00 核 兵 器 の 技 術 核 兵 器 とは 1 原 子 と 原 子 核 2 核 分 裂 反 応 5 核 分 裂 ( 性 ) 物 質 6 核 分 裂 生 成 物 7 連 鎖 反 応 8 臨 界 量 9 核 分 裂 エネルギー 10 核 融 合 反 応 10 核 融 合 反 応 による 生 成 物 11 原 子 モデル 黄 : 原 子 核 赤 : 陽 子 緑 : 中 性 子 青 : 核 外 電 子 担 当 倉 田 英 世 0
はじめに 核 兵 器 は 第 2 次 大 戦 末 期 に 開 発 され 爆 発 実 験 を 終 わって 日 本 の 広 島 と 長 崎 に 投 下 さ れ 2 つの 中 堅 都 市 の 破 壊 と 30 万 人 を 超 える 死 傷 者 を 出 し その 威 力 を 世 界 に 示 した その 核 兵 器 については その 技 術 的 側 面 を 承 知 して 議 論 している 人 が 少 ない そこで こ れだけは 知 っておいて 欲 しいと 思 う 技 術 的 事 項 を 簡 単 にまとめて 提 供 する 核 兵 器 の 拡 散 軍 縮 廃 絶 等 を 議 論 する 際 の 参 考 になれば 幸 いである 1. 核 兵 器 核 兵 器 は 爆 発 すると 爆 風 ( 衝 撃 波 ) 熱 戦 及 び 光 線 核 放 射 線 及 び 電 磁 パルス( 波 ) 等 を 大 量 に 放 出 し 桁 違 いの 被 害 を 与 える 概 念 図 で 現 せば 第 1 図 : 核 実 験 の 状 況 のよ うになる それらのエネルギーは 一 瞬 のうちにまとまって 放 出 され それぞれ 建 物 等 の 破 壊 可 燃 物 の 焼 却 人 間 を 初 めとする 生 物 の 細 胞 破 壊 及 びコンピュータ システム 等 の 電 気 系 統 破 壊 の 被 害 を 与 える 第 1 図 : 核 実 験 の 状 況 ( 合 成 写 真 ) 破 壊 力 が 極 めて 強 大 で 瞬 間 的 にその 威 力 を 発 揮 し 広 大 な 地 域 に 被 害 をもたらす 実 験 攻 撃 等 に 使 われれば 特 徴 的 な 爆 発 の 景 況 から 先 ず 爆 心 (Grand Zero:GZ)から 遠 く 離 れた 地 域 からでも 規 模 が 大 きいので 使 われたことを 認 識 できる 核 爆 発 は 爆 発 の 瞬 間 ( 約 0.07m sec)に 高 性 能 爆 薬 (TNT)に 換 算 して 10 3 ト ン(キロトン)から 10 6 トン(メガトン)レベルの 大 量 のエネルギーを 放 出 する このエネルギ ーは 超 高 温 ( 摂 氏 数 百 万 度 )で 同 時 に 超 高 圧 ( 数 百 万 気 圧 )のガス 体 からなる{ 火 の 1
玉 }の 形 で 放 出 される このガス 体 は 急 速 に 外 部 に 向 かって 膨 張 し 空 中 では 強 力 な 衝 撃 波 を 地 中 及 び 水 中 では 地 震 波 及 び 津 波 を 発 生 させる これが 爆 風 の 主 体 で 範 囲 は 爆 心 又 は GZ 付 近 に 集 中 する 熱 線 は 火 の 玉 が 輝 いている 間 光 及 び 熱 の 形 で 放 出 される 核 放 射 線 は 熱 線 と 同 様 に 主 として 火 の 玉 及 び 後 に 構 成 される 原 子 雲 から 放 出 される 高 性 能 爆 薬 の 爆 発 現 象 と 比 較 して 大 きな 違 いは エネルギー 発 生 のメカニズムに 起 因 し ている 即 ち 爆 薬 の 爆 発 は 原 子 の 組 み 合 わせの 変 化 であって 如 何 に 高 性 能 なものでも 爆 発 によるエネルギーの 発 生 は 化 学 反 応 による 変 化 で 核 外 電 子 の 結 合 分 離 等 による もので 原 子 核 には 何 ら 変 化 はない これに 対 して 核 爆 発 は 原 子 核 それ 自 体 の 変 化 であって 反 応 の 前 には 無 かった 元 素 の 原 子 が 生 成 され 同 時 に 原 子 核 を 構 成 していた 粒 子 の 一 部 が 粒 子 線 として 更 に 余 剰 のエ ネルギーが 光 又 は 電 磁 波 さらに 熱 線 及 び 核 放 射 線 となるのである 核 爆 発 の 高 度 が 地 ( 水 ) 面 から 高 くなると 爆 風 熱 線 核 放 射 線 の 各 効 果 の 及 ぶ 範 囲 が 広 くなる 地 上 又 は 地 中 爆 発 では 効 果 を 及 ぼす 範 囲 は 光 ( 熱 ) 放 射 線 電 磁 波 に 比 して 狭 いが 地 表 の 凹 凸 起 伏 等 により 与 える 各 種 効 果 の 割 合 が 変 わる 熱 線 を 例 に 取 れば 地 中 爆 発 では 地 表 面 に 対 しては 有 意 な 被 害 は 与 えない 爆 発 形 式 として 表 す 状 況 ( 空 中 地 表 地 中 )の 違 いによって 与 える 全 体 的 な 効 果 ( 被 害 )の 割 合 が 異 なるとともに 地 表 面 に 対 する 効 果 も 異 なってくる かように 高 性 能 爆 薬 の 爆 発 と 異 なって 効 果 の 及 び 範 囲 が 大 きいことから 我 々の 住 む 地 表 に 及 ぼす 効 果 ( 被 害 )は 核 兵 器 の 威 力 ( 爆 発 力 )に 加 え 爆 発 形 式 を 同 時 に 考 慮 する 必 要 がある 核 爆 発 の 際 に 放 出 される 全 エネルギーを 最 も 一 般 的 で 解 りやすい 空 中 爆 発 について 爆 風 熱 線 及 び 放 射 線 の 効 果 別 に 表 すと 第 1 表 : 核 兵 器 3 効 果 のエネルギ ー 配 分 のようになる 第 1 表 : 核 兵 器 3 効 果 のエネルギー 配 分 核 兵 器 の 発 生 効 果 の 分 類 空 中 爆 発 の 例 爆 風 50% 熱 線 35% 放 射 線 初 期 放 射 線 5% 残 留 放 射 線 10% 註 : 殺 傷 破 壊 を 主 体 に 考 慮 しており 電 磁 波 は 対 象 外 今 日 のコンピュータ 時 代 の 資 料 が 欲 しい 2
2. 原 子 と 原 子 核 現 在 の 核 物 理 学 を 第 2 図 : 物 質 を 分 解 してゆく 概 念 図 で 現 すと 物 質 は 分 子 と 原 子 からなり 原 子 を 分 解 して 行 くと 原 子 核 とその 周 囲 を 廻 る 電 子 からなり 原 子 核 は 陽 子 と 中 性 子 から 構 成 されている 原 子 の 質 量 (A)は 陽 子 と 中 性 子 の 数 の 和 である 通 常 自 然 界 に 存 在 する 水 素 の 質 量 数 は1である しかし 水 素 原 子 ( 1 H)の 原 子 量 は 1,0078 である 原 子 の 質 量 を 表 すに は 原 子 質 量 単 位 (u) を 使 用 する 各 種 の 原 子 を 比 較 するため 炭 素 の 同 位 元 素 のうち 質 量 数 12 の 炭 素 (C 12 )の 中 性 ( 放 射 能 を 出 さない) 原 子 の 質 量 を 12 とし この 1/12 を 1 原 子 質 量 単 位 と 定 めた 1u をグラムで 表 すと 1u = 1,66042 10 24gとなる 水 素 原 子 (H 1 )1 個 を 原 子 量 単 位 で 表 した 場 合 にこれを 原 子 量 ちという 炭 素 (C 12 ) の 原 子 量 は 12,000 である いまC 12 の 原 子 6,02252 10 23 個 集 めると その 重 量 は 1, 00782519gとなる 即 ち 原 子 量 12 のC 12 の12gを 炭 素 (C 12 )の 1 グラム 原 子 という 1 グラム 原 子 には 6,02252 10 23 個 の 原 子 が 含 まれている これはどの 元 素 の 1 グラム 原 子 1にも 共 通 する 定 数 で アボガドロ 数 と 呼 ばれる 数 である 第 2 図 : 物 質 を 分 解 していくと 核 子 に 到 達 する 註 : 物 質 は 分 解 して 行 くと 原 子 核 ( 更 に 陽 子 と 中 性 子 )と 電 子 で 構 成 されている 1u(ユニット)は 1.66042 10-24 gであることを 記 したが アボガドロ 数 を 用 いて 計 算 すると 12 C の 1g 原 子 は12gであり 6,023 10 23 の 原 子 を 含 んでいるので 炭 素 (12C の 原 子 1 個 の 重 量 は 1 12g となる 6.023 10 23 炭 素 :C 12 は 12u であるから 1 1u = = 1,660 1024gと 求 められる 3
6,023 10 23 原 子 核 の 構 成 単 位 ( 核 子 )は 陽 子 (Proton) 及 び 中 性 子 (Neutron)である 原 子 核 の 周 辺 を 陽 子 と 同 数 の 電 子 が 周 回 しており それぞれの 質 量 (u) 数 は 次 の 通 りである 中 性 子 = 1,008665u 陽 子 = 1,007276u 電 子 = 0,000548u となる H 1 は 陽 子 と 電 子 の 和 でが 重 水 素 H 2 は H 1 と 中 性 子 の 和 になっていない 1H 2 = 2,014102 1H 1 = 2,016490-0,002388 即 ち 0,002388u だけ 1 H 2 の 方 が 質 量 が 小 さい この 差 を 質 量 欠 損 という 原 子 核 は 含 まれている 核 子 間 に 働 く 非 常 に 強 い 引 力 即 ち 核 力 によって 結 合 され ている 従 って 核 子 がばらばらに 離 れている 時 より 近 くの 核 子 同 士 が 結 集 して 原 子 核 を 構 成 している 方 が 安 定 となり エネルギー 順 位 が 低 くなる この 少 なくなった 分 を 原 子 核 の 結 合 エネルギー と 呼 ぶ 1H 2 に 例 を 取 れば 陽 子 と 中 性 子 の 結 合 エネルギーは 質 量 欠 損 に 相 当 する 0,002388 の 質 量 欠 損 エネルギーに 換 算 すると 1u = 931Mev であることから 0.002388 931=2,23Mev となる なお 参 考 までに 各 種 原 子 の 質 量 数 (u)の1 例 は 次 の 通 りである 1H 1 = 1,007825 1H 2 = 2,14102 92U 235 = 235,04392 即 ち 陽 子 が 低 速 中 性 子 と 結 合 して 重 水 素 となった 場 合 2,23Mev のガンマー(γ) 線 を 放 出 して 安 定 化 する しかもこのエネルギーは 重 水 素 の 原 子 核 を 陽 子 と 中 性 子 に 分 解 するに 必 要 なエネルギーでもある 結 合 エネルギーは 核 子 相 互 の 結 合 力 即 ち 原 子 核 の 安 定 度 を 示 し 大 きければ 原 子 核 が 安 定 であることを 示 している 核 子 一 個 当 たりの 結 合 エネルギーを 例 示 すれば H 2 では 2.23 2=1.12Mev, H 4 では 28.3 4=7.1Mev 4
である 結 合 エネルギーは 各 々の 元 素 ごとに 不 規 則 な 変 化 を 見 せるが 質 量 数 が 56(Fe) 付 近 で 頂 点 となり その 後 元 素 が 大 きくなると 緩 やかに 減 少 する 元 素 は 不 規 則 な 変 化 を 見 せるが 質 量 数 が 56( 鉄 )の 付 近 で 頂 点 となりその 後 は 緩 やか に 減 少 する 質 量 数 20~180 位 までは 8Mev 以 上 あって 原 子 核 は 安 定 であり 軽 い 元 素 と 重 い 元 素 ではやや 不 安 定 になる 不 安 定 といっても 分 子 の 結 合 エネルギーは 数 ev の 百 万 倍 もあり 熱 などのエネルギーでは 分 解 することはない 3. 核 分 裂 反 応 (Nuclear Fission Reaction ) 原 子 核 の 結 合 エネルギー 状 態 から 見 て 重 い( 大 きい) 元 素 の 核 が 不 安 定 で 核 分 裂 を 生 じやすい 傾 向 にある これは 陽 子 (Proton) 相 互 間 に 働 くクーロンの 斥 力 の 効 果 が 増 大 し てくるためである こうなると 原 子 核 の 活 性 エネルギーを 得 れば もとの 球 形 状 態 から 細 長 くなり 途 中 でくびれて そこから 切 断 される 8 核 分 裂 の 状 況 は 第 3 図 : 原 子 の 核 分 裂 に 示 すとおりである 第 3 図 : 原 子 の 核 分 裂 註 : 図 に 示 すように 性 格 に 半 分 になるのではない この 変 化 に 必 要 とするエネルギーを 活 性 エネルギー といっているが 活 性 エネルギー 順 位 の 低 い 原 子 核 は 核 分 裂 を 起 こしやすくなる 質 量 数 (Mass Number)が 同 じであ れば 陽 子 数 の 多 い 方 がクーロン 斥 力 が 大 きくなり 活 性 エネルギーは 小 さくなって 核 分 裂 を 起 こしやすくなる 質 量 数 が 同 じであれば 陽 子 数 の 多 い 方 がクーロン 斥 力 は 大 きくなり 活 性 化 エネルギ 5
ーは 小 さくなって 核 分 裂 を 起 こしやすい また 陽 子 数 が 等 しい( 同 じ 元 素 )ならば 質 量 数 の 少 ない 同 位 元 素 の 方 が 活 性 化 エネルギーは 小 さくなり 核 分 裂 をお 越 し 易 い その 良 い 例 が ウランの 同 位 元 素 U 235 とU 238 の 例 と 言 えるく 核 分 裂 の 過 程 で 原 子 核 が 分 裂 してできた 核 種 を 核 分 裂 生 成 物 という 核 分 裂 片 ともいう 通 常 は 二 等 分 になることはなく 一 方 が 重 く( 質 量 数 140 程 度 ) 一 方 は 軽 い(95 程 度 ) 核 に なる これは 分 裂 するときに 安 定 な 原 子 核 になろうとするためだと 解 釈 されている 核 分 裂 生 成 物 がどの 核 種 になるかはある 確 率 で 決 まる この 確 率 を 収 率 という 核 分 裂 する 核 種 によって 異 なる 収 率 分 布 をもっているので 核 分 裂 生 成 物 を 分 析 すれば 核 反 応 を 起 こした 親 核 種 がわかる 天 然 ウランは U235 が 0.72& U238 が 99.26% U234 がごく 微 量 の 組 成 である U235 とU238 の 核 分 裂 については これらに 中 性 子 を 当 てる と それぞれを 核 分 裂 させるに 必 要 な 活 性 エネルギー 量 が 解 る - U 235 +n 1 U 236 + 6.8Mev U 238 +n 1 U 239 + 7.1Mev 各 々の 核 分 裂 に 必 要 な 活 性 エネルギーは 6.8mev, 7.1Mev であることが 解 る 従 って この 数 値 を 各 々の 複 合 核 を 中 性 子 によって 励 起 (excited state)するに 必 要 なエネルギ ーと 比 較 すると: ( 活 性 化 エネルギー){ 励 起 エネルギー} U 235 6.8Mev 6.8Mev = 0 U 238 7.1Mev 5.3Mev = 1.8 従 って U 235 は エネルギーの 小 さい 熱 中 性 子 が 閣 内 に 入 ると 核 分 裂 するが U 238 は 励 起 エネルギーが 低 いため 約 2Mev の 高 速 中 性 子 が 核 内 に 侵 入 し 得 るよう 励 起 エネルギー を 高 めなければ 核 分 裂 を 起 こさない 3. 核 分 裂 ( 性 ) 物 質 (Fissionable Materials) 自 然 環 境 課 でもウラン(U)やトリウム(Th)は 自 ら 核 分 裂 するが 極 めて 希 で 多 くの 物 質 は 核 分 裂 しない また 十 分 なエネルギーを 与 えれば 重 い 原 子 核 が 分 裂 するが 実 用 にはならない U 238 も 高 速 中 性 子 の 衝 突 では 核 分 裂 を 起 こすが 非 弾 性 散 乱 (Inelastic Scattering )を 起 こすことが 多 く 中 性 子 が 急 速 に 減 速 されてしまう 減 速 されてしまっ た 中 性 子 では 核 分 裂 は 起 こらなくなり 原 子 核 内 に 捕 獲 されてU 239 となり β 崩 壊 する 一 方 U235 は 高 速 中 性 子 でも 熱 中 性 子 でも 核 分 裂 を 起 こす 熱 中 性 子 で 核 分 裂 を 起 6
こす 元 素 を 核 分 裂 物 質 という 核 分 裂 物 質 には U233 U235 Pu239 の 3 種 類 がある * 92U 233 について 天 然 のトリウム(Th)は Th 232 が 100%で 核 分 裂 する 核 種 は Th 232 に 中 性 子 を 当 てて 放 射 性 核 種 のU 235 を 作 る β 崩 壊 β 崩 壊 Th 232 + n 1 Th 233 Pa 233 U 233 22 分 27 日 * 92U 235 について さて 問 題 のU235 は 天 然 ウランの 中 に 0.7% 存 在 する 科 学 的 に 分 離 することは 不 可 能 であり 物 理 的 手 段 ( 気 体 拡 散 法 レーザー 法 等 )で 濃 度 を 高 くしようする これはU 238 の 妨 害 を 防 ぐためである この 過 程 を 濃 縮 という * 94Pu 239 について 天 然 ウランの 99.3%を 占 めるU238 に 中 性 子 を 当 て 作 る β 崩 壊 β 崩 壊 92U 238 + n 1 92U 239-93Np 239 94Pu 239 23 分 2.33 日 上 記 のようにして 原 子 炉 内 で 生 産 ( 増 殖 という)される U 238 と Pu 239 は 相 互 に 化 学 的 性 質 が 異 なるので 分 離 するのは 比 較 的 容 易 である 4. 核 分 裂 生 成 物 (Fissionable Materials) U 235 が 核 分 裂 を 起 こすと 2 つの 核 子 に 分 裂 するが 丁 度 半 分 に 分 裂 するのではなく 40 通 り 位 の 割 れ 方 をし 約 80 種 の 新 しい 放 射 性 核 種 が 生 成 する これを 核 分 裂 生 成 物 と いう 核 分 裂 生 成 物 は 30Zn 72 ( 亜 鉛 )から 63Eu 159 (ユウロピウム)までの 広 範 囲 に 亘 っているが 最 も 生 じやすいのは 質 量 数 95 及 び 136 のもので 全 体 の 約 6%を 占 める 質 量 数 の 半 ば 付 近 の 生 成 物 は 比 較 的 生 じ 難 く 上 記 第 3 図 に 示 すように 2 つの 山 となり 質 量 数 85 から 104 までの 軽 い 核 種 のグループと 130 から 149 までの 重 い 核 種 のグルー プとなるが 重 い 核 種 の 方 が 97%を 占 める 92U 235 の 核 分 裂 を 例 示 すると 92U 235 + n 1 92U 236 56Ba 139 + 36Kr 94 + 3n 1 92U 235 の 陽 子 と 中 性 子 の 比 率 は 1:1.55 で 安 定 である しかし これを 2 分 すると2 種 類 の 軽 い 原 子 核 となる その 中 の 軽 い 原 子 核 では 1:1.55 の 比 率 は 極 めて 不 安 定 であ るが 質 量 数 が 94 付 近 では 1:1.3 程 度 なら 安 定 である 過 剰 となった 中 性 子 は 放 出 7
される そして 急 速 にβ 崩 壊 を 続 けて 質 量 数 94 レベルの 比 率 になろうとする U 238 から 放 出 される 中 性 子 は 速 中 性 子 で 2Mev 程 度 のエネルギーを 持 つて 飛 び 出 す β 崩 壊 の 例 を 示 すと それぞれが 崩 壊 反 応 をして 何 れも 鉛 (Zn 94) となり 安 定 する β β β β K 94 Rb 94 Sr 94 Y 94 Zn 94 ( 安 定 ) 従 って 初 めの 核 分 裂 生 成 物 から 次 々と 新 しい 核 種 に 変 わって 行 くので 核 分 裂 生 成 物 の 種 類 は 200 種 類 にも 上 る 現 実 には これらの 核 種 が 混 ざった 状 態 であるが 時 間 が 経 過 するとともにその 成 分 は 変 化 し 複 雑 な 構 成 になる 核 分 裂 生 成 物 の 性 質 は 第 2 表 : 核 分 裂 性 元 素 の 性 質 の 通 りである 第 2 表 : 核 核 分 裂 性 元 素 の 性 質 92U 233 92U 235 94Pu 239 92U 238 半 減 期 16 万 年 7 億 年 2 万 4 千 年 45 億 年 原 子 量 233,0371 235,0439 239,0522 238,0508 存 在 人 工 天 然 人 工 天 然 核 分 裂 ( 熱 中 性 子 ) 0 0 0 0 反 応 断 面 積 527 582 746 0,0005 核 分 裂 ( 速 中 性 子 ) 0 0 0 0 反 応 断 面 積 2 1 0.5 核 分 裂 で 放 出 され る 平 均 中 性 指 数 2.59 2.96 2.95 密 度 g/cm 3 18.7 18.7 19.0 18.7 半 減 期 は 核 種 によってそれぞれ 異 なるから 核 分 裂 生 成 物 はその 合 成 された 値 となる 放 出 放 射 線 は 初 めは 急 速 に 減 衰 するが 次 第 に 緩 やかになる 大 雑 把 に 言 うと 核 分 裂 の 瞬 間 から 計 った 時 間 に 反 比 例 して 減 って 行 く 5. 連 鎖 反 応 (Chain Reaction) 核 分 裂 反 応 の 際 に 例 えばU 235 ならば 2ないし 3 個 の 中 性 子 が 放 出 される いま 2 個 の 中 性 子 が それぞれ 次 のU 235 に 衝 突 して 核 分 裂 を 起 こすとすれば 2 代 目 は 4 個 の 中 性 子 となり 3 代 目 になれば 8 個 に 増 える こうして 次 々と 核 分 裂 反 応 が 自 発 的 に 継 続 して 行 くことを 連 鎖 反 応 という 1kgのウランを 連 鎖 反 応 によって 全 部 核 分 裂 させると 8
すれば 約 80 代 で 総 てのU 235 を 核 分 裂 させるに 必 要 な 中 性 子 が 得 られて 連 鎖 反 応 を 完 結 させる *1kgのウランの 原 子 数 は 1kg 1g 原 子 =235g 6 10 23 となり 約 2 10 24 個 となる このため 中 性 子 は 10 24 個 あれば 良 いか ら 10 24 =2 n : 即 ちn=80 代 となる この 核 分 裂 に 必 要 な 時 間 は 極 め て 短 く 約 10 8 秒 であり 8 10 7 秒 で 必 要 な 反 応 は 80 代 になる この 連 鎖 反 応 を 起 させるためには 有 効 に 核 分 裂 を 起 こすのは 中 性 子 が 1 核 分 裂 あた り 1 個 以 上 なければ 続 かない しかし1 代 の 核 分 裂 あたり 2 個 以 上 放 出 されても 中 性 子 がウランに 衝 突 せず 外 に 逃 げてしまったり 中 性 子 捕 獲 によって 吸 収 されてしまうと 連 鎖 反 応 は 起 こらなくなってしまう 1 代 当 たりの 核 分 裂 の 数 が 少 ないと 発 生 した 中 性 子 が 逃 げてしまう 恐 れのあるケースが 多 くなる 従 って 計 算 値 よりある 程 度 多 い 核 分 裂 物 質 の 量 が 無 ければ 連 鎖 反 応 は 持 続 しない 6. 臨 界 量 (Critical Mass) 核 分 裂 の 連 鎖 反 応 を 持 続 させるに 必 要 な 最 小 限 の 核 分 裂 生 成 物 の 量 を 臨 界 量 という 臨 界 量 は 核 分 裂 物 質 の 種 類 形 状 化 学 組 成 中 性 子 に 影 響 を 与 える 周 辺 物 質 の 存 在 等 によって 変 化 する 形 状 としては 球 形 が 最 も 適 している 中 性 子 が 失 われる 量 は 表 面 積 に 依 存 する そのため 核 分 裂 によって 吸 収 される 中 性 子 の 量 は 全 体 積 の 大 きさに 従 う 従 って 表 面 積 を 小 さくするには 体 積 を 大 きくするとと もに 状 は 球 形 で 密 度 が 大 きい 方 がよい これは 中 性 子 が 原 子 核 に 衝 突 するためには 単 位 体 積 あたりの 原 子 数 が 多 いほどよいからである なお 臨 界 量 は 核 分 裂 物 質 量 の2 乗 に 反 比 例 するので 少 なくて 良 くなる このことを1 表 に 示 せば 第 3 表 : 核 分 裂 物 質 と 臨 界 量 のようになる 核 分 裂 を 起 こすと 温 度 が 上 昇 し 体 積 が 増 大 するため 密 度 は 小 さくなり 臨 界 に 達 し 無 くなってしまい 連 鎖 反 応 は 停 止 する そのために 予 め 臨 界 量 以 上 のものが 必 要 である また 膨 張 を 食 い 止 めなればならない しかし 核 分 裂 に 際 して 極 めて 高 い 圧 力 ( 百 万 気 圧 )を 受 けたとすると 通 常 の 状 態 の2 倍 の 密 度 となり 臨 界 量 は1/4で 済 む 周 辺 物 質 との 関 係 では 中 性 子 を 反 射 する 物 質 が あれば 一 旦 外 へ 逃 げ 出 ようとした 中 性 子 が 反 射 され 再 び 核 分 裂 物 質 と 作 用 を 起 こすた めに 有 効 に 中 性 子 を 利 用 することができ 臨 界 量 を 小 さくてすくこととなる 9
U 235 Pu 239 第 3 表 : 核 分 裂 物 質 の 種 類 と 臨 界 量 タンパー( 天 然 ウラン) 核 分 裂 物 質 の 性 質 全 体 厚 さ(cm) 重 さ(kg) 臨 界 量 (kg) 半 径 (cm) 総 重 量 (kg) 全 外 径 (cm) 0 0 48.8 8.6 49 17 2.8 51 30.3 7.3 81 20 20.3 1420 16,3 6.0 1436 53 0 2.0 24.1 0 2.0 1824 16.5 10.7 5.8 5.8 5.1 4.1 16.5 31 1830 U 233 0 0 16.0 5.9 16 12 Cf 252 0 0 0.0015 0.25 -- 0.5 註 : 核 分 裂 物 質 が 保 持 している 性 能 と 臨 界 量 中 性 子 を 反 射 する 物 質 ( 反 射 体 )を タンパー という タンパーには 密 度 の 大 きく 中 性 子 を 弾 性 散 乱 する 物 質 がよい 12 14 52 7. 核 分 裂 エネルギー(Nuclear Fission Energy) 核 兵 器 及 び 原 子 炉 は 核 分 裂 によって 生 ずるエネルギーを 利 用 する 機 器 装 置 である 核 爆 発 で 放 出 されるエネルギーは 同 量 の 爆 発 エネルギーを 放 出 する 高 性 能 爆 薬 (TNT 爆 薬 )の 重 量 で 表 す 即 ち1Kt(キロトン) 核 兵 器 とは 高 性 能 爆 薬 1,000 トンが 発 生 する 爆 発 エネルギー(1012cal=2.6 1025Mev)と 同 量 のエネルギーを 放 出 する 核 分 裂 性 物 質 をいう これは 1.45 1023 個 の 原 子 核 の 核 分 裂 に 相 当 する 例 えば 100Ktの エネルギーを 放 出 させるためには 約 1.45 1025 個 の 核 分 裂 が 必 要 である 8. 核 融 合 反 応 (Nuclear Fusion Reaction) 核 融 合 反 応 は 原 子 核 と 原 子 核 の 結 合 である 通 常 小 さな 元 素 で 起 こる 反 応 である 原 子 核 は すべてプラスの 電 荷 を 持 っている したがって 相 互 に 近 づき 合 うと 強 い 電 気 的 な 反 発 力 (クーロン 斥 力 )が 働 き 核 融 合 を 妨 げようとする 従 って 融 合 反 応 をさせるに は 反 発 力 に 打 ち 勝 つ 速 度 を 持 って 衝 突 させねばならない この 速 度 を 与 えるエネルギー 源 として 熱 を 供 給 して 原 子 核 の 熱 運 動 を 激 しくさせれば よい しかしその 熱 のレベルは 数 百 万 度 を 必 要 とする 高 温 に 加 熱 された 原 子 核 は 融 合 を 初 めエネルギーを 連 続 発 生 し 持 続 して 反 応 を 続 けさせる これを 熱 核 反 応 とい う 熱 核 反 応 を 開 始 させる 熱 源 は 現 在 高 温 プラズマとして 研 究 されている 核 融 合 兵 器 を 別 名 で 熱 核 兵 器 (Thermonuclear Weapon)と 称 するのは この 熱 の 作 用 10
に 由 来 し 現 在 はその 熱 源 として 核 分 裂 ( 兵 器 ) の 爆 発 エネルギーを 利 用 している 核 融 合 は 反 応 の 例 として 自 然 界 では 太 陽 がある 太 陽 の 巨 大 なエネルギーは 核 融 合 に の 他 ならない いま1kgのH 3 が 完 全 に 融 合 したとすれば その 放 出 エネルギーは 10,0003g 3g 6 10 23 個 1/2=10 26 : 反 応 数 10 26 11.32Mev 3.8 10 14 cal/mev= 4.3 10 13 cal 核 融 合 の 人 工 的 な 反 応 を 例 示 すれば 第 4 表 : 核 融 合 反 応 の 例 の 通 りである 第 4 表 : 核 融 合 反 応 の 例 H 2 + H 2 H 3 + H 1 + 4.03Mev H 2 + H 2-2 He 3 + n 1 + 3.25Mev H 3 + H 2 2He 4 + n 1 +17.58Mev He 3 + H 2 He 4 + 2n 1 + 18.34Mev H 3 + H 3 He 4 + 2n 1 + 11.32Mev Li 6 + H 2 Li 7 + H 1 + 5.02Mev Li 6 + H 2 Be 7 + n 1 + 3.37Mev Li 6 + H 2 He 4 + He 4 +22.36Mev Li 7 + H 2 He 4 + n 1 + 15.10Mev 註 : 表 に 示 す 反 応 は 一 部 の 例 である TNT の1トンは109calであるからTNT 火 薬 に 換 算 すると 4.3 104=43Ktとなる 意 味 するところは 三 重 水 素 の1kgが 核 融 合 した 場 合 放 出 エネルギーは43Ktになる と 云 うことを 示 している 9. 核 融 合 反 応 生 成 物 (Fusion Product) 上 記 の 反 応 例 に 示 すように 核 融 合 反 応 によって 生 じた 元 素 は ほとんどが 安 定 な 核 種 である 放 射 性 核 種 であるのは H 3 ( 三 重 水 素 )とBe 8 (べリリューム)があるが 極 めて 微 弱 な 放 射 能 しか 出 さない また 中 性 子 を 発 生 するが 発 生 する 中 性 子 は 高 速 中 性 子 である 現 状 では 核 分 裂 による 高 温 を 引 き 金 と 捨 て 使 用 しているため エネルギー 源 としての 核 分 裂 反 応 から 核 分 裂 生 成 物 を 考 慮 しなくてはならない 11
まとめ 以 上 が 核 兵 器 に 関 する 物 理 に 関 する 技 術 の 概 要 である 核 兵 器 について 考 える 場 合 ここ に 示 したレベルの 基 礎 的 技 術 的 側 面 を 念 頭 において 実 施 して 欲 しいと 考 えます 12