我 が 国 に 必 要 な 水 陸 両 用 作 戦 能 力 とその 運 用 上 の 課 題 米 軍 の 水 陸 両 用 作 戦 能 力 の 調 査 分 析 を 踏 まえて 中 矢 潤 はじめに 我 が 国 の 防 衛 政 策 を 振 り 返 ると 51 大 綱 は 1 冷 戦 期 におけるものであり 旧 ソ 連 の 脅 威 に 対 抗 するため 抑 止 効 果 を 中 心 とし 正 面 装 備 を 整 え 士 気 の 高 い 隊 員 を 練 成 するといった 基 盤 的 防 衛 力 を 作 る 時 代 であった これに 続 く 07 大 綱 から 22 大 綱 の 間 は 基 盤 的 防 衛 力 構 想 によって 育 成 した 公 共 の 財 産 である 防 衛 力 を 存 分 に 活 用 し インド 洋 派 遣 海 賊 対 処 等 の 働 く 時 代 へと 変 化 した 2 そ して 平 成 22 年 12 月 に 策 定 された 22 大 綱 において これまでの 基 盤 的 防 衛 力 に 代 えて 新 たに 動 的 防 衛 力 という 概 念 が 我 が 国 の 防 衛 力 の 考 え 方 として 公 式 に 採 用 された 動 的 防 衛 力 は 運 用 を 重 視 し 各 種 事 態 へのシームレスな 対 応 を 求 めるも のである 3 その 具 体 例 として 島 嶼 部 に 何 らかの 危 機 があった 場 合 には 陸 海 空 の 部 隊 を 迅 速 かつ 機 動 的 に 統 合 運 用 し 即 座 にそれに 対 処 するとされている 4 これは 海 から 陸 への 軍 事 作 戦 である 水 陸 両 用 作 戦 能 力 を 求 めているにほかな らない 極 めて 多 数 の 島 嶼 を 有 する 我 が 国 にとって 5 水 陸 両 用 作 戦 能 力 が 島 嶼 部 に おける 攻 撃 に 際 して 必 要 であるということも 当 然 の 帰 結 であるかもしれない 1 防 衛 省 新 たな 防 衛 大 綱 ( 平 成 23 年 度 以 降 に 係 る 防 衛 計 画 の 大 綱 ) 1 頁 http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/2011/taikou_new.pdf 2012 年 10 月 27 日 アクセス 防 衛 計 画 の 大 綱 ( 防 衛 大 綱 )は 我 が 国 の 安 全 保 障 の 基 本 方 針 防 衛 力 の 意 義 や 役 割 さらに これに 基 づく 自 衛 隊 の 具 体 的 な 体 制 主 要 装 備 の 整 備 目 標 の 水 準 といっ た 今 後 の 防 衛 力 の 在 り 方 等 にについて 基 本 方 針 を 示 すものである 防 衛 大 綱 は 昭 和 52 年 度 以 降 に 係 る 防 衛 の 大 綱 (51 大 綱 ) 平 成 8 年 以 降 に 係 る 防 衛 計 画 の 大 綱 (07 大 綱 ) 平 成 17 年 度 以 降 に 係 る 防 衛 計 画 の 大 綱 (16 大 綱 ) 平 成 23 年 度 以 降 に 係 る 防 衛 計 画 の 大 綱 (22 大 綱 )とこれまで 4 度 改 訂 されてきた 2 石 川 亨 海 上 幕 僚 長 式 辞 海 上 自 衛 隊 創 設 50 周 年 朝 雲 新 聞 社 2002 年 60 頁 3 防 衛 省 新 たな 防 衛 大 綱 ( 平 成 23 年 度 以 降 に 係 る 防 衛 計 画 の 大 綱 ) 9 頁 4 同 上 11 頁 5 我 が 国 の 国 土 構 成 島 数 は 6 852 である 総 務 省 統 計 局 編 第 五 十 九 回 日 本 統 計 年 鑑 2009 年 11 月 17 頁 82
我 が 国 は 専 守 防 衛 を 標 榜 してきたところ 水 陸 両 用 作 戦 能 力 は 攻 勢 的 な 印 象 ゆ え これまで 正 面 から 議 論 されることはなかった しかし F-4EJ の 航 空 自 衛 隊 導 入 時 専 守 防 衛 の 見 地 から 対 地 攻 撃 の 機 能 及 び 空 中 給 油 装 置 が 撤 去 された 一 方 で 後 に 導 入 された F-15J については そのいずれの 機 能 も 撤 去 されること はなかったことからも 分 かるように ある 機 能 が 専 守 防 衛 に 合 致 したものかど うかは その 時 々の 国 内 外 の 情 勢 により 決 定 される したがって 22 大 綱 におい て 島 嶼 部 に 対 する 攻 撃 への 対 応 が 明 示 され 6 それを 受 けた 防 衛 白 書 におい て 島 嶼 部 に 対 する 攻 撃 への 対 応 として 事 前 に 兆 候 が 得 られず 島 嶼 を 占 領 さ れた 場 合 はこれを 奪 回 するための 作 戦 を 行 う 7 とされた 以 上 我 が 国 の 特 性 に 応 じた 水 陸 両 用 作 戦 能 力 について 議 論 する 必 要 があることは 明 らかである 以 上 のような 問 題 意 識 に 基 づき 本 論 文 では 我 が 国 に 必 要 な 水 陸 両 用 作 戦 能 力 と その 運 用 上 の 課 題 を 明 らかにする そのため 水 陸 両 用 作 戦 に 関 し 一 日 の 長 のある 米 軍 の 水 陸 両 用 作 戦 の 概 念 を 整 理 する 次 に 米 軍 の 水 陸 両 用 作 戦 の 作 戦 様 相 を 分 析 した 後 我 が 国 が 水 陸 両 用 作 戦 能 力 を 発 揮 する 事 態 を 述 べ 我 が 国 に 必 要 な 水 陸 両 用 作 戦 能 力 について 導 出 する その 上 で 我 が 国 が 水 陸 両 用 作 戦 能 力 を 保 持 した 際 の 運 用 上 の 課 題 について 論 じる 1 米 軍 の 水 陸 両 用 作 戦 の 概 念 等 本 項 では 水 陸 両 用 作 戦 の 概 念 について まずその 定 義 を 明 らかにし その 作 戦 を 実 施 するための 水 陸 両 用 作 戦 部 隊 の 概 要 について 論 述 する (1) 水 陸 両 用 作 戦 の 定 義 と 種 類 水 陸 両 用 作 戦 に 関 するドクトリンは 米 統 合 参 謀 本 部 から 水 陸 両 用 作 戦 に 関 する 統 合 ドクトリン(Joint Doctrine for Amphibious Operations) が 発 簡 され ており 冷 戦 後 1992 年 10 月 2001 年 9 月 2009 年 8 月 に 改 訂 されている 8 3 つの 統 合 ドクトリンの 水 陸 両 用 作 戦 の 定 義 を 比 較 すると 1992 年 の 統 合 ドクト 6 平 成 23 年 度 以 降 に 係 る 防 衛 計 画 の 大 綱 について ( 平 成 23 年 12 月 17 日 閣 議 決 定 ) 9 頁 7 防 衛 省 編 防 衛 白 書 平 成 24 年 版 2012 年 176 頁 8 Joint Chiefs of Staff, Joint Doctrine for Amphibious Operations, Joint Publication 3-02, September 8, 1992; Joint Chiefs of Staff, Joint Doctrine for Amphibious Operations, Joint Publication 3-02, September 19 2001; Joint Chiefs of Staff, Joint Doctrine for Amphibious Operations, Joint Publication 3-02, August 10, 2009 [hereafter JP3-02, 2009]. 83
リンと 2001 年 以 降 の 統 合 ドクトリンとでは 大 きく 異 なっている 1992 年 の 統 合 ドクトリンの 水 陸 両 用 作 戦 の 定 義 は 敵 又 は 潜 在 的 な 敵 の 海 岸 への 上 陸 に 伴 う 海 からの 行 う 攻 撃 としており その 種 類 は 水 陸 両 用 強 襲 (Amphibious Assault) 水 陸 両 用 襲 撃 (Amphibious Raid) 水 陸 両 用 陽 動 (Amphibious Demonstration) 水 陸 両 用 撤 退 (Amphibious Withdrawal) とされていた 9 これらは 国 家 の 領 土 や 政 治 的 独 立 等 を 軍 事 的 手 段 によって 守 る 伝 統 的 安 全 保 障 分 野 の 作 戦 である 2001 年 以 降 の 統 合 ドクトリンでは その 定 義 を 上 陸 部 隊 を 陸 上 へ 導 く 海 か ら 行 う 軍 事 作 戦 としており 敵 地 への 攻 撃 から 陸 上 へ 部 隊 を 揚 陸 させる 軍 事 作 戦 と 変 更 している 10 この 変 更 により 水 陸 両 用 作 戦 の 種 類 に 関 しても これまでの 伝 統 的 な 水 陸 両 用 作 戦 に 加 えて 人 道 支 援 / 災 害 救 援 (Humanitarian Assistance/Disaster Relief: HA/DR) 及 び 海 賊 対 処 などの 非 伝 統 的 安 全 保 障 分 野 である 11 他 の 作 戦 の 水 陸 両 用 支 援 (Amphibious Support to Other Operations) が 定 義 された 12 これらの 5 つの 作 戦 のうち 最 も 烈 度 が 高 いものが 水 陸 両 用 強 襲 であり 敵 に 占 領 されている 又 は 敵 の 威 力 圏 下 にあ る 海 岸 部 に 上 陸 部 隊 を 展 開 することである 防 衛 白 書 に 言 う 島 嶼 部 を 占 領 された 場 合 これを 奪 回 するための 作 戦 13 に 該 当 するものがあるとすれば こ の 作 戦 形 態 であろう (2) 水 陸 両 用 作 戦 部 隊 の 概 要 水 陸 両 用 作 戦 の 基 幹 となる 部 隊 は 目 的 地 に 上 陸 する 主 体 となる 海 兵 空 陸 任 務 部 隊 (Marine Air-Ground Task Force: MAGTF)とこれを 輸 送 する 水 陸 両 用 戦 隊 (Amphibious Squadron: PHIBRON)からなる さらに 作 戦 の 態 様 によ 9 水 陸 両 用 襲 撃 とは 敵 海 岸 への 急 襲 一 時 的 な 占 拠 を 含 むが 予 め 撤 退 を 計 画 して いるものであり 水 陸 両 用 強 襲 と 違 い 敵 地 域 の 持 続 的 確 保 を 前 提 としておらず ま た 橋 頭 堡 も 不 要 である 水 陸 両 用 陽 動 とは 敵 にとって 不 利 な 行 動 方 針 をとらすよ う 敵 を 欺 く 目 的 で 兵 力 を 誇 示 することにより 敵 を 欺 瞞 する 作 戦 をいう 水 陸 両 用 撤 退 とは 敵 若 しくは 潜 在 的 な 敵 の 海 岸 から 船 舶 及 び 航 空 機 によって 海 上 に 部 隊 を 撤 退 する ことをいう JP3-02, 2009, p.xi. 10 Ibid. 11 防 衛 省 編 防 衛 白 書 平 成 24 年 版 111 頁 12 他 の 作 戦 の 水 陸 両 用 支 援 とは 紛 争 防 止 あるいは 危 機 沈 静 化 に 寄 与 する 種 類 の 水 陸 両 用 作 戦 であり 非 伝 統 的 安 全 保 障 分 野 の 多 様 な 目 標 達 成 に 寄 与 する 海 からの 軍 事 作 戦 と され グレナダ 等 の 非 戦 闘 員 退 避 活 動 (Non-Combatant Evacuation Operation: NEO) HA/DR まで 含 む 概 念 である JP3-02, 2009, p.xi. 13 防 衛 省 編 防 衛 白 書 平 成 24 年 版 176 頁 84
って 陸 海 空 軍 から 必 要 な 兵 力 が 追 加 される ア 海 兵 空 陸 任 務 部 隊 の 概 要 海 兵 空 陸 任 務 部 隊 (MAGTF)とは 軍 事 作 戦 の 領 域 に 必 要 とされる 多 様 な 任 務 に 対 処 できる 基 本 的 な 編 成 (Principal Organization for Missions Across the Range of Military Operations) とされており 14 独 立 した 作 戦 能 力 を 確 保 する ため 4 種 類 の 部 隊 から 編 成 される それは 司 令 部 (Command Element: CE) その 下 の 陸 上 戦 闘 部 隊 (Ground Combat Element: GCE) 航 空 戦 闘 部 隊 (Aviation Combat Element: ACE) 及 び 兵 站 戦 闘 部 隊 (Logistics Combat Element: LCE )から 成 る 15 この 海 兵 空 陸 任 務 部 隊 は その 規 模 により 海 兵 遠 征 軍 (Marine Expeditionary Force: MEF) 海 兵 遠 征 旅 団 (Marine Expedictio- nary Brigade: MEB) 海 兵 遠 征 隊 (Marine Expeditionary Unit: MEU)に 分 か れている 海 兵 遠 征 軍 (MEF)は 水 陸 両 用 強 襲 を 含 む 全 ての 軍 事 作 戦 能 力 を 持 つとされ 海 兵 隊 員 45,000 人 で 60 日 間 の 作 戦 行 動 が 可 能 である 海 兵 遠 征 旅 団 (MEB)の 能 力 は 小 規 模 紛 争 に 対 応 可 能 であり 海 兵 隊 員 8,000~18,000 人 で 30 日 間 の 作 戦 行 動 が 可 能 である 海 兵 遠 征 隊 (MEU)の 能 力 は 海 兵 隊 員 2,200 人 で 15 日 間 の 作 戦 行 動 が 可 能 である 16 ここで 水 陸 両 用 作 戦 の 最 も 基 本 的 な 編 成 である 海 兵 遠 征 隊 (MEU)の 装 備 編 成 を 見 ることとする MEU は 陸 上 戦 闘 部 隊 (GCE) 航 空 戦 闘 部 隊 (ACE) 及 び 兵 站 戦 闘 部 隊 (LCE)の3つの 戦 闘 部 隊 から 成 る GCE の 主 要 装 備 としては 1 水 陸 両 用 強 襲 車 両 (Assault Amphibious Vehicle: AAV) 2 軽 装 甲 車 (Light Armored Vehicle: LAV) 3 高 機 動 多 目 的 車 (High Mobility Multipurpose Wheeled Vehicle: HMMWV) 460mm 迫 撃 砲 581mm 迫 撃 砲 6155mm 榴 弾 砲 7 対 戦 車 ミサイル 8 携 行 対 戦 車 ミサイルを 装 備 している 17 航 空 戦 闘 部 隊 (ACE)は 水 陸 両 用 強 襲 作 戦 時 近 接 航 空 支 援 として1AV-8B ハリヤー 攻 撃 機 人 員 輸 送 として2UH-1N 多 目 的 ヘリコプター 3CH-53E 掃 海 / 輸 送 ヘリコプター 4CH-46 中 型 輸 送 ヘリコプター 陸 上 戦 闘 用 等 と して5AH-1 コブラ 攻 撃 ヘリコプター 空 中 給 油 等 のための6KC 130J 空 中 給 油 機 を 有 している 18 兵 站 戦 闘 部 隊 (LCE)には 水 陸 両 用 強 襲 作 戦 時 仮 設 飛 行 場 を 建 設 する 能 力 が 14 JP3-02, 2009, p.Ⅱ-7. 15 Ibid. 16 Ibid. 17 北 村 淳 北 村 愛 子 アメリカ 海 兵 隊 のドクトリン 芙 蓉 書 房 出 版 2009 年 169 頁 18 同 上 85
ある その 主 要 な 装 備 は 1ブルドーザー 2フォークリフト 3ダンプトラ ック(Medium Tactical Vehicle Replacement: MTVR) 4 逆 浸 透 水 浄 化 ユニッ ト 5 電 源 車 等 である 19 これらの 民 生 品 の 装 備 は 動 揺 する 艦 内 でも 安 全 に 運 搬 しなければならないため 固 定 するためのタイダウンチェーンが 取 り 付 け られるようタイダウンポイントを 装 備 し 艦 載 仕 様 とする 必 要 がある 20 イ 水 陸 両 用 戦 隊 及 び 水 陸 両 用 即 応 群 等 の 概 要 水 陸 両 用 戦 隊 (PHIBRON)とは 水 陸 両 用 作 戦 を 実 施 する 上 で 人 員 及 び 装 備 を 輸 送 するための 戦 術 編 成 であり 通 常 4 万 トン 級 の 水 陸 両 用 強 襲 揚 陸 艦 (Amphibious Assault Ship: LHA LHD)1 隻 2 万 トン 前 後 のドック 型 水 陸 両 用 輸 送 艦 (Amphibious Transport Dock: LPD)1 隻 1 万 トン 級 のドック 型 揚 陸 艦 (Dock Landing Ship: LSD)1 隻 の 3 隻 で 編 成 されている 21 本 編 成 の 水 陸 両 用 戦 隊 (PHIBRON)は 強 襲 揚 陸 艦 (LHA/LHD)の 9 つ のヘリスポット 航 空 機 整 備 能 力 指 揮 統 制 機 能 (Command and Control: C2) を 有 しており かつ 高 度 な 治 療 ができる 医 療 設 備 を 有 している 22 加 えて ド ック 型 水 陸 両 用 輸 送 艦 (LPD) 及 びドック 型 揚 陸 艦 (LSD) 搭 載 の 上 陸 用 舟 艇 (Landing Craft Utility: LCU) 及 びエア クッション 揚 陸 艇 (Landing Craft Air Cushion: LCAC)により ヘリコプターによる 迅 速 な 海 兵 隊 員 等 の 揚 陸 のみな らず 水 陸 両 用 強 襲 車 両 (AAV) 戦 車 等 の 重 火 器 等 の 陸 揚 げが 可 能 である 23 水 陸 両 用 戦 隊 (PHIBRON)には 1 個 の 海 兵 遠 征 隊 (MEU)がほぼ 常 時 乗 艦 しており 不 測 の 事 態 に 即 応 できる 態 勢 を 維 持 している 24 この PHIBRON と MEU を 合 わせたものが 水 陸 両 用 即 応 群 (Amphibious Ready Group: ARG) である 例 えば 2011 年 3 月 の 東 日 本 大 震 災 発 生 当 時 フィリピン 東 方 海 域 で 行 動 中 のドック 型 揚 陸 艦 ジャーマンタウン (USS Germantown: LSD-42) 19 同 上 169 頁 20 第 11 水 陸 両 用 戦 隊 (PHIBRON11) 司 令 官 リー(Brand Lee) 大 佐 筆 者 によるインタビュ ー 於 米 海 軍 佐 世 保 基 地 強 襲 揚 陸 艦 ボノム リシャール (USS Bonhomme Richard: LHD-6) 艦 内 2012 年 5 月 16 日 東 日 本 大 震 災 の 際 は 日 本 国 内 において 初 めて ド ック 型 揚 陸 艦 トーティガ (USS Tortuga: LSD-46)で 陸 上 自 衛 隊 の 隊 員 約 300 名 と 車 両 90 台 を 北 海 道 の 苫 小 牧 から 青 森 県 の 大 湊 まで 運 んだが 陸 上 自 衛 隊 の 車 両 は 艦 載 を 前 提 としておらず タイダウンポイントがなかったため 同 艦 のデッキに 固 定 するのに 手 間 がかかった と 発 言 している 21 同 上 22 同 上 23 ジャーマンタウン(USS Germantown) 副 長 リーチ(Jason R. Leach) 中 佐 筆 者 によるイ ンタビュー 於 米 海 軍 佐 世 保 基 地 ドック 型 揚 陸 艦 ジャーマンタウン (USS Germantown) 艦 内 2012 年 3 月 7 日 24 同 上 86
は いずれの 港 に 寄 港 することなく 日 本 へ 急 行 し 25 日 本 海 で 強 襲 揚 陸 艦 エセ ックス (USS Essex: LHD-2)と 合 同 し 米 軍 の 展 開 する トモダチ 作 戦 に 従 事 した 26 このように HA/DR のための 特 段 の 準 備 をすることなしに 不 測 の 事 態 に 即 応 することが 可 能 である このような PHIBRON と MEU を 合 わせた 水 陸 両 用 即 応 群 (ARG)の 主 要 装 備 の 一 例 を 図 1に 示 す 27 水 陸 両 用 即 応 群 (ARG)の 主 要 装 備 の 一 例 LHA/LHD LPD LSD 図 1 水 陸 両 用 即 応 群 (ARG)の 主 要 装 備 の 一 例 もちろん 水 陸 両 用 即 応 群 (ARG)のみで 全 ての 水 陸 両 用 作 戦 が 実 施 できる わけではない 特 に 水 陸 両 用 作 戦 の 中 で 最 も 烈 度 の 高 い 水 陸 両 用 強 襲 に おいては ARG を 中 核 として ミサイル 巡 洋 艦 3 隻 の 水 上 戦 闘 艦 による 水 上 戦 闘 群 (Surface Action Group: SAG)と 攻 撃 型 原 子 力 潜 水 艦 (Nuclear Powered Submarine: SSN)1 隻 を 加 えて 遠 征 打 撃 群 (Expeditionary Strike 25 同 上 26 下 平 拓 哉 東 日 本 大 震 災 における 日 米 共 同 作 戦 日 米 同 盟 の 新 たな 局 面 海 幹 校 戦 略 研 究 第 1 巻 2 号 2011 年 12 月 50-70 頁 27 米 太 平 洋 海 兵 隊 連 絡 官 ニューシャム(Grant F New Sham) 大 佐 に 対 するインタビュ ー 於 米 海 軍 横 須 賀 基 地 2012 年 2 月 22 日 インタビュー 時 に 提 供 された 米 海 兵 隊 の 資 料 87
Group: ESG)を 編 成 し 28 水 陸 両 用 目 標 区 域 (Amphibious Objective Area: AOA) 内 で 29 作 戦 を 遂 行 する 遠 征 打 撃 群 は Strike という 言 葉 が 表 して いるように 搭 載 ミサイルの 対 地 攻 撃 能 力 と 対 空 対 水 上 対 潜 能 力 が 強 化 さ れている さらに 水 陸 両 用 目 標 区 域 (AOA)の 周 辺 海 域 の 航 空 及 び 海 上 優 勢 は 空 母 1 隻 ミサイル 巡 洋 艦 を 中 核 とした 3 隻 の 水 上 戦 闘 艦 による 水 上 戦 闘 群 (SAG) 攻 撃 型 原 子 力 潜 水 艦 1 隻 及 び 補 給 艦 1 隻 からなる 空 母 打 撃 群 (Carrier Strike Group: CSG)で 確 保 する 30 2 米 軍 の 水 陸 両 用 作 戦 能 力 本 項 では 米 軍 の 水 陸 両 用 作 戦 の 流 れとそれに 要 する 能 力 について 明 らかに する 1 項 で 述 べたように 我 が 国 において 生 起 する 可 能 性 のある 水 陸 両 用 作 戦 は 島 嶼 部 を 占 領 された 場 合 の 奪 回 作 戦 である 水 陸 両 用 強 襲 であり また 最 も 高 い 烈 度 に 対 応 する 作 戦 の 流 れとそれに 要 する 能 力 を 分 析 すれば 他 の4 種 類 の 水 陸 両 用 作 戦 はこれに 包 含 されることから 本 項 では 米 軍 の 水 陸 両 用 強 襲 を 分 析 する (1) 水 陸 両 用 強 襲 の 困 難 性 水 陸 両 用 強 襲 が 水 陸 両 用 作 戦 の 種 類 の 中 で 最 も 困 難 なのは 次 の2つの 理 由 があるからである 第 1は 揚 陸 する 主 体 に 関 し 既 に 守 りを 固 めている 敵 が 存 在 する 海 岸 へ 揚 陸 艦 から 上 陸 用 舟 艇 等 を 発 進 させ 敵 海 岸 に 移 動 する 過 程 は 敵 の 攻 撃 に 対 し て 味 方 の 防 衛 態 勢 は 極 めて 脆 弱 なものとなり 31 かつ その 過 程 において 近 接 航 空 支 援 (Close Air Support: CAS)をする 航 空 機 火 力 支 援 を 実 施 する 28 Expeditionary Strike Group, GrovalSecurity. http://www.globalsecurity.org/ militar y/agency/navy/esg.htm 2012 年 10 月 27 日 アクセス 29 JP3-02, 2009. 30 Carrier Strike Group, GrovalSecurity.http://www.globalsecurity.org/ military/ agency/ navy/csg.htm 2012 年 10 月 27 日 アクセス 31 リデル ハートは 航 空 戦 力 の 移 動 性 と 柔 軟 性 が 飛 躍 的 に 向 上 したことは 水 陸 両 用 作 戦 を 迎 え 撃 つ 防 御 側 を 著 しく 優 位 にしたといい 外 国 にある 敵 軍 の 前 面 への 上 陸 は 戦 争 作 戦 遂 行 の 中 でもっとも 困 難 なものであった 今 日 では 輸 送 船 団 が 海 岸 に 接 近 するに つれて 防 御 側 の 航 空 部 隊 の 格 好 の 餌 食 となるので 前 面 作 戦 はさらに 困 難 いやほとん ど 不 可 能 となった さらに 甲 板 のない 小 船 で 上 陸 していくことは 空 からの 攻 撃 でいっ そう 弱 点 をさらすのである ( Liddell Hart,BH.The Defence of Britain,London,1939, p.130)と 指 摘 している 野 中 郁 次 郎 アメリカ 海 兵 隊 中 公 公 論 社 1995 年 30 頁 88
艦 艇 が 緊 密 に 連 携 し 必 要 な 物 資 を 必 要 な 順 序 に 揚 陸 させるという 複 雑 な 作 戦 を 敵 の 銃 火 の 下 で 行 う 必 要 があるためである 32 第 2は 上 陸 用 舟 艇 等 の 揚 陸 を 成 功 させるために 陸 海 空 各 軍 種 の 多 様 な 作 戦 を 時 間 と 空 間 を 同 期 させ 遂 行 する 必 要 が 生 じることを 視 野 にいれなければな らないことである すなわち 作 戦 に 際 しては 状 況 により 事 前 に 特 殊 部 隊 等 を 敵 地 に 潜 入 させ 同 部 隊 による 敵 のかく 乱 及 び 敵 の 兵 力 規 模 位 置 等 の 情 報 収 集 が 必 要 である さらに 敵 兵 力 への 艦 艇 等 からの 対 地 攻 撃 による 敵 の 減 殺 主 力 部 隊 が 上 陸 するための 掃 海 水 道 の 確 保 海 岸 の 地 雷 の 除 去 などを 円 滑 に 連 携 させ 実 施 しなければならない 戦 力 投 射 部 隊 は 海 から 調 和 した 一 連 の 攻 撃 ( 精 密 射 撃 から 水 陸 両 用 部 隊 による 急 襲 に 至 るまで)を 実 行 することがで きなければならない 33 と 言 われる 所 以 である (2) 水 陸 両 用 強 襲 の 概 要 以 上 のように 水 陸 両 用 強 襲 作 戦 は 多 様 な 作 戦 が 統 合 されて 実 施 されること から これらを 構 成 する 部 分 的 な 作 戦 が 一 瞥 して 分 かるような 記 述 を 米 軍 の 戦 術 ドキュメントから 見 出 すことはできない しかし 統 合 ドクトリン 水 陸 両 用 作 戦 教 範 (Ship-To-Shore Movement) 34 Expeditionary Strike Group: Command Structure Design Support 35 などから 具 体 的 な 水 陸 両 用 強 襲 の 概 要 は 次 の 表 のようにまとめることができる 32 第 76 任 務 部 隊 (TF76) 作 戦 主 任 幕 僚 トンプソン(Ed Thompson) 中 佐 筆 者 によるイン タビュー 於 ホワイトビーチ( 沖 縄 ) 2012 年 5 月 15 日 33 サミュエル C ハワード マイケル S グロエン 水 陸 両 用 作 戦 今 かつてないほ どに 下 平 拓 哉 訳 海 幹 校 戦 略 研 究 第 2 巻 1 号 増 刊 2012 年 8 月 26 頁 34 Office of the Chiefe of Naval Operations and Headquarters,US Marine Corps, Ship-To-Shore Movement, NWP3-02.1(Formerly NWP22-3(Rev.B)), August 1993. 35 http://www.dodccrp.org/events/10th_iccrts/cd/papers/364.pdf#search ='EXPEDITIONALY+STRIKE+GROUP%3ACOMMAND+STRUCTURE' 2012 年 10 月 8 日 アクセス 89
表 米 軍 の 水 陸 両 用 強 襲 作 戦 の 概 要 部 分 的 な 作 戦 任 務 米 軍 の 兵 力 航 空 優 勢 の 確 保 AOA 周 辺 空 域 の 確 保 CSG 海 上 優 勢 の 確 保 AOA 周 辺 海 域 の 確 保 CSG 敵 地 への 潜 入 敵 情 把 握 攻 撃 効 果 判 定 SSN(MEU の 一 部 ) UAV 敵 陸 上 兵 力 の 減 殺 対 地 攻 撃 ESG の SAG 及 び SSN 空 中 からの 上 陸 水 路 の 確 保 兵 員 輸 送 機 雷 排 除 上 陸 水 路 の 確 認 AV-8B CH-46 AH-1 MEU の 主 力 MH-53E MSO 36 UUV 37 EODT 38 洋 上 からの 上 陸 兵 員 重 火 器 輸 送 LCAC LCU AAV * 著 者 作 成 航 空 優 勢 の 確 保 及 び 海 上 優 勢 の 確 保 は 他 の 軍 事 作 戦 と 同 様 に 水 陸 両 用 強 襲 作 戦 についても 必 要 条 件 であり 水 陸 両 用 目 標 区 域 (AOA) 周 辺 の 航 空 海 上 優 勢 を 確 保 する 必 要 がある 一 般 的 には この 任 務 は 空 母 打 撃 群 (CSG)が 担 うことになり 具 体 的 には 水 陸 両 用 目 標 区 域 (AOA) 周 辺 空 域 に おける 航 空 優 勢 の 確 保 は 空 母 打 撃 群 (CSG)の 戦 闘 機 等 が また 水 陸 両 用 目 標 区 域 (AOA) 周 辺 海 域 の 海 上 優 勢 の 確 保 は 空 母 打 撃 群 (CSG)の 戦 闘 艦 艇 等 が 対 応 する 敵 地 への 潜 入 では 無 人 機 (Unmanned Aerial Vehicle: UAV)による 情 報 収 集 に 併 せて 水 陸 両 用 即 応 群 (ARG)の 海 兵 遠 征 隊 (MEU)の 一 部 の 海 兵 隊 員 を 隠 密 裏 に 潜 入 させ 敵 兵 力 の 所 在 兵 員 数 等 の 敵 情 を 把 握 し トマホー ク 艦 艇 からの 射 撃 等 による 敵 陸 上 兵 力 の 減 殺 のための 対 地 攻 撃 目 標 決 定 の 資 とする 対 地 攻 撃 後 攻 撃 効 果 の 判 定 を 潜 入 している 海 兵 隊 員 に 実 施 させ 我 が 上 陸 可 能 な 数 まで 敵 兵 力 を 減 じたと 判 定 した 場 合 は AV-8B(シー ハリアー) 及 び AH-1(コブラ 攻 撃 ヘリコプター)の 近 接 航 空 支 援 (CAS)の 下 CH-46( 輸 送 ヘリコプター) 等 で 海 兵 遠 征 隊 (MEU)の 主 力 を 空 中 から 36 掃 海 艦 (Mine Sweeper Ocean: MSO) 37 無 人 水 中 航 走 体 (Unmanned Underwater Vehicle: UUV) 38 水 中 障 害 爆 破 処 分 隊 (Explosive Ordnance Disposal Diver Team: EODT) 90
目 的 地 に 上 陸 させ 敵 兵 力 を 制 圧 する 島 嶼 奪 回 を 確 立 するため 追 加 兵 力 を 上 陸 させるとともに 重 火 器 等 を 揚 陸 さ せる 必 要 がある これには 通 常 エア クッション 揚 陸 艇 (LCAC) 及 び 上 陸 用 舟 艇 (LCU)が 用 いられる この 際 島 嶼 部 の 周 辺 海 域 に 敵 の 敷 設 した 機 雷 原 が 存 在 する 可 能 性 がある 場 合 上 陸 に 先 立 つ 水 路 の 確 保 が 必 要 となる このような 空 と 海 からの 揚 陸 は STOM(Ship-To-Objective Maneuver) と 名 付 けられている 39 この STOM は 米 海 兵 隊 の 新 たな 水 陸 両 用 作 戦 のドク トリンであり 敵 からの 反 撃 が 予 期 されない 水 平 線 以 遠 の 海 域 に 所 在 する 水 陸 両 用 即 応 群 (ARG)から1 目 的 地 の 海 岸 へエア クッション 揚 陸 艇 (LCAC) を 用 いて 海 兵 遠 征 隊 (MEU)の 戦 力 投 射 を 行 う 洋 上 から( 水 平 方 向 )のアプ ローチと2 目 的 地 の 海 岸 より 内 陸 部 にある 敵 の 飛 行 場 等 の 重 要 拠 点 に 対 し ヘ リコプター 等 の 航 空 機 を 用 い MEU の 戦 力 投 射 を 行 う 上 空 からの( 垂 直 方 向 ) アプローチの 2 通 りがある 従 来 は 洋 上 から( 水 平 方 向 )のアプローチのみで あったが ヘリコプターの 能 力 向 上 により 内 陸 部 の 目 的 地 への 直 接 的 な 上 陸 が 可 能 となった その 結 果 装 備 についても 垂 直 方 向 からのアプローチが 可 能 な 航 空 機 が 重 視 されている 40 以 上 から 米 軍 は 航 空 優 勢 海 上 優 勢 を 空 母 打 撃 群 (CSG)で 確 保 し 強 襲 の 主 戦 場 となる 水 陸 両 用 目 標 区 域 (AOA) 内 において 遠 征 打 撃 群 (ESG) は 水 上 戦 闘 群 (SAG) 及 び 攻 撃 型 原 子 力 潜 水 艦 (SSN)の 有 する 対 地 攻 撃 能 力 の 支 援 の 下 水 陸 両 用 即 応 群 (ARG)が 洋 上 から 揚 陸 任 務 を 実 施 しつつ この 困 難 な 水 陸 両 用 強 襲 を 完 遂 する 3 我 が 国 の 水 陸 両 用 作 戦 能 力 次 に 前 項 の 表 で 紹 介 した 米 軍 の 水 陸 両 用 強 襲 の 概 要 とそれを 遂 行 する 機 能 を 対 照 させつつ 我 が 国 に 必 要 な 水 陸 両 用 作 戦 能 力 について 考 察 する (1) 我 が 国 が 水 陸 両 用 作 戦 能 力 を 必 要 とする 事 態 ここまで 米 軍 の 水 陸 両 用 作 戦 の 概 念 とその 能 力 について 分 析 してきたが これらがそのまま 我 が 国 に 当 てはまるものではないであろう それでは 我 が 39 Marine Corps Combat Development Command, Ship-to-Objective Maneuver, May 2011, pp.21-22. 40 TF76 作 戦 主 任 幕 僚 トンプソン 中 佐 筆 者 によるインタビュー 91
国 が 水 陸 両 用 作 戦 能 力 を 必 要 とする 事 態 とはどのような 事 態 であろうか 我 が 国 と 米 国 との 決 定 的 な 違 いは 現 行 憲 法 下 我 が 国 が 武 力 を 行 使 するのは あくまでも 我 が 国 の 自 衛 のためである したがって 有 事 において 我 が 国 が 水 陸 両 用 作 戦 能 力 を 用 いるのは 我 が 国 の 領 土 が 占 領 され これを 奪 回 する 場 合 に 限 られる 一 方 冷 戦 が 終 結 国 家 間 の 相 互 依 存 関 係 が 深 化 した 今 日 かつ て 考 えられたような 我 が 国 の 本 土 に 対 する 大 規 模 な 武 力 侵 攻 の 可 能 性 は 極 め て 低 くなっているといえる これらのことから 仮 に 我 が 国 が 自 国 の 領 土 の 奪 回 作 戦 を 行 うとすれば 最 も 可 能 性 が 高 いものを 想 定 したとしても 限 定 的 な 侵 攻 により 占 領 された 島 嶼 部 の 奪 回 作 戦 に 留 まるものと 考 える これは すな わち 防 衛 白 書 が 言 うところの 事 前 に 兆 候 が 得 られず 島 嶼 を 占 領 された 場 合 は これを 奪 回 する ための 作 戦 である 41 したがって 我 が 国 に 必 要 な 水 陸 両 用 作 戦 能 力 は 島 嶼 小 規 模 という 限 定 された 条 件 で 検 討 を 進 めれ ば 良 いことになる しかしながら 島 嶼 小 規 模 ということからこの 対 処 は 最 終 的 には 日 米 同 盟 に 期 待 しつつもまずは 我 が 国 単 独 で 実 施 しなけれ ばならないことを 意 味 する なぜなら 米 国 の 国 民 が 名 前 も 場 所 も 知 らないであ ろう 我 が 国 の 島 嶼 部 への 攻 撃 に 対 して まず 我 が 国 が 独 力 で 対 応 する 決 意 を 示 さないままでは 米 軍 の 来 援 は 期 待 し 難 いからである 実 際 米 国 議 会 で 2012 年 9 月 12 日 に 開 かれた 南 シナ 海 での 中 国 のパワー と 題 された 公 聴 会 において ヨシハラ(Toshi Yoshihara) 米 海 軍 大 学 教 授 は 尖 閣 防 衛 の 主 責 任 は 当 然 日 本 にあります 万 が 一 の 中 国 の 尖 閣 諸 島 攻 撃 には 日 本 が 最 初 に 独 力 で 対 処 し 反 撃 しなければ 日 米 共 同 防 衛 も 機 能 しないでしょう 42 と 発 言 している (2) 我 が 国 の 水 陸 両 用 作 戦 能 力 想 定 される 事 態 を 島 嶼 小 規 模 とした 場 合 我 が 国 に 必 要 な 水 陸 両 用 作 戦 能 力 を 海 兵 空 陸 任 務 部 隊 (MAGTF)に 当 てはめると 海 兵 遠 征 隊 (MEU) 規 模 の 部 隊 が 1~ 数 個 であろう また これを 輸 送 するため 水 陸 両 用 戦 隊 (PHIBRON) 規 模 の 部 隊 が1 個 程 度 必 要 であろう そこで 前 提 として 海 兵 遠 征 隊 (MEU) 規 模 の 部 隊 で 島 嶼 を 強 襲 するために 必 要 な 我 が 国 の 水 陸 両 用 作 戦 能 力 について 考 察 する 41 防 衛 省 編 防 衛 白 書 平 成 24 年 版 176 頁 42 JB PRESS 2012 年 9 月 26 日 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36177 2012 年 9 月 28 日 アクセス 92
まず 航 空 優 勢 の 確 保 及 び 海 上 優 勢 の 確 保 であるが これについて は たとえ 島 嶼 部 に 対 する 小 規 模 な 攻 撃 への 対 応 であったとしても 水 陸 両 用 作 戦 の 遂 行 には 不 可 欠 である 米 軍 の 場 合 は 空 母 打 撃 群 (CSG)の 戦 闘 機 と 艦 艇 により これを 確 保 することになっている しかし 自 国 から 遠 く 離 れたと ころでの 作 戦 を 前 提 としている 米 国 とは 異 なり 我 が 国 の 場 合 は あくまでも 自 国 領 土 の 奪 回 であることから 作 戦 区 域 は 必 然 的 に 本 土 の 近 傍 にあること になる したがって 現 有 能 力 が 十 分 であるか 否 かはともかく 少 なくとも 自 衛 隊 は その 機 能 を 有 しており 統 合 運 用 でその 機 能 を 満 たすことができる 次 に 敵 地 への 潜 入 であるが 仮 に 敵 がある 程 度 の 防 御 態 勢 を 確 立 した 島 嶼 を 奪 回 しようとするならば 必 要 となる 能 力 と 考 えられる その 任 務 は 自 衛 隊 が 現 に 保 有 する 機 能 で 可 能 か 否 かは より 詳 細 な 検 討 が 必 要 であるが 陸 上 自 衛 隊 の 特 殊 作 戦 群 や 無 人 機 (UAV)を 運 用 する 部 隊 などはこれに 充 当 し 得 る 可 能 性 がある 部 隊 である 敵 陸 上 兵 力 の 減 殺 については 自 衛 隊 の 現 有 能 力 で 実 施 するとすれば 護 衛 艦 による 艦 砲 射 撃 及 び 航 空 自 衛 隊 による 精 密 誘 導 爆 弾 (Joint Direct Attack Munition: JDAM) 等 による 攻 撃 となる ただし 米 軍 のトマホークの ように 長 距 離 から 精 密 に 攻 撃 する 能 力 を 有 せず また 艦 砲 についても 最 大 127 ミリ 砲 しか 有 しない 現 状 で 敵 陸 上 兵 力 の 減 殺 に 十 分 な 能 力 があるかどうか は 大 いに 疑 問 の 残 るところである 上 陸 可 能 な 数 まで 敵 兵 力 を 減 じたと 判 定 した 場 合 は ヘリコプター 等 による 上 陸 を 行 うことになるが 航 空 自 衛 隊 の 戦 闘 機 及 び 陸 上 自 衛 隊 の AH-46D(ア パッチ 攻 撃 ヘリコプター) 等 による 近 接 航 空 支 援 (CAS)の 下 陸 上 自 衛 隊 の CH-47JA( 輸 送 ヘリコプター)が これに 充 当 可 能 であると 考 えられる なお この 際 米 軍 は AV-8B(シー ハリヤー)のような 垂 直 離 発 着 機 を 艦 艇 から 発 進 させ 近 接 航 空 支 援 を 行 うが 本 土 周 辺 での 戦 いであることを 考 慮 す れば その 必 要 性 は 余 りないと 考 えられる この 点 について 第 31 海 兵 遠 征 隊 司 令 官 マクマニス(Andrew McManinis) 大 佐 も 自 衛 隊 が 自 国 の 島 嶼 部 にお いて 水 陸 両 用 作 戦 を 実 施 するのであれば 近 接 航 空 支 援 兵 力 等 は 島 嶼 部 の 空 港 に 配 置 すれば 良 いため 垂 直 離 発 着 可 能 な 艦 載 機 の 必 要 はない 43 と 発 言 している つぎに 島 嶼 奪 回 を 確 立 するため 陸 上 自 衛 隊 の 上 陸 部 隊 及 び 重 火 器 等 を 搬 43 第 31 海 兵 遠 征 隊 (31MEU) 司 令 官 マクマニス(Andrew McManinis) 大 佐 筆 者 によ るインタビュー 於 キャンプ コートニー( 沖 縄 ) 2012 年 5 月 14 日 93
入 する 必 要 があるが 島 嶼 部 の 周 辺 海 域 に 敵 の 敷 設 した 機 雷 原 が 存 在 する 可 能 性 がある 場 合 水 路 の 確 保 が 必 要 である これは 海 上 自 衛 隊 の 対 機 雷 戦 部 隊 がその 能 力 を 有 する 最 後 に 陸 上 自 衛 隊 の 上 陸 部 隊 及 び 重 火 器 等 を 海 岸 に 揚 陸 し 奪 回 作 戦 を 完 成 させる 自 衛 隊 の 現 有 装 備 でこれに 充 当 し 得 るのは おおすみ 型 輸 送 艦 搭 載 のエア クッション 揚 陸 艇 (LCAC)であるが LCAC は 大 量 の 兵 員 及 び 重 火 器 等 を 搬 入 する 能 力 が 低 いことが 難 点 である 米 軍 の 装 備 を 参 考 にすれば 上 陸 用 舟 艇 (LCU)を 装 備 すれば 良 いということになるが 当 然 LCU にも 弱 点 があり どのような 装 備 の 組 み 合 わせが 最 適 になるかについては 今 後 の 大 きな 課 題 である これについて 第 11 水 陸 両 用 戦 隊 司 令 官 リー(Brandon Lee) 大 佐 も エア クッション 揚 陸 艇 (LCAC)と 上 陸 用 舟 艇 (LCU)に 関 し LCAC は 高 速 であり LCU と 比 較 し 上 陸 適 地 が 多 いものの LCU と 比 較 し 運 搬 量 が 少 な い また LCU は 速 力 が 遅 く LCAC と 比 較 し 上 陸 適 地 が 制 約 されるものの 大 量 の 物 資 が 輸 送 できるのが 強 みである 44 と 発 言 している また 人 員 のみの 海 岸 線 への 揚 陸 については 米 軍 の 使 用 している AAV( 水 陸 両 用 強 襲 車 両 )も 選 択 肢 として 考 えられるが 我 が 国 の 島 嶼 部 を 想 定 した 場 合 有 効 に 使 える 海 岸 線 が 少 ないため その 有 効 性 には 議 論 の 余 地 がある しかし 現 在 陸 上 自 衛 隊 が 研 究 のため 平 成 25 年 度 予 算 案 の 概 算 要 求 に 関 連 経 費 とし て 要 求 中 であり 45 その 有 効 性 の 評 価 については 研 究 の 結 果 を 待 つ 必 要 があ る 以 上 から 島 嶼 の 奪 回 作 戦 を 前 提 とした 場 合 我 が 国 独 力 で 島 嶼 奪 回 を 行 う ための 水 陸 両 用 作 戦 能 力 については 機 能 的 に 現 有 の 能 力 の 転 活 用 若 しくは 充 実 によってかなりの 部 分 が 満 足 できる ただし 1 艦 艇 等 による 対 地 攻 撃 能 力 2 大 量 の 兵 員 及 び 重 火 器 を 揚 陸 させる 洋 上 からの 上 陸 能 力 については 不 足 し ており 今 後 の 課 題 である 一 方 これより 大 きな 課 題 となるのは 平 時 におい て 指 揮 系 統 が 違 い また 伝 統 的 な 用 兵 思 想 も 違 う 各 自 衛 隊 の 機 能 をいかに 有 機 的 に 結 びつけるかということであろう もちろん これを 実 現 するために 常 設 の 部 隊 を 予 め 用 意 しておくという 議 論 もあり 得 るが そもそも 想 定 される 事 態 によって 投 入 兵 力 の 規 模 も 変 化 し さらには 我 が 国 の 防 衛 力 を 使 う 場 面 が 島 嶼 奪 回 作 戦 のみでないことを 考 えると 追 加 的 にその 兵 力 を 整 備 するの 44 PHBRON11 司 令 官 リー 大 佐 筆 者 によるインタビュー 45 msn 産 経 ニュース 2012 年 8 月 26 日 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/1208 26/plc12082622520012-n1.htm 2012 年 10 月 7 日 アクセス 94
は 現 在 の 財 政 状 況 や 資 源 の 効 率 的 使 用 という 観 点 から 難 しいと 言 わざるを 得 ない やはり まずは 既 存 の 陸 海 空 自 衛 隊 の 持 つ 能 力 を その 時 の 情 勢 に 合 わせ いかに 使 うかということを 追 求 しつつ 足 らざる 能 力 を 整 備 していくと いうのが 現 実 的 な 選 択 になり 得 るものと 考 える この 各 種 機 能 を 有 機 的 に 結 びつけるという 問 題 は 一 日 の 長 がある 米 軍 にとっても 常 に 念 頭 に 置 かれてい るものである このことを 米 太 平 洋 海 兵 隊 連 絡 官 のニューシャム(Grant F New Sham) 大 佐 は オーケストラ に 例 え 弦 楽 器 群 木 管 楽 器 群 金 管 楽 器 群 等 の 演 奏 者 が 勝 手 に 音 を 奏 でていれば それは 雑 音 にしかならないが 一 人 の 指 揮 者 の 下 各 楽 器 群 が 適 時 適 切 な 演 奏 をすることにより 芸 術 となる のである 水 陸 両 用 作 戦 能 力 もそれと 同 様 である 46 と 発 言 している 4 水 陸 両 用 作 戦 能 力 を 保 持 した 場 合 の 運 用 上 の 課 題 水 陸 両 用 作 戦 能 力 を 発 揮 するために 各 種 機 能 を 有 機 的 に 結 びつける 必 要 があるとすれば それは いかにすれば 具 現 化 できるのであろうか 米 軍 は 1990 年 から 2010 年 半 ばまで 107 回 の 水 陸 両 用 作 戦 を 実 施 してい る その 種 類 と 回 数 は 水 陸 両 用 強 襲 : 4 回 水 陸 両 用 襲 撃 : 1 回 水 陸 両 用 陽 動 : 3 回 水 陸 両 用 撤 退 : 1 回 水 陸 両 用 支 援 : 78 回 どれにも 属 さないも の: 20 回 となっている 47 この 107 回 の 水 陸 両 用 作 戦 のうち 78 回 を 占 める HA/DR 等 の 水 陸 両 用 支 援 は 水 陸 両 用 強 襲 能 力 を 転 用 したものに 相 違 ない が この 能 力 を 用 いて アジア 太 平 洋 の 安 全 保 障 環 境 の 一 層 の 安 定 化 グロー バルな 安 全 保 障 環 境 の 改 善 に 寄 与 している その 水 陸 両 用 作 戦 能 力 を 維 持 向 上 させるため 米 軍 は 計 画 的 なサイクルに 従 って 訓 練 を 実 施 し 段 階 的 にレ ベルを 向 上 させつつ 実 任 務 に 就 いている これを 可 能 にした 米 軍 の 訓 練 のシ ステムは 次 のとおりである 1 つの 海 兵 遠 征 隊 (MEU)は 各 々6ヶ 月 サイクルで 展 開 前 展 開 展 開 後 の3つのサイクルで 訓 練 を 実 施 している 48 展 開 前 の6ヶ 月 は 米 国 本 土 等 において1 学 校 教 育 2 実 動 訓 練 として 狙 撃 偵 察 市 街 戦 特 殊 46 米 太 平 洋 海 兵 隊 連 絡 官 ニューシャム 大 佐 筆 者 によるインタビュー 47 Congressional Budget Office, An Analysis of the Navy's Amphibious Warfare Ships for Deploying Marines Overseas, 2011, p.5. 48 防 衛 省 在 日 米 軍 及 び 海 兵 隊 の 意 義 役 割 について 2010 年 2 月 20 頁 http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/meeting/seisakukaigi/pdf/07/1-5.pdf#search=' 在 日 米 軍 及 び 海 兵 隊 の 意 義 役 割 について' 2012 年 10 月 17 日 アクセス 95
作 戦 HA/DR について 訓 練 している 49 展 開 中 の6ヶ 月 に 練 度 向 上 のた めの 訓 練 を 実 施 しつつ 水 陸 両 用 戦 隊 (PHIBRON)に 乗 艦 し 先 に 紹 介 した ような 実 任 務 に 従 事 している 50 さらに この 期 間 に 各 国 で 多 国 間 訓 練 にも 参 加 している ここで 言 う 多 国 間 訓 練 には 例 えば 2 年 に 1 度 オーストラリア と 実 施 しているタリスマン セーバーあるいは タイが 主 催 するコブラ ゴー ルドなどがある 展 開 後 の6ヶ 月 は PHIBRON から 退 艦 しつつも 1ヶ 月 は 即 応 態 勢 を 維 持 しつつ 司 令 部 以 外 の 部 隊 の 編 成 を 解 除 し 次 の 展 開 前 の 準 備 として 人 事 調 整 部 隊 編 成 教 育 カリキュラムの 準 備 を 行 っている 51 これらのことをまとめると 図 2 海 兵 隊 の 平 時 運 用 のイメージ のとおりで ある 52 図 2 海 兵 隊 の 平 時 運 用 のイメージ ただし この 訓 練 サイクルから 分 かるように 展 開 中 の 実 任 務 や 多 国 間 訓 練 は 本 来 実 施 すべき 乗 艦 中 の 訓 練 プログラムと 必 ずしも 一 致 していないため 49 同 上 50 同 上 51 同 上 20 頁 52 同 上 19 頁 96
乗 艦 中 の 訓 練 と 実 任 務 等 の 所 要 とのバランスが 大 きな 課 題 となっている 53 例 えば 我 が 国 に 駐 留 する 沖 縄 の 第 31 海 兵 遠 征 隊 (31MEU)の 展 開 中 の 活 動 に 関 し 同 部 隊 司 令 官 マクマニス(Andrew McManinis) 大 佐 は 2009 年 1 月 から 2012 年 5 月 までの 3 年 間 で 6 つの HA/DR に 従 事 している 緊 急 事 態 対 応 は 年 間 40 回 以 上 実 施 される 訓 練 と 訓 練 の 間 に 生 起 するため 限 られ た 時 間 の 中 で 緊 急 事 態 へ 対 応 する 必 要 があり 時 間 的 制 約 が 一 番 の 問 題 点 であ る その 解 決 策 として 海 兵 隊 及 び 海 軍 が 同 じ 席 に 着 き 何 ができるかを 6 時 間 以 内 に 計 画 し 実 行 に 移 すようにしている このようなスピード 感 が 重 要 で ある 54 と 発 言 している このように 米 軍 を 見 ると HA/DR でかなりの 数 の 実 績 があり 訓 練 と 実 任 務 の 場 である HA/DR で 即 応 性 を 維 持 している 要 するに 定 められた 訓 練 サ イクルを 進 めながら それに 多 国 間 訓 練 と HA/DR を 主 とした 実 任 務 が 加 わる ことから 水 陸 両 用 戦 隊 (PHIBRON) 乗 艦 中 の 海 兵 遠 征 隊 (MEU)すなわち 水 陸 両 用 即 応 群 (ARG)の 練 度 をいかにして 維 持 向 上 するかが 大 きな 課 題 であ ると 言 える 我 が 国 がこのARG と 同 等 規 模 の 水 陸 両 用 作 戦 能 力 を 保 持 した 際 米 軍 のような 訓 練 サイクルを 採 用 できるか 否 か 仮 に 取 り 入 れたとして 海 上 自 衛 隊 及 び 陸 上 自 衛 隊 の 部 隊 をもって 展 開 前 展 開 展 開 後 の 訓 練 サ イクルで 運 用 していく 場 合 陸 上 自 衛 隊 の 特 定 の 部 隊 を 編 組 し 海 上 自 衛 隊 の 輸 送 艦 等 に 実 際 に 乗 艦 させるのを 常 態 とするのか それとも 乗 艦 可 能 な 状 態 を 確 立 した 段 階 で 留 めるか 等 より 具 体 的 なあり 様 の 検 討 が 必 要 となる さら には 練 度 の 維 持 向 上 のための 訓 練 と 多 国 間 訓 練 や 実 任 務 をどのように 整 理 をしていくか 等 も 問 題 となる これらは 我 が 国 が 水 陸 両 用 作 戦 能 力 を 保 持 し た 場 合 の 運 用 上 の 課 題 と 言 えよう オーケストラ では 各 楽 器 群 を 調 和 し 聴 衆 に 感 動 を 湧 きおこすための 猛 練 習 が 必 要 である 水 陸 両 用 作 戦 能 力 がそれと 同 様 であるならば 年 間 数 十 回 に 及 ぶ 頻 繁 な 訓 練 と 突 発 的 に 生 起 する HA/DR を 含 む 実 任 務 により 各 自 衛 隊 の 機 能 を 有 機 的 に 結 びつける 必 要 がある 53 第 3 海 兵 遠 征 軍 (ⅢMEF) 作 戦 主 任 幕 僚 コーク(Christopher P. Coke) 大 佐 筆 者 による インタビュー 於 キャンプ コートニー( 沖 縄 ) 2012 年 5 月 16 日 54 31MEU 司 令 官 マクマニス 大 佐 筆 者 によるにインタビュー 2009 年 は 8 月 7 日 か ら 8 日 に 発 生 した 台 湾 での HA/DR 9 月 26 日 に 発 生 したフィリピンでの HA/DR 9 月 30 日 から 10 月 1 日 に 発 生 した インドネシアにおける HA/DR 2010 年 は 9 月 26 日 に 発 生 したフィリピンにおける HA/DR 2011 年 は 3 月 11 日 の 東 日 本 大 震 災 での HA/DR 11 月 25 日 から 30 日 に 発 生 したタイにおける HA/DR に 従 事 している 97
おわりに 我 が 国 に 必 要 な 水 陸 両 用 作 戦 能 力 は 水 陸 両 用 即 応 群 (ARG)と 同 等 規 模 の 能 力 は 保 持 するものの 米 軍 が 保 有 するような 遠 征 型 の 大 規 模 なものではなく 島 嶼 への 攻 撃 に 応 ずるための 限 定 的 なものである そのために 必 要 なもの は 自 衛 隊 の 現 有 能 力 を 基 盤 とし その 上 で1 艦 艇 等 による 対 地 攻 撃 能 力 と2 洋 上 からの 上 陸 能 力 の 向 上 である そして 我 が 国 が 水 陸 両 用 作 戦 能 力 を 保 持 した 際 その 運 用 上 の 課 題 は この ARG と 同 等 規 模 の 部 隊 の 練 度 の 維 持 向 上 である 22 大 綱 の 動 的 防 衛 力 は 各 自 衛 隊 が 海 上 防 衛 力 の 特 質 である 機 動 性 持 続 性 多 目 的 性 柔 軟 性 を 有 した 部 隊 に 変 革 することを 意 味 する 55 そして 我 が 国 の 国 情 に 応 じた 水 陸 両 用 作 戦 能 力 を 整 備 することは 正 に 動 的 防 衛 力 を 具 現 化 するための 統 合 運 用 の 格 段 の 向 上 と 言 える さらに このような 能 力 を 整 備 していく 過 程 を 通 じ 日 米 関 係 の 重 要 性 が 一 層 高 まるであろう 第 3 次 アーミテージ ナイレポートによれば 水 陸 両 用 作 戦 能 力 の 向 上 により 共 同 訓 練 の 質 的 向 上 を 図 るべきである また 米 国 と 日 本 は 二 国 間 あるいは 他 の 同 盟 国 とともに グアム 北 マリアナ 諸 島 及 びオー ストラリア 等 での 全 面 的 な 共 同 訓 練 の 機 会 を 作 為 すべきである 56 とあり 水 陸 両 用 作 戦 能 力 を 整 備 することは 我 が 国 の 安 全 保 障 の 基 軸 である 日 米 関 係 の 深 化 に 寄 与 するであろう 米 国 は 海 兵 隊 をオーストラリアに 常 駐 させようとし 水 陸 両 用 作 戦 に 関 す る 米 韓 共 同 訓 練 を 実 施 し 北 東 アジア 地 域 における 安 定 化 に 寄 与 している こ 55 防 衛 省 防 衛 白 書 平 成 24 年 版 382 頁 平 成 23 年 度 以 降 に 係 る 防 衛 計 画 の 大 綱 及 び 中 期 防 衛 力 整 備 計 画 ( 平 成 23 年 度 平 成 27 年 度 ) の 決 定 について( 防 衛 大 臣 談 話 )において 今 後 構 築 すべき 動 的 防 衛 力 は 即 応 性 機 動 性 柔 軟 性 持 続 性 及 び 多 目 的 性 を 備 える とされている このうち 機 動 性 柔 軟 性 多 目 的 性 については 海 上 防 衛 力 の 特 性 とされる 防 衛 省 防 衛 白 書 平 成 16 年 版 日 本 の 防 衛 124 頁 また 持 続 性 についての 海 上 防 衛 力 の 特 性 の 記 述 は 自 衛 艦 隊 ホームページ http:// www.mod.go.jp/msdf/sf/about/mission.html 2012 年 9 月 30 日 アクセス なお 防 衛 省 防 衛 白 書 平 成 16 年 版 日 本 の 防 衛 124 頁 に 陸 空 防 衛 力 の 特 性 とし て 陸 上 防 衛 力 は 柔 軟 性 強 靱 性 残 存 性 重 要 性 があり 航 空 防 衛 力 は 即 応 性 柔 軟 性 を 有 している と 記 されている 56 井 上 高 志 第 3 次 アーミテージ ナイレポート The U.S-Japan Alliance ANCHORING STABILITY IN ASIA が 公 表 される 海 上 自 衛 隊 幹 部 学 校 http://www.mod. go.jp/msdf/navcol/ssg/topics-column/col-033.html 2012 年 10 月 27 日 アクセス 98
れらの 事 実 から 我 が 国 が 水 陸 両 用 作 戦 能 力 を 保 持 し 同 じ 民 主 主 義 を 価 値 観 とする 日 米 豪 韓 が 多 国 間 の 水 陸 両 用 作 戦 の 訓 練 を 行 うことで アジア 太 平 洋 地 域 の 平 和 と 安 定 に 大 きく 貢 献 し 得 るものと 確 信 している 注 :この 論 文 は 筆 者 個 人 の 見 解 であり 防 衛 省 海 上 自 衛 隊 の 意 見 を 代 表 するものではない 略 語 表 略 語 英 語 日 本 語 AAV Assault Amphibious Vehicle 水 陸 両 用 強 襲 車 両 ACE Aviation Combat Element 航 空 戦 闘 部 隊 AOA Amphibious Objective Area 水 陸 両 用 目 標 区 域 ARG Amphibious Ready Group 水 陸 両 用 即 応 群 CAS Close Air Support 近 接 航 空 支 援 CE Command Element 司 令 部 CSG Carrier Strike Group 空 母 打 撃 群 C2 Command and Control 指 揮 統 制 機 能 EODT Explosive Ordnance Disposal Diver Team 水 中 障 害 爆 破 処 分 部 隊 ESG Expeditionary Strike Group 遠 征 打 撃 群 GCE Ground Combat Element 陸 上 戦 闘 部 隊 HA/DR Humanitarian Assistance/Disaster Relief 人 道 支 援 / 災 害 救 援 HMMWV High Mobility Multipurpose wheeled Vehicle 高 機 動 多 目 的 車 LAV Light Armored Vehicle 軽 装 甲 車 LCAC Landing Craft Air Cushion エア クッション 揚 陸 艇 LCE Logistics Combat Element 兵 站 戦 闘 部 隊 LCU Landing Craft Utility 上 陸 用 舟 艇 LHA /LHD Amphibious Assault Ship 強 襲 揚 陸 艦 LPD Amphibious Transport Dock ドック 型 水 陸 両 用 輸 送 艦 LSD Dock Landing Ship ドック 型 揚 陸 艦 MAGTF Marine Air-Ground Task Force 海 兵 空 陸 任 務 部 隊 MEB Marine Expeditionary Brigade 海 兵 遠 征 旅 団 99
MEF Marine Expeditionary Force 海 兵 遠 征 軍 MEU Marine Expeditionary Unit 海 兵 遠 征 隊 MSO Mine Sweeper Ocean 掃 海 艦 MTVR Medium Tactical Vehicle Replacement ダンプトラック PHIBRON Amphibious Squadron 水 陸 両 用 戦 隊 SAG Surface Action Group 水 上 戦 闘 群 SSN Nuclear-Powered Submarine 攻 撃 型 原 子 力 潜 水 艦 UAV Unmanned Aerial Vehicle 無 人 機 UUV Unmanned Underwater Vehicle 無 人 水 中 航 走 体 100