Newsletter No. 10 July 2013 東 京 医 科 歯 科 大 学 ラテンアメリカ 共 同 研 究 拠 点 El agua dura de Chile (チリの 硬 水 ) 水 に 含 まれるカルシウムとマグネシウムの 量 は, 地 域 地 勢 によりさまざまです WHOでは, 硬 度 (カルシウム 量 mg/l 2.5+マグネシウム 量 mg/l 4.1)が120mg/L 未 満 が 軟 水,120mg/L 以 上 が 硬 水 と 定 義 されています 日 本 の 水 道 水 は 概 ね 軟 水 に 分 類 されます( 東 京 都 水 道 局 の 資 料 では 文 京 区 における 水 の 硬 度 は 平 均 78.5mg/L) 他 方 チリ サンティアゴでは,アンデスの 雪 解 け 水 が 主 水 源 で, 豊 富 な ミネラルを 含 んでおり, 硬 水 となっています(チリ 大 学 の 調 査 によると 平 均 393mg/ L) 硬 水 に 多 く 含 まれているマグネシウムの 影 響 で, 普 段 硬 水 を 飲 むことが 少 ない 日 本 人 はお 腹 が 緩 くなりやすいと 言 われています 我 が 家 もチリでは 水 道 水 の 飲 用 は 避 け, 比 較 的 硬 度 の 低 いミネラルウォーターを 購 入 して 飲 用 としています( 硬 度 だ けでなく 衛 生 的 な 理 由 もありますが) ちなみにチリ 南 部 ( 第 VII 州 より 南 )では 日 本 と 同 様 軟 水 が 多 いとのことです チリの 水 は 硬 い というイメージが 強 いですが それ はチリ 中 部 から 北 部 に 限 ってのことのようで 南 北 に 長 いチリならではの 地 域 差 と いえましょう さて 水 の 硬 度 について 調 べてみると, 和 風 だしや 煮 物, 緑 茶 などは 軟 水 が 合 い, コーヒー,スープ,シチューには 硬 水 が 合 うというように, 硬 度 により 適 した 飲 み 物 料 理 があるとのこと 普 段 台 所 に 立 つことのない 私 には 新 鮮 な 情 報 でしたが, 料 理 の 好 きな 方 には 常 識 なのでしょうか これを 機 に 少 しは 台 所 に 立 って, 硬 度 の 違 い がわかる 男 を 目 指 してみようかと 思 います ニュースレター 第 10 号 では, 進 行 中 の 大 腸 癌 早 期 診 断 プロジェクト(PRENEC)の 報 告 を 中 心 に,LACRCの 活 動 をお 伝 えしてまいります 河 内 洋 LACRC 人 体 病 理 学 分 野 Contents ご 挨 拶... 1 PRENECの 進 捗 状 況... 2 活 動 報 告... 5 コラム... 6 1
PRENECの 進 捗 状 況 LACRCのメインミッションであるPRENECの 最 新 情 報 をお 伝 えいたします このプロジェクトは 第 5 州 のバルパライソ 第 12 州 のプンタ ア レナスにおいて それぞれ 年 間 3,000 人 サンティアゴにおいて10,000 人 を 対 象 とした 免 疫 学 的 便 潜 血 反 応 検 査 ( 以 下 ifobt)を 計 画 してい ます PRENECは 中 南 米 諸 国 にも 広 がっており 現 在 エクアドル パラグアイにてプロジェクト 実 施 に 向 けて 取 り 組 みが 始 まっています 一 周 年 を 迎 えたプンタアレナスにおけるPRENEC 2010 年 より 東 京 医 科 歯 科 大 学 CLC チリ 保 健 省 が 実 施 してき た 大 腸 癌 早 期 診 断 プロジェクトPROYECTO DE PREVENCIÓN DE NEOPLASIA COLORRECTAL(PRENEC) のサテライトプロジェクトである 第 12 州 プンタアレナスにおけるPRENECが 開 始 してから1 年 が 経 過 しま した 本 年 7 月 5 日 に プンタアレナスのマガジャネス 病 院 において PRENECの 一 周 年 記 念 式 典 が 開 催 され PRENECに 参 画 している LACRCスタッフ CLC 代 表 団 マガジャネス 州 保 健 局 の 面 々が 参 加 しました 式 典 では 会 場 に 集 まった 多 くの 聴 衆 の 前 で 一 年 間 のPRENEC から 得 られた 良 好 な 成 果 が 報 告 され またこのプロジェクトの 将 来 的 な 展 望 についても 報 告 されました 今 まではマガジャネス 州 保 健 局 からの 助 成 金 ( 自 治 体 レベル)で 行 われていたPRENECですが 今 後 はチリ 保 健 省 の 資 本 により 国 家 レベルでプロジェクトを 進 めて いく 方 針 となったことも 報 告 されました ま た 各 専 門 分 野 の 医 師 看 護 師 らに よ り プン タ アレナ ス PRENECの1 年 間 を 総 括 する 各 種 発 表 が 行 われました LACRCからは 河 内 講 師 ( 病 理 担 当 )が PRENECにおける 病 理 医 の 役 割 というスペイン 語 でのプレゼンテーションを 担 当 し 出 席 者 から 大 好 評 を 得 ました 今 後 も LACRCスタッフと 東 京 医 科 歯 科 大 学 はプンタアレナスに おけるPRENECへの 支 援 を 継 続 してまいります マガジャネス 病 院 PRENECスタッフとの 記 念 撮 影 プレゼンテーションをする 河 内 講 師 2
サンティアゴにおけるPRENECの 開 始 記 念 式 典 本 年 5 月 にサンティアゴにおけるPRENECが 本 学 CLC チリ 保 健 省 の 監 督 の 下 正 式 にスタートいたしました 7 月 12 日 にプロジェ クト 開 始 を 記 念 した 大 腸 癌 を 予 防 しよう! キャンペーンの 式 典 が PRENEC 実 施 施 設 であるCESFAM( 地 域 の 保 健 所 )で 開 催 され チ リ 保 健 省 より 招 待 されたLACRCスタッフも 参 加 いたしました 式 典 においては プロジェクトのリーダーであるCLC 大 腸 肛 門 科 責 任 者 フランシスコ ロペス 医 師 が 現 在 までのPRENECの 進 捗 状 況 を 報 告 し その 実 績 を 踏 まえ サンティアゴで 実 施 されるプロジェクトの 重 要 性 を 説 明 しました ま た チ リ 保 健 省 オル ラン ドー ド ゥー ラン 健 康 管 理 局 長 が PRENECを 支 援 しているメンバーに 対 する 感 謝 の 意 を 述 べるととも に PRENECに 関 する 条 件 を 満 たす 対 象 者 が CESFAMにおける PRENECプログラムに 多 く 参 加 することへの 期 待 を 表 明 しました 本 プロジェクトでは 今 後 大 腸 癌 の 早 期 発 見 を 目 的 に 50 歳 から 75 歳 までの 無 症 状 の 参 加 者 に 対 し 約 16,000 人 を 目 標 に 免 疫 学 的 便 潜 血 検 査 (ifobt)が 無 料 で 実 施 される 予 定 です PRENECの 進 捗 状 況 を 報 告 するロペス 医 師 サンティアゴPRENECスタッフと 壇 上 に 立 つ 小 林 助 教 記 念 式 典 に 参 加 したLACRCスタッフ 3
CLC パラグアイ 保 健 省 との3 者 協 定 締 結 大 腸 癌 による 死 亡 率 の 増 加 を 懸 念 するパラグアイ 政 府 は 昨 年 より 本 学 とCLCが 共 同 で 実 施 してきた 大 腸 癌 早 期 診 断 プロジェクト PRENECに 興 味 を 示 しており 本 年 6 月 6 日 に 東 京 医 科 歯 科 大 学 CLC パラグアイ 保 健 省 との 間 に 大 腸 癌 早 期 診 断 プロジェクトの 実 施 の ための 協 定 を 締 結 しました LACRCの 河 内 講 師 CLCのグレべCEO プロジェクトのリーダーであるフランシスコ ロペス 医 師 からなるチリ 訪 問 団 が 6 月 5 日 から7 日 ま で パラグアイ 共 和 国 に 滞 在 し アルボ 保 健 福 祉 省 大 臣 在 パラグアイ 日 本 大 使 館 およびJICAパラグアイ 支 所 の 代 表 パラグアイの 保 健 当 局 と 共 にパラグアイの 首 都 アスンシオンにあるデ ルケ 国 立 病 院 で 開 催 された 調 印 式 に 参 加 しました また 調 印 式 におけるスピーチでは アルボ 保 健 福 祉 省 大 臣 がパラグアイにおけるPRENECは 拠 点 となるデ ルケ 病 院 だけでなく イタ ウグアー 国 立 病 院 国 立 大 学 病 院 軍 隊 病 院 等 といった 施 設 でも 実 行 される 予 定 で パラグアイにおける 大 腸 癌 死 亡 率 低 下 に 向 けて 今 後 も 参 加 病 院 を 拡 大 していく 予 定 であると 述 べました また プロジェクトの 開 始 に 先 駆 け 本 年 9 月 に パラグアイ 拠 点 の 内 視 鏡 医 看 護 師 秘 書 技 師 からなるチームが CLCのロペス 医 師 クロンバーグ 医 師 らが 指 導 する 各 分 野 ごとの 講 習 会 を 受 講 する 予 定 です 同 講 習 会 で は CLCのポンセ 看 護 師 によるPRENEC 共 通 データーベースの 運 用 手 順 についての 講 習 も 行 われる 予 定 です 本 学 は パラグアイ 保 健 省 とCLCの 協 力 の 下 このプロジェクトを 学 術 的 技 術 的 に 支 援 してまいります PRENEC パラグアイに 広 がるPRENECネットワーク 協 定 書 に 署 名 するパラグアイ 保 健 大 臣 ( 中 ) CLCのグレベCEO( 右 ) パラグアイ 保 健 省 癌 予 防 部 門 責 任 者 アルバレンガ 医 師 と 協 定 書 を 受 け 取 る 河 内 講 師 4
活 動 報 告 第 2 回 チリ エクアドル 腫 瘍 学 シンポジウムに 参 加 LACRCスタッフとCLC 訪 問 団 は 6 月 27 日 及 び28 日 にエクアドルの 首 都 キトで 開 催 されたSECOND CHILEAN-ECUADORIAN SYMPOSI- UM ON ONCOLOGYに 参 加 しました このシンポジウムは エクアドルの 第 一 警 察 病 院 とCLCのCANCER CLINIC CENTERが 共 同 で 主 催 し たもので LACRCからは 河 内 講 師 および 岡 田 助 教 が 講 師 として 参 加 しました シンポジウムでは 河 内 講 師 が 早 期 胃 癌 の 肉 眼 的 病 理 組 織 学 的 分 類 と 病 理 組 織 学 的 所 見 に 基 づく 早 期 大 腸 癌 の 治 療 方 針 岡 田 助 教 が 胃 癌 の 内 視 鏡 診 断 と 治 療 と 大 腸 癌 の 内 視 鏡 診 断 と 治 療 というそれぞれ2 題 の 講 演 を 行 い いずれも 好 評 のうちに 終 了 致 し ました エクアドルでは シンポジウムに 参 加 したほか 河 内 講 師 と 岡 田 助 教 が ロペス 医 師 らとともにキトのパブロ アルトゥーロ スアレス 国 立 病 院 及 び 第 一 警 察 病 院 を 訪 問 しました 現 在 では エクアドルにおける 大 腸 癌 スクリーニングプロジェクトのために LACRCスタッフを 中 心 と した 学 術 技 術 支 援 や 研 修 コースの 実 施 等 に 取 り 組 んでおります シンポジウムのポスター 講 演 をする 岡 田 助 教 キトのバシリカ 教 会 パブロ アルトゥーロ スアレス 国 立 病 院 の 病 理 検 査 室 にて 5
コラム 甦 ったカルメネール 突 然 ですが みなさんチリの3Wをご 存 知 ですか? 諸 説 ありますが Weather Wine Women (Wifeという 方 も!) がチリの3 大 いいとこ ろ だそうです 残 念 ながら 女 性 である 私 は 最 後 のWの 良 さは 男 性 ほど 実 感 できませんが 前 者 2つは 存 分 に 堪 能 しております 今 回 はその3Wのうちの 一 つ チリワインについてお 届 け 致 します チリワインの 特 徴 は 安 くて 高 品 質 であることです 価 格 帯 は 1000-10000ペソ(200-2000 円 )と 様 々ですが どのワインを 飲 んで もハズレがなくおいしい 特 にCarménerèカルメネールというぶどう 品 種 で 作 られた 赤 ワインは チリを 代 表 するものでバランスのいい 味 わいでとてもおいしい プロによると メルローより 華 やかでほ のかにスパイシー カベルネ ソーヴィニヨンのような 芯 の 強 いタン ニンがあり より 優 しいテクスチュア んー とにかくおいしい チリ の 文 化 を 学 ぶ 上 で 重 要 な 位 置 を 占 めるこのワイン 私 も 日 々 勉 学 ( 晩 酌 )に 励 んでおります 実 はこのカルメネール とても 興 味 深 い 歴 史 を 辿 った 品 種 なので す そのワインの 特 徴 的 な 濃 い 色 調 と 葉 の 色 から Carmin( 深 紅 ) を 語 源 とするこのぶどうは 古 くボルドーに 由 来 し 17 世 紀 初 頭 から 19 世 紀 にかけて 最 も 広 く 栽 培 されていた 品 種 でした しかし1867 年 にフランスを 襲 ったフィロセキアという 害 虫 被 害 により 他 のワイン 用 ぶどう 品 種 と 同 様 に 壊 滅 的 打 撃 を 受 けます もともと 雨 に 弱 く 病 弱 な 種 であったカルメネールは この 被 害 によってフランスでは 失 わ れた 品 種 とされていました この 歴 史 が 覆 されたのが 約 130 年 後 の こと 1994 年 フランスのモンペリエ 研 究 所 ワイン 学 教 授 のジャン ミ シェル ブルージク 博 士 が チリでメルローの 亜 種 として 栽 培 されて いた 品 種 がこの 失 われたカルメネールであることをDNA 鑑 定 によっ て 明 らかにしました 1850 年 代 にチリにわたったカルメネールが 年 間 300 日 以 上 が 快 晴 で 降 水 量 の 少 ない 気 候 と フィロセキア 被 害 に 未 だ 襲 われたことのない 土 地 で100 年 以 上 元 気 に 栽 培 されてい たのです 単 一 品 種 として 見 直 されたこのチリのカルメネールは 2008 年 に カーサ ラポストール クロ アパルタ が 米 国 雑 誌 ワイン スペクテイターで 年 間 1 位 を 獲 得 し 一 躍 世 界 的 ブームを 迎 えるこ とになりました チリの 燦 々とふりそそぐ 太 陽 の 光 と 大 地 に 育 まれ 100 年 以 上 を 経 てワイン 界 に 甦 ったカルメネール 歴 史 に 思 いを 馳 せていただく サンチアゴのフォレスタル 公 園 にて 編 集 後 記 LACRCオフィスに 勤 務 し 始 めてから 3ヶ 月 が 経 ちました 徐 々に 仕 事 に 慣 れてきている 気 がいたします LACRCオフィス で 過 ごした 期 間 は 約 3ヵ 月 間 という 短 いものですが PRENEC プロジェクトを 支 援 してくださる 様 々な 方 とお 会 いすることがで き またLACRCの 先 生 方 より 多 くのことを 学 ぶ 機 会 に 恵 まれま した 今 後 とも このLACRCのニュースレターを 通 じて LACRC オフィスの 最 新 近 況 をご 報 告 してまいりますので 引 き 続 き ご 愛 読 の 程 宜 しくお 願 いいたします (ウレホラ ハイメ) ワインはさらに 味 わい 深 く おいしいものです 皆 さんも 機 会 があれ ば カルメネールをぜひご 笑 味 ください 今 後 も 定 期 的 にコラムを 掲 載 する 予 定 です またワインコラムを お 届 けできるよう 日 々 勉 学 に 励 む 所 存 でおります ( 小 林 真 季 ) サンティアゴ 近 郊 ワイナリー コンチャイトロ のカルメネール 東 京 医 科 歯 科 大 学 ラテンアメリカ 共 同 研 究 拠 点 Latin American Collaborative Research Center Newsletter No. 10, July 2013 [ 発 行 日 ] 2013 年 7 月 31 日 [ 制 作 ] Latin American Collaborative Research Center Tokyo Medical & Dental University Clínica Las Condes Lo Fontecilla 441, Las Condes, Santiago, Chile Tel: (56-2) 610 3780 Fax: (56-2) 610 8610 Email: jurrejola@clc.cl 6