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中 枢 神 経 系 の 発 生 と 分 化 IP3 受 容 体 の 発 見 とその 機 能 の 解 明 理 化 学 研 究 所 脳 科 学 総 合 研 究 センター 発 生 神 経 生 物 研 究 チーム 御 子 柴 克 彦 高 次 機 能 を 有 し 複 雑 な 構 造 の 脳 神 経 系 の 発 生 と 分 化 の 機 構 を 解 明 する 為 に ミュータントマウスと 正 常 マウスとの 比 較 解 析 や 人 工 キメラマウスにおける 正 常 部 位 と 病 態 像 の 比 較 解 析 を 行 った その 結 果 分 子 細 胞 組 織 器 官 個 体 を 連 続 的 に 見 る 事 が 出 来 て 単 に 正 常 の 解 析 だけでは 明 らかにし 得 ない 多 くの 成 果 を 得 た 以 下 の4 項 目 について 紹 介 する 1] ミエリン( 髄 鞘 ) 形 成 機 構 2] 神 経 細 胞 の 位 置 決 定 と 脳 のしわ 形 成 3] 神 経 の 発 生 発 達 を 制 御 するZic 遺 伝 子 4] IP3レセプターの 発 見 とその 機 能 1] ミエリン( 髄 鞘 ) 形 成 機 構 機 構 の 研 究 ミエリンとは 中 枢 神 経 系 ではオリゴデンドロサイトが 末 梢 神 経 系 ではシュ ワン 細 胞 が 末 梢 神 経 系 の 神 経 細 胞 の 軸 索 に 取 り 巻 き そして 形 成 した 多 重 層 の 膜 の 事 を 云 う 神 経 軸 索 内 での 電 気 的 な 信 号 をより 効 率 的 に 伝 導 する 役 割 を 果 たす ミエリン 形 成 に 障 害 を 起 こす 突 然 変 異 マウスとしてクエイキング (quaking)マウス トウィッチャー(twitcher)マウス シバラー(shiverer)マウス シバラー(shiverer)マウスとアレルの mld (myelin deficient) マウス 等 がいる ミエリンを 構 成 するタンパク 質 としては proteolipid protein, myelin basic protein, P2 protein, CNPase (2',3'-Cyclic nucleotide 3'-phosphohydrolase) な どが 同 定 されアミノ 酸 配 列 も 決 定 されたタンパク 質 から 構 成 される これらの タンパク 質 の 合 成 障 害 により ミエリン 構 造 の 不 全 がおきて 個 体 レベルでは 行 動 異 常 が 起 きる ミエリン 形 成 は 分 子 と 形 態 と 行 動 とを 対 応 づ けるための 大 変 よいモデルと 考 えられる クエイキング(quaking)マウス トウ ィッチャー(twitcher)マウスでの 解 析 も 行 ってきたが 本 稿 ではシバラーマウス につき 筆 者 の 研 究 室 で 行 った 研 究 成 果 を 紹 介 する まずシバラーマウスのミエリン 形 成 の 障 害 の 原 因 がミエリンを 作 るオリゴ デンドロサイトかシュワン 細 胞 にあるのか 或 は 未 知 の 体 液 性 因 子 によるか を 明 らかにするために 正 常 マウスとシバラーマウスとのキメラマウスを 作 製 して 解 析 した その 解 析 の 結 果 オリゴデンドロサイトやシュワン 細 胞 そのも のに 障 害 があることを 証 明 した この 結 果 により 初 めて 分 子 生 物 学 的 解 析 を 進 められることになった シバ ラーマウスではミエリン 塩 基 性 タンパク 質 の4 7エキソンが 決 失 していた mld (myelin deficient) マウスでは ミエリン 塩 基 性 タンパク 質 があるにも 拘 ら ずタンパク 質 の 発 現 が 悪 い ミエリン 塩 基 性 タンパク 質 が 直 列 に 重 複 しており 上 流 に 位 置 するミエリン 塩 基 性 タンパク 質 をコードする4 7エキソンが 逆 位 に 配 置 していることを 発 見 した この 逆 位 に 配 列 する 部 位 から アンチセンス RNA が 産 生 されて 下 流 で 読 まれて 産 生 されるセンス RNA と RNA-RNA 複 合 体 を 形 成 することを 示 し た RNA-RNA 複 合 体 は 分 解 しやすいため 正 常 な 遺 伝 子 の 転 写 が 正 常 であって も 分 解 されてしまうために シバラーと 同 様 な 症 状 を 示 す これは 正 常 な 遺 伝

子 が 同 一 遺 伝 子 上 にあるにも 拘 らず 逆 位 の 遺 伝 子 により 転 写 されて 作 られる アンチセンス RNA により 遺 伝 子 発 現 が 障 害 されることの 最 初 の 発 見 であった K. Mikoshiba, et al., Brain Res 177, 287 (1979). K. Mikoshiba et al., Nature 299, 357 (1982). K. Mikoshiba, et al., Dev Biol 105, 221 (1984). K. Mikoshiba, et al., J Neurochem 44, 686 (1985). H. Okano et al., J Neurochem 48, 470 (1987). H. Okano, K. et al., EMBO J 7, 3407 (1988a). H. Okano et al., EMBO J 7, 77 (1988b). K. Mikoshiba, et al., Annu Rev Neurosci 14, 201 (1991). A. M. Turnley et al., Nature 353, 566 (1991). 2] 神 経 細 胞 の 位 置 決 定 と 脳 のしわ 形 成 の 分 子 機 構 脳 のしわのないリーラーミュータントマウスはニューロンの 位 置 も 異 常 で ある このリーラーミュータントの 原 因 がニューロンそのものにあるのか 体 液 性 因 子 によるのかの 解 析 を 行 うため キメラマウスの 作 製 を 行 った 結 果 キ メラマウスは 正 常 化 した この 結 果 により 体 液 性 因 子 が 重 要 であると 考 えた 脳 のしわのないリーラーミュータントマウスへ 正 常 マウス 脳 組 織 を 注 射 して 免 疫 するユニークな 方 法 により リーラーマウスで 欠 落 している しわ 形 成 や ニューロンの 位 置 決 定 に 関 わる 分 子 ( 後 にリーリン 分 子 と 同 定 )の 抗 体 を 作 製 することに 成 功 し その 分 子 機 構 の 解 明 をした 更 にその 下 流 因 子 を 欠 落 するミュータントマウス(ヨタリマウスと 命 名 )を 発 見 した また Cdk5 もニ ューロンの 位 置 決 定 に 関 わることも 明 らかにし 神 経 細 胞 の 位 置 決 定 としわ 形 成 の 分 子 機 構 の 全 容 を 明 らかにした 更 に cdk5 が 脳 のしわ 形 成 と 神 経 細 胞 の 位 置 決 定 に 重 要 であることが cdk5 の 欠 損 マウスの 解 析 により 明 らかとなり その 分 子 レベルでの 解 析 にも 成 功 した J. Mariani et al., Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci 281, 1 (1977). K. Mikoshiba et al., J Neurochem 34, 835 (1980). T. Terashima, et al., J Comp Neurol 218, 314 (1983). T. Terashima, et al., J Comp Neurol 225, 95 (1984). K. Mikoshiba, et al., Dev Neurosci 7, 199 (1985). T. Terashima, et al., J Comp Neurol 232, 83 (1985). T. Terashima, et al., J Comp Neurol 252, 264 (1986). M. Ogawa et al., Neuron 14, 899 (1995). T. Miyata et al., J Comp Neurol 372, 215 (1996). G. D'Arcangelo et al., J Neurosci 17, 23 (1997). J. A. Del Rio et al., Nature 385, 70 (1997). T. Miyata et al., J Neurosci 17, 3599 (1997). K. Nakajima, et al., Proc Natl Acad Sci U S A 94, 8196 (1997). M. Sheldon et al., Nature 389, 730 (1997). N. Utsunomiya-Tate et al., Proc Natl Acad Sci U S A 97, 9729 (2000). T. Ohshima et al., Proc Natl Acad Sci U S A 98, 2764 (2001). T. Ohshima et al., J Neurosci 22, 4036 (2002). M. Hirasawa et al., Proc Natl Acad Sci U S A 101, 6249 (2004). 3] 神 経 発 生 発 達 を 制 御 する Zic 遺 伝 子 神 経 管 に 発 現 する 遺 伝 子 を 発 見 し Zic と 命 名 した Zic には5 種 類 あり 左 右 軸 形 成 立 体 視 神 経 発 生 等 に 必 須 であることを 解 明 した Zic はマウス 小 脳 顆 粒 細 胞 に 強 く 限 局 して 発 現 する 分 子 として 私 たちが 最 初 に 見 出 して 構 造 を 決 めた zinc figer motif をもつ 転 写 因 子 である(zinc finger の zi と 小 脳 cerebellum の c をとり Zic と 命 名 した) Zic を 報 告 したのち Zic に 相 当 するショウジョウバエの 遺 伝 子 が 独 立 にク ローニングされた これはショウジョウバエのペアルール 遺 伝 子 odd-paired 変

異 でアミノ 酸 配 列 遺 伝 子 構 造 ともに 我 々のマウス Zic に 類 似 していた odd-paired 変 異 では ペアルール 型 の 体 節 形 成 異 常 のほかに 腹 側 中 胚 葉 の 発 生 過 程 に 障 害 のあることが 知 られている ショウジョウバエでは odd-paired 遺 伝 子 は 発 生 に 大 切 な engrailed wingless の 遺 伝 子 を 制 御 しており 一 つの 遺 伝 子 しかない しかし マウス Zic は 現 在 の 所 5つのアイソフォームがあること をみいだした Zic 欠 損 に 伴 う 脳 の 形 態 形 成 異 常 私 たちは Zic ファミリーの 小 脳 発 生 における 役 割 を 明 らかにするために ま ず 小 脳 において 最 も mrna 含 量 が 高 い Zic1から 各 々に 変 異 をもつマウスを 遺 伝 子 相 同 組 換 えにより 作 製 し その 表 現 型 を 解 析 した 1) 小 脳 のパターン 形 成 にかかわる Zic1 Zic 欠 損 マウスは 生 後 2,3 日 目 以 降 顕 著 な 運 動 失 調 異 常 運 動 などの 症 状 を 示 し 多 くのものは 生 後 1ヶ 月 以 内 に 死 亡 した 中 枢 神 経 系 では 小 脳 の 低 形 成 小 脳 小 葉 パターンの 異 常 が 認 められた 組 織 学 的 な 解 析 から 小 脳 の 異 常 には 胎 生 14 日 以 降 の 菱 脳 唇 で 顆 粒 細 胞 へと 運 命 決 定 されたのちの 顆 粒 細 胞 の 前 駆 細 胞 の 増 殖 脳 の 低 下 にかかわっていることが 明 らかとなった 2) 中 枢 神 経 系 全 体 の 発 生 を 制 御 する Zic2 Zic2は ヒトの13q 症 候 群 のポジショナルクローニングによりヒトの1 3 番 染 色 体 の 約 メガベース 欠 損 した 変 異 が 見 つかり その 中 に Zic2が 含 まれて いた 13q 症 候 群 は 無 脳 症 脳 の 発 達 不 全 脳 ヘルニアなど 重 篤 な 脳 発 生 障 害 を 引 き 起 こすことが 知 られていた Zic2のほかに 多 くの 遺 伝 子 も 欠 失 していた ために Zic2が 原 因 であるか 否 かは 不 明 であったが Zic2の 欠 損 マウスを 作 製 したところ 同 様 の 異 常 所 見 を 見 出 し これにより13q 症 候 群 の 原 因 遺 伝 子 は Zic2が 関 与 していることが 示 された Zic2の 遺 伝 子 欠 損 マウスを 調 べたところ 網 膜 の 神 経 節 細 胞 からの 線 維 のうち ipsilateral projection に 関 わる 線 維 の 異 常 があった これにより 今 まで 立 体 視 を 分 子 レベルで 手 掛 けられなかったが 分 子 メカニズムの 解 明 に 大 きなはずみとなった 3) 左 右 軸 を 決 定 する Zic3 私 たちの 内 蔵 は 左 右 非 対 称 であるが 内 臓 の 異 常 として 完 全 逆 位 (situs inversus) 位 置 異 常 (situs ambiguus)が 知 られている 1997 年 末 に X 染 色 体 にリンクした 患 者 の 遺 伝 子 を 解 析 した 結 果 situ inversus situs ambiguus の 症 状 を 示 すと 共 に Zic3の 遺 伝 子 に 変 異 が 起 きていることが 報 告 された アフ リカツメガエルをモデル 動 物 として Zic の 役 割 を 用 いて 調 べると Zic3はアクチ ビンの 下 流 にあり 左 側 に 発 現 しているが 右 側 に Zic3を 発 現 させると 心 臓 や 内 臓 特 に 小 腸 のルーピングが 正 常 と 逆 になることがわかり Zic3が 左 右 の 決 定 に 大 きく 関 わっていることが 明 らかとなった J. Aruga et al., J Neurochem 63, 1880 (1994). K. Nakata, T. et al., Proc Natl Acad Sci U S A 94, 11980 (1997). J. Aruga et al., J Neurosci 18, 284 (1998). K. Nakata T. et al., Mech Dev 75, 43 (1998). J. Aruga et al., Mech Dev 89, 141 (1999). T. Kitaguchi, T. et al., Development 127, 4787 (2000). T. Nagai et al., Proc Natl Acad Sci U S A 97, 1618 (2000). K. Nakata, Y. et al., Mech Dev 99, 83 (2000). Y. Koyabu K. et al., J Biol Chem 276, 6889

(2001). K. Mizugishi et al., J Biol Chem 276, 2180 (2001). J. Aruga T. et al., Dev Biol 244, 329 (2002). E. Herrera et al., Cell 114, 545 (2003). T. J. Fujimi K. et al., Dev Dyn 235, 3379 (2006). T. Inoue M. et al., Dev Biol 306, 669 (2007). A. Ishiguro et al., J Biol Chem 282, 9983 (2007). M. Hatayama et al., Hum Mol Genet 17, 3459 (2008). T. Inoue, M. et al., J Neurosci 28, 4712 (2008). 4] IP3 レセプターの 発 見 とその 機 能 の 解 明 1883 年 にリンガーによりカエルの 心 臓 の 収 縮 に 細 胞 内 のカルシウムが 重 要 であることが 発 見 されて 以 来 カルシウムが 分 泌 筋 肉 の 収 縮 ( 江 橋 節 郎 ) や 発 生 などの 様 々な 生 命 現 象 に 必 須 であることが 明 らかである しかし 細 胞 の 刺 激 に 応 じて 細 胞 内 カルシウムの 上 昇 がおきる 仕 組 みはよくわかって いなかった 1950 年 代 初 めに 細 胞 が 活 性 化 されるときに PI (フォスファチ ジル イノシトール) 代 謝 が 活 発 化 するといる 大 きな 発 見 あったが イノシト ール 代 謝 回 転 とカルシウムとの 関 連 は 不 明 のままであった 細 胞 内 メッセンジャーIP3の 発 見 ベーリッジ 博 士 はイノシトール リン 酸 の 一 種 であるイノシトール 3リ ン 酸 (IP3) が 細 胞 内 からカルシウムを 放 出 することを1983 年 に 発 見 し た 唾 液 分 泌 腺 を 用 いたこの 画 期 的 な 発 見 によりIP3 が 細 胞 内 に 於 ける 重 要 な メッセンジャーであることが 証 明 されて 直 ちに 国 際 的 に 認 知 された IP3レセプターの 発 見 と 小 胞 体 に 局 在 するカルシウムチャネルである 事 の 証 明 と 全 構 造 の 決 定 次 の 疑 問 は 細 胞 でどうしてIP3がカルシウム 濃 度 を 上 昇 するかであった ミ トコンドリア 以 外 で 細 胞 内 に 貯 蔵 されて 必 要 に 応 じてカルシウムを 放 出 する 制 御 の 仕 組 みがあり その 主 役 を 演 ずるのがIP3レセプターであることが 予 測 され たが IP3レセプターはあくまでも 薬 理 学 的 な 概 念 であり その 分 子 実 体 も 局 在 も 不 明 な 仮 想 的 な 分 子 であった 世 界 中 の 製 薬 会 社 や 大 学 の 研 究 室 がIP3レセプ ターの 発 見 を 目 指 して 躍 起 になって 追 い 求 めていた 筆 者 らはIP3レセプターを1989 年 に 世 界 に 先 駆 けて 発 見 し これまでIP3 レセプターはカルシウム チャネルとは 別 分 子 と 考 えられていたが 形 態 学 的 生 化 学 的 分 子 生 物 学 的 解 析 によりIP3レセプターは 小 胞 体 にあることを 証 明 し て カルシウム チャネルと 一 体 であること さらにその 分 子 量 約 31 万 の 巨 大 膜 タンパク 質 の 全 構 造 を 世 界 で 初 めて 決 定 した IP3レセプターの 発 見 は 筆 者 が 小 脳 失 調 を 起 こす 突 然 変 異 マウスにおいて 欠 落 するP400 蛋 白 質 を 精 製 し P400 蛋 白 質 特 異 的 モノクローナル 抗 体 を 用 いて P400 蛋 白 質 が 実 はIP3レセプターであることを 証 明 したもので 大 変 ユニークな 発 見 であった ベーリッジ 博 士 が 発 見 した 細 胞 内 メッセンジャーであるIP3を 結 合 するIP3 レセプターを 申 請 者 が 発 見 したことは 直 ちに 世 界 中 に 大 きなインパクトを 与 え IP3とIP3レセプターはともに 細 胞 内 のカルシウムを 介 する 情 報 伝 達 機 構 の 理 解 を 大 きく 進 展 する 原 動 力 となった

4-1] 生 化 学 的 構 造 生 物 学 的 解 析 から 生 物 学 的 役 割 と 疾 患 への 関 わりの 解 明 細 胞 外 からの 刺 激 により 産 生 されたIP3が 何 故 多 様 な 機 能 を 持 つかは その 後 の 精 力 的 な 研 究 により 明 らかにされた 更 に 構 造 生 物 学 的 解 析 を 進 めてIP3レ セプターがカルシウムにより 構 造 変 化 を 示 すアロステリックタンパク 質 である ことを 示 した IP3レセプターのIP3 結 合 部 位 や 調 節 領 域 の3 次 元 X 線 結 晶 構 造 解 析 にも 成 功 した この 三 次 元 構 造 をもとに 蛍 光 共 鳴 エネルギー 移 動 法 により 新 しいIP3 指 示 薬 を 開 発 し 細 胞 内 のIP3 動 態 を 観 測 することに 成 功 した その 結 果 IP3 とカルシウムの 時 空 間 的 な 可 視 化 が 可 能 となり 現 在 のカルシウム 研 究 の 発 展 に 貢 献 している 三 次 元 構 造 の 解 析 により カルシウムチャネルである IP3レセプターのチャネルポアーの 開 閉 機 構 の 解 明 を 行 った またIP3レセプター に 結 合 するタンパク 質 をスクリーニングした 結 果 グルタミン 酸 レセプターを はじめとしてハンチントン 病 や 細 胞 死 (アポトーシス)とも 関 わる 多 くの 分 子 が 結 合 することがわかり これらはIP3レセプターのチャネルポアーの 開 閉 に 関 わる 近 傍 に 結 合 していることを 明 らかにした すなわちIP3レセプターが 他 の 多 くの 情 報 伝 達 系 とリンクし かつ 病 気 とも 深 く 関 わることを 示 した また 生 物 学 的 役 割 について 解 析 を 進 め 細 胞 が 刺 激 をうけて 細 胞 内 でのカル シウムの 濃 度 を 変 化 として 観 察 される カルシウム 振 動 の 発 振 装 置 がIP3レセプ ター であり カルシウム 振 動 が 受 精 後 4 細 胞 期 に 背 側 と 腹 側 を 決 定 すること 抗 体 に 蛍 光 色 素 をつけてレーザー 光 を 利 用 してIP3レセプターを 破 壊 する 手 法 を 用 いて 神 経 の 突 起 伸 展 に 重 要 であること 遺 伝 子 欠 損 マウスは 発 育 障 害 や 小 脳 失 調 を 呈 し 神 経 可 塑 性 に 異 常 を 示 すことを 明 らかにした 更 に 外 分 泌 機 能 にIP3レセプタータイプ2 型 3 型 が 重 要 であることをノックアウトマウスを 使 って 証 明 して 乾 燥 した 目 や 唾 液 分 泌 障 害 を 起 こす 自 己 免 疫 疾 患 であるシェ ーグレン 症 候 群 のモデルとなること ヒト シェーグレン 症 候 群 患 者 の 血 清 中 にIP3レセプターの 抗 体 が50% 以 上 陽 性 であることも 明 らかにした 更 にタイプ1 型 IP3レセプターが 神 経 成 長 因 子 のBDNFの 分 泌 にも 関 わるこ とを 明 らかにしヒト 自 閉 症 とも 関 わることが 明 らかになってきた 小 脳 失 調 を 主 な 徴 候 とするヒトの 遺 伝 子 変 異 もIP3レセプターの 異 常 によることを 明 らか にしている 4-2] 新 規 な 代 謝 経 路 の 発 見 と 病 気 との 関 連 の 発 見 更 にIP3 結 合 部 位 に 結 合 しておりIP3により 放 出 される 新 規 分 子 を 発 見 し ア ービット(IRBIT)と 命 名 した アービットはIP3の 偽 似 体 であり IP3と 同 じ 部 位 に 結 合 する 為 に カルシウム 振 動 ( 頻 度 と 強 度 )を 調 節 することを 示 した 更 に 三 次 メッセンジャーとしてNa + HCO 3- 共 輸 送 体 を 標 的 として 生 体 の 酸 塩 基 バランスの 調 節 にかかわるという 全 く 新 しい 代 謝 経 路 を 見 出 した Na + HCO 3- 共 輸 送 体 のヒト 家 系 での 知 能 障 害 低 身 長 緑 内 障 白 内 障 などをお こすことが 報 告 されており IP3 レセプター アービット 系 が 関 ることも 明 ら かとなった 即 ちIP3の 役 割 はカルシウムの 放 出 のみでなく アービットを 放 出 するという 新 しい 情 報 伝 達 経 路 を 発 見 した また 近 年 小 胞 体 内 腔 に 新 しい 電 子 の 授 受 に 関 わる 酸 化 還 元 センサーを 発 見 し IP3レセプターと 酸 化 還 元 反

応 がリンクしていることを 発 見 した 現 在 酸 化 ストレス 殆 どの 病 気 に 関 って いることから IP3レセプターを 介 するカルシウム 制 御 が 生 体 の 機 能 調 節 に 様 々 な 形 で 関 与 して その 障 害 は 疾 病 と 強 く 関 わることを 示 したものである 4-3] 新 薬 アッセイ 法 の 開 発 IP3レセプターはアロステリックタンパク 質 の 典 型 的 な 物 である 事 が 証 明 さ れ リガンドや 調 節 タンパク 質 などとの 結 合 により 機 能 を 変 換 することが 示 された 神 経 伝 達 物 質 やホルモンの 作 用 部 位 とは 全 く 異 なる 部 位 に 構 造 と 機 能 を 調 節 するアロステリック 部 位 があることを 明 らかにして membrane receptor binding assay ( 膜 レセプター 結 合 アッセイ) は 現 在 では 創 薬 における 基 本 的 アッセイ 系 としてGPCR(Gタンパク 質 共 役 受 容 体 )などの 全 ての 系 に 適 用 さ れる 先 端 的 な 技 術 となった 我 々はIP3レセプターの 働 きを 調 節 するタンパク 質 分 子 をスクリーニングする 事 に 成 功 しており 且 つ 新 しい 有 機 合 成 による 薬 剤 の 開 発 に 成 功 している( 特 許 申 請 済 み 一 部 発 表 ) 4-4] 診 断 技 術 治 療 薬 の 開 発 : IP3レセプターはリガンド 結 合 部 位 や 調 節 領 域 の 構 造 が 明 らかとなっている ため 蛍 光 共 鳴 エネルギー 移 動 法 を 利 用 してIP3の 定 量 を 可 能 とした そのため に そのアッセイ 系 を 用 いて 世 界 中 で 多 くの 薬 物 の 検 定 がすすめられている 既 にIP3 定 量 キットは 我 々が 申 請 した 特 許 が 企 業 ライセンス 化 されて 世 界 的 に 販 売 されている ヒトの 小 脳 失 調 症 患 者 の 家 系 解 析 により1 型 IP3レセプター 遺 伝 子 の 大 きな 決 失 あるいは 点 突 然 変 異 によるヒト 小 脳 失 調 症 が 発 見 され 運 動 障 害 を 示 してい るも 発 見 された また 2 型 3 型 の 遺 伝 子 欠 損 マウスはヒトのシェーグレン 症 候 群 の 患 者 での 乾 いた 口 に 代 表 される 外 分 泌 障 害 を 引 き 起 こしている 御 子 柴 博 士 はシェーグレン 症 候 群 の 患 者 約 1000 人 で 約 50%に 血 中 にIP3レセプ ター 抗 体 を 検 出 することに 成 功 しており 診 断 に 利 用 出 来 る 事 を 証 明 した 申 請 者 は 自 身 の 研 究 室 で 多 くの 薬 物 の 開 発 に 成 功 しており IP3レセプター がアルツハイマー 病 パーキンソン 病 ハンチントン 病 等 に 深 く 関 り IP3レセ プター 障 害 によりこれらの 疾 患 が 引 き 起 こされる 事 を 示 している( 論 文 投 稿 中 ) 更 にアルツハイマー 病 パーキンソン 病 ハンチントン 病 等 で 見 られるタンパ ク 質 架 橋 の 阻 害 作 用 を 持 つ 有 機 合 成 化 合 物 の 開 発 に 成 功 している( 論 文 発 表 や 特 許 申 請 済 み) 4-5] レセプターの 認 識 記 憶 など 高 次 機 能 に 於 ける 役 割 の 解 明 IP3レセプターが 発 生 分 化 神 経 の 可 塑 的 性 質 認 識 記 憶 学 習 などの 高 次 脳 機 能 にも 関 ることを 示 した 特 に 筆 者 やベーリッジ 博 士 はIP3レセプタ ーが 細 胞 内 のカルシウムの 濃 度 をゆっくり(2 3 分 に1 回 程 )と 変 化 をさせる カルシウム 振 動 の 発 振 装 置 であり このカルシウム 振 動 の 高 さと 頻 度 が 細 胞 内 での 働 きを 決 めるのに 必 須 であることを 示 している 神 経 の 突 起 伸 展 及 び 小 脳 や 海 馬 における 神 経 可 塑 性 が 重 要 である 事 を 明 らかにしている

4-6] ヒト 疾 患 との 関 わり ---レセプター 病 から 高 次 精 神 神 経 機 能 障 害 筆 者 はIP3 レセプターの 働 きが 障 害 されることにより ヒト 疾 患 を 引 き 起 こ す 事 を 証 明 してきた 近 年 精 神 疾 患 の 発 症 機 構 の 解 明 予 防 治 療 が 重 要 な 課 題 となっているが 特 にそれぞれのタイプのIP3レセプターを 構 成 する 成 分 の 欠 損 ( 特 定 の 脳 内 部 位 などのレセプターの 欠 損 )マウスの 作 製 を 行 い 行 動 解 析 や 様 々な 機 能 解 析 により ヒト 疾 患 のモデルマウスの 作 成 に 成 功 している IP3レセプターが 小 脳 失 調 症 アルツハイマー 病 統 合 失 調 症 ハンチント ン 病 をはじめとする 運 動 神 経 疾 患 や 精 神 神 経 疾 患 の 原 因 因 子 の 一 つであるこ とを 明 らかにしており それらの 脳 内 部 位 特 異 的 遺 伝 子 欠 損 により モデル 動 物 (マウス)も 作 製 している また 2 型 3 型 の 欠 損 マウスはヒトの 自 己 免 疫 疾 患 であるシェーグレン 症 候 群 の 患 者 でみられる 乾 いた 口 に 代 表 される 外 分 泌 障 害 を 引 き 起 こしていることを 発 見 した また 急 性 膵 炎 の 障 害 の 原 因 分 子 であ ることも 見 いだした 以 上 のように 正 常 と 異 常 との 比 較 を 中 心 とした 脳 の 発 生 分 化 の 研 究 を 基 盤 として ユニークで 独 自 の 発 想 のもとに 多 くの 技 術 開 発 を 行 いながら 進 めてきた25 年 前 の IP3レセプターの 発 見 に 基 づく IP3 IP3レセプター カルシウムの 流 れによる 細 胞 内 カルシウム 制 御 機 構 の 研 究 は 生 命 現 象 の 基 本 的 原 理 を 解 明 することから 疾 患 の 病 態 解 明 診 断 創 薬 にまで 発 展 させ ている K. Mikoshiba, et al., Dev Neurosci 2, 254 (1979). K. Mikoshiba et al., J Neurochem 39, 1028 (1982). T. Furuichi et al., Nucleic Acids Res 17, 5385 (1989). A. Miyawaki et al., Neuron 5, 11 (1990). A. Miyawaki et al., Proc Natl Acad Sci U S A 88, 4911 (1991). Y. Mori et al., Nature 350, 398 (1991). T. Nakagawa et al., Proc Natl Acad Sci U S A 88, 6244 (1991). G. Kuwajima et al., Neuron 9, 1133 (1992). S. Miyazaki et al., Science 257, 251 (1992). Y. Fujita et al., Neuron 10, 585 (1993). S. Kume et al., Cell 73, 555 (1993). T. Kagawa et al., Neuron 13, 427 (1994). M. Kawasaki et al., Neuron 12, 597 (1994). R. Llinas et al., Proc Natl Acad Sci U S A 91, 12990 (1994). M. Fukuda et al., Proc Natl Acad Sci U S A 92, 10708 (1995). K. Mikoshiba et al., Proc Natl Acad Sci U S A 92, 10703 (1995). M. Matsumoto et al., Nature 379, 168 (1996). S. Kume et al., Science 278, 1940 (1997). M. Ohara-Imaizumi et al., Proc Natl Acad Sci U S A 94, 287 (1997). H. Umemori et al., Science 276, 1878 (1997). K. Takei et al., Science 282, 1705 (1998). H. Zhao et al., Science 279, 237 (1998). G. Boulay et al., Proc Natl Acad Sci U S A 96, 14955 (1999). A. Futatsugi et al., Neuron 24, 701 (1999). T. Michikawa et al., Neuron 23, 799 (1999). M. Fukuda et al., Proc Natl Acad Sci U S A 97, 14715 (2000). H. T. Ma et al., Science 287, 1647 (2000). K. Mikoshiba, M. Hattori, Sci STKE 2000, pe1 (2000). M. Nishiyama, K. Hong, K. Mikoshiba, M. M. Poo, K. Kato, Nature 408, 584 (2000). K. Fukami et al., Science 292, 920 (2001). I. Bosanac et al., Nature 420, 696 (2002). T. Nagai et al., Nat Biotechnol 20, 87 (2002). T. Saneyoshi, S. Kume, Y. Amasaki, K. Mikoshiba, Nature 417, 295 (2002). I. Bosanac et al., Mol Cell 17, 193 (2005). A. Futatsugi et al., Science 309, 2232 (2005). T. Higo et al., Cell 120, 85 (2005). C. Hisatsune et al., Sci STKE 2005, pe53 (2005). H. Ando et al., Mol Cell 22, 795 (2006). K. Shirakabe et al., Proc Natl Acad Sci U S A 103, 9542 (2006). Y. Kuroda et al., Proc Natl Acad Sci U S A 105, 8643 (2008). H. Akiyama et al., Sci Signal 2, ra34 (2009). H. Bannai et al., Neuron 62, 670 (2009).

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