基 本 的 事 項 6 医 師 とプロッフェッショナル オートノミー 手 塚 一 男 ( 日 本 医 師 会 参 与 弁 護 士 ) 1.プロフェッションについての 確 立 した 定 義 や 概 念 がどのようなものかは 明 ら かとは 言 えない ここでは まず プロ フェッションなる 用 語 を 生 み 出 した 欧 米 において 伝 統 的 に 三 大 プロフェッショ ンと 呼 ばれてきた 聖 職 者 医 師 弁 護 士 のうち 特 に 後 二 者 を 念 頭 において プ ロフェッションの 基 本 的 特 徴 を 述 べる ( 以 下 のこの 点 に 関 する 記 述 については 石 村 善 助 現 代 のプロフェッション 至 誠 堂 1969 年 に 負 うところが 少 なくな い ) プロフェッションの 基 本 的 特 徴 として 以 下 のような 点 を 挙 げることができる (1) 高 度 の 学 識 と 技 能 1つ 目 は プロフェッションが 科 学 歴 史 その 他 の 学 問 上 の 原 理 に 裏 付 けら れ しばしば 長 期 にわたる 教 育 と 訓 練 に よって 習 得 された 一 定 の 体 系 的 学 識 と 専 門 的 技 能 (professionality)をもつこ と (2) 国 家 による 資 格 の 承 認 特 権 の 付 与 等 2つ 目 は 医 師 や 弁 護 士 は その 有 用 性 が 歴 史 的 にも 社 会 的 にも 承 認 され 公 的 試 験 等 を 通 じて 政 府 の 資 格 承 認 や 特 権 付 与 がなされ 無 資 格 者 による 類 似 の 活 動 が 法 的 に 禁 止 されていること (3) 非 営 利 性 3つ 目 は 医 師 や 弁 護 士 は 依 頼 者 の 具 体 的 要 求 に 応 じて 必 要 とされるサービ スを 提 供 し そのことを 通 じて 社 会 全 体 の 利 益 のために 尽 すことを 目 的 とする 職 業 であり その 点 において 私 益 追 求 を 第 一 義 的 に 掲 げる 企 業 活 動 やビジネスと は 異 なること( 医 師 法 第 1 条 弁 護 士 法 第 1 条 参 照 ) (4) 団 体 としての 活 動 4つ 目 は プロフェッションとして 社 会 的 に 承 認 され 社 会 的 地 位 を 獲 得 し それを 維 持 発 展 させていくためには そ れが1つの 集 団 として 存 在 し 有 用 な 活 動 を 行 っていくことが 必 要 であると 考 え られていることから そのための 団 体 ( 専 門 職 業 団 体 )が 設 けられていること こ のプロフェッション 団 体 の 特 質 は 第 1 に プロフェッションとしての 社 会 的 承 認 を 得 るための 政 治 的 社 会 的 活 動 を 行 う 団 体 であること 第 2に プロフェッシ ョンとしての 技 能 の 教 育 訓 練 維 持 向 上 のための 基 本 的 責 任 を 負 う 団 体 であ ること 第 3に メンバーの 行 動 を 規 制 し ときにはその 非 行 に 対 して 懲 戒 等 の 倫 理 的 自 己 規 制 を 行 う 団 体 であること 等 である 以 上 プロフェッションの 基 本 的 特 徴 と 思 われる 点 について 述 べたが 本 稿 で 問 題 とする プロフェッショナルオートノ ミー は 大 きくは 上 記 4 点 のすべて に 関 わりをもつと 考 えられるものの よ り 具 体 的 には4つ 目 の 団 体 としての 活 動 に 関 わるところが 大 きい これについて は 後 述 する 2. 次 に プロフェッショナルオートノミ ー という 言 葉 についてである まず オ ートノミー の 意 味 が 問 題 になる オートノミーは 自 律 と 訳 されてい るが 自 律 の 意 味 は 一 般 的 な 日 常 用 語 としては 自 分 の 行 為 を 主 体 的 に 規 制 すること 外 部 からの 支 配 や 制 御 から 脱 して 自 身 の 立 てた 規 範 に 従 って 行 動 す ること であり 哲 学 分 野 での 用 語 とし ては カントの 倫 理 学 において 根 本 をな す 観 念 すなわち 実 践 理 性 が 理 性 以 外 の 外 的 権 威 や 自 然 的 欲 望 には 拘 束 されず 自 ら 普 遍 的 道 徳 法 則 を 立 ててこれに 従 う こと であり 他 律 と 対 峙 する 概 念 と されている( 広 辞 苑 第 6 版 ) 意 志 の 自 律 について カントは 実 践 理 性 批 判 の 中 で 意 志 の 自 律 は 一 1
切 の 道 徳 的 法 則 と これらの 法 則 に 相 応 する 義 務 との 唯 一 の 原 理 である ( Die Autonomie des Willens ist das alleinige Prinzip aller moralischen Gesetze und der ihnen gemäßen Pflichten. )と 述 べている( 日 本 語 訳 は 波 多 野 精 一 他 訳 実 践 理 性 批 判 岩 波 文 庫 78 頁 以 下 単 に 同 書 として 引 用 ) その 意 志 の 自 律 とは 何 か ということになるが これ につきカントは 人 間 が( 外 から 与 えら れた 外 的 な 義 務 ではなく) 自 ら 定 めた 普 遍 的 な 法 則 に 従 うという 原 則 を 意 志 の 自 律 の 原 理 と 呼 んでいる( 同 書 78 頁 およ び 中 山 元 訳 道 徳 形 而 上 学 の 基 礎 づけ 光 文 社 文 庫 147 頁 ) そこで 言 う 自 ら 定 めた 普 遍 的 法 則 とは 何 なのかが 問 題 と なるが カントによれば 道 徳 的 法 則 ( 普 遍 的 法 則 )はおよそ 理 性 と 意 志 とを 具 え ている 人 には 元 々 備 わっていて 例 外 な く 妥 当 すべきものであると 言 う そして カントは 道 徳 的 法 則 に 従 えば 何 が 為 されねばならないか ということを 判 定 するのは 格 別 難 しいことではないから ごく 普 通 の まだ 十 分 に 訓 練 されていな い 悟 性 でさえ たとえ 世 才 に 長 けてなく ても たやすく 決 定 できるというのであ る( 同 書 84-86 頁 ) 以 上 のような 考 察 の 下 に カントが 道 徳 性 の 定 言 的 命 令 ( 行 為 を 義 務 たらしめ る 実 践 的 法 則 )として 指 定 するのは 君 の 意 志 の 格 律 が いつでも 同 時 に 普 遍 的 立 法 の 原 理 として 妥 当 するように 行 為 せ よ ( Handle so, daß die Maxime deines Willens jederzeit zugleich als Prinzip einer allgemeinen Gesetzgebung gelten könne. )ということである( 同 書 72 頁 ) ここで 言 う 格 律 とは 行 為 者 の 主 観 的 行 動 原 理 であり 普 遍 的 立 法 の 原 理 と は 上 述 の 普 遍 的 法 則 ( 道 徳 的 法 則 )の ことである 何 故 カントが 定 言 的 命 令 と したのかにつき カントは 次 のように 言 う 人 間 は 叡 智 的 な 主 体 として 知 性 界 に 属 するが 他 方 感 性 界 の 一 員 でもある 知 性 界 の 一 員 であるだけなら すべての 行 為 は 純 粋 な 意 志 の 自 律 の 原 理 に 一 致 す るであろうし 感 性 界 の 一 員 であるだけ なら すべての 行 為 は 欲 望 と 心 の 傾 きと いう 自 然 法 則 に 従 い 自 然 による 他 律 に 一 致 すると 考 えられる しかるに 人 間 は 知 性 界 と 感 性 界 の 双 方 に 属 するから そ のすべての 行 為 が 意 志 の 自 律 の 原 理 にふ さわしいもの である とは 言 えないが ふさわしいもの であるべき とは 言 え る ( 前 記 基 礎 づけ 206-207 頁 ) カントの 著 作 の 記 述 に 基 づく 上 記 の 説 明 は 決 して 平 易 とは 言 えないが カント が 述 べた 意 志 の 自 律 (オートノミー)に ついて 我 国 のカント 研 究 の 第 一 人 者 と 目 される 識 者 によって 簡 潔 に 示 された 説 明 は 次 のとおりである カントの 道 徳 哲 学 においては 意 志 の 自 律 と 意 志 の 自 由 とは 不 可 分 の 関 係 に あるというよりも むしろ 同 義 語 的 であ る カントにおける 意 志 の 自 律 は 意 志 が 道 徳 法 則 以 外 のいかなるものからも 独 立 していて 意 志 が 自 己 自 身 の 純 粋 な 理 性 的 意 志 に 基 づいて 道 徳 法 則 を 自 らの 意 志 の 格 率 として 採 用 することである したがって 意 志 の 自 律 とは たんに 感 覚 的 自 然 的 欲 望 に 拘 束 されないという 消 極 的 な 意 味 の 自 由 ではなく 道 徳 的 法 則 自 身 を 意 志 の 規 定 根 拠 として 自 ら に 課 し これに 従 って 自 ら 行 為 し 自 らの 行 為 をこれに 従 って 自 ら 判 定 す る という 意 味 において 積 極 的 意 味 における 自 由 を 内 容 としているのであ る このように 意 志 の 自 律 としての 積 極 的 な 意 味 での 意 志 の 自 由 を 前 提 にし てのみ 個 々の 行 為 者 の 道 徳 性 が 成 り 立 つことから カントは 意 志 の 自 律 を 道 徳 性 ( 人 倫 性 )の 最 上 の 原 理 であると 語 っている ( 有 福 孝 岳 善 意 志 の 倫 理 学 カントを 学 ぶ 人 のために 181-182 頁 世 界 思 想 社 2012 年 所 収 ) 以 上 が 意 志 の 自 律 (オートノミー) について カントが 述 べていることの 概 要 である カントは プロフェッショナ 2
ルオートノミー について 特 に 述 べては いない しかしカントは 意 志 の 自 律 の 根 幹 を 示 す 道 徳 的 な 法 則 は 人 間 だけ でなくすべての 理 性 的 な 存 在 者 一 般 に 適 用 できるものであると 述 べている( 前 記 基 礎 づけ 72 頁 ) それ 故 カントの 言 う 意 志 の 自 律 (オートノミー)が プ ロフェッションたる 医 師 およびプロフェ ッションたる 医 師 の 団 体 にあてはまるの は 当 然 のことと 考 えられるのであり プ ロフェッショナルオートノミー という 言 葉 の 中 の オートノミー が カント の 言 う 自 律 (オートノミー)に 由 来 す ることは 否 定 し 難 いことと 思 われる 3. プロフェッショナルオートノミー と いう 言 葉 は そもそも 誰 がどのような 意 味 で 用 いているのか プロフェッショナルオートノミー なる 言 葉 は 筆 者 の 知 る 限 り 医 師 という プロフェッションのグローバルな 集 会 で ある 世 界 医 師 会 において 近 年 しばしば 使 われるようになった 用 語 である 嚆 矢 となったのは 1987 年 のWMAマド リッド 宣 言 ( 以 下 旧 マドリッド 宣 言 という)である 同 宣 言 は プロフェッ ショナルオートノミーと 自 己 規 制 に 関 す るWMAマドリッド 宣 言 (WMA Declaration Of Madrid On Professional Autonomy And Self-Regulation)と 題 す るもので プロフェッショナルオートノ ミーと 自 己 規 制 の 重 要 性 に 関 し 10 項 目 からなる 宣 言 を 採 択 したものである 同 宣 言 がプロフェッショナルオートノミー に 関 して 述 べていることは 次 のとおりで ある 1プロフェッショナルオートノミーの 中 心 的 要 素 は 患 者 診 療 に 関 して 自 らの 職 業 的 判 断 を 自 由 に 行 使 できる という 保 証 であること( 第 1 項 ) 2 世 界 医 師 会 と 各 国 医 師 会 は 質 の 高 い 医 療 の 本 質 的 な 要 素 であり した がって 患 者 の 利 益 のために 維 持 され るべきものとして プロフェッショ ナルオートノミーの 重 要 性 を 再 確 認 し 医 の 倫 理 の 基 本 原 則 である 患 者 診 療 におけるプロフェッショナルオ ートノミーを 維 持 し 保 証 すること に 努 めること( 第 2 項 ) 3プロフェッショナルオートノミーの コロラリー( 必 然 に 伴 うこと)とし て 医 師 専 門 職 (Medical Profession) は 個 々の 医 師 の 職 業 上 の 行 動 を 自 ら 規 制 する 継 続 的 な 責 任 を 負 ってい ること( 第 3 項 ) 4 患 者 診 療 におけるプロフェッショナ ルオートノミーを 最 終 的 に 保 証 する のは 実 効 性 のある 自 己 規 律 に 向 け た 積 極 的 な 取 り 組 みであり それ 故 世 界 医 師 会 は 各 国 医 師 会 に 対 し 医 師 の 自 己 規 律 のシステムを 確 立 し 維 持 し これに 積 極 的 に 参 加 するよ う 勧 告 すること( 第 4 項 ) ここに 示 されているプロフェッショナ ルオートノミーについての 見 解 は 後 述 する 若 干 の 修 正 的 宣 言 においても 基 本 的 に 継 承 されており 医 師 専 門 家 集 団 の 現 時 点 におけるほぼ 共 通 の 認 識 を 示 すもの と 考 えられる 同 宣 言 は さらに 第 5 項 以 下 におい て 自 己 規 律 のシステムについての 留 意 点 各 国 医 師 会 間 の 情 報 交 換 国 民 への 周 知 各 国 医 師 会 の 共 同 行 動 等 について 述 べている(その 詳 細 内 容 については 同 宣 言 を 参 照 されたい) その 後 旧 マドリッド 宣 言 の 一 部 は 2008 年 に 同 宣 言 から 切 離 されて 改 めてソ ウル 宣 言 として 採 択 され 残 余 の 部 分 は 2009 年 にニューデリーにおいて マドリ ッド 宣 言 改 定 版 として 採 択 された(した がって 1987 年 マドリッド 宣 言 は 実 質 的 に はその 後 の 上 記 2つの 宣 言 に 振 り 分 けら れた) このうちソウル 宣 言 は プロフェッシ ョナルオートノミーと 臨 床 上 の 独 立 性 に 関 する WMA ソウル 宣 言 (Declaration Of Seoul On Professional Autonomy And Clinical Independence) と 題 するもの 3
で その 前 文 で 世 界 医 師 会 は 医 師 の プロフェッショナルオートノミーと 臨 床 上 の 独 立 性 の 重 要 性 を 探 求 し 5 項 目 の 原 則 を 採 択 すると 述 べている ソウル 宣 言 は 旧 マドリッド 宣 言 で 述 べられているプロフェッショナルオート ノミーの 理 念 を 全 体 として 継 承 しつつ より 臨 床 の 場 にそくした 医 師 患 者 関 係 や 医 療 コストを 含 めた 観 点 から プロフェ ッショナルオートノミーと 臨 床 上 の 独 立 性 の 重 要 性 に 焦 点 を 当 て これを 医 師 のプロフェッショナリズムの 最 も 重 要 な 原 則 と 把 えている 点 が 特 徴 的 である( 詳 細 内 容 は 同 宣 言 を 参 照 されたい) 2009 年 のマドリッド 宣 言 改 訂 版 ( 以 下 新 マドリッド 宣 言 という)は 医 師 主 導 の 職 業 規 範 に 関 するWMAマドリッ ド 宣 言 (Declaration Of Madrid On Professionally-Led Regulation ) と 題 するもので その 前 文 で 医 師 が 自 ら が 定 める 職 業 規 範 の 責 任 を 果 たすという 点 で 患 者 の 利 益 のために 一 致 団 結 し 行 動 することは 各 々の 医 師 が 何 人 から も 干 渉 を 受 けずに 自 らの 判 断 で 診 療 する 権 利 をより 確 実 に 保 証 することとなる と 述 べ 世 界 医 師 会 は 各 国 医 師 会 および すべての 医 師 に 対 し 8 項 目 の 活 動 を 行 うことを 要 請 している 新 マドリッド 宣 言 は プロフェッショ ナルオートノミーにおける 自 己 規 律 に 重 点 をおいていることが 特 徴 的 であるが その 内 容 は 次 項 で 指 摘 する 点 を 除 き 全 体 として 旧 マドリッド 宣 言 を 継 承 するもの である( 詳 細 内 容 は 同 宣 言 を 参 照 された い) 4.これまで 述 べてきたことからひるがえ って 医 師 のプロフェッショナルオート ノミーとは 結 局 何 なのか また 現 時 点 で 課 題 があるとすればそれはどのような ものなのか について 考 えてみる 既 述 のとおり 医 師 のプロフェッショ ナルオートノミーとは 一 般 的 に 言 えば 現 代 の 医 師 および 医 師 集 団 にとっての 行 動 原 則 に 近 いものと 考 えられる 医 師 と プロフェッショナルオートノミーの 問 題 を 正 面 から 取 り 上 げた 新 旧 マドリッド 宣 言 およびソウル 宣 言 を 全 体 として 見 ると プロフェッショナルオートノミーの 中 心 的 要 素 は 医 師 専 門 職 としての 自 律 であり その 自 律 とは ごく 簡 単 に 言 えば(1) 患 者 診 療 に 関 して 政 府 や 行 政 機 関 等 の 外 部 による 規 制 ( 他 律 )を 受 けないという 自 由 を 意 味 すると 共 に (2) 患 者 診 療 に 関 して 自 ら 実 効 性 のある 自 己 規 律 のシ ステムを 構 築 しそれに 従 って 行 動 してい くという 積 極 的 義 務 を 伴 った 自 由 をも 意 味 している この 内 2 番 目 の 自 己 規 律 のシステムの 構 築 については それが 医 師 や 医 師 団 体 の 唯 我 独 尊 的 なシステムで あってはならないことは 改 めて 言 うま でもない それは プロフェッションと しての 医 師 や 医 師 団 体 によって あるべ きシステムとしてのコンセンサスが 得 ら れるものでなくてはならないことも 当 然 であろう それらの 点 については 上 述 した 世 界 医 師 会 の 各 宣 言 の 内 容 には 相 当 な 配 慮 が 加 えられていることが 窺 われる しかし それで 十 分 かについて 新 しい 感 覚 の 下 に 問 題 を 提 起 していると 思 われる のは 新 マドリッド 宣 言 に 盛 込 まれた 次 に 掲 げる 条 項 である 第 4 項 各 国 医 師 会 は 代 表 者 とし ての 責 務 と 規 制 者 としての 責 務 の 両 方 (both representational and regulatory duties)を 担 うことで 生 じ る 潜 在 的 な 利 益 相 反 によって 影 響 を 受 けることがないように 会 員 および 一 般 市 民 を 対 象 として 医 師 主 導 の 職 業 規 範 の 概 念 の 理 解 や 支 持 の 促 進 のため に 最 善 を 尽 くさなければならない 第 8 項 各 国 における 医 師 主 導 の 職 業 規 範 の 効 果 的 かつ 責 任 あるシステム は 私 利 的 または 内 部 保 護 的 であって はならず また 公 平 合 理 的 で 十 分 な 透 明 性 を 備 えていなければならな 4
い 各 国 医 師 会 は 自 己 規 律 システム が 医 師 を 保 護 するものとしてだけで はなく 医 師 という 職 業 そのものの 名 誉 を 守 り そして 一 般 市 民 の 安 全 支 持 および 信 頼 を 維 持 すべきものであ ると 会 員 が 理 解 するよう 支 援 しなけれ ばならない 上 記 第 4 項 は 医 師 の 団 体 が 担 う 医 師 の 代 表 者 として 政 治 的 経 済 的 あるい は 社 会 的 に 積 極 的 な 活 動 を 行 う 責 務 と 医 師 の 自 己 規 律 の 面 における 規 制 者 とし ての 責 務 との 間 に 生 じうる 潜 在 的 な 利 益 相 反 の 問 題 を 取 り 上 げ その 影 響 を 受 け ることがないよう 会 員 のみならず 一 般 市 民 に 対 しても 医 師 の 職 業 規 範 の 概 念 の 理 解 や 支 持 を 促 進 するために 最 善 を 尽 く すべき 旨 を 述 べる これは プロフェッ ショナルオートノミーにおける 重 要 な 問 題 として 従 前 から 認 識 されながら これ まで 正 面 から 取 り 上 げることの 少 なかっ た 課 題 への 積 極 的 な 取 り 組 みの 姿 勢 を 示 すものと 言 えよう 上 記 第 8 項 は 医 師 主 導 による 職 業 規 範 のシステムは 法 令 のように 外 部 から のチェックを 受 けたものではないが だ からといって 私 利 的 または 内 部 保 護 的 であってはならず また 公 平 合 理 的 で 十 分 な 透 明 性 を 備 えたものでなければな らないこと そしてそのことが 医 師 と いう 職 業 の 名 誉 を 守 り 一 般 市 民 の 安 全 支 持 および 信 頼 に 結 びつく 所 以 であ ることを 明 言 する この 第 8 項 は 前 述 したカントの 意 志 の 自 律 の 原 理 に 一 脈 通 ずるものを 含 んでい るようにも 思 われるが 従 来 のプロフェ ッショナルオートノミーについての 考 え 方 を 一 歩 前 進 させ さらに 困 難 な 課 題 に 積 極 的 に 取 り 組 む 姿 勢 を 示 すものと 考 え られる 第 8 項 を 含 め 新 旧 マドリッド 宣 言 およ びソウル 宣 言 等 が 述 べているのは 医 師 のプロフェッショナルオートノミーに 関 する 基 本 的 な 課 題 の 提 示 と 提 言 であり それらをいかにして 達 成 していくかは 主 として 各 国 の 医 師 および 医 師 会 の 今 後 の 具 体 的 な 活 動 に 委 ねられていることで ある 以 上 医 師 とプロフェッショナルオー トノミー について 述 べてきたが 留 意 しなければならないことは 上 記 第 4 項 5