先 進 的 な 設 計 検 証 技 術 の 適 用 事 例 報 告 書 2015 年 度 版 PART Ⅱ 設 計 事 例 SEC-2015-A-10-01 15-A-10 XDDP におけるデグレード 防 止 効 果 を 高 めるための 手 法 1 ~ 気 づきナビ の 考 案 ~ 1. 適 用 した 技 術 や 手 法 の 概 要 既 存 のソフトウェアに 変 更 追 加 等 を 行 い 別 のソフトウェアを 開 発 する 派 生 開 発 では 既 存 ソフトウェアの 仕 様 書 や 設 計 書 が 更 新 されない 設 計 書 とソースコードの 乖 離 が 次 第 に 大 きくなるといった 問 題 がある そのため 非 熟 練 技 術 者 の 場 合 派 生 開 発 での 仕 様 変 更 の 影 響 箇 所 の 見 極 めを 誤 り 変 更 箇 所 の 故 障 や 変 更 が 影 響 して 起 きる 既 存 箇 所 の 故 障 (デグレ ード)が 繰 り 返 し 発 生 している 派 生 開 発 におけるこれらの 問 題 を 解 決 するため XDDP ( extreme Derivative Development Process) 手 法 の 導 入 を 検 討 したが XDDP 手 法 においても 非 熟 練 技 術 者 の 場 合 デグレードに 対 しては XDDP の 導 入 効 果 が 少 ないことが 現 状 分 析 (シミュレーション) で 明 らかになった 本 編 では XDDP の 導 入 にあたり 技 術 者 の 熟 練 度 に 依 存 しなくても 変 更 箇 所 の 故 障 やデ グレードを 低 減 するなどの 効 果 を 得 られる 手 法 について 紹 介 する 本 事 例 で 導 入 した XDDP は 派 生 開 発 に 特 化 したプロセスモデルであり 変 更 を 表 現 する 視 点 から3 点 セットと 呼 ばれる3 種 類 の 成 果 物 を 定 義 している( 図 15-A-10-1) 具 体 的 には 何 を どのように 変 更 するかを 記 述 する 変 更 要 求 仕 様 書 どこを 変 更 するかを 記 述 するトレーサビリティ マトリクス どうやって 変 更 するかを 記 述 する 変 更 設 計 書 の3 種 類 である 1 事 例 提 供 : アズビル 株 式 会 社 ビルシステムカンパニー 開 発 本 部 関 野 浩 之 氏 株 式 会 社 インテック コンサルティング 事 業 部 大 坪 智 治 氏 キヤノン IT ソリューションズ 株 式 会 社 IT サービス 事 業 本 部 外 谷 地 茂 氏 1
PART Ⅱ 設 計 事 例 要 求 XX5 理 由 要 求 要 求 要 求 どこを 変 更 するのかを 記 述 トレーサビリティマトリクス 文 章 ソース/タスク 変 更 要 求 仕 様 書 D1 D2 A B C D E F G センサーの 計 測 範 囲 を から に 変 更 する の 計 測 用 途 に 利 用 できるようにするため 5.1 計 測 レンジを から に 変 更 する 理 由 5.2 計 測 周 期 をA(ms)からB(ms)に 変 更 する 理 由 5.3 計 測 値 のデータ 範 囲 を から に 変 更 する 理 由 何 を どのように 変 更 するのかを 記 述 変 更 設 計 書 変 更 変 更 設 計 書 どうやって 変 更 するのかを 記 述 担 当 者 の 思 い 込 みや 勘 違 いを 低 減 するレビューの 効 果 を 引 き 出 し 不 具 合 の 作 り 込 みを 防 ぐ 手 法 図 15-A-10-1 XDDP3 点 セットの 成 果 物 2. 適 用 した 技 術 や 手 法 の 導 入 に 踏 み 切 った 理 由 や 経 緯 2.1. 背 景 と 気 づきナビ について 派 生 開 発 では 仕 様 変 更 が 頻 繁 に 発 生 し それらは 短 納 期 低 コストを 要 求 される 場 合 が 大 多 数 であるため 仕 様 書 や 設 計 書 の 更 新 が 後 回 しになったり 行 われなかったりしている また 繰 り 返 される 派 生 開 発 の 中 で 設 計 書 とソースコードの 乖 離 が 次 第 に 大 きくなり 設 計 書 が 使 い 物 にならなくなるなど 派 生 開 発 を 取 り 巻 く 環 境 は 劣 悪 な 状 態 にある このよう な 環 境 の 中 で 品 質 を 確 保 するためには 仕 様 変 更 による 影 響 箇 所 の 正 確 な 見 極 めが 欠 かせな いことから 現 場 では 派 生 開 発 に 必 要 な 知 識 スキル 及 び 経 験 を 十 分 に 持 った 熟 練 技 術 者 を 頼 りに 仕 様 変 更 による 影 響 箇 所 の 見 極 めを 行 うことが 望 ましい しかしながら 常 に 熟 練 技 術 者 を 割 り 当 てることが 難 しく その 結 果 影 響 箇 所 の 見 極 めを 誤 り 変 更 箇 所 の 故 障 やデグレードが 繰 り 返 し 発 生 している そこで XDDP を 導 入 することによって 熟 練 技 術 者 に 依 存 しなくても 変 更 箇 所 の 故 障 や デグレードを 低 減 できないかの 検 討 を 行 った はじめに XDDP の 導 入 効 果 をシミュレーショ ンにより 確 認 した その 結 果 判 明 したことは XDDP は 変 更 箇 所 の 故 障 の 防 止 には 有 効 であ るが デグレードの 防 止 についての 効 果 は 熟 練 技 術 者 が 持 つ 開 発 経 験 から 得 られる 知 識 ス キルの 有 無 に 大 きく 影 響 を 受 けることであった そこで 熟 練 技 術 者 に 頼 ることなく XDDP に よるデグレード 防 止 効 果 を 向 上 させる 工 夫 を 検 討 した 熟 練 技 術 者 に 頼 ることなく 非 熟 練 技 術 者 でも XDDP によるデグレード 防 止 効 果 を 向 上 さ せる 工 夫 として 気 づきナビ という 独 自 の 手 法 を 考 案 した 気 づきナビ は ある 規 則 で 作 られた2 種 類 の 表 を 組 み 合 わせて 使 用 することで 派 生 開 発 の 中 で 発 生 する 変 更 内 容 ( 変 更 仕 様 )とデグレード 防 止 の 教 訓 を 紐 づけて 可 視 化 する 手 法 である 気 づきナビ の 使 用 に 2
15-A-10 XDDP におけるデグレード 防 止 効 果 を 高 めるための 手 法 より 熟 練 技 術 者 でなくとも 仕 様 変 更 に 必 要 な 教 訓 を 引 き 出 すことができ XDDP によるデ グレード 防 止 効 果 の 向 上 が 可 能 となった 2.2. 現 状 分 析 と 効 果 シミュレーション XDDP を 導 入 するにあたり その 効 果 を 確 認 するため 現 状 分 析 とシミュレーションを 実 施 した 不 具 合 事 例 の 現 状 分 析 や 不 具 合 防 止 効 果 のシミュレーションの 詳 細 を 記 す (1) 不 具 合 事 例 の 現 状 分 析 派 生 開 発 の 不 具 合 事 例 を 収 集 分 析 した 結 果 変 更 箇 所 の 故 障 と 既 存 箇 所 の 故 障 (デグレード) が 半 々を 占 めていた その 結 果 を 図 15-A-10-2 に 示 す 既 存 箇 所 の 故 障 (デグレード) (22 件 ) 52% 変 更 箇 所 の 故 障 (20 件 ) 48% 図 15-A-10-2 不 具 合 事 例 の 分 析 結 果 XDDP を 適 用 することで 得 られる 不 具 合 防 止 効 果 を 評 価 するために XDDP を 適 用 しない 開 発 で 発 生 した 不 具 合 事 例 を 用 いてシミュレーションを 行 った XDDP はそれ ぞれ 視 点 の 違 った 3 点 セット( 変 更 要 求 仕 様 書 トレーサビリティ マトリクス 変 更 設 計 書 ) の 成 果 物 の 相 互 作 用 によって レビューの 効 果 を 引 き 出 し 担 当 者 の 思 い 込 みや 勘 違 いを 低 減 する 方 法 である 不 具 合 の 要 因 と XDDP による 不 具 合 防 止 のし くみを 表 15-A-10-1 に 示 す 表 15-A-10-1 XDDP による 不 具 合 防 止 のしくみ 不 具 合 要 因 思 い 込 みや 勘 違 いを 低 減 するしくみ A) 要 求 や 仕 様 の 勘 違 い 変 更 要 求 仕 様 書 のレビューで 不 具 合 を 除 去 する B) 仕 様 レベルでの 変 更 場 所 の 特 定 の 勘 違 い トレーサビリティ マトリクス のレビューで 不 具 合 を 除 去 する C) ソースレベルでの 変 更 場 所 の 特 定 や 変 更 方 変 更 設 計 書 のレビューで 不 具 合 を 除 去 する 法 の 勘 違 い (2) XDDP による 不 具 合 防 止 効 果 シミュレーション XDDP を 適 用 した 場 合 でもそれによる 不 具 合 防 止 の 効 果 は 開 発 に 関 わる 技 術 者 の 知 識 スキルレベルに 大 きく 依 存 することが 考 えられる( 仮 説 ) そこで 知 識 スキル 3
PART Ⅱ 設 計 事 例 の 有 無 が 不 具 合 防 止 にどのように 影 響 するのかを 把 握 するために 当 該 製 品 の 開 発 に 必 要 な 知 識 スキルを 持 つ 熟 練 技 術 者 と それらの 知 識 を 持 たない 非 熟 練 技 術 者 とを シミュレーションのパラメータとした 熟 練 技 術 者 と 非 熟 練 技 術 者 の 知 識 スキルの 差 を 表 15-A-10-2 のように 定 義 した 表 15-A-10-2 熟 練 技 術 者 と 非 熟 練 技 術 者 の 知 識 スキル 熟 練 技 術 者 と 非 熟 練 技 術 者 の 知 識 スキル 熟 練 非 熟 練 技 術 者 技 術 者 ITSS/ETSS のレベル 4 1~3 ソースコード 読 解 力 (アーキテクチャ 読 解 力 ) 十 分 十 分 当 該 製 品 の 開 発 経 験 十 分 不 足 ソースコードレベルの 製 品 知 識 十 分 不 足 当 該 製 品 を 利 用 する 顧 客 側 の 業 務 運 用 の 知 識 十 分 不 足 当 該 製 品 のハードウェア ソフトウェアの 知 識 十 分 不 足 表 15-A-10-1 に 示 すように XDDP による 不 具 合 防 止 は 主 にレビューによる 一 般 に レビューの 効 果 はレビュアーの 知 識 スキルに 左 右 されるため 非 熟 練 技 術 者 プロジ ェクトでは XDDP の 不 具 合 防 止 効 果 は 十 分 でないと 仮 定 した また デグレード の 防 止 には 仕 様 変 更 による 影 響 箇 所 の 正 確 な 見 極 めが 必 須 とな るため 変 更 箇 所 の 故 障 の 防 止 に 比 べ 知 識 スキルへの 依 存 性 が 高 いと 仮 定 した 不 具 合 事 例 を 表 15-A-10-1 で 判 定 した 時 の 不 具 合 防 止 効 果 を 表 15-A-10-3 に 示 す 熟 練 技 術 者 プロジェクトでは 変 更 箇 所 の 故 障 と デグレード の 不 具 合 防 止 効 果 に 大 きな 差 異 はなく どちらも 80% 以 上 となった それに 対 して 非 熟 練 技 術 者 プロジェクトでは 変 更 箇 所 の 故 障 の 不 具 合 防 止 効 果 は 42% デグレード の 防 止 効 果 は 15%であった 以 上 から 非 熟 練 技 術 者 プロジェ クトで 発 生 するデグレードは XDDP を 適 用 した 場 合 でも 防 止 が 難 しいことがわかった 表 15-A-10-3 XDDP の 不 具 合 防 止 シミュレーション 結 果 不 具 合 現 象 パラメータ XDDP 対 象 領 域 XDDP 対 不 具 合 不 具 合 防 止 可 (*1) 防 止 不 可 象 領 域 外 総 計 件 数 (*2) 変 更 箇 所 の 故 障 熟 練 技 術 者 20 件 19 件 17 件 (89%) 2 件 (11%) 1 件 非 熟 練 技 術 者 20 件 19 件 8 件 (42%) 11 件 (58%) 1 件 既 存 箇 所 の 故 障 (デグレード) 熟 練 技 術 者 22 件 20 件 16 件 (80%) 4 件 (20%) 2 件 非 熟 練 技 術 者 22 件 20 件 3 件 (15%) 17 件 (85%) 2 件 (*1)カッコ 内 は 不 具 合 防 止 効 果 (XDDP で 防 止 可 の 不 具 合 事 例 数 /XDDP 対 象 領 域 の 不 具 合 事 例 数 100%)を 示 す (*2) 開 発 工 程 終 了 後 の 追 加 要 件 管 理 ミスなど XDDP の 対 象 とならない 工 程 に 原 因 があった 不 具 合 4
15-A-10 XDDP におけるデグレード 防 止 効 果 を 高 めるための 手 法 (3) デグレード 防 止 に 必 要 な 知 識 スキルの 分 析 (2)のシミュレーション 結 果 より デグレード 防 止 には 熟 練 技 術 者 が 持 つ 知 識 や スキルが 大 きく 寄 与 していることがわかった 次 に 過 去 のデグレード 事 例 20 件 を 選 び それらの 不 具 合 要 因 に 対 し 知 識 スキルの 有 無 がどう 影 響 するのかを 分 析 した その 結 果 を 表 15-A-10-4 に 示 す 表 15-A-10-4 の 分 析 結 果 より 非 熟 練 技 術 者 のデグレード 防 止 に 必 要 な 知 識 スキ ルとして 以 下 の6 点 が 挙 げられた 本 事 例 では 非 熟 練 技 術 者 がソースコードを 読 み 込 むだけでは 得 られない1~6の 知 識 を ソースコード 外 知 識 と 定 義 する 1 業 務 運 用 に 関 する 知 識 ( 画 面 操 作 など) 2 スペックアウト 方 法 の 知 識 ( 調 査 場 所 調 査 方 法 など) 3 データに 関 する 知 識 (データ 構 造 データ 範 囲 など) 4 制 御 に 関 する 知 識 ( 関 数 呼 び 出 し イベント/タスクの 流 れ データの 排 他 制 御 など) 5 非 機 能 要 求 の 知 識 (リソース パフォーマンスなど) 6 動 作 環 境 に 関 する 知 識 (OS ミドルウェアなど) 1の 知 識 は 仕 様 書 などを 調 査 し ベースソフトウェアの 業 務 運 用 を 理 解 すること で 得 られる 2の 知 識 は 類 似 した 変 更 仕 様 の 経 験 が 必 要 である 3~5の 知 識 は 設 計 書 などを 調 査 し ベースソフトウェアのアーキテクチャを 理 解 することで 得 られる 設 計 書 が 整 備 されていない 場 合 ソースコードを 読 み 込 み データ 構 造 や 処 理 構 造 や 制 御 構 造 を 明 らかにする その 上 で DFD(Data Flow Diagram)やシーケンス 図 な どを 活 用 してベースソフトウェアのアーキテクチャを 理 解 する 6は 動 作 環 境 の 観 点 がなければ 気 づくことが 難 しい 知 識 である 5
PART Ⅱ 設 計 事 例 表 15-A-10-4 デグレードの 不 具 合 要 因 とデグレード 防 止 に 必 要 な 知 識 スキル 熟 練 非 熟 練 知 識 スキ 不 具 合 要 因 必 要 な 知 識 スキル 技 術 者 技 術 者 ルへの 依 存 (*3) (*3) 小 計 合 計 依 存 する A-1) 変 更 による 類 型 的 な スペックアウト 方 法 1 件 14 件 影 響 パターンを 認 識 でき ず 変 更 場 所 変 更 方 法 を 間 違 えた A-2) 仕 様 書 に 記 述 されて 業 務 運 用 に 関 する 知 識 1 件 いない 仕 様 設 計 書 に 記 述 データに 関 する 知 識 2 件 されていない 実 装 を 認 識 できず 影 響 場 所 の 候 補 に 制 御 に 関 する 知 識 1 件 ならなかった 動 作 環 境 に 関 する 知 識 2 件 A-3) 仕 様 書 に 記 述 されて 非 機 能 要 求 の 知 識 2 件 いない 非 機 能 要 求 を 認 識 できず 影 響 場 所 の 候 補 に ならなかった (パフォーマンスなど) A-4) 設 計 書 に 記 述 されて データに 関 する 知 識 2 件 いない 制 約 を 認 識 できず 制 御 に 関 する 知 識 1 件 変 更 場 所 変 更 方 法 を 間 違 えた 動 作 環 境 に 関 する 知 識 1 件 A-5) 設 計 書 に 記 述 されて 制 御 に 関 する 知 識 1 件 いない 連 携 を 認 識 できず 影 響 場 所 の 特 定 を 間 違 え た (サービス タスク バッ チなど) 依 存 しない B-1)スリップ( 錯 誤 ) コーディングミスなど 1 件 6 件 B-2)ラップス(やり 忘 れ) 網 羅 性 の 検 討 漏 れなど 1 件 B-3)プロセス 違 反 テストしていない 変 更 管 理 して 2 件 いないなど B-4)ソースコードの 読 解 ミス 2 件 (*3)(2)の XDDP の 不 具 合 防 止 シミュレーション 結 果 ( :XDDP で 防 止 可 / :XDDP で 防 止 不 可 ) (4) XDDP による 不 具 合 防 止 効 果 シミュレーション 結 果 のまとめ 表 15-A-10-4 の A-1)~A-5) はいずれも 設 計 書 が 整 備 されていない このような 環 境 に XDDP を 適 用 した 場 合 スペックアウト 方 法 や 変 更 要 求 仕 様 書 の 記 述 内 容 が 品 質 を 確 保 するための 鍵 となるが それらは 設 計 者 の 知 識 スキルに 大 きく 依 存 している 非 熟 練 技 術 者 であれば スペックアウト 方 法 や 変 更 要 求 仕 様 書 の 記 述 内 容 を 一 様 にす る 手 法 [4]を 適 用 することで 変 更 要 求 仕 様 書 の 不 備 が 原 因 の 後 戻 り 作 業 を 防 止 するこ とができる しかし 過 去 に 発 生 したデグレードの 要 因 は ソースコード 外 知 識 の 不 足 による 変 更 場 所 や 変 更 方 法 や 影 響 場 所 の 間 違 いなので 変 更 要 求 仕 様 書 を 正 確 に 記 述 しても 6
15-A-10 XDDP におけるデグレード 防 止 効 果 を 高 めるための 手 法 ソースコード 外 知 識 を 正 確 に 知 っていなければ 変 更 場 所 や 変 更 方 法 や 影 響 場 所 などをトレーサビリティ マトリクスや 変 更 設 計 書 に 反 映 することはできない その ため 非 熟 練 技 術 者 のデグレードを 防 止 するには ソースコード 外 知 識 を 効 率 よく 得 る 手 法 がポイントとなる ソースコード 外 知 識 を 得 る 手 段 は 設 計 書 であるが 設 計 書 が 整 備 されていなけ れば 設 計 書 から 正 確 な 情 報 を 得 ることは 難 しい しかし 多 くの 組 織 には 過 去 の 不 具 合 事 例 から 得 た 教 訓 を 蓄 積 したチェックリストがある 過 去 の 不 具 合 事 例 には ソー スコード 外 知 識 の 見 落 としから 発 生 したデグレードも 多 く それらへの 対 策 が 記 述 されたチェックリストには ソースコード 外 知 識 が 集 積 されていると 推 測 される したがって 非 熟 練 技 術 者 がチェックリストから 容 易 に ソースコード 外 知 識 を 引 き 出 す 手 法 を 考 案 すれば 過 去 に 発 生 したデグレードの 発 生 を 低 減 することが 可 能 と 考 えた 3. 適 用 した 技 術 や 手 法 をスムーズに 導 入 し 活 動 を 定 着 させるた めの 事 前 準 備 や 工 夫 等 XDDP によるデグレード 防 止 効 果 を 高 めるための 課 題 はチェックリストの 問 題 である 設 計 チェックリストを 収 集 分 析 した 結 果 チェックリストの 問 題 点 と 課 題 は 表 15-A-10-5 の ようになった 表 15-A-10-5 チェックリストの 問 題 点 と 課 題 No. 問 題 点 課 題 1 網 羅 性 を 追 求 する 目 的 からチェックリストが 肥 大 化 してい る またチェックリストはレビュー 対 象 ( 設 計 チェックリス トの 場 合 では 機 能 など)ごとに 整 理 されていることが 多 く 利 用 シーンや 目 的 観 点 によって 整 理 されていない そのた 莫 大 なチェック 項 目 の 中 から 必 要 なチェック 項 目 を 効 率 的 に 探 し 出 すしくみをつくる チェックリストの 課 題 1 め 莫 大 なチェックリストの 中 から 必 要 なチェック 項 目 を 探 し 出 すには 時 間 がかかる 2 3 非 熟 練 技 術 者 にとってチェック 項 目 の 内 容 が 抽 象 度 の 高 い ものがある そのため チェック 項 目 を 当 該 製 品 に 適 用 し 具 体 化 することができない 非 熟 練 技 術 者 にとってチェック 項 目 の 内 容 を 理 解 できない ものがある そのため 変 更 仕 様 に 合 致 したチェック 項 目 で あることを 認 識 できない 何 を 変 更 して 発 生 した 不 具 合 で あるのかがわかる 情 報 をチェッ ク 項 目 に 追 加 する チェックリストの 課 題 2 (1) 解 決 策 のポイント 表 15-A-10-5 で 示 したチェックリストの 課 題 1を 解 決 するためには 派 生 開 発 の 中 で 発 生 する 変 更 仕 様 とそれに 関 係 したチェックリストを 結 び 付 ける 共 通 情 報 が 必 要 で ある そのような 共 通 情 報 として 変 更 特 性 を 考 案 した 変 更 特 性 とは 変 更 仕 様 の 中 から 変 更 する という 行 為 を 簡 潔 なキーワード( 何 を どのように 変 更 した 7
PART Ⅱ 設 計 事 例 のか)で 一 般 化 したものである 変 更 仕 様 から 変 更 特 性 を 抽 出 する 例 を 図 15-A-10-3 に 示 す 変 更 特 性 例 変 更 仕 様 : タスクに データを 読 み 出 し を 計 算 し データを 書 き 出 しする. 変 更 特 性 の 抽 出 変 更 特 性 : データの 読 み 出 し 処 理 追 加 計 算 処 理 追 加 データの 書 き 出 し 処 理 追 加 図 15-A-10-3 変 更 特 性 の 抽 出 例 また 既 存 のチェックリストに 変 更 特 性 を 情 報 として 付 加 することができれば 何 を 変 更 した 時 に 参 照 すべきチェック 項 目 であるのかが 明 確 になるため チェッ クリストの 課 題 2も 解 決 できる (2) 気 づきナビ 莫 大 なチェック 項 目 から 今 回 の 変 更 仕 様 に 関 係 のあるチェック 項 目 だけを 引 き 出 すために 変 更 要 求 仕 様 書 の 列 項 目 に 変 更 特 性 を 付 け 加 えた 変 更 特 性 マトリクス と 既 存 のチェックリストに 変 更 特 性 を 加 え 整 理 したチェックリスト( 変 更 特 性 チェ ックリスト )とを 組 み 合 わせ 変 更 仕 様 とデグレード 防 止 の 教 訓 を 変 更 特 性 で 紐 づけて 利 用 する 手 法 を 考 案 した 本 事 例 ではこれを 気 づきナビ と 定 義 する この 気 づきナビ は XDDP の3 点 セットの1つである 変 更 要 求 仕 様 書 と 組 み 合 わ せて 利 用 することがポイントである 変 更 要 求 仕 様 書 には 以 下 の 特 徴 がある 要 求 と 仕 様 を 階 層 関 係 で 表 現 することで 変 更 仕 様 をモレなく 洗 い 出 すことがで きる 変 更 仕 様 は 変 更 前 (Before)/ 変 更 後 (After) 形 式 で 変 更 内 容 が 記 述 されて おり 何 が どのように 変 更 されるのかを 理 解 しやすい これらの 特 徴 を 踏 まえた 上 で 気 づきナビ の 使 い 方 について 説 明 をする 変 更 特 性 マトリクスの 行 項 目 には 変 更 要 求 仕 様 書 の 変 更 仕 様 列 項 目 には 変 更 特 性 チェッ クリストの 変 更 特 性 が 記 述 されている まずは 行 項 目 の 変 更 仕 様 ごとに 列 項 目 の 変 更 特 性 を 順 に 確 認 し 該 当 する 変 更 特 性 の 欄 に 印 をつける つぎに 印 のついた 変 更 特 性 の 変 更 特 性 チェックリストを 順 に 確 認 し 変 更 仕 様 から 抽 出 された 変 更 特 性 に 関 係 のあるチェック 項 目 だけを 確 認 する これにより 気 づきナビ の 導 入 前 後 で 以 下 の 効 果 が 得 られる( 図 15-A-10-4 気 づきナビ 導 入 前 と 導 入 後 ) 導 入 前 : 変 更 仕 様 ごとにチェックリスト 上 の 全 チェック 項 目 を 確 認 する 導 入 後 : 変 更 仕 様 から 抽 出 された 変 更 特 性 に 関 係 のあるチェック 項 目 だけを 確 認 する 8
15-A-10 XDDP におけるデグレード 防 止 効 果 を 高 めるための 手 法 図 15-A-10-4 気 づきナビ 導 入 前 と 導 入 後 この 気 づきナビ をはじめて 作 成 する 場 合 既 存 のチェックリストと 不 具 合 報 告 書 を 利 用 し 以 下 の 手 順 で 作 成 する( 熟 練 技 術 者 による 作 成 ) 1 既 存 のチェックリストの 元 になった 不 具 合 報 告 書 から 変 更 特 性 を 抽 出 し それを 既 存 のチェックリストに 新 しいキーワードとして 追 加 する 2 変 更 特 性 チェックリストの 変 更 特 性 ( 何 を どのように 変 更 したのか) の 何 を が 同 じものを 同 じカテゴリにまとめ 変 更 要 求 仕 様 書 の 列 項 目 に 付 け 加 える( 変 更 特 性 マトリクス ) (3) 変 更 特 性 マトリクス 変 更 特 性 マトリクスは 変 更 仕 様 とその 変 更 仕 様 に 含 まれる 変 更 特 性 の 関 係 をマト リクスで 表 すことで 変 更 仕 様 における 変 更 特 性 の 分 析 を 可 能 とする 変 更 特 性 マト リクスの 例 を 図 15-A-10-5 に 示 す 変 更 特 性 マトリクス 変 更 特 性 チェックリストから 抽 出 した 変 更 特 性 を 記 述 する. 変 更 特 性 ( 何 を どのように 変 更 したのか)の 何 を が 同 じものは 同 じカテゴリにする. 変 更 要 求 仕 様 書 変 更 仕 様 について 何 を どのように 変 更 するのかを 記 述 する. 図 15-A-10-5 変 更 特 性 マトリクスの 例 9
PART Ⅱ 設 計 事 例 1 変 更 特 性 マトリクスの 行 項 目 XDDP の3 点 セットの1つである 変 更 要 求 仕 様 書 によって 抽 出 された 変 更 仕 様 を 記 述 する 2 変 更 特 性 マトリクスの 列 項 目 変 更 特 性 チェックリストから 抽 出 した 変 更 特 性 を 記 述 する 変 更 特 性 ( 何 を どのように 変 更 したのか)の 何 を が 同 じものは 同 じ カテゴリにする (4) 変 更 特 性 チェックリスト 変 更 特 性 チェックリストは 既 存 のチェックリストに 変 更 特 性 の 情 報 を 追 加 したも のである 変 更 特 性 は 既 存 のチェックリストの 元 になった 不 具 合 報 告 書 ( 表 15-A-10-6) から 抜 き 出 し 注 意 するポイントの 抽 象 度 に 応 じて 製 品 固 有 のものと 製 品 間 で 共 通 のも のとを 準 備 する 変 更 特 性 チェックリストの 例 を 表 15-A-10-7 に 示 す 表 15-A-10-6 不 具 合 報 告 書 の 例 項 目 不 具 合 事 例 作 りこみ 要 因 チェック 項 目 内 容 B タスクの 計 測 処 理 が 規 定 時 間 内 に 完 了 しないことがあり 計 測 値 がエラ ーになる A タスクに 同 期 待 ちのある 関 数 f( )の 呼 び 出 しを 追 加 したところ A タス ク 実 行 中 に B タスクが 動 作 できなくなった タスクに 同 期 待 ち 処 理 がある 場 合 このタスクよりも 優 先 度 の 低 いタスク が 動 作 できなくなるので 注 意 する 表 15-A-10-7 変 更 特 性 チェックリストの 例 抽 象 度 分 類 変 更 特 性 目 的 チェック 項 目 低 い 製 品 固 有 製 品 に 関 数 f( ) の 呼 び 出 し 追 加 割 り 込 み 時 間 が 長 く なることで システム 動 作 を 保 証 できなく なることを 防 止 する ため タスク 処 理 の 同 期 待 ちが 長 くなることで システム 動 作 のパフ 関 数 f( )は 通 信 を 使 って 外 部 データを 取 得 する 外 部 データを 取 得 するまで は for ループによる 待 ちがあるため 関 数 f( )の 呼 び 出 しを 追 加 するとタスク の 処 理 時 間 は 長 くなる このタスクの 実 行 中 このタスクよりも 優 先 度 の 低 いタスクが 動 作 できなくなるので 注 意 する ( 同 期 待 ちのある) 関 数 呼 び 出 し 追 加 ォーマンスが 劣 化 す ることを 防 止 するた め リアルタイムシステムの 場 合 は タス クの 処 理 時 間 が 長 くなる このタスク の 実 行 中 このタスクよりも 優 先 度 の 低 いタスクが 動 作 できなくなるので 注 意 する 高 い 製 品 間 で 共 通 データの 読 み 出 し 処 理 追 加 リアルタイムシステムの 場 合 は デー タの 読 み 出 しの 影 響 でタスクの 処 理 時 間 が 長 くなっていないかを 確 認 する 10
15-A-10 XDDP におけるデグレード 防 止 効 果 を 高 めるための 手 法 (5) 気 づきナビ のメンテナンス 本 手 法 を 利 用 した 開 発 の 中 で 新 たな 不 具 合 が 発 生 した 場 合 は 不 具 合 の 発 生 した 変 更 仕 様 を 変 更 要 求 仕 様 書 上 で 確 認 し 対 応 する 変 更 特 性 を 変 更 特 性 マトリクス 上 で 特 定 する 不 具 合 の 分 析 を 行 い 再 発 防 止 の 教 訓 を 変 更 特 性 チェックリストに 追 加 する また 派 生 開 発 の 中 で 発 生 する 変 更 仕 様 は 多 種 多 様 なため 新 たな 変 更 特 性 が 見 つか った 場 合 は 変 更 特 性 を 変 更 特 性 マトリクス 設 計 上 の 定 石 や 注 意 点 を 変 更 特 性 チェ ックリストに 追 加 する 上 記 のようなメンテナンスを 繰 り 返 すことで 気 づきナビ をそれぞれの 製 品 にフ ィットしたもの(ガイド)に 成 長 させることが 可 能 となる( 図 15-A-10-6) 不 具 合 から 得 た 変 更 特 性 を 追 加 変 更 要 求 仕 様 書 変 更 仕 様 から 得 た 変 更 特 性 変 更 特 性 マトリクス 気 づきナビ 気 づき 変 更 特 性 チェックリスト 不 具 合 から 得 た 変 更 特 性 不 具 合 リスト 変 更 仕 様 から 得 た 変 更 特 性 を 追 加 図 15-A-10-6 気 づきナビ の 成 長 モデル 4. 適 用 した 技 術 や 手 法 の 効 果 測 定 の 方 法 とその 結 果 変 更 特 性 マトリクスと 変 更 特 性 チェックリストからなる 気 づきナビ を 使 用 することに より 非 熟 練 技 術 者 でも 変 更 仕 様 に 対 応 するチェック 項 目 を 抽 出 することができ デグレ ード 防 止 に 有 効 であることの 検 証 結 果 を 示 す (1) 検 証 方 法 気 づきナビ の 効 果 の 検 証 は 表 15-A-10-8 に 示 すように 過 去 のデグレード 事 例 に 対 するシミュレーション 検 証 1と XDDP を 導 入 したプロジェクト( 組 込 み 系 開 発 : 変 更 仕 様 数 :21 件 )で 行 う 検 証 2について 実 施 した 11
PART Ⅱ 設 計 事 例 表 15-A-10-8 気 づきナビ の 効 果 の 検 証 方 法 検 証 1 検 証 対 象 目 的 方 法 変 更 特 性 変 更 特 性 を 介 して 変 更 内 容 に 対 1) 過 去 のデグレード 事 例 に 対 し デグレ チェックリスト 応 したチェック 項 目 にたどり 着 ード 防 止 のための 変 更 特 性 とチェック 項 き そこに 有 効 な 情 報 があった 場 目 を 作 成 する 合 に デグレード 防 止 に 関 与 する 2) 次 回 以 降 の 派 生 開 発 で 作 成 したチェ か 否 かを 検 証 する ック 項 目 にたどりつけた 場 合 デグレー ド 防 止 に 関 与 するか 否 かをシミュレー ションする 変 更 特 性 非 熟 練 技 術 者 でも 確 認 が 必 要 な XDDP のプロジェクトにおいて 変 更 内 マトリクス チェック 項 目 の 数 を 少 なくでき 容 に 対 するチェック 項 目 を チェックリ 変 更 特 性 ることを 検 証 する スト で 抽 出 した 場 合 と 変 更 特 性 マト チェックリスト リクス で 抽 出 した 場 合 を 比 較 する (*4) 非 熟 練 技 術 者 でも 経 験 に 依 存 す ることなくチェック 項 目 を 抽 出 できることを 検 証 する 非 熟 練 技 術 者 でも 気 づきナビ 使 用 前 には 気 づけなかった 新 た な 欠 陥 に 気 づけることを 検 証 す る XDDP のプロジェクトに 変 更 特 性 マト リクス と 変 更 特 性 チェックリスト を 適 用 し 変 更 内 容 に 対 する 熟 練 技 術 者 のチェック 項 目 と 非 熟 練 技 術 者 のチェッ ク 項 目 を 比 較 する (*4) XDDP のプロジェクトに 変 更 特 性 マト リクス と 変 更 特 性 チェックリスト を 適 用 し 変 更 内 容 に 対 する 熟 練 技 術 者 のチェック 項 目 と 非 熟 練 技 術 者 のチェッ ク 項 目 を 比 較 する (*4) (*4) 熟 練 技 術 者 2 名 ( 経 験 10 年 以 上 ) 非 熟 練 技 術 者 2 名 ( 経 験 4 年 以 下 )について 確 認 (2) 検 証 結 果 検 証 1( 過 去 のデグレード 事 例 のシミュレーション)では 収 集 したデグレード 事 例 22 件 中 非 熟 練 技 術 者 にとっては XDDP を 適 用 してもデグレード 防 止 が 難 しい 17 事 例 を 検 証 した 結 果 13 事 例 について 非 熟 練 技 術 者 がデグレードの 回 避 策 や 注 意 事 項 確 認 事 項 の 教 訓 を 取 得 でき それらがデグレード 防 止 に 効 果 的 であることが 確 認 でき た 検 証 2では XDDP を 導 入 したプロジェクトにおいて 気 づきナビ に 期 待 される3 つの 効 果 が 得 られるかを 検 証 した 検 証 の 結 果 3つの 効 果 についていずれも 当 初 期 待 した 結 果 を 得 られた( 表 15-A-10-9) 12
15-A-10 XDDP におけるデグレード 防 止 効 果 を 高 めるための 手 法 表 15-A-10-9 気 づきナビ に 期 待 される 効 果 と 確 認 された 効 果 No. 期 待 される 効 果 確 認 された 効 果 1 非 熟 練 技 術 者 でも 確 認 が 必 要 なチェック 項 目 の 数 を 少 なくできる 変 更 仕 様 21 件 に 対 し チェックリストのチェック 項 目 は 63 件 変 更 特 性 チェック 項 目 は 52 件 となり 約 17% 少 なくなった 2 非 熟 練 技 術 者 でも 経 験 に 依 存 することな くチェック 項 目 を 抽 出 できる 変 更 仕 様 21 件 に 対 し 熟 練 技 術 者 のチェック 項 目 は 52 件 非 熟 練 技 術 者 のチェック 項 目 は 54 件 となり ほぼ 同 数 になった また 熟 練 技 術 者 が 抽 出 した 52 件 は 非 熟 練 技 術 者 も 100%を 抽 出 できていた 3 非 熟 練 技 術 者 でも 気 づきナビ 使 用 前 には 気 づけなかった 新 たな 欠 陥 に 気 づけ る 変 更 仕 様 21 件 チェック 項 目 総 数 54 件 に 対 し 非 熟 練 技 術 者 が 見 落 としがちな 関 数 パラメータ 追 加 時 の 異 常 処 理 の 抜 け(のべ 5 件 )に 気 づき 確 認 モレ を 防 止 できた (3) 考 察 検 証 1( 過 去 のデグレード 事 例 のシミュレーション)の 結 果 では 非 熟 練 技 術 者 に とっては XDDP を 適 用 してもデグレード 防 止 が 難 しい 17 事 例 中 の 13 事 例 について 非 熟 練 技 術 者 がデグレードの 回 避 策 や 注 意 事 項 確 認 事 項 の 教 訓 を 取 得 でき それら がデグレード 防 止 に 効 果 的 であることが 確 認 できた これにより 変 更 特 性 マトリクスと 変 更 特 性 チェックリストからなる 気 づきナビ を 使 用 することにより 非 熟 練 技 術 者 でも 変 更 仕 様 に 対 応 するチェック 項 目 を 抽 出 することができ 当 初 の 課 題 であるデグレード 防 止 に 有 効 であることが 確 認 できた しかし チェックリストの 内 容 によっては 今 回 の 検 証 結 果 と 同 等 のデグレード 防 止 に 関 する 有 益 な 情 報 を 得 られない 可 能 性 もあり 気 づきナビ で 高 い 効 果 を 得 られ るためのチェックリストの 作 成 指 針 を 検 討 することが 今 後 の 課 題 である 検 証 2の 結 果 ( 表 15-A-10-9)より 熟 練 技 術 者 に 頼 ることなく XDDP によるデ グレード 防 止 効 果 を 高 める という 目 的 に 対 して 期 待 した 効 果 が 得 られたと 考 える 表 15-A-10-10 に 検 証 2の 各 結 果 に 対 する 考 察 を 記 載 する 13
PART Ⅱ 設 計 事 例 表 15-A-10-10 気 づきナビ の 検 証 結 果 に 関 する 考 察 No. 検 証 結 果 検 証 結 果 に 対 する 考 察 1 確 認 するチェック 項 目 の 数 が 気 づきナビ 導 入 前 に 比 べ 約 17% 少 なくなった 2 熟 練 技 術 者 と 非 熟 練 技 術 者 で 確 認 した チェック 項 目 がほぼ 同 数 になった 3 非 熟 練 技 術 者 が 見 落 としがちな 異 常 処 理 に 関 する 抜 けに 気 づいた 検 証 結 果 よりも 高 い 効 果 を 期 待 していたが 検 証 で 利 用 したチェックリストには 設 計 共 通 のチェック 項 目 が 多 く 製 品 固 有 のチェック 項 目 が 含 まれてい ないことから このような 結 果 になったと 考 えられ る 変 更 特 性 に 従 って 機 械 的 にチェック 項 目 を 確 認 する ことにより 知 識 スキルに 依 存 することなくチェ ック 項 目 の 確 認 が 行 えるようになったためと 考 えら れる また 検 証 を 行 っていく 中 で デグレードの 問 題 に 限 らず 変 更 箇 所 の 故 障 といっ た 他 の 問 題 に 関 しても 多 くの 気 づきがあることがわかった これは 気 づきナビ の 本 質 が 変 更 特 性 を 抽 出 して 変 更 仕 様 とチェック 項 目 ( 過 去 の 教 訓 )の 紐 付 けを 行 うこ とにあるため チェック 項 目 の 内 容 がデグレードに 関 するものでなくてもデグレード の 問 題 と 同 様 の 効 果 が 発 揮 されたものと 考 えられる 5. 現 場 への 導 入 時 の 具 体 的 な 工 夫 と 適 用 手 法 (1) 試 行 プロジェクト 本 手 法 を 適 用 するにあたり 試 行 プロジェクトによる 確 認 を 行 った なぜならば 試 行 プロジェクトにより 効 果 を 確 認 できれば 他 のプロジェクトへ 展 開 する 時 に 導 入 障 壁 を 軽 減 する 効 果 となるためである 試 行 プロジェクトは 組 込 みの 小 規 模 プロジ ェクトである 一 気 に 大 規 模 プロジェクトに 適 用 せず 組 込 みの 小 規 模 プロジェクト を 選 びノウハウの 蓄 積 を 図 った (2) 試 行 プロジェクトの 体 制 熟 練 技 術 者 2 名 ( 経 験 10 年 以 上 ) 非 熟 練 技 術 者 2 名 ( 経 験 4 年 以 下 )で 試 行 し てみた 試 行 プロジェクトには 2 つのサンプルを 2 つのパターンで 試 行 確 認 を 実 施 し た 熟 練 技 術 者 が 少 ないプロジェクトも 可 能 なことを 確 認 できた (3) 気 づきナビ の 普 及 考 案 した 気 づきナビ の 効 果 について グループ 内 に 展 開 を 図 った 6. 品 質 生 産 性 について 品 質 については 4.(2) 検 証 結 果 に 記 載 した 通 り 必 要 なチェック 項 目 を 漏 らすこと なく 抽 出 できたという 点 で 非 熟 練 技 術 者 の 作 業 品 質 が 向 上 したと 判 断 する 生 産 性 については 定 性 的 ではあるが 品 質 をあげつつ 生 産 性 もあげるという 目 標 であっ 14
15-A-10 XDDP におけるデグレード 防 止 効 果 を 高 めるための 手 法 た 4.(2) 検 証 結 果 に 記 載 した 通 り 作 業 品 質 が 向 上 しており かつ 後 戻 りを 防 止 して いるという 点 で 従 来 よりも 工 数 は 削 減 され 生 産 性 が 向 上 したと 判 断 する 熟 練 技 術 者 が 作 成 した 変 更 特 性 チェックリストを 非 熟 練 技 術 者 が 使 用 すれば 効 率 の 良 い 開 発 が 可 能 になる 7. 導 入 後 の 普 及 改 善 活 動 今 後 の 課 題 等 (1) 検 証 への 影 響 本 手 法 の 導 入 で 設 計 時 にバグを 作 りこむことが 減 少 するので 検 証 時 に 発 生 してい た 後 戻 り 作 業 は 減 少 すると 考 えられる また 組 込 みソフトウェアでは 設 計 者 と 検 証 者 が 同 一 であることが 多 いが 設 計 者 と 検 証 者 が 異 なる 場 合 でも 変 更 特 性 が 共 有 されていれば 変 更 特 性 チェックリスト からチェック 項 目 を 同 様 に 抽 出 することができるため 設 計 者 と 異 なる 人 が 検 証 に 携 わることが 可 能 となる (2) 水 平 展 開 状 況 グループ 内 への 展 開 は 完 了 している 他 のグループには 抽 出 すべき 変 更 特 性 の 種 類 が 必 ずしも 同 じにならないため そのままの 展 開 はできないが 他 のグループの 特 性 に 合 った 変 更 特 性 を 作 成 すれば 適 用 は 可 能 である (3) 今 後 の 課 題 気 づきナビ による 不 具 合 防 止 効 果 はチェック 項 目 の 記 述 内 容 に 大 きく 依 存 して いる 網 羅 性 の 高 い 整 理 された 質 の 高 いチェック 項 目 は 不 具 合 防 止 効 果 を 高 める と 考 えられるが 記 述 内 容 が 自 由 である 以 上 定 量 的 な 効 果 を 得 ることが 難 しい 不 具 合 防 止 効 果 を 高 めるための 情 報 をどのように 記 録 するのか 気 づきナビ に 適 した 不 具 合 報 告 書 の 記 述 方 法 チェック 項 目 の 記 述 方 法 などを 検 討 していくことが 今 後 の 課 題 である 気 づきナビ をナレッジマネジメントのツールとして 組 織 的 に 活 用 していくため には 知 識 を 引 き 出 すための 変 更 特 性 をわかりやすく 体 系 的 に 整 理 することが 必 要 となる これらの 方 法 を 検 討 することも 今 後 の 重 要 な 課 題 である 8. まとめ XDDP を 導 入 しても 非 熟 練 技 術 者 プロジェクトで 発 生 するデグレードを 防 止 するために 本 事 例 では 変 更 特 性 マトリクス と 変 更 特 性 チェックリスト を 組 み 合 わせて 使 用 する 手 法 気 づきナビ を 考 案 し 過 去 のデグレード 事 例 に 対 するシミュレーション 検 証 と XDDP を 導 入 したプロジェクトでの 検 証 を 比 較 することによりその 効 果 を 確 認 した その 結 果 気 づきナビ を 用 いれば 技 術 者 の 知 識 スキルに 依 存 することなく 変 更 内 容 に 必 要 なチェック 項 目 を 確 認 することが 可 能 になった 気 づきナビ は 熟 練 技 術 者 に 頼 る 15
PART Ⅱ 設 計 事 例 ことなく XDDP によるデグレード 防 止 効 果 を 高 める という 課 題 に 対 して 一 定 の 成 果 を 上 げ ることができた また 気 づきナビ を 現 場 に 導 入 定 着 させるために 既 存 のチェックリストと 不 具 合 報 告 書 から 変 更 特 性 マトリクス と 変 更 特 性 チェックリスト を 作 成 し メンテナンスし ていく 方 法 を 示 した これらの 方 法 を 使 うことで 変 更 特 性 マトリクス と 変 更 特 性 チェ ックリスト は 双 方 の 整 合 性 を 保 ちながらの 運 用 が 可 能 になったと 考 える 一 方 気 づきナビ は 熟 練 技 術 者 の 暗 黙 知 を 形 式 知 として 蓄 積 し 非 熟 練 技 術 者 に 活 用 す ることが 可 能 なので ナレッジマネジメントのツールとして 見 ることができる 気 づきナビ に 蓄 積 されている 知 識 を 組 織 的 に 利 用 し SECI モデルの 共 同 化 (Socialization) 表 出 化 (Externalization) 連 結 化 (Combination) 内 面 化 (Internalization) の サイクルを 繰 り 返 せば 熟 練 技 術 者 が 気 づいていない 知 識 が 新 たに 出 てきたり 技 術 者 同 士 の 共 通 の 体 験 が 生 まれたりするため さらに 効 果 的 なものになると 期 待 される 16
15-A-10 XDDP におけるデグレード 防 止 効 果 を 高 めるための 手 法 参 考 文 献 [1] 関 野 浩 之 大 坪 智 治 外 谷 地 茂 長 友 優 治 :XDDP によるデグレード 防 止 効 果 の 検 証 とその 効 果 を 高 めるための 方 法 ソフトウェア 品 質 (SQiP)シンポジウム 2011 [2] 清 水 吉 男 : 派 生 開 発 を 成 功 させるプロセス 改 善 の 技 術 と 極 意 技 術 評 論 社 2007 [3] 組 込 み 製 品 の 品 質 を 高 めるための 暗 黙 知 の 抽 出 利 用 方 法 ソフトウェア 品 質 管 理 研 究 会 2007 日 本 科 学 技 術 連 盟 [4] XDDP によるデグレード 防 止 効 果 の 検 証 とその 効 果 を 高 めるための 方 法 ソフトウェア 品 質 管 理 研 究 会 2010 日 本 科 学 技 術 連 盟 [5] 津 田 剛 宏 田 中 聡 古 畑 慶 次 : 設 計 手 法 を 活 用 した 変 更 要 求 仕 様 書 の 作 成 手 法 ソフ トウェア 品 質 (SQiP)シンポジウム 2010 掲 載 されている 会 社 名 製 品 名 などは 各 社 の 登 録 商 標 または 商 標 です 独 立 行 政 法 人 情 報 処 理 推 進 機 構 技 術 本 部 ソフトウェア 高 信 頼 化 センター(IPA/SEC) 17