論 文 2030 年 日 本 の 就 業 構 造 ~JIDEA85 モデルによる 経 済 産 業 予 測 ~ JIDEA 研 究 グループ 1 ( 財 ) 国 際 貿 易 投 資 研 究 所 要 約 日 本 産 業 連 関 動 学 モデル(JIDEA)を 更 新 し 2030 年 までの 日 本 の 産 業 構 造 経 済 発 展 の 経 路 をシミュレーションした 人 口 減 少 の 影 響 を 受 け 一 方 で 個 人 可 処 分 所 得 の 伸 びが 低 いため 日 本 経 済 は 長 期 にわたる 低 成 長 を 続 ける この 間 雇 用 は 緩 やかに 低 下 し 雇 用 不 足 は 生 じない 通 信 機 器 コンピュータなど 一 部 の 産 業 部 門 を 除 き 製 造 業 の 労 働 生 産 性 は 停 滞 し 産 出 額 において 比 重 の 高 まるサービス 業 においても 労 働 生 産 性 は 伸 びな い 職 業 別 雇 用 で 見 ると より 高 い 知 識 を 必 要 とする 専 門 職 のウェートが 高 まるとみられる 2009 年 の 新 たな 産 業 連 関 表 をモ デルに 追 加 することによりモデルを 更 新 し 1990 年 から 2009 年 までの 実 際 の 産 業 連 関 表 を 観 測 値 とし 2010 年 から 2030 年 までの 日 本 産 業 の 構 造 を 予 測 する 新 しいモデル JIDEA85 を 構 築 した 観 測 値 は 2009 年 までであるが 2011 年 の 東 日 本 大 震 災 の 被 害 およびそれに 対 する 復 興 予 算 の 執 行 状 況 は 利 用 可 能 なデー タを 使 ってモデルに 組 み 込 んだ 2 ただし 安 倍 新 政 権 の 下 での 2012 年 度 補 正 予 算 ( 日 本 経 済 再 生 に 向 け た 緊 急 経 済 対 策 約 13 兆 円 )は 組 み 込 んだが 2013 年 度 本 予 算 に 関 して は 本 報 告 執 筆 の 日 現 在 (1 月 28 日 ) 正 式 な 決 定 はされていないため 組 み 込 んでいない 3 消 費 税 10%への 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Spring 2013/No.91
二 段 階 引 き 上 げも 同 様 である これらを 前 提 とした JIDEA85 モデ ル 4 による 日 本 経 済 の 長 期 予 測 によ れば 人 口 の 縮 小 および 老 齢 化 によ って 経 済 は 長 期 にわたる 低 成 長 経 済 停 滞 に 見 舞 われるものと 考 えられ る 震 災 復 興 投 資 により 2011 年 から 2015 年 にかけて 一 時 的 な 経 済 成 長 があるものの それ 以 降 はマイナス 成 長 が 続 く 国 内 需 要 の 低 下 は 輸 出 の 増 加 によりその 一 部 は 補 われるが 長 期 にわたる 経 済 の 縮 小 は 避 けられ ない( 図 1) その 理 由 として これ から 2030 年 までに 個 人 可 処 分 所 得 が 十 分 に 増 加 し 人 口 の 減 少 による 需 要 低 下 を 補 うに 足 るとは 考 えられ ないからである 個 人 可 処 分 所 得 が 増 加 しない 背 景 には 国 債 発 行 が 限 界 に 達 し 有 効 な 需 要 刺 激 策 が 採 れな いこと グローバリゼーションの 進 展 により 国 内 投 資 の 拡 大 が 望 めない こと また 労 働 分 配 率 の 低 下 とく にサービス 業 におけるその 低 下 ( 図 2)が 進 行 することが 指 摘 できよう 図 1. 国 内 総 生 産 ( 支 出 サイド 実 質 ) ( 単 位 : 兆 円 ) 国 内 総 生 産 ( 支 出 サイド 実 質 ) ( 兆 円 ) 700 600 500 400 300 200 100 財 サービス 輸 入 財 サービス 輸 出 在 庫 変 動 政 府 固 定 資 本 形 成 民 間 固 定 資 本 形 成 政 府 消 費 家 計 消 費 家 計 外 消 費 0-100 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027 2028 2029 2030 観 測 値 予 測 値 -200 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Spring 2013/No.91
2030 年 日 本 の 就 業 構 造 ~JIDEA85 モデルによる 経 済 産 業 予 測 ~ 図 2. 労 働 分 配 率 ( 単 位 :%) 労 働 分 配 率 (%) 60.0 50.0 40.0 30.0 総 合 計 農 林 水 産 鉱 業 製 造 業 計 *1 サービス 業 20.0 10.0 0.0 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 実 績 予 測 *1 広 義 の 製 造 業 として 製 造 業 に 土 木 建 設 電 気 ガス 水 道 を 含 む このような 困 難 な 状 況 下 にあって 国 民 の 厚 生 向 上 を 図 り 産 業 の 活 力 現 在 抱 えている 問 題 をより 拡 大 して 見 ることが 出 来 る を 回 復 するための 方 策 は 果 たしてあ るのだろうか その 方 策 の 糸 口 を 見 出 すために 産 業 と 雇 用 に 焦 点 を 当 て その 動 きをモデルによって 分 析 してみよう モデルを 用 いた 長 期 予 測 とは 過 去 の 産 業 構 造 の 変 化 傾 向 と 各 種 外 生 要 因 の 将 来 動 向 とを 前 提 と して, 対 象 とする 経 済 の 未 来 像 を 描 くものであり,それによって 我 々の 1) 縮 小 する 日 本 産 業 産 業 構 造 が 変 化 する 背 景 には 人 口 の 減 少 高 齢 化 など 社 会 要 因 にく わえ グローバル 化 の 進 展 などの 市 場 要 因 産 業 それぞれで 行 われる 技 術 革 新 など 技 術 要 因 が 考 えられる 特 に 人 口 減 少 の 影 響 は 顕 著 であり たとえば 新 エネルギー 開 発 などよほ 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Spring 2013/No.91
どの 規 模 の 新 規 産 業 の 創 設 ( 投 資 の 拡 大 ) 労 働 生 産 性 の 向 上 などにより 個 人 所 得 の 増 大 ひいては 消 費 の 拡 大 がない 限 り 経 済 成 長 は 望 めない JIDEA85 モデルによる 分 析 は 過 去 の 産 業 構 造 の 変 化 を 未 来 に 投 影 する ことに 主 眼 をおき 新 規 産 業 の 創 出 あるいは 構 造 改 革 などによる 生 産 性 の 向 上 など 将 来 における 官 民 の 大 きな 政 策 戦 略 の 変 化 は 生 じないと 仮 定 しているため その 未 来 像 はか なり 限 定 的 なものとなる 成 熟 経 済 国 のグローバル 化 の 進 展 は 製 造 業 の 海 外 移 転 の 流 れを 増 大 させ 経 済 のサービス 化 がたどる 不 可 避 な 歩 みを 一 層 促 進 する 製 造 業 は 通 信 機 器 コンピュータ 部 門 など 一 部 の 産 業 を 除 き 投 資 は 縮 小 し 多 くの 産 業 において 生 産 水 準 の 低 下 が 生 じる 農 林 水 産 業 はこれからの 有 望 産 業 として 見 直 しの 気 運 はある ものの 農 業 人 口 の 高 齢 化 制 度 改 革 の 不 備 もあって 回 復 は 望 めそう にない 電 気 ガス 水 道 部 門 は 人 口 縮 小 にもかかわらず 生 活 水 準 の 高 度 化 があり それほど 大 きな 落 ち 込 みは 示 さない サービス 部 門 では 商 業 金 融 不 動 産 も 人 口 減 少 のあ おりを 受 けて 基 調 としては 縮 小 せざ るを 得 ない 運 輸 通 信 情 報 部 門 のみが 技 術 革 新 の 継 続 により 微 増 な いし 横 ばいを 維 持 する( 図 3) 図 3. 部 門 別 国 内 生 産 額 推 移 (2005 年 価 格 ) ( 単 位 : 兆 円 ) 部 門 別 国 内 生 産 額 推 移 2005 年 価 格 兆 円 1,000.0 900.0 800.0 700.0 600.0 500.0 400.0 300.0 200.0 100.0 0.0 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 実 績 予 測 その 他 サービス 公 務 教 育 医 療 運 輸 通 信 情 報 商 業 金 融 不 動 産 電 気 ガス 水 道 建 築 土 木 製 造 業 計 農 林 水 産 鉱 業 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Spring 2013/No.91
2030 年 日 本 の 就 業 構 造 ~JIDEA85 モデルによる 経 済 産 業 予 測 ~ 産 業 構 造 の 大 きな 変 化 をもたらし ているのは IT 技 術 であり 特 に 通 信 ネットワークと 緊 密 に 結 びついた 情 報 化 社 会 の 出 現 である IT 革 命 の 一 時 の 熱 狂 は 盛 りを 過 ぎたものの ス マートフォン タブレット 端 末 など の 携 帯 情 報 機 器 さらにはクラウ ド コンピューティングの 新 たな 普 及 にみられるように 技 術 革 新 は 継 続 している これによって 経 済 環 境 の 革 新 は 続 き 人 と 人 の 結 びつきは 大 きく 変 化 し 取 引 相 手 との 距 離 は 大 幅 に 縮 まり 企 業 内 では 情 報 収 集 加 工 伝 達 が 容 易 となり 組 織 はフラット 化 し 産 業 活 動 の 効 率 は さらに 高 まることだろう その 影 響 は 社 会 全 体 産 業 全 体 に 広 く 及 ぶが 直 接 的 影 響 はコンピュータ 通 信 機 器 部 門 の 比 重 増 大 となって 現 れる ( 図 4) 図 4. 製 造 業 部 門 実 質 生 産 額 指 数 (2005 年 =100) 製 造 業 部 門 実 質 生 産 額 指 数 (2005 年 =100) 350.0 300.0 250.0 200.0 150.0 100.0 総 合 計 01 農 林 水 産 02 鉱 業 製 造 業 計 03 食 料 飲 料 04 繊 維 05 木 製 品 パルプ 06 化 学 品 07 石 油 石 炭 製 品 08 ゴム プラスチック 09 ガラス セメント 他 10 鉄 鋼 業 11 非 鉄 金 属 12 金 属 製 品 13 一 般 特 殊 機 械 14 電 気 機 器 143 コンピュータ 通 信 機 15 輸 送 機 器 151 自 動 車 16 精 密 機 器 17 その 他 製 造 業 18 建 築 土 木 19 電 気 ガス 20 水 道 廃 棄 物 処 理 50.0 0.0 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 実 績 予 測 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Spring 2013/No.91
サービス 産 業 に 目 を 転 じると 人 口 老 齢 化 に 伴 う 医 療 保 険 介 護 部 門 の 生 産 量 増 大 が 目 立 ち また 通 信 部 門 の 増 大 が 顕 著 である その 他 の 部 門 は その 他 サービス 部 門 を 除 き 軒 並 み 生 産 は 低 下 する 商 業 金 融 部 門 は 一 層 の 大 規 模 化 集 約 化 が 進 展 するものの 国 内 市 場 の 縮 小 による 影 響 は 避 けられず 海 外 展 開 に 活 路 を 見 出 さざるを 得 ない( 図 5) 産 業 の 高 度 化 情 報 化 は 知 識 情 報 産 業 の 地 位 をますます 高 め 一 方 で それを 担 う 人 材 の 知 的 能 力 の 高 度 化 多 様 化 が 要 求 されるが 学 齢 人 口 縮 小 によって 教 育 関 連 産 業 は 縮 小 せざ るを 得 ない かたや 人 口 の 老 齢 化 は 医 療 福 祉 関 連 産 業 の 増 大 要 因 となる 一 方 土 木 建 設 部 門 のように 政 府 財 政 赤 字 の 肥 大 化 により 今 後 とも 拡 大 の 見 込 めない 部 門 がある こういった 変 化 の 複 合 がこれからの 日 本 の 産 業 の 姿 といえよう 図 5.サービス 部 門 生 産 額 指 数 (2005 年 =100) サービス 部 門 生 産 額 指 数 2005 年 =100 160.0 140.0 120.0 21 商 業 22 金 融 保 険 23 不 動 産 帰 属 家 賃 100.0 24 運 輸 25 通 信 26 情 報 27 公 務 80.0 28 教 育 研 究 29 医 療 保 健 介 護 30 その 他 公 共 サービス 31 対 事 業 所 サービス 60.0 32 対 個 人 サービス 33 その 他 40.0 20.0 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 実 績 予 測 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Spring 2013/No.91
2030 年 日 本 の 就 業 構 造 ~JIDEA85 モデルによる 経 済 産 業 予 測 ~ 2) 増 大 するサービス 産 業 の 雇 用 このような 産 業 構 造 の 変 化 におい て 雇 用 はどのように 推 移 するのであ ろうか 人 口 は 2005 年 をピークに 減 少 をはじめ 生 産 年 齢 人 口 (15 歳 以 上 人 口 )は 2008 年 から 減 少 に 転 じる その 一 方 で 65 歳 以 上 の 老 齢 人 口 比 率 は 2010 年 の 23%から 2030 年 には 32%へと 大 きく 拡 大 する 5 ( 図 6) モデルで 推 計 される 就 業 者 数 は 産 業 部 門 別 国 内 生 産 額 ( 実 質 )の 予 測 値 に 産 業 部 門 別 の 雇 用 係 数 6 をか けて 推 計 する いわば 理 論 値 として の 産 業 別 必 要 労 働 力 であり 労 働 力 需 給 を 左 右 する 労 働 市 場 の 環 境 変 化 などは 無 視 した 値 である また 失 業 者 は 生 産 年 齢 人 口 に 労 働 力 率 をか けて 算 出 される 労 働 力 人 口 からこの 就 業 者 数 を 引 いて 得 られる 理 論 値 で ある とくに 労 働 力 率 は 労 働 市 場 の 情 況 のみならず 政 府 の 雇 用 対 策 あるいは 女 性 の 労 働 市 場 への 参 加 意 欲 など 制 度 的 社 会 的 環 境 変 化 に よって 大 きく 左 右 され 予 測 は 困 難 である このモデルでは 女 性 の 労 働 市 場 参 加 の 増 大 高 齢 者 の 定 年 延 長 などを 背 景 に 労 働 力 率 は 2010 年 の 60.0%から 2030 年 には 61.7%とゆ るやかに 増 加 すると 仮 定 した その 結 果 2010 年 の 失 業 率 5.1%は 2030 年 には 6.6%とゆるやかに 上 昇 し こ のような 低 成 長 下 では 個 別 部 門 はと もあれ 全 体 としての 雇 用 不 足 は 生 じないことが 明 らかとなる この 動 きを 部 門 別 就 業 者 の 構 成 比 で 見 ると 農 林 水 産 製 造 業 建 築 土 木 電 気 ガス 水 道 など 物 的 生 産 に 関 係 する 部 門 は 全 体 に 占 める 比 重 を 徐 々に 低 下 させ 一 方 でサービ ス 部 門 の 商 業 金 融 不 動 産 運 輸 通 信 情 報 の 雇 用 割 合 の 低 下 は 概 し て 小 さく 公 務 教 育 医 療 その 他 サービス 部 門 の 就 業 者 の 比 重 は 増 大 する( 図 7) この 動 きの 背 景 とし て 産 業 のサービス 化 の 動 きがあり 医 薬 品 部 門 コンピュータ 通 信 機 器 部 門 などの 一 部 産 業 を 除 き 製 造 業 の 生 産 が 軒 並 み 縮 小 していること 一 方 でサービス 部 門 では 通 信 情 報 医 療 保 健 介 護 などの 部 門 の 生 産 が 大 きく 拡 大 することが 指 摘 できる 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Spring 2013/No.91
図 6. 人 口 と 就 業 者 数 ( 単 位 :10 万 人 ) 人 口 と 就 業 者 数 (10 万 人 ) 1400.0 1200.0 1000.0 800.0 600.0 400.0 総 人 口 15 歳 以 上 人 口 65 歳 以 上 人 口 労 働 力 人 口 就 業 者 数 失 業 者 数 200.0 0.0 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 実 績 予 測 ( 出 所 ) 国 立 社 会 保 障 人 口 問 題 研 究 所 総 務 省 統 計 局 労 働 力 調 査 2010 年 以 降 の 労 働 力 人 口 就 業 者 数 および 失 業 者 数 は JIDEA モデル (ver.85) 推 計 結 果 図 7. 部 門 別 就 業 者 数 推 移 部 門 別 就 業 者 数 推 移 (10 万 人 ) ( 単 位 :10 万 人 ) 800.0 700.0 600.0 500.0 400.0 300.0 200.0 その 他 サービス 公 務 教 育 医 療 運 輸 通 信 情 報 商 業 金 融 不 動 産 電 気 ガス 水 道 建 築 土 木 製 造 業 計 農 林 水 産 鉱 業 100.0 0.0 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 実 績 予 測 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Spring 2013/No.91
2030 年 日 本 の 就 業 構 造 ~JIDEA85 モデルによる 経 済 産 業 予 測 ~ 3) 横 ばいないし 低 下 する 労 働 生 産 性 生 産 と 労 働 量 との 関 係 は 就 業 者 一 人 当 たりの 付 加 価 値 額 (あるいは 生 産 額 ) すなわち 付 加 価 値 額 を 就 業 者 数 で 除 した 労 働 生 産 性 と 呼 ばれる 指 標 によって 計 測 できる 上 記 で 説 明 した 産 業 部 門 別 就 業 者 数 の 変 化 は 産 業 ごとの 生 産 額 とその 部 門 の 労 働 生 産 性 という 二 つの 要 因 の 変 化 を 反 映 した 値 である すなわち 当 該 部 門 の 生 産 が 増 大 しても その 部 門 の 労 働 生 産 性 が 改 善 すれば 生 産 の 伸 びほどには 就 業 者 は 増 えないことに なる 一 般 的 には 労 働 生 産 性 は 付 加 価 値 額 を 就 業 者 数 で 割 った 値 として 定 義 されるが ここでは 部 門 ごとの 労 働 者 の 生 産 効 率 に 注 目 し 国 内 生 産 額 ( 実 質 )を 就 業 者 数 で 割 った 産 出 労 働 生 産 性 7 ( 以 下 労 働 生 産 性 と 略 す) を 用 いて 分 析 する 労 働 生 産 性 がそれぞれの 部 門 によ ってバラツキがあるのは その 産 業 が 装 置 産 業 であるか 人 手 を 要 する 労 働 集 約 的 産 業 であるかなど 産 業 の 性 格 に 負 うところが 大 きく 就 業 者 一 人 当 たりの 生 産 額 で 部 門 間 の 比 較 をすることはあまり 意 味 がない ここでは 労 働 生 産 性 の 時 系 列 変 化 すなわち 2005 年 を 100 とする 指 数 で 見 てみよう 産 業 全 体 では 2010 年 の レベルからは 低 下 が 続 いているが 製 造 業 全 体 では 2010 年 の 落 ち 込 み 以 降 ほぼ 横 ばいとなっている( 図 8) 実 質 生 産 額 が 低 下 しているという 情 況 の 下 で 多 くの 製 造 業 部 門 におい て 労 働 生 産 性 は 横 ばいないし 緩 やか な 低 下 を 示 す 生 産 が 低 下 している にもかかわらず 労 働 生 産 性 が 横 ばい を 維 持 しているのは 生 産 縮 小 に 合 わせて 雇 用 調 整 が 行 われているため と 考 えられ 一 方 生 産 低 下 に 並 行 した 労 働 生 産 性 の 低 下 は 当 該 産 業 で 雇 用 が 維 持 されたことにより 生 産 効 率 が 低 下 したことで 一 部 は 説 明 で きよう 労 働 生 産 性 が 向 上 する 部 門 はコンピュータ 通 信 機 器 およびこ れを 含 む 電 気 機 器 に 限 られている サービス 業 の 労 働 生 産 性 は 業 種 に よるバラツキが 大 きく 通 信 情 報 部 門 が 上 昇 を 続 けるのに 対 し 労 働 集 約 的 産 業 としての 性 格 の 強 い 医 療 介 護 保 健 対 事 業 所 サービス は 緩 やかな 低 下 が 続 く これらの 部 門 の 生 産 額 は 上 昇 ないし 横 ばいが 続 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Spring 2013/No.91
いており 衰 退 する 日 本 産 業 の 中 で は 数 少 ない 非 衰 退 部 門 である 就 業 者 数 の 比 較 的 多 い 商 業 金 融 保 険 部 門 は 横 ばいないし 緩 やかな 低 下 を 示 す 一 方 対 個 人 サービス 教 育 研 究 その 他 公 共 サービス 公 務 な どの 部 門 は 生 産 性 がやや 低 下 する これらの 部 門 はその 大 部 分 が 個 人 を 対 象 としたサービス 提 供 であり 人 口 減 少 の 影 響 をそのまま 受 けて 生 産 が 低 下 するが 雇 用 はそれほど 減 ら ず 生 産 効 率 は 低 下 せざるを 得 ない からである ( 図 9) 図 8. 製 造 部 門 労 働 生 産 性 推 移 (2005 年 =100) 製 造 部 門 労 働 生 産 性 推 移 2005 年 =100 140.0 120.0 100.0 80.0 60.0 40.0 20.0 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 実 績 予 測 総 合 計 01 農 林 水 産 02 鉱 業 製 造 業 計 03 食 料 飲 料 04 繊 維 05 木 製 品 パルプ 06 化 学 品 07 石 油 石 炭 製 品 08 ゴム プラスチック 09 ガラス セメント 他 10 鉄 鋼 業 11 非 鉄 金 属 12 金 属 製 品 13 一 般 特 殊 機 械 14 電 気 機 器 143 コンピュータ 通 信 機 15 輸 送 機 器 151 自 動 車 16 精 密 機 器 17 その 他 製 造 業 18 建 築 土 木 19 電 気 ガス 20 水 道 廃 棄 物 処 理 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Spring 2013/No.91
2030 年 日 本 の 就 業 構 造 ~JIDEA85 モデルによる 経 済 産 業 予 測 ~ 経 済 の 高 度 化 により 製 造 業 の 比 重 が 低 下 し サービス 産 業 の 比 重 が 増 すのは 必 然 の 流 れであるが サー ビス 産 業 の 中 でも 通 信 情 報 など 先 端 分 野 において 労 働 生 産 性 の 向 上 が 続 いているのは これらの 部 門 がな お 発 展 途 上 にあることを 意 味 し 経 済 の 活 力 の 中 核 となっているといえる 一 方 労 働 生 産 性 指 数 が 低 下 しつ つ 生 産 が 維 持 されている 部 門 は 経 済 の 低 下 する 中 にあって 雇 用 を 維 持 し 続 ける 部 門 であり それらの 産 業 が 日 本 の 雇 用 を 下 支 えしている 図 9.サービス 産 業 労 働 生 産 性 推 移 (2005 年 =100) サービス 産 業 労 働 生 産 性 推 移 2005 年 =100 160.0 140.0 120.0 21 商 業 22 金 融 保 険 100.0 23 不 動 産 帰 属 家 賃 24 運 輸 25 通 信 80.0 26 情 報 27 公 務 28 教 育 研 究 60.0 29 医 療 保 健 介 護 30 その 他 公 共 サービス 31 対 事 業 所 サービス 40.0 32 対 個 人 サービス 20.0 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 実 績 予 測 33 その 他 線 形 ( 30 その 他 公 共 サービス) 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Spring 2013/No.91
表 1. 産 出 労 働 生 産 性 指 数 (2005 年 =100) 実 績 予 測 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 総 合 計 89.2 91.7 93.7 100.0 99.2 98.1 96.4 94.2 91.4 01 農 林 水 産 101.5 95.0 97.1 100.0 104.3 104.6 103.1 101.2 99.2 02 鉱 業 62.8 70.3 93.0 100.0 92.0 88.6 85.7 82.7 79.9 製 造 業 計 71.1 77.4 87.8 100.0 92.1 91.3 91.1 90.6 90.0 03 食 料 飲 料 91.7 98.4 111.5 100.0 99.6 96.3 94.2 91.6 88.8 04 繊 維 91.5 88.6 103.5 100.0 78.9 78.3 75.3 71.0 65.9 05 木 製 品 パルプ 76.4 88.8 96.3 100.0 87.1 86.8 87.1 87.6 88.5 06 化 学 品 61.4 68.3 87.7 100.0 101.5 101.3 101.0 100.2 99.2 07 石 油 石 炭 製 品 50.4 70.6 78.4 100.0 97.6 97.0 96.4 96.1 96.0 08 ゴム プラスチック 101.6 88.8 106.5 100.0 86.0 83.8 81.0 77.8 74.2 09 ガラス セメント 他 93.0 88.0 96.7 100.0 81.9 80.1 78.3 75.6 72.0 10 鉄 鋼 業 83.9 83.4 90.8 100.0 80.0 79.4 78.3 76.9 75.2 11 非 鉄 金 属 82.4 77.4 89.7 100.0 86.8 85.2 83.3 81.1 78.8 12 金 属 製 品 93.0 116.7 110.2 100.0 82.3 80.7 78.2 75.0 71.0 13 一 般 特 殊 機 械 93.4 91.5 88.6 100.0 80.6 78.7 77.7 76.7 75.4 14 電 気 機 器 43.8 52.6 66.2 100.0 100.2 100.8 103.1 106.2 110.5 143 コンピュータ 通 信 機 34.4 47.1 60.8 100.0 100.5 99.6 99.6 101.1 104.3 15 輸 送 機 器 78.7 72.9 81.7 100.0 91.5 91.8 92.8 93.4 93.4 151 自 動 車 78.3 73.5 83.4 100.0 88.3 87.0 86.8 86.6 86.0 16 精 密 機 器 70.8 85.0 80.2 100.0 95.6 95.5 94.7 93.7 92.3 17 その 他 製 造 業 93.0 93.9 95.6 100.0 102.1 99.5 96.5 93.0 88.8 18 建 築 土 木 133.2 111.0 106.2 100.0 90.3 89.8 89.6 87.7 83.9 19 電 気 ガス 69.3 89.6 99.1 100.0 106.9 107.4 106.9 105.7 103.7 20 水 道 廃 棄 物 処 理 104.4 101.2 98.0 100.0 101.2 98.4 95.9 93.0 89.9 21 商 業 67.8 77.8 79.4 100.0 91.7 89.5 87.0 86.3 86.0 22 金 融 保 険 53.3 65.8 77.4 100.0 98.6 98.4 97.7 96.6 95.1 23 不 動 産 帰 属 家 賃 73.2 81.6 82.3 100.0 107.8 106.1 105.5 104.8 104.4 24 運 輸 112.3 103.3 98.1 100.0 105.9 101.9 97.3 92.3 86.8 25 通 信 42.9 51.1 79.0 100.0 122.2 137.2 146.0 147.5 141.9 26 情 報 86.6 80.0 87.3 100.0 121.7 127.2 130.6 131.9 130.9 27 公 務 50.2 71.6 83.4 100.0 73.1 70.7 67.8 64.6 61.1 28 教 育 研 究 90.8 87.9 97.5 100.0 98.6 96.4 93.3 89.3 84.5 29 医 療 保 健 介 護 124.2 142.2 108.1 100.0 114.4 115.7 116.4 116.8 117.0 30 その 他 公 共 サービス 76.6 91.2 83.1 100.0 95.8 92.3 89.5 86.0 81.8 31 対 事 業 所 サービス 102.8 109.1 101.8 100.0 112.1 114.5 115.5 115.2 113.5 32 対 個 人 サービス 126.8 113.3 111.3 100.0 101.5 98.8 94.8 89.7 83.6 33 その 他 93.3 138.3 72.2 100.0 96.4 94.1 89.4 83.9 77.6 4) 高 度 化 する 日 本 産 業 と 専 門 職 の 比 重 の 高 まり 周 辺 アジアの 新 興 国 の 追 い 上 げを 受 け 日 本 は 産 業 の 高 度 化 高 付 加 価 値 化 へと 邁 進 せざるを 得 ない 国 内 市 場 は 人 口 減 により 市 場 拡 大 は 頭 打 ちとなり 海 外 市 場 に 活 路 を 見 出 すほかはないが 海 外 市 場 の 多 様 化 現 地 市 場 における 競 争 激 化 に 柔 軟 に 対 応 すべく 製 造 業 の 海 外 シフト は 一 層 拡 大 する このような 動 きを 受 けて 製 造 業 においては 国 内 生 産 を 他 国 の 追 随 を 許 さない 高 機 能 部 品 高 機 能 素 材 に 特 化 する 動 きが 一 層 顕 著 となろう サービス 部 門 において は 人 口 老 齢 化 に 対 応 したサービス の 充 実 に 努 めるほか 高 度 情 報 化 社 会 の 進 展 に 対 応 した 通 信 情 報 関 連 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Spring 2013/No.91
2030 年 日 本 の 就 業 構 造 ~JIDEA85 モデルによる 経 済 産 業 予 測 ~ 産 業 における 技 術 革 新 ソフト 開 発 新 規 事 業 の 創 設 が 続 くことになる このような 産 業 の 動 きに 対 応 した 人 材 育 成 が 今 後 の 重 要 な 課 題 といえる が その 分 析 の 一 端 として 職 業 別 就 業 人 口 の 変 化 を 眺 めてみよう 産 業 連 関 表 の 付 帯 表 として 産 業 別 就 業 者 を 職 業 別 就 業 者 に 転 換 でき る 雇 用 表 が 基 準 年 ごとに 公 開 されて いる すなわち 各 産 業 部 門 で 需 要 されている 職 業 ( 職 業 能 力 )が 人 数 として 記 載 されているマトリックス である いま 入 手 し 得 る 最 新 の 表 は 2005 年 のものであるが この 表 の 値 を 係 数 化 することにより 産 業 ごと の 就 業 者 数 を 職 業 ごとの 就 業 者 数 に 転 換 できる 本 来 この 転 換 率 は 各 産 業 の 発 展 に 応 じて 変 化 するはずで あるが ここでは 2005 年 の 比 率 で 固 定 して 2030 年 までの 変 化 を 計 測 す る すなわち 転 換 比 率 を 固 定 してい るので 職 業 別 人 数 の 時 系 列 変 化 は 産 業 部 門 別 就 業 者 数 の 変 化 をそのま ま 反 映 した 値 となり 実 際 に 生 じる 現 象 の 一 面 を 捉 えるに 過 ぎない( 産 業 ごとに 必 要 とする 職 業 の 組 み 合 わ せは 時 間 の 推 移 による 技 術 変 化 によ って 変 化 することは 無 視 している) といえるが 今 後 に 生 じる 変 化 の 一 部 を 垣 間 見 ることはできよう 下 記 の 表 2 はモデルで 推 計 した 産 業 部 門 別 就 業 者 数 を 雇 用 マトリック スにより 職 業 別 就 業 者 数 に 転 換 し 職 業 別 就 業 者 数 のウェートが 今 後 ど のように 変 化 するか 2030 年 の 構 成 比 から 2010 年 の 構 成 比 を 引 いた 値 を B-A 欄 にその 差 の 大 きい 順 に 示 し た この 値 がプラスの 場 合 は 2030 年 にかけてウェートが 増 している 職 業 であり マイナスの 場 合 はウェー トが 減 じていることを 示 す 職 業 別 人 数 としては 一 般 事 務 従 業 者 いわゆるホワイトカラーが 20%を 占 めている その 次 に 多 いの は 商 品 販 売 従 事 者 で 全 体 のほ ぼ 10%を 占 める この 二 つの 職 業 が 突 出 しており それ 以 下 は 一 段 と 小 さなウェートで 多 くの 職 業 が 並 んで いる 人 数 の 多 い 一 般 事 務 従 業 者 の ウェートが 大 きく 減 っているように 専 門 性 の 低 い 職 業 の 需 要 は 今 後 ます ます 低 下 するとみてよい その 背 景 には 組 織 のフラット 化 OA の 進 展 などが 指 摘 できる 保 健 医 療 従 事 者 には 医 師 から 薬 剤 師 臨 床 衛 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Spring 2013/No.91
表 2. 職 業 別 就 業 者 数 の 予 測 ( 単 位 : 千 人 %) 中 分 類 職 業 名 2010 年 2030 年 A B 2010 年 構 成 比 2030 年 構 成 比 B-A 3 保 健 医 療 従 事 者 2534.0 3040.4 3.86 4.79 0.93 27 その 他 のサービス 職 業 従 事 者 1241.8 1469.8 1.89 2.31 0.42 23 生 活 衛 生 サービス 職 業 従 事 者 716.6 886.6 1.09 1.40 0.31 4 社 会 福 祉 専 門 職 業 従 事 者 662.2 786.1 1.01 1.24 0.23 12 その 他 の 専 門 的 技 術 的 職 業 従 事 者 653.8 749.7 1.00 1.18 0.18 33 自 動 車 運 転 者 1812.8 1860.0 2.76 2.93 0.17 22 家 庭 生 活 支 援 サーヒ ス 職 業 従 事 者 362.1 438.3 0.55 0.69 0.14 24 飲 食 物 調 理 従 事 者 2097.3 2099.3 3.19 3.31 0.11 25 接 客 給 仕 職 業 従 事 者 2253.0 2246.7 3.43 3.54 0.11 58 建 設 作 業 者 2457.2 2434.9 3.74 3.83 0.09 7 教 員 1424.4 1421.9 2.17 2.24 0.07 60 その 他 の 労 務 作 業 者 2390.5 2341.2 3.64 3.69 0.05 8 宗 教 家 139.8 156.6 0.21 0.25 0.03 56 電 気 作 業 者 628.4 628.3 0.96 0.99 0.03 18 運 輸 通 信 事 務 従 事 者 324.4 329.4 0.49 0.52 0.02 11 音 楽 家, 舞 台 芸 術 家 109.3 119.3 0.17 0.19 0.02 35 その 他 の 運 輸 従 事 者 2352.4 2284.7 3.58 3.60 0.02 21 販 売 類 似 職 業 従 事 者 160.1 164.7 0.24 0.26 0.02 36 通 信 従 事 者 154.4 152.5 0.24 0.24 0.01 32 鉄 道 運 転 従 事 者 42.2 43.7 0.06 0.07 0.00 10 美 術 家, 写 真 家,デザイナー 185.5 182.1 0.28 0.29 0.00 34 船 舶 航 空 機 運 転 従 事 者 32.9 34.2 0.05 0.05 0.00 55 定 置 機 関 機 械 及 び 建 設 機 械 運 転 作 業 者 379.2 368.3 0.58 0.58 0.00 57 採 掘 作 業 者 33.1 32.0 0.05 0.05 0.00 15 その 他 の 管 理 的 職 業 従 事 者 333.9 322.5 0.51 0.51 0.00 17 外 勤 事 務 従 事 者 69.8 66.4 0.11 0.10 0.00 39 窯 業 土 石 製 品 製 造 作 業 者 253.3 243.7 0.39 0.38 0.00 6 経 営 専 門 職 業 従 事 者 68.8 64.9 0.10 0.10 0.00 9 文 芸 家, 記 者, 編 集 者 83.4 78.5 0.13 0.12 0.00 61 分 類 不 能 の 職 業 26.7 23.0 0.04 0.04 0.00 5 法 務 従 事 者 28.8 23.5 0.04 0.04-0.01 19 事 務 用 機 器 操 作 員 200.4 188.6 0.31 0.30-0.01 1 科 学 研 究 者 163.4 152.6 0.25 0.24-0.01 53 革 革 製 品 製 造 作 業 者 31.3 23.3 0.05 0.04-0.01 31 漁 業 作 業 者 247.8 231.9 0.38 0.37-0.01 46 飲 料 たばこ 製 造 作 業 者 56.6 45.4 0.09 0.07-0.01 26 居 住 施 設 ビル 等 管 理 人 1415.1 1356.3 2.15 2.14-0.02 13 管 理 的 公 務 員 276.3 254.0 0.42 0.40-0.02 14 会 社 団 体 等 役 員 85.4 69.1 0.13 0.11-0.02 30 林 業 作 業 者 2143.4 2056.3 3.26 3.24-0.03 38 化 学 製 品 製 造 作 業 者 703.0 663.4 1.07 1.04-0.03 43 輸 送 機 械 組 立 修 理 作 業 者 311.0 284.3 0.47 0.45-0.03 59 運 搬 労 務 作 業 者 51.1 32.8 0.08 0.05-0.03 52 ゴム プラスチック 製 品 製 造 作 業 者 484.6 446.6 0.74 0.70-0.03 44 計 量 計 測 機 器 光 学 機 械 器 具 組 立 修 理 作 業 者 130.8 102.9 0.20 0.16-0.04 41 一 般 機 械 器 具 組 立 修 理 作 業 者 1110.2 1046.5 1.69 1.65-0.04 50 パルプ 紙 紙 製 品 製 造 作 業 者 168.1 130.4 0.26 0.21-0.05 48 衣 服 繊 維 製 品 製 造 作 業 者 313.5 262.6 0.48 0.41-0.06 37 金 属 材 料 製 造 作 業 者 13189.2 12708.9 20.08 20.01-0.07 16 一 般 事 務 従 事 者 237.3 184.2 0.36 0.29-0.07 47 紡 織 作 業 者 155.7 80.0 0.24 0.13-0.11 51 印 刷 製 本 作 業 者 7274.7 6958.9 11.08 10.96-0.12 20 商 品 販 売 従 事 者 334.5 242.3 0.51 0.38-0.13 45 食 料 品 製 造 作 業 者 1573.5 1430.9 2.40 2.25-0.14 40 金 属 加 工 作 業 者 1506.9 1364.2 2.29 2.15-0.15 2 技 術 者 2278.3 2106.5 3.47 3.32-0.15 42 電 気 機 械 器 具 組 立 修 理 作 業 者 1185.9 1043.1 1.81 1.64-0.16 49 木 竹 草 つる 製 品 製 造 作 業 者 262.3 133.4 0.40 0.21-0.19 28 保 安 職 業 従 事 者 1205.7 1021.6 1.84 1.61-0.23 54 その 他 の 製 造 制 作 作 業 者 2000.8 1762.7 3.05 2.78-0.27 29 農 業 作 業 者 2490.8 2031.4 3.79 3.20-0.59 職 業 合 計 65678.9 63506.9 100.00 100.00 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Spring 2013/No.91
2030 年 日 本 の 就 業 構 造 ~JIDEA85 モデルによる 経 済 産 業 予 測 ~ 生 検 査 技 師 栄 養 士 など 多 彩 な 職 種 が 含 まれるが 全 体 として 高 い 知 的 レベルが 要 求 されるといえる 商 品 販 売 従 業 者 はこの 間 ウェートを 若 干 減 らし 保 健 医 療 従 事 者 はウェ ートを 増 している その 背 景 にある のは 人 口 の 高 齢 化 であるが また 一 方 でこのような 情 況 変 化 への 対 応 に より 専 門 職 の 比 重 の 高 まりが 生 じ ることが 見 て 取 れよう 経 済 のサー ビス 化 により 製 造 業 部 門 が 縮 小 す ることを 背 景 に 多 くの 製 造 業 関 係 職 種 において そのウェートは 今 後 低 下 する 産 業 の 高 度 化 により 今 後 増 加 するだろうと 考 えられる 技 術 者 科 学 研 究 従 事 者 などが 減 少 するという 予 測 結 果 がこの 表 からう かがわれるが その 背 景 にはこの 間 の 製 造 業 のウェートがサービス 業 に 比 べて 低 下 することがあるかもしれ ない 総 じて 社 会 の 多 様 化 に 対 応 で きる 知 的 能 力 を 必 要 とする 職 業 のウ ェートが 増 大 する 傾 向 にあり 大 き な 変 化 を 必 要 としない 伝 統 的 職 業 分 野 では 低 下 するケースが 多 い これ らの 分 野 は 新 興 工 業 国 の 労 働 者 との 競 合 にさらされやすいことが 背 景 と して 指 摘 できよう また サービス 業 においては そのサービスの 生 産 が 消 費 と 同 時 に 行 われる 職 業 (たと えば 理 髪 業 )などにおいては 海 外 の 生 産 者 と 競 合 する 可 能 性 が 低 いた め ウェートが 横 ばいないし 高 まる ケースが 多 い 3.むすび ~ 人 口 縮 小 下 での 高 度 成 熟 社 会 の 実 現 に 向 かって~ 人 口 縮 小 が 経 済 の 縮 小 を 招 く 原 因 であるとすれば 人 口 を 増 やす 方 策 すなわち 出 生 率 の 向 上 あるいは 移 民 の 拡 大 が 必 要 となろう 出 生 率 の 向 上 は 短 期 的 方 策 としては 困 難 であ り 移 民 の 受 け 入 れ 増 大 は それに よって 引 き 起 こされる 社 会 的 文 化 的 問 題 の 解 決 を 必 要 とする 労 働 力 人 口 減 を 補 うには 保 育 施 設 の 拡 充 など 女 性 の 労 働 参 加 を 容 易 にし 高 齢 者 の 再 雇 用 など 労 働 参 加 率 を 高 める 方 策 があるが 労 働 力 人 口 の 縮 小 そのものはやむをえないとし 外 国 人 労 働 者 の 受 け 入 れも 限 定 的 なも のとするのであれば 人 口 縮 小 下 で 経 済 規 模 を 維 持 拡 大 する 方 策 が 考 察 されなければならない 縮 小 する 人 口 下 にあって 日 本 が 現 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Spring 2013/No.91
状 程 度 の 生 産 力 をそのまま 維 持 する には 労 働 者 一 人 当 たりの 生 産 量 を 増 大 させるほかはない 労 働 時 間 の 増 大 は 論 外 であり 結 局 は 労 働 の 効 率 および 質 を 高 める 必 要 がある 製 造 業 であれば 機 械 設 備 とりわけロ ボットなど 自 動 化 設 備 を 積 極 的 に 導 入 し 雇 用 を 増 やすことなく 生 産 を 拡 大 すればよい もう 一 つの 方 法 は 生 産 物 そのものの 価 値 を 引 き 上 げる すなわち 付 加 価 値 の 高 い 製 品 にシフ トすることである 新 エネ 関 連 産 業 ips 細 胞 による 新 医 療 技 術 などすで に 動 き 出 しているいくつかのテーマ があるが それ 以 外 にも 民 間 の 意 欲 的 な 創 意 工 夫 により 世 界 をリード できるような 先 進 的 な 技 術 開 発 製 品 開 発 が 期 待 される 研 究 開 発 の 有 効 な 支 援 策 あるいはベンチャー 企 業 を 効 果 的 に 支 援 するシステムの 導 入 も 課 題 であろう サービス 業 においては 今 後 とも 大 幅 な 情 報 化 を 推 進 して 効 率 を 高 め るとともに 消 費 ニーズを 掘 り 起 こ し 新 たなサービスの 開 発 導 入 が 重 要 となる 人 材 面 においては す ぐに 陳 腐 化 してしまう 知 識 の 詰 め 込 みよりも 自 ら 考 えて 行 動 し 創 意 工 夫 を 行 える 創 造 力 に 富 んだ 人 材 を 育 成 できるよう 教 育 改 革 が 急 務 で はなかろうか 巻 末 注 JIDEA85 モデルによる 2030 年 予 測 の 前 提 条 件 2010 年 から 2030 年 までの 経 済 成 長 過 程 予 測 シミュレーションのための 主 要 前 提 条 件 は 以 下 のとおり 設 定 した 為 替 レートは 予 測 期 間 中 2012 年 の 期 中 平 均 1 ドル 79.79 円 で 不 変 (2011 年 までは 実 測 値 ) 財 別 輸 入 価 格 および 財 別 対 日 海 外 需 要 の 予 測 については INFORUM のバイラテ ラル 世 界 貿 易 モデルの 予 測 値 を 基 礎 とし つつ それを 修 正 した 値 を 導 入 中 間 投 入 係 数 は 1990 年 から 2009 年 ま での 産 業 連 関 表 を 時 系 列 につなげたもの の 行 計 についてトレンド 性 が 確 認 できた ものを 2030 年 まで 延 長 し モデルに 組 み 込 んだ 政 府 投 資 ( 東 日 本 震 災 復 興 投 資 は 別 途 加 算 ) 在 庫 変 動 は 直 近 5 年 間 移 動 平 均 値 人 口 は 国 立 社 会 保 障 人 口 問 題 研 究 所 の 日 本 の 将 来 推 計 人 口 ( 平 成 18 年 12 月 推 計 )の 出 生 中 位 ( 死 亡 中 位 ) 推 計 を 採 用 した 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Spring 2013/No.91
2030 年 日 本 の 就 業 構 造 ~JIDEA85 モデルによる 経 済 産 業 予 測 ~ 消 費 税 は 2030 年 まで 5%に 固 定 労 働 参 加 率 は 定 年 延 長 女 性 の 労 働 参 加 増 加 を 想 定 して 2009 年 の 59.88%から 2030 年 に は 61.68%と 年 率 0.14%の 上 昇 を 仮 定 東 日 本 大 震 災 による 被 害 は 製 造 業 につ いては 被 災 地 域 における 生 産 が 4 カ 月 停 止 し その 生 産 額 分 の 供 給 ( 消 費 )が 減 少 したと 仮 定 した 農 業 および 畜 産 業 については 岩 手 宮 城 福 島 茨 城 栃 木 県 の 年 間 生 産 額 の 4 カ 月 分 が 林 業 については 1 年 間 分 の 生 産 額 が 漁 業 は 青 森 岩 手 宮 城 福 島 茨 城 千 葉 県 の 年 間 生 産 額 相 当 の 供 給 ( 消 費 )が 減 少 したと 仮 定 した 復 興 予 算 のうち 政 府 消 費 の 執 行 について は 2011 年 に 一 次 二 次 三 次 補 正 予 算 割 6 割 6 割 残 りが 2013 年 中 に 実 行 されると 仮 定 した 復 興 予 算 のうち 政 府 投 資 については 2011 年 に 一 次 二 次 三 次 補 正 予 算 の 各 6 割 2 割 1 割 2012 年 に 各 3 割 6 割 6 割 残 りが 2013 年 に 執 行 されると 仮 定 した さらに 安 倍 新 政 権 が 2013 年 1 月 に 公 表 し た 第 四 次 補 正 日 本 経 済 再 生 に 向 けた 緊 急 経 済 対 策 の 支 出 額 6 割 が 政 府 消 費 と して 加 わると 仮 定 し さらにこの 種 の 追 加 予 算 が 2016 年 まで 減 衰 しつつ 実 行 さ れるものと 仮 定 した ただし 第 四 次 補 正 に 関 してはその 詳 細 が 不 明 のため 投 資 的 支 出 か 消 費 的 支 出 か 判 別 できず すべ て 消 費 的 支 出 として 計 上 した ( 表 3) 額 の 各 6 割 2 割 1 割 2012 年 中 に 各 3 表 3. 復 興 需 要 ( 単 位 :10 億 円 ) 実 行 総 額 政 府 消 費 政 府 投 資 2011 年 実 行 合 計 4,019 2,769 1,250 2012 年 実 行 合 計 9,665 5,077 4,589 2013 年 実 行 合 計 4,432 2,243 2,189 2013 年 1 月 補 正 ( 仮 定 ) 10,252 10,252-2014 年 ( 仮 定 ) 5,895 5895-2015 年 ( 仮 定 ) 3,930 3930-2016 年 ( 仮 定 ) 1,965 1965-2013 年 1 月 補 正 日 本 経 済 再 生 に 向 けた 緊 急 経 済 対 策 を 2013 年 政 府 消 費 に 取 り 込 んだ 補 正 予 算 総 額 13.1 兆 円 の 8 掛 けとし その 後 3 年 間 徐 々に 減 衰 するものと 仮 定 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Spring 2013/No.91
注 1 メンバーは 今 川 健 中 央 大 学 名 誉 教 授 ( 財 ) 国 際 貿 易 投 資 研 究 所 篠 井 保 彦 客 員 研 究 員 長 谷 川 聰 哲 中 央 大 学 教 授 日 本 貿 易 振 興 機 構 海 外 調 査 部 小 野 充 人 主 査 2 詳 細 は 当 研 究 所 季 報 No.84 震 災 を 越 え て 2025 年 日 本 産 業 の 姿 ~JIDEA8 モデル による 推 計 ~ 3 モデルの 主 要 な 前 提 条 件 は 巻 末 注 モデ ルの 主 要 な 前 提 条 件 を 参 照 4 モデルの 詳 細 については 当 研 究 所 ホー ムページ jidea.htm を 参 照 モデルの 推 計 結 果 の 詳 細 は 同 じ くホームページに 記 載 予 定 5 国 立 社 会 保 障 人 口 問 題 研 究 所 の 出 生 中 位 ( 死 亡 中 位 ) 推 計 6 部 門 別 就 業 者 数 を 部 門 別 生 産 額 で 割 っ た 係 数 であり 2010 年 から 2030 年 まで は 過 去 の 観 測 値 (1990 年 から 2009 年 ま で)を 基 にトレンドで 延 長 ( 一 部 補 正 ) したもの 7 付 加 価 値 額 に 比 べ 生 産 額 を 使 用 した 場 合 は 中 間 投 入 が 含 まれるため その 分 だ け 値 が 大 きくなる 本 モデルにおいては それぞれの 部 門 の 実 質 生 産 額 で 投 入 労 働 力 すなわち 就 業 者 数 労 働 時 間 を 割 った 雇 用 係 数 の 過 去 19 年 間 (1990 年 ~ 2009 年 )の 観 測 値 をトレンドで 延 ばし た 値 を 計 算 ( 値 が 不 自 然 な 時 は 修 正 ) それに 推 計 された 産 業 部 門 別 実 質 生 産 額 を 掛 けて 必 要 労 働 力 量 を 推 計 それを さらに 労 働 時 間 で 割 り 戻 して 必 要 就 業 者 数 を 推 計 している 以 下 の 記 述 に 使 用 した 労 働 生 産 性 は 時 間 を 加 味 して 推 計 された 就 業 者 数 を 使 用 しているが 説 明 上 わずらわしいので 時 間 を 省 略 し 単 純 に 就 業 者 数 で 産 出 額 を 割 った 数 値 を 使 用 した 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Spring 2013/No.91