高 い 免 疫 賦 活 能 を 有 するパン 酵 母 の 開 発 と その 活 性 化 因 子 の 解 析 2014 年 3 月 大 阪 市 立 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 たかだ ゆうき 髙 田 裕 紀



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高 い 免 疫 賦 活 能 を 有 するパン 酵 母 の 開 発 と その 活 性 化 因 子 の 解 析 2014 年 3 月 髙 田 裕 紀

高 い 免 疫 賦 活 能 を 有 するパン 酵 母 の 開 発 と その 活 性 化 因 子 の 解 析 2014 年 3 月 大 阪 市 立 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 たかだ ゆうき 髙 田 裕 紀

目 次 第 1 章 緒 論 1.1 はじめに 1.2 S. cerevisiae の 細 胞 壁 構 造 1.3 β-グルカンの 構 造 と 機 能 1.4 酵 母 細 胞 と 免 疫 細 胞 の 接 触 による 影 響 1.5 本 研 究 の 目 的 参 考 文 献 1 2 6 7 9 11 第 2 章 実 験 室 酵 母 mcd4δ の in vivo での 免 疫 賦 活 能 2.1 はじめに 2.2 材 料 と 方 法 2.2.1 菌 株 と 培 地 2.2.2 増 殖 の 測 定 2.2.3 マクロファージ 活 性 化 能 の 評 価 2.2.4 酵 母 のマウスへの 腹 腔 内 投 与 2.3 結 果 と 考 察 2.3.1 mcd4δ の 増 殖 能 の 評 価 2.3.2 mcd4δ のマクロファージ 活 性 化 能 の 評 価 2.3.3 in vivo での mcd4δ の 免 疫 賦 活 能 2.4 まとめ 参 考 文 献 15 16 16 17 17 18 18 18 19 20 22 23 i

第 3 章 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 有 する 実 用 パン 酵 母 変 異 株 の 取 得 とその 性 状 解 析 3.1 はじめに 3.2 材 料 と 方 法 3.2.1 菌 株 と 培 地 3.2.2 細 胞 壁 変 異 株 の 選 抜 3.2.3 マクロファージ 活 性 化 能 の 評 価 3.2.4 増 殖 と CO 2 発 生 量 の 測 定 3.2.5 細 胞 壁 解 析 3.3 結 果 と 考 察 3.3.1 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 有 する 実 用 パン 酵 母 変 異 株 の 選 抜 3.3.2 増 殖 能 と 発 酵 能 の 評 価 3.3.3 細 胞 壁 解 析 3.4 まとめ 参 考 文 献 24 24 24 25 25 26 26 27 27 30 36 40 41 第 4 章 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 有 する 実 用 パン 酵 母 変 異 株 の 変 異 部 位 の 同 定 4.1 はじめに 4.2 材 料 と 方 法 4.2.1 菌 株 と 培 地 4.2.2 ゲノムライブラリーを 用 いた 形 質 転 換 4.2.3 相 補 プラスミドを 持 つ 株 の 選 抜 4.2.4 酵 母 からのプラスミド 回 収 4.2.5 相 補 プラスミドの 配 列 解 析 4.2.6 プラスミドの 構 築 4.2.7 変 異 を 相 補 する 遺 伝 子 の 決 定 43 43 43 44 44 45 45 46 47 ii

4.2.8 変 異 株 の 表 現 型 相 補 に 関 する 実 験 4.2.8.1 細 胞 壁 解 析 4.2.8.2 増 殖 の 測 定 4.2.8.3 高 温 感 受 性 と CFW 感 受 性 4.2.8.4 マクロファージ 活 性 化 能 の 評 価 4.2.9 配 列 解 析 と 変 異 部 位 の 同 定 4.3 結 果 と 考 察 4.3.1 ゲノムライブラリーを 用 いた 形 質 転 換 から 相 補 プラスミドの 取 得 4.3.2 変 異 遺 伝 子 の 同 定 4.3.3 NDD1 遺 伝 子 による 表 現 型 の 相 補 4.3.4 AQ-37 株 の NDD1 遺 伝 子 変 異 部 位 の 同 定 4.4 まとめ 参 考 文 献 48 48 48 48 49 45 49 49 51 49 57 61 63 第 5 章 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 有 する 二 倍 体 実 用 パン 酵 母 変 異 株 の 取 得 とそ の 性 状 解 析 5.1 はじめに 5.2 材 料 と 方 法 5.2.1 菌 株 と 培 地 5.2.2 二 倍 体 変 異 株 の 選 抜 5.2.3 マクロファージ 活 性 化 能 の 評 価 5.2.4 増 殖 と CO 2 発 生 量 の 測 定 5.2.5 NDD1 遺 伝 子 による 表 現 型 の 相 補 5.2.6 ヒト 免 疫 細 胞 の 活 性 化 能 の 評 価 5.2.7 細 胞 壁 解 析 5.3 結 果 と 考 察 66 66 66 67 68 68 68 69 69 71 iii

5.3.1 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 有 する 二 倍 体 実 用 パン 酵 母 変 異 株 の 選 抜 5.3.2 増 殖 能 と 発 酵 能 の 評 価 5.3.3 NDD1 遺 伝 子 による 表 現 型 の 相 補 5.3.4 ヒト 免 疫 細 胞 の 活 性 化 能 の 評 価 5.3.5 細 胞 壁 解 析 5.4 まとめ 参 考 文 献 71 75 70 81 82 93 95 第 6 章 総 括 97 論 文 目 録 101 謝 辞 103 iv

第 1 章 緒 論 1.1 はじめに 酵 母 は 古 くから 醸 造 やパン 製 造 などに 用 いられている 我 々の 日 常 に 馴 染 みの 深 い 微 生 物 である その 一 方 で 生 化 学 細 胞 生 物 学 遺 伝 学 などの 分 野 で 長 年 研 究 材 料 とし て 用 いられてきた 自 然 界 における 酵 母 は 果 実 や 穀 物 樹 液 など 様 々な 場 所 に 存 在 し ている 形 態 や 出 芽 や 分 裂 などの 増 殖 様 式 の 違 いから 様 々な 種 に 分 類 され 現 在 では 500 種 以 上 約 60 属 の 酵 母 が 知 られている[1] モデル 生 物 として 頻 繁 に 使 用 される 出 芽 酵 母 Saccharomyces cerevisiae や 分 裂 酵 母 Schizosaccharomyces pombe では 無 性 的 に 一 倍 体 のみで 細 胞 分 裂 を 行 う 一 方 で 有 性 的 に 接 合 し 二 倍 体 も 形 成 する さらに 二 倍 体 は 栄 養 飢 餓 状 態 におかれると 減 数 分 裂 により 細 胞 内 に 胞 子 (S. cerevisiae では 接 合 型 a と 接 合 型 α)を 2 個 ずつ 形 成 する( 図 1.1) この 胞 子 を 顕 微 鏡 下 でマニュピュレータ ーを 用 いて 分 離 し 各 胞 子 の 性 状 を 解 析 することができる( 四 分 子 分 析 ) また この 一 連 の 生 活 環 を 利 用 して 変 異 を 掛 け 合 わせ 多 重 変 異 株 が 構 築 されている 酵 母 の 培 養 は 安 価 な 培 養 成 分 で 行 うことができ 倍 加 時 間 が 数 時 間 程 度 と 他 の 真 核 細 胞 に 比 べて 非 常 に 短 い S. cerevisiae や S. pombe に 代 表 される 酵 母 は 真 核 生 物 としての 基 本 的 な 細 胞 構 造 と 機 能 を 備 えており 培 養 や 遺 伝 子 操 作 が 容 易 であることから 優 れた 研 究 材 料 と 言 え る 特 に 本 研 究 で 用 いる S. cerevisiae は 全 ゲノムの 塩 基 配 列 が 決 定 されて 約 6,000 個 の 遺 伝 子 が 知 られており[2] 種 々の 遺 伝 子 破 壊 株 や 組 換 え 用 のベクターが 構 築 され ている また S. cerevisiae はその 使 用 目 的 に 応 じ パン 酵 母 ワイン 酵 母 清 酒 酵 母 などと 呼 ばれている 近 年 その 利 用 は 発 酵 醸 造 産 業 のみならず 医 療 や 環 境 エネル ギー 分 野 にまで 幅 広 く 利 用 されている このように S. cerevisiae は 実 用 面 においても 基 礎 研 究 においても 有 用 な 生 物 である 1

出 芽 一 倍 体 a 発 芽 胞 子 接 合 減 数 分 裂 二 倍 体 一 倍 体 α a/α 出 芽 発 芽 出 芽 図 1.1 出 芽 酵 母 S. cerevisiae の 生 活 環 S. cerevisiae は 無 性 的 に 一 倍 体 のみで 細 胞 分 裂 を 行 う 一 方 で 有 性 的 に 接 合 し 二 倍 体 を 形 成 する さらに 二 倍 体 は 栄 養 飢 餓 状 態 におかれると 減 数 分 裂 により 細 胞 内 に 接 合 型 a と 接 合 型 α の 胞 子 を 2 個 ずつ 形 成 する 1.2 S. cerevisiae の 細 胞 壁 構 造 酵 母 は ヒトと 同 じ 真 核 生 物 であるが 最 外 層 に 細 胞 壁 構 造 を 有 する 点 で 動 物 細 胞 と は 異 なる 細 胞 壁 は 外 界 の 物 質 が 細 胞 内 に 入 る 際 の 最 初 の 関 門 であり 細 胞 の 物 理 的 強 度 を 保 つ 上 でも 重 要 な 構 造 体 である[3] S. cerevisiae の 細 胞 壁 は 細 胞 乾 燥 重 量 の 10 30%を 占 め その 組 成 は 最 外 層 のマンナンタンパク 質 とその 内 側 の β-1,3-グルカン と β-1,6-グルカンから 構 成 される β-グルカン キチンから 成 る( 図 1.2 表 1.1)[3 4] それらが 互 いに 結 合 し 複 雑 な 構 造 を 取 ることで 柔 軟 性 と 強 度 を 生 み 出 している 細 胞 2

壁 タンパク 質 に 付 加 されるマンナンは 重 合 度 が 約 200 でその 合 成 に 関 わる 遺 伝 子 が 約 20 種 知 られている[2] また β-1,3-グルカンは 重 合 度 が 約 1500 で FKS1 遺 伝 子 や GSC2 遺 伝 子 が 合 成 酵 素 の 触 媒 サブユニットをコードすることが 報 告 されている[2 3] 一 方 文 献 により 異 なるが β-1,6-グルカンの 重 合 度 は 60 350 であることが 報 告 されて おり その 合 成 に 関 わる 遺 伝 子 については 多 数 報 告 があるが 合 成 酵 素 は 明 らかになっ ていない[2 3 5 6] キチンは 重 合 度 が 約 120 で 合 成 酵 素 の 遺 伝 子 として CHS1 CHS2 CHS3 と 報 告 されている[2 3] これらの 多 糖 成 分 は 動 物 細 胞 には 存 在 しない ため Candida albicans などの 病 原 真 菌 に 対 する 抗 真 菌 剤 の 標 的 として 注 目 されている 例 えば β-1,3-グルカン 合 成 を 阻 害 する 薬 剤 ミカファンギン[7 8]が 抗 真 菌 剤 として 上 市 されている 細 胞 壁 成 分 の 合 成 は 細 胞 内 部 や 細 胞 膜 上 の 合 成 酵 素 によって 行 われ それら 酵 素 の 活 性 や 遺 伝 子 発 現 は 細 胞 周 期 や 浸 透 圧 変 化 に 伴 うシグナル 伝 達 によって 制 御 されている[3] また 細 胞 壁 成 分 の 一 つが 急 激 に 減 少 すると 他 の 成 分 の 増 加 により 細 胞 壁 の 欠 陥 を 補 う 働 きも 知 られており 多 くの 場 合 キチン 量 が 増 大 し 細 胞 の 強 度 を 守 っている[9] 酵 母 の 細 胞 壁 タンパク 質 の 多 くは 糖 脂 質 であるグリコシルフォスファチジルイノシ トール(GPI)によって 細 胞 壁 や 細 胞 膜 に 固 定 されている GPI があたかも 錨 のように 作 用 することから このタイプのタンパク 質 は GPI アンカー 型 タンパク 質 と 呼 ばれ 60 種 類 以 上 同 定 されており 小 胞 体 を 経 由 して 細 胞 膜 や 細 胞 壁 に 局 在 する[2 10 11] ( 図 1.3) その 他 に β-1,3-グルカンに 直 接 結 合 する PIR 型 タンパク 質 や 非 共 有 結 合 型 タンパク 質 が 報 告 されている[2] これらタンパク 質 の 細 胞 表 層 への 固 定 メカニズムを 応 用 して 外 来 タンパク 質 を 酵 母 細 胞 表 層 に 固 定 する 技 術 が 開 発 され[12] この 技 術 によって 酵 母 の 新 たな 利 用 方 法 が 開 拓 されつつある また 細 胞 壁 強 度 の 保 持 に 重 要 な 役 割 を 果 たしている β-1,3-グルカンは 免 疫 賦 活 能 を 持 つ 物 質 として 注 目 されており 次 節 でその 詳 細 を 述 べる 3

図 1.2 S. cerevisiae 細 胞 壁 の 模 式 図 組 成 は 細 胞 壁 乾 燥 重 量 当 たりの 各 成 分 の 重 量 を%で 表 示 している 4

図 1.3 GPI アンカー 型 タンパク 質 の 局 在 と 構 造 A: 局 在 GPI アンカー 型 タンパク 質 は 小 胞 体 ゴルジ 体 を 経 由 して 細 胞 膜 に 輸 送 される その 後 ホスホリパーゼ C によって 切 断 され 細 胞 膜 から 遊 離 し β-1,6-グルカンに 結 合 し 細 胞 壁 に 固 定 される B: 構 造 Man(マンノース) GlcN(グルコサミン) Asn(アスパラギン) EtN(エタノールアミン) Ins(イノシトール) P(リン 酸 ) DG(ジアシルグリセロール) を 示 す 5

1.3 β-グルカンの 構 造 と 機 能 β-グルカンは パン 酵 母 の 細 胞 壁 に 含 まれるグルコースポリマーである これまでに 次 のような 報 告 がある 1941 年 に 米 国 のルイス ピレマーらがパン 酵 母 抽 出 物 に 抗 癌 作 用 を 見 いだし その 抽 出 物 をザイモサンと 名 付 けた [13] その 後 1960 年 代 に 米 国 の 研 究 チームがパン 酵 母 の 細 胞 壁 から 高 分 子 多 糖 を 抽 出 し β-1,3-グルカンであるこ とを 明 らかにした[14] パン 酵 母 由 来 の β-グルカンの 経 口 摂 取 によりアレルギーなど の 改 善 効 果 が 報 告 されている[15 17] その 他 整 腸 作 用 やコレステロール 低 下 作 用 も 報 告 されている[18 20] また 米 国 では 食 品 医 薬 品 局 が 安 全 性 を 認 定 し 食 品 としての 利 用 が 検 討 されている β-グルカンは パン 酵 母 細 胞 壁 を 抽 出 した 後 マンナンなど 他 の 成 分 を 除 去 して 精 製 されるが 多 段 階 のステップを 要 するため 産 業 的 に 有 用 な β- グルカンの 生 産 法 が 求 められている β-グルカンは 免 疫 担 当 細 胞 の 一 つであるマクロファージの 活 性 化 を 介 して 免 疫 力 を 賦 活 化 すると 考 えられている( 図 1.4)[21 22] β-グルカンはマウスマクロファージ を 活 性 化 しサイトカインの 一 種 である Tumor necrosis factor-α(tnf-α)の 分 泌 を 促 進 す ることや[23] ヒト 単 球 を 活 性 化 しインターロイキン-1β(IL-1β)の 分 泌 を 促 進 するこ とが 知 られている[24] この 活 性 化 機 構 には β-1,3-グルカンとそれに 対 する 特 異 的 受 容 体 Dectin-1 の 結 合 が 関 与 している( 図 1.4)[25] この Dectin-1 と 他 の 受 容 体 Toll like receptor 2 の 活 性 化 を 介 したシグナル 経 路 が 転 写 因 子 nuclear factor-kappa B(NF-κB)を 活 性 化 し 活 性 化 NF-κB がサイトカインの 転 写 を 促 進 することが 知 られている[26] Dectin-1 は 樹 状 細 胞 や 好 中 球 などにも 発 現 している[27 28] そのため β-1,3-グルカ ンはそれら 免 疫 細 胞 の 活 性 化 にも 関 わると 考 えられる また β-グルカンと Dectin-1 の 結 合 には Dectin-1 の 3 つのアミノ 酸 (W221-I222-H223) が 必 要 とされている[29] さらに β-グルカンの 分 岐 構 造 や 立 体 構 造 などが Dectin-1 との 結 合 に 影 響 すると 考 えら れており[21 22] 例 えば 10 個 分 のグルコースがその 結 合 に 必 要 であると 報 告 されて いる[30] しかし β-グルカンの 種 類 によってそれらは 異 なるので 活 性 化 との 関 係 は 明 らかではない 近 年 になり マクロファージ 表 面 の 受 容 体 である NLRP3 や SIGNR も 6

β-グルカンを 認 識 し その 活 性 化 に 関 与 していると 報 告 されており[24 31] 活 性 化 機 構 の 詳 細 について 分 子 レベルでの 理 解 が 進 みつつある また 腸 管 免 疫 に 関 する 研 究 から β-グルカンとの 接 触 が 腸 管 上 皮 細 胞 である Caco-2 を 活 性 化 し IL-8 の 分 泌 を 促 進 することが in vitro 実 験 で 明 らかにされている[32] そ の 他 シイタケなどのキノコから 抽 出 された β-グルカンは 医 薬 品 として 利 用 されている また 黒 酵 母 Aureobasidium pullulans は β-グルカンを 細 胞 外 に 大 量 に 分 泌 生 産 すること が 知 られており その 培 養 液 は 厚 生 労 働 省 から 認 可 され 食 品 への 応 用 が 検 討 されている しかし それらの 構 造 は β-1,6 結 合 の 分 岐 が 多 く パン 酵 母 の β-グルカンとは 大 きく 異 なっている[33 35] 図 1.4 β-グルカンの 免 疫 賦 活 能 β-グルカンは 接 触 により 免 疫 担 当 細 胞 であるマクロファージの 細 胞 表 面 受 容 体 Dectin-1 と 結 合 し マクロファージは 活 性 化 される 活 性 化 されたマクロファージはサイトカインを 分 泌 する このサイトカインが 他 の 免 疫 細 胞 を 活 性 化 することで 免 疫 力 を 賦 活 化 すると 考 えられている 1.4 酵 母 細 胞 と 免 疫 細 胞 の 接 触 による 影 響 酵 母 細 胞 と 免 疫 細 胞 の 接 触 による 影 響 については GPI アンカーの 合 成 に 必 須 とされ ている MCD4 遺 伝 子 の 破 壊 株 (mcd4δ)[36]を 用 いて 先 行 研 究 で 示 された[37] この 7

株 は 細 胞 表 面 のマンナンタンパク 質 が 減 少 し β-グルカンの 露 出 が 強 く 示 唆 されている そのため 接 触 によりマクロファージを 強 く 活 性 化 し 野 生 株 より 高 濃 度 のサイトカイ ン TNF-α を 分 泌 した 詳 細 は 第 2 章 で 述 べる この 機 能 と 同 様 の 効 果 については 真 菌 の 感 染 機 構 解 明 を 目 的 に 真 菌 細 胞 との 接 触 が マクロファージなどの 免 疫 細 胞 に 与 える 影 響 について 研 究 されている S. cerevisiae や C. albicans の 真 菌 細 胞 との 接 触 により マクロファージは TNF-α を 分 泌 し その 分 泌 量 は C. albicans より S. cerevisiae の 方 が 高 かったことが 報 告 されている[38] さらに C. albicans では 細 胞 壁 構 造 が 異 なる 2 種 の 細 胞 形 態 ( 酵 母 形 態 あるいは 菌 糸 形 態 )によ って 接 触 によりマクロファージや 単 球 から 分 泌 されたサイトカイン(マクロファージ 炎 症 性 タンパク 質 など)の 量 が 異 なることが 報 告 されている[39] また C.albicans 細 胞 壁 の GPI アンカー 合 成 に 関 わる GWT1 タンパク 質 の 活 性 を 阻 害 することによって TNF-α 分 泌 量 が 増 加 したことも 報 告 されている[40] これらの 文 献 情 報 から mcd4δ の 結 果 と 同 様 に 細 胞 表 面 の 構 造 が 活 性 化 に 関 与 していると 強 く 示 唆 される また S. cerevisiae の SSD1 遺 伝 子 破 壊 株 でも TNF-α などのサイトカイン 分 泌 量 が 野 生 株 よりも 増 加 することが 報 告 されている[41] 以 上 のことから パン 酵 母 S. cerevisiae の 細 胞 表 面 を 改 変 することで 細 胞 自 身 の 免 疫 賦 活 能 を 高 めることができると 考 えられた mcd4δ と 同 様 に 細 胞 表 面 のマンナンタンパク 質 が 減 少 し β-グルカンを 露 出 した 酵 母 はマク ロファージなどの 免 疫 細 胞 を 活 性 化 する 能 力 がより 高 くなると 考 えられる( 図 1.5) 8

図 1.5 細 胞 壁 変 異 株 によるマクロファージ 活 性 化 A: 野 生 株 B 細 胞 壁 変 異 株 細 胞 表 面 のマンナンタンパク 質 が 減 少 し β-グルカンが 露 出 した 酵 母 は 接 触 によりマクロファージを 強 く 活 性 化 し 高 濃 度 のサイトカインを 分 泌 すると 考 えられ る 1.5 本 研 究 の 目 的 本 研 究 では 酵 母 細 胞 自 身 に β-グルカンと 同 様 の 免 疫 賦 活 能 を 賦 与 するために 実 用 パン 酵 母 を 変 異 処 理 により 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 有 する 酵 母 の 取 得 を 目 指 し た さらに 取 得 変 異 株 の 遺 伝 子 解 析 や 細 胞 表 層 構 造 の 解 析 を 進 め 活 性 化 機 構 につい て 詳 細 に 解 析 した 第 2 章 では 先 行 研 究 で 取 得 された 実 験 室 酵 母 の MCD4 遺 伝 子 破 壊 株 (mcd4δ)の in vivo での 免 疫 賦 活 能 についてマウスを 用 いて 評 価 した 9

第 3 章 では 一 倍 体 実 用 パン 酵 母 を 用 いて 変 異 処 理 を 行 った 取 得 変 異 株 の 中 からマ クロファージ 活 性 化 能 が 高 く 増 殖 能 が 低 下 しない 酵 母 を 選 抜 した 第 4 章 では 取 得 酵 母 の 中 から AQ-37 株 について ゲノムライブラリーを 用 いて 変 異 遺 伝 子 を 同 定 した さらに その 塩 基 配 列 解 析 により 変 異 部 位 を 明 らかにした 第 5 章 では 実 用 化 に 向 け 取 得 一 倍 体 株 をもとに 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 有 する 二 倍 体 実 用 パン 酵 母 を 構 築 した さらに その 細 胞 壁 構 造 を 解 析 した 最 後 に 以 上 の 内 容 を 第 6 章 で 総 括 した なお ここでは 遺 伝 的 な 解 析 に 必 要 な 各 種 栄 養 要 求 性 マーカーを 持 ち 多 くの 研 究 者 が 基 礎 研 究 に 使 用 している 酵 母 を 実 験 室 酵 母 と 表 記 した 第 3 章 以 降 では 実 際 にパン 酵 母 として 使 用 されるあるいはその 親 株 となった 株 を 実 用 パン 酵 母 と 表 記 した 10

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第 2 章 実 験 室 酵 母 mcd4δ の in vivo での 免 疫 賦 活 能 2.1 はじめに 本 研 究 の 先 行 研 究 において 得 られた 知 見 を 以 下 にまとめる 細 胞 壁 蛋 白 質 の 固 定 に 関 わる GPI アンカーの 合 成 に 必 須 とされている MCD4 遺 伝 子 の 破 壊 株 (mcd4δ)が 取 得 された[1] MCD4 遺 伝 子 がコードするタンパク 質 は GPI アンカーコア 構 造 のうち グルコサミンに 結 合 する 1 番 目 のマンノースにエタノールア ミンホスフェートを 付 加 する 反 応 を 触 媒 する( 図 2.1) この 反 応 が 進 まなければ 3 番 目 のマンノースへの 付 加 反 応 が 起 こらず 結 果 として 不 完 全 な GPI アンカーとなり タ ンパク 質 が 付 加 されないと 考 えられている[2 3] この 株 では 細 胞 表 層 構 造 および 免 疫 賦 活 能 について 以 下 のように 解 析 された[4] 細 胞 表 面 のマンナンを 構 成 するマン ノース 量 が 野 生 型 の 36%にまで 減 少 し 逆 に β-グルカンを 構 成 するグルコース 量 は 2.6 倍 に 増 加 していた グルコース 量 当 たりのマンノース 量 を 計 算 すると およそ 14%にま で 減 少 し これらの 値 は 細 胞 表 層 の β-グルカンが 表 面 に 露 出 しやすい 状 況 にあることが 示 唆 された 次 に mcd4δ のマウスマクロファージ 活 性 化 能 が in vitro で 評 価 された 免 疫 担 当 細 胞 としてマウスマクロファージ RAW264.7 が 用 いられ 活 性 化 の 指 標 として 接 触 刺 激 により 分 泌 された TNF-α 量 が 測 定 された その 結 果 mcd4δ との 接 触 により 野 生 型 の 約 7 倍 量 の TNF-α が 分 泌 された さらに mcd4δ の 腹 腔 内 投 与 がマウスの 免 疫 力 に 与 える 影 響 についても 検 討 された 酵 母 の 投 与 により 病 原 真 菌 である C. albicans に 対 して 抵 抗 性 が 増 し その 抵 抗 性 は 野 生 株 よりも mcd4δ の 方 が 強 い 傾 向 が 観 察 され た しかし 統 計 的 な 有 意 差 を 得 るまでには 至 っていなかった そのため 第 2 章 では 実 用 パン 酵 母 での 検 討 を 行 う 前 に 先 行 研 究 で 得 られた 実 験 室 酵 母 mcd4δ が in vivo でマウスの 免 疫 力 に 与 える 影 響 について 詳 細 に 検 討 した 15

図 2.1 GPI アンカーのコア 構 造 と MCD4 タンパク 質 の 作 用 点 Man(マンノース) GlcN(グルコサミン) Asn(アスパラギン) EtN(エタノールアミン) Ins(イノシトール) P(リン 酸 ) DG(ジアシルグリセロール)を 示 す 2.2 材 料 と 方 法 2.2.1 菌 株 と 培 地 実 験 室 酵 母 の 野 生 型 (WT)として S. cerevisiae BY4741(MATa met15 1 leu2 0 lys2 0 16

ura3 0)[ 5]を 用 いた また 先 行 研 究 で BY4741 株 をもとに 遺 伝 子 破 壊 された mcd4δ (BY4741, mcd4 :: kanmx4)[ 2]を 免 疫 賦 活 能 の 評 価 に 使 用 した 培 地 には YPD (1% 酵 母 エキス 2%ポリペプトン 2%グルコース)を 用 い 浸 透 圧 保 護 が 必 要 な 時 は 0.6 M のソルビトールを YPD に 添 加 した(YPDS) 固 体 培 地 には 2%の 寒 天 を 添 加 した 2.2.2 増 殖 の 測 定 mcd4δ を in vivo 試 験 に 供 する 前 にその 増 殖 能 を 調 べた 酵 母 の 初 期 濃 度 を OD 600 で 0.05 に 調 製 し 100 ml の YPDS を 含 む 500 ml の 坂 口 フラスコで 30 の 条 件 で 培 養 した 24 時 間 および 48 時 間 後 に 回 収 し 1 M ソルビトールで 2 度 洗 浄 後 凍 結 乾 燥 し た 乾 燥 菌 体 重 量 から 評 価 した 2.2.3 マクロファージ 活 性 化 能 の 評 価 活 性 評 価 は 先 行 研 究 [2]を 参 考 に 次 のように 行 った 酵 母 は 4 ml の YPD 液 体 培 地 を 含 む 試 験 管 を 用 い 30 で 対 数 増 殖 期 (WT は 12 時 間 mcd4δ は 36 時 間 )まで 培 養 した 遠 心 分 離 により 回 収 し 1 M ソルビトール 溶 液 で 2 度 洗 浄 後 70%エタノール で 1 時 間 以 上 固 定 した その 溶 液 1 ml をサンプルチューブに 移 し 酵 母 を 遠 心 分 離 に より 回 収 し 滅 菌 水 で 洗 浄 した さらに マクロファージの 培 養 に 用 いる 10%のウシ 胎 仔 血 清 FBS と 100 U/mL ペニシリンおよび 100 μg/ml ストレプトマイシンを 含 む RPMI-1640 培 地 ( 和 光 純 薬 工 業 )で 洗 浄 し 同 培 地 で 再 懸 濁 し 細 胞 濃 度 を 3.0 10 7 cells/ml に 調 製 した なお 細 胞 数 は 血 球 計 算 盤 でカウントした また マウスマクロファージ RAW264.7(ATCC TIB-71)は RPMI-1640 培 地 を 用 い CO 2 インキュベーター 内 で 培 養 し 培 養 後 の 細 胞 を 2 回 洗 浄 した 後 同 培 地 を 用 いて 細 胞 濃 度 を 血 球 計 算 盤 で 1.0 10 6 cells/ml に 調 製 した その 細 胞 懸 濁 液 250 μl を 24 穴 プレートに 移 し そこに 等 量 の 酵 母 懸 濁 液 を 加 えた 最 終 細 胞 濃 度 を 酵 母 が 1.5 10 7 cells/ml マクロファージが 5.0 10 5 cells/ml とした マクロファージ 活 性 化 のコントロールとして Escherichia coli O55:B5 17

由 来 のリポポリサッカライド(LPS;シグマアルドリッチ)を 使 用 した 酵 母 とマクロ ファージを 混 合 後 37 で 5%の CO 2 条 件 下 で 6 時 間 インキュベートした 遠 心 分 離 に より 細 胞 を 除 去 し その 上 清 に 含 まれる TNF-α 濃 度 を Quantikine Mouse TNF-α ELISA kit (R&D システムズ)によって 測 定 した 測 定 方 法 はそのキットのマニュアルに 従 った 2.2.4 酵 母 のマウスへの 腹 腔 内 投 与 マウスは CD-1(ICR)の 雄 3 週 齢 を 使 用 し 実 験 は 先 行 研 究 を 参 考 に 次 のように 行 っ た[2] マウスに 投 与 する 酵 母 は 100 ml の YPDS を 含 む 坂 口 フラスコで 対 数 増 殖 期 まで 培 養 し 1 M ソルビトールで 2 度 洗 浄 後 10 ml の 70%エタノールで 1 時 間 以 上 固 定 した 0.5 ml を 凍 結 乾 燥 し 乾 燥 重 量 を 測 定 した 70%エタノールで 10 mg/ml に 調 製 し 保 存 した 使 用 前 にリン 酸 緩 衝 生 理 食 塩 水 (PBS)で 洗 浄 後 PBS に 懸 濁 しマウスの 腹 腔 内 へ 投 与 した 1 回 の 酵 母 投 与 量 を 0.25 mg 1 mg 4 mg とし コントロールは PBS 溶 液 のみを 同 じ 液 量 投 与 した 1サンプル 当 たりの 試 験 マウスの 数 を6または7 匹 とした 1 日 に 1 回 で 10 日 間 投 与 し 11 日 目 に PBS に 懸 濁 した 病 原 真 菌 C. albicans TUA6 株 ( 10 6 CFU)[ 6] を 静 脈 注 射 した その 後 マウスの 生 存 をカプランマイヤー 法 で 表 し 生 存 日 数 を 比 較 した さらに 統 計 解 析 はログランクテストを 用 いて 行 い 有 意 水 準 5%の 条 件 で 差 を 比 較 した 2.3 結 果 と 考 察 2.3.1 mcd4δ の 増 殖 能 の 評 価 先 行 研 究 で 取 得 された mcd4δ は 細 胞 壁 に 欠 損 を 持 ち 物 理 的 に 弱 い 細 胞 であるため 免 疫 試 験 に 供 する 前 にその 乾 燥 菌 体 重 量 から 増 殖 能 の 確 認 を 行 った( 図 2.1) その 結 果 mcd4δ は 24 時 間 では WT の 約 半 分 の 菌 体 量 を 示 し 48 時 間 後 には WT とほぼ 同 等 だっ た WT は 24 時 間 でも 48 時 間 でもほぼ 同 等 だった 従 って 以 前 に 増 殖 曲 線 で 検 討 し た 通 り[4] mcd4δ では 培 養 36 時 間 程 度 が 対 数 増 殖 期 に WT では 培 養 12 時 間 程 度 が 18

対 数 増 殖 期 に 相 当 すると 考 え 以 降 の 試 験 ではこれらを 各 酵 母 の 培 養 時 間 とした 図 2.2 mcd4 の 増 殖 能 24 時 間 および 48 時 間 培 養 後 菌 体 を 回 収 し 凍 結 乾 燥 後 の 乾 燥 重 量 を 測 定 した 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 3 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す 2.3.2 mcd4δ のマクロファージ 活 性 化 能 の 評 価 in vivo での 試 験 を 行 う 前 に mcd4δ の in vitro でのマクロファージ 活 性 化 能 を TNF-α 分 泌 量 を 指 標 として 再 評 価 した 結 果 を 図 2.3 に 示 す WT に 比 べ mcd4δの 活 性 化 能 は 高 く 培 地 のバックグラウンドを 差 し 引 いた 値 で 評 価 すると WT の 約 6 倍 の 活 性 化 能 を 示 した これは 以 前 の 先 行 研 究 での 結 果 とほぼ 同 等 であった[4] そのため in vivo での 評 価 に 使 用 できる 状 態 にあると 判 断 し in vivo の 実 験 を 進 めた 19

図 2.3 mcd4δ のマクロファージ 活 性 化 能 酵 母 とマクロファージを 6 時 間 接 触 させ 分 泌 した TNF-α 量 を ELISA で 測 定 した 最 終 濃 度 で 酵 母 (1.5 10 7 cells/ml)とマクロファージ(5.0 10 5 cells/ml)を 接 触 させた LPS(100 ng/ml) と 培 地 (RPMI-1640)はコントロールとして 使 用 した 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 3 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す 2.3.3 in vivo での mcd4δ の 免 疫 賦 活 能 マウス 腹 腔 内 への 1 回 の 投 与 量 を 0.25 mg 1 mg 4 mg に 設 定 し 評 価 を 行 った その 結 果 を 図 2.4 に 示 す PBS のみの 投 与 では 9 日 目 にマウスの 半 分 11 日 目 に 全 てが 致 死 に 至 った 次 に 酵 母 の 投 与 による 効 果 を 調 べた WT の 0.25 mg 投 与 では 半 分 致 死 が 9 日 目 で 全 て 致 死 が 17 日 目 mcd4δ の 0.25 mg 投 与 では 半 分 が 11 日 目 で 全 てが 17 日 目 WT の 1 mg 投 与 では 半 分 が 11 日 目 で 全 てが 17 日 目 mcd4δ の 1 mg 投 与 では 半 分 が 17 日 目 で 全 てが 31 日 目 WT の 4 mg 投 与 では 半 分 が 11 日 目 で 全 てが 28 日 20

目 mcd4δ の 4 mg 投 与 では 半 分 が 17 日 目 で 全 てが 26 日 目 だった いずれの 条 件 で も PBS のみよりも 生 存 日 数 が 長 くなった WT では 投 与 量 が 0.25 mg 投 与 より 1 mg 1 mg より 4 mg の 方 で 生 存 日 数 が 長 くなった また mcd4δ でも 0.25 mg 投 与 より 1 mg や 4 mg の 方 で 生 存 日 数 が 長 くなり 酵 母 の 投 与 量 が 多 いほどその 生 存 日 数 が 長 くなる 傾 向 も 見 られた WT と mcd4δ の 比 較 では いずれの 投 与 量 でも mcd4δの 方 が 生 存 日 数 が 長 くなる 傾 向 が 見 られた ログランクテストを 用 いた 統 計 解 析 (p < 0.05)では mcd4δ の 4 mg 投 与 のみ PBS と 有 意 差 が 見 られ WT ではそれに 相 当 する 差 は 見 られなかった 従 って mcd4δ の 投 与 によってマウスの 免 疫 力 が 賦 活 化 したことが 示 唆 された 図 2.4 酵 母 を 投 与 したマウスの 生 存 率 の 評 価 マウス 6 または 7 匹 に 酵 母 を 10 日 間 腹 腔 内 投 与 し その 後 C. albicans を 静 脈 から 感 染 させ 生 存 日 数 を 計 測 した 各 シンボルは mcd4δ 4 mg( ) mcd4δ 1 mg( ) mcd4δ 0.25 mg( ) WT 4 mg( ) WT 1 mg( ) WT 0.25 mg( ) PBS( )を 示 す 21

2.4 まとめ 第 2 章 では 実 験 室 酵 母 mcd4δ の in vitro および in vivo での 免 疫 賦 活 能 について 評 価 した in vitro の 試 験 では mcd4δ は 以 前 と 同 様 に 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 示 し た また in vivo での 免 疫 賦 活 能 の 評 価 を 行 うために ここでは 病 原 真 菌 C. albicans への 抵 抗 性 を 指 標 とした 具 体 的 には 病 原 真 菌 の 感 染 前 に 酵 母 を 投 与 し 感 染 後 の 生 存 日 数 から 免 疫 賦 活 能 を 評 価 した その 結 果 in vitro で 見 られた 極 端 な WT と mcd4δ との 違 いは 見 られなかったが mcd4δの 方 がより 免 疫 力 を 高 める 傾 向 が 観 察 された 従 って これまで 指 標 として 用 いてきた in vitro での 評 価 系 に 問 題 はないと 判 断 し 第 3 章 以 降 も 同 様 の 評 価 系 でスクリーニングを 進 めた 22

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第 3 章 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 有 する 実 用 パン 酵 母 変 異 株 の 取 得 とその 性 状 解 析 3.1 はじめに 第 2 章 では 先 行 研 究 で 取 得 されていた 実 験 室 酵 母 の 変 異 株 mcd4δ について in vitro でのマクロファージ 活 性 化 能 と in vivo での 免 疫 賦 活 能 について 評 価 した 両 実 験 にお いて mcd4δ は WT に 比 べて 高 い 効 果 を 示 した MCD4 遺 伝 子 の 欠 損 により 細 胞 壁 のマ ンナンタンパク 質 が 極 端 に 減 少 し[1] 結 果 として 細 胞 表 面 に β-グルカンが 露 出 し そ れにより 高 い 免 疫 賦 活 能 が 付 与 されたことが 示 唆 された パン 酵 母 に 新 たな 機 能 を 付 与 できることが 示 唆 され その 応 用 が 期 待 された しかし mcd4δ は 抗 生 物 質 耐 性 遺 伝 子 を 用 いた 遺 伝 子 組 換 え 株 で 生 育 にはソルビトールの 添 加 など 浸 透 圧 保 護 を 必 要 とし 添 加 してもその 増 殖 能 が 低 かった これらは 実 用 上 の 大 きな 問 題 となる そこで 第 3 章 では 企 業 よりパン 酵 母 の 実 用 株 を 入 手 し それを 遺 伝 子 組 換 えではな くエタンスルホン 酸 メチル(EMS)で 変 異 処 理 することで mcd4δ と 同 様 に 高 いマクロ ファージ 活 性 化 能 を 持 ち mcd4δ ほど 増 殖 能 が 極 端 に 低 下 しない 株 の 取 得 を 試 みた 変 異 処 理 操 作 は 2 回 行 い 有 望 株 として 1 回 目 に 2 株 (AP-57 と AQ-37) 2 回 目 に 1 株 (BD-40)を 取 得 した さらに これら 取 得 株 の 各 種 性 状 についても 解 析 した 3.2 材 料 と 方 法 3.2.1 菌 株 と 培 地 オリエンタル 酵 母 工 業 ( 株 )から 提 供 されたパン 酵 母 S. cerevisiae y-21(mata ura3δ0) を 使 用 しこれを 親 株 とした また 第 2 章 で 用 いた 実 験 室 酵 母 変 異 株 mcd4δ(mata met15δ1 leu2δ0 lys2δ0 ura3δ0)を 比 較 に 使 用 した 酵 母 の 培 養 には YPD と YPDS を 培 地 に 用 い 固 体 培 地 には 2%の 寒 天 を 添 加 した 実 験 には 30 で 対 数 増 殖 期 (12 時 間 mcd4δ は YPDS で 36 時 間 )まで 培 養 した 酵 母 を 用 いた 細 胞 壁 の 変 異 により SDS に 対 24

する 感 受 性 が 高 まる 傾 向 が 知 られていた[1 4] そのため 細 胞 壁 変 異 株 の 選 抜 には 0.02%の SDS を 含 む 1/5YPD 培 地 (YPD の 培 地 成 分 の 1/5 量 )を 用 いた 3.2.2 細 胞 壁 変 異 株 の 選 抜 y-21 株 を 用 い 次 のように 変 異 処 理 した[5] 4 ml の YPD 液 体 培 地 を 含 む 試 験 管 を 用 い 30 で 一 晩 培 養 し 菌 体 を 遠 心 分 離 により 回 収 し PBS(0.8% 塩 化 ナトリウム 0.02% 塩 化 カリウム 0.29%リン 酸 水 素 二 ナトリウム 十 二 水 和 物 0.02%リン 酸 二 水 素 カリ ウム;pH 7.4)で 2 度 洗 浄 した 0.1 M リン 酸 緩 衝 液 (ph 7.0)に 懸 濁 した EMS を 酵 母 の 生 存 率 が 10% 程 度 になる 条 件 で 添 加 し 30 で 1 時 間 ゆっくり 振 とうした 細 胞 は 遠 心 分 離 により 回 収 し 5%のチオ 硫 酸 ナトリウム 溶 液 で 2 度 洗 浄 し 滅 菌 水 に 懸 濁 後 YPDS 寒 天 培 地 に 塗 布 した 生 じたコロニーを 滅 菌 した 爪 楊 枝 で YPD 固 体 培 地 に 移 し 培 養 し そこで 生 育 した 株 について 1/5YPD 固 体 培 地 と 0.02%の SDS を 含 む 1/5YPD 固 体 培 地 上 での 生 育 を 調 べた 浸 透 圧 が 低 い 条 件 で 親 株 より 生 育 が 悪 くなるもしくは SDS に 感 受 性 となる 株 を 選 抜 し これらを 細 胞 壁 変 異 株 とした 次 に 細 胞 壁 マンナン 量 を 蛍 光 染 色 により 評 価 した[6] マンナンに 特 異 的 に 結 合 する 蛍 光 試 薬 フルオレセインイソチオシアネート 標 識 コンカナバリン A(ConA-FITC; シグ マアルドリッチ)を 使 用 して 染 色 した 細 胞 を YPD 固 体 培 地 で 2 日 間 培 養 し 爪 楊 枝 でかきとり PBS に 懸 濁 した ConA-FITC を 0.1 mg/ml になるように 添 加 し 室 温 で 30 分 間 静 置 した さらに PBS で 洗 浄 し 蛍 光 顕 微 鏡 を 用 いて 観 察 した 同 じ 露 出 時 間 で 写 真 を 撮 影 し 比 較 した 親 株 y-21 と 比 較 して FITC の 蛍 光 が 弱 い 変 異 株 を 選 抜 した 3.2.3 マクロファージ 活 性 化 能 の 評 価 マクロファージ 活 性 化 能 は 一 定 細 胞 数 または 一 定 乾 燥 細 胞 重 量 の 酵 母 とマクロファ ージを 接 触 させたときにマクロファージから 分 泌 される TNF-α 量 で 評 価 した 一 定 細 胞 数 での 接 触 では 3 ml の YPD 液 体 培 地 を 含 む 試 験 管 で 対 数 増 殖 期 まで 培 養 した 酵 母 を 使 用 し 第 2 章 に 記 載 したように TNF-α 量 を 活 性 化 の 指 標 として 測 定 した 一 定 重 25

量 の 条 件 では 次 のように 測 定 した 50 ml の YPD 液 体 培 地 で 対 数 増 殖 期 まで 培 養 し た 酵 母 を 遠 心 分 離 で 回 収 し PBS で 洗 浄 した 後 70%エタノールで 1 時 間 以 上 固 定 した その 後 凍 結 乾 燥 し 乾 燥 重 量 を 測 定 した RPMI-1640 培 地 に 100 μg/ml もしくは 600 μg/ml になるように 乾 燥 酵 母 を 懸 濁 し マクロファージ(1.0 10 6 cells/ml)と 1:1 で 混 合 した 酵 母 の 最 終 濃 度 は 50 μg/ml もしくは 300 μg/ml マクロファージは 5.0 10 5 cells/ml で 行 った 6 時 間 接 触 させた 後 ELISA により TNF-α 量 を 測 定 した 3.2.4 増 殖 と CO 2 発 生 量 の 測 定 増 殖 能 は 次 のように 評 価 した OD 600 が 0.05 になるように 3 ml の YPD あるいは YPDS 液 体 培 地 に 酵 母 を 植 菌 し 30 で 試 験 管 培 養 を 行 い OD 600 の 値 の 経 時 変 化 から 評 価 した また 第 2 章 と 同 様 に 100 ml の YPD 培 地 で 培 養 し 培 養 後 の 菌 体 の 乾 燥 重 量 から 評 価 した 発 酵 能 は 酵 母 から 発 生 した CO 2 量 から 評 価 した 細 胞 を OD 600 が 0.1になるように YPD 液 体 培 地 を 用 い 調 製 した 酵 母 懸 濁 液 20 ml を 含 むシャーレを CO 2 センサー(CO 2 recorder MCH-383-SD;Lutron Electronic Enterprise)を 搭 載 した 5 L デシケーター( 密 閉 系 )の 中 で 30 6 時 間 静 置 した その 測 定 値 から 発 酵 能 を 評 価 した 3.2.5 細 胞 壁 解 析 酵 母 細 胞 壁 の 主 成 分 である β-グルカンを 構 成 するグルコースの 量 とマンナンを 構 成 するマンノース 量 は 次 のように 測 定 した [7] 50 ml の YPD 液 体 培 地 で 対 数 増 殖 期 ま で 培 養 した 酵 母 を 遠 心 分 離 で 回 収 し PBS で 2 度 洗 浄 した 細 胞 は 10 mm トリス 塩 酸 緩 衝 液 (ph 8.0)に 懸 濁 し 適 宜 氷 上 で 冷 やしながら ガラスビーズを 用 いて 破 砕 し 3,800 g で 5 分 の 遠 心 で 細 胞 壁 画 分 を 回 収 し 凍 結 乾 燥 した 細 胞 壁 1 mg に 18.5 M 硫 酸 を 75 μl 加 え 3 時 間 室 温 で 静 置 した 懸 濁 液 を 蒸 留 水 で 1 ml に 希 釈 し 100 で 4 時 間 加 熱 した 氷 冷 し 飽 和 水 酸 化 バリウムで 中 和 した 上 清 を 遠 心 分 離 により 回 収 し 4 で 一 晩 静 置 した さらに 沈 澱 を 遠 心 分 離 で 除 去 し 上 清 を 凍 結 乾 燥 した 水 に 溶 解 26

し グ ル コ ー ス と マ ン ノ ー ス の 量 を HPLC で 測 定 し た カ ラ ム は Rezex RPM-Monosaccharide(300 7 mm;フェノメネクス) 検 出 器 は RID-6A detector( 島 津 製 作 所 )を 使 用 した 溶 出 には 超 純 水 を 用 い 流 速 は 1.0 ml/min カラム 温 度 は 78 で 行 った 細 胞 壁 キチンは キチンに 結 合 する 蛍 光 試 薬 カルコフロールホワイト M2R(CFW; シグマアルドリッチ)を 使 用 して 染 色 した[6] 3 ml の YPD 培 地 で 対 数 増 殖 期 まで 培 養 した 酵 母 を PBS で OD 600 が 1.0 になるように 調 製 し 染 色 に 使 用 した CFW は 0.1 mg/ml になるように 添 加 し 室 温 で 10 分 間 静 置 した PBS で 2 度 洗 浄 し 蛍 光 顕 微 鏡 で 観 察 した 同 じ 露 出 時 間 で 写 真 を 撮 影 し キチン 量 を 評 価 した 3.3 結 果 と 考 察 3.3.1 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 有 する 実 用 パン 酵 母 変 異 株 の 選 抜 変 異 処 理 操 作 は 2 回 行 った まず 1 回 目 のスクリーニング 結 果 を 以 下 に 記 す 目 的 とする 変 異 株 を 得 るために y-21 株 を EMS で 処 理 し 以 下 の 選 抜 を 行 った 変 異 処 理 後 に YPDS 固 体 培 地 上 で 生 育 したコロニー3120 個 からスクリーニングを 行 った mcd4δ とは 異 なり 浸 透 圧 保 護 を 必 要 とせず YPD で 生 育 できる 株 を 得 た ここで 細 胞 壁 変 異 株 は 低 浸 透 圧 や SDS に 対 して 感 受 性 が 高 まる 傾 向 が 見 られる[1 4] そのため 低 浸 透 圧 下 や SDS を 含 む 条 件 下 で 生 育 が 遅 れる 株 を 選 抜 した 1/5YPD 培 地 と 0.02%の SDS を 含 む 1/5YPD 培 地 上 での 生 育 を 目 視 で 比 較 し 親 株 y-21 と 比 較 して 生 育 が 遅 い 197 の 変 異 株 を 取 得 した 次 に 細 胞 壁 のマンナン 量 を 評 価 するため マンナンに 特 異 的 に 結 合 する 蛍 光 試 薬 ConA-FITC でマンナン 染 色 を 行 った( 図 3.1) その 結 果 mcd4δ と 同 様 に y-21 株 と 比 較 して 弱 い 蛍 光 つまりマンナンの 減 少 を 示 す 株 を 4 種 取 得 した(I-24 AC-12 AP-57 AQ-37) 目 視 による 観 察 では 判 断 が 難 しかったため 少 なくとも 3 回 染 色 を 行 い マ ンナンの 減 少 に 関 して 再 現 性 が 得 られた 株 のみを 選 抜 した 27

図 3.1 ConA-FITC によるマンナンの 染 色 スケールバーは 10 μm を 示 す 写 真 は 同 じ 露 出 時 間 で 撮 影 した 次 に 得 られた 4 種 の 変 異 株 について 酵 母 細 胞 の 接 触 によるマクロファージ 活 性 化 を TNF-α 分 泌 量 を 指 標 として 調 べた( 図 3.2 A) 酵 母 の 細 胞 数 を 一 定 にして 分 泌 量 を 評 価 した 結 果 親 株 に 用 いた y-21 株 自 身 でも TNF-α の 分 泌 を 促 進 させる 活 性 化 能 を 有 していた 変 異 株 については TNF-α 分 泌 量 が I-24 株 と AC-12 株 では y-21 株 とほぼ 同 じだった 一 方 AP-57 株 と AQ-37 株 ではその 分 泌 量 は y-21 株 に 比 べ 顕 著 に 高 く 培 地 の 値 を 引 いて 活 性 化 能 を 評 価 すると 2 倍 以 上 高 かった また AQ-37 株 の 分 泌 量 は 実 験 室 酵 母 の 変 異 株 mcd4δ よりも 高 かった 上 記 では 細 胞 数 で 評 価 したが AQ-37 株 は 細 胞 が 大 きく 偽 菌 糸 状 の 形 態 を 示 していた 上 記 の 条 件 では 細 胞 の 大 きさも 影 響 すると 考 えられた また 偽 菌 糸 状 の 形 態 を 取 ると 細 胞 数 がカウントしにくく 誤 差 が 生 じやすいと 考 えられた そのため 酵 母 の 乾 燥 重 量 を 一 定 にした 接 触 により 活 性 化 能 を 評 価 した その 結 果 を 図 3.2 B に 示 す AP-57 株 と AQ-37 株 は y-21 株 よりも 高 い TNF-α 量 を 示 したが AQ-37 株 は mcd4δ よりもその 分 泌 量 は 低 かった 一 定 細 胞 数 及 び 一 定 乾 燥 重 量 との 接 触 によるマクロファージ 活 性 化 能 の 結 果 を 総 合 して AP-57 株 と AQ-37 株 は 高 いマウスマクロファージ 活 性 化 能 を 有 すると 判 断 した 28

図 3.2 マクロファージ 活 性 化 能 の 評 価 (スクリーニング 1 回 目 ) 酵 母 とマクロファージを 6 時 間 接 触 させ 培 地 中 に 分 泌 した TNF-α 量 を ELISA で 測 定 した 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 2 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す A: 一 定 細 胞 数 の 酵 母 との 接 触 によりマクロファージが 分 泌 した TNF-α 量 を 示 す 最 終 濃 度 で 酵 母 (1.5 10 7 cells/ml)とマクロファージ(5.0 10 5 cells/ml)を 接 触 させた LPS(100 ng/ml)と 培 地 (RPMI-1640)はコントロールとして 使 用 した B: 一 定 乾 燥 重 量 の 酵 母 との 接 触 によりマクロファージが 分 泌 した TNF-α 量 を 示 す 最 終 濃 度 で 酵 母 (50 μg/ml)とマクロフ ァージ(5 10 5 cells/ml)を 接 触 させた LPS(50 ng/ml)と 培 地 (RPMI-1640)はコントロー ルとして 使 用 した 29

さらに 多 くの 候 補 株 を 得 るために 上 記 と 同 様 のスクリーニングをもう 一 度 行 った その 結 果 を 以 下 にまとめる y-21 株 を EMS で 処 理 した 後 YPDS 固 体 培 地 上 で 培 養 した 生 育 したコロニー500 個 を YPD 培 地 に 移 し y-21 株 と 同 等 に 生 育 した 株 を 選 抜 した これらについて さら に 1/5YPD 培 地 と 0.02%の SDS を 含 む 1/5YPD 培 地 上 での 生 育 を 調 べた 結 果 として 40 個 の 細 胞 壁 変 異 株 を 選 抜 した 次 に マンナン 量 が 減 少 した 株 を 選 抜 するため ConA-FITC を 用 いマンナン 染 色 を 行 った 前 回 と 同 様 に 再 現 性 を 確 認 するために 3 度 染 色 実 験 を 行 った 結 果 AP-57 株 や AQ-37 株 と 同 様 に 弱 い 蛍 光 を 示 す 1 株 (BD-40)を 選 抜 した( 図 3.3) 図 3.3 ConA-FITC によるマンナンの 染 色 スケールバーは 10 μm を 示 す 写 真 は 同 じ 露 出 時 間 で 撮 影 した 30

さらに 得 られた BD-40 株 について TNF-α 量 を 活 性 化 の 指 標 として 一 定 細 胞 数 の 酵 母 との 接 触 によるマクロファージ 活 性 化 能 を 調 べた( 図 3.4 A) BD-40 株 では 図 3.2 の AP-57 株 や AQ-37 株 の 結 果 と 同 様 に y-21 株 より 分 泌 量 が 高 く 培 地 の 値 を 引 いて 活 性 化 能 を 評 価 すると 2 倍 以 上 高 かった BD-40 株 も AQ-37 株 と 同 様 に 細 胞 が 大 きく 偽 菌 糸 状 の 形 態 を 示 したので 一 定 乾 燥 重 量 の 酵 母 との 接 触 による 活 性 化 能 も 測 定 した ( 図 3.4 B) その 結 果 BD-40 株 は y-21 株 よりも 高 い TNF-α 量 を 示 し 高 いマクロフ ァージ 活 性 化 能 を 有 すると 判 断 した 以 上 の 結 果 から y-21 株 を 変 異 処 理 することにより 有 望 株 として 3 株 ( AP-57 AQ-37 BD-40)が 取 得 された これらの 菌 株 の 性 状 を 3.3.2 以 降 で 検 討 した 31

図 3.4 マクロファージ 活 性 化 能 の 評 価 (スクリーニング 2 回 目 ) 酵 母 とマクロファージを 6 時 間 接 触 させ 培 地 中 に 分 泌 した TNF-α 量 を ELISA で 測 定 した LPS (50 ng/ml)と 培 地 (RPMI-1640)はコントロールとして 使 用 した 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 3 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す A: 一 定 細 胞 数 の 酵 母 との 接 触 によりマクロファージが 分 泌 した TNF-α 量 を 示 す 最 終 濃 度 で 酵 母 (1.5 10 7 cells/ml)とマクロファージ(5.0 10 5 cells/ml)を 接 触 させた B: 一 定 乾 燥 重 量 の 酵 母 との 接 触 によりマクロファージが 分 泌 した TNF-α 量 を 示 す 最 終 濃 度 で 酵 母 (300 μg/ml)とマクロ ファージ(5 10 5 cells/ml)を 接 触 させた 32

3.3.2 増 殖 能 と 発 酵 能 の 評 価 細 胞 壁 変 異 株 の 中 には 極 端 に 増 殖 能 が 低 下 する 株 があるため[1 8 9] 選 抜 株 の 液 体 培 地 での 増 殖 能 を 評 価 した 濁 度 による 測 定 では BD-40 株 の 増 殖 速 度 は y-21 株 よ り 遅 く AP-57 株 は BD-40 株 より 遅 いが 48 時 間 後 の AP-57 株 と BD-40 株 の 濁 度 は y-21 株 とほぼ 同 等 だった( 図 3.5 A) AQ-37 株 の 増 殖 速 度 は BD-40 株 よりも 遅 く 48 時 間 後 の 濁 度 は AP-57 株 と BD-40 株 より 低 かった 図 3.5 B に 示 す 浸 透 圧 保 護 下 (YPDS 培 地 )での 培 養 でもほぼ 同 様 の 傾 向 が 見 られた( 図 3.5 B) AP-57 株 と AQ-37 株 と BD-40 株 はともに 浸 透 圧 保 護 剤 の 有 無 に 関 わらず 増 殖 したが y-21 株 よりも 増 殖 速 度 は 遅 かっ た しかし 先 行 研 究 で 取 得 した mcd4δ よりも 明 らかに 増 殖 能 は 高 かった AQ-37 株 の 増 殖 速 度 が y-21 株 に 比 べ 遅 かったため 坂 口 フラスコ(100 ml YPD 培 地 ) で 培 養 を 行 い 得 られた 菌 体 重 量 でその 増 殖 能 を 評 価 した( 図 3.6) AQ-37 株 の 24 時 間 培 養 後 の 乾 燥 重 量 は y-21 株 の 90% 程 度 だった 従 って 試 験 管 培 養 で 濁 度 を 用 いて 評 価 した 時 ほど 増 殖 能 の 低 下 は 見 られなかった 実 験 結 果 の 違 いが 出 たのは 培 養 方 法 が 異 な るためかもしれない 実 用 上 はスケールアップし 培 養 するため 100 ml 培 養 の 方 が 実 際 に 近 いと 考 えられ る ここでは AQ-37 株 の 増 殖 能 は 実 用 上 それほど 問 題 ではないと 判 断 した 33

図 3.5 増 殖 能 の 評 価 ( 濁 度 による 測 定 ) A:YPD 培 地 における 各 菌 株 の 増 殖 曲 線 B:YPDS 培 地 における 各 菌 株 の 増 殖 曲 線 各 シン ボルは y-21( ) AP-57( ) AQ-37( ) BD-40( ) mcd4δ( )を 示 す 結 果 は 異 な る 培 養 の 酵 母 を 用 いた 2 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す 34

図 3.6 増 殖 能 の 評 価 ( 菌 体 重 量 ) 24 時 間 培 養 後 の 菌 体 を 回 収 し 凍 結 乾 燥 後 の 乾 燥 重 量 を 測 定 した 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 2 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバーはその 標 準 偏 差 を 示 す 次 に 取 得 変 異 株 の 発 酵 能 を CO 2 発 生 量 から 調 べた 図 3.7 に 示 す 結 果 から AQ-37 株 は y-21 株 と 同 等 の CO 2 発 生 量 を 示 し 同 程 度 の 発 酵 能 を 持 つことが 示 唆 された しか し AP-57 株 は y-21 株 よりも CO 2 発 生 量 が 低 く 発 酵 能 の 低 下 が 示 唆 された そのた め AP-57 株 は 発 酵 食 品 以 外 への 応 用 に 適 しているかもしれない また BD-40 株 は 反 対 に y-21 株 よりも CO 2 発 生 量 が 高 く 変 異 により 発 酵 能 が 上 昇 した 可 能 性 が 示 唆 され た 従 って 発 酵 食 品 への 応 用 には AQ-37 株 や BD-40 株 が 有 望 であると 考 えられる 35

図 3.7 CO 2 発 生 量 初 期 OD 600 を 0.1 とし YPD 培 地 中 で CO 2 発 生 量 を 測 定 した 各 シンボルは y-21( ) AP-57 ( ) AQ-37( ) BD-40( )を 示 す 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 2 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す 3.3.3 細 胞 壁 解 析 変 異 株 をスクリーニングする 過 程 において 行 った ConA-FITC 染 色 では 細 胞 壁 マン ナンの 減 少 が 示 唆 された そのため ここでは 定 量 的 な 解 析 を 行 った 細 胞 壁 β-グルカ ンを 構 成 するグルコース 量 と 細 胞 壁 マンナンを 構 成 するマンノース 量 は HPLC を 用 い て 定 量 した マンナンは 細 胞 壁 最 外 層 に 位 置 し β-グルカンを 覆 っている それゆえ マ ンノース 量 に 対 するグルコース 量 の 比 は 細 胞 表 面 の β-グルカンの 露 出 の 程 度 を 表 すと 考 えられる 各 変 異 株 から 常 法 に 従 って 細 胞 壁 画 分 を 調 製 した 硫 酸 で 細 胞 壁 成 分 を 処 理 ( 加 水 分 解 )し 得 られたグルコースとマンノースの 量 を HPLC で 測 定 した 各 変 異 株 の 細 胞 壁 36

乾 燥 重 量 当 たりのグルコース 量 は y-21 株 と 大 きく 変 動 していなかったが 予 想 された 通 りマンノース 量 は 低 下 していた( 図 3.8) 取 得 した 変 異 株 (AP-57 AQ-37 BD-40) のいずれにおいても グルコース 量 に 対 するマンノース 量 の 比 は 減 少 していた 従 って β-グルカンの 表 面 への 露 出 度 が 増 加 したことが 示 唆 され これが 高 いマクロファージ 活 性 化 能 の 一 因 であると 考 えられる しかし この 低 下 量 は 先 行 研 究 で 得 られた mcd4δ に 比 べるとそれほど 極 端 ではなかった[10] この 考 察 とマクロファージ 活 性 化 の 要 因 に 関 する 検 討 については 第 5 章 で 述 べる 37

図 3.8 細 胞 壁 のグルコース 量 とマンノース 量 細 胞 壁 を 硫 酸 加 水 分 解 しグルコース 量 とマンノース 量 を HPLC で 測 定 した 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 2 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す A:グルコ ース(β-グルカン) 量 B:マンノース(マンナン) 量 38

次 に 細 胞 壁 成 分 の 一 つであるキチン 量 について キチンに 結 合 する 蛍 光 試 薬 CFW を 用 いて 解 析 した( 図 3.9) AP-57 株 と AQ-37 株 では CFW の 蛍 光 は y-21 株 より 強 くな り BD-40 株 では CFW の 蛍 光 は y-21 株 よりわずかに 強 かった これらの 結 果 から 変 異 による 細 胞 壁 強 度 の 減 少 をキチン 量 の 増 加 によって 補 っていることが 示 唆 された こ の 蛍 光 強 度 の 増 加 は 細 胞 壁 構 造 の 変 化 により CFW がキチンに 結 合 しやすくなったとも 考 えられるが CFW は 分 子 量 916.98 と 小 さく 細 胞 壁 [11]を 透 過 でき 今 回 の 実 験 で は 過 剰 量 の CFW を 加 えているため ここではキチン 量 が 増 加 していると 考 えた 実 際 に どの 程 度 キチン 量 が 増 加 したかモルガン ネルソン 法 [12]を 用 いて 今 後 定 量 する 必 要 がある パン 酵 母 で 報 告 されている 細 胞 壁 モデル( 図 1.2)では キチンは β-グルカン 層 より も 内 側 すなわち 細 胞 質 側 に 位 置 する そのため キチン 量 が 増 加 しても β-グルカンの 露 出 には 大 きな 影 響 は 与 えないと 考 えられた 図 3.9 CFW によるキチン 染 色 スケールバーは 10 μm を 示 す 写 真 は 同 じ 露 出 時 間 で 撮 影 した 39

3.4 まとめ 企 業 から 入 手 した 実 用 パン 酵 母 を 材 料 に マクロファージ 活 性 化 能 の 高 い 酵 母 の 取 得 を 目 指 した 将 来 的 な 利 用 も 考 慮 し 遺 伝 子 組 換 え 操 作 ではなくアルキル 化 剤 EMS を 用 いた 変 異 処 理 により 目 的 株 の 取 得 に 取 り 組 んだ スクリーニングでは 浸 透 圧 感 受 性 SDS 感 受 性 マンナン 染 色 の 結 果 を 選 抜 基 準 に 取 り 入 れた 最 終 的 には TNF-α 分 泌 量 を 指 標 としたマクロファージ 活 性 化 能 で 評 価 し EMS 処 理 後 の 合 計 3620 株 のコロ ニーから 有 望 株 として 3 株 (AP-57 AQ-37 BD-40)を 取 得 した 従 って 異 なる 変 異 処 理 を 用 いて 他 にも 性 質 が 異 なる 変 異 株 が 取 得 できる 可 能 性 は 十 分 あると 考 えられる 取 得 株 の 細 胞 壁 成 分 について 解 析 すると いずれの 株 も y-21 株 と 比 較 して β-グルカ ン 量 ( 分 解 後 のグルコース 量 )に 大 きな 変 化 は 無 かったが マンナン 量 ( 分 解 後 のマン ノース) 量 は 減 少 する 傾 向 が 見 られた またキチン 量 について 蛍 光 染 色 を 用 い 解 析 し た 結 果 いずれの 取 得 変 異 株 も 増 加 する 傾 向 が 見 られ 細 胞 壁 強 度 の 低 下 をキチンの 増 加 で 補 っていることが 示 唆 された 取 得 変 異 株 の 高 い 活 性 化 能 の 理 由 の 一 つは マンナンの 減 少 による β-グルカンの 露 出 の 増 加 と 考 えられるが この 減 少 量 は mcd4δ ほど 極 端 ではなかった 他 の 理 由 として β- グルカンの 構 造 が 変 化 し 活 性 化 能 に 影 響 を 与 えている 可 能 性 があり これについては 第 5 章 で 述 べる 取 得 した 変 異 株 の 増 殖 能 や 発 酵 能 は 菌 株 によって 異 なった AP-57 株 と BD-40 株 は 増 殖 能 が 低 下 し AQ-37 株 はさらに 低 かった しかし 100 ml の 培 養 で 得 られる 菌 体 量 は 極 端 には 減 少 しなかった 発 酵 能 については AP-57 株 で 低 下 が 見 られ パンの 発 酵 に 利 用 する 場 合 は 不 利 な 性 質 となる 総 合 すると BD-40 株 が 優 れているが 他 の 株 も 十 分 に 応 用 可 能 な 有 望 株 と 判 断 した 取 得 株 における 高 い 活 性 化 能 や 細 胞 壁 成 分 の 変 化 などに 関 与 する 変 異 部 位 の 同 定 に ついては 第 4 章 で 述 べる また 本 章 で 得 られた 変 異 株 は 一 倍 体 株 で 実 用 的 には 遺 伝 的 に 安 定 な 二 倍 体 株 の 構 築 が 必 要 である 取 得 株 をもとにした 二 倍 体 の 構 築 については 第 5 章 で 述 べる 40

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第 4 章 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 有 する 実 用 パン 酵 母 変 異 株 の 変 異 部 位 の 同 定 4.1 はじめに 第 3 章 では 実 用 パン 酵 母 の 一 倍 体 株 を 変 異 処 理 し 得 られたコロニーから 浸 透 圧 や SDS に 対 する 感 受 性 やマンナン 染 色 の 結 果 を 指 標 とし 選 抜 を 行 い 最 終 的 に 高 いマクロ ファージ 活 性 化 能 を 持 つ 3 株 (AP-57 AQ-37 BD-40)を 取 得 した これらの 株 は 細 胞 表 面 のマンナン 量 が 減 少 し β-グルカンが 露 出 する 傾 向 が 示 唆 された また 細 胞 壁 キチンの 蛍 光 染 色 からキチン 量 が 増 加 する 傾 向 も 見 られた 先 行 研 究 および 第 2 章 では 高 いマクロファージ 活 性 化 能 と 遺 伝 子 変 異 の 関 係 につい て GPI アンカー 合 成 に 関 わる MCD4 遺 伝 子 の 欠 損 が 高 い 活 性 化 能 を 導 くことを 明 らか にしている しかし それ 以 外 の 情 報 はなく 酵 母 によるマクロファージ 活 性 化 の 機 構 を 理 解 するためには さらに 詳 しく 遺 伝 的 な 影 響 を 調 べる 必 要 がある MCD4 遺 伝 子 欠 損 株 と 第 3 章 で 得 られた 変 異 株 では 増 殖 能 や 細 胞 壁 マンナン 量 の 変 化 の 割 合 が 異 なっ ていた そこで 第 4 章 では 第 3 章 で 取 得 した 変 異 株 の 変 異 遺 伝 子 の 同 定 を 酵 母 のゲノ ムライブラリーを 用 いて 試 みた また DNA 塩 基 配 列 解 析 により 変 異 部 位 の 同 定 も 試 みた 4.2 材 料 と 方 法 4.2.1 菌 株 と 培 地 第 3 章 で 獲 得 した 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 有 する AP-57 株 (MATa ura3δ0) AQ-37 株 ( MATa ura3δ0) BD-40 株 ( MATa ura3δ0)を 変 異 部 位 の 同 定 のために 用 いた 比 較 のために 実 用 パン 酵 母 の 親 株 y-21(mata ura3δ0)を 使 用 した 培 地 には 第 3 章 と 同 じ YPD に 加 え YNB(0.17%イーストニトロゲンベース 0.5% 硫 酸 アンモニウム 2%グルコース)を 用 い 必 要 に 応 じて 栄 養 素 (60 μg/ml ロイシン 20 μg/ml ヒスチジ 43

ン 20 μg/ml メチオニン 30 μg/ml リシン 20 μg/ml ウラシル)を 加 えた また 浸 透 圧 保 護 が 必 要 な 時 は 0.6 M のソルビトールを 添 加 した(YNBS) 固 体 培 地 には 2%の 寒 天 を 添 加 した プラスミドの 増 幅 は E. coli JM109 株 (ニッポンジーンまたは RBC Bioscience)に 形 質 転 換 し 50 μg/ml のアンピシリンを 含 む LB 培 地 (1%トリプトン 0.5% 酵 母 エキス 1% 塩 化 ナトリウム)で 培 養 後 Wizard plus SV minipreps DNA purification system(プロメガ)または HiYield TM plasmid mini kit(rbc Bioscience)で 菌 体 からプラ スミドを 抽 出 した 4.2.2 ゲノムライブラリーを 用 いた 形 質 転 換 ゲノムライブラリーとして S. cerevisiae Library YCp50 CEN BANK CenBank A (ATCC 37415) と CenBank B (ATCC 37415B)を 使 用 した このライブラリーには 選 択 マーカーとしての URA3 遺 伝 子 を 持 つ YCP50( 低 コピープラスミド)に S. cerevisiae のゲノムが 挿 入 されている[1] 酵 母 の 形 質 転 換 には Fast-Yeast transformation kit(geno Technology)を 使 用 した 酵 母 は 4 ml の YPD 液 体 培 地 を 含 む 試 験 管 を 用 い 30 で 16 時 間 培 養 した 遠 心 分 離 に より 回 収 し Wash solution 4 ml で 洗 浄 し Competent solution 400 μl に 懸 濁 した 懸 濁 液 50 μl を 5 μl のプラスミド 溶 液 と 混 合 し Transformation solution 500 μl に 添 加 した 懸 濁 後 30 で 45 分 インキュベートし YNB 固 体 培 地 を 用 いて 30 で 3 日 間 培 養 した ウラシルの 選 択 性 から 生 育 したコロニーを 形 質 転 換 株 とし 変 異 遺 伝 子 の 同 定 に 使 用 した 4.2.3 相 補 プラスミドをもつ 株 の 選 抜 取 得 した 形 質 転 換 株 から 変 異 を 相 補 した 株 の 選 抜 は 次 のように 行 った まず ソルビ トールを 用 い 浸 透 圧 への 影 響 を 調 べた YNB および YNBS の 固 体 培 地 を 使 用 して 30 で 3 日 間 培 養 した 両 培 地 で 形 質 転 換 株 の 生 育 を 比 較 し ともに 親 株 y-21 と 同 程 度 の 生 育 を 示 す 株 を 選 抜 した 次 に 細 胞 壁 マンナン 量 を 第 3 章 で 示 した ConA-FITC 染 色 44

によって 比 較 した 変 異 株 の 弱 い 蛍 光 が y-21 株 と 同 程 度 に 回 復 した 株 を 選 抜 した こ の 時 同 時 に 細 胞 形 態 についての 観 察 を 行 い y-21 株 と 同 様 の 形 態 に 戻 った 株 を 選 抜 し た 4.2.4 酵 母 からのプラスミド 回 収 選 抜 株 からのプラスミド 抽 出 は 次 のように 行 った[2] YNB 液 体 培 地 4 ml を 含 む 試 験 管 を 用 い 30 で 16 時 間 培 養 し 遠 心 回 収 した 滅 菌 水 で 菌 体 を 洗 浄 し 300 μl の Disruption buffer (ph 8.0 の 10 mm トリス 塩 酸 緩 衝 液 1 mm エチレンジアミン 四 酢 酸 100 mm 塩 化 ナトリウム 1%ドデシル 硫 酸 ナトリウム 2%トリトン X-100)に 懸 濁 した ガラスビーズと 300 μl のフェノール クロロホルム イソアミルアルコール(25:24:1) 溶 液 を 加 え 2 分 間 撹 拌 した 遠 心 分 離 により 上 清 を 回 収 し 300 μl のフェノール クロ ロホルム イソアミルアルコール 溶 液 を 加 え 撹 拌 した 遠 心 分 離 により 上 清 を 回 収 し 30 μl の 3 M 酢 酸 ナトリウムと 300 μl のイソプロパノールを 加 え 混 合 した 遠 心 分 離 で 上 清 を 除 去 し 70%エタノールでリンスした 遠 心 後 の 上 清 を 除 去 し 減 圧 乾 燥 した さらに 30 μl の 17%ポリエチレングリコール 6,000 と 8 μl の 4 M 塩 化 ナトリウムを 加 えて 温 和 に 混 合 し 1 時 間 氷 冷 した 遠 心 分 離 により 沈 澱 を 回 収 し 70%エタノールで リンスし 滅 菌 水 20 μl に 懸 濁 しプラスミド 溶 液 を 得 た これを 用 いて E. coli を 形 質 転 換 し 増 幅 した 後 酵 母 を 再 度 形 質 転 換 し 形 質 転 換 株 の 形 態 と 細 胞 壁 マンナン 量 を 確 認 した 4.2.5 相 補 プラスミドの 配 列 解 析 形 態 や 細 胞 壁 マンナンなどの 形 質 を 相 補 したプラスミドについてその 挿 入 断 片 の 塩 基 配 列 を 解 析 した 塩 基 配 列 の 決 定 はタカラバイオ( 株 )に 委 託 し アプライドバイオ システムズ 3730xl DNA analyzer(ライフテクノロジーズジャパン)を 用 いて 行 われた 挿 入 断 片 の S. cerevisiae のゲノム 上 の 位 置 は データベース[3]を 用 い BLAST 検 索 に より 決 定 した 45

4.2.6 プラスミドの 構 築 変 異 を 相 補 する 遺 伝 子 を 同 定 するために 得 られたプラスミド(YCP50-AQ37)をも とに 3 種 のプラスミドを 構 築 した( 図 4.1) 使 用 する 制 限 酵 素 はニッポンジーンから 購 入 した 酵 素 反 応 後 の DNA の 回 収 は 電 気 泳 動 後 のゲルから 目 的 のサイズのバンド を 切 り 出 し HiYield TM gel/pcr DNA fragment extraction kit (RBC Bioscience)で 抽 出 精 製 した ライゲーションは Ligation-convenience kit(ニッポンジーン)を 用 い 16 1 時 間 行 った 以 下 に 3 種 のプラスミド 構 築 について 記 す なお 目 的 とするプラスミド か 否 かは 適 宜 制 限 酵 素 処 理 を 行 い 反 応 後 に 生 じた 断 片 のサイズから 判 断 した 1 YCP50-G N:YCP50-AQ37(18,140 bp)を BamHI で 37 一 晩 処 理 し 生 じた 3 種 の DNA 断 片 のうち 最 も 大 きな 断 片 (12,549 bp)を 回 収 した これをセルフライ ゲーションし 構 築 した 2 prs426-m G:まず prs426[4]を BamHI で 37 一 晩 処 理 し セルフライゲ ーションを 防 ぐために 仔 牛 小 腸 由 来 アルカリホスファターゼ(ニッポンジーン) を 用 い 60 で 1 時 間 脱 リン 酸 化 処 理 した さらに YCP50-AQ37 を BglII で 37 一 晩 処 理 し 生 じた 5,390 bp の 断 片 を prs426 の BamHI サイトに 挿 入 し 構 築 した 3 YCP50-NDD1:YCP50-G N を HindIII で 37 一 晩 処 理 し 生 じた 2 種 の DNA 断 片 のうち 最 も 大 きな 断 片 (10,571 bp)を 回 収 した これをセルフライゲーショ ンし 構 築 した 46

図 4.1 構 築 したプラスミドに 挿 入 されている S. cerevisiae の DNA 断 片 太 線 はベクター(YCP50) 由 来 の DNA を 示 す 4.2.7 変 異 を 相 補 する 遺 伝 子 の 決 定 構 築 したプラスミドを 酢 酸 リチウム 法 で 導 入 し 酵 母 を 形 質 転 換 した[2] 酵 母 を 50 μl の Transformation buffer (20%ポリエチレングリコール 6,000 200 mm 酢 酸 リチ ウム 100 mm ジチオスレイトール)に 懸 濁 し 遠 心 分 離 により 菌 体 を 回 収 した 50 μl の Transformation buffer 5 μl のキャリアーDNA(クロンテック)と 5 μl のプラスミド を 加 え 混 合 後 42 で 1 時 間 インキュベートした YNBS 固 体 培 地 に 塗 布 して 30 で 3 日 間 培 養 した 生 育 したコロニーの 細 胞 形 態 を 調 べ 形 態 が y-21 株 と 同 様 に 回 復 した 株 を 選 抜 した 変 異 を 相 補 する 株 から 抽 出 したプラスミドを 用 い 相 補 遺 伝 子 を 決 定 し た 47

4.2.8 変 異 株 の 表 現 型 相 補 に 関 する 実 験 4.2.8.1 細 胞 壁 解 析 ConA-FITC によるマンナン 染 色 からマンナン 量 の 変 化 を 観 察 した また CFW によ るキチン 染 色 を 第 3 章 のように 行 い キチン 量 の 変 化 を 観 察 した 細 胞 壁 タンパク 量 は 次 のように 測 定 した 50 ml の YNB 液 体 培 地 で 培 養 した 酵 母 を 用 い ビーズクラッシ ャーµT-01(Taitec)を 用 いてガラスビーズで 破 砕 し 第 3 章 に 記 載 したように 細 胞 壁 画 分 を 回 収 した この 細 胞 壁 を 2 mg/ml になるように 滅 菌 水 に 懸 濁 した タンパク 質 濃 度 の 測 定 はバイオ ラッドプロテインアッセイ(バイオ ラッド)を 用 いてブラッドフ ォード 法 で 行 った[5] ウシ 血 清 アルブミン(ニュー イングランド バイオラボ)を 標 準 タンパク 質 としタンパク 質 濃 度 を 決 定 した 4.2.8.2 増 殖 の 測 定 第 3 章 に 記 載 したように 3 ml の YNB 液 体 培 地 を 含 む 試 験 管 で 培 養 し OD 600 の 経 時 変 化 からその 増 殖 能 を 評 価 した 4.2.8.3 高 温 感 受 性 と CFW 感 受 性 感 受 性 試 験 は 次 のように 行 った[6] YNB 液 体 培 地 3 ml を 含 む 試 験 管 を 用 い 酵 母 を 30 で 一 晩 培 養 した YNB で OD 600 を 0.5 に 調 製 し 菌 液 を 1 倍 10 倍 100 倍 1000 倍 に 希 釈 した それぞれの 菌 液 を 5 μl ずつ 以 下 の 固 体 培 地 にスポットし 培 養 した 高 温 に 対 する 感 受 性 試 験 は YNB 培 地 を 用 い 37 で 培 養 し キチン 合 成 阻 害 を 介 して 生 育 を 阻 害 する CFW[7 9]に 対 する 感 受 性 試 験 は 150 μg/ml の CFW を 含 む YNB 培 地 を 用 い 30 で 培 養 した これらのコントロールとして YNB 培 地 を 用 い 30 で 培 養 し その 生 育 を 比 較 した 4.2.8.4 マクロファージ 活 性 化 能 の 評 価 YNB 培 地 で 培 養 した 酵 母 を 用 い 一 定 細 胞 数 の 酵 母 との 接 触 によるマクロファージ 48

活 性 化 能 を 第 2 章 や 第 3 章 に 記 載 したように 評 価 した 4.2.9 配 列 解 析 と 変 異 部 位 の 同 定 塩 基 配 列 決 定 に 使 用 する DNA は 次 のように 抽 出 した[2] YPD 固 体 培 地 で 2 日 間 培 養 した 酵 母 を 爪 楊 枝 でかきとり 100 μl の Lysis buffer (1 %トリトン X-100 50 mm 塩 化 ナトリウム 1 mm エチレンジアミン 四 酢 酸 ph 8.0 の 10 mm トリス 塩 酸 緩 衝 液 ) に 懸 濁 し 100 mg のガラスビーズを 加 えた 次 に フェノール クロロホルム イソア ミルアルコール(ニッポンジーン)を 100 μl 加 え ボルテックスで 10 分 攪 拌 後 遠 心 分 離 した 得 られた 上 清 15 μl を 100 μl の 滅 菌 水 に 加 え DNA 溶 液 とした 変 異 株 と 親 株 y-21 の NDD1 遺 伝 子 を 含 む DNA 断 片 を 2 種 の プ ラ イ マ ー ( 5 - ACCTAGTCGGCAATTTTTTCACCTG-3 と 5 - CTTCGTGCCATAAATTTGTGATCGTTC -3 )と TaKaRa Ex Taq (タカラバイオ)を 使 用 し PCR(94 で 2 分 保 温 し 94 で 30 秒 55 で 45 秒 72 で 3 分 を 30 サイクル 行 い 72 で 4 分 反 応 )により 増 幅 した 4.2.6 に 記 載 したように DNA を 抽 出 し 電 気 泳 動 後 バンドの 濃 さを DNA マーカ ー(ニッポンジーン)と 比 較 しその 濃 度 を 推 定 した 50 ng/μl に 濃 度 を 調 製 し DNA 配 列 の 決 定 をライフテクノロジーズジャパン( 株 )に 委 託 した 解 析 結 果 から ゲノム データベース( 実 験 室 酵 母 S288C 株 )の DNA 配 列 と 比 較 した 4.3 結 果 と 考 察 4.3.1 ゲノムライブラリーを 用 いた 形 質 転 換 株 から 相 補 プラスミドの 取 得 取 得 したマクロファージ 活 性 化 変 異 株 の 全 て(AP-57 AQ-37 BD-40)について 変 異 を 相 補 するプラスミドを S. cerevisiae のゲノムライブラリーから 探 索 した しかし AP-57 株 と BD-40 株 ではそれらの 形 質 を 相 補 した 株 は ゲノムライブラリーを 用 いた 形 質 転 換 株 から 得 られなかった その 理 由 として AP-57 株 と BD-40 株 では 複 数 の 変 異 遺 伝 子 がその 形 質 に 関 与 し 一 つの 遺 伝 子 だけでは 相 補 できないことも 考 えられる これ 以 降 では 相 補 株 が 得 られた AQ-37 株 の 結 果 について 説 明 する 49

ゲノムライブラリーを 使 用 して AQ-37 株 を 形 質 転 換 した 形 質 転 換 株 はウラシルの 栄 養 要 求 性 相 補 から 選 抜 し 703 コロニーを 得 た ここで YPD 固 体 培 地 より 栄 養 源 の 少 ない YNB 固 体 培 地 では 培 地 成 分 による 浸 透 圧 保 護 効 果 が 低 い そのため AQ-37 株 の 生 育 は YNB 培 地 を 用 いた 方 が 浸 透 圧 の 影 響 を 受 けやすく その 遅 延 の 様 子 が 明 確 になる 従 って YNB 培 地 を 用 い 形 質 転 換 株 の 生 育 に 対 するソルビトールの 添 加 の 影 響 を 調 べた 添 加 の 有 無 に 関 わらず y-21 株 と 同 様 に 生 育 できる 株 を 231 株 選 抜 した 次 に 231 株 すべてについてその 細 胞 形 態 観 察 や ConA-FITC を 用 いた 細 胞 壁 マンナン 量 の 解 析 を 行 った その 結 果 両 方 の 解 析 で y-21 株 と 同 様 の 表 現 型 を 示 す 1 株 を 取 得 し た( 図 4.2) この 形 質 転 換 株 からプラスミドを 抽 出 し YCP50-AQ37 と 命 名 した AQ-37 株 に 近 い 細 胞 形 態 を 示 す BD-40 株 では この YCP50-AQ37 を 使 用 して 形 質 転 換 しても 形 態 が y-21 株 のように 戻 らなかった( 図 4.3) そのため BD-40 株 は AQ-37 株 とは 異 なった 変 異 を 持 つと 判 断 した 図 4.2 ConA-FITC による 形 態 を 相 補 した 形 質 転 換 株 のマンナン 染 色 スケールバーは 10 μm を 示 す 写 真 は 同 じ 露 出 時 間 で 撮 影 した 50

図 4.3 YCP50-AQ37 を 使 用 して 形 質 転 換 した BD-40 株 の 細 胞 形 態 YCP50 はコントロールプラスミドとして 用 いた スケールバーは 5 μm を 示 す YCP50-AQ37 の YCP50 に 挿 入 されたゲノム 断 片 の 染 色 体 上 の 位 置 を 明 らかにするた め YCP50[1]の DNA 塩 基 配 列 情 報 を 利 用 し 断 片 両 端 付 近 の 塩 基 配 列 を 解 析 した 酵 母 のゲノムの 断 片 の 染 色 体 上 の 位 置 は 公 表 されているゲノムデータベースを 使 用 し て 決 定 した[3] その 結 果 この 断 片 は 15 番 染 色 体 の 1,026,367 1,036,556 bp に 位 置 し ていた この 領 域 には 不 完 全 な 1 つの 遺 伝 子 ( 開 始 コドンを 含 まない SCP1)と 完 全 な 5 種 の 遺 伝 子 (RAD17 RPS12 MRS6 GPB1 NDD1)を 含 んでいた( 図 4.1) 4.3.2 変 異 遺 伝 子 の 同 定 AQ-37 株 は 偽 菌 糸 形 態 を 持 つ 傾 向 があった( 図 3.1) 形 態 相 補 の 確 認 が 最 も 簡 単 で 評 価 しやすいため 主 として 形 態 相 補 から 遺 伝 子 の 同 定 を 進 めた 前 述 の 6 つの 遺 伝 子 の うち GPB1 遺 伝 子 と NDD1 遺 伝 子 の 変 異 株 は 偽 菌 糸 形 態 を 示 すと 報 告 されている[10 11] そのため まず GPB1(2,694 bp)と NDD1(1,665 bp)について AQ-37 株 の 特 徴 的 な 偽 菌 糸 形 態 を 相 補 するか 調 べた 不 完 全 な GPB1( 開 始 コドンを 含 む 2,521bp)と 完 全 な NDD1 を 含 む YCP50-G N を 構 築 し 形 質 転 換 株 の 細 胞 形 態 を 観 察 した その 結 果 AQ-37 株 の 形 態 は 偽 菌 糸 状 から y-21 株 と 同 様 の 酵 母 状 にもどった( 図 4.4) 従 っ て GPB1 遺 伝 子 あるいは NDD1 遺 伝 子 が AQ-37 株 の 変 異 を 相 補 することが 示 唆 された 51

次 に どちらの 遺 伝 子 が AQ-37 株 の 形 態 を 相 補 するかを 解 明 するために prs-426m G と YCP50-NDD1 を 構 築 した prs426m G は 不 完 全 な MRS6( 開 始 コドンを 含 む 881 bp) と 完 全 な GPB1 と 不 完 全 な NDD1( 開 始 コドンを 含 まない 697 bp)を 持 つ 一 方 で YCP50-NDD1 は 不 完 全 な GPB1( 開 始 コドンを 含 む 593 bp)と 完 全 な NDD1 を 持 つ AQ-37 株 にそれら 2 つのプラスミドを 用 いて 形 質 転 換 した 図 4.4 に 示 すように prs-426m G の 形 質 変 換 株 では 細 胞 形 態 の 復 帰 は 観 察 されなかった 一 方 YCP50-NDD1 では AQ-37 株 の 細 胞 形 態 を 相 補 し y-21 株 と 同 様 の 酵 母 形 態 に 戻 った 以 上 の 結 果 から NDD1 遺 伝 子 が AQ-37 株 の 変 異 を 相 補 すると 示 唆 された 図 4.4 構 築 したプラスミドを 形 質 転 換 した AQ-37 株 の 細 胞 形 態 YCP50 はコントロールプラスミドとして 用 いた スケールバーは 5 μm を 示 す 4.3.3 NDD1 遺 伝 子 による 表 現 型 の 相 補 NDD1 遺 伝 子 が AQ-37 株 の 形 態 以 外 の 表 現 型 を 相 補 するか 確 認 した まず 第 3 章 52

で 観 察 した 細 胞 壁 成 分 変 化 (マンナン キチン)を 相 補 するかを 蛍 光 染 色 から 確 認 した マンナン 染 色 における AQ-37 株 の ConA-FITC の 弱 い 蛍 光 は 図 4.2 で 観 察 されたよう に YCP50-NDD1 によって 相 補 された( 図 4.5 A) また AQ-37 株 の 強 いキチンの 蛍 光 も YCP50-NDD1 によって 相 補 された( 図 4.5 B) 次 に AQ-37 株 の 細 胞 壁 タンパク 質 量 は y-21 株 より 減 少 する 傾 向 が 見 られた( 図 4.5 C)が その 減 少 を NDD1 遺 伝 子 が 相 補 するかについて 調 べた その 結 果 図 4.5 C に 見 られるように YCP50-NDD1 はこの 減 少 も 相 補 した 従 って 細 胞 壁 成 分 の 変 化 は NDD1 遺 伝 子 で 相 補 されることが 分 かっ た AQ-37 株 の 変 異 による 液 体 培 地 での 増 殖 遅 延 についてもその 相 補 性 を 調 べた 図 4.6 に 示 すように AQ-37 株 の 液 体 培 地 での 増 殖 遅 延 は YCP50-NDD1 によって 明 確 に 相 補 された 文 献 情 報 から NDD1 遺 伝 子 の 変 異 株 は 温 度 (37 など)や 薬 剤 (CFW など) に 対 して 感 受 性 になり それら 条 件 下 では 生 育 が 低 下 すると 報 告 されている[12] そ こで AQ-37 株 もこれらと 同 様 の 性 質 を 示 し さらに NDD1 遺 伝 子 はそれらの 性 質 を 相 補 するかについて 寒 天 培 地 上 で 生 育 を 調 べた( 図 4.7) まず AQ-37 株 では 37 の 生 育 が 30 より 低 下 し CFW の 添 加 によっても 同 様 に 低 下 した 次 に それら YCP50-NDD1 導 入 による 影 響 を 調 べた 結 果 温 度 感 受 性 の CFW 感 受 性 も NDD1 導 入 に より 相 補 された 53

図 4.5 YCP50-NDD1 による AQ-37 株 の 細 胞 壁 成 分 の 相 補 A:ConA-FITC によるマンナン 染 色 B:CFW によるキチン 染 色 スケールバーは 10 μm を 示 す 写 真 は 同 じ 露 出 時 間 で 撮 影 した C: 乾 燥 細 胞 壁 当 たりタンパク 質 量 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 3 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す YCP50 はコン トロールプラスミドとして 用 いた 54

図 4.6 YCP50-NDD1 導 入 が AQ-37 株 の 増 殖 に 与 える 影 響 各 シンボルは y-21+ycp50 ( ) y-21+ycp50-ndd1 ( ) AQ-37+YCP50 ( ) AQ-37+YCP50-NDD1( )を 示 す YCP50 はコントロールプラスミドとして 用 いた 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 2 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す 図 4.7 YCP50-NDD1 による 高 温 や CFW に 対 する 感 受 性 の 相 補 一 定 濃 度 に 調 製 した 酵 母 懸 濁 液 を 1 倍 10 倍 100 倍 1000 倍 に 希 釈 し 左 から 順 にスポットし 30 または 37 で 3 日 間 培 養 した YCP50 はコントロールプラスミドとして 用 いた 55

最 後 に NDD1 遺 伝 子 が AQ-37 株 の 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 相 補 するか 調 べ た 図 4.8 に 示 すように YCP50-NDD1 を AQ-37 株 に 導 入 すると AQ-37 株 の 高 い 活 性 化 能 は y-21 株 程 度 まで 減 少 した 従 って NDD1 遺 伝 子 が 活 性 化 能 を 相 補 すること が 分 かった 図 4.8 YCP50-NDD1 導 入 によるマクロファージ 活 性 化 能 の 相 補 酵 母 とマクロファージを 6 時 間 接 触 させ 培 地 中 に 分 泌 した TNF-α 量 を ELISA で 測 定 した 一 定 細 胞 数 の 酵 母 との 接 触 によりマクロファージが 分 泌 した TNF-α 量 を 示 す 最 終 濃 度 で 酵 母 (1.5 10 7 cells/ml)とマクロファージ(5.0 10 5 cells/ml)を 接 触 させた LPS(100 ng/ml) と 培 地 (RPMI-1640)はコントロールとして YCP50 はコントロールプラスミドとして 使 用 し た 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 2 または 3 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバー は 標 準 偏 差 を 示 す 56

4.3.4 AQ-37 株 の NDD1 遺 伝 子 変 異 部 位 の 同 定 y-21 株 と AQ-37 株 から 抽 出 したゲノム DNA をテンプレートとして 用 い NDD1 遺 伝 子 の 開 始 コドンから 上 流 の 領 域 (340 bp)と 終 止 コドンより 下 流 の 領 域 (164 bp)を 含 む 約 2,000 bp の 断 片 を PCR によって 増 幅 した AQ-37 株 の NDD1 遺 伝 子 の 変 異 部 位 を 同 定 するために 回 収 した DNA 断 片 の 配 列 を 解 析 した また 図 4.9 に 示 すアミノ 酸 配 列 は DNA 塩 基 配 列 の 結 果 に 基 づき 推 定 した 57

図 4.9 DNA 塩 基 配 列 の 解 析 結 果 から 推 定 される NDD1 タンパク 質 のアミノ 酸 配 列 S288C 株 のアミノ 酸 配 列 は 公 表 されているデータベースから 得 た[3] 数 字 はそれぞれの 株 の NDD1 タンパク 質 のアミノ 酸 番 号 を 示 す 下 線 部 は S288C 株 との 相 違 点 を 示 す は NDD1 タ ンパク 質 のカルボキシル 末 端 を 示 す 58

親 株 として 用 いた 実 用 パン 酵 母 y-21 株 では 実 験 室 酵 母 として 用 いられている S288C 株 の DNA 塩 基 配 列 [3]と 比 較 すると NDD1 遺 伝 子 の DNA 塩 基 配 列 は 部 分 的 に 異 な っていた まず y-21 株 では S288C 株 の NDD1 遺 伝 子 (1,665bp)の 300 番 目 の 塩 基 の 後 に 5 -CAACAACAGCAA-3 の 配 列 が 挿 入 されており 結 果 として 4 アミノ 酸 (QQQQ) が 加 わっていた また 7 箇 所 で 1 塩 基 置 換 (129T C 390A G 481T G 774G A 816G A 864C T 1343C T)があり これらの 変 化 によって 2 箇 所 で 1 アミノ 酸 置 換 が 生 じた(161F V と 448S L) 5 箇 所 の 1 塩 基 置 換 はアミノ 酸 配 列 に 影 響 しなか った 実 験 室 酵 母 と 実 用 パン 酵 母 では DNA 塩 基 配 列 はかなりの 頻 度 で 異 なっているこ とが 示 唆 された 次 に y-21 株 と AQ-37 株 で NDD1 遺 伝 子 の DNA 塩 基 配 列 を 比 較 した 結 果 として 2 箇 所 で 1 塩 基 置 換 が 起 きていた(339A G と 349C T) 前 者 の 変 化 ではアミノ 酸 配 列 に 影 響 しなかったが 後 者 の 変 化 によって 終 止 コドンが 生 じた このナンセンス 変 異 によって AQ-37 株 では 116 番 目 の Q でアミノ 酸 合 成 が 止 まっており y-21 株 の NDD1 タンパク 質 は 558 アミノ 酸 からなるのに 対 し AQ-37 株 では 116 アミノ 酸 になっていた S288C 株 (554 アミノ 酸 )と 比 べても 極 端 に 短 くなっていた 文 献 情 報 では 実 験 室 酵 母 の NDD1 遺 伝 子 欠 損 株 は 生 育 できず NDD1 タンパク 質 は N 末 端 から 216 アミノ 酸 より 短 くなると 融 合 タンパク 質 が 活 性 を 持 たず 機 能 しないと 報 告 されている[12] 従 って 116 アミノ 酸 で 構 成 される AQ-37 株 の NDD1 タンパク 質 は 細 胞 内 で 機 能 して いないことが 示 唆 される 以 上 の 結 果 から AQ-37 株 では NDD1 タンパク 質 の 機 能 の 欠 失 が 細 胞 壁 構 造 等 に 影 響 し 結 果 として 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 得 たことが 強 く 示 唆 される これまでに NDD1 遺 伝 子 の 変 異 株 の 解 析 はあまり 行 われていないが NDD1 タンパ ク 質 に 関 連 する 情 報 と 上 記 の 結 果 との 関 係 について 以 下 にまとめる 1 NDD1 タンパク 質 は FKH2 タンパク 質 および MCM1 タンパク 質 と 複 合 体 を 形 成 し CLB2 遺 伝 子 や CDC5 遺 伝 子 の 転 写 を 活 性 化 し この NDD1 タンパク 質 の 機 能 は CLB2 遺 伝 子 では 319T CDC5 遺 伝 子 では 85S のリン 酸 化 により 調 節 されている [11 59

12] CLB2 タンパク 質 と CDC5 タンパク 質 は G2 期 から M 期 の 移 行 を 制 御 する CDC28 タンパク 質 を 活 性 化 させるので[12]NDD1 遺 伝 子 の 変 異 による 細 胞 周 期 の 異 常 が AQ-37 株 の 増 殖 能 の 低 下 に 影 響 したかもしれない 2 実 験 室 酵 母 (S288C 株 と W303 株 )では NDD1 遺 伝 子 は 生 育 に 必 須 であるが[12 13] AQ-37 株 ではタンパク 質 が 機 能 しない 程 のナンセンス 変 異 にも 関 わらず 増 殖 することが 観 察 された 遺 伝 子 欠 損 の 影 響 は 酵 母 の 株 によっても 異 なることがあ る y-21 株 と S288C 株 で NDD1 遺 伝 子 の DNA 塩 基 配 列 が 異 なっていたことからも 実 用 パン 酵 母 と 実 験 室 酵 母 で 遺 伝 子 欠 損 の 影 響 はかなり 異 なることが 考 えられる 3 これまで NDD1 タンパク 質 が 細 胞 壁 成 分 に 直 接 影 響 することを 示 した 報 告 はない しかし 以 下 の 3 つの 情 報 から AQ-37 株 の 変 異 が 細 胞 壁 成 分 の 変 化 と 関 係 している かもしれない 1 つ 目 は 細 胞 周 期 の 異 常 が 細 胞 壁 合 成 に 影 響 したことが 考 えられ る CDC28 遺 伝 子 は サイクリン 依 存 性 プロテインキナーゼをコードし 細 胞 周 期 の 重 要 な 制 御 因 子 である この 酵 素 活 性 には CDC28 タンパク 質 とサイクリンの 結 合 が 必 要 である[14] 加 えて 先 にも 述 べたがサイクリンをコードする CLB2 遺 伝 子 の 発 現 は NDD1 タンパク 質 によって 制 御 されている [12] 従 って NDD1 遺 伝 子 の 変 異 は 細 胞 周 期 へ 大 きく 影 響 する 細 胞 壁 成 分 の 合 成 には 基 質 と 合 成 酵 素 が 合 成 部 位 に 正 確 に 輸 送 され 正 確 なタイミングで 正 確 な 量 が 合 成 されることが 必 要 である そのため 細 胞 周 期 の 間 に 多 くの 細 胞 壁 関 連 遺 伝 子 の 転 写 は 変 動 する[14] 細 胞 周 期 の 異 常 が 細 胞 壁 形 成 に 関 わる 因 子 に 影 響 する 可 能 性 は 高 く NDD1 遺 伝 子 の 異 常 は 細 胞 壁 組 成 の 変 化 を 導 くかもしれない 2 つ 目 は 細 胞 壁 関 連 遺 伝 子 の 転 写 に 異 常 が 起 きたかもしれない 転 写 因 子 のゲノム 結 合 領 域 について 種 々の 網 羅 的 解 析 による 結 果 が 報 告 されており[15 16] NDD1 タンパク 質 が 細 胞 壁 関 連 遺 伝 子 の 転 写 制 御 因 子 である 可 能 性 も 考 えられる それゆえ NDD1 遺 伝 子 の 変 異 がそれ らの 遺 伝 子 発 現 を 変 化 させ 細 胞 壁 組 成 に 変 化 を 与 えたかもしれない 3 つ 目 は 細 胞 壁 の 異 常 が PKC1 タンパク 質 を 介 して 生 じていることも 考 えられる PKC1 タ ンパク 質 は 細 胞 壁 成 分 の 合 成 におけるシグナル 伝 達 経 路 系 で 重 要 な 役 割 を 果 たし 60

エピスタシス 解 析 によって PKC1 タンパク 質 の 上 流 に ACK1 タンパク 質 が 位 置 する [17 18]と 報 告 されている また ACK1 タンパク 質 と NDD1 タンパク 質 の 相 互 作 用 が S.cerevisiae のツーハイブリッド 法 によって 示 されている[19] それゆえ NDD1 遺 伝 子 の 変 異 が PKC1 タンパク 質 に 関 与 するシグナル 伝 達 経 路 に 影 響 し 細 胞 壁 組 成 の 変 化 を 導 いたかもしれない いずれも 推 定 でしかないが NDD1 タンパ ク 質 の 変 異 が 細 胞 表 面 の 構 造 に 重 要 な 変 化 を 引 き 起 こす 可 能 性 が 十 分 に 考 えられる 4.4 まとめ 第 3 章 で 取 得 した 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 有 する 酵 母 の 変 異 部 位 の 同 定 を 試 みた S.crevisiae のゲノムライブラリーを 使 用 して 形 質 転 換 し 浸 透 圧 やマンナン 量 を 判 断 基 準 に 候 補 株 を 選 抜 した その 結 果 AQ-37 株 でその 形 質 が 相 補 された 株 を1 株 取 得 した その 株 からプラスミド(YCP50-AQ37)を 抽 出 し YCP50 に 挿 入 されたゲノム 断 片 の 両 端 付 近 を 配 列 解 析 した このゲノム 断 片 には 6 種 の 遺 伝 子 を 含 み まず AQ-37 株 で 観 察 された 偽 菌 糸 形 態 に 関 与 する GPB1 遺 伝 子 と NDD1 遺 伝 子 について 解 析 した 3 種 のプラスミド(YCP50-G N prs-426m G YCP50-NDD1)を 構 築 し 細 胞 形 態 を 観 察 した 結 果 最 終 的 に NDD1 遺 伝 子 が AQ-37 株 の 細 胞 形 態 を 相 補 する 遺 伝 子 であるこ とが 分 かった また NDD1 遺 伝 子 はマクロファージ 活 性 化 能 も 相 補 した それに 加 え て マンナンの 減 少 キチンの 増 加 細 胞 壁 タンパク 量 の 低 下 増 殖 能 の 低 下 高 温 や CFW に 対 する 感 受 性 も 相 補 した NDD1 遺 伝 子 の 変 異 が 活 性 化 能 や 細 胞 壁 成 分 などに 影 響 することが 強 く 示 唆 された さらに NDD1 遺 伝 子 の 変 異 部 位 を 同 定 するために DNA 塩 基 配 列 を 解 析 しアミノ 酸 配 列 を 推 定 した まず ゲノムデータベースの S288C 株 の 配 列 と 比 較 すると y-21 株 では 12 塩 基 の 挿 入 と 7 箇 所 の 1 塩 基 置 換 があり これ が 4 アミノ 酸 の 挿 入 と 2 箇 所 の 1 アミノ 酸 の 置 換 に 影 響 していた 次 に y-21 株 と AQ-37 株 の NDD1 遺 伝 子 を 比 較 すると 2 箇 所 で 1 塩 基 置 換 があり 結 果 として 終 止 コドンに 変 化 していた AQ-37 株 では NDD1 タンパク 質 の 機 能 の 欠 失 が 細 胞 壁 構 造 等 に 影 響 し 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 得 たことが 強 く 示 唆 された しかし AQ-37 株 の 細 胞 壁 61

の 異 常 が NDD1 遺 伝 子 の 変 異 によってのみ 影 響 しているという 直 接 の 証 拠 はまだ 得 ら れていない これを 明 らかにするためには y-21 株 の NDD1 遺 伝 子 を 組 換 えにより 欠 損 させる あるいは AQ-37 株 の NDD1 遺 伝 子 に 置 換 し 同 様 の 表 現 型 を 示 すかどうか を 調 べる 必 要 があり まだ 課 題 は 残 されている 実 験 室 酵 母 を 用 いて 解 析 する 場 合 NDD1 遺 伝 子 が 生 育 に 必 須 なので 温 度 感 受 性 変 異 株 を 作 製 し 解 析 などの 工 夫 が 必 要 と なる そのような 系 では 様 々な NDD1 遺 伝 子 を 挿 入 したプラスミドを 利 用 すること で NDD1 タンパク 質 の 大 きさの 影 響 などを 明 らかにできる 可 能 性 がある また 関 連 する 遺 伝 子 の 欠 損 株 を 用 いて 細 胞 壁 解 析 を 行 うことで NDD1 遺 伝 子 と 細 胞 壁 形 成 と の 関 係 をより 詳 細 に 理 解 できる 可 能 性 がある さらに マクロファージ 活 性 化 機 構 の 理 解 のために AQ-37 株 以 外 の 2 株 (AP-57 と BD-40)について 変 異 部 位 を 同 定 することも 必 要 と 考 えられる 62

参 考 文 献 1. Rose MD, Novick P, Thomas JH, Botstein D, Fink GR (1987) A Saccharomyces cerevisiae genomic plasmid bank based on a centromere-containing shuttle vector. Gene 60: 237 243. 2. Burke D, Dawson D, Stearns T, 大 矢 禎 一, 川 向 誠, 仁 川 純 一, 板 垣 正, 河 野 享 子 (2002) 酵 母 遺 伝 子 実 験 マニュアル Methods in yeast genetics A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manual. 丸 善. 3. Benson DA, Cavanaugh M, Clark K, Karsch-Mizrachi I, Lipman DJ, Ostell J, Sayers EW (2013) GenBank. Nucleic Acids Res 41: D36 D42. 4. Christianson TW, Sikorski RS, Dante M, Shero JH, Hieter P (1992) Multifunctional yeast high-copy-number shuttle vectors. Gene 110: 119 22. 5. Bradford MM (1976) A rapid and sensitive method for the quantitation of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein-dye binding. Anal Biochem 72: 248 254. 6. Maneesri J, Azuma M, Sakai Y, Igarashi K, Matsumoto T, Fukuda H, Kondo A, Ooshima H (2005) Deletion of MCD4 involved in glycosylphosphatidylinositol (GPI) anchor synthesis leads to an increase in β-1,6-glucan level and a decrease in GPI-anchored protein and mannan levels in the cell wall of Saccharomyces cerevisiae. J Biosci Bioeng 99: 354 360. 7. Elorza MV, Rico H, Sentandreu R (1983) Calcofluor white alters the assembly of chitin fibrils in Saccharomyces cerevisiae and Candida albicans cells. J Gen Microbiol. 129: 1577 1582. 8. Roncero C, Valdivieso MH, Ribas JC, Durán A (1988) Effect of calcofluor white on chitin synthases from Saccharomyces cerevisiae. J Bacteriol 170: 1945 1949. 9. Valdivieso MH, Mol PC, Shaw JA, Cabib E, Durán A (1991) CAL1, a gene required for activity of chitin synthase 3 in Saccharomyces cerevisiae. J Cell Biol 114: 101 109. 10. Harashima T, Heitman J (2002) The Gα protein Gpa2 controls yeast differentiation by interacting with kelch repeat proteins that mimic Gβ subunits. Mol Cell 10: 163 173. 11. Darieva Z, Bulmer R, Pic-Taylor A, Doris KS, Geymonat M, Sedgwick SG, Morgan BA, 63

Sharrocks AD (2006) Polo kinase controls cell-cycle-dependent transcription by targeting a coactivator protein. Nature 444: 494 498. 12. Loy CJ, Lydall D, Surana U (1999) NDD1, a high-dosage suppressor of cdc28-1n, is essential for expression of a subset of late-s-phase-specific genes in Saccharomyces cerevisiae. Mol Cell Biol 19: 3312 3327. 13. Giaever G, Chu AM, Ni L, Connelly C, Riles L, Véronneau S, Dow S, Lucau-Danila A, Anderson K, André B et al. (2002) Functional profiling of the Saccharomyces cerevisiae genome. Nature 418 : 387 391. 14. Lesage G, Bussey H (2006) Cell wall assembly in Saccharomyces cerevisiae. Microbiol Mol Biol Rev 70: 317 343. 15. Harbison CT, Gordon DB, Lee TI, Rinaldi NJ, Macisaac KD, Danford TW, Hannett NM, Tagne JB, Reynolds DB, Yoo J et al. (2004) Transcriptional regulatory code of a eukaryotic genome. Nature 431: 99 104. 16. Lee HJ, Manke T, Bringas R, Vingron M (2008) Prioritization of gene regulatory interactions from large-scale modules in yeast. BMC Bioinformatics 9: 32 43. 17. Krause SA, Xu H, Gray JV (2008) The synthetic genetic network around PKC1 identifies novel modulators and components of protein kinase C signaling in Saccharomyces cerevisiae. Eukaryot Cell 7: 1880 1887. 18. Krause SA, Gray JV (2009) The functional relationships underlying a synthetic genetic network. Commun Integr Biol 2: 4 6. 19. Uetz P, Giot L, Cagney G, Mansfield TA, Judson RS, Knight JR, Lockshon D, Narayan V, Srinivasan M, Pochart P et al. (2000) A comprehensive analysis of protein protein interactions in Saccharomyces cerevisiae. Nature 403: 623 627. 64

第 5 章 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 有 する 二 倍 体 実 用 パン 酵 母 変 異 株 の 取 得 とその 性 状 解 析 5.1 はじめに 第 3 章 では 実 用 パン 酵 母 の 変 異 処 理 により 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 有 する 変 異 株 を 3 種 取 得 した 取 得 変 異 株 の 高 い 活 性 化 能 の 理 由 の 一 つは マンナンの 減 少 によ る β-グルカンの 露 出 の 増 加 と 考 えられたが この 減 少 量 は mcd4δ ほど 極 端 ではなかっ た そのため 高 いマクロファージ 活 性 化 能 には 異 なる 因 子 も 関 与 している 可 能 性 が 考 えられた 第 4 章 では 取 得 株 の1つ AQ-37 株 の 変 異 遺 伝 子 および 変 異 部 位 を 同 定 した 結 果 として AQ-37 株 は NDD1 遺 伝 子 にナンセンス 変 異 が 生 じており NDD1 タンパク 質 の 機 能 の 欠 失 が 強 く 示 唆 された 第 3 章 で 得 られた 変 異 株 は 一 倍 体 株 で 実 用 的 には 遺 伝 的 に 安 定 な 二 倍 体 株 の 構 築 が 必 要 である そこで 第 5 章 では 変 異 部 位 が 明 らかになった AQ-37 株 をもとにして 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 持 つ 二 倍 体 実 用 パン 酵 母 の 取 得 を 試 みた また 取 得 株 がヒトの 免 疫 力 を 賦 活 化 するかを 検 討 するために ヒトの 免 疫 細 胞 である 末 梢 血 単 核 球 を 用 い それらの 活 性 化 能 を 調 べた さらに 酵 母 によるマクロファージ 活 性 化 機 構 に ついて 第 4 章 で 述 べた 細 胞 壁 マンナン 量 の 減 少 以 外 の 要 因 を 明 らかにするために 細 胞 壁 β-グルカンの 構 造 を 詳 細 に 解 析 した 5.2 材 料 と 方 法 5.2.1 菌 株 と 培 地 二 倍 体 株 の 作 製 のために 第 3 章 や 第 4 章 で 使 用 した 実 用 パン 酵 母 一 倍 体 株 AQ-37 株 (MATa ura3δ0)と y-21 株 に 加 えて オリエンタル 酵 母 工 業 ( 株 )から 提 供 された 栄 養 要 求 性 のない 一 倍 体 株 T-19(MATα)および T-21(MATa)を 使 用 した 二 倍 体 の 親 株 として オリエンタル 酵 母 工 業 ( 株 )から 提 供 された 実 用 パン 酵 母 二 倍 体 株 T-128 を 使 65

用 した この 株 は T-19 株 と T-21 株 の 接 合 によって 得 られたものである 酵 母 の 培 養 に は 第 3 章 と 第 4 章 で 用 いた YPD と YNB を 培 地 に 用 いた 固 体 培 地 には 2%の 寒 天 を 添 加 した 実 験 には 30 で 対 数 増 殖 期 (12 時 間 )まで 培 養 した 酵 母 を 用 いた 第 3 章 と 同 様 に 細 胞 壁 変 異 株 の 選 抜 には 0.02%の SDS を 含 む 1/5YPD 培 地 (YPD の 培 地 成 分 の 1/5 量 )を 用 いた プラスミドの 増 幅 は E. coli DH5α 株 (RBC Bioscience)を 用 いて 第 4 章 に 記 載 したように 行 った 5.2.2 二 倍 体 変 異 株 の 選 抜 目 的 とする 二 倍 体 株 は 次 のように 構 築 した まず AQ-37 株 の 変 異 を 持 つ 接 合 型 が α の 株 を 取 得 した[1] AQ-37 株 (MATa)と T-19 株 (MATα)を YPD 液 体 培 地 で 30 1 日 間 培 養 した 両 株 の 菌 数 を 同 程 度 にそろえ 新 たな YPD 培 地 中 で 混 合 し 30 で 12 時 間 接 触 させた 接 合 によって 生 じた 二 倍 体 酵 母 を 含 む 懸 濁 液 を 胞 子 形 成 培 地 (1% 酢 酸 カリウム 0.1% 酵 母 エキス 0.05%グルコース)を 用 いて 25 で 培 養 することに より 胞 子 を 形 成 させた 細 胞 を 遠 心 回 収 し 0.05 mg/ml の Zymolyase 100T 溶 液 に 懸 濁 させた 30 で 10 分 間 培 養 後 YPD 寒 天 培 地 上 に 広 げた 顕 微 鏡 とマニピュレータ を 用 いて 四 分 子 を 分 離 し 30 で 培 養 した 得 られたコロニーをウラシルのない YNB 培 地 で 培 養 した 生 育 した 株 について SDS 感 受 性 を 調 べた 1/5YPD 固 体 培 地 と 0.02% の SDS を 含 む 1/5YPD 固 体 培 地 上 で 培 養 し 一 倍 体 親 株 と 比 較 して SDS の 添 加 によっ て 生 育 が 遅 くなった 株 を 選 抜 した 選 抜 株 の 接 合 型 は 次 のように 判 断 した 選 抜 株 と 接 合 型 が 既 知 である X-2180A 株 (ATCC 26786 MATa)と X-2180B 株 (ATCC 26787 MATα)は YPD 液 体 培 地 を 用 い 30 で 一 晩 培 養 した 次 に YPD 培 地 を 含 む 24 穴 プレ ート 中 で 選 抜 株 と X-2180A または X-2180B を 混 合 し 30 で 4 時 間 静 置 培 養 した その 後 細 胞 の 性 的 凝 集 を 顕 微 鏡 下 で 観 察 し 接 合 型 が 既 知 のどちらの 株 で 凝 集 が 見 ら れるかによって 接 合 型 を 判 断 した 上 記 で 得 られた 株 と AQ-37 株 (MATa)を 用 い 再 度 接 合 を 行 った 接 合 操 作 を 行 った 後 細 胞 は YPD 固 体 培 地 上 に 塗 布 し 30 で 2 日 間 培 養 した 比 較 的 大 きなコロニー 66

を 選 抜 し 次 に 各 コロニーの 細 胞 を 顕 微 鏡 で 観 察 し 細 胞 のサイズが 一 倍 体 の 親 株 より 大 きい 株 を 二 倍 体 株 として 選 抜 した 最 終 的 には 接 合 型 が a と α の 一 倍 体 株 との 接 合 を 調 べ 接 合 現 象 が 観 察 されなかった 株 を 二 倍 体 株 として 選 んだ 選 んだ 二 倍 体 株 については 細 胞 壁 マンナンを 第 3 章 と 同 様 に ConA-FITC を 使 用 し 染 色 し 親 株 T-128 と 比 較 して 弱 い 蛍 光 を 示 す 株 すなわちマンナン 量 が 減 少 している 株 を 選 抜 した 5.2.3 マクロファージ 活 性 化 能 の 評 価 マクロファージ 活 性 化 能 は 一 定 細 胞 数 または 一 定 乾 燥 重 量 の 酵 母 を 用 いた 活 性 化 能 の 両 方 で 評 価 した 一 定 細 胞 数 の 条 件 では 3 ml の YPD 液 体 培 地 を 含 む 試 験 管 で 対 数 増 殖 期 まで 培 養 した 酵 母 を 使 用 し 第 2 章 に 記 載 したように 測 定 した 一 定 重 量 の 条 件 では 第 3 章 に 記 載 したように 測 定 した 接 触 は 酵 母 の 最 終 濃 度 が 300 μg/ml マ クロファージが 5.0 10 5 cells/ml で 行 った 5.2.4 増 殖 と CO 2 発 生 量 の 測 定 増 殖 能 は 第 3 章 に 記 載 したように 3 ml の YPD を 含 む 試 験 管 で 酵 母 を 培 養 し 濁 度 (OD 600 )の 経 時 変 化 から 評 価 した また 100 ml の YPD 培 地 を 含 む 坂 口 フラスコで 培 養 し 培 養 後 の 菌 体 の 乾 燥 重 量 からも 評 価 した 発 酵 能 は 第 3 章 と 同 様 に 評 価 した 20 ml の YPD を 用 い 酵 母 を 30 で 培 養 し 発 生 した CO 2 量 の 経 時 変 化 を 測 定 した 5.2.5 NDD1 遺 伝 子 による 表 現 型 の 相 補 取 得 した 二 倍 体 変 異 株 は 酢 酸 リチウム 法 を 用 い YCP50-NDD1 で 形 質 転 換 した プラ スミド 導 入 にあたり 選 択 マーカーがなかったため 形 質 転 換 後 の 細 胞 全 てを 37 2 日 間 YNB 液 体 培 地 で 培 養 し その 一 部 を YNB 固 体 培 地 上 に 塗 布 した 37 2 日 間 培 養 し 得 られたコロニーのうち 比 較 的 大 きいものを 選 抜 した 次 に 顕 微 鏡 下 で AQ-37 67

株 のような 凝 集 が 観 察 されなかった 株 を 選 抜 した 最 終 的 には 5 -ATGGTAGTCGGTGAAGAGCCGTAT-3 (NDD1 遺 伝 子 の DNA 配 列 の 1 部 )と 5 -GCATTAGGAAGCAGCCCAGTAGTAG-3 (YCP50 プラスミドの DNA 配 列 の 1 部 ) を 使 用 して YCP50-NDD1 上 の DNA 断 片 (1,421 bp)の 増 幅 によって 形 質 転 換 を 確 認 した 第 4 章 に 記 載 したように PCR(94 で 2 分 保 温 し 94 で 30 秒 58 で 45 秒 72 で 90 秒 を 30 サイクル)により 増 幅 した NDD1 遺 伝 子 の 導 入 が 細 胞 の 形 質 に 与 える 影 響 を 調 べるために 第 4 章 のように 様 々 な 表 現 型 (マンナンの 減 少 増 殖 能 の 低 下 高 温 や CFW に 対 する 感 受 性 マクロファ ージ 活 性 化 能 )を 調 べた マンナン 量 は ConA-FITC による 染 色 から 評 価 し 増 殖 能 は OD 600 の 値 の 経 時 変 化 から 評 価 した 温 度 感 受 性 は 37 での 生 育 から 評 価 し マクロフ ァージ 活 性 化 能 は 一 定 乾 燥 細 胞 重 量 の 酵 母 との 接 触 による 活 性 化 能 で 評 価 した 接 触 は 酵 母 の 最 終 濃 度 が 100 μg/ml マクロファージが 5.0 10 5 cells/ml で 行 った パン 酵 母 か ら 抽 出 された β-グルカンである BB-Glucan(BBG;オリエンタル 酵 母 工 業 )[2 4]をコ ントロールとして 使 用 した 5.2.6 ヒト 免 疫 細 胞 の 活 性 化 能 の 評 価 健 常 な 成 人 ドナーから 末 梢 血 を 採 取 した コンレイ(マリンクロット) フィコール(ア マシャム ファルマシア バイオテク)を 使 用 した 比 重 遠 心 法 により 末 梢 血 単 核 球 を 回 収 した[5] 得 られた 細 胞 は RPMI-1640 に 懸 濁 した 乾 燥 酵 母 は RPMI-1640 に 懸 濁 し 末 梢 血 単 核 球 の 懸 濁 液 と 混 合 した 接 触 は 酵 母 の 最 終 濃 度 を 100 μg/ml 末 梢 血 単 核 球 を 5.0 10 5 cells/ml とした 4 時 間 静 置 後 遠 心 上 清 に 含 まれる TNF-α 量 を ELISA によって 測 定 した 5.2.7 細 胞 壁 解 析 酵 母 細 胞 壁 の 主 成 分 である β-グルカンを 構 成 するグルコースの 量 とマンナンを 構 成 するマンノース 量 は 第 3 章 で 記 載 したように 測 定 した 50 ml の YPD 液 体 培 地 で 培 養 68

した 酵 母 を 用 い 細 胞 壁 画 分 を 第 3 章 や 第 4 章 で 記 載 したように 回 収 し 得 られた 沈 澱 を 硫 酸 で 加 水 分 解 した グルコース 量 とマンノース 量 は RI 検 出 器 (RI704; ジーエル サイエンス)と UltronPS-80N カラム(300 8 mm; 信 和 化 工 )を 使 用 して HPLC で 測 定 した 溶 出 には 超 純 水 を 用 い 流 速 は 0.5 ml/min カラム 温 度 は 80 で 行 った β-グルカンの 活 性 化 能 は 次 のように 測 定 した まず アルカリ 不 溶 β-グルカンを 抽 出 した[6] 20 mg の 細 胞 壁 画 分 ( 乾 燥 重 量 )に 対 して 750 mm 水 酸 化 ナトリウムを 1 ml 加 えた 75 で 1 時 間 インキュベートし 遠 心 分 離 により 上 清 を 除 いた このアルカリ 処 理 を 合 計 3 回 行 った 水 酸 化 ナトリウムを 除 去 するため 得 られた 沈 澱 を 100 mm ト リス 塩 酸 緩 衝 液 (ph 7.5) 1 ml で 1 回 10 mm トリス 塩 酸 緩 衝 液 (ph 7.5)1 ml で 2 回 洗 浄 を 行 った 得 られた 沈 澱 をアルカリ 不 溶 β-グルカンとした マクロファージ 活 性 化 能 を 測 定 するために アルカリ 不 溶 β-グルカンを 凍 結 乾 燥 し 超 純 水 に 懸 濁 し 超 音 波 で 分 散 させた 抽 出 した β-グルカンは マウスマクロファージ RAW264.7 細 胞 と 混 合 し 活 性 化 能 の 評 価 に 用 いた 接 触 は β-グルカンの 最 終 濃 度 を 25 μg/ml マクロファージ を 5.0 10 5 cells/ml とした 6 時 間 静 置 後 遠 心 上 清 を 得 そこに 含 まれる TNF-α 量 を 測 定 した β-グルカンの 糖 量 はフェノール 硫 酸 法 [7]で 次 のように 測 定 した 糖 溶 液 500 µl を 試 験 管 に 移 し そこに 5%フェノール 溶 液 500 µl を 加 えて 混 合 した 濃 硫 酸 2.5 ml を 加 え 10 分 放 置 後 に 27 の 水 浴 中 で 20 分 冷 却 した 490 nm における 吸 光 度 を 測 定 し グルコースの 標 準 溶 液 の 値 から 糖 量 を 計 算 した アルカリ 不 溶 β-グルカンの β-1,3-グルカン 量 と β-1,6-グルカン 量 は 次 のように 測 定 し た アルカリ 不 溶 β-グルカンに 900 μl の 10 mm トリス 塩 酸 緩 衝 液 (ph 7.5)を 加 えて 懸 濁 した この 懸 濁 液 を β-1,3-グルカナーゼ(zymolyase 100T; 生 化 学 工 業 )を 含 む 100 μl の 10 mm トリス 塩 酸 緩 衝 液 と 混 合 し 37 で 20 時 間 反 応 させた 遠 心 分 離 により 上 清 を 回 収 し 分 画 分 子 量 6,000 8,000 の 透 析 チューブ Spectra/Por DialysisMembrane (Spectrum Laboratories)を 使 用 して 透 析 外 液 に 蒸 留 水 を 用 い 24 時 間 透 析 した β-1,6- グルカンは 分 子 量 10,000 以 上 と 報 告 されているので[8 10] この 操 作 で β-1,3-グルカ ナーゼによる 分 解 物 と 分 けることができる 全 β-グルカン 量 は 透 析 前 の 糖 量 を 測 定 して 69

求 めた β-1,6-グルカン 量 は 透 析 後 の 透 析 内 液 の 糖 量 を 測 定 して 求 めた β-1,3-グルカン 量 は 全 β-グルカン 量 と β-1,6-グルカン 量 の 差 から 計 算 した 糖 量 はフェノール 硫 酸 法 で 測 定 した β-グルカンの 分 岐 構 造 について β-1,6-グルカンの 還 元 糖 量 は β-1,6-グルカンの 分 岐 の 数 を 反 映 すると 仮 定 した この 仮 定 のもとで β-1,3-グルカン 量 当 たりの 還 元 糖 量 は 分 岐 度 還 元 糖 量 当 たりの β-1,6-グルカン 量 は β-1,6-グルカンの 長 さ( 重 合 度 )を 反 映 す ると 考 えた 還 元 糖 量 はソモギ ネルソン 法 [11]で 次 のように 測 定 した 糖 溶 液 500 µl を 試 験 管 に 移 し そこに 500 µl の 銅 試 薬 (2.4% 無 水 炭 酸 ナトリウム 1.2% 酒 石 酸 カ リウムナトリウム 0.4% 硫 酸 銅 1.6% 炭 酸 水 素 ナトリウム 18% 無 水 硫 酸 ナトリウム) を 加 えた 沸 騰 液 中 で 20 分 加 熱 し 水 浴 中 で 5 分 冷 却 した 500 µl のネルソン 試 薬 (5% モリブデン 酸 アンモニウム 8.4% 硫 酸 0.6%ヒ 酸 二 ナトリウム)を 加 えて 混 合 した さらに 水 2 ml を 加 えて 混 合 し 660 nm における 吸 光 度 を 測 定 した グルコース 標 準 溶 液 の 値 から 還 元 糖 量 を 計 算 した 5.3 結 果 と 考 察 5.3.1 高 いマクロファージ 活 性 化 能 を 有 する 二 倍 体 実 用 パン 酵 母 変 異 株 の 選 抜 目 的 とする 株 を 得 るために AQ-37 株 を T-19 株 と 接 合 させ 生 じた 二 倍 体 株 から 胞 子 を 分 離 した 実 用 には 栄 養 要 求 性 のない 株 が 適 しているので ウラシルのない YNB で 生 育 する 株 を 選 抜 した 選 抜 株 について AQ-37 株 と 同 様 の SDS 感 受 性 について 調 べた 1/5YPD 固 体 培 地 と 0.02%の SDS を 含 む 1/5YPD 固 体 培 地 上 で 生 育 が 遅 くなっ た 20 種 の 変 異 株 ( 小 さいコロニー)を 取 得 した これらの 接 合 型 を 調 べた 結 果 MATa が 6 株 で MATα が 14 株 だった さらに AQ-37 株 (MATa)を 含 めた 一 倍 体 株 間 で 再 度 接 合 を 行 い 一 倍 体 株 との 接 合 が 起 こらない 70 種 の 二 倍 体 株 を 獲 得 した これら 二 倍 体 株 からさらに 選 抜 を 進 めるために 細 胞 壁 マンナンを ConA-FITC を 用 いて 染 色 した( 図 5.1) その 結 果 二 倍 体 の 親 株 T-128 と 比 較 して 弱 い 蛍 光 すなわちマ 70

ンナンの 減 少 を 示 す 二 倍 体 を 3 株 取 得 した(BQ-10 BQ-48 BQ-55) ただし 極 端 な マンナンの 減 少 は 観 察 されず 目 視 による 観 察 ではその 判 断 は 難 しかった そのため こ こでは 少 なくとも 3 回 染 色 を 行 いマンナンの 減 少 に 関 して 再 現 性 が 得 られた 株 である これら 3 株 のみを 選 抜 した 次 に 細 胞 形 態 を 比 較 した 元 の 一 倍 体 AQ-37 株 では 細 胞 サイズは 親 株 y-21 より 大 きく 明 らかな 偽 菌 糸 形 態 をとる 傾 向 が 観 察 された( 図 3.1) しかし 得 られた 3 種 の 二 倍 体 変 異 株 では そのような 偽 菌 糸 形 態 は 観 察 されなかった ただし BQ-55 株 で はわずかに 細 胞 が 連 なる 傾 向 が 見 られた 形 態 的 特 徴 は 細 胞 の 倍 数 性 によって 変 化 する かもしれない 実 際 に 細 胞 が 窒 素 源 の 枯 渇 条 件 で 培 養 されたとき それら 形 態 は 倍 数 性 によって 異 なることが 報 告 されている[12] 従 って 一 倍 体 の AQ-37 株 と 同 じ 変 異 を 持 った 二 倍 体 変 異 株 で AQ-37 株 と 形 態 的 特 徴 が 異 なることは 十 分 に 考 えられる 図 5.1 取 得 した 二 倍 体 変 異 株 の ConA-FITC によるマンナン 染 色 スケールバーは 10 μm を 示 す 写 真 は 同 じ 露 出 時 間 で 撮 影 した 71

次 に 得 られた 3 種 の 変 異 株 (BQ-10 BQ-48 BQ-55)について 細 胞 接 触 による マクロファージ 活 性 化 を TNF-α 分 泌 量 を 指 標 として 調 べた( 図 5.2 A) まず 一 定 細 胞 数 の 酵 母 との 接 触 による TNF-α 分 泌 量 で 評 価 した コントロールとして 用 いた T-128 株 自 身 でも TNF-α の 分 泌 が 見 られたが 3 株 の 変 異 株 (BQ-10 BQ-48 BQ-55)では 全 てで T-128 株 に 比 べ TNF-α 分 泌 量 が 高 く 培 地 を 引 いた 値 で 活 性 化 能 を 評 価 すると いずれも 2 倍 以 上 高 かった また BQ-55 株 の 分 泌 量 は 3 種 の 変 異 株 の 中 で 最 も 高 く 約 7 倍 の 活 性 化 能 だった 一 定 乾 燥 重 量 の 酵 母 の 活 性 化 能 についても 同 様 に 測 定 した その 結 果 を 図 5.2 B に 示 す 一 定 細 胞 数 の 結 果 と 同 様 に 3 種 の 変 異 株 では T-128 株 よ りも 2 倍 以 上 高 い 活 性 化 能 を 示 し BQ-55 株 では 取 得 株 の 中 で 最 も 高 く 約 6 倍 の 活 性 化 能 だった 細 胞 数 と 乾 燥 重 量 の 条 件 での 結 果 を 総 合 して 取 得 した BQ-10 株 BQ-48 株 BQ-55 株 は 高 いマウスマクロファージ 活 性 化 能 を 有 すると 判 断 した 72

図 5.2 取 得 した 二 倍 体 変 異 株 のマクロファージ 活 性 化 能 酵 母 とマクロファージを 6 時 間 接 触 させ 培 地 中 に 分 泌 した TNF-α 量 を ELISA で 測 定 した LPS (50 ng/ml)と 培 地 (RPMI-1640)はコントロールとして 使 用 した 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 2 または 3 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す A: 一 定 細 胞 数 の 酵 母 との 接 触 によりマクロファージが 分 泌 した TNF-α 量 を 示 す 最 終 濃 度 で 酵 母 (1.5 10 7 cells/ml)とマクロファージ(5.0 10 5 cells/ml)を 接 触 させた B: 一 定 乾 燥 重 量 の 73

酵 母 との 接 触 によりマクロファージが 分 泌 した TNF-α 量 を 示 す 最 終 濃 度 で 酵 母 (300 μg/ml) とマクロファージ(5 10 5 cells/ml)を 接 触 させた 5.3.2 増 殖 能 と 発 酵 能 の 評 価 AQ-37 株 は 一 倍 体 の 親 株 y-21 よりも 増 殖 能 が 低 い( 図 3.5 図 3.6)ため 選 抜 した 二 倍 体 変 異 株 についても 液 体 培 地 での 増 殖 能 を 調 べた 濁 度 による 測 定 では BQ-10 株 と BQ-48 株 の 増 殖 能 は T-128 株 より 少 し 低 く BQ-55 株 では BQ-10 株 と BQ-48 株 より も 低 いことが 分 かった( 図 5.3 A) 100 ml の YPD 培 地 で 24 時 間 培 養 後 の 乾 燥 菌 体 重 量 を 測 定 した 結 果 BQ-55 株 の 重 量 は T-128 株 の 85% 程 度 で BQ-10 株 と BQ-48 株 の 重 量 は T-128 株 の 90% 程 度 だった( 図 5.3 B) これら 3 株 で 得 られる 菌 体 量 は AQ-37 株 を 同 じ 条 件 で 培 養 した 時 に 得 られた 菌 体 量 の 2 倍 以 上 で 二 倍 体 にすることで 多 くの 菌 体 が 得 られることが 分 かった 濁 度 と 乾 燥 重 量 の 測 定 で 結 果 が 異 なったのは 培 養 方 法 の 違 いによると 考 えられた 74

図 5.3 取 得 変 異 株 の 増 殖 能 の 評 価 A: 濁 度 による 評 価 各 シンボルは T-128( ) BQ-10( ) BQ-48( ) BQ-55( )を 示 す B: 菌 体 重 量 による 評 価 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 2 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す ま 75

た エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す 次 に 取 得 変 異 株 の 発 酵 能 を CO 2 発 生 量 から 調 べた 図 5.4 に 示 す 結 果 から BQ-10 株 BQ-48 株 BQ-55 株 は T-128 株 とほぼ 同 等 の CO 2 発 生 量 を 示 し 十 分 な 発 酵 能 を 持 つことが 示 唆 された これら 取 得 3 株 の 6 時 間 後 の CO 2 発 生 量 は AQ-37 株 ( 図 3.7)の 1.5 倍 以 上 だった 以 上 の 結 果 から 最 もマクロファージ 活 性 化 能 の 高 い BQ-55 株 は 増 殖 能 や 発 酵 能 に 大 きな 問 題 となる 点 は 無 く 免 疫 細 胞 を 活 性 化 できるパン 酵 母 として 有 望 だと 判 断 し た これ 以 降 の 実 験 は BQ-55 株 について 解 析 を 進 めた 図 5.4 取 得 変 異 株 の CO 2 発 生 量 初 期 OD 600 を 0.1 とし YPD 培 地 中 で CO 2 発 生 量 を 測 定 した 各 シンボルは T-128( ) BQ-10 ( ) BQ-48( ) BQ-55( )を 示 す 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 2 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す 76

5.3.3 NDD1 遺 伝 子 による 表 現 型 の 相 補 BQ-55 株 は AQ-37 株 をもとに 構 築 された 第 4 章 で 示 したように AQ-37 株 は NDD1 遺 伝 子 によって 様 々な 表 現 型 が 相 補 された そのため YCP50-NDD1 を 用 いた 形 質 転 換 によって BQ-55 株 の 表 現 型 が NDD1 遺 伝 子 により 相 補 されるかについて 調 べた こ のプラスミドは YCP50 にゲノム 断 片 が 挿 入 されており YCP50 自 身 はプラスミドの 脱 落 が 少 ないタイプの 1 コピープラスミドである BQ-55 株 には 栄 養 要 求 性 がなく 遺 伝 子 導 入 に 使 用 する 選 択 マーカーがない そのため 形 質 転 換 株 の 取 得 は AQ-37 株 と BQ-55 株 の 共 通 の 性 質 である 高 温 感 受 性 と 細 胞 形 態 を 指 標 に 行 った BQ-55 株 は 高 温 感 受 性 を 持 ち( 図 5.5 A) 細 胞 がわずかに 連 なる 傾 向 が 観 察 された AQ-37 株 も 高 温 感 受 性 や 細 胞 形 態 の 変 化 が 見 られ これらは NDD1 遺 伝 子 によって 相 補 された( 図 4.5 4.7) そのため BQ-55 株 の 高 温 感 受 性 や 細 胞 形 態 も NDD1 遺 伝 子 によって 相 補 されると 考 えられた YCP50-NDD1 で BQ-55 株 を 形 質 転 換 後 YNB 培 地 を 用 い 高 温 (37 ) 条 件 で 培 養 し た 比 較 的 速 く 増 殖 したと 考 えられる 大 きいコロニーを 選 抜 した 次 に 選 抜 株 の 細 胞 形 態 を 顕 微 鏡 下 で 観 察 した BQ-55 株 で 見 られた 細 胞 がわずかに 連 なる 傾 向 が 親 株 T-128 のように 見 られなくなった 株 を 選 抜 した 最 終 的 な 形 質 転 換 の 確 認 は PCR によ るプラスミドの 一 部 配 列 の 増 幅 から 行 った 増 幅 を 確 認 した 株 を 形 質 転 換 株 として 表 現 型 ( 感 受 性 増 殖 マンナン マクロファージ 活 性 化 能 )を 相 補 するかを 確 認 した その 結 果 高 温 や CFW に 対 する 感 受 性 は 寒 天 培 地 上 での 生 育 結 果 から NDD1 遺 伝 子 により 相 補 されることが 明 らかになった( 図 5.5 A) また 増 殖 能 の 低 下 も 部 分 的 に 回 復 していた( 図 5.5 B) さらに BQ-55 株 のマンナンの 減 少 についても 遺 伝 子 導 入 に より 相 補 された( 図 5.5 C) 結 果 は 示 さないが 形 態 についても 相 補 されることを 確 認 した NDD1 遺 伝 子 による 細 胞 壁 成 分 の 相 補 を 確 認 したため マクロファージ 活 性 化 能 についても 調 べた その 結 果 BQ-55 株 の 高 いマクロファージ 活 性 化 能 についても NDD1 遺 伝 子 により 相 補 された( 図 5.6) 77

以 上 より BQ-55 株 の 形 質 に 対 する NDD1 遺 伝 子 導 入 による 影 響 は AQ-37 株 で 検 討 された 結 果 と 同 様 の 傾 向 を 示 すことが 明 らかとなった ただし NDD1 遺 伝 子 導 入 で は 完 全 には 表 現 型 が 相 補 されていないため NDD1 遺 伝 子 以 外 に 変 異 遺 伝 子 が 存 在 し 影 響 している 可 能 性 も 考 えられる 78

図 5.5 YCP50-NDD1 による 様 々な 表 現 型 の 相 補 A: 温 度 や CFW に 対 する 感 受 性 試 験 一 定 濃 度 に 調 製 した 酵 母 懸 濁 液 を 1 倍 10 倍 100 倍 1000 倍 に 希 釈 し 左 から 順 にスポットした YPD 固 体 培 地 で 30 または 37 2 日 培 養 した B: 濁 度 による 増 殖 能 の 評 価 各 シンボルは T-128( ) BQ-55( ) BQ-55+YCP50-NDD1( ) を 示 す 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 2 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す C:ConA-FITC によるマンナン 染 色 スケールバーは 10 μm を 示 す 写 真 は 79

同 じ 露 出 時 間 で 撮 影 した 図 5.6 YCP50-NDD1 によるマクロファージ 活 性 化 能 の 相 補 酵 母 (100 μg/ml)とマクロファージ(5 10 5 cells/ml)を 6 時 間 接 触 させ マクロファージが 培 地 中 に 分 泌 した TNF-α 量 を ELISA で 測 定 した LPS(100 ng/ml)と BBG(100 μg/ml)と 培 地 (RPMI-1640)はコントロールとして 使 用 した 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 2 また は 3 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す 5.3.4 酵 母 によるヒト 免 疫 細 胞 の 活 性 化 これまでの 実 験 では マウスのマクロファージの 活 性 化 について 調 べてきた 文 献 か ら S. cerevisiae から 抽 出 された β-グルカンは ヒト 末 梢 血 から 分 離 した 末 梢 血 単 核 球 を 活 性 化 することが 報 告 されている[13] そこで ここではヒトの 免 疫 細 胞 に 対 する BQ-55 株 の 活 性 化 能 について 調 べた 酵 母 細 胞 の 接 触 による 末 梢 血 単 核 球 の 活 性 化 を 評 価 するために これまでと 同 様 に 免 疫 担 当 細 胞 から 分 泌 された TNF-α 量 を 調 べた 図 5.7 に 示 すように BQ-55 株 との 接 触 では T-128 株 より TNF-α の 分 泌 量 が 高 く 2 倍 以 上 80

だった それゆえ BQ-55 株 はヒトの 免 疫 力 をより 強 く 賦 活 化 できる 材 料 であることが 期 待 された また この 変 異 により 上 昇 した 活 性 化 能 は マウスのマクロファージで 観 察 された 場 合 と 同 様 に NDD1 遺 伝 子 導 入 によって 相 補 された( 図 5.7) 図 5.7 BQ-55 株 のヒト 免 疫 細 胞 活 性 化 能 酵 母 (100 μg/ml)とヒト 末 梢 血 から 分 離 した 単 核 球 (5 10 5 cells/ml)を 4 時 間 接 触 させ 培 地 中 に 分 泌 した TNF-α 量 を ELISA で 測 定 した LPS(1 μg/ml)と 培 地 (RPMI-1640)はコン トロールとして 使 用 した 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 2 4 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す ま た エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す 5.3.5 細 胞 壁 解 析 免 疫 担 当 細 胞 を 高 く 活 性 化 する 要 因 を 明 らかにするために β-グルカンを 構 成 するグ ルコースの 量 に 対 するマンナンを 構 成 するマンノースの 量 の 比 を 調 べた 細 胞 壁 画 分 を 81

硫 酸 で 加 水 分 解 し グルコース 量 とマンノース 量 を HPLC で 測 定 した BQ-55 株 の 細 胞 壁 重 量 当 たりのグルコース 量 は T-128 株 とほぼ 同 等 だったが BQ-55 株 の 細 胞 壁 重 量 当 たりのマンノース 量 は T-128 株 と 比 較 して 低 かった( 図 5.8) この 傾 向 はマンナン 染 色 の 結 果 に 一 致 した それゆえ グルコース 量 に 対 するマンノース 量 の 比 は 減 少 した BQ-55 株 では β-グルカンの 表 面 への 露 出 度 が 増 加 したことが 示 唆 される 次 に BQ-10 株 や BQ-48 株 でも 同 様 の 結 果 が 得 られるかを 調 べた それらの 株 でもグルコース 量 は T-128 株 とほぼ 同 等 で マンノース 量 は T-128 株 と 比 較 して 低 いためグルコース 量 に 対 するマンノース 量 の 比 は 減 少 した また これらの 結 果 は AQ-37 株 と 同 様 だった( 図 3.6) BQ-10 株 のグルコース 量 に 対 するマンノース 量 は BQ-48 株 や BQ-55 株 ほど 減 少 していなかった これが BQ-48 株 や BQ-55 株 より BQ-10 株 の 方 が 活 性 化 能 の 低 い 理 由 であると 考 えられる 82

図 5.8 細 胞 壁 のグルコース 量 とマンノース 量 細 胞 壁 を 硫 酸 加 水 分 解 しグルコース 量 とマンノース 量 を HPLC で 測 定 した 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 2 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す A:グルコー ス(β-グルカン) 量 B:マンノース(マンナン) 量 83

BQ-55 株 や AQ-37 株 では グルコースに 対 するマンノースの 比 は 減 少 したが それ ら 減 少 量 は 先 行 研 究 で 観 察 された mcd4δ での 減 少 に 比 べると 極 端 ではなかった[14] そのため 免 疫 担 当 細 胞 の 活 性 化 要 因 は 他 にも 存 在 する 可 能 性 もあると 考 えた ここで は 免 疫 細 胞 を 活 性 化 する β-グルカンに 注 目 し アルカリ 不 溶 β-グルカンを BQ-55 株 から 抽 出 し マウスマクロファージ 活 性 化 能 を 評 価 した その 結 果 BQ-55 株 から 抽 出 された β-グルカンでは 分 泌 された TNF-α 量 が T-128 株 の β-グルカンより 高 かった( 図 5.9) 加 えて この 高 いマクロファージ 活 性 化 能 は NDD1 遺 伝 子 によって 相 補 された 上 記 の 結 果 から BQ-55 株 の β-グルカンの 構 造 が T-128 株 と 異 なっていることが 強 く 示 唆 された 図 5.9 BQ-55 株 から 抽 出 した β-グルカンのマクロファージ 活 性 化 能 抽 出 した β-グルカン( 糖 濃 度 25 μg/ml)とマクロファージ(5 10 5 cells/ml)を 6 時 間 接 触 さ せ 培 地 中 に 分 泌 した TNF-α 量 を ELISA で 測 定 した LPS(100 ng/ml)と 培 地 (RPMI-1640) はコントロールとして 使 用 した 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 2 または 3 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す 84

次 に β-グルカンの 構 造 を 詳 細 に 調 べるために 抽 出 したアルカリ 不 溶 β-グルカンの β-1,3-グルカン 量 と β-1,6-グルカン 量 を 測 定 した BQ-55 株 では 細 胞 壁 重 量 当 たりの β-1,3-グルカン 量 は T-128 株 より 高 かったが T-128 株 との 間 に 有 意 な 差 は 観 察 されな かった( 図 5.10 A) 一 方 BQ-55 株 の 細 胞 壁 重 量 当 たりの β-1,6-グルカン 量 は T-128 株 と 比 較 して 高 かった( 図 5.10 B) BQ-55 株 の β-1,3-グルカン 量 と β-1,6-グルカン 量 の 比 は T-128 株 と 変 わらずおよそ 10:3 であった この 値 は 文 献 情 報 [9]と 同 様 であっ た 次 に BQ-10 株 や BQ-48 株 についても 調 べた BQ-10 株 や BQ-48 株 において β-1,3- グルカン 量 と β-1,6-グルカン 量 及 びその 比 は 全 て T-128 株 とほぼ 同 等 で 有 意 差 は 見 られ なかった マクロファージ 活 性 能 の 高 い BQ-10 株 と BQ-48 株 で BQ-55 株 と 共 通 の 結 果 が 観 察 されなかったため β-グルカンを 構 成 する β-1,3-グルカンと β-1,6-グルカンの 量 や 比 は 直 接 的 には 今 回 の 高 いマクロファージ 活 性 能 とは 関 係 ないことが 示 唆 された 85

図 5.10 細 胞 壁 の β-1,3-グルカン 量 と β-1,6-グルカン 量 5.2.7 に 示 した 方 法 により アルカリ 不 溶 β-グルカンに 含 まれる β-1,3-グルカン 量 と β-1,6-グル カン 量 を 定 量 した 糖 量 はフェノール 硫 酸 法 で 測 定 した 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 3 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す A:β-1,3-グルカン 量 B:β-1,6- グルカン 量 86

β-グルカンの 分 岐 構 造 を 調 べるために β-1,3-グルカナーゼ 処 理 後 により 得 られた β-1,6-グルカンを 解 析 した β-1,6-グルカンの 還 元 糖 量 が β-1,6-グルカンの 分 岐 数 を 反 映 すると 仮 定 した このような 仮 定 の 下 では β-1,3-グルカン 量 当 たりの 還 元 糖 量 は β-グ ルカンの 分 岐 度 を 反 映 し 還 元 糖 量 当 たりの β-1,6-グルカン 量 は 分 岐 β-1,6-グルカンの 長 さ( 重 合 度 )を 反 映 すると 考 えた ソモギ ネルソン 法 で 還 元 糖 量 を 測 定 し 結 果 から 計 算 した BQ-55 株 では β-1,3-グルカン 量 当 たりの 還 元 糖 量 は T-128 株 と 比 較 して 低 かった( 図 5.11 A) 一 方 で BQ-55 株 の 還 元 糖 量 当 たりの β-1,6-グルカンでは T-128 株 に 比 べ 高 か った( 図 5.11 B) 次 に BQ-10 株 や BQ-48 株 についても 調 べた BQ-10 株 でも β-1,3- グルカン 量 当 たりの 還 元 糖 量 は T-128 株 と 比 較 して 低 かった しかし BQ-48 株 では T-128 株 とほぼ 同 等 だった それゆえ 3 株 の 変 異 株 で 共 通 の 結 果 は 観 察 できなかった 得 られた 値 は 文 献 情 報 に 近 かった[15]が 今 後 NMR などを 用 いた 厳 密 な 測 定 を 行 う 必 要 がある 還 元 糖 量 当 たりの β-1,6-グルカンでは T-128 株 に 比 べ 高 く 3 株 (BQ-10 BQ-48 BQ-55)で 共 通 の 結 果 が 観 察 できた 得 られた 値 は 文 献 情 報 に 近 かった[8 10] が 今 後 MS などを 用 いた 厳 密 な 測 定 を 行 う 必 要 がある 結 果 は 示 さないが これらの 還 元 糖 量 当 たりの β-1,6-グルカンの 増 加 は AQ-37 株 とその 親 株 の y-21 株 の 間 でも mcd4δ とその 親 株 の WT(BY4741 株 )の 間 でも 観 察 された これらの 結 果 は β-グル カンの 長 い β-1,6-グルカンの 分 岐 は マクロファージを 活 性 化 する 能 力 を 高 めることが 示 唆 された BQ-55 株 の 還 元 糖 量 当 たりの β-1,6-グルカンの 値 は BQ-48 株 よりも 少 し 高 い これが BQ-55 株 の 方 が BQ-48 株 よりマクロファージ 活 性 化 能 が 高 い 要 因 の 可 能 性 がある 87

図 5.11 細 胞 壁 β-グルカンの 分 岐 構 造 還 元 糖 量 はソモギ ネルソン 法 で 測 定 した 結 果 は 異 なる 培 養 の 酵 母 を 用 いた 3 回 の 実 験 の 平 均 値 を 示 す また エラーバーは 標 準 偏 差 を 示 す A:β-1,3-グルカン 量 当 たりの 還 元 糖 量 B: 還 元 糖 量 当 たりの β-1,6-グルカン 量 88

分 岐 β-1,6-グルカンの 長 さとマクロファージ 活 性 化 能 との 関 係 については 次 のように 考 えた マンナンタンパク 質 は 主 として GPI アンカーを 介 して β-1,6-グルカンと 結 合 し 主 鎖 である β-1,3-グルカンに 固 定 されている[10] それゆえ β-1,6-グルカンは 細 胞 壁 最 外 層 のマンナンタンパク 質 を 固 定 する 足 場 として 機 能 する β-1,6-グルカンが 長 いと 細 胞 壁 にスペースが 生 じやすいと 考 えられる そのスペースが β-1,3-グルカンと 免 疫 細 胞 表 面 上 の 受 容 体 の 間 の 接 触 を 促 進 するかもしれない 従 って マンナンタンパク 質 の 減 少 による β-グルカンの 露 出 に 加 えて β-グルカン 中 の β-1,6-グルカンの 長 さの 増 加 もマクロファージ 活 性 化 能 に 重 要 かもしれない 従 って 変 異 株 の 細 胞 壁 構 造 の 活 性 化 への 影 響 は 次 のように 考 えた( 図 5.12 ) マンナンタンパク 質 が 減 少 した 変 異 株 ( 図 5.12 B)や β-1,6-グルカンの 長 さが 増 加 した 変 異 株 ( 図 5.12 C)は 高 い 活 性 化 能 を 有 すると 考 えられる さらに それら 両 方 を 併 せ 持 つ 変 異 株 はより 活 性 化 能 が 強 くなると 考 えられる( 図 5.12 D) また 図 5.9 の 結 果 から β-グルカンの 構 造 が β-グルカン 自 体 の 活 性 化 能 に 影 響 していると 考 えられる 89

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図 5.12 マンナンタンパク 質 の 減 少 および β-1,6-グルカンの 長 さの 増 加 がマクロファージの 活 性 化 機 構 に 与 える 影 響 A: 野 生 株 B:マンナンタンパク 質 が 減 少 した 変 異 株 C:β-1,6-グルカンの 長 さが 増 加 した 変 異 株 D:A と B の 両 方 の 性 質 を 持 つ 変 異 株 マンナンタンパク 質 の 減 少 や β-1,6-グルカンの 長 さの 増 加 により 細 胞 壁 にスペースを 生 じマクロファージ 細 胞 表 面 の 受 容 体 と 接 触 しやすくな り 高 い 活 性 化 能 を 獲 得 したと 考 えられる 91