広 島 女 学 院 大 学 人 間 生 活 学 部 紀 要 創 刊 大 号 学 生 ADHD への 臨 床 心 理 学 的 アプローチに 関 する 一 考 察 Journal of the Faculty of Human Life Studies 子 どもの 創 造 性 を 豊 かにする 鑑 賞 方 法 についての 一 考 察 Hiroshima Jogakuin University 1: 27 37, Mar. 2014 報 文 大 学 生 ADHD への 臨 床 心 理 学 的 アプローチに 関 する 一 考 察 山 下 京 子 * (2013 年 11 月 13 日 受 理 ) A Clinical Psychological Approach to College Students with ADHD (Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder) Kyoko YAMASHITA* To explore the possible approach to the college students with ADHD (Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder), I have conducted a comprehensive survey of the leading research on adult ADHD, attentional functions, executive functions, the reward system, and motivational process. Proper understanding and handling of college students with ADHD is regarded as the first step in educational accommodation for them. As a result, to support the college students with ADHD, we need for much more research from a variety of perspectives, for example, basic psychological approaches, and the development of neuropsychological test battery. Keywords: ADHD (Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder) ADHD( 注 意 欠 陥 多 動 性 障 害 ),college students 大 学 生,reward system 報 酬 系,motivational process 動 機 づけ 1.はじめに 2013 年 5 月 に 米 国 精 神 医 学 会 から DSM(Diagnostic and Statistical Manual)-5 が 発 表 された. 市 川 (2013)による と, 神 経 発 達 障 害 群 として, 知 的 発 達 障 害,コミュニ ケーション 障 害, 自 閉 症 スペクトラム 障 害, 注 意 欠 陥 / 多 動 性 障 害, 特 異 的 学 習 障 害, 運 動 障 害 から 構 成 されて おり, 自 閉 性 障 害,アスペルガー 障 害,PDD-NOS など を 含 む 広 汎 性 発 達 障 害 をまとめた 自 閉 症 スペクトラム 障 害 の 診 断 項 目 は 大 きく 変 更 された. 一 方, 注 意 欠 陥 多 動 性 障 害 に 関 しては, 自 閉 症 スペクトラム 障 害 ほどの 大 き な 変 更 はなく, 症 状 は 7 歳 までには とされていたのが 12 歳 までには に 変 更 になったことや,これまで 広 汎 性 発 達 障 害 と 注 意 欠 陥 多 動 性 障 害 が 重 なった 場 合 には 広 汎 性 発 達 障 害 が 優 先 していたが,これからは 併 記 診 断 でき るようになったこと( 市 川,2013), 注 意 欠 陥 多 動 性 障 害 が 行 為 障 害 反 抗 挑 戦 性 障 害 とは 別 の 括 りになり, 後 者 は 神 経 発 達 障 害 群 から 外 されたこと( 太 田,2012)をあげ られる. 今 日, 発 達 障 害 は 非 常 に 大 きな 関 心 を 寄 せられてお * 広 島 女 学 院 大 学 人 間 生 活 学 部 幼 児 教 育 心 理 学 科 教 授 り, 乳 幼 児 期 や 児 童 期 だけでなく, 大 人 の 発 達 障 害 も 注 目 されている. 坂 爪 (2012)は, 発 達 障 害 のある 子 ども( 幼 児 児 童 )の 増 加, 発 達 障 害 の 知 識 の 社 会 的 な 普 及, 発 達 障 害 の 診 断 基 準 の 変 化 などが 関 係 して, 高 校 や 大 学, 職 場 における 発 達 障 害 の 増 加 とその 対 応 が 大 きな 課 題 に なっていると 述 べている. 坂 爪 はまた, 青 年 になって 気 づかれる 発 達 障 害 が 概 して 知 的 障 害 を 伴 わないこと,そ のために 幼 児 児 童 期 に 発 達 障 害 の 存 在 を 見 過 ごされ, 周 囲 の 適 切 な 理 解 と 的 確 な 対 応 がない 場 合 も 多 く, 発 達 障 害 に 起 因 する 様 々な 苦 悩 が 継 続 することを 指 摘 し ている. 坂 爪 によると, 幼 児 期 から 児 童 期 の 苦 悩 は 日 常 生 活 での 失 敗 経 験 に 起 因 する あきらめの 早 さ と して 外 面 化 しやすく, 児 童 期 から 青 年 期 の 苦 悩 は, 自 分 と 他 者 との 比 較 力 や 内 省 力 が 発 達 し, 自 己 評 価 の 低 下 として 内 面 化 しやすいという. 坂 爪 も 指 摘 するよう に, 大 学 生 の 発 達 障 害 についても 支 援 の 必 要 性 が 強 調 さ れるようになった. 文 部 科 学 省 は 平 成 24(2012) 年 6 月 に 障 がいのある 学 生 の 修 学 支 援 に 関 する 検 討 会 を 立 ち 上 げ, 同 年 12 月 に 障 がいのある 学 生 の 修 学 支 援 に 関 する 検 討 会 報 告 ( 第 1 次 まとめ) ( 文 部 科 学 省,2012)を 出 した.すでに 平 成 23 27
山 下 京 子 (2011) 年 から 入 試 センター 試 験 において 発 達 障 害 の 学 生 に 対 する 特 別 措 置 が 認 められており, 検 討 会 においても 発 達 障 害 の 学 生 に 対 する 修 学 支 援 について 活 発 な 討 議 が 行 われた. 大 学 保 健 管 理 センターの 保 健 医 を 長 く 勤 め, 今 も 大 学 の 学 生 相 談 室 の 相 談 員 として 支 援 を 行 っている 福 田 (2013)は, 発 達 障 害 の 大 学 生 への 支 援 で 重 要 となる こととして, 外 見 からはわかりにくい 発 達 障 害 の 困 難 さ がどのようなものであるかを 理 解 し,そのための 支 援 や 配 慮 をどの 程 度 の 障 害 を 持 つ 学 生 にどこまで 行 うかを 決 めることであるとしている. 福 田 は 大 学 としてどこまで の 支 援 や 配 慮 を 行 うか 苦 慮 した 事 例 として, 入 学 前 に ADHD の 診 断 を 受 けた 一 人 暮 らしの 学 生 が, 注 意 力 や 物 事 を 手 順 通 りに 進 める 実 行 機 能 に 課 題 を 持 つために, 一 時 限 目 の 授 業 に 遅 刻 してしまい 単 位 が 取 れないので, 主 治 医 の 診 断 書 を 学 科 事 務 室 に 提 出 し, 遅 刻 を 出 席 と 認 め るように 求 めてきた 例 を 挙 げている. 福 田 も 指 摘 してい るように, 大 学 に 求 められる 合 理 的 配 慮 は 何 かと は, 非 常 に 難 しい 問 題 であり, 障 がいのある 学 生 の 修 学 支 援 に 関 する 検 討 会 報 告 ( 第 1 次 まとめ) においても 具 体 的 には 示 されていない. 本 論 文 は, 発 達 障 害 の 中 でも ADHD に 着 目 し, 成 人 ADHD を 中 心 とした 最 近 の 研 究 を 概 観 し, 大 学 における ADHD の 特 性 に 応 じた 支 援 のありかたについて 検 討 する ことを 目 的 とした. 2. 大 人 の ADHD 田 中 (2012)は, 主 たる 精 神 医 学 的 問 題 が ADHD の 特 徴 だけをもつ 成 人 について, 当 事 者 である ADHD の ある 人 の 人 生 を 成 人 期 から 遡 って 検 討 している. 田 中 に よれば, 青 年 期 成 人 期 は, 落 ち 着 きのなさから 対 人 関 係 場 面 や 生 活 場 面 でのつまずきが 前 面 に 認 められ, 一 般 に 仕 事 が 長 く 続 かない, 精 神 的 な 不 調 感 を 訴 えやすい, アルコールその 他 の 薬 物 を 濫 用 しやすい, 整 理 整 頓 がで きない, 忘 れっぽい, 計 画 自 体 を 失 敗 しやすい,ものを なくしやすい, 計 画 の 変 更 ができない, 時 間 の 管 理 がで きないなどがよく 認 められるという. 田 中 は,ADHD の 特 徴 だけを 持 つ 成 人 の 人 生 は 多 肢 にわたるが,その 親 は 乳 幼 児 期 からの 育 てにくさを 強 く 感 じ, 本 人 は 常 に 叱 責 され 失 敗 を 繰 り 返 し,その 結 果, 関 わる 多 くの 者 と 本 人 が 関 わりづらさと 生 きづらさを 双 方 で 抱 え 続 けて 生 きて きたことだけは 不 変 的 であると 述 べている. 田 中 の 事 例 では, 社 会 生 活 での 困 難 さを 抱 え, 治 療 を 求 めた 成 人 の ADHD であるが, 高 校 での 退 学 が 少 なくないという 田 中 の 指 摘 にもあるように, 大 学 においても, 生 きづらさを 理 解 されないままドロップアウトする 学 生 も 少 なくない のではと 想 像 される. 日 本 学 生 支 援 機 構 (JASSO)による 平 成 24 年 度 (2012 年 度 ) 大 学, 短 期 大 学 及 び 高 等 専 門 学 校 における 障 害 のあ る 学 生 の 修 学 支 援 に 関 する 実 態 調 査 では, 障 害 のある 学 生 は 全 体 の0.37%(11,768 人 )であり,そのうちの 発 達 障 害 ( 診 断 あり)の 占 める 割 合 は16.0%(1,878 人 )であった. さらにその 中 に ADHD と 診 断 された 学 生 が 含 まれてい ることになるので,ADHD の 診 断 のある 大 学 進 学 者 が 少 ないことに 加 え, 未 診 断 の 学 生 がいることも 反 映 されて いるのだろう.そのために, 我 が 国 における ADHD 学 生 の 実 態 は, 海 外 に 比 べると, 明 確 に 把 握 されていると は 言 い 難 い. 篠 田 沢 崎 (2012)は, 大 学 生 ADHD に 関 する 海 外 の 研 究 動 向 を 調 べるために,ADHD と 大 学 の キーワードを 含 む1996 年 から2011 年 までの 論 文 を 検 索 し,63 本 の ADHD 大 学 生 に 関 する 研 究 報 告 を 検 出 し, 内 容 別 に 分 類 している. 篠 田 らによると, 内 容 は, 特 性 とアセスメント(37 本 ), 適 応 (36 本 ), 支 援 治 療 (15 本 ), レビュー( 4 本 )であった. 篠 田 らは, 大 学 生 活 への 適 応 に 関 する 内 容 の 論 文 36 本 を,さらに, 教 育, 心 理, 社 会, 対 人 関 係, 職 業 的 適 応 に 分 け, 心 理 的 適 応 の 問 題 と して, 抑 うつ 傾 向, 内 的 な 落 ち 着 きのなさ, 自 尊 心 の 低 さ, 幸 福 感 の 低 さなどがあげられていると 述 べている. また, 社 会 的 適 応 の 問 題 としては, 運 転 の 問 題, 薬 物 や アルコール 依 存 の 問 題 などがあるという. Garnier-Dykstra, Pinchevsky, Caldeira, Vincent, & Arria(2010)は, 大 学 生 を 対 象 とした 健 康 に 関 連 した 行 動 に 関 する 縦 断 研 究 のデータを 用 いて,ASRS(Adult ADHD Self-Report Scale)により 測 定 された 自 己 報 告 ADHD 症 状 の 有 病 率 を 評 価 している. 大 学 生 1080 人 を, ADHD 非 診 断 群 (972 人 ),ADHD 診 断 薬 物 治 療 なし 群 (54 人 ),ADHD 診 断 薬 物 治 療 群 (54 人 )に 分 け,ASRS の 平 均 値 (SD)を 比 較 すると,それぞれ,4.0(3.3),6.3 (3.7),7.9(4.0)であり,また 3 群 とも, 多 動 症 状 よりも 有 意 に 不 注 意 症 状 を 多 く 報 告 していた.さらに,ASRS 得 点 により, 低 群 (0~3), 中 間 群 (4~8), 臨 床 群 ( 9 以 上 )に 分 けると, 全 サンプルの12.3%が 臨 床 群 になり, ADHD 非 診 断 群 では,53.9%が 低 群 に,10.3%が 臨 床 群 になっていた.Garnier-Dykstra らは,これらの 結 果 か ら,ASRS が ADHD スクリーニングとして 適 切 であるこ と,ADHD の 診 断 を 受 けていない 学 生 の10.3%を ADHD ハイリスク 群 とみなし 治 療 につなげることで, 物 質 濫 用 や 依 存, 学 業 や 職 業 の 機 能 不 全, 反 社 会 的 行 動 など ADHD に 起 因 するネガティブな 結 果 を 緩 和 することがで きるかもしれないと 述 べている. Garnier-Dykstra らの 研 究 は,ADHD スクリーニング 28
大 学 生 ADHD への 臨 床 心 理 学 的 アプローチに 関 する 一 考 察 として, 自 己 報 告 式 の ASRS が 有 用 であることだけでは なく, 大 学 生 ADHD では 本 人 が 不 注 意 症 状 を 自 覚 して いること,ADHD 非 診 断 であっても, 自 己 報 告 に 基 づき ハイリスク 群 として 対 応 することの 重 要 性 を 示 唆 してい る. 我 が 国 では,ADHD の 診 断 を 持 つ 者 は, 大 学 生 だけ でなく, 成 人 においてもまだ 少 数 であり, 有 病 率 につい ても 明 確 ではない. 中 村 (2012)は, 成 人 期 の ADHD の 有 病 率 について, 様 々な 方 法 論 に 基 づくアプローチがあるものの, 我 が 国 においては 報 告 されていないことを 指 摘 し, 欧 米 の 研 究 と 比 較 可 能 な 規 模 での 成 人 期 ADHD の 疫 学 調 査 を 実 施 している.すなわち, 静 岡 県 浜 松 市 の18 歳 から49 歳 の 男 女 10000 人 を 対 象 として 疫 学 調 査 を 行 い,3910 名 の 調 査 協 力 者 のうちスクリーニングにより196 名 が 成 人 期 ADHD の 疑 いがある 陽 性 群 であった. 中 村 は, 陽 性 群 と 陰 性 群 との 多 面 的 な 比 較 や, 陽 性 群 の 2 次 調 査 協 力 者 を 対 象 に CAADID(Conners Adult ADHD Diagnostic Interview for DSM-Ⅳ)を 用 いた 診 断 面 接 を 行 い, 有 病 率 の 推 定 値 2.09%(95% 信 頼 区 間 =1.64-2.54)を 算 出 している. 中 村 による 有 病 率 の 推 定 値 が 適 正 であるならば,ADHD は 他 の 疾 患 と 比 較 してもかなり 一 般 的 な 疾 患 であるというこ とができよう.ならば,ADHD は 個 性 か 障 害 かというよ うな 明 確 に 線 引 きされない, 自 閉 症 スペクトラム 障 害 と 同 様, 幅 広 いグレーゾーンを 持 っていると 考 えられる. 成 人 ADHD の 診 断 ツールについても, 自 己 報 告 式 や 臨 床 家 評 定 式 などの 開 発 が 進 められている.Marchant, Reimherr, Robison, Robison, & Wender(2013)は, 成 人 ADHD の 評 価 尺 度 のひとつである WRAADDS(Wender- Reimherr Adult Attention Deficit Disorder Scale)の 信 頼 性 と 妥 当 性 を 検 討 している.Marchant らによると, WRAADDS は 成 人 ADHD のユタ 診 断 基 準 に 基 づいた 臨 床 家 評 定 の 尺 度 であり, 7 領 域 にわたり,ADHD 症 状 の 重 さについて 評 価 するものである. 7 領 域 とは, 注 意 困 難, 多 動 / 落 ち 着 きのなさ, 激 しやすさ, 感 情 の 不 安 定 性, 情 緒 の 過 剰 反 応, 手 際 の 悪 さ, 衝 動 性 である. Marchant らは, 標 準 サンプルとして120 人 の 男 女 (20~ 49 歳 )に 調 査 者 評 定 の 2 尺 度 Hamilton Depression Scale と WRAADDS, 自 己 報 告 の 3 尺 度 Wender Utah Rating Scale,CSS-SR(Childhood Symptoms Scale Self-Report Form), 自 己 報 告 WRAADDS を 実 施 した.ADHD サン プルは,DSM-Ⅳ TR の 基 準 を 満 たした ADHD 患 者 (20 ~60 歳 の 男 女 )で 5 つの 臨 床 試 験 から 得 られた 総 計 762 人 のデータであった.このデータの 異 なる 部 分 を 用 い て, 様 々な 手 続 きにより 分 析 を 行 っている.その 結 果, 信 頼 性 と 内 的 一 貫 性 が 認 められた.また WRAADDS と CAARS(Conners' Adult ADHD Rating Scale) 総 得 点 が 相 関 していた. 成 人 ADHD の 有 無 の 弁 別 妥 当 性 は, 全 ての 領 域 で 有 意 であった. 領 域 は, 因 子 分 析 により, 情 緒 調 節 異 常 注 意 と 手 際 の 悪 さ の 2 因 子 が 抽 出 され, 多 動 / 落 ち 着 きのなさと 衝 動 性 は 両 方 の 因 子 にまたがっ ていた.この 結 果 は,ADHD が 感 情 調 節 の 困 難 さを 抱 え ていることを 示 していると 考 えられる.ADHD の 特 徴 と して, 不 注 意 が 取 り 上 げられることが 多 いが, 感 情 の 問 題 も 見 過 ごすことはできない. 3.ADHD と 自 閉 症 スペクトラム 障 害 藤 田 藤 田 (2013)は, 発 達 障 害 の 診 断 が 症 候 群 であ り, 相 互 に 高 率 で 併 存 し, 臨 床 像 が 類 似 することが 多 い ため, 発 達 障 害 の 理 解 と 支 援 については 診 断 名 ではなく 認 知 特 性 に 基 づいて 行 う 必 要 があるという 従 来 の 指 摘 を 取 り 上 げ,その 認 知 特 性 についてさらに 詳 細 に 判 別 する 必 要 があることを 指 摘 している. 藤 田 らは, 判 別 の 必 要 な 発 達 障 害 の 認 知 行 動 特 性 として,ケアレス ミス, 行 動 抑 制, 大 域 的 知 覚 の 3 つを 取 り 上 げ,それぞれを 生 じさせる 下 位 要 因 として,エラー モニタリングと 心 的 努 力 (エフォート), 反 応 決 定 と 運 動 抑 制, 前 注 意 的 処 理 と 弱 い 中 枢 統 合 をあげている. 藤 田 らによると,ADHD のケアレス ミスは, 心 的 努 力 の 自 己 調 節 困 難 から 生 じ ると 考 えられる.すなわち, 心 的 努 力 とは, 達 成 動 機 に 関 連 するような, 努 力 を 要 する 動 機 づけのことであり, このような 動 機 づけが 十 分 でない 場 合 に, 注 意 深 さが 減 少 し,ケアレス ミスが 生 じるという.したがって, 心 的 努 力 に 困 難 がある 場 合 には, 見 直 し ではなく, 取 り 組 み を 高 める 指 導 が 必 要 であると 述 べている.ま た, 藤 田 らは, 行 動 抑 制 の 困 難 を 生 じさせる 下 位 要 因 で ある 反 応 決 定 の 困 難 が,ADHD に 典 型 的 にみられ, 動 機 づけの 困 難 の 影 響 を 受 けた 2 次 的 なものであり, 早 合 点 がある 場 合 には, 動 機 づけを 高 めること,すなわち 課 題 への 取 り 組 み を 高 めて 十 分 な 判 断 を 行 わせる 支 援 が 有 効 であるとしている. 類 似 した 認 知 行 動 特 性 に 対 して,それらを 一 括 して 同 じ 方 法 で 支 援 することが 有 効 ではない 場 合 があるとい う 藤 田 らの 指 摘 は,ADHD と 自 閉 症 スペクトラム 障 害 の 医 学 的 鑑 別 診 断 の 重 要 性 を 意 味 している.DSM-5におい て,ADHD と 自 閉 症 スペクトラム 障 害 を 併 記 診 断 できる ようになったこと( 市 川,2013)を 考 慮 するならば, ADHD のみの 場 合 と ADHD と 自 閉 症 スペクトラム 障 害 が 併 存 する 場 合 では, 有 効 な 支 援 が 異 なると 予 想 され る.したがって, 早 期 の 適 切 な 診 断 が 早 期 の 適 切 な 支 援 につながると 考 えられる. 田 中 (2012)も 述 べているよう 29
山 下 京 子 に,いきなり 成 人 ADHD が 出 現 するわけではなく, 幼 少 期 からその 特 性 は 存 在 しており, 早 期 に 有 効 な 支 援 を 受 けることができれば,その 人 の 人 生 もまた 異 なったも のになるはずである. ADHD と 自 閉 症 スペクトラム 障 害 との 鑑 別 について は, 例 えば Fujibayashi, Kitayama, & Matsuo(2010)があ る.Fujibayashi らは, 落 ち 着 きのなさ, 多 動 衝 動 性, 不 注 意, 行 動 の 問 題, 対 人 関 係 の 問 題, 学 習 困 難 を 主 訴 として 受 診 した 子 ども145 人 のうち,AD/HD と 診 断 され た45 人 ( 男 児 38 人, 女 児 7 人 )を AD/HD 群 とし,PDD (Pervasive Developmental Disorders)と 診 断 された77 人 ( 男 児 70 人, 女 児 7 人 )を PDD 群 として, 両 群 に,ADHD Rating Scale-Ⅳ(ADHD-RS)と Autism Spectrum Screening Questionnaire(ASSQ)を 実 施 し,その 結 果 を 比 較 している. 対 象 児 の 初 診 時 の 平 均 年 齢 は,AD/HD 群 8.8 歳 (SD2.3),PDD 群 9.1 歳 (SD2.1)であり 有 意 な 差 は なく,WISC-Ⅲによる 平 均 IQ は,AD/HD 群 で,FIQ101.2 (SD10.9),VIQ102.3(SD13.4),PIQ99.6(SD11.6)であり, PDD 群 では FIQ92.9(SD13.4),VIQ94.7(SD16.0),PIQ92.4 (SD14.0)で, 全 ての IQ で,AD/HD 群 が PDD 群 よりも 有 意 に 高 かった.AD/HD 群 の 主 訴 は, 落 ち 着 きのなさ (31.1%), 不 注 意 (20.0%), 多 動 衝 動 性 (13.3%), 気 の 散 りやすさ (11.1%), 対 人 関 係 の 問 題 (11.1%) で,PDD 群 の 主 訴 は, 対 人 関 係 の 問 題 (36.4%), 行 動 の 問 題 (24.7%), 落 ち 着 きのなさ (23.4%), 学 習 困 難 (10.4%)であった. 全 ADHD-RS スコアは,AD/ HD 群 31.8(SD9.8),PDD 群 26.3(SD10.7)であり,AD/HD 群 が 有 意 に 高 かった. 不 注 意 下 位 尺 度 スコアは,AD/HD 群 18.6(SD5.9)が,PDD 群 15.2(SD5.8)よりも 有 意 に 高 く, 多 動 衝 動 性 下 位 尺 度 スコアは,AD/HD 群 13.2 (SD6.1),PDD 群 11.1(SD5.9)で 両 群 間 に 有 意 な 差 はな かった. 全 ASSQ スコアは,AD/HD 群 24.0(SD12.8), PDD 群 31.0(SD17.0)で,PDD 群 が 有 意 に 高 かった. 反 復 行 動 領 域 スコアは,AD/HD 群 9.8(SD6.9),PDD 群 12.6 (SD7.1), 社 会 的 相 互 作 用 領 域 スコアは,AD/HD 群 6.4 (SD3.9),PDD 群 8.1(SD4.9),コミュニケーション 問 題 の 領 域 スコアは,AD/HD 群 7.9(SD4.7),PDD 群 10.3 (SD5.5)であり, 全 てのスコアにおいて,PDD 群 が AD/ HD 群 よりも 有 意 に 高 かった.これらのことから, Fujibayashi らは,ADHD-RS と ASSQ の 両 方 の 結 果 が, AD/HD と PDD の 鑑 別 に 有 効 であると 考 えている. Fujibayashi らの 結 果 から,ADHD と 自 閉 症 スペクトラ ム 障 害 との 鑑 別 において, 不 注 意 症 状 に 着 目 することが 有 効 であると 示 唆 される. ADHD と 自 閉 症 スペクトラム 障 害 との 鑑 別 において, 注 意 機 能 に 焦 点 を 当 て,その 認 知 的 特 徴 を 比 較 した 研 究 もある. 今 田 小 松 (2009)は,ADHD または PDD の 診 断 を 受 けた 子 ども( 5 歳 9 か 月 ~15 歳 1 か 月 )69 人 を, ADHD 群 56 人 ( 男 48 人, 女 8 人 )と PDD 群 13 人 ( 男 9 人, 女 4 人 )に 分 け, 注 意 機 能 検 査 ( 今 田 小 松 高 橋,2003)を 実 施 し, 診 断 時 に 個 別 に 実 施 された WISC-Ⅲの 検 査 結 果 とともに,ADHD と PDD の 認 知 的 特 徴 を 検 討 している. IQ 統 制 後 の ADHD 群 48 人 と PDD 群 13 人 の 判 別 に 最 も 有 効 な 注 意 機 能 検 査 の 指 標 は, 持 続 的 注 意 を 反 映 する 音 数 えであった. 音 数 えとは, 今 田 らによると, 断 続 的 に 提 示 される 射 撃 音 の 提 示 回 数 を 数 えることを 求 める 課 題 であり,PDD 群 の 評 価 点 平 均 は 標 準 データと 差 がなく, ADHD 群 の 評 価 点 平 均 は 標 準 データよりも 顕 著 に 低 下 し ていた. 今 田 らの 結 果 は,Fujibayashi らの 研 究 結 果 にも 示 されたように,ADHD と 自 閉 症 スペクトラムの 鑑 別 に は, 注 意 機 能 に 注 目 することが 重 要 であり,ADHD に 持 続 的 注 意 の 低 下 がみられることを 示 している. 日 比 熊 田 山 口 金 沢 (2012)は, 視 覚 探 索 課 題 を 用 いて,ADHD, 自 閉 症 スペクトラム 障 害 (ASD), 精 神 遅 滞 (MR), 定 型 発 達 (TD)の 注 意 機 能 を 比 較 検 討 してい る. 日 比 らは,ADHD 群 ( 9 人, 平 均 年 齢 7.7 歳 ),ASD 群 ( 9 人, 平 均 5.7 歳 ),MR 群 ( 5 人, 平 均 8.6 歳 ),TD 群 (15 人, 平 均 7.2 歳 )を 対 象 に, 効 率 的 探 索 ( 特 徴 探 索 ) 課 題 と 非 効 率 的 探 索 ( 結 合 探 索 ) 課 題 を 実 施 した.その 結 果, 特 徴 探 索 課 題 では, 群 間 で 反 応 時 間 に 大 きな 違 いはなく,ま たアイテム 数 ( 4,8,16)に 伴 う 反 応 時 間 の 変 化 はなかっ た. 結 合 探 索 課 題 では,ASD 群 でアイテム 数 の 増 加 に 伴 う 反 応 時 間 の 変 化 はなく,MR 群 と TD 群 でアイテム 数 の 増 加 に 伴 って 反 応 時 間 が 増 加 した. 一 方 ADHD 群 で は,アイテム 8 個 条 件 が 4 個 条 件,16 個 条 件 よりも 有 意 に 反 応 時 間 が 短 くなっていた. 日 比 らは, 特 徴 探 索 課 題 の 結 果 から,ADHD 児,ASD 児,MR 児 は TD 児 と 同 程 度 に 刺 激 顕 著 性 などのボトムアップ 情 報 を 有 効 に 利 用 し, 標 的 への 注 意 の 誘 導 を 行 うことができると 述 べてい る. 日 比 らによると,ボトムアップの 注 意 制 御 とは, 視 覚 対 象 の 顕 著 性 といった 提 示 された 刺 激 の 特 性 により 誘 導 される 注 意 であり,トップダウンの 注 意 制 御 とは, 対 象 の 位 置 や 特 徴 などに 関 する 事 前 の 知 識 や 構 えによって 誘 導 される 注 意 をさす. 日 比 らは,トップダウンの 注 意 の 誘 導 が 必 要 な 結 合 探 索 課 題 で 群 により 異 なる 結 果 が 出 たことについて,TD 児 が 注 意 のトップダウン 制 御 を 最 適 に 利 用 した 探 索 が 可 能 であるのに 対 して,ADHD 児 で は, 右 前 頭 葉 損 傷 患 者 と 同 様 のパターンが 認 められ,ア イテム 間 のグルーピングが 強 い 場 合 にトップダウンの 注 意 制 御 が 十 分 に 働 かないことによる 可 能 性 を 示 唆 してい 30
大 学 生 ADHD への 臨 床 心 理 学 的 アプローチに 関 する 一 考 察 る.さらに,ASD 児 について,ボトムアップ 情 報 のみに よる 優 れた 弁 別 能 力 やトップダウン 制 御 の 低 下 により, TD 児 とは 異 なる 探 索 過 程 があることが 確 認 されたと 述 べている. 日 比 らの 結 果 は,ADHD 特 有 の 注 意 機 能 の 特 徴 が 存 在 することを 示 している. 4.ADHD の 認 知 特 性 ADHD の 認 知 特 性 については 実 行 機 能 を 中 心 に 多 くの 研 究 が 進 められており, 研 究 成 果 が 診 断 に 利 用 されてい る. 例 えば,Nagatani, Matsuzaki, Eto, Kagitani-Shimono, Mohri, & Taniike(2012)は,ADHD 不 注 意 型 の 決 定 に 関 する 研 究 を 行 っている.Nagatani らは,AD/HD の 不 注 意 型 の 子 どもの 学 業 成 績 不 振 がみられることや, 成 人 で は 物 質 依 存 障 害 や 神 経 障 害 の 有 病 率 が 高 いものの, 客 観 的 な 測 定 の 欠 如 により 見 落 とされるリスクが 高 いことか ら,AD/HD 不 注 意 型 に 焦 点 を 当 てて, 次 の 3 点 を 明 ら かにすることを 目 的 として 研 究 を 行 った.すなわち, パーフォーマンスに 基 づいた CANTAB と 親 評 定 尺 度 の BRIEF を 用 いて, 不 注 意 型 の 子 どもの 実 行 機 能 不 全 の 存 在 と 特 徴 を 明 らかにし,CANTAB と BRIEF の 一 貫 性 を 評 価 し,これらの 客 観 的 指 標 が 不 注 意 型 の 子 どもを 検 出 するのに 有 効 であるかどうかを 評 価 することであった. 対 象 者 は, 臨 床 群 として AD/HD 不 注 意 型 の 男 児 10 人 女 児 9 人 ( 平 均 年 齢 8.6 歳 SD1.8)と, 統 制 群 男 児 20 人 女 児 18 人 ( 平 均 年 齢 8.8 歳 SD1.4)であり,CANTAB と BRIEF を 実 施 した.CANTB のうち, 不 注 意 型 の 主 な 実 行 機 能 不 全 と 考 えられているワーキングメモリと 抑 制 を 測 定 する SWM(Spatial Working Memory)と SST(Stop Signal Task)を 選 択 した.BRIEF は, 抑 制 シフト 情 緒 のコントロール 開 始 ワーキングメモリ 計 画 / 組 織 道 具 の 整 理 モニタ の 8 つの 臨 床 尺 度 を 3 件 法 で 回 答 を 求 める 質 問 紙 であり, 抑 制 シフト 情 緒 の コントロール を 行 動 調 整 指 標 (BRI), 残 りを メ タ 認 知 指 標 (MI)とし, 全 て 8 つの 臨 床 尺 度 を 合 計 した ものを 全 実 行 機 能 (GEC)とする.その 結 果, 両 検 査 において, 臨 床 群 と 統 制 群 に 有 意 な 差 がみられ, CANTAB の SWM と BRIEF の ワーキングメモリ 間 に 有 意 な 相 関 がみられた.このことから,Nagatani ら は,CANTAB と BRIEF が, 子 どもの AD/HD 不 注 意 型 を 決 定 するのに 有 効 であったと 述 べている. 学 童 期 の ADHD は, 多 動 や 衝 動 性 で 問 題 となること が 多 く,Nagatani らも 指 摘 しているように, 不 注 意 症 状 は 見 逃 されやすいが,その 後 の 学 業 成 績 不 良 や, 成 人 期 における 薬 物 乱 用 や 抑 うつ 症 状 との 関 連 も 指 摘 されてい るので, 早 期 に 発 見, 対 応 が 望 まれる.しかしながら, 不 注 意 は 程 度 の 問 題 であり, 子 どもの 場 合 自 己 報 告 式 の 測 定 ツールの 使 用 は 困 難 であることもあって,CANTAB のように 課 題 を 遂 行 したり,BRIEF のような 養 育 者 によ る 評 定 を 求 める 形 式 となる. 現 実 的 には, 子 どもに 課 題 を 実 施 することには 時 間 的 なことも 含 め 制 約 がある.し たがって,まずは, 幼 児 期 学 童 期 の 子 どもに 日 常 的 に 関 わる 教 育 関 係 者 による, 丁 寧 な 観 察 が 必 要 とされるで あろう. 日 比 熊 田 山 下 (2012)は, 効 率 的 探 索 課 題 と 非 効 率 的 探 索 課 題 を 用 いて,ADHD の 自 覚 症 状 を 訴 える 成 人 と 訴 えない 成 人 間 で, 注 意 機 能 に 違 いがみられるかについ て 検 討 している.その 結 果,ADHD の 自 覚 症 状 を 訴 えな い 人 に 比 べて, 自 覚 症 状 を 訴 える 成 人 において 非 効 率 的 探 索 課 題 で 全 体 反 応 時 間 が 長 く, 刺 激 項 目 数 により 変 化 する 探 索 時 間 に 異 なる 結 果 がみられた. 日 比 熊 田 山 口 金 沢 (2012)の 児 童 を 対 象 とした 研 究 結 果 同 様,ここ でも 非 効 率 的 探 索 ( 結 合 探 索 ) 課 題 で 差 がみられており, ADHD においてトップダウン 制 御 の 注 意 機 能 の 障 害 の 可 能 性 が 示 唆 された. 成 人 ADHD を 対 象 に 情 報 処 理 の 特 徴 について 着 目 し た 研 究 もある.Kalanthroff, Naparstek, & Henik(2013) は, 全 体 処 理 バイアス に 着 目 し, 右 半 球 が 全 体 処 理 に おいてより 優 性 であることと,ADHD 患 者 に 右 半 球 活 動 の 機 能 不 全 が 認 められることから, 成 人 ADHD が 不 完 全 な 全 体 処 理 を 示 すかどうか, 警 告 信 号 による 緩 和 があ るかどうかを 検 討 することを 目 的 として 実 験 を 行 ってい る. 被 験 者 は, 統 制 群 大 学 生 20 人 ( 女 性 15 人, 男 性 5 人 ), ADHD 群 (ADHD 不 注 意 型 と 診 断 されていた) 大 学 生 20 人 ( 女 性 11 人, 男 性 9 人 )であった.これら 2 群 の 被 験 者 に global-local Navon 課 題 と 警 告 信 号 を 伴 う Navon 様 矢 印 課 題 を 実 施 した.その 結 果, 統 制 群 で 見 られた 全 体 処 理 バイアスが,ADHD 群 では 見 られなかった.すなわ ち, 局 所 水 準 に 反 応 するように 求 められた 時 の 関 連 のな い 全 体 刺 激 や, 全 体 水 準 に 反 応 するよう 求 められた 時 の 関 連 のない 局 所 的 な 刺 激 が 類 似 した 干 渉 を 生 じた. 警 告 信 号 の 出 現 は, 両 群 において 全 体 処 理 バイアスを 増 加 さ せ,ADHD 群 の 全 体 処 理 バイアスは 統 制 群 の 全 体 処 理 バ イアスと 類 似 したものとなった.Kalanthroff らは, 不 注 意 優 勢 型 の ADHD 成 人 の 全 体 処 理 の 欠 陥 が 覚 醒 を 改 良 することで 緩 和 されることから,ADHD を 特 徴 づける 低 い 覚 醒 水 準 が, 全 体 処 理 バイアスの 欠 如 の 原 因 となりう ると 考 えている.また, 全 体 処 理 の 困 難 は, 細 部 への 集 中 困 難 を 強 調 する,DSM-Ⅳにおける ADHD の 定 義 と 異 なること, 社 会 的 情 報 処 理 の 欠 陥 が, 顔 の 表 情 認 知 能 力 の 縮 小 同 様, 全 体 処 理 の 欠 陥 によるものかもしれないと 31
山 下 京 子 考 察 している.Kalanthroff らの 研 究 結 果 は, 藤 田 藤 田 (2013)による,ADHD の 特 徴 として, 心 的 努 力 の 自 己 調 節 困 難 があり, 努 力 を 要 する 動 機 づけが 十 分 でない 場 合 に 注 意 力 が 低 下 しケアレス ミスが 生 じるという 指 摘 を 裏 付 けるものである.このことから,ADHD の 中 核 的 な 問 題 として, 動 機 づけをあげることができるのではない かと 考 えられる. 成 人 ADHD を 対 象 とはしていないが,Kalanthroff ら と 同 様 に,ADHD の 情 報 処 理 の 特 徴 として, 全 体 処 理 の 不 得 意 を 指 摘 した 研 究 もある. 箱 田 宋 (2010)は, ADHD の 不 注 意 優 勢 型 ADD を 対 象 に,ストループ 干 渉, 逆 ストループ 干 渉,Navon 課 題 を 用 いて, 干 渉 制 御 機 能 を 検 討 している.ADD 群 15 人 ( 8 ~13 歳 )と 統 制 群 15 人 ( 8 ~13 歳 )を 比 較 し,ADD 群 が 統 制 群 よりも 逆 ス トループ 干 渉 を 受 けやすく, 全 体 情 報 の 処 理,ならびに 部 分 情 報 から 全 体 情 報 への 切 り 換 えが 不 得 意 であること を 明 らかにしている. 箱 田 らは,この 結 果 について, ADHD 患 者 の 脳 活 動 について 調 べた 研 究 を 引 用 し, ADHD 患 者 では 前 帯 状 皮 質 (Anterior cingulate cortex) の 活 動 が 弱 いこと, 逆 ストループ 課 題 実 行 中 の 脳 活 動 を 調 べた 研 究 から, 前 帯 状 皮 質 の 背 側 部 の 活 動 がストルー プ 課 題 よりも 逆 ストループ 課 題 において 活 発 であること をもとに, 逆 ストループ 干 渉 を 前 帯 状 皮 質 の 働 きの 弱 さ にあるかもしれないと 考 察 している.さらに, 箱 田 ら は,Navon 課 題 での 全 体 情 報 処 理 よりも 部 分 情 報 処 理 実 行 中 に 前 帯 状 皮 質 の 活 動 が 高 まるという 研 究 結 果 を 引 用 し, 箱 田 らの 研 究 結 果 である 全 体 情 報 処 理 の 不 得 意 さと は 矛 盾 することも 指 摘 している. 設 楽 (2003)によると, 情 動 や 動 機 づけで 重 要 な 刺 激 に 反 応 して 行 動 を 起 こす 時 に 働 く 前 帯 状 皮 質 から 腹 側 線 条 体, 腹 側 淡 蒼 球 を 通 り, 視 床 を 通 ってまた 戻 るというループ 構 造 がある. 設 楽 (2002)はその 中 で 前 帯 状 皮 質 は 動 機 づけや 報 酬 期 待 の 情 報 処 理 にとって 特 に 重 要 であると 予 測 し, 開 発 した 多 試 行 報 酬 スケジュール 課 題 を 用 いて, 課 題 遂 行 中 のサ ルの 脳 から 前 帯 状 皮 質 の 単 一 ニューロン 活 動 を 記 録 解 析 している. ADHD の 実 行 機 能 不 全 は 非 常 に 複 雑 であり, 動 機 づけ をはじめとして 様 々なことが 絡 まっているのだろう. 成 人 ADHD に 焦 点 を 当 てた 研 究 ではないが,ADHD が 併 存 することで 実 行 機 能 の 働 きがどのように 異 なるかを 比 較 し た 研 究 が あ る.Dolan & Lennox(2013)は,CD (Conduct Disorder)の 実 行 機 能 不 全 の 本 質 の 理 解 が, ADHD と 併 存 することで 難 しくなっていることから,CD 群 (72 人 男 性,13~18 歳 ),CD + ADHD 群 (35 人 男 性,13~ 18 歳 ), 統 制 群 (20 人 男 性, 平 均 年 齢 15.63 歳 )を 対 象 に, 実 行 機 能 課 題 と CBCL(Child Behaviour Checklist)を 実 施 した.Dolan らは 実 行 機 能 課 題 を, cool 実 行 機 能 (プラ ンニング, 場 面 移 動, 行 動 抑 制 など)と hot 実 行 機 能 ( 満 足 遅 延 や 反 応 維 持 の 測 定 )に 分 けて 分 析 を 行 っている.そ の 結 果, cool 実 行 課 題 のプランニングで,CD+ADHD 群 が,CD 群, 統 制 群 よりも 顕 著 な 機 能 不 全 を 示 してい た. hot 実 行 課 題 では,CD+ADHD 群,CD 群 が 統 制 群 よりも 成 績 が 悪 かったが, 両 群 の 差 はなかった.Dolan らの 結 果 は, 実 行 機 能 の 中 でもプランニングが ADHD と 関 連 することを 示 している. 仁 平 (2013)は, 同 じ 文 字 をできるだけ 早 く 繰 り 返 し 書 き 続 ける 急 速 反 復 文 字 を 大 学 生 112 人 ( 女 性 60 人, 男 性 52 人, 平 均 年 齢 19.1 歳 )を 対 象 に 実 施 し,WHO による18 項 目 からなる 成 人 期 の ADHD 自 己 記 入 式 症 状 チェッ クリスト(ASRS-v1.1)を 用 いて 測 定 した ADHD 傾 向 との 関 連 を 検 討 している.ADHD 傾 向 の 因 子 分 析 の 結 果, 多 動 ( 過 活 性 )と 注 意 のコントロールの 悪 さ 因 子 と 抑 制 メカニズムの 障 害 因 子 の 男 女 共 通 の 2 因 子 を 得 てい る.さらに, 仁 平 は, 急 速 反 復 文 字 において, 書 こう と 意 図 しなかった 文 字 を 書 いてしまう 書 字 のスリップ 数 と,ADHD 傾 向 の 各 因 子 の 得 点 との 相 関 を 求 め, 多 動 ( 過 活 性 )と 注 意 のコントロールの 悪 さ 得 点 とスリップ 数 との 間 に 女 性 で 有 意 な 正 の 相 関 を 得, 抑 制 メカニズム の 障 害 得 点 とスリップ 数 との 間 に 男 性 で 有 意 な 負 の 相 関 を 得 た.この 結 果 について, 仁 平 は 抑 制 メカニズム の 障 害 に 含 まれる 項 目 に, 高 次 の 社 会 的 な 抑 制 の 障 害 の 成 分 が 大 きいことが 関 係 しているかもしれないと 考 察 している. 仁 平 の 結 果 において, 性 差 が 認 められたこと は 興 味 深 い.ADHD の 認 知 特 性 における 性 差 について, 検 討 が 必 要 であろう. 5. 不 注 意 と 抑 うつの 関 連 ADHD と 抑 うつの 関 連 についても, 検 討 されている. 例 えば,Mashhadi, Soltani, Akbari, & Farmani(2013) は, 大 学 在 籍 中 の 学 生 291 人 ( 男 性 119 人, 女 性 172 人 )を 対 象 に, 子 ども 時 代 の ADHD と 成 人 期 の 境 界 型 人 格 障 害 (Borderline Personality Disorder: BPD)の 関 係 を 検 討 す るために,WURS(Wender Utah Rating Scale)と STB (Boderline Personality Scale),BDI-Ⅱ(Beck Depression Inventory)を 実 施 している.WURS は, 回 想 的 に 子 ども 時 代 の ADHD の 症 状 について 調 べる ADHD 尺 度 であ る.その 結 果, 子 ども 時 代 の ADHD と 成 人 の BPD との 間, 子 ども 時 代 の ADHD と 抑 うつとの 間 に 有 意 な 正 の 相 関 が 認 められた.また, 重 回 帰 分 析 により, 子 ども 時 代 の ADHD が 成 人 期 の BPD を 予 測 するという 結 果 を 得 32
大 学 生 ADHD への 臨 床 心 理 学 的 アプローチに 関 する 一 考 察 ている. Humphreys, Katz, Lee, Hammen, Brennan, & Najman (2013)は,ADHD から 後 の 抑 うつを 予 測 する 仲 介 変 数 と して, 仲 間, 学 業 に 加 えて 親 子 関 係 の 困 難 を 仮 定 し, 横 断 研 究 と 縦 断 研 究 により 検 討 している. 研 究 1 では, 5 歳 ~10 歳 の ADHD のある 子 ども120 人 とない 子 ども110 人 とその 家 族 を 対 象 として,DISC-Ⅳ(Diagnostic Interview Schedule for Children 4 th ed.),dbd(disruptive Behavior Disorder Rating Scale),CBCL(Child Behavior Checklist)6 18,Wechsler Individual Achievement Test Second Edition,Dishion Social Preference Scale, Parenting Stress Index: Short Form を 実 施 した.その 結 果,ADHD の 不 注 意 と 抑 うつの 関 連 は, 仲 間 の 問 題 と 親 子 の 問 題 によりそれぞれ 独 立 して 仲 介 されており, 学 業 成 績 は 有 意 な 仲 介 変 数 ではなかった.Humphreys ら は,このモデルに ODD(Oppositional Defiant Disorder) を 含 んで 分 析 し, 不 注 意 と ODD は 独 立 して 親 子 問 題 を 介 して 抑 うつと 関 連 しており,ODD のみ 抑 うつに 直 接 関 連 していた. 研 究 2 は, 縦 断 的 研 究 であり, 出 生 前 から 20 歳 になるまで472 人 を 対 象 としていた. 5 歳 時 に, 母 親 に 対 して 子 どもの 情 緒 と 行 動 に 関 する CBCL の 修 正 版 を 実 施,15 歳 と20 歳 時 に, 対 象 者 と 母 親 に 対 して, 面 接 と 質 問 紙 を 実 施 している. 分 析 の 結 果, 子 ども 時 代 の 注 意 の 問 題 が 成 人 の 抑 うつに 直 接 関 連 することはなく, 親 子 問 題 を 経 由 して 間 接 的 に 影 響 を 与 えることが 示 された. 仲 間 問 題 を 介 しての 影 響 は 有 意 ではなかった.ODD に 関 するデータを 加 え 分 析 したところ, 子 ども 時 代 の 注 意 の 問 題 は, 仲 間 や 親 子 の 問 題 を 有 意 に 予 測 せず, 子 ども 時 代 の 攻 撃 性 が, 親 子 問 題 を 有 意 に 予 測 し, 子 ども 時 代 の 攻 撃 性 と 成 人 の 抑 うつ 症 状 は, 親 子 問 題 を 媒 介 にして 有 意 に 関 連 することが 明 らかとなった.これらのことか ら,Humphreys らは,ADHD 児 の 介 入 のターゲットと して, 対 人 関 係 コンピテンスをあげている. Mashhadi らや Humphreys らの 研 究 結 果 から,ADHD が 感 情 の 自 己 調 節 に 問 題 を 持 っていること,その 問 題 は 親 子 関 係 を 基 本 とする 対 人 関 係 のあり 方 によって 影 響 を 受 けることが 推 測 される. 不 注 意 と 抑 うつとの 関 連 にお いて, 学 業 成 績 が 介 在 しないという 結 果 は,Humphreys らも 述 べているように,ADHD 児 の 支 援 として 学 習 支 援 だけでなく, 子 どものときから 対 人 関 係 の 持 ち 方 につい ての 介 入 が 必 要 となることを 示 している. Okada & Tsujii(2013)は, 9 歳 以 下 の ADHD 児 が 高 揚 した 気 分 を 伴 わず 重 篤 な 非 エピソード 的 な 易 刺 激 性 を 示 す 時, 児 童 期 に 始 まる 双 極 性 障 害 (BP)の 最 初 の 前 駆 的 症 状 かどうかを 調 べることを 目 的 として, 6 ケースを 対 象 に 3 年 間 追 跡 研 究 を 行 っている.その 結 果, 2 ケース が 追 跡 期 間 中 に 軽 躁 病 エピソードを 体 験 し, 3 ケースで 易 刺 激 性 が 緩 和 し, 1 ケースで 易 刺 激 性 が 持 続 した. Okada らは, 重 篤 な 非 エピソード 的 易 刺 激 性 の 経 過 が, 薬 物 治 療 の 効 果 よりも 子 どもの 周 囲 の 環 境 要 因 により 大 きな 影 響 を 受 けることを 見 出 している.これらの 結 果 か ら,Okada らは, 9 歳 以 下 の ADHD 児 が 重 篤 な 非 エピ ソード 的 易 刺 激 性 を 示 す 時,BP の 発 達 的 表 現 となりう ること, 子 どもを 取 り 囲 む 環 境 要 因 が 治 療 決 定 時 に 考 慮 されるべきであると 述 べている. Humphreys らの 研 究 結 果 も Okada らの 結 果 も,ADHD の 子 どもの 発 達 にとって 二 次 的 な 障 害 をできる 限 り 予 防 するためには, 子 どもの 養 育 環 境 が 重 要 であること, 特 に 親 子 関 係 の 重 要 性 を 指 摘 している. 松 岡 岡 田 谷 大 西 中 島 辻 井 (2011)は, 保 育 園 年 少 組 から 中 学 校 3 年 生 まで7521 人 の 保 護 者 を 対 象 に, 養 育 スタイル 尺 度 と ADHD Rating Scale(ADHD-RS) 日 本 語 版 ( 市 川 田 中, 2008)を 実 施 している. 松 岡 らは, 養 育 スタイル 尺 度 を, 肯 定 的 働 きかけ 相 談 つきそい 叱 責 育 てにく さ 対 応 の 難 しさ の 5 因 子 に 分 け,ADHD-RS との 相 関 を 求 めたところ, 肯 定 的 働 きかけ と 有 意 な 負 の 相 関, 叱 責 育 てにくさ 対 応 の 難 しさ と 有 意 な 正 の 相 関 を 示 し, 相 談 つきそい とは 有 意 ではあるが 弱 い 負 の 相 関 を 示 したことを 報 告 している.ADHD の 早 期 発 見 には 困 難 が 伴 うが, 乳 幼 児 期 から 丁 寧 な 子 育 てを 行 う ことが, 早 期 対 応 の 最 良 の 策 のように 考 えられる. 無 論, 良 好 な 養 育 環 境 は ADHD 児 のみならず 全 ての 子 ど もにとって 健 全 な 発 達 のために 必 要 なことであるが, ADHD の 場 合, 特 に 影 響 が 大 きいことを 忘 れてはならな いだろう. 6.ADHD における 動 機 づけと 報 酬 系 岡 田 (2012)は,ADHD における 神 経 心 理 学 的 機 能 の 障 害 について, 実 行 機 能 障 害 仮 説 と, 実 行 機 能 障 害 と 報 酬 系 の 障 害 を 並 列 した dual pathway model を 紹 介 し, ADHD 治 療 薬 である methylphenidate と atomoxetine の 作 用 機 序 について 先 行 研 究 を 引 用 して 説 明 を 加 えてい る. 岡 田 は,ADHD の 中 核 症 状 には, 実 行 機 能 と 報 酬 系 が 関 与 しており,methylphenidate が 実 行 機 能 と 報 酬 系 を 改 善 し,atomoxetine が 実 行 機 能 のみを 改 善 すること から,ADHD 患 者 の 薬 物 療 法 において, 中 核 症 状 のプロ ファイルのみで 評 価 しても 両 薬 剤 の 使 い 分 けは 明 確 では なく, 実 行 機 能 と 報 酬 系 を 評 価 するならば,その 神 経 心 理 学 的 障 害 のパターンによる 最 適 な 治 療 薬 を 選 択 するこ とができると 述 べている.また, 岡 田 は, 報 酬 系 の 機 能 33
山 下 京 子 障 害 は,ADHD の 児 童 のみならず 成 人 においても 確 認 さ れているが,ADHD の 臨 床 症 状 に 報 酬 系 の 機 能 障 害 がど のように 関 与 されているかはまだ 明 らかではないと 指 摘 している. 国 里 山 口 鈴 木 (2008)は,うつ 病 と 報 酬 系 に 関 する 認 知 神 経 科 学 的 検 討 を 行 っている. 国 里 らによると, 報 酬 系 において 中 終 脳 ドーパミン 系 が 重 要 な 役 割 を 果 たし ており, 黒 質 や 腹 側 被 蓋 野 に 細 胞 体 を 有 し, 黒 質 から 背 側 線 条 体 に 投 射 する 黒 質 線 条 体 経 路 と, 腹 側 被 蓋 野 から 前 頭 前 野 や 側 坐 核 や 扁 桃 体 などに 投 射 する 中 脳 皮 質 辺 縁 系 経 路 が 関 係 している. 国 里 らは,これらの 脳 部 位 の 働 きが 障 害 されると, 報 酬 刺 激 の 処 理 ができなくなり, 動 機 づけが 低 くなり, 活 動 の 低 下 が 生 じ,うつ 病 症 状 を 呈 すると 推 測 している. 報 酬 に 関 わる 脳 内 メカニズムの 解 明 は, 脳 研 究 の 分 野 で 行 われており, 田 中 (2009)は,う つ 病 や ADHD, 薬 物 中 毒 や, 前 頭 葉 眼 窩 面 皮 質 (OFC)や 内 側 前 頭 前 野 (mpfc)などの 大 脳 皮 質 損 傷 患 者 にみられ る 症 状 のひとつである 衝 動 性 にセロトニンが 関 わっ ているとして, 脳 活 動 を 機 能 的 磁 気 共 鳴 画 像 法 (fmri)を 用 いて 測 定 する,セロトニンの 機 能 に 関 する 仮 説 を 検 証 した 実 験 を 紹 介 している. 田 中 は, 実 験 結 果 について, 脳 の 中 に 異 なる 時 間 スケールで 報 酬 予 測 を 行 う 線 条 体 を 経 由 する 並 列 ネットワークが 存 在 し,セロトニンが 線 条 体 の 活 動 を 調 節 することで,それらのネットワークの 活 動 を 調 節 しているというメカニズムを 示 唆 し,セロトニ ンが 報 酬 予 測 の 時 間 スケールパラメータを 調 節 するとい う 仮 説 を 支 持 したと 述 べている. 国 里 らや 田 中 の 研 究 から,ADHD における 報 酬 系 の 障 害 は, 動 機 づけの 低 下 や 衝 動 性 の 亢 進 につながると 考 え られ, 篠 田 ら(2012)に 指 摘 されたように,ADHD 学 生 の 大 学 生 活 への 心 理 的 適 応 の 問 題 として, 抑 うつ 傾 向, 内 的 な 落 ち 着 きのなさ, 自 尊 心 の 低 さ, 幸 福 感 の 低 さな ど, 社 会 的 適 応 の 問 題 としては, 運 転 の 問 題, 薬 物 やア ルコール 依 存 の 問 題 などがあるということを 説 明 するか もしれない. 朝 倉 (2012)によると, 依 存 症 関 連 障 害 と ADHD との 関 連 について, 欧 米 では 古 くから 研 究 されており, ADHD を 併 存 する 物 質 乱 用 患 者 の 症 状 が 重 篤 で, 再 使 用 が 高 率 に 起 こる 傾 向 があるという. 朝 倉 は,ADHD を 持 つ 病 的 賭 博 の 症 例 を 提 示 し, 依 存 症 の 患 者 に 対 して 回 復 プログラムを 導 入 する 際 には, 生 育 歴 を 詳 細 に 取 り, 背 景 に 発 達 障 害 特 性 が 存 在 するかどうかを 評 価 し, 存 在 す る 場 合 にはその 人 の 特 性 に 合 致 した 回 復 プログラムの 作 成 が 求 められるとしている. 朝 倉 も 述 べているように, 依 存 症 関 連 障 害 の 治 療 において, 治 療 への 動 機 づけが 重 要 となるが,ADHD の 特 性 を 持 つ 場 合, 動 機 づけの 自 己 調 節 に 問 題 を 持 つと 想 定 され, 外 的 な 枠 組 みの 導 入 が 効 果 的 なこともあるという. ADHD の 持 つ 動 機 づけの 問 題 との 関 連 が 低 いような, ADHD への 治 療 アプローチはあるのだろうか.ADHD の 脳 波 に 関 する 研 究 では,ADHD 児 は 徐 波 の 割 合 が 高 く,それらが 高 振 幅 でそのような 傾 向 を 年 齢 が 高 くなっ ても 持 ち 合 わせていることが 明 らかにされている( 根 來, 2012). 脳 波 に 着 目 した,ADHD の 治 療 法 も 開 発 されて いる. 竹 内 (2009)によると,ニューロフィードバックは EEG( 脳 波 )を 対 象 としたバイオフィードバックであり, 現 在 のニューロフィードバック 機 器 は,θ 波,δ 波 の 徐 波 とβ 波 の 早 い 成 分 High Beta が 減 少 し,SMR(Sensory Motor Rhythm)などの 促 進 の 対 象 となる 脳 波 が 増 加 した 時,コンピューターゲームのデモ 画 面 のような 画 面 が 動 き,うまくいっていることを 示 す 音 が 鳴 るような 仕 組 み になっているという. 竹 内 によれば, 画 面 が 動 いたり, 音 が 鳴 ったりすることがオペラント 条 件 付 けの 報 酬 となり, 脳 波 が 特 定 の 状 態 に 変 化 しやすくなる. 竹 内 は,アメリカでポスト リタリンとして ADD/ADHD の 患 者 に 多 く 使 われており,その 他 の 様 々な 症 状 に 効 果 が あるとして, 自 験 例 を 紹 介 している.その 自 験 例 は, 中 学 生 相 当 の 自 閉 症 アスペルガー 症 候 群 と 診 断 された 高 校 生 年 齢 高 機 能 広 汎 性 発 達 障 害 と 診 断 された 小 学 校 高 学 年 のクライアントであり,ニューロフィードバック の 効 果 が 述 べられているが,ADHD に 関 する 症 例 は 紹 介 さ れ て い な い.Ogrim & Hestad(2013)は,32 人 の ADHD 患 者 ( 年 齢 は 7 ~16 歳 )を 無 作 為 に 2 群 に 分 け, ADHD 患 者 のニューロフィードバック30 回 の 効 果 を 薬 物 治 療 の 効 果 と 比 較 している.その 結 果, 薬 物 療 法 の 効 果 は 支 持 されたが,ニューロフィードバックの 効 果 は 支 持 されなかった.ニューロフィードバックの 効 果 について は, 今 後 検 討 される 必 要 がある.Ogrim らは,ADHD を 持 つ 子 どもや 青 年 の 注 意 や 自 己 管 理 能 力 を 改 善 するため に 効 果 的 な 治 療 ストラテジーの 必 要 性 があると 述 べてい るように,ADHD の 効 果 的 な 治 療 について 今 後 の 研 究 の 進 展 が 望 まれる. 7. 大 学 生 ADHD への 支 援 ADHD に 関 する 研 究 の 概 観 から,ADHD の 注 意, 感 情 の 調 整, 動 機 づけの 問 題 がキーワードとして 挙 がって きたが, 大 学 における ADHD の 特 性 に 応 じた 支 援 のあ り 方 はどのようであるべきだろうか.これまで ADHD を 含 め 発 達 障 害 の 特 性 を 持 つ 学 生 への 支 援 は, 学 生 相 談 室 や 健 康 管 理 センター 等 におけるメンタルな 面 での 支 援 34
大 学 生 ADHD への 臨 床 心 理 学 的 アプローチに 関 する 一 考 察 や, 学 習 支 援 室 やピアサポートによる 学 習 面 での 支 援 が 行 われてきた. 診 断 を 持 っている 学 生 が 少 なく,いわゆ るグレーゾーンの 学 生 が 多 いことから, 学 生 の 抱 える 困 難 は 類 似 していてもその 困 難 の 背 景 にある 心 理 的 特 性 は 様 々であり,そのために 個 別 対 応 が 原 則 となると 思 われ る. 大 学 生 ADHD に 関 しては, 診 断 を 持 っている 学 生 の 少 なさに 加 えて, 抱 えている 困 難 さが 周 囲 の 人 に 理 解 されにくいことや, 2 次 的 な 問 題 の 発 生 により 見 えにく くなっていること,そもそも 本 人 自 身 困 難 さを 抱 えてい ることに 気 付 かず 自 分 を 責 めているケースも 多 いように 思 われる. こうした 現 状 にあって, 篠 田 沢 崎 石 井 (2013)の 試 みは,ADHD 特 性 のうち 注 意 の 困 難 さを 取 り 上 げ, 実 行 機 能 の 中 で プランニング に 焦 点 を 当 てて, 学 生 の 進 路 決 定 を 支 援 するためのプログラムを 開 発 したという 点 で, 注 目 に 値 する. 篠 田 らは,ADHD 特 性 のうち 特 に 不 注 意 による 困 難 さを 自 己 認 知 している 大 学 生 6 名 に 対 し, 進 路 決 定 に 影 響 していると 考 えられる プランニン グの 弱 さ と 不 安 に 着 目 した 支 援 のための 介 入 プロ グラムを 作 成 し, 実 施 した.その 結 果, 自 己 理 解 した 上 でプランニングスキルを 獲 得 できることが 確 認 された. 一 方, 不 安 については 必 ずしも 軽 減 しなかったと 報 告 し ている. ADHD の 特 性 を 持 つ 学 生 が 不 特 定 である 現 状 を 考 慮 す るならば, 一 般 学 生 を 対 象 にした 様 々な 教 育 的 配 慮 が 支 援 につながるのではないかと 考 えられる. 小 池 (2012) は, 動 機 づけ 理 論 のひとつである 自 己 決 定 理 論 を 援 用 し, 作 業 療 法 士 養 成 校 へ 入 学 した 学 生 の 内 発 的 な 動 機 づ けを 高 めるための 指 導 のあり 方 を 検 討 している. 小 池 に よると, 学 生 指 導 の 際 に, 自 己 決 定 の 機 会 の 設 定, 学 生 自 身 の 自 己 評 価 の 設 定, 学 生 の 価 値 観 や 行 動 の 原 因 の 確 認, 指 導 者 側 の 設 定 の 根 拠 の 伝 達 という 学 生 の 主 体 性 の 尊 重, 臨 床 場 面 を 通 じた 指 導,グループワークの 設 定 を 実 施 することで 内 発 的 な 動 機 づけを 高 める 一 助 となるこ とが 示 唆 された. また, 畑 野 (2013)は, 学 習 だけでなくキャリアに 関 わ る 変 数 との 関 連 から, 大 学 生 の 自 律 的 な 学 習 動 機 づけを 検 討 することを 目 的 として, 大 学 生 を 対 象 とした 学 習 動 機 づけ 尺 度 を 作 成 し, 授 業 行 動, 全 般 的 な 学 習 行 動, 職 業 的 関 与 に 与 える 影 響 を 検 討 している. 畑 野 の 学 習 動 機 づけ 尺 度 は, 向 上 志 向 知 的 好 奇 心 将 来 不 安 から 構 成 されており, 知 的 好 奇 心 と 向 上 志 向 は, 自 律 的 な 学 習 動 機 づけである 可 能 性 が 示 唆 され, 将 来 不 安 は 他 律 的 な 学 習 動 機 づけである 可 能 性 が 示 された.さら に, 共 分 散 構 造 分 析 を 行 い, 向 上 志 向 が 全 般 的 な 学 習 行 動, 職 業 的 関 与 を 促 進 することに 対 して, 知 的 好 奇 心 は, 全 般 的 な 学 習 行 動, 授 業 行 動 を 促 進 する 可 能 性 を 示 した. 畑 野 は, 自 己 決 定 理 論 の 枠 組 みから, 知 的 好 奇 心 が 内 的 調 整 に, 向 上 志 向 が 統 合 調 整 あ るいは 同 一 化 調 整 に, 将 来 不 安 が 取 り 入 れ 調 整 に 相 当 すると 解 釈 している. 大 学 生 ADHD の 支 援 にあたっては, 篠 田 らの 研 究 の ように ADHD 特 性 を 持 つ 学 生 を 対 象 にしたアプローチ と, 小 池 や 畑 野 の 研 究 のように 一 般 学 生 を 対 象 としたア プローチのように, 両 方 向 からのアプローチが 必 要 であ ると 考 えられる. 8. 今 後 の 課 題 大 学 において,ADHD の 特 性 を 持 つ 学 生 への 適 切 な 支 援 を 行 うためには, 注 意 機 能 に 関 する 基 礎 的 な 心 理 学 研 究 の 成 果 を 具 体 的 に 日 常 場 面 で 応 用 できるようになるこ とが 必 要 であろう. 例 えば, 池 亀 道 又 (2012)は, 同 オ ブジェクト 効 果 を 指 標 として, 物 体 の 輪 郭 線 の 欠 如 が 注 意 の 拡 散 方 向 に 与 える 影 響 を 検 討 している. 同 オブジェ クト 効 果 とは, 池 亀 らによると, 注 意 が 知 覚 された 物 体 ごとに 向 けられ, 注 意 を 向 けた 物 体 に 関 する 情 報 が 優 先 的 に 処 理 されるというオブジェクトベースの 選 択 的 注 意 の 指 標 として 用 いられることが 多 く, 手 がかり 位 置 とは 異 なる 位 置 に 標 的 が 出 現 する 場 合, 標 的 が 手 がかりと 同 じ 物 体 上 に 出 現 する 方 が, 手 がかりと 異 なる 物 体 上 に 出 現 するよりも 検 出 が 速 くなることを 言 う. 池 亀 らのよう な 注 意 に 関 する 基 礎 的 研 究 の 成 果 は, 大 学 において 様 々 な 形 で 応 用 できるように 思 われる. また, 関 連 分 野 における 基 礎 研 究 にも, 目 を 向 けるこ とが 必 要 であろう. 例 えば, 林 木 村 小 山 久 保 中 本 吉 井 麦 島 (2012)は, 突 発 性 てんかんのモデルであ る EL マウスを ADHD モデル 動 物 として 遅 延 価 値 割 引 実 験 を 行 い, 強 化 子 を 得 るための 重 要 な 選 択 場 面 で, 手 が かり 刺 激 の 明 瞭 度 が 一 定 の 効 果 を 持 つことを 示 唆 してい る. 林 らは,こうした 基 礎 研 究 が ADHD に 対 する 体 系 的 な 環 境 調 整 を 確 立 するための 効 果 的 な 手 段 となると 述 べている. さらに, 神 経 心 理 学 的 検 査 の 有 用 性 を 高 めることが 期 待 される. 岡 田 (2012)も 指 摘 するように, 多 種 多 様 の 実 行 機 能 検 査 があり, 有 用 な 検 査 バッテリーの 抽 出 が 求 め られることや, 報 酬 系 には 多 様 な 側 面 があり, 様 々な バッテリーが 考 案 されているが, 広 く 使 用 されていず 標 準 値 も 明 らかでないなど, 神 経 心 理 学 的 検 査 の 臨 床 的 応 用 に 関 する 研 究 が 必 要 である. ADHD の 特 性 を 持 つ 大 学 生 の 多 様 性 に 対 応 するために 35
山 下 京 子 は, 基 礎 的 な 研 究 の 積 み 上 げと, 関 連 する 学 問 分 野 間 に おける 情 報 共 有 や 連 携 が 必 要 となってくると 考 えられる. 付 記 本 研 究 は, 科 学 研 究 費 補 助 金 ( 平 成 25 年 度 基 盤 研 究 研 究 代 表 者 : 山 下 京 子 研 究 課 題 名 : 青 年 期 女 子 の 注 意 欠 陥 多 動 性 障 害 (ADHD)への 臨 床 心 理 学 的 アプローチ)にもとづく 研 究 の 一 環 として 実 施 され た. 文 献 朝 倉 新 2012 依 存 を 形 成 している 発 達 障 害 の 成 人 例. 精 神 科 治 療 学,27, 5, 617 623. Dolan, M. and Lennox, C. 2013 Cool and hot executive function in conduct-disordered adolescents with and without co-morbid attention deficit hyperactivity disorder: relationships with externalizing behaviours. Psychological Medicine, 43, 2427 2436. Fujibayashi, H., Kitayama, S., and Matsuo, M. 2010 Score of inattention subscale of ADHD rating scale-Ⅳ is significantly higher for AD/HD than PDD. The Kobe Journal of the Medical Sciences, 56, 1, E12 E17. 藤 田 英 樹 藤 田 和 弘 2013 発 達 障 害 の 臨 床 的 に 類 似 した 認 知 行 動 特 性 に 関 する 判 別 的 アセスメント 高 精 度 で 個 別 化 された 理 解 と 支 援 に 向 けて. 九 州 保 健 福 祉 大 学 研 究 紀 要,14, 79 86. 福 田 真 也 2013 大 学 生 の 発 達 障 害 を 支 援 する.こころの 科 学,171, 34 38. Garnier-Dykstra, L.M., Pinchevsky, G.M., Caldeira, K.M., Vincent, K.B., and Arria, A.M. 2010 Self-reported Adult Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder symptoms among college students. Journal of American College Health, 59, 2, 133 136. 箱 田 裕 司 宋 永 寧 2010 逆 ストループ 課 題 と Navon 課 題 を 用 いた 注 意 欠 陥 障 害 (ADD)へのアプローチ. 基 礎 心 理 学 研 究,29, 1, 58 62. 畑 野 快 2013 大 学 生 の 自 律 的 な 学 習 動 機 づけの 検 討 学 習 キャリアの 変 数 との 関 わりから. 青 年 心 理 学 研 究,24, 137 148. 林 奈 津 美 木 村 裕 小 山 明 子 久 保 浩 明 中 本 百 合 江 吉 井 光 信 麦 島 剛 2012 遅 延 価 値 割 引 事 態 における 環 境 明 瞭 度 の 増 大 が EL マウスの 衝 動 的 行 動 に 与 える 影 響 音 と 光 を 用 いた ADHD モデル 動 物 での 検 討. 日 本 行 動 分 析 学 会 年 次 大 会 プログラム 発 表 論 文 集,30, 28. Humphreys, K.L., Katz, S.J., Lee, S.S., Hammen, C., Brennan, P.A., and Najman, J.M. 2013 The association of ADHD and Depression: mediation by peer problems and parent- child difficulties in two complementary samples. Journal of Abnormal Psychology, 122, 3, 854 867. 日 比 優 子 熊 田 孝 恒 山 下 雅 子 2012 注 意 欠 陥 多 動 性 障 害 の 自 覚 症 状 を 訴 える 成 人 の 視 覚 探 索 の 特 性. 基 礎 心 理 学 研 究,30, 2, 229.( 日 本 基 礎 心 理 学 会 第 30 回 大 会, 大 会 発 表 要 旨 ) 日 比 優 子 熊 田 孝 恒 山 口 真 美 金 沢 創 2012 視 覚 探 索 課 題 を 用 いた 発 達 障 害 児 の 注 意 機 能 に 関 する 実 験 的 検 討. 発 達 研 究,26, 121 130. 池 亀 和 樹 道 又 爾 2012 輪 郭 線 の 欠 如 がオブジェクトベー スの 注 意 の 拡 散 に 与 える 影 響. 基 礎 心 理 学 研 究,30, 2, 181 189. 今 田 里 佳 小 松 伸 一 2009 集 団 式 注 意 機 能 検 査 における ADHD および PDD の 障 害 特 徴 の 検 討. 特 殊 教 育 学 研 究, 47, 2, 91 101. 今 田 里 佳 小 松 伸 一 高 橋 知 音 2003 児 童 を 対 象 とした 集 団 式 注 意 機 能 検 査 開 発 の 試 み 教 育 心 理 学 研 究,51, 22 32. 市 川 宏 伸 2013 DSM-5と 特 別 支 援 教 育 への 影 響. 日 本 LD 学 会 第 22 回 大 会 発 表 論 文 集,187. 市 川 宏 伸 田 中 康 雄 ( 監 訳 ) 2008 診 断 対 応 のための ADHD 評 価 スケール ADHD-RS:DSM 準 拠 :チェックリ スト, 標 準 値 とその 臨 床 的 解 釈. 明 石 書 店. Kalanthroff, E., Naparstek, S., and Henik, A. 2013 Spatial processing in adults with Attention Deficit Hyperactivity Disorder. Neuropsychology, 27, 5, 546 555. 小 池 伸 一 2012 動 機 づけ 理 論 と 学 生 指 導 への 応 用 自 己 決 定 理 論 の 援 用. 仏 教 大 学 保 健 医 療 技 術 学 部 論 集,6, 65 78. 国 里 愛 彦 山 口 陽 弘 鈴 木 伸 一 2008 うつ 病 において 報 酬 系 の 機 能 は 阻 害 されるか? うつ 病 と 報 酬 系 に 関 する 認 知 神 経 科 学 的 検 討. 群 馬 大 学 教 育 学 部 紀 要 人 文 社 会 科 学 編,57, 219 234. Marchant, B. K., Reimherr, F.W., Robison, D., Robison, R. J. and Wender, P. H. 2013 Psychometric properties of the Wender-Reimherr Adult Attention Deficit Disorder Scale. Psychological Assessment, 25, 3, 942 950. Mashhadi, A., Soltani, E., Akbari, E., and Farmani, A. 2013 The relationship between childhood Attention Deficit/ Hyperactivity Disorder and adulthood Borderline Personality Disorder. Zahedan Journal of Research in Medical Sciences, 15, 2, 68 73. 松 岡 弥 玲 岡 田 涼 谷 伊 織 大 西 将 史 中 島 俊 思 辻 井 正 次 2011 養 育 スタイル 尺 度 の 作 成 : 発 達 的 変 化 と ADHD 傾 向 との 関 連 から. 発 達 心 理 学 研 究,22, 2, 179 188. 文 部 科 学 省 2012 障 がいのある 学 生 の 修 学 支 援 に 関 する 検 討 会 報 告 ( 第 一 次 まとめ).http://www.mext.go.jp/b_menu/ houdou/24/12/_icsfiles/afieldfile/2012/12/26/ 中 村 和 彦 2012 発 達 障 害 について 分 かってきたこと 生 物 学 的 背 景 を 中 心 に. 発 達 障 害 年 鑑,4, 6 11. Nagatani, F., Matsuzaki, J., Eto, M., Kagitani-Shimono, K., Mohri, I., and Taniike, M. 2012 Assessment of executive function using the Behavior Rating Inventory of Executive Function(BRIEF)and the Cambridge Neuropsychological Test Automated Battery(CANTAB)in young children with attention deficit/hyperactivity disorder, inattention type. 36
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