつ 区 切 られているのが 良 かった 自 分 の 勉 強 時 間 が 数 値 で 見 られる 学 習 しようという 意 欲 や やらなければという 義 務 感 があり 勉 強 できた 自 発 的 に 勉 強 できた 勉 強 したという 充 実 感 が 得 られた 記 録 することで 勉 強 量 や 何 曜 日 に 勉 強 するのかが 自 覚 できる 通 学 の 時 間 を 有 意 義 に 使 うことができた 全 く 予 習 をせずに 授 業 に 臨 むことがなくなった 自 律 学 習 を 進 めるいい 機 会 になった 記 録 することで 毎 日 少 しずつでもやろうという 意 欲 がわいた 復 習 の 欄 があればよかった リスニング 表 の 提 出 は 機 械 的 だった 自 己 申 告 だけではやる 気 がでない
82 自 己 申 告 だと 正 確 な 時 間 を 申 告 しない 人 がいる 8.まとめと 課 題 本 研 究 では 学 習 記 録 帳 の 利 用 が 英 語 学 習 者 の 学 習 増 加 や 動 機 づけに 及 ぼす 効 果 の 調 査 を 行 った 以 下 に 結 論 を 列 挙 する 1. 学 習 記 録 帳 の 利 用 が 学 習 者 の 学 習 時 間 を 増 加 することが 示 唆 された 2. 学 習 記 録 帳 の 利 用 が 成 績 に 反 映 されるか 否 かで 学 習 者 の 学 習 時 間 の 増 加 や 動 機 づけに 違 いはあるのかを 検 討 すると 両 群 との 差 は 有 意 ではなかった 3. 学 習 記 録 帳 の 利 用 が 学 習 者 の 動 機 づけに 効 果 があるのかを 考 察 したところ 学 習 記 録 帳 に 学 習 時 間 を 記 録 し 提 出 することで 学 習 者 の 自 律 性 が 芽 生 え 有 能 性 を 感 じ 動 機 づけが 高 められたことがこの 研 究 から 示 唆 された 以 上 のことから 学 習 記 録 帳 の 利 用 が 学 習 者 の 学 習 時 間 を 増 加 することが 示 唆 され その 増 加 には 成 績 の 反 映 による 影 響 はなく 学 習 者 の 動 機 づけに 効 果 があったと 結 論 付 け る 最 後 に 本 研 究 の 限 界 点 として 以 下 の2 点 を 指 摘 しておく 第 1に 信 憑 性 妥 当 性 の ある 試 験 を 導 入 し 学 習 者 の 学 習 効 果 を 測 定 する 必 要 がある 第 2に 本 研 究 は 調 査 協 力 者 の 数 が 極 めて 限 られた 研 究 である 今 後 も 更 なる 調 査 を 重 ねることで 学 習 者 の 動 機 づ けの 調 査 の 結 果 の 一 般 化 可 能 性 を 深 めていく 必 要 がある 参 考 文 献 Gage, N.L. & Berliner, D.C. (1998)Educational Psychology. Boston: Houghton Mifflin Company. Gagne, R.M. & Driscoll, M.P. (1988)Essentials of Learning for Instruction. New Jersey: Premtice Hall. Krashen, S.D. & T.D.Terrell. (1983)The Natural Approach: The Language Acquisition in the Classroom. Prentice Hall. McCombs, B.L. (1988) Motivational Skills Training: Combining Metacognitive, Cognitive and Affective Learning Strategies from Weinstein, C.E., Goetz, E.T. & Alexander, P.A (eds.)learning and Study Strategies: Issues in Assessment, Instruction and Evaluation. San Diego: Academic Press Inc, p141-169. 八 島 智 子 (2004) 外 国 語 コミュニケーションの 情 意 と 動 機 大 阪 : 関 西 大 学 出 版 会
83 Yomiuri Online News センター 試 験 見 直 しなど 文 科 省 が 中 教 審 に 諮 問 (http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120828-oyt1t01107.htm 2012 年 8 月 28 日 ) Yomiuri Online News 大 学 生 に 勉 強 させよ 対 策 の 大 学 に 財 政 優 遇 案 (http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20120307-oyt8t00902.htm 2012 年 3 月 8 日 ) 質 の 高 い 大 学 教 育 推 進 プログラム (http://www.eng.tohoku.ac.jp/edu/?menu=edu-gp)
84 Appendix 1 英 語 リスニング 表 NAME 1 day 2 day 3 day 4 day 5 day 6 day 7 day 合 計 印 Unit 1 Unit 2 Unit 3 Unit 4 Unit 5 Unit 6 Unit 7 Unit 8 Unit 9 Unit 10 Unit 11 Unit 12 合 計