[4]2,5-ジクロロアニリン 4 2,5-ジクロロアニリン 1. 物 質 に 関 する 基 本 的 事 項 (1) 分 子 式 分 子 量 構 造 式 物 質 名 :2,5-ジクロロアニリン CAS 番 号 :95-82-9 化 審 法 官 報 公 示 整 理 番 号 :3-261(ジクロルアニリン) 化 管 法 政 令 番 号 :1-156(ジクロロアニリン) RTECS 番 号 :BX2610000 分 子 式 :C 6 H 5 Cl 2 N 分 子 量 :162.02 換 算 係 数 :1ppm= 6.63 mg/m 3 ( 気 体 25 ) 構 造 式 : (2) 物 理 化 学 的 性 状 ジクロロアニリンは 常 温 で 無 色 から 茶 色 の 固 体 である 1) 融 点 44.9 2) 50 3) >48 4) 沸 点 250 (760 mmhg) 2) 251 (760 mmhg) 3) 247 4) 密 度 1.54 g/cm 3 (15 ) 4) 蒸 気 圧 分 配 係 数 (1-オクタノール/ 水 )(logkow) 2.75 3) 2.8 4) 2.92 6) 解 離 定 数 (pka) 水 溶 性 ( 水 溶 解 度 ) 2.5 10 3 mg/l (60 ) 4) (3) 環 境 運 命 に 関 する 基 礎 的 事 項 本 物 質 の 分 解 性 及 び 濃 縮 性 は 次 のとおりである 生 物 分 解 性 好 気 的 分 解 6.8 mmhg (=900 Pa) (116 ) 4) 0.015 mmhg (=2.0 Pa) (MPBVPWIN 5) により 計 算 ) 分 解 率 :BOD 0% TOC (-) * % GC (-) * % ( 試 験 期 間 :2 週 間 被 験 物 質 濃 度 :100 mg/l 活 性 汚 泥 濃 度 :30 mg/l) 7) ( 備 考 :* 分 解 度 が 負 の 値 になったため(-)と 表 記 した ) 7) 化 学 分 解 性 OH ラジカルとの 反 応 性 ( 大 気 中 ) 反 応 速 度 定 数 :22 10-12 cm 3 /( 分 子 sec)(aopwin 8) により 計 算 ) 半 減 期 :2.9~29 時 間 (OH ラジカル 濃 度 を 3 10 6 ~3 10 5 分 子 /cm 3 9) と 仮 定 して 計 算 ) 1
加 水 分 解 性 環 境 中 で 加 水 分 解 性 の 基 をもたない 10) 生 物 濃 縮 性 ( 濃 縮 性 が 無 いまたは 低 いと 判 断 される 物 質 生 物 濃 縮 係 数 (BCF): 11) ) 7.9~27.0 ( 試 験 生 物 :コイ 試 験 期 間 :6 週 間 試 験 濃 度 :0.2 mg/l) 12) (11.1) ~ (19.5)( 試 験 生 物 :コイ 試 験 期 間 :6 週 間 試 験 濃 度 :0.02 mg/l) 12) 土 壌 吸 着 性 土 壌 吸 着 定 数 (Koc):180(KOCWIN 13) により 計 算 ) (4) 製 造 輸 入 量 及 び 用 途 1 生 産 量 輸 入 量 等 ジクロルアニリンとしての 化 審 法 に 基 づき 公 表 された 製 造 輸 入 数 量 の 推 移 を 表 1.1 に 示 す 14),15),16),17) 表 1.1 製 造 輸 入 数 量 の 推 移 平 成 ( 年 度 ) 22 23 24 25 製 造 輸 入 数 量 (t) a) 1,000 未 満 1,000 未 満 1,000 未 満 1,000 未 満 注 :a) 製 造 数 量 は 出 荷 量 を 意 味 し 同 一 事 業 者 内 での 自 家 消 費 分 を 含 んでいない 値 を 示 す ジクロルアニリンとしての 化 学 物 質 の 製 造 輸 入 量 に 関 する 実 態 調 査 による 製 造 ( 出 荷 ) 及 び 輸 入 量 を 表 1.2 に 示 す 18),19),20) 表 1.2 製 造 ( 出 荷 ) 及 び 輸 入 量 平 成 ( 年 度 ) 13 16 19 製 造 ( 出 荷 ) 及 び a) - b) 100~1,000 t 10~100 t 輸 入 量 / 年 未 満 / 年 未 満 注 :a) 化 学 物 質 を 製 造 した 企 業 及 び 化 学 物 質 を 輸 入 した 商 社 等 のうち 1 物 質 1 トン 以 上 の 製 造 又 は 輸 入 を した 者 を 対 象 に 調 査 を 行 っているが 全 ての 調 査 対 象 者 からは 回 答 が 得 られていない b) 公 表 されていない 本 物 質 の 平 成 16 年 ~19 年 における 生 産 量 は 200t( 推 定 )とされている 21) 化 学 物 質 排 出 把 握 管 理 促 進 法 ( 化 管 法 )における 製 造 輸 入 量 区 分 は 1 t 以 上 100 t 未 満 であ る 22) 2 用 途 本 物 質 の 主 な 用 途 は 農 薬 染 料 顔 料 中 間 体 とされている 23) 2
(5) 環 境 施 策 上 の 位 置 付 け ジクロロアニリンは 化 学 物 質 排 出 把 握 管 理 促 進 法 ( 化 管 法 ) 第 一 種 指 定 化 学 物 質 ( 政 令 番 号 :156)に 指 定 されている なお 本 物 質 は 旧 化 学 物 質 審 査 規 制 法 ( 平 成 15 年 改 正 法 )において 第 三 種 監 視 化 学 物 質 ( 通 し 番 号 :90)に 指 定 されていた ジクロロアニリン 類 は 水 環 境 保 全 に 向 けた 取 組 のための 要 調 査 項 目 に 選 定 されていが 平 成 26 年 3 月 改 定 の 要 調 査 項 目 リストから 除 外 された 3
2. 曝 露 評 価 生 態 リスクの 初 期 評 価 のため 水 生 生 物 の 生 存 生 育 を 確 保 する 観 点 から 実 測 データをもと に 基 本 的 には 水 生 生 物 の 生 息 が 可 能 な 環 境 を 保 持 すべき 公 共 用 水 域 における 化 学 物 質 の 曝 露 を 評 価 することとし データの 信 頼 性 を 確 認 した 上 で 安 全 側 に 立 った 評 価 の 観 点 から 原 則 として 最 大 濃 度 により 評 価 を 行 っている (1) 環 境 中 への 排 出 量 ジクロロアニリンは 化 管 法 の 第 一 種 指 定 化 学 物 質 である 同 法 に 基 づき 公 表 された 平 成 25 年 度 の 届 出 排 出 量 1) 届 出 外 排 出 量 対 象 業 種 非 対 象 業 種 家 庭 移 動 体 2) から 集 計 した 排 出 量 等 を 表 2.1 に 示 す なお 届 出 外 排 出 量 対 象 業 種 非 対 象 業 種 家 庭 移 動 体 の 推 計 はなされて いない 表 2.1 化 管 法 に 基 づく 排 出 量 及 び 移 動 量 (PRTR データ)の 集 計 結 果 ( 平 成 25 年 度 ) (ジクロロアニリン) 届 出 届 出 外 ( 国 による 推 計 ) 総 排 出 量 (kg/ 年 ) 排 出 量 (kg/ 年 ) 移 動 量 (kg/ 年 ) 排 出 量 (kg/ 年 ) 届 出 届 出 外 大 気 公 共 用 水 域 土 壌 埋 立 下 水 道 廃 棄 物 移 動 対 象 業 種 非 対 象 業 種 家 庭 移 動 体 排 出 量 排 出 量 合 計 全 排 出 移 動 量 0 0 0 0 21 520 - - - - 0-0 ジクロロアニリン 業 種 等 別 排 出 量 ( 割 合 ) 0 0 0 0 21 520 0 0 0 0 総 排 出 量 の 構 成 比 (%) 化 学 工 業 0 0 0 0 21 520 届 出 届 出 外 (100%) (100%) 0% - ジクロロアニリンの 平 成 25 年 度 における 環 境 中 への 総 排 出 量 は 0 t であった この 他 に 下 水 道 への 移 動 量 が 0.021 t 廃 棄 物 への 移 動 量 が 0.52 t であった 届 出 排 出 量 の 排 出 源 は 化 学 工 業 のみであった (2) 媒 体 別 分 配 割 合 の 予 測 化 管 法 に 基 づく 排 出 量 が 得 られなかったため Mackay-Type Level III Fugacity Model 3) により 媒 体 別 分 配 割 合 の 予 測 を 行 った 予 測 結 果 を 表 2.2 に 示 す 表 2.2 Level III Fugacity Model による 媒 体 別 分 配 割 合 (%) 排 出 媒 体 大 気 水 域 土 壌 大 気 / 水 域 / 土 壌 排 出 速 度 (kg/ 時 間 ) 1,000 1,000 1,000 1,000( 各 々) 大 気 91.4 1.9 0.6 1.3 水 域 5.0 96.8 1.9 18.0 土 壌 3.6 0.1 97.5 80.4 底 質 0.1 1.2 0.0 0.2 注 : 数 値 は 環 境 中 で 各 媒 体 別 に 最 終 的 に 分 配 される 割 合 を 質 量 比 として 示 したもの (3) 各 媒 体 中 の 存 在 量 の 概 要 本 物 質 の 環 境 中 等 の 濃 度 について 情 報 の 整 理 を 行 った 媒 体 ごとにデータの 信 頼 性 が 確 認 され た 調 査 例 のうち より 広 範 囲 の 地 域 で 調 査 が 実 施 されたものを 抽 出 した 結 果 を 表 2.3 に 示 す 4
媒 体 幾 何 a) 平 均 値 表 2.3 各 媒 体 中 の 存 在 状 況 算 術 平 均 値 最 小 値 a) 検 出 最 大 値 下 限 値 検 出 率 調 査 地 域 測 定 年 度 文 献 公 共 用 水 域 淡 水 µg/l <0.0018 <0.0018 <0.0018 <0.0018 0.0018 0/12 全 国 2013 4) <0.05 <0.05 <0.05 <0.05 0.05 0/54 全 国 2006 5) <0.07 <0.07 <0.07 <0.07 0.07 0/6 全 国 1998 6) 公 共 用 水 域 海 水 µg/l <0.0018 <0.0018 <0.0018 0.0022 0.0018 1/6 全 国 2013 4) <0.05 <0.05 <0.05 <0.05 0.05 0/17 全 国 2006 5) <0.07 <0.07 <0.07 <0.07 0.07 0/7 全 国 1998 6) 底 質 ( 公 共 用 水 域 淡 水 ) µg/g <0.0005 <0.0005 <0.0005 0.0006 0.0005~ 7) 0/2 川 崎 市 1999 0.0006 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 b) 0.005 0/5 全 国 1998 6) 底 質 ( 公 共 用 水 域 海 水 ) µg/g 0.0019 0.0044 <0.0007 0.017 0.0007~ 7) 7/13 川 崎 市 1999 0.0012 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 0.005 0/7 全 国 1998 6) 魚 類 ( 公 共 用 水 域 淡 水 ) µg/g 魚 類 ( 公 共 用 水 域 海 水 ) µg/g 注 :a) 最 大 値 または 幾 何 平 均 値 の 欄 の 太 字 で 示 した 数 字 は 曝 露 の 推 定 に 用 いた 値 を 示 す b) 底 質 の 検 出 下 限 値 未 満 の 検 出 値 として 最 大 0.0047µg/g (1998)が 検 出 されている (4) 水 生 生 物 に 対 する 曝 露 の 推 定 ( 水 質 に 係 る 予 測 環 境 中 濃 度 :PEC) 本 物 質 の 水 生 生 物 に 対 する 曝 露 の 推 定 の 観 点 から 水 質 中 濃 度 を 表 2.4 のように 整 理 した 水 質 について 安 全 側 の 評 価 値 として 予 測 環 境 中 濃 度 (PEC)を 設 定 すると 公 共 用 水 域 の 淡 水 域 で は 0.05 g/l 未 満 程 度 同 海 水 域 では 0.05 g/l 未 満 程 度 となった 表 2.4 公 共 用 水 域 濃 度 水 域 平 均 最 大 値 淡 水 海 水 0.05 g/l 未 満 程 度 (2006) 0.05 g/l 未 満 程 度 (2006) 0.05 g/l 未 満 程 度 (2006) 0.05 g/l 未 満 程 度 (2006) 注 :1) ( ) 内 の 数 値 は 測 定 年 度 を 示 す 2) 淡 水 は 河 川 河 口 域 を 含 む 5
3. 生 態 リスクの 初 期 評 価 水 生 生 物 の 生 態 リスクに 関 する 初 期 評 価 を 行 った (1) 水 生 生 物 に 対 する 毒 性 値 の 概 要 本 物 質 の 水 生 生 物 に 対 する 毒 性 値 に 関 する 知 見 を 収 集 し 生 物 群 ( 藻 類 甲 殻 類 魚 類 及 びそ の 他 生 物 )ごとに 整 理 すると 表 3.1 のとおりとなった 表 3.1 水 生 生 物 に 対 する 毒 性 値 の 概 要 生 物 群 急 慢 性 性 毒 性 値 [µg/l] 生 物 名 生 物 分 類 / 和 名 エンドポイント / 影 響 内 容 曝 露 期 間 [ 日 ] 試 験 の 信 頼 性 採 用 の 可 能 性 文 献 No. 藻 類 990 Pseudokirchneriella subcapitata 緑 藻 類 NOEC GRO 2 D C 4)- 2013031 1,890 *1 Pseudokirchneriella subcapitata 緑 藻 類 NOEC GRO (RATE) 3 B *2 B *2 3) 5,940 Pseudokirchneriella subcapitata 緑 藻 類 EC 50 GRO 2 B B 1)-100638 9,590 *1 Pseudokirchneriella subcapitata 緑 藻 類 EC 50 GRO (RATE) 3 B *2 B *2 3) 9,870 Pseudokirchneriella subcapitata 緑 藻 類 EC 50 GRO 2 B B 1)-96592 甲 殻 類 32 Daphnia magna オオミジンコ NOEC REP 21 B *3 B *3 2) 1,810 Daphnia magna オオミジンコ EC 50 IMM 2 A A 2) 1,900 Daphnia magna オオミジンコ EC 50 IMM 2 B B 1)-61876 2,920 Daphnia magna オオミジンコ LC 50 MOR 2 B B 1)-5375 魚 類 2,210 Oryzias latipes メダカ LC 50 MOR 4 A A 2) 5,230 Carassius auratus キンギョ LC 50 MOR 4 C C 1)-65892 10,800 Oryzias latipes メダカ TLm MOR 2 D C 4)- 2012192 その 他 42,800 Tetrahymena pyriformis テトラヒメナ 属 IGC 50 POP 2 B B 4)- 2007003 84,600 Spirostomum ambiguum スピロストマ ム 属 LC 50 MOR 1 D C 1)-62279 毒 性 値 ( 太 字 ): 採 用 可 能 な 知 見 として 本 文 で 言 及 したもの 毒 性 値 ( 太 字 下 線 ):PNEC 導 出 の 根 拠 として 採 用 されたもの 試 験 の 信 頼 性 : 本 初 期 評 価 における 信 頼 性 ランク A: 試 験 は 信 頼 できる B: 試 験 は 条 件 付 きで 信 頼 できる C: 試 験 の 信 頼 性 は 低 い D: 信 頼 性 の 判 定 不 可 E: 信 頼 性 は 低 くないと 考 えられるが 原 著 にあたって 確 認 したものではない 採 用 の 可 能 性 :PNEC 導 出 への 採 用 の 可 能 性 ランク 6
A: 毒 性 値 は 採 用 できる B: 毒 性 値 は 条 件 付 きで 採 用 できる C: 毒 性 値 は 採 用 できない エンドポイント EC 50 (Median Effective Concentration): 半 数 影 響 濃 度 IGC 50 (Median Inhibitory growth concentration): 半 数 増 殖 阻 害 濃 度 LC 50 (Median Lethal Concentration): 半 数 致 死 濃 度 NOEC (No Observed Effect Concentration): 無 影 響 濃 度 TLm (Median Tolerance Limit): 半 数 生 存 限 界 濃 度 影 響 内 容 GRO (Growth): 生 長 ( 植 物 ) IMM (Immobilization): 遊 泳 阻 害 MOR (Mortality): 死 亡 POP (Population change): 個 体 群 の 変 化 ( 増 殖 ) REP (Reproduction): 繁 殖 再 生 産 毒 性 値 の 算 出 方 法 RATE: 生 長 速 度 より 求 める 方 法 ( 速 度 法 ) *1 文 献 2) をもとに 試 験 時 の 実 測 濃 度 を 用 いて 速 度 法 により 再 計 算 した 値 *2 ガイドラインからの 逸 脱 はないが 試 験 濃 度 の 公 比 を 必 要 以 上 に 大 きく 設 定 しており 手 順 について 改 良 の 余 地 があること から 試 験 の 信 頼 性 及 び 採 用 の 可 能 性 を B とした *3 LOEC 値 となっている 濃 度 区 において 他 と 比 べて 極 端 に 産 仔 数 の 少 ない 親 個 体 の 存 在 により 有 意 差 が 出 ている 可 能 性 が 否 定 できないため 試 験 の 信 頼 性 及 び 採 用 の 可 能 性 を B とした 評 価 の 結 果 採 用 可 能 とされた 知 見 のうち 生 物 群 ごとに 急 性 毒 性 値 及 び 慢 性 毒 性 値 のそれぞ れについて 最 も 小 さい 毒 性 値 を 予 測 無 影 響 濃 度 (PNEC) 導 出 のために 採 用 した その 知 見 の 概 要 は 以 下 のとおりである 1) 藻 類 Tsai と Chen 1)-100638 は 緑 藻 類 Pseudokirchneriella subcapitata の 生 長 阻 害 試 験 を 実 施 した 試 験 は 密 閉 系 (ヘッドスペースなし)で 行 われた EPA の 試 験 方 法 (OPPTS 850.5400.1996) 及 び ASTM の 試 験 方 法 (E1218) を 改 変 し EDTA を 除 いた 培 地 ( 硬 度 7.5 mg/l CaCO 3 換 算 )が 用 いられた 48 時 間 半 数 影 響 濃 度 (EC 50 ) は 設 定 濃 度 に 基 づき 5,940 µg/l であった また 環 境 省 2) は OECD テストガイドライン No. 201(1984) に 準 拠 し 緑 藻 類 Pseudokirchneriella subcapitata( 旧 名 Selenastrum capricornutum) の 生 長 阻 害 試 験 を GLP 試 験 として 実 施 した 設 定 試 験 濃 度 は 0( 対 照 区 助 剤 対 照 区 ) 0.064 0.20 0.64 2.0 6.4 20 64 mg/l( 公 比 3.2)であ った 試 験 溶 液 は メタノール 100 µl/l を 助 剤 として 調 製 された 被 験 物 質 の 実 測 濃 度 は 試 験 開 始 時 及 び 終 了 時 において それぞれ 設 定 濃 度 の 88~104% 及 び 73~100%であり 毒 性 値 の 算 出 の 際 は 最 高 濃 度 区 を 除 外 し 実 測 濃 度 ( 試 験 開 始 時 と 終 了 時 の 幾 何 平 均 値 )を 用 いた 速 度 法 による 72 時 間 無 影 響 濃 度 (NOEC) は 1,890 µg/l であった 3) 2) 甲 殻 類 環 境 省 2) は OECD テストガイドライン No. 202(1984) に 準 拠 し オオミジンコ Daphnia magna の 急 性 遊 泳 阻 害 試 験 を GLP 試 験 として 実 施 した 試 験 は 止 水 式 で 行 われ 設 定 試 験 濃 度 は 0( 対 照 区 助 剤 対 照 区 ) 1.0 1.8 3.2 5.6 10 mg/l( 公 比 1.8)であった 試 験 溶 液 は 試 験 用 水 に Elendt M4 培 地 を 助 剤 にメタノール 100 µl/l を 用 いて 調 製 された 被 験 物 質 の 実 測 濃 度 は 試 験 開 始 時 及 び 終 了 時 において それぞれ 設 定 濃 度 の 81~97% 及 び 80~96%であった 48 時 間 半 数 影 響 濃 度 (EC 50 ) は 設 定 濃 度 に 基 づき 1,810 µg/l であった また 環 境 省 2) は OECD テストガイドライン No. 211 (1998) に 準 拠 し オオミジンコ Daphnia magna の 繁 殖 試 験 を GLP 試 験 として 実 施 した 試 験 は 半 止 水 式 ( 週 3 回 換 水 )で 行 なわれ 設 定 試 験 濃 度 は 0( 対 照 区 助 剤 対 照 区 ) 0.0032 0.010 0.032 0.10 0.32 1.0 3.2 mg/l( 公 比 3.2)であった 試 験 溶 液 は 試 験 用 水 に Elendt M4 培 地 を 助 剤 にメタノール 100 µl/l を 用 い て 調 製 された 被 験 物 質 の 実 測 濃 度 は 0 9 18 日 目 の 換 水 後 において 設 定 濃 度 の 96~119% 7
であり 2 11 21 日 目 の 換 水 前 においては 設 定 濃 度 の 95~116%であった 繁 殖 阻 害 ( 累 積 産 仔 数 )に 関 する 21 日 間 無 影 響 濃 度 (NOEC) は 設 定 濃 度 に 基 づき 32 µg/l であった 3) 魚 類 環 境 省 2) は OECD テストガイドライン No. 203 (1992) に 準 拠 し メダカ Oryzias latipes の 急 性 毒 性 試 験 を GLP 試 験 として 実 施 した 試 験 は 半 止 水 式 (24 時 間 毎 換 水 ) で 行 われ 設 定 試 験 濃 度 は 0( 対 照 区 助 剤 対 照 区 ) 1.0 1.8 3.2 5.6 10 mg/l( 公 比 3.2)であった 試 験 溶 液 は 試 験 用 水 に 脱 塩 素 水 ( 硬 度 27 mg/l CaCO 3 換 算 )を 助 剤 にメタノール 100 µl/l を 用 い て 調 製 された 被 験 物 質 の 実 測 濃 度 は 試 験 開 始 時 及 び 換 水 前 (24 時 間 後 ) において それぞれ 設 定 濃 度 の 96~101% 及 び 84~88%であった 96 時 間 半 数 致 死 濃 度 (LC 50 ) は 設 定 濃 度 に 基 づ き 2,210 µg/l であった 4) その 他 の 生 物 Arnold 1)-2007003 らは テトラヒメナ 属 Tetrahymena pyriformis の 増 殖 阻 害 試 験 を 実 施 した 試 験 は 止 水 式 で 行 われ 設 定 試 験 濃 度 区 は 対 照 区 及 び 5~10 濃 度 区 であった 試 験 培 地 にはプロテオー ス ペプトン 培 地 (Schultz, 1983) が 用 いられた 48 時 間 半 数 増 殖 阻 害 濃 度 (IGC 50 ) は 設 定 濃 度 に 基 づき 42,800 µg/l であった (2) 予 測 無 影 響 濃 度 (PNEC) の 設 定 急 性 毒 性 及 び 慢 性 毒 性 のそれぞれについて 上 記 本 文 で 示 した 毒 性 値 に 情 報 量 に 応 じたアセス メント 係 数 を 適 用 し 予 測 無 影 響 濃 度 (PNEC) を 求 めた 急 性 毒 性 値 藻 類 Pseudokirchneriella subcapitata 48 時 間 EC 50 ( 生 長 阻 害 ) 5,940 µg/l 甲 殻 類 Daphnia magna 48 時 間 EC 50 ( 遊 泳 阻 害 ) 1,810 µg/l 魚 類 Oryzias latipes 96 時 間 LC 50 2,210 µg/l その 他 Tetrahymena pyriformis 48 時 間 IGC 50 ( 増 殖 阻 害 ) 42,800 µg/l アセスメント 係 数 :100[3 生 物 群 ( 藻 類 甲 殻 類 及 び 魚 類 ) 及 びその 他 の 生 物 について 信 頼 できる 知 見 が 得 られたため] これらの 毒 性 値 のうち その 他 の 生 物 を 除 いた 最 も 小 さい 値 ( 甲 殻 類 の 1,810 µg/l)をアセス メント 係 数 100 で 除 することにより 急 性 毒 性 値 に 基 づく PNEC 値 18 µg/l が 得 られた 慢 性 毒 性 値 藻 類 Pseudokirchneriella subcapitata 72 時 間 NOEC( 生 長 阻 害 ) 1,890 µg/l 甲 殻 類 Daphnia magna 21 日 間 NOEC( 繁 殖 阻 害 ) 32 µg/l アセスメント 係 数 :100[2 生 物 群 ( 藻 類 甲 殻 類 )の 信 頼 できる 知 見 が 得 られたため] 2 つの 毒 性 値 の 小 さい 方 ( 甲 殻 類 の 32 µg/l)をアセスメント 係 数 100 で 除 することにより 慢 性 毒 性 値 に 基 づく PNEC 値 0.32 µg/l が 得 られた 8
本 物 質 の PNEC としては 甲 殻 類 の 慢 性 毒 性 値 から 得 られた 0.32 µg/l を 採 用 する (3) 生 態 リスクの 初 期 評 価 結 果 表 3.2 生 態 リスクの 初 期 評 価 結 果 水 質 平 均 濃 度 最 大 濃 度 (PEC) PNEC PEC/ PNEC 比 公 共 用 水 域 淡 水 0.05 g/l 未 満 程 度 (2006) 0.05 g/l 未 満 程 度 (2006) <0.15 0.32 µg/l 公 共 用 水 域 海 水 0.05 g/l 未 満 程 度 (2006) 0.05 g/l 未 満 程 度 (2006) <0.15 注 :1) 水 質 中 濃 度 の( ) 内 の 数 値 は 測 定 年 度 を 示 す 2) 公 共 用 水 域 淡 水 は 河 川 河 口 域 を 含 む [ 判 定 基 準 ] PEC/PNEC=0.1 PEC/PNEC=1 現 時 点 では 作 業 は 必 要 ないと 考 えられる 情 報 収 集 に 努 める 必 要 があると 考 えられる 詳 細 な 評 価 を 行 う 候 補 と 考 えられる 本 物 質 の 公 共 用 水 域 における 濃 度 は 平 均 濃 度 でみると 淡 水 域 海 水 域 ともに 0.05 g/l 未 満 程 度 であり 検 出 下 限 値 未 満 であった 安 全 側 の 評 価 値 として 設 定 された 予 測 環 境 中 濃 度 (PEC) も 淡 水 域 海 水 域 ともに 0.05 g/l 未 満 程 度 であり 検 出 下 限 値 未 満 であった 予 測 環 境 中 濃 度 (PEC) と 予 測 無 影 響 濃 度 (PNEC) の 比 は 淡 水 域 海 水 域 ともに 0.15 未 満 となるため 生 態 リスクの 判 定 はできない 本 物 質 については 製 造 輸 入 数 量 や PRTR データの 推 移 の 把 握 に 努 め 公 共 用 水 域 の 存 在 状 況 調 査 を 実 施 する 必 要 性 を 検 討 することが 望 ましいと 考 えられる 9
4. 引 用 文 献 等 (1) 物 質 に 関 する 基 本 的 事 項 1) 環 境 省 (2012) : 化 学 物 質 ファクトシート -2012 年 版 -, (http://www.env.go.jp/chemi/communication/factsheet.html). 2) Haynes.W.M.ed. (2013) : CRC Handbook of Chemistry and Physics on DVD, (Version 2013), CRC Press. 3) Howard, P.H., and Meylan, W.M. ed. (1997) : Handbook of Physical Properties of Organic Chemicals, Boca Raton, New York, London, Tokyo, CRC Lewis Publishers: 126. 4) Verschueren, K. ed. (2009) : Handbook of Environmental Data on Organic Chemicals, 5th Edition, New York, Chichester, Weinheim, Brisbane, Singapore, Toronto, John Wiley & Sons, Inc. (CD-ROM). 5) U.S. Environmental Protection Agency, MPBVPWIN v.1.43. 6) Hansch, C. et al. (1995): Exploring QSAR Hydrophobic, Electronic, and Steric Constants, Washington DC, ACS Professional Reference Book: 18. 7) 2,5-ジクロロアニリンの 分 解 度 試 験 成 績 報 告 書. 化 審 法 データベース (J-CHECK). 8) U.S. Environmental Protection Agency, AOPWIN v.1.92. 9) Howard, P.H., Boethling, R.S., Jarvis, W.F., Meylan, W.M., and Michalenko, E.M. ed. (1991): Handbook of Environmental Degradation Rates, Boca Raton, London, New York, Washington DC, Lewis Publishers: xiv. 10) Lyman, W.J., Reehl, W.F., and Rosenblatt, D.H. (1990): Handbook of chemical property estimation methods: environmental behavior of organic compounds. American Chemical Society, Washington, D.C., USA. [Hazardous Substances Data Bank (http://toxnet.nlm.nih.gov/, 2015.08.01 現 在 ) ]. 11) 通 産 省 公 報 (1979.12.25). 12) 2,5-ジクロロアニリンの 濃 縮 度 試 験 成 績 報 告 書. 化 審 法 データベース (J-CHECK). 13) U.S. Environmental Protection Agency, KOCWIN v.2.00. 14) 経 済 産 業 省 (2012): 一 般 化 学 物 質 等 の 製 造 輸 入 数 量 (22 年 度 実 績 )について, (http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/information/h22jisseki-matome-ver 2.html, 2012.3.30 現 在 ). 15) 経 済 産 業 省 (2013): 一 般 化 学 物 質 等 の 製 造 輸 入 数 量 (23 年 度 実 績 )について, (http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/information/h23jisseki-matome.htm l, 2013.3.25 現 在 ). 16) 経 済 産 業 省 (2014): 一 般 化 学 物 質 等 の 製 造 輸 入 数 量 (24 年 度 実 績 )について, (http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/information/h24jisseki-matome.htm l, 2014.3.7 現 在 ). 17) 経 済 産 業 省 (2015): 一 般 化 学 物 質 等 の 製 造 輸 入 数 量 (25 年 度 実 績 )について, (http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/information/h25jisseki-matome.htm l, 2015.3.27 現 在 ). 10
18) 経 済 産 業 省 (2003): 化 学 物 質 の 製 造 輸 入 量 に 関 する 実 態 調 査 ( 平 成 13 年 度 実 績 )の 確 報 値,(http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/new_page/10/2.htm, 2005.10.2 現 在 ). 19) 経 済 産 業 省 (2007): 化 学 物 質 の 製 造 輸 入 量 に 関 する 実 態 調 査 ( 平 成 16 年 度 実 績 )の 確 報 値, (http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/jittaichousa/kakuhou18.html, 2007.4.6 現 在 ). 20) 経 済 産 業 省 (2009): 化 学 物 質 の 製 造 輸 入 量 に 関 する 実 態 調 査 ( 平 成 19 年 度 実 績 )の 確 報 値, (http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/kakuhou19.html, 2009.12.28 現 在 ). 21) 化 学 工 業 日 報 社 (2006):14906 の 化 学 商 品 ; 化 学 工 業 日 報 社 (2007):15107 の 化 学 商 品 ; 化 学 工 業 日 報 社 (2008):15308 の 化 学 商 品 ; 化 学 工 業 日 報 社 (2009):15509 の 化 学 商 品. 22) 薬 事 食 品 衛 生 審 議 会 薬 事 分 科 会 化 学 物 質 安 全 対 策 部 会 PRTR 対 象 物 質 調 査 会 化 学 物 質 審 議 会 管 理 部 会 中 央 環 境 審 議 会 環 境 保 健 部 会 PRTR 対 象 物 質 等 専 門 委 員 会 合 同 会 合 ( 第 4 回 )(2008): 参 考 資 料 2 追 加 候 補 物 質 の 有 害 性 暴 露 情 報, (http://www.env.go.jp/council/05hoken/y056-04.html, 2008.11.6 現 在 ). 23) 化 学 工 業 日 報 社 (2015) : 実 務 者 のための 化 学 物 質 等 法 規 制 便 覧 2015 年 版. (2) 曝 露 評 価 1) 経 済 産 業 省 製 造 産 業 局 化 学 物 質 管 理 課 環 境 省 環 境 保 健 部 環 境 安 全 課 (2015): 平 成 25 年 度 特 定 化 学 物 質 の 環 境 への 排 出 量 の 把 握 等 及 び 管 理 の 改 善 の 促 進 に 関 する 法 律 ( 化 学 物 質 排 出 把 握 管 理 促 進 法 ) 第 11 条 に 基 づき 開 示 する 個 別 事 業 所 データ. 2) 経 済 産 業 省 製 造 産 業 局 化 学 物 質 管 理 課 環 境 省 環 境 保 健 部 環 境 安 全 課 (2015): 届 出 外 排 出 量 の 推 計 値 の 対 象 化 学 物 質 別 集 計 結 果 算 出 事 項 ( 対 象 業 種 非 対 象 業 種 家 庭 移 動 体 ) 別 の 集 計 表 3-1 全 国, (http://www.nite.go.jp/chem/prtr/25lawtotal/2013a3-1.csv, 2015.3.6 現 在 ). 3) U.S. Environmental Protection Agency, EPI Suite v.4.11. 4) 環 境 省 環 境 保 健 部 環 境 安 全 課 (2014): 平 成 25 年 度 化 学 物 質 環 境 実 態 調 査. 5) 環 境 省 水 大 気 環 境 局 水 環 境 課 (2008) : 平 成 18 年 度 要 調 査 項 目 測 定 結 果. 6) 環 境 庁 環 境 保 健 部 環 境 安 全 課 (1999) : 平 成 10 年 度 化 学 物 質 環 境 汚 染 実 態 調 査. 7) 関 昌 之, 柴 田 幸 雄, 黒 沢 康 弘 (2000) : 川 崎 市 内 の 河 川, 海 域 における 化 学 物 質 濃 度 分 布 調 査 結 果 (2)アニリン 類 について. 川 崎 市 公 害 研 究 所 年 報. 26:26-32. (3) 生 態 リスクの 初 期 評 価 1) U.S.EPA ECOTOX 5375:Maas-Diepeveen, J.L., and C.J. Van Leeuwen (1986): Aquatic Toxicity of Aromatic Nitro Compounds and Anilines to Several Freshwater Species. Laboratory for Ecotoxicology, Institute for Inland Water Management and Waste Water Treatment, Report No.86-42:10 p. 61876:Abe,T., H. Saito, Y. Niikura, T. Shigeoka, and Y. Nakano (2001): Embryonic Development Assay with Daphnia magna: Application to Toxicity of Aniline Derivatives. Chemosphere. 45(4-5): 487-495. 11
62279:Nalecz-Jawecki,G., and J. Sawicki (2002): The Toxicity of Tri-Substituted Benzenes to the Protozoan Ciliate Spirostomum ambiguum. Chemosphere46(2): 333-337. 65892:Li,W., D. Yin, A. Zhang, and L. Wang (2002): Toxicity of Chloroanilines and Effects on Superoxide Dismutase Activities in Serum of Crucian Carp (Carassius auratus). Bull. Environ. Contam. Toxicol.68(5): 630-636. 96592 : Chen,C.Y., C.W. Ko, and P.I. Lee (2007) : Toxicity of Substituted Anilines to Pseudokirchneriella subcapitata and Quantitative Structure-Activity Relationship Analysis for Polar Narcotics. Environ. Toxicol. Chem.26(6):1158-1164. 100638:Tsai,K.P., and C.Y. Chen (2007):An Algal Toxicity Database of Organic Toxicants Derived by a Closed-System Technique. Environ. Toxicol. Chem.26(9): 1931-1939. 2) 環 境 省 (2001): 平 成 12 年 度 生 態 影 響 試 験 3) 国 立 環 境 研 究 所 (2012): 平 成 23 年 度 化 学 物 質 環 境 リスク 初 期 評 価 等 実 施 業 務 報 告 書 4) その 他 2007003:Arnold, L.M., D.T.Lin, and T.M.Schultz. (1990): QSAR for Methyl- and / or Chlorosubstituted Anilines and the Polar Narcosis Mechanism of Toxicity. Chemosphere.21:183-191. 2012192: 通 商 産 業 省 (1979):2,5-ジクロロアニリン( 試 料 No. K-242)の 濃 縮 度 試 験 成 績 報 告 書. 2013031:Chen, C.Y., Y.J. Wang and C.F. Yang (2009): Estimating Low-toxic-effect Concentrations in Closed-System Algal Toxicity Tests Original Research Article. Ecotoxicol. Environ. Saf.72(5):1514-1522. 12