国 際 税 務 研 究 会 国 際 税 務 2013 年 10 月 号 掲 載 米 国 連 邦 税 - 日 本 法 人 が 留 意 すべき 税 務 手 続 き PricewaterhouseCoopers LLP ニューヨーク 事 務 所 税 務 パートナー 徳 弘 高 明 ワシントン DC 事 務 所 税 務 マネジャー 小 林 徹 米 国 連 邦 税 制 は 外 国 法 人 による 米 国 事 業 から 生 じる 所 得 および 米 国 源 泉 の 所 得 について 外 国 法 人 が 行 う べき 様 々な 税 務 手 続 き すなわち 申 告 納 税 開 示 等 を 規 定 している しかしながら 日 本 法 人 が これらの 手 続 きに 必 ずしも 通 じていないこともあり 税 務 コンプライアンスの 観 点 から 問 題 となる 事 案 は 少 なくない このような 状 況 を 踏 まえ 本 稿 では 日 本 法 人 が 留 意 すべき 米 国 連 邦 税 制 上 の 税 務 手 続 きについて 申 告 課 税 および 源 泉 徴 収 課 税 のそれぞれについてご 案 内 する ( 申 告 課 税 および 源 泉 徴 収 課 税 の 概 要 につい ては 本 誌 2012 年 11 月 号 掲 載 米 国 連 邦 法 人 税 制 の 概 要 もご 参 照 ください ) なお 本 稿 内 の 米 国 連 邦 税 法 上 の 申 告 書 様 式 (Form)の 名 称 は 以 下 のとおりである Form 1120 U.S. Corporation Income Tax Return 申 Form 1120-F U.S. Income Tax Return of a Foreign Corporation 告 Form 1120S U.S. Income Tax Return of an S Corporation 課 Form 1065 U.S. Return of Partnership Income 税 Form 7004 Application for Automatic Extension of Time To File Certain Business Income Tax, Information, and Other Returns Form SS-4(*) Application for Employer Identification Number 源 Form W-8BEN Certificate of Foreign Status of Beneficial Owner for U.S. Tax Withholding 泉 Form 8833(*) Treaty-Based Return Position Disclosure Under Section 6114 or 7701(b) 徴 Form 5472(*) Information Return of a 25% Foreign-Owned U.S. Corporation or a Foreign 収 Corporation Engaged in a U.S. Trade or Business 課 Form 1042 Annual Withholding Tax Return for U.S. Source Income of Foreign Persons 税 Form 1042-S Foreign Person s U.S. Source Income Subject to Withholding (*) 本 稿 では 源 泉 徴 収 課 税 に 分 類 しているが 申 告 課 税 にも 関 連 する Form である 1 申 告 課 税 (1) 原 則 申 告 課 税 においては 内 国 法 人 は 所 得 の 源 泉 地 に 関 わらず 全 ての 所 得 を 課 税 対 象 とする( 全 世 界 所 得 課 税 ) 一 方 外 国 法 人 については 米 国 実 質 関 連 所 得 を 課 税 対 象 とする 米 国 実 質 関 連 所 得 とは "income which is effectively connected with the conduct of a trade or business within the United States" 1 のことで 直 接 または( 代 理 人 を 通 じた) 間 接 を 問 わず 米 国 内 の 事 業 活 動 に 有 機 的 に 関 連 した 所 得 とされる 日 米 租 税 条 約 では 条 約 上 の 特 典 条 項 を 満 たす 日 本 法 人 は 米 国 に 所 在 する 恒 久 的 施 設 を 通 じて 米 国 事 業 を 行 う 場 合 においてのみ 当 該 恒 久 的 施 設 に 帰 属 する 所 得 について 申 告 納 税 義 務 を 負 うとされる 事 業 開 始 に 先 立 つ 市 場 調 査 等 準 備 的 または 補 助 的 な 性 格 の 活 動 を 目 的 とする 駐 在 員 事 務 所 は 租 税 条 約 が 規 定 する 恒 久 的 施 設 に 該 当 せず 連 邦 税 制 上 の 課 税 対 象 外 となる 2 本 格 的 な 事 業 開 始 に 際 し (i) 米 国 支 店 が 事 業 を 行 え ば 日 本 法 人 が 外 国 法 人 として 支 店 に 帰 属 する 米 国 実 質 関 連 所 得 について 申 告 納 税 義 務 を 負 い (ii) 米 国 子 会 社 が 事 業 を 行 えば 当 該 子 会 社 が 内 国 法 人 として 全 世 界 所 得 について 申 告 納 税 義 務 を 負 う (2) 米 国 拠 点 の 法 的 性 格 と 申 告 形 態 1 内 国 歳 入 法 第 882 条 (a)(1) 2 日 米 租 税 条 約 は 州 税 および 地 方 税 に 適 用 されないため 州 税 法 地 方 税 法 によっては 駐 在 員 事 務 所 が 課 税 対 象 となることもあ る PwC 1
日 本 法 人 の 米 国 での 事 業 展 開 において 事 業 の 拡 大 に 伴 い (i) 駐 在 員 事 務 所 (ii) 支 店 (iii) 子 会 社 と 米 国 拠 点 の 形 態 が 変 化 していくこともあろう 表 1 のとおり 米 国 拠 点 の 形 態 により 米 国 における 申 告 納 税 義 務 申 告 手 続 きも 異 なってくる 表 1 日 本 法 人 の 米 国 拠 点 の 形 態 による 申 告 課 税 の 対 象 および 手 続 き 米 国 拠 点 の 形 態 課 税 所 得 申 告 納 税 義 務 駐 在 員 事 務 所 予 防 申 告 ( 後 述 ) ( 課 税 対 象 外 ) 無 (*) 支 店 / 恒 久 的 施 設 恒 久 的 施 設 に 帰 属 する 米 国 実 質 関 連 所 得 申 告 主 体 申 告 書 様 式 (Form) 日 本 法 人 1120-F 有 子 会 社 (**) 子 会 社 の 全 世 界 所 得 米 国 子 会 社 1120 (*) 申 告 すべき 所 得 は 無 いため その 意 味 では 申 告 書 の 提 出 は 不 要 であるが 租 税 条 約 の 適 用 により 免 税 となっ ている 場 合 は 条 約 の 特 典 を 受 けている 旨 の 開 示 申 告 (Form 1120-F と 後 述 の Form 8833 による)が 必 要 となる (**) 事 業 体 課 税 が 適 用 される 通 常 の 内 国 法 人 (C corporation)を 想 定 米 国 拠 点 の 形 態 として 支 店 と 子 会 社 のいずれかを 選 択 する 際 子 会 社 を 選 択 する 時 の 有 力 な 理 由 として 一 般 に 日 本 法 人 とは 別 法 人 である 米 国 子 会 社 が 事 業 主 体 となることで 米 国 事 業 に 伴 う 債 務 全 般 ( 製 造 者 責 任 使 用 者 責 任 等 を 含 む)について 日 本 法 人 が 距 離 を 置 くことが 出 来 るということがある 税 務 に 関 しても 米 国 子 会 社 の 場 合 申 告 主 体 である 米 国 子 会 社 が 負 う 申 告 納 税 義 務 について 日 本 法 人 は 直 接 的 な 責 任 は 負 わない 一 方 米 国 支 店 であれば 申 告 主 体 である 日 本 法 人 が 直 接 的 な 申 告 納 税 義 務 者 であり 例 えば 税 務 調 査 の 時 は 当 局 の 調 査 権 限 が 日 本 法 人 本 店 に 及 ぶことになる (3) 支 店 申 告 表 2 は 内 国 法 人 外 国 法 人 を 含 む 事 業 体 の 別 により 申 告 書 様 式 課 税 方 式 申 告 期 限 をまとめたものである 表 2 事 業 体 による 申 告 手 続 き 申 告 期 限 (**) LLC および 申 告 書 延 長 申 請 延 長 申 請 事 業 体 ハ ートナーシッフ に 様 式 課 税 方 式 しない 場 合 した 場 合 よる 選 択 (*) (Form) 事 業 年 度 終 了 から 内 国 法 人 (C corporation) 1120 事 業 体 課 税 2 ヶ 月 15 日 事 業 体 課 税 LLC および ハ ートナーシッフ パススルー 課 税 1065 3 ヶ 月 15 日 内 国 事 業 体 外 国 法 人 小 規 模 法 人 (***) (S corporation) 支 店 / 恒 久 的 施 設 予 防 申 告 1120S 1120-F パススルー 課 税 事 業 体 課 税 2 ヶ 月 15 日 2 ヶ 月 15 日 ( 課 税 対 象 外 ) 5 ヶ 月 15 日 (5 ヶ 月 延 長 ) 11 ヶ 月 15 日 ( 後 述 ) (*) LLC(Limited Liability Company)およびパートナーシップは いずれも 事 業 体 課 税 または パススルー 課 税 を 選 択 出 来 る (**) 申 告 期 限 の 延 長 申 請 は 申 告 期 限 までに IRS に Form 7004 を 提 出 すれば 自 動 的 に 認 められる 例 えば 内 国 法 人 について 暦 年 事 業 年 度 であれば 申 告 期 限 は 3 月 15 日 ( 延 長 申 請 した 場 合 は 6 ヶ 月 延 長 により 9 月 15 日 ) 3 月 31 日 終 了 事 業 年 度 であれば 申 告 期 限 は 6 月 15 日 ( 延 長 申 請 した 場 合 は 6 ヶ 月 延 長 により 12 月 15 日 )となる なお 納 税 期 限 の 延 長 は 認 められない PwC 2
(***) 外 国 法 人 は 小 規 模 法 人 (S corporation)の 株 主 となることが 認 められない 日 本 法 人 を 含 む 外 国 法 人 が 申 告 主 体 になる 支 店 申 告 は 通 常 の 内 国 法 人 が 用 いる Form 1120 ではなく Form 1120-F により 行 う 支 店 に 帰 属 する 米 国 実 質 関 連 所 得 は 支 店 に 帰 属 する 総 益 金 から 総 損 金 を 控 除 して 算 定 す る 法 人 所 得 に 乗 じる 税 率 は 累 進 課 税 も 含 め 内 国 法 人 と 外 国 法 人 で 同 一 である また 申 告 期 限 も 事 業 年 度 終 了 から 2 ヶ 月 15 日 (6 ヶ 月 間 の 延 長 が 認 められる)と 内 国 法 人 (Form 1120)と 外 国 法 人 (Form 1120-F)で 同 一 である(ただし 後 述 する 予 防 申 告 の 場 合 を 除 く) 支 店 の 課 税 所 得 算 定 において 日 本 法 人 が 留 意 すべき 事 案 として 米 国 のパススルー 事 業 体 への 投 資 がある 日 本 法 人 の 投 資 の 形 態 が 内 国 法 人 (C corporation)の 株 式 の 保 有 であれば 前 述 の 米 国 子 会 社 のケースと 同 様 に 法 人 税 の 申 告 主 体 はあくまで 投 資 先 の 米 国 法 人 であり 出 資 者 である 日 本 法 人 が 新 たに 申 告 納 税 義 務 を 負 うことは 無 い 一 方 事 業 体 課 税 ではなく パススルー 課 税 を 選 択 したパートナシップや LLC への 投 資 であ れば 原 則 として 出 資 者 である 日 本 法 人 が 投 資 先 であるパススルー 事 業 体 の 活 動 を 通 じ 米 国 に 恒 久 的 施 設 を 有 するとみなされ パススルー 事 業 体 の 課 税 所 得 のうち 日 本 法 人 に 帰 属 する 部 分 は 日 本 法 人 の 米 国 実 質 関 連 所 得 に 含 まれる パススルー 事 業 体 への 投 資 のうち 日 本 法 人 による LLC への 投 資 のケース( 図 1)は 特 に 注 意 が 必 要 である LLC は 法 的 には Limited Liability Corporation の 名 称 のとおり 法 人 格 を 有 する 一 方 税 務 上 パススルー 課 税 を 選 択 するとパートナーシップ( 事 業 体 課 税 を 選 択 しない 場 合 )と 同 一 の 扱 いとなるため 誤 解 を 招 きやすい パススルー 課 税 を 選 択 した LLC は Form 1065 による 申 告 ( 課 税 所 得 および 出 資 者 情 報 からなる 情 報 申 告 )を 行 うものの 納 税 主 体 ではなく 出 資 者 である 日 本 法 人 が LLC の 課 税 所 得 のうち 出 資 割 合 に 応 じた 帰 属 分 を 他 の 米 国 実 質 関 連 所 得 と 合 算 して Form 1120-F により 申 告 納 税 しなければならない( 図 1 の 事 例 1) なお 日 本 法 人 が 100% 持 分 を 保 有 する LLC( 事 業 体 課 税 を 選 択 しない 場 合 )は 米 国 連 邦 税 法 上 Disregarded Entity ( 税 務 上 あたかも 支 店 のように 出 資 者 の 一 部 とみなされる)となり Form 1065 の 申 告 義 務 を 負 わないが 出 資 者 である 日 本 法 人 は LLC の 課 税 所 得 全 額 を 他 の 米 国 実 質 関 連 所 得 と 合 算 して Form 1120-F により 申 告 納 税 し なければならない( 図 1 の 事 例 2) 図 1 日 本 法 人 による LLCへの 投 資 のケース 事 例 1 2 申 告 主 体 保 有 申 告 納 税 申 告 書 割 合 義 務 義 務 様 式 申 告 内 容 甲 LLC 有 無 1065 課 税 所 得 を 情 報 申 告 日 本 親 会 社 60% 有 1120-F 米 国 実 質 関 連 所 得 は 甲 LLC 課 税 所 得 の 60%を 含 む 他 の 出 資 者 40% 有 1120 全 世 界 所 得 は 甲 LLC 課 税 所 得 の 40%を 含 む 乙 LLC 無 ( 非 該 当 ) 日 本 親 会 社 100% 有 1120-F 米 国 実 質 関 連 所 得 は 乙 LLC 課 税 所 得 の 100%を 含 む (4) 予 防 申 告 (Protective Return) PwC 3
前 出 のとおり 日 本 法 人 は 米 国 に 所 在 する 恒 久 的 施 設 を 通 じて 米 国 事 業 を 行 う 場 合 当 該 恒 久 的 施 設 に 帰 属 する 米 国 実 質 関 連 所 得 について 申 告 納 税 義 務 を 負 う ここで 問 題 になるのが 恒 久 的 施 設 の 有 無 の 判 断 が 租 税 条 約 が 規 定 する 恒 久 的 施 設 の 判 定 基 準 に 照 らしても 容 易 ではないケースである 仮 に 日 本 法 人 が 米 国 に 恒 久 的 施 設 は 無 く 申 告 納 税 義 務 を 負 わない との 税 務 ポジションに 基 づき Form 1120-F を 提 出 しない 場 合 でも 将 来 の 税 務 調 査 において IRS(Internal Revenue Service / 内 国 歳 入 庁 )が 米 国 に 恒 久 的 施 設 を 有 する との 税 務 ポジションをとり 更 正 を 行 うことがあり 得 る このような 無 申 告 の Form 1120-F に 対 する 更 正 の 影 響 については 以 下 の 2 点 に 留 意 する 必 要 がある 第 1 は 経 費 の 損 金 不 算 入 のリスクである 外 国 法 人 の 費 用 の 損 金 算 入 および 税 額 控 除 は 一 定 の 期 限 内 に 申 告 を 行 った 場 合 のみ 認 められると 規 定 されているため 無 申 告 に 対 する 更 正 においては 益 金 総 額 を 課 税 所 得 と される 場 合 があるので 留 意 が 必 要 である 3 ( 表 3) 表 3 1120-F の 税 額 計 算 例 期 限 内 申 告 無 申 告 の 更 正 恒 久 的 施 設 に 益 金 1,000 1,000 帰 属 する 損 金 900 0 課 税 所 得 100 1,000 税 率 (35%と 仮 定 ) 35% 35% 法 人 税 額 35 350 第 2 に 除 斥 期 間 の 無 起 算 である 連 邦 税 法 では 原 則 として 申 告 書 の 提 出 時 に 除 斥 期 間 が 起 算 されるため 無 申 告 の 年 度 については 除 斥 期 間 が 起 算 されず 実 務 的 には 6 年 程 度 の 遡 及 が 上 限 とされているようであるが IRS は 無 期 限 に 遡 及 して 更 正 することが 出 来 るので 留 意 が 必 要 である このように Form 1120-F に 対 する 潜 在 的 な 更 正 金 額 および 更 正 期 間 を 考 慮 すると 米 国 に 恒 久 的 施 設 は 無 く 申 告 納 税 義 務 を 負 わない との 税 務 ポジションは 税 務 上 の 不 確 実 性 を 伴 うとも 考 えられる こうした 不 確 実 性 を 除 く 手 続 きとして 財 務 省 規 則 に 規 定 される 予 防 申 告 (Protective Return) がある これは 米 国 に 恒 久 的 施 設 は 無 く 申 告 納 税 義 務 を 負 わない という 税 務 ポジションを 取 りつつ 課 税 所 得 および 税 額 を 記 載 しない 1120-F を 期 限 内 に 申 告 することで 経 費 の 損 金 算 入 の 権 利 を 留 保 するとともに 除 斥 期 間 を 起 算 させるというものである 予 防 申 告 における 1120-F は 納 税 者 名 納 税 地 納 税 者 番 号 等 課 税 所 得 および 税 額 以 外 の 限 定 的 な 情 報 申 告 にと どまることから Skeleton 1120-F( 骨 格 だけの 1120-F) と 呼 ばれることもある なお 予 防 申 告 の 申 告 期 限 は 支 店 申 告 より 3 ヶ 月 間 猶 予 があり 事 業 年 度 終 了 から 5 ヶ 月 15 日 で 6 ヶ 月 間 の 延 長 が 認 められる (5) 予 定 納 税 日 本 法 人 が 申 告 納 税 義 務 を 負 う 場 合 税 額 が 発 生 する 事 業 年 度 においては 事 業 年 度 終 了 後 である 申 告 に 先 立 ち 事 業 年 度 内 に 予 定 納 税 が 必 要 である 米 国 の 法 人 税 予 定 納 税 は 原 則 として 当 事 業 年 度 の 見 込 課 税 所 得 に 基 づき 当 事 業 年 度 中 の 各 四 半 期 ごとに 4 回 ( 表 4)である 表 4 予 定 納 税 期 限 四 半 期 累 積 納 税 必 要 割 合 (*) 12 月 決 算 3 月 決 算 第 1 25% 4 月 15 日 7 月 15 日 第 2 50% 6 月 15 日 9 月 15 日 第 3 75% 9 月 15 日 12 月 15 日 第 4 100% 12 月 15 日 3 月 15 日 (*) ( 過 年 度 繰 越 税 額 + 当 期 予 定 納 税 額 ) / 確 定 年 税 額 申 告 書 提 出 により 確 定 した 年 税 額 に 基 づき 各 四 半 期 の 予 定 納 税 期 限 ごとに 累 積 納 税 必 要 割 合 を 満 たしてい たか 判 定 され 不 足 していた 予 定 納 税 額 に 対 して 加 算 税 (Penalty)が 賦 課 される( 季 節 変 動 が 激 しい 場 合 各 四 3 日 米 租 税 条 約 では 課 税 所 得 の 計 算 上 経 費 を 控 除 できる 旨 が 規 定 されており 米 国 国 内 税 法 上 の 当 該 損 金 算 入 否 認 規 定 がそのまま 適 用 されるとは 限 らないが 実 務 上 の 対 応 として 予 防 申 告 を 検 討 することも 必 要 と 思 われる PwC 4
半 期 の 実 績 に 基 づき 年 間 税 額 を 見 積 もり 納 税 する 場 合 等 については 特 則 あり) なお 日 本 法 人 が 持 分 を 保 有 す るパートナーシップや LLC(パススルー 課 税 を 選 択 している 場 合 )の 所 得 の 帰 属 分 も 考 慮 して 予 定 納 税 額 を 算 定 する 必 要 がある 2 源 泉 徴 収 課 税 (1) 原 則 米 国 で 事 業 を 行 う 外 国 法 人 の 米 国 源 泉 所 得 のうち 定 期 的 所 得 に 該 当 する 所 得 は 米 国 実 質 関 連 所 得 の 申 告 課 税 とは 別 に 源 泉 徴 収 課 税 の 対 象 となる 定 期 的 所 得 とは "fixed, determinable, annual or periodical gains, profits, and income" 4 のことで 各 語 の 頭 文 字 から FDAP 所 得 とも 呼 ばれ 配 当 利 子 賃 貸 料 使 用 料 報 酬 その 他 の 定 期 的 な 所 得 等 が 該 当 する 5 国 内 法 上 国 外 に 支 払 われる FDAP 所 得 の 源 泉 徴 収 税 率 は 30%である ただし 米 国 と 各 国 が 締 結 する 租 税 条 約 は 所 得 の 種 類 ( 配 当 利 子 使 用 料 等 ) 毎 に 軽 減 税 率 を 規 定 している 日 米 租 税 条 約 により 特 典 条 項 を 満 た す 日 本 法 人 の FDAP 所 得 の 源 泉 徴 収 において 適 用 される 軽 減 税 率 は 表 5 のとおりである 表 5 日 米 租 税 条 約 が 定 める 軽 減 税 率 配 当 議 決 権 株 式 の 保 有 割 合 ( 直 接 または 間 接 ) 50% 超 (12 ヶ 月 以 上 保 有 ) 10% 以 上 50% 以 下 10% 未 満 利 子 金 融 機 関 向 け その 他 0% 5% 10% 0% 10% 使 用 料 0% 以 下 (2)および(3)において 図 2 の 日 本 法 人 が 米 国 法 人 から FDAP 所 得 を 受 領 するケースを 念 頭 に 日 本 法 人 および 支 払 者 ( 米 国 法 人 )の 税 務 手 続 きについて 概 観 する 図 2 日 本 法 人 が 米 国 法 人 から FDAP 所 得 を 受 領 するケース (2) 日 本 法 人 の 税 務 手 続 き 4 内 国 歳 入 法 第 881 条 (a)(1) 5 これらの 所 得 のうち 米 国 実 質 関 連 所 得 に 該 当 するものは 源 泉 課 税 ではなく 申 告 課 税 の 対 象 となる PwC 5
日 本 法 人 を 含 む 外 国 法 人 が 米 国 における FDAP 所 得 の 源 泉 徴 収 において 租 税 条 約 の 軽 減 税 率 を 適 用 する ためには 表 6 の 各 手 続 きが 必 要 である 表 6 FDAP 所 得 を 有 する 日 本 法 人 の 税 務 手 続 き Form 提 出 先 内 容 a) SS-4 IRS 納 税 者 番 号 の 取 得 b) W-8BEN 支 払 者 租 税 条 約 適 用 対 象 である ことを 提 示 c) 8833 IRS 租 税 条 約 による 恩 典 の 内 容 を 開 示 a) Form SS-4 内 国 法 人 外 国 法 人 を 問 わず 法 人 は Form SS-4 を IRS に 提 出 し 所 在 地 事 業 内 容 事 業 体 形 態 等 を 登 録 することで 納 税 者 番 号 (Employer Identification Number / EIN)を 取 得 する Form SS-4 の 申 請 は 内 国 法 人 の 場 合 インターネット 電 話 ファックス または 郵 便 による 外 国 法 人 の 場 合 インターネットによる 申 請 は 認 められ ないが 電 話 とファックスを 併 用 して 申 請 すると 通 常 その 場 で 納 税 者 番 号 が 取 得 出 来 る 納 税 者 番 号 は 一 身 専 属 であり 法 人 格 が 継 続 する 限 り 単 一 の 納 税 者 番 号 を 全 ての Form において 使 用 する b) Form W-8BEN FDAP 所 得 の 受 領 者 である 外 国 法 が 軽 減 税 率 等 の 租 税 条 約 の 特 典 を 受 けるためには FDAP 所 得 の 支 払 い に 先 立 ち 支 払 者 に Form W-8BEN を 提 出 して 条 約 の 恩 典 を 受 ける 資 格 を 有 していることを 提 示 する 必 要 があ る 支 払 者 は Form W-8BEN の 内 容 に 基 づき 軽 減 税 率 により 源 泉 徴 収 を 行 う (このように Form W-8BEN は 日 本 の 租 税 条 約 届 出 書 と 類 似 した 効 果 を 持 つ ただし 租 税 条 約 届 出 書 が 所 轄 税 務 署 長 への 提 出 を 要 するのに 対 し Form W-8BEN は IRS への 提 出 は 不 要 である また 租 税 条 約 届 出 書 特 典 条 項 に 関 する 付 表 ( 様 式 17) は 居 住 地 国 の 権 限 ある 当 局 が 発 効 した 居 住 者 証 明 を 必 要 とするのに 対 し Form W-8BEN は 居 住 者 証 明 を 必 要 としない ) Form W-8BEN は FDAP 所 得 の 種 類 ごとに 作 成 することが 必 要 である 例 えば 日 本 法 人 が 米 国 子 会 社 か ら 貸 付 金 利 子 と 使 用 料 を 受 け 取 る 場 合 Form W-8BEN を 2 枚 作 成 する また Form W-8BEN は 記 載 内 容 に 変 更 が 無 い 限 り 原 則 として 作 成 年 の 12 月 31 日 から 3 年 間 有 効 である 例 えば 2011 年 10 月 に 作 成 した Form W-8BEN は 2014 年 12 月 31 日 まで 有 効 である なお Form W-8BEN は 従 来 の FDAP 所 得 の 源 泉 徴 収 制 度 に 加 え 2014 年 7 月 1 日 から FATCA(Foreign Account Tax Compliance Act / 外 国 口 座 税 務 コンプライアンス 法 )による 源 泉 徴 収 制 度 が 導 入 されるのに 伴 い 近 日 中 の 改 定 が 予 定 されている 公 開 (9 月 17 日 現 在 )されている 仮 の 申 告 書 様 式 によると 外 国 居 住 者 である 個 人 と 外 国 法 人 は 別 の 様 式 となり また FATCA による 源 泉 徴 収 義 務 の 有 無 に 関 する 項 目 が 加 えられる 今 後 新 しい 様 式 に 移 行 する 際 には 現 行 様 式 の 効 力 および 新 しい 様 式 による 再 作 成 の 必 要 性 等 に 関 するガイドライン が 明 らかにされると 予 想 される c) Form 8833 Form 8833 は FDAP 所 得 の 受 領 者 である 外 国 法 人 が 租 税 条 約 の 特 典 の 内 容 を IRS に 対 し 開 示 する 様 式 で ある 外 国 法 人 は 特 典 の 種 類 ごとに また FDAP 所 得 の 支 払 者 ごとに 適 用 する 租 税 条 約 の 条 項 取 引 内 容 特 典 による 金 額 等 の 開 示 義 務 を 負 う Form 8833 は Form 1120-F に 添 付 して 申 告 する 前 述 の 支 店 申 告 の 対 象 外 で 予 防 申 告 もしていない 外 国 法 人 であっても Form 8833 による 開 示 義 務 を 負 えば 名 称 住 所 納 税 者 番 号 等 の 納 税 者 情 報 のみを 記 載 した Form 1120-F に Form 8833 を 添 付 して 申 告 する なお Form 8833 による 開 示 義 務 は Form 1042-S( 後 述 ) 上 に 適 切 に 記 載 された 取 引 については (i) 支 払 者 が 関 係 会 社 間 取 引 として Form 5472( 日 本 の 法 人 税 申 告 書 別 表 17(4) 国 外 関 連 者 に 関 する 明 細 書 に 相 当 )にお いて 開 示 する または (ii) 受 取 額 が 事 業 年 度 を 通 じ 総 額 500,000 ドル 以 下 である 等 を 要 件 として 免 除 される (3) 支 払 者 の 税 務 手 続 き 外 国 法 人 に 対 する FDAP 所 得 の 支 払 者 は 以 下 のとおり 支 払 毎 に 源 泉 徴 収 義 務 を 負 うとともに 各 暦 年 毎 に Form 1042 の 申 告 義 務 を 負 う PwC 6
a) 源 泉 徴 収 FDAP 所 得 の 支 払 時 に 源 泉 徴 収 した 税 額 の IRS の 納 税 期 限 は (i) 12 月 31 日 時 点 の 未 納 税 額 が 200 ドル 未 満 のときは 翌 年 の 3 月 15 日 (ii) 各 月 末 の 未 納 税 額 が 200 ドル 以 上 2,000 ドル 未 満 のときは 翌 月 15 日 (iii) 各 月 の 7 日 15 日 22 日 末 日 の 未 納 税 額 が 2,000 ドル 以 上 のときは 3 日 以 内 とされる 納 税 手 続 きは 多 くの 場 合 財 務 省 の Electronic Federal Tax Payment System (EFTPS)のウェブサイトを 活 用 し て 行 われている b) Form 1042 FDAP 所 得 の 支 払 者 は 毎 年 3 月 15 日 を 申 告 期 限 (Form 7004 による 6 ヵ 月 延 長 が 認 められる)として 前 年 の FDAP 所 得 の 支 払 額 源 泉 徴 収 税 額 支 払 四 半 月 等 を 記 載 した Form 1042 の 申 告 義 務 を 負 う 納 税 額 に 不 足 がある 場 合 は 納 税 も 行 う Form 1042 の 申 告 は FDAP 所 得 の 種 類 ごとに さらに 源 泉 徴 収 の 有 無 にかかわらず 行 われなければならな い 例 えば 日 米 租 税 条 約 において 免 税 とされる 使 用 料 のケースで 使 用 料 の 支 払 先 が 日 本 法 人 のみで 源 泉 徴 収 税 額 が 無 い 支 払 者 でも 支 払 使 用 料 について Form 1042 の 申 告 義 務 を 負 っている 受 領 者 ごとの 明 細 票 である Form 1042-S は Form 1042 と 併 せて 申 告 するだけでなく 写 しを 受 領 者 に 交 付 す る Form 1042-S は 所 得 税 法 上 の 源 泉 徴 収 票 および 支 払 調 書 と 同 様 収 入 および 源 泉 徴 収 税 額 を 証 明 する 書 類 である 例 えば 日 本 の 法 人 税 申 告 の 直 接 外 国 税 額 控 除 制 度 において 保 存 が 求 められる 納 税 証 明 ( 法 人 税 法 第 69 条 第 10 項 / 施 行 規 則 第 29 条 の 3 第 2 項 )に 該 当 する 3 まとめ 日 本 法 人 には 米 国 税 務 コンプライアンスは 米 国 子 会 社 の 問 題 で 自 分 たちには 関 係 が 無 いだろう あるいは 前 年 の 税 務 手 続 きを 踏 襲 すればよいだろうというアプローチが 垣 間 見 られることがあり 米 国 事 業 が 安 定 局 面 にあり 米 国 子 会 社 が 順 調 に 事 業 遂 行 しているような 場 合 このような 傾 向 がより 強 い こうした 日 本 法 人 でも 営 業 納 品 据 付 アフターサービス 研 究 開 発 者 の 派 遣 等 の 活 動 を 自 ら 米 国 で 行 って いれば 恒 久 的 施 設 を 認 定 されるリスクと 完 全 に 無 縁 ではないと 考 えられる また 源 泉 徴 収 課 税 の 観 点 から 日 本 法 人 は 米 国 に 恒 久 的 施 設 を 有 するか 否 かにかかわらず 米 国 子 会 社 から 配 当 利 子 または 使 用 料 を 受 領 する 場 合 には 米 国 での 申 告 が 必 要 となる 場 合 がある 米 国 で 事 業 を 展 開 する 日 本 法 人 は 米 国 連 邦 税 制 上 の 手 続 きについて 常 に 注 意 を 払 い 例 えば Form 1120- F による 予 防 申 告 Form 8833 による 日 米 租 税 条 約 の 特 典 享 受 の 開 示 Form W-8BEN の 提 出 状 況 の 確 認 等 を 継 続 して 行 うことが 米 国 税 務 コンプライアンスの 遵 守 のために 有 効 であると 考 えられる PwC 7