XMLとExcelを 利 用 したWebによるアンケート 収 集 システム の 構 築 Synthesis a new web application system using XML, php and Excel 福 良 博 史 伊 東 久 美 子 荻 野 美 佐 子 FUKURA Hirofumi, Ito Kumiko, Ogino Misako 1 はじめに 0 歳 ~2 歳 の 主 として 前 言 語 期 を 中 心 とした 発 達 をチェックするために 親 御 さんに 記 入 す る 形 の 質 問 票 ( 乳 幼 児 発 達 質 問 票 ( 仮 題 ) が ( 注 1) 進 藤 玉 井 荻 野 によって 作 成 されている 現 在 は まだ 試 作 版 の 段 階 だが 基 本 的 にパソ コンもしくは 紙 ベースでの 回 答 によるアンケー ト 調 査 方 式 にて 行 われている この 情 報 は 毎 月 親 御 さんに 報 告 してもらい 時 系 列 での 集 計 を 行 っている パソコンよりもより 簡 便 な IT 化 に よる 情 報 収 集 法 がないか ということでの 相 談 が 当 校 によせられた 筆 者 らは この 情 報 収 集 方 法 を 検 討 すること となる 情 報 の 入 力 は 一 般 的 に 母 親 が 行 う このと き 母 親 が 扱 える 情 報 端 末 は 何 であろうか パソ コンよりも 今 や 携 帯 電 話 の 方 が 発 達 している 通 常 パソコンは 家 に 居 るときにしか 使 えない 携 帯 電 話 であれば 外 出 先 からでも いわゆる いつでもどこででも 空 いた 時 間 に 情 報 を 入 力 することが 可 能 となる そこで 携 帯 電 話 を 情 報 端 末 とし その 実 装 方 法 を 論 じる 検 討 結 果 1 HTML のタグ の 基 本 的 制 携 帯 電 話 はキャリア 毎 に HTML のタグの 種 類 が 異 なるなど 標 準 化 が 進 んでいない このた めソフトの 構 築 が 一 筋 縄 ではいかない 任 意 の 携 帯 に 対 応 するノウハウを 調 査 していては 時 間 がかかりすぎると 判 断 した しかしなるべく 色 々な 端 末 の 使 用 可 能 性 を 高 めるために HTML のタグの 使 用 するものを 限 定 ( 表 1)し かつ テキスト ファイルのコードは UTF-8 とした なお JIS 規 格 のウェブコンテンツの 設 計 指 針 上 智 大 学 総 合 人 間 科 学 部 心 理 学 科 JIS X 8341-3:2010 (1) からは スタイルシート を 用 いることなどが 求 められている しかし 携 帯 電 話 の 場 合 CSS( 段 階 スタイルシート)の 機 能 がない 場 合 もあるため CSS は 採 用 しないこ ととした また<CENTER>や<FONT>タグは HTML (2) の 定 義 上 は 非 推 奨 となっているが CSS を 用 いないこととするため これらの 非 推 奨 のタグ を 利 用 している <TABLE> 関 連 のタグも 極 力 使 わ ないこととした 表 1 利 用 タグ 一 覧 <A> <BR> <BODY> <CENTER> <HEAD> <HTML> <TITLE> <HR> <H1> <FONT> <FORM> <LI> <OL> <OPTION> <P> <SELECT> <TABLE> <TD> <TR> 情 報 の 参 照 および 蓄 積 方 法 今 回 のアプリケーションは 動 的 な HTML を 扱 う このため HTML だけでは 静 的 な HTML 機 能 しか 実 現 できないので php を 用 いたプログラ ミングを 行 なうウェブ アプリケーションとす る 過 去 に 筆 者 が 制 作 した 学 習 支 援 環 境 (3) は 情 報 の 参 照 蓄 積 に XML を 利 用 した このとき XML を 利 用 する 根 拠 として コンテンツそのものお よび 管 理 情 報 などの 作 成 とその 保 守 の 容 易 さ 情 報 収 集 の 簡 便 さ パソコンの OS やデータベー ス パッケージなどのソフトウェアからの 独 立 性 を 維 持 することによる 可 搬 性 の 向 上 および 移 植 性 の 容 易 さなどを 挙 げた 今 回 も 色 々 検 討 し た 結 果 上 記 と 同 じ 理 由 でデータベース パッ ケージは 用 いず XML ファイルをデータベース の 代 替 物 として 利 用 することとした - 18 -
3 システム 概 要 ウェブ アプリケーションによる 情 報 収 集 シ ステムの 概 要 をユースケース 図 にて 示 す( 図 1) 途 中 まで 行 い 一 時 的 にサーバに 格 納 しておき 再 度 先 ほどの 途 中 から 記 入 できるようになっている つまり 1 日 に 何 度 も1 件 のカテゴリについて 空 き 時 間 に 回 答 をし 蓄 積 していくこと が 可 能 になっている 日 をまたがって 回 答 することもできる 複 数 のカテゴ リを 一 時 に 回 答 することもできる 図 1 システム 概 要 アンケート( 現 段 階 ではまだ 試 作 版 である) への 回 答 者 は アンケート 記 入 のサービスを 利 用 する この 主 なシナリオは 以 下 の 通 り アンケート 記 入 のシナリオ 1 ログイン 認 証 を 行 う 2 回 答 月 の 子 どもの 月 齢 を 入 力 する ロ グイン 時 に 誕 生 日 がわかるので シス テムからリストボックス 形 式 で 関 連 す る3ヶ 月 分 の 月 齢 を 選 択 できるように 表 示 し 記 入 の 手 間 を 省 き かつ 誤 記 入 を 防 止 する( 図 2) 図 3 アンケート メニュー 画 面 例 図 2 月 齢 の 入 力 画 面 例 注 : 以 下 画 面 例 は 携 帯 ではなくパソコンでの 表 示 3 カテゴリ 毎 に 回 答 を 選 択 できるように したアンケート メニュー( 図 3)を 表 示 する 回 答 方 法 は 忙 しい 子 育 ての 合 間 を 縫 って 答 えられるように 配 慮 す る 例 えば 回 答 は1 件 のカテゴリの 図 4 カテゴリ 内 の 質 問 例 - 19 -
4 1 件 のカテゴリの 中 での 質 問 は ラジ オボタン 形 式 でのアンケートの 質 問 の 一 覧 を 表 示 し その 各 質 問 に 回 答 する ようになっている このとき 直 近 の アンケート 結 果 を 反 映 した 質 問 を 表 示 する( 図 4) 成 長 の 経 過 を 把 握 するた め 基 本 的 に 前 月 できたことは 当 月 もできるものとし その 結 果 を 表 示 す るに 止 め 回 答 済 みとしておく この 回 答 済 みの 処 置 は 重 複 回 答 の 手 間 を 省 き かつ 何 処 まで 子 どもが 成 長 した のかを 回 答 者 ( 母 親 )が 確 認 できる ようになっている 今 まで 出 来 ていな い 事 についてのみ 今 月 の 回 答 欄 をラ ジオボタン 型 式 にて 表 示 する また 同 じ 月 の 場 合 も 直 前 まで 入 力 されてい た 内 容 を 反 映 し かつ 当 月 分 について は 修 正 入 力 ができるようにする 5 アンケート メニューに 示 されたカテ ゴリ 全 てに 回 答 すると 結 果 の 送 信 ボ タンが 表 示 される このとき 図 3 に 薄 く 完 了 連 絡 と 表 示 されている 箇 所 が ボタン 表 示 に 変 わる この 送 信 ボタンを 押 下 することにより その 月 の 回 答 が 完 了 する 送 信 ボタンを 押 下 すると 収 集 担 当 者 宛 に 完 了 通 知 が 電 子 メールにて 送 信 される この 送 信 ボタンを 押 下 する 前 に 回 答 者 から 収 集 担 当 者 宛 に 簡 単 な 連 絡 用 メモを 付 加 することができる 収 集 保 守 を 行 う 人 は IT に 詳 しいとは 限 ら ない そこで その 人 のための 収 集 保 守 サー ビス 用 支 援 システムが 必 須 となる どの 程 度 の サービスを 支 援 する 必 要 があるのか 検 討 した 結 果 およそ 以 下 のようになった 図 5 収 集 保 守 用 メニュー 画 面 例 - 20 -
カテゴリの 改 廃 等 の 汎 用 的 なサービスは 提 供 していない カテゴリの 改 廃 等 が 必 要 な 場 合 は ソフトウェアの 変 更 を 伴 う しかし 質 問 項 目 については 試 作 版 であるため 改 廃 変 更 が 想 定 される このため 質 問 項 目 の 改 廃 は 収 集 保 守 担 当 者 がメニューから 簡 便 に 保 守 で きるように 考 慮 した( 図 5) また アンケート の 回 答 結 果 については 回 答 者 が1ヶ 月 分 の 回 答 の 仕 掛 かり 中 であってもアンケートの 収 集 が 可 能 となっている 収 集 方 法 は ウェブの 画 面 に 回 答 結 果 を 表 示 し かつその Excel 形 式 のフ ァイルを 生 成 する つまり Excel 型 式 のスプレ ッド シートでの 回 答 の 収 集 が 可 能 になる こ れは 現 在 アンケート 結 果 を Excel で 集 計 し 分 析 しているため その 運 用 方 法 に 極 力 合 わせ る 形 でファイルを 生 成 することで 省 力 化 を 図 った その 他 ユーザの 管 理 およびアンケート の 質 問 項 目 の 保 守 などが 行 えるようになってい る アンケート 収 集 情 報 保 守 のサービスにつ いての 主 なシナリオは 以 下 の 通 り ケートの 回 収 結 果 を Excel 形 式 のファ イルにした 内 容 の 例 を 示 す システ の 構 造 ウェブ サーバは Apache を 用 いる データ ベースは XML ファイルとし XML の 生 成 その 他 アクセスはすべて 自 前 で 行 う ウェブ アプリ ケーションの 開 発 用 言 語 は php とする 主 な 情 報 の 構 造 をクラス 図 で 示 すと 図 7 のようになる このうち アンケートと 回 答 のインスタンスは それぞれ XML ファイルとして 実 装 している( 図 8) 開 発 方 法 はじめにインタビューを 行 い 現 状 の 手 順 を 確 認 し その 後 携 帯 電 話 でのインターフェース を 実 験 を 通 して 操 作 方 法 の 確 認 を 行 った ス パイラルに 徐 々に 要 件 を 詳 細 化 しながら 開 発 を 行 った 図 6 Excel ファイルの 内 容 例 アンケート 収 集 情 報 保 守 のシナリオ 1 ログイン 認 証 を 行 う 2 収 集 保 守 用 メニューを 表 示 し アン ケート 結 果 の 表 示 収 集 等 を 行 う ア ンケートの 収 集 単 位 は 個 人 の 月 齢 単 位 での 収 集 となる このとき Excel 型 式 のファイルでの 生 成 も 行 い その ファイルのダウンロードが 行 えるよう にしておく 参 考 までに 図 6 に アン 図 7 主 な 情 報 構 造 - 21 -
図 8 XML によるアンケート( 右 )とその 回 答 ( 左 )の 記 入 例 携 帯 電 話 の 種 類 毎 に UTF-8 のコードを 用 い て 日 本 語 の 文 字 化 けが 生 じるか 否 かをある 程 度 把 握 し 文 字 化 けなどにより 使 えない 機 種 の 傾 向 を 把 握 しておくことが 望 ましい そこで 学 生 らが 持 っている 携 帯 を 使 って 実 験 してもらっ た ソフトウェア 学 としての 問 題 点 今 回 の 実 験 的 な 開 発 を 通 して ソフトウェア の 開 発 方 法 論 の 上 から UML (4) による 設 計 の 手 順 について 設 計 方 法 論 の 問 題 点 を 再 確 認 した それは UML による 設 計 を 行 う 以 前 にしておか なければならないことがあると 筆 者 が 考 えてい たことを 実 際 に 今 回 要 件 分 析 から 実 装 まで 行 う 過 程 で 確 認 できた 今 回 のシステムの 利 用 者 と 事 前 にシステムの 運 用 操 作 方 法 のデッサン をし イメージのすり 合 わせをしなければ 具 体 的 にどのようなシステム どのような 運 用 形 態 が 望 ましいのか 想 像 の 域 をでない 意 志 の 疎 通 を 図 ることができないと 具 体 的 に UML での 開 発 の 最 初 の 段 階 でのユーザとの 案 件 すりあわ せ 確 認 に 用 いるドキュメントと 一 般 的 に 言 わ れているユースケース 図 およびそのシナリオの 作 成 などが 独 りよがりのものとなってしまう コンピュータと 利 用 者 の 関 係 については 数 十 年 前 から 設 計 ではマン マシンのインター フェースが 大 切 だと 言 われている これは 誰 も が 否 定 しないと 思 う UML による 設 計 を 厳 密 に 行 おうとすると ユーザ インターフェースを どのようにして 合 意 形 成 していくことが 望 まし いのか UML を 用 いる 場 合 は ユースケース 図 とシナリオを 用 いてユーザ インターフェース を 合 意 形 成 することが 妥 当 な 設 計 プロセスと 考 えている ところが この 合 意 形 成 が 本 当 に 可 能 か と 問 われると 難 しいとしか 答 えられな い これは 筆 者 が 今 回 分 析 から 実 装 までを 担 当 した 事 例 での 設 計 製 造 プロセスの 体 験 によっ て 確 認 した システムの 利 用 者 と 開 発 者 の 双 方 が 熟 練 した SE 同 士 だとしても 合 意 形 成 は 困 難 ではないか と 思 われる 例 えば 今 回 のようなウェブ アプリケーシ ョンの 場 合 各 画 面 の 項 目 と 画 面 の 遷 移 の 関 係 がイメージとしてきちんと 把 握 されないと 画 面 の 種 類 自 身 も 仕 様 が 凍 結 できない しかし UML による 仕 様 の 決 定 に 画 面 とその 項 目 および 画 面 の 遷 移 などは 一 切 含 まれていない データ ベースも 然 り これらを 表 現 するためには ク ラス 図 を 用 いることが 適 当 な 方 法 かもしれない しかし クラスは 静 的 な 関 係 のみを 表 してい る 画 面 遷 移 のような 動 的 な 関 係 は 表 現 できな い この 動 的 な 表 現 は シーケンス 図 かまたは アクティビティ 図 を 用 いないと 描 けない 場 合 によっては ステートマシン 図 を 利 用 できるか もしれない しかし そのいずれを 用 いても 画 面 の 物 理 的 な 意 味 合 いが 見 えにくい 論 理 的 な 設 計 の 場 面 ではクラス 図 でも 構 わないのかもし れないが 操 作 マニュアルを 書 くことを 考 える と 物 理 的 な 画 面 の 情 報 が 必 要 になってくる ウェブ アプリケーションの 開 発 のためには 画 面 の 情 報 およびその 遷 移 についての 詳 細 な 定 義 を 明 記 したドキュメントが 必 須 と 考 える 今 回 筆 者 が 用 いた 打 ち 合 わせメモの 一 例 を 参 考 ま でに 図 9 に 示 す このような 画 面 遷 移 と 個 々の 画 面 の 項 目 を 定 義 するドキュメントが 正 式 な 設 計 資 料 として 必 須 と 考 える - 22 -
図 9 打 ち 合 わせ 途 中 の 画 面 遷 移 メモ - 23 -
まとめ 現 在 ほぼアンケート 収 集 用 ウェブ アプリ ケーションのシステムが 完 成 し これから 試 行 することになっている 今 後 使 い 勝 手 および 各 種 携 帯 端 末 毎 の 相 性 などを 含 め 評 価 し 可 能 な 限 り 利 用 者 に 負 担 を かけずに 使 えるものにしていくことが 望 まれる また UML による 設 計 について 特 にウェブ アプリケーションに 関 して 今 後 よりよい 手 順 とドキュメントのありかたについて 検 討 をして いく 必 要 がある ( 注 1) 進 藤 美 津 子 玉 井 ふみ 荻 野 美 佐 子 新 生 児 聴 覚 スクリーニング 後 の 要 再 検 児 に 適 用 可 能 な 前 言 語 期 の 発 達 評 価 質 問 紙 の 開 発 の 題 目 での 共 同 研 究 として 2008 年 度 ~2011 年 度 ま で 実 施 中 (1) JIS X 8341-3:2010, 高 齢 者 障 害 者 等 配 慮 設 計 指 針 - 情 報 通 信 に おける 機 器,ソフトウェア 及 びサービス - 第 3 部 :ウェブコンテンツ (2) HTML 4.01 Specification, http://www.w3.org/tr/html4/ (3) 福 良 博 史, 情 報 技 術 関 連 の 実 習 支 援 教 材 の Web/XML 化, 職 業 能 力 開 発 研 究,pp.11-22,2005 (4) OMG による UML の 公 式 資 料, http://www.uml.org/ - 24 -