アジア 日 本 研 究 ISSN 2223-5841 第 2 号 前 言 1 特 集 :アジア 視 座 からの 日 本 研 究 寄 稿 論 文 アジア 視 座 からの 日 本 文 学 研 究 大 嶋 仁 2 一 般 投 稿 論 文 同 語 反 復 名 詞 謂 語 句 的 語 義 結 構 和 語 境



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根 本 確 根 本 確 民 主 率 運 民 主 率 運 確 施 保 障 確 施 保 障 自 治 本 旨 現 資 自 治 本 旨 現 資 挙 管 挙 管 代 表 監 査 教 育 代 表 監 査 教 育 警 視 総 監 道 府 県 警 察 本 部 市 町 村 警 視 総 監 道 府 県 警 察 本 部

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1

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個人住民税徴収対策会議

16 日本学生支援機構

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Taro-契約条項(全部)

Transcription:

アジア 日 本 研 究 ISSN 2223-5841 第 2 号 前 言 1 特 集 :アジア 視 座 からの 日 本 研 究 寄 稿 論 文 アジア 視 座 からの 日 本 文 学 研 究 大 嶋 仁 2 一 般 投 稿 論 文 同 語 反 復 名 詞 謂 語 句 的 語 義 結 構 和 語 境 特 徵 陳 訪 澤 張 秀 娟 13 室 生 犀 星 句 の 特 質 について 劣 等 感 コンプレックス 脱 出 の 努 力 劉 金 挙 24 试 论 古 事 记 中 的 婚 恋 传 说 刘 文 星 43 実 践 報 告 学 習 者 が 捉 えた いい 文 章 のポイント 初 中 級 学 習 者 による 説 明 文 課 題 のピア レビュー 水 戸 淳 子 52 書 評 與 那 覇 潤 著 中 国 化 する 日 本 日 中 文 明 の 衝 突 一 千 年 史 青 山 玲 二 郎 59 論 文 執 筆 基 準 61 編 集 後 記 65

アジア 日 本 研 究 第 2 号 前 言 ここに2011 年 6 月 の 創 刊 号 に 続 き 香 港 マカオ 広 東 日 本 研 究 大 学 聯 合 論 文 誌 アジア 日 本 研 究 亜 洲 日 本 研 究 Asian Journal of Japanese Studies の 第 2 号 を 発 刊 する 運 びとなった 今 号 は アジア 諸 国 地 域 をフィールドにする 研 究 者 に 広 く 研 究 の 成 果 を 発 表 す る 場 を 提 供 し 新 時 代 の 日 本 研 究 の 座 標 を 打 ち 出 す と 言 う 当 誌 創 刊 の 刊 行 目 的 に 沿 うべく 寄 稿 依 頼 論 文 による 特 集 セクション アジア 視 座 からの 日 本 研 究 を 設 けた 寄 稿 をご 依 頼 した 方 々の 避 けようの 無 いご 都 合 の 変 更 により 大 嶋 仁 福 岡 大 学 教 授 日 本 比 較 文 学 会 会 長 の アジア 視 座 からの 日 本 文 学 研 究 のみの 掲 載 となったが 日 本 文 学 ひいては 日 本 研 究 の 対 象 となる 日 本 を 単 一 固 定 化 した 概 念 として 捉 え ず 異 なった 文 化 圏 から 異 なった 歴 史 的 過 程 を 経 て 統 合 された 集 合 体 として 捉 えるべ きだという 指 摘 は 翻 って アジア 視 座 からの 日 本 研 究 を 考 える 時 アジア 視 座 を 自 明 の 理 の 固 定 された 単 一 体 として 見 ず 流 動 し 続 ける 集 合 体 として 其 の 地 域 の 特 異 性 から 見 えてくる 日 本 研 究 そして 特 異 性 の 中 でも 共 通 して 見 えてくる 普 遍 的 な 日 本 研 究 の 要 素 双 方 を 注 意 深 く 見 て 行 くべきだという 示 唆 へも 繋 がり 大 変 意 義 ある ものとなった 又 一 般 投 稿 論 文 は 無 記 名 論 文 の 査 読 委 員 による 厳 正 な 査 読 の 結 果 多 数 の 応 募 の 中 から 3 つの 論 文 1つの 実 践 報 告 そして1つの 書 評 が 掲 載 となった これらの 論 文 がアジア 地 域 からの 日 本 研 究 の 活 発 な 議 論 の 誘 引 に 貢 献 すること を 祈 りたいと 思 う アジア 日 本 研 究 編 集 副 委 員 長 小 川 正 志 ( 香 港 大 学 ) 1

寄 稿 論 文 大 嶋 仁 : アジア 視 座 からの 日 本 研 究 アジア 視 座 からの 日 本 文 学 研 究 Japanese Literature Studies in Asian Context 大 嶋 仁 (OSHIMA Hitoshi) 福 岡 大 学 日 本 比 較 文 学 会 会 長 Fukuoka University, Professor Japan Comparative Literature Association, President 1. 日 本 とはなにか 今 号 の 特 集 は アジア 視 座 からの 日 本 研 究 ということであり 論 者 の 専 門 が 比 較 文 学 である ことから 日 本 文 学 を アジア 視 座 という 視 点 で 論 じてみたい 議 論 が 錯 綜 しないために あ らかじめ 用 語 の 意 味 をはっきりさせておく とくに 日 本 研 究 の 日 本 という 語 が 問 題 であ るので これをはっきりさせたい 多 くの 日 本 人 は 日 本 を 自 明 のこととしているが それほ ど 自 明 なのか そこをまず 追 究 してみたいのである 日 本 が 国 家 としての 日 本 国 のことを 意 味 するのなら 日 本 は 歴 史 上 の 存 在 である 言 い 換 えればそこには 歴 史 があり 歴 史 があるということは 初 めがあり いつかは 終 わりが 来 ると いうことである 事 実 歴 史 家 の 言 うところでは 日 本 国 が 誕 生 したのは 早 くとも 5 世 紀 遅 け れば 7 世 紀 大 化 の 改 新 をもって 日 本 国 が 成 立 したとの 見 方 が 有 力 で それすなわち 大 和 国 の 成 立 を 意 味 する( 網 野 1993) だが そのときの 大 和 は 今 日 の 日 本 列 島 の 半 分 も 領 有 していなかっ たのだから 今 日 の 日 本 人 が 考 える 日 本 とはほど 遠 いと 言 わねばならない 今 日 の 日 本 国 の 原 型 が 出 来 上 がったのは 源 平 の 争 いが 終 わり 鎌 倉 時 代 を 迎 えてからである しかし そのときでもまだ 北 海 道 は 日 本 でなかったし 南 西 諸 島 が 日 本 の 一 部 ではなかった 江 戸 時 代 には 蝦 夷 地 や 琉 球 王 国 との 交 易 関 係 があったから この 時 代 になっても 沖 縄 や 北 海 道 は 日 本 ではなかった 今 日 言 うところの 日 本 国 が 出 来 たのは 明 治 政 府 が 沖 縄 などの 南 西 諸 島 を 領 有 し 北 海 道 をも 領 有 して 以 降 のことである なのに 日 本 人 の 多 くは 昔 から 今 までずっと 同 じ 日 本 が あると 信 じている 多 くの 日 本 人 が 自 身 の 国 の 成 立 事 情 を 知 らないのは 日 本 列 島 = 日 本 という 思 い 込 みが 強 いた めである なるほど 列 島 は 大 陸 から 切 り 離 されているから 地 理 的 区 別 のせいでそう 考 えるので あり 日 本 という 政 治 区 分 と 列 島 という 地 理 区 分 とが 同 一 視 されるのである そのような 列 島 も 1 万 年 以 上 前 には 大 陸 とひと 続 きだったという 事 実 があるのに 人 々はそれも 知 らない 歴 史 の 事 実 地 質 上 の 事 実 にもっと 敬 意 を 払 うべきだろう たとえば 縄 文 土 器 などを 見 て そこに 日 本 文 化 の 原 点 を 認 める 人 は 跡 を 絶 たない 弥 生 文 化 は 大 陸 から 来 たが 縄 文 はもともと 日 本 にあったなどと 言 うのである しかしながら 縄 文 時 代 に 日 本 という 国 がなかったことは 誰 が 見 ても 事 実 である 縄 文 文 化 が 今 日 の 日 本 文 化 の 土 台 になっ ていることは 認 めるとしても だからといって 縄 文 時 代 から 日 本 があったわけではない 縄 文 = 2

寄 稿 論 文 大 嶋 仁 : アジア 視 座 からの 日 本 研 究 日 本 というような 偏 見 にしがみついていると 日 本 が 世 界 のあちこちの 地 域 と 結 ぶネットワーク 上 の 一 点 であることが 見 失 われてしまうであろう ついでながら 言 っておけば 日 本 語 という 言 語 もその 存 在 は 確 たるものではないのに これも 太 古 から 今 まで 存 続 してきたと 思 われがちである 日 本 語 なる 言 語 が 出 来 上 がったのは 比 較 的 最 近 のことであって 日 本 人 が 日 本 語 のみでやっていける 時 代 になったのは 大 正 以 降 のことである 奈 良 時 代 以 前 を 振 り 返 ってみよう そこでは 漢 文 漢 語 が 唯 一 の 文 字 言 語 で 土 着 語 すなわち 和 語 = 大 和 言 葉 は 話 し 言 葉 にすぎなかった それら 二 つは 互 いに 没 交 渉 だったわけではないが 両 者 の 間 には 距 離 があり 和 漢 並 行 して 日 本 人 の 言 語 世 界 を 形 成 していたのである この 並 行 現 象 がくずれ 和 語 と 漢 語 が 入 り 混 じり いわゆる 和 漢 混 交 文 が 成 立 したのは 鎌 倉 時 代 になってから であるが 鎌 倉 時 代 になっても 知 識 人 たちは 相 変 わらず 漢 文 を 習 得 しつづけたのであって 和 漢 併 用 はつづいたのだ この 傾 向 は 江 戸 時 代 末 期 否 明 治 までもつづき 日 本 人 が 日 本 語 のみで 暮 らすようになったのは 早 くても 大 正 時 代 である 第 二 次 大 戦 の 敗 戦 を 区 分 と 定 め 戦 後 になっ て 初 めて 日 本 人 は 日 本 語 のみを 用 いるようになったという 考 え 方 も 成 り 立 つということを 忘 れる べきではない ただし 日 本 人 が 日 本 語 のみを 用 い 日 本 語 がようやく 独 立 した 言 語 になったといっても そ の 基 盤 がいまだに 脆 弱 であることも 認 めねばならない 今 日 の 日 本 語 の 大 半 が 大 和 言 葉 ではなく 漢 文 から 来 ている 漢 語 翻 訳 語 と 称 される 新 漢 語 そしてカタカナ 表 記 の 外 来 語 から 成 っている 事 実 はいかんともし 難 い 幸 か 不 幸 か 数 少 ない 例 外 を 除 けば 日 本 人 はかつてのように 外 国 語 と 外 国 文 学 を 徹 底 して 習 得 することをやめている それゆえ 日 本 語 だけで 暮 らせるようになっ たと 言 えば 言 えるものの 外 国 語 が 参 入 している 現 在 の 日 本 語 を 用 いる 現 代 の 日 本 人 が 元 の 外 国 語 を 知 らないのであれば これまた 足 元 が 不 確 かなのである このような 言 語 状 況 に 大 半 の 日 本 人 が 気 づいていないからといって そこに 問 題 がないわけではない 以 上 をまとめると 日 本 研 究 という 言 う 場 合 の 日 本 は 統 一 されたひとつの 実 体 ではな い 今 日 の 日 本 は 政 治 的 には 統 一 国 家 かも 知 れないが 複 数 の 文 化 がいまだに 混 在 すると 考 えた ほうが 実 情 にかなっている 昭 和 前 期 すなわち 第 二 次 大 戦 以 前 の 日 本 においては 国 体 を 中 心 とする 文 化 的 統 一 体 の 観 念 が 支 配 的 だったが それは 構 築 された 国 家 神 話 であって 現 実 に 合 致 したものではなかった 江 戸 時 代 までは 上 方 という 言 葉 があったように 関 西 と 関 東 では 今 でも 文 化 が 異 なるのであって 九 州 と 本 州 でも 異 なり 関 東 と 東 北 でも 北 海 道 とでも 異 なる のである 現 代 はグローバル 化 の 時 代 で 英 語 が 世 界 中 どこへ 行 っても 通 用 する 言 語 となりつつあ るが それと 同 様 にメディアと 教 育 の 力 で 日 本 語 が 列 島 のどこへ 行 っても 通 用 する 言 語 となっ ている しかし そうしたことは 文 化 の 表 層 にかかわっても 深 層 は 別 ではないだろうか 日 本 列 島 にはいまだに 複 数 の 文 化 が 並 存 すると 考 えないと 日 本 研 究 を 具 体 的 に 進 めることはでき ないどころか 誤 った 方 向 へ 行 かせてしまうように 思 えるのである 日 本 列 島 に 複 数 の 文 化 を 認 めよう そうすれば 日 本 というものを 世 界 の 文 脈 もっと 正 確 に 言 えばアジアの 文 脈 において 把 握 できるようになると 思 えるのである 3

寄 稿 論 文 大 嶋 仁 : アジア 視 座 からの 日 本 研 究 2. アジアのなかの 日 本 日 本 文 化 が 単 一 ではなく 複 数 の 文 化 がそこに 並 存 していると 主 張 することは 多 文 化 主 義 の 視 点 に 立 ってはじめてなし 得 ることである 日 本 における 多 文 化 主 義 というと 人 はしばしば 旧 植 民 地 からの 移 住 民 すなわち 在 日 を 口 にし 植 民 地 主 義 に 問 題 を 収 斂 させる 傾 向 があるが 植 民 地 主 義 を 問 題 にするだけでは 近 代 しか 見 えてこなくなる 言 い 換 えれば 古 くからある 列 島 内 の 諸 文 化 に 正 当 な 地 位 を 与 えられなくなるのである アジアの 中 の 日 本 を 考 えるうえでは 日 本 文 化 の 形 成 過 程 において 同 じ 列 島 内 に 異 なった 文 化 圏 があったことにまず 注 目 し それらが 現 在 もなお 完 全 には 消 滅 していないことに 注 意 を 向 けたい 列 島 内 の 異 なった 文 化 圏 は それぞれ がアジアの 諸 地 域 と 密 接 しているのである つまり 在 日 を 言 うなら 沖 縄 奄 美 も アイヌ をも 言 わねばならないということで ある 日 本 列 島 の 歴 史 を 多 文 化 主 義 に 即 して 見 た 場 合 最 初 に 浮 かび 上 がってくるのは 何 と 言 っ ても 北 方 民 族 文 化 の 一 環 であるアイヌ 文 化 圏 で つぎに 関 西 地 域 を 中 心 に 発 達 し 東 は 関 東 から 南 東 北 にかけて 西 は 九 州 にまで 及 んだ 大 和 文 化 圏 が 来 るのである 三 番 目 に 来 るのは 大 和 文 化 の 影 響 が 長 く 及 ばなかったと 言 われる 南 西 諸 島 の 文 化 圏 で つまり 日 本 列 島 には 大 きくわけて 三 つの 文 化 圏 が 並 存 しており 近 代 以 降 はこの 三 つが 日 本 文 化 の 名 のもとに 統 一 され 地 域 差 がまるでなくなってしまったかのような 錯 覚 を 起 こさせているにもかかわらず それらは 表 面 か ら 消 え 去 りはしても 文 化 史 の 深 層 において 存 続 しているのである いわゆる 日 本 文 化 なるものは つまるところ この 三 つの 文 化 の 相 互 作 用 のうえに 成 り 立 っているわけだ この 多 文 化 主 義 の 見 方 が 日 本 をアジアに 位 置 づけるのに 役 立 つというのも まずアイヌ 文 化 圏 はアジア 大 陸 の 東 北 部 および 北 米 大 陸 におよぶ 島 々の 文 化 圏 とひとつであるから 日 本 文 化 は 東 北 アジアさらには 北 米 の 先 住 民 文 化 とつながる つぎに 大 和 文 化 圏 は 日 本 国 が 成 立 する 前 から 列 島 に 在 住 していた 諸 々の 土 着 集 団 の 文 化 のうえに 朝 鮮 半 島 から 移 住 してきた 人 々の 文 化 が 加 わり さらにその 上 に 中 国 の 隋 唐 の 文 明 が 接 ぎ 木 されたものであるから 日 本 文 化 の 中 核 をなす この 文 化 が 朝 鮮 半 島 の 文 化 および 中 国 文 明 との 連 携 によって 成 り 立 っていると 見 ることができる のである 事 実 日 本 語 の 統 辞 法 は 朝 鮮 語 と 同 じであり 基 本 語 彙 は 東 南 アジアあるいは 中 国 南 部 と 共 通 し 高 等 語 彙 には 漢 語 が 多 い 大 和 文 化 圏 の 成 立 事 情 は そうした 日 本 語 のあり 様 に 如 実 に 反 映 しているのである 大 和 文 化 の 影 響 があまりないと 言 われる 南 西 諸 島 については 近 年 の 研 究 が 明 らかにしている ように 中 国 南 部 台 湾 東 南 アジアの 諸 文 化 とひとつづきの 文 化 圏 である( 辰 巳 2000) この ことは 日 本 列 島 を 複 数 の 文 化 の 並 存 する 場 と 見 ることによってそれぞれの 文 化 が 世 界 の 様 々な 地 域 とつながり 複 数 の 地 域 文 化 のネットワークのうえに 日 本 列 島 の 文 化 が 開 花 していることを 示 す 好 例 であり もっと 多 くの 日 本 人 が 意 識 してよいことである もちろん 近 代 になればそこ に 西 洋 文 化 の 影 響 が 入 ってくるわけで 人 々の 関 心 はついこちらのほうに 注 がれがちだが この ほうの 影 響 はアジア 諸 地 域 の 文 化 のそれに 比 べると 歴 史 が 浅 いと 言 ってよく 日 本 文 化 を 考 える 場 合 には 列 島 周 辺 部 のアジアをまず 見 ておく 必 要 があると 思 われる 近 代 における 西 洋 文 明 と 日 本 との 関 係 は 圧 倒 的 に 物 的 交 流 の 関 係 であって 人 的 交 流 についてはアジア 諸 地 域 との 交 流 と 同 4

寄 稿 論 文 大 嶋 仁 : アジア 視 座 からの 日 本 研 究 列 に 論 じることはできない 脱 亜 入 欧 は 理 念 としてのみ 可 能 であって 実 際 には 不 可 能 なので ある もちろん 現 在 進 行 中 のグローバル 化 は 欧 米 化 の 一 種 であり これによる 文 化 変 容 は 非 常 に 大 きいので 現 在 の 日 本 文 化 を 考 える 場 合 にはこちらのほうを 重 視 すべきだという 意 見 にも 一 理 は ある しかし 日 本 人 がいくらコーラを 飲 んでもアメリカ 人 になることはなく 英 語 からの 外 来 語 の 日 本 語 において 占 める 分 量 が 漢 語 のそれと 比 べて 多 くなっているという 事 実 はあっても 漢 語 が 使 われなくなることはないにちがいない ほかならぬ 和 漢 混 交 の 文 的 構 造 があればこそ 漢 語 のかわりにカタカナ 言 葉 がそこにはめ 込 まれ 得 たのであって 日 本 語 に 漢 語 あったればこその 現 象 がつづいているのである 極 論 すれば 日 本 語 におけるカタカナ 言 葉 は 新 しい 形 の 漢 語 そ う 言 ってよい 言 語 だけの 問 題 ではない 漢 字 文 明 の 渡 来 の 意 味 するところは 漢 字 という 文 字 を 通 じての 価 値 世 界 思 想 世 界 文 芸 世 界 の 浸 透 にほかならないのであって 道 教 儒 教 仏 教 の 渡 来 と 不 可 分 である 言 い 換 えれば 日 本 人 の 価 値 観 の 基 礎 を 作 るのに 漢 字 漢 文 が 大 いに 寄 与 しているのであ って 道 教 も 儒 教 も 仏 教 も 外 来 思 想 であって 列 島 在 来 の 神 道 こそが 日 本 人 の 本 当 の 思 想 なのだな どという 国 学 者 流 の 議 論 は 浅 薄 に 過 ぎるのである 江 戸 時 代 の 国 学 思 想 にしても 漢 文 の 教 養 の 産 物 であることは 間 違 いなく( 吉 川 1977) 古 代 にさかのぼって 神 道 の 成 立 を 見 れば それが 在 来 の 諸 信 仰 の 集 合 であり 仏 教 という 一 大 宗 教 思 想 体 系 を 眼 前 にしての 民 族 主 義 的 反 動 であったこ とは 明 白 であり その 形 成 に 儒 仏 道 の 思 想 が 流 れ 込 んでいることは 明 らかなのである( 末 木 2003) 最 近 よく 言 われるように 日 本 人 も 日 本 文 化 もハイブリッドである( 上 垣 外 2011) 神 道 は 純 日 本 的 だとか 日 本 人 は 純 血 種 だとかいう 説 には 何 の 説 得 力 もない 3. アイヌの 文 学 アジア 視 座 で 日 本 文 学 を 考 えるということは アジアという 地 域 の 文 学 的 文 脈 において 日 本 文 学 を 考 えるということである さきにも 述 べたように 日 本 列 島 には 三 つの 文 化 圏 があるから 三 つの 異 なった 文 学 があることになる その 三 つとは 北 はアイヌ 文 学 中 央 は 大 和 文 学 そして 南 西 諸 島 の 文 学 である 今 ここに これら 三 つの 文 学 の 特 徴 を 挙 げ 同 時 にそれぞれのアジア 文 脈 における 位 置 づけを 明 らかにしたい まずアイヌ 文 学 であるが アイヌ 語 は 日 本 語 と 全 く 異 なるため 日 本 文 学 の 核 をなす 大 和 文 学 とは 別 個 の 文 学 と 考 えてよい しかし その 内 容 を 考 えるとき 必 ずしも 大 和 文 学 と 無 縁 ではな かったのではないかと 思 われる アイヌ 語 のなかに 日 本 語 の 語 彙 が 入 り 込 み 逆 に 日 本 語 の 語 彙 にアイヌ 語 が 入 り 込 んでいることが 考 えられるように 日 本 文 学 とアイヌ 文 学 の 間 には 相 互 浸 透 があると 考 えてよい では アイヌ 文 学 が 日 本 (= 大 和 ) 文 学 と 何 が 異 なるのかといえば 前 者 が 口 承 文 学 であり それをローマ 字 に 書 きとって 日 本 語 に 翻 訳 するまで 文 字 化 されずにいたということがあげられる アイヌ 文 学 は 口 承 文 学 であり それがたいへん 高 度 に 発 達 したものと 言 ってよいのである また 大 和 文 学 とのちがいとしては そこに 表 現 された 世 界 観 のちがいも 重 要 である どのような 文 学 5

寄 稿 論 文 大 嶋 仁 : アジア 視 座 からの 日 本 研 究 にも 言 えることだが アイヌ 文 学 も 文 語 と 口 語 の 両 方 の 文 学 があり 前 者 は 聖 なる 宗 教 文 学 後 者 は 娯 楽 用 の 通 俗 文 学 となっているが その 両 方 にアイヌの 世 界 観 が 反 映 されているのである( 金 田 一 1992 久 保 寺 1977) アイヌの 世 界 観 を 知 りたいと 思 えば 神 謡 (カムイ ユカラ)と 呼 ばれる 文 語 口 承 文 学 を 見 るに 限 る そこに 表 明 されている 世 界 観 は この 世 界 の 一 切 のものが 神 聖 な 霊 の 化 身 であるとい うもので とくに 面 白 いのはアイヌ 神 謡 においては 神 が 語 り 手 となって 自 身 の 物 語 を 語 るとい う 形 をとっていることである( 知 里 1923) 言 ってみれば 神 による 私 小 説 の 展 開 で このよ うな 文 学 はついに 大 和 文 学 には 現 れなかったものであり 寡 聞 な 論 者 は 世 界 の 他 の 文 学 にこうし た 例 があることを 知 らない ちなみに アイヌ 文 学 と 同 系 統 と 考 えられる 東 北 シベリア 北 アメ リカの 先 住 民 族 の 口 承 文 学 を 調 べてみたが あるいは 類 似 した 神 謡 がかつてあったのかも 知 れな いが 今 日 まで 残 っているようではない この 世 界 の 一 切 のものが 神 聖 な 霊 の 化 身 であるとのアイヌの 世 界 観 は 日 本 文 学 (= 大 和 文 学 ) の 出 発 点 である 古 事 記 の 冒 頭 にあらわれた 世 界 観 と 共 通 していると 見 る 向 きもあるかも 知 れ ない 古 事 記 の 冒 頭 部 には たしかに 産 霊 (ムスヒ)の 具 現 として 万 物 が 現 れ 万 物 に 霊 性 が 認 められていることがわかるのである しかしながら 産 霊 が 万 物 の 根 源 にあるということは 産 霊 とは 生 殖 力 のことであるから 古 事 記 の 世 界 観 はきわめて 性 的 あるいは 自 然 主 義 的 であ ると 言 える 対 するアイヌの 場 合 は そのような 要 素 が 見 つからず 古 事 記 にくらべて 超 自 然 的 で ある 種 の 崇 高 さが 現 れていると 思 われるのである どちらのほうがよいとは 言 えないにし ても 質 的 なちがいは 押 さえておく 必 要 がある アイヌ 文 学 の 崇 高 さは たとえば 近 代 における 東 北 日 本 文 学 の 結 晶 である 宮 澤 賢 治 の 作 品 に 通 じるものがある アイヌ 神 謡 と 古 事 記 のちがいとしては 古 事 記 の 神 々が 天 津 神 という 天 界 の 存 在 と 国 津 神 という 地 上 の 存 在 とに 分 かれているのに 対 して そうした 区 分 がアイヌの 神 々にはないとい うことも 挙 げられる アイヌ 世 界 ではいずれの 神 も 天 界 の 存 在 であって それらが 地 上 にさまざ まな 形 で 現 れるにしても やがては 天 界 に 戻 る 霊 的 存 在 でありつづけるのである さらに 言 えば 古 事 記 では 天 津 神 の 地 上 での 君 臨 すなわち 天 孫 降 臨 という 政 治 神 話 が 中 心 となってお り 人 間 もっと 正 確 には 大 和 の 歴 史 に 重 点 が 置 かれている これに 対 して アイヌ 神 謡 では 人 間 の 歴 史 はほとんど 問 題 になっていないのである 総 じていえば 古 事 記 に 発 する 大 和 文 学 は 人 間 世 界 の 文 学 アイヌ 文 学 は 霊 的 超 人 間 的 と 言 ってよい ところで 古 事 記 が 国 家 神 話 を 展 開 しているということは そこにおいて 神 話 と 歴 史 が 連 続 しているということで 歴 史 が 神 話 化 され 神 話 が 歴 史 化 されていることを 意 味 する 古 事 記 に 出 発 する 大 和 文 学 において 歴 史 を 文 学 化 した 叙 事 詩 の 発 達 が 見 られないのも そのためなので ある 叙 事 詩 というものは 歴 史 事 件 をひとつの 物 語 詩 とするときに 生 まれるものだが そうした ものはアイヌ 文 学 には 見 られても 大 和 文 学 には 見 られない 古 事 記 のなかではスサノヲやヤマ トタケルの 物 語 がほとんど 唯 一 の 叙 事 詩 的 部 分 なのだが その 形 式 は 韻 文 ではないから 詩 とは 言 えず 詩 歌 は 主 人 公 である 英 雄 の 詠 んだ 歌 として 含 み 込 まれているだけなのである スサノヲや ヤマトタケルが 大 和 文 学 の 祖 型 であるとするなら 大 和 文 学 はついに 本 当 の 叙 事 詩 を 持 たなかっ たことになる 叙 事 にかわって 抒 情 が 栄 えたのである もちろん 平 家 物 語 のような 叙 事 文 学 6

寄 稿 論 文 大 嶋 仁 : アジア 視 座 からの 日 本 研 究 も 大 和 文 学 の 一 部 ではある しかし それが 大 和 文 学 の 範 とされたことはなく 範 とされたのは 四 季 折 々の 風 物 に 心 を 託 す 抒 情 歌 なのである 一 方 のアイヌ 文 学 は たとえば 古 代 ギリシャと 同 じく 人 間 の 歴 史 を 叙 事 詩 として 語 り いわゆ る 英 雄 叙 事 詩 を 生 み 出 している アイヌ 文 学 は 一 方 に 神 謡 のような 宗 教 文 学 を 持 つとともに 金 田 一 京 助 が 虎 杖 丸 と 訳 した 英 雄 叙 事 詩 をももっているのである( 金 田 一 1936) 長 大 な 叙 事 詩 が 口 承 であったことは アイヌの 語 り 部 たちがたいへんな 記 憶 力 の 持 ち 主 だったことを 示 し ている アイヌには 古 代 ギリシャのホメロスに 匹 敵 する 人 が20 世 紀 になるまでいたのである 先 にも 触 れたが アイヌは 北 方 民 族 の 一 つで 文 化 的 には 東 北 シベリア 北 アメリカの 諸 民 族 との 関 連 が 強 い( 大 林 1995) しかし これらの 北 方 民 族 の 文 学 はいずれもアイヌ 文 学 よりはる かに 素 朴 な 形 式 のものであって そこに 文 芸 的 練 磨 の 跡 が 見 られないのである アイヌ 文 学 が 口 承 文 学 にしてあそこまで 高 度 に 洗 練 された 形 式 と 真 に 文 芸 の 名 に 値 する 複 雑 な 展 開 と 細 かい 文 飾 を 持 つに 至 ったことの 背 後 には あるいは 大 和 文 学 や 中 国 朝 鮮 の 文 芸 との 影 響 関 係 があった のではないか アイヌの 所 持 していた 品 々に 東 北 アジアの 物 産 が 紛 れ 込 んでおり 彼 らが 海 を 越 えて 交 易 をしていたことが 知 られているので 文 字 を 介 さずとも 文 芸 の 上 で 交 流 があったのでは ないかと 考 えられる(Fitzhugh/Dubreuil 2001) 4. 大 和 の 文 学 つぎに 日 本 文 学 の 中 核 である 大 和 の 文 学 であるが 従 来 の 文 学 史 で 日 本 文 学 とされてきた ものはこれである 古 事 記 日 本 書 紀 に 始 まり 万 葉 集 でひとつの 頂 点 に 達 し さらに 大 和 化 が 進 んで 古 今 集 を 生 み 出 すに 至 ったこの 文 学 中 核 となる 言 語 はいわゆる 大 和 言 葉 で それが 最 初 は 漢 字 によって 表 記 され のちに 仮 名 あるいは 漢 字 かな 交 じりで 表 記 されるようにな ったのである この 文 学 の 特 徴 は 朝 鮮 古 代 文 化 の 影 を 宿 して 出 発 し 中 国 の 古 典 文 学 をモデルにして 発 達 し たにもかかわらず その 中 心 が 抒 情 にあり 民 衆 文 化 を 反 映 する 代 わりに 宮 廷 貴 族 文 化 を 範 とす るところにある 古 今 集 こそはこの 文 学 の 本 質 を 集 約 したものであり これが 聖 典 として 後 代 の 大 和 文 学 に 影 響 を 与 えつづけたことを 考 えれば 古 今 集 の 特 徴 こそは 大 和 文 学 の 特 徴 である と 言 ってよいと 思 われる では 古 今 集 の 特 徴 は 何 かと 言 えば まず 短 歌 形 式 で 統 一 されてい る 点 が 挙 げられる 短 歌 には 叙 事 は 不 可 能 である 一 方 抒 情 を 端 的 に 表 現 するには 適 しているの である 万 葉 集 においては 長 歌 のあとに 全 体 の 叙 情 を 集 約 する 短 歌 が 添 えられ 長 歌 には 短 歌 誕 生 の 状 況 説 明 が 盛 り 込 まれ そこに 最 低 限 の 叙 事 的 要 素 を 見 ることができたが そうした 状 況 を 離 れて 独 立 した 短 歌 は 背 景 となる 歴 史 状 況 を 反 映 するものではなくなり 制 作 者 の 感 情 を 自 然 風 物 を 介 して 表 現 するという 寄 物 陳 思 の 方 法 による 抒 情 詩 となったである この 寄 物 陳 思 は 重 要 で 古 今 集 においてはさらにそこに 四 季 の 移 り 変 わりを 導 入 した いわゆる 日 本 美 がここに 生 まれたのである つまり 大 和 文 学 は 古 今 集 によってひとつの 完 成 を 見 たのであり 記 号 化 された 自 然 風 物 が 定 められたコードによって 意 味 を 確 定 するという 一 種 の 隠 喩 体 系 が 制 度 化 されたのである こ 7

寄 稿 論 文 大 嶋 仁 : アジア 視 座 からの 日 本 研 究 の 歌 集 以 降 の 大 和 文 学 がこの 制 度 によってその 表 現 方 式 を 固 定 化 され それがために 詩 歌 が 形 骸 化 することになったことは 確 かだが 他 方 この 隠 喩 体 系 のおかげで ひとつの 独 特 な 美 学 が 歴 史 を 超 えて 生 きながらえることができたというのも 本 当 である 大 和 文 学 とは 要 するに 花 鳥 風 月 と 呼 ばれる 自 然 風 物 の 記 号 体 系 と うつろひ の 観 念 にもとづく 四 季 の 変 化 とを 一 つのセッ トにしたもの そう 言 ってよいが( 佐 藤 1979) そうした 文 学 自 体 を 外 から 見 た 場 合 には 世 界 にも 類 のない 独 自 な 文 学 表 現 の 実 現 と 評 価 することが 出 来 るのである 日 本 の 庭 園 にしろ 伝 統 的 器 物 にしろ 着 物 の 柄 にしろ 古 今 集 以 来 の 美 的 遺 産 によらないものはない 世 界 に 知 られ る 日 本 美 とは まさに 古 今 集 的 美 のことなのである もっとも 古 今 集 が 画 したのは 大 和 文 学 の 第 一 段 階 であって そこでこの 文 学 が 終 わった わけではない 古 今 集 にはまだ 宮 廷 の 香 りしかなかったのであるが 中 世 になると 社 会 構 造 が 変 化 し 武 家 の 台 頭 庶 民 の 誕 生 交 易 者 の 移 動 などさまざまな 新 しい 状 況 が 出 現 し そこに 大 和 文 学 は 第 二 段 階 を 迎 えるのである 人 によっては この 第 二 段 階 は 平 家 物 語 のような 戦 記 物 によってもたらされたと 考 えるかもしれないが 実 際 に 第 二 段 階 を 画 したのは 謡 曲 だというこ とを 提 案 したい 謡 曲 は 中 世 文 学 の 華 と 言 ってよく 鎌 倉 時 代 に 生 まれた 叙 事 文 学 と 平 安 時 代 の 和 歌 物 語 とを 総 合 し 構 造 的 にも 内 容 的 にも 平 安 の 和 歌 物 語 より 高 次 の 完 成 を 見 たのである では 謡 曲 の 構 造 とはどういうものか これを 煎 じ 詰 めていえば 非 連 続 的 に 対 立 する 二 項 を 併 置 し それを 第 三 の 要 素 によって 媒 介 させて 調 和 させたものだと 言 えばそれで 十 分 であろう シテ ワキ ワキシテの 三 者 がまさにこの 構 造 を 表 し 生 者 と 死 者 幻 と 現 聖 と 俗 叙 事 と 抒 情 を 媒 介 して 接 合 する 世 界 がここに 極 限 的 な 単 純 さをもって 実 現 したのである ちなみに この ような 構 造 は 芸 術 作 品 一 般 に 見 られるもので(Lotman 1990) 大 和 文 学 の 専 売 特 許 ではない 謡 曲 はそうした 構 造 の 具 現 として 最 も 単 純 簡 潔 なものだと 言 うことが 出 来 その 意 味 でその 文 芸 的 価 値 は 大 きいのである なお 謡 曲 の 出 現 を 多 文 化 主 義 の 立 場 から 言 うならば 列 島 の 西 と 東 の 文 化 交 流 が 進 展 した 結 果 東 北 日 本 の 霊 的 世 界 観 と 西 南 日 本 の 古 典 美 の 世 界 とが 融 合 したという 風 に 評 価 することも 出 来 る また 謡 曲 の 中 世 において 大 和 文 学 はようやく 日 本 文 学 となったとも 言 ってよく 逆 に 謡 曲 以 降 の 日 本 文 学 は 衰 退 していったと 思 われるのである なるほど 江 戸 時 代 前 期 に 芭 蕉 のよ うな 達 人 が 現 れて 新 たな 文 芸 を 開 いたように 見 えるが 芭 蕉 の 精 神 は 新 時 代 の 新 風 俗 によって 活 性 化 された 中 世 の 精 神 と 言 ってよく その 本 質 は 謡 曲 の 構 造 の 継 承 である 彼 の 発 句 たとえば 有 名 な 古 池 や 蛙 飛 び 込 む 水 の 音 ひとつをとっても そこに 表 現 されているのは 古 池 とい う 広 がりのある 静 と 蛙 という 小 さな 動 との 水 という 媒 介 者 による 融 合 なのである 近 代 の 哲 学 者 西 田 幾 多 郎 の 言 った 絶 対 無 矛 盾 的 自 己 同 一 はまさにこの 芭 蕉 の 句 に 具 現 されている と 言 ってよいが 究 極 の 日 本 美 の 構 造 は 詩 歌 においては 芭 蕉 によって 哲 学 においては 西 田 によ って 表 現 されたのである 大 和 文 学 は 謡 曲 以 降 衰 退 していったと 述 べたが 江 戸 時 代 前 期 はまだしも 後 半 からはそれま でに 築 いてきた 構 造 を 徐 々に 失 っていく 過 程 を 示 していると 言 ってよい 儒 教 の 道 徳 主 義 と 過 度 の 漢 文 的 教 養 の 重 視 が 文 学 的 生 成 の 息 の 根 を 止 めていったのである また 明 治 時 代 になると 漢 文 重 視 の 傾 向 は 薄 れたが それは 漢 文 重 視 から 欧 文 重 視 へと 移 行 しただけであって そこに 本 質 8

寄 稿 論 文 大 嶋 仁 : アジア 視 座 からの 日 本 研 究 的 な 変 化 があったわけではない 漢 文 が 欧 文 に 取 って 替 られただけであって 中 世 に 完 成 した 構 造 美 のほうは 喪 失 されつづけていったのである さらに 悪 いことに 明 治 以 降 に 受 容 した 西 洋 文 学 の 基 本 的 構 造 のほうは 把 握 されず その 表 層 部 のみが 模 倣 されたために 新 たな 構 造 が 旧 い 構 造 に 取 って 替 ったということも 起 こらなかった 坪 内 逍 遥 が 提 唱 した 写 実 小 説 なるものも 誤 解 されて 当 初 とはきわめて 異 なった 小 説 群 が 生 み 出 されたのである 唯 一 の 例 外 は 近 代 文 学 史 において 通 俗 として 不 当 に 貶 められてきた 尾 崎 紅 葉 の 小 説 であり 写 実 小 説 は 告 白 小 説 と 一 体 化 し 社 会 的 視 野 の 欠 けた 私 小 説 全 盛 となった 構 造 美 を 欠 くこの 新 傾 向 は 文 芸 とし ての 日 本 文 学 の 価 値 を 大 きく 下 落 させたのである しかし このように 言 ったからとて 近 代 の 日 本 文 学 の 営 為 の 全 てを 否 定 しようというわけで はない 社 会 性 とドラマ 性 という 小 説 の 基 本 要 素 が 欠 落 する 私 小 説 ではあるが 自 己 自 身 を 語 ることによって 内 省 を 深 め 新 たな 自 己 を 構 築 するという 点 では 評 価 できるのである そうし た 私 小 説 のなかには 時 として 作 者 自 身 の 魂 の 救 済 までが 描 かれ それを 読 むことを 通 じて 読 者 までもがカタルシスを 得 るという 例 もある たとえば 志 賀 直 哉 の 暗 夜 行 路 などがそれに 相 当 するのである ところで 近 代 の 日 本 文 学 において 特 徴 的 なこととして それまで 中 央 の 文 学 に 見 つけること のできなかった 文 化 的 要 素 が 見 つかるということが 挙 げられる とくに 顕 著 なのは 東 北 日 本 の 文 化 的 要 素 すなわちアイヌ 的 要 素 が 日 本 文 学 に 入 ってきたことである 端 的 な 例 は 前 にもあげた 宮 澤 賢 治 で 彼 の 独 特 の 世 界 観 と 作 話 形 式 は どう 見 ても 列 島 の 東 北 部 に 残 存 していた 文 化 的 要 素 を 含 んでいるのである 彼 の 文 学 についてそこに 仏 教 思 想 の 影 響 やモダニズムを 認 めることも もちろん 可 能 であるが 北 方 民 族 の 文 化 がそこに 反 映 されていることを 見 逃 してはならない 5. 南 西 諸 島 の 文 学 列 島 の 第 三 の 文 学 南 西 諸 島 の 文 学 について 触 れる 時 が 来 た この 文 学 の 特 徴 のひとつは そ の 言 語 が 大 和 の 言 葉 と 基 本 的 に 同 じだということである アイヌ 語 と 日 本 語 には 共 通 性 がほとん どないのに 南 西 諸 島 の 言 語 は 大 和 語 と 共 通 の 源 を 持 ち かなり 古 い 時 期 に 二 つに 分 かれたと 考 えられる( 外 間 2000) 人 によってはこの 言 語 を 大 和 語 の 古 い 形 であるとし その 抒 情 歌 謡 文 学 の 集 成 である おもろさうし には 万 葉 集 に 用 いられている 言 葉 づかいやモチーフと 共 通 の ものが 現 れているという( 谷 川 1991) この 見 方 からすると 南 西 諸 島 の 文 化 と 文 学 は 古 代 の 大 和 のそれと 同 類 であり 大 和 が 進 化 したのに 対 しこちらは 昔 のままでありつづけたことになる( 小 野 1977) ヤマトの 人 間 の 郷 愁 を 誘 う 所 以 を 説 明 するには 適 しているが それだけで 南 西 諸 島 の 文 学 を 尽 くすことが 出 来 るかどうかは 疑 問 である というのも 近 年 の 研 究 が 明 らかにしているように 沖 縄 や 八 重 山 そして 奄 美 に 現 存 する 歌 謡 文 学 の 起 源 が 南 中 国 やベトナム 北 部 などの 少 数 民 族 のそれと 類 似 しているからである( 前 出 辰 巳 正 明 の 著 書 など) このことを 知 った 人 は 当 然 ながら 南 西 諸 島 の 文 化 の 源 がそれら 東 南 アジ アの 少 数 民 族 にあると 考 え そこに 照 葉 樹 林 文 化 とか 稲 作 文 化 圏 とかを 重 ね 合 わせ 日 本 文 化 の 源 泉 ここにありとしている なるほど そう 考 えると 納 得 できることも 多 々あり 同 時 に 日 本 列 9

寄 稿 論 文 大 嶋 仁 : アジア 視 座 からの 日 本 研 究 島 の 基 層 文 学 と 東 南 アジアの 基 層 文 学 との 接 点 も 見 えてくるのである では そのような 南 西 諸 島 文 学 にはどういう 特 徴 があるのかと 言 えば 自 然 風 物 と 密 接 した 言 葉 を 多 用 し 恋 歌 が 多 く 基 本 的 に 抒 情 歌 であるということがまず 挙 げられる この 特 徴 は 確 か に 万 葉 集 にも 通 じるものがあり 大 和 文 学 が 抒 情 的 であるのは 南 西 諸 島 の 文 学 を 基 調 として いるからだと 推 測 することもできる ところが 南 西 諸 島 の 歌 謡 文 学 には 大 和 文 学 にはない 特 徴 もあり そう 簡 単 に 両 者 を 同 質 と 言 い 切 ることはできないのである すなわち 前 者 においては 後 者 とちがって 歌 謡 が 生 活 に 浸 透 し 恋 ばかりが 歌 になっているわけではなく 生 の 表 現 として の 労 働 や 出 来 事 の 語 りも 歌 になっている 言 い 換 えれば 南 西 諸 島 の 文 学 は 抒 情 歌 のみならず 叙 事 歌 も 発 達 させているということで ここに 大 和 文 学 との 大 きな 差 異 が 認 められるのである もちろん そうは 言 っても 南 西 諸 島 にはアイヌの 英 雄 叙 事 詩 のような 歴 史 事 件 をもとにした 本 格 的 叙 事 詩 は 見 当 たらない その 意 味 での 叙 事 詩 はないのだが 生 活 に 密 着 した 叙 事 歌 は 多 々 見 られるのであって 民 衆 の 生 と 歌 が 密 着 している 点 においても 大 和 文 学 の 貴 族 的 美 的 性 格 とは 異 なるのである 歌 と 生 が 密 接 しているのはその 文 学 が 原 始 的 だからだと 主 張 し そこに 大 和 文 学 のかつての 姿 を 想 像 する 人 も 多 いが その 想 像 は 間 違 いでないにせよ そう 考 えるだけでは 南 西 諸 島 の 歌 謡 文 学 が 時 代 とともに 変 化 してきていることを 見 ないことになる 南 西 諸 島 の 権 力 者 を 含 めた 人 々が 意 識 してこの 文 学 を 保 持 し 伝 承 してきたこと そこに 時 代 に 応 じた 言 葉 遣 いや モチーフの 変 化 が 見 られることを 忘 れるべきではない 南 西 諸 島 の 文 学 を 考 えるにあたっては 沖 縄 をはじめとする 島 々がかつて 琉 球 王 国 であって 中 国 との 関 係 が 密 であったことをも 考 慮 する 必 要 がある 漢 文 学 が 知 識 層 に 浸 透 していたことは その 文 学 の 質 にも 影 響 を 与 えたであろうと 考 えられ その 点 をも 考 慮 しなくてはこの 地 域 の 文 学 を 真 に 理 解 することは 難 しい もとより 民 間 の 文 学 としては 歌 謡 が 主 であるが それだけで 南 西 諸 島 の 文 学 を 説 明 しきるのは 大 和 の 知 識 人 の 著 した 漢 詩 漢 文 を 無 視 して 大 和 文 学 を 語 りつくす ことが 出 来 ないのと 同 様 である 漢 詩 漢 文 の 影 響 を 受 けているという 意 味 で 大 和 文 学 と 南 西 諸 島 の 文 学 は 同 様 の 運 命 を 持 っているのであって ここにアイヌ 文 学 とは 決 定 的 に 異 なる 特 徴 が 浮 か び 上 がってくるのである すなわち 南 西 諸 島 と 大 和 文 学 は ともに 土 着 文 学 と 漢 文 学 とのハイ ブリッドなのである 南 西 諸 島 の 文 学 と 大 和 の 文 学 のこうした 共 通 性 から 逆 に 大 和 文 学 の 特 徴 が 浮 かび 上 がっても くる 大 和 文 学 はそれが 古 代 の 宮 廷 を 中 心 に 発 達 し 制 度 化 されていったために 民 間 レベルでの 文 学 表 現 を 十 分 に 発 達 させることができず 宮 廷 文 学 を 常 にモデルとして 美 的 文 学 の 構 築 をのみ 心 がけてきたということがわかるのである 南 西 諸 島 の 歌 謡 文 学 のように 生 と 密 接 した 文 学 では なくなった 大 和 文 学 には 叙 事 歌 が 見 られないが これも 大 和 文 学 の 特 徴 である 本 来 は 歌 謡 文 学 にあったはずの 叙 事 性 は おそらく 万 葉 集 編 纂 者 側 の 意 図 のもとに 削 除 されたのであって 編 纂 者 = 統 治 者 たちは 一 定 の 歴 史 状 況 を 反 映 し その 歴 史 が 比 較 的 最 近 の 出 来 事 であるような 叙 事 的 な 内 容 を それが 政 治 的 に 差 し 障 るからという 理 由 で おそらく 意 図 的 に 排 除 したのである ( 大 嶋 2011) ちなみに 勅 撰 歌 集 に 逆 賊 の 歌 は 載 せないという 決 まりがあったことが 平 家 物 語 において 示 されているが( 巻 の 七 忠 度 都 落 ) そのような 取 捨 は 万 葉 集 にもあったに ちがいない この 歌 集 を 出 発 点 とした 大 和 文 学 は 最 初 から 歴 史 的 叙 事 を 削 除 することで 成 り 立 つ 10

寄 稿 論 文 大 嶋 仁 : アジア 視 座 からの 日 本 研 究 文 学 だったのである 6. 今 日 の 比 較 文 学 の 立 場 これまで 比 較 文 学 の 立 場 から 日 本 文 学 というものを 多 文 化 主 義 にのっとって 見 てきた 日 本 列 島 には 大 きく 分 けて 三 つの 文 学 があり それらが 相 互 に 影 響 し 合 って 日 本 文 学 を 作 っていること を 述 べたつもりである 同 時 に それら 三 つの 文 学 がアジアのいくつかの 地 域 と 連 関 し 日 本 文 学 というものが 世 界 の 文 学 のネットワーク 上 に 位 置 していることも 述 べた 世 界 のどの 文 学 もそ うであるように 日 本 文 学 は 決 して 孤 立 した 文 学 系 ではないことはこれではっきりしたと 思 う もちろん 今 日 の 比 較 文 学 の 立 場 からすれば 日 本 文 学 を 論 じるにしてもこれで 十 分 というわ けではない アジアという 地 域 における 日 本 文 学 の 位 置 づけも 重 要 であるが 人 類 の 文 学 として の 日 本 文 学 の 特 質 を 明 らめることも 重 要 なのである そのような 考 察 の 一 例 を 略 述 し 本 論 を 閉 じることにする 一 例 というのは 本 論 の 論 者 が 現 在 携 わっている 研 究 例 で 論 者 はいま 世 界 の 幾 人 かの 比 較 文 学 者 とともに 文 学 における 身 体 意 識 について 研 究 しているのである この 研 究 の 基 礎 にあるの は 現 在 目 覚 ましい 進 歩 を 遂 げつつある 脳 科 学 であり 脳 科 学 によれば 我 々の 自 己 意 識 の 基 礎 には 身 体 感 覚 があり その 身 体 感 覚 をどのように 人 間 が 意 識 し 表 現 しているかは 文 化 によって 異 なる ことがわかっているのである 文 化 によって 身 体 感 覚 が 異 なることはかなり 前 から 文 化 人 類 学 に よって 示 されてきたが 脳 科 学 はこれを 言 語 の 影 響 によって 形 成 される 脳 神 経 システムの 問 題 と して 捉 える 脳 は 刻 々と 身 体 から 送 られる 信 号 を 化 学 的 に 処 理 し その 解 読 をしていくのである が その 解 読 が 身 体 を 核 とする 意 識 となり それがさらに 言 語 に 翻 訳 されて 身 体 感 覚 にもとづく 自 己 意 識 が 固 定 されていくのであるから これは 言 語 と 密 接 した 文 化 システムの 問 題 なのである 文 化 によって 言 語 を 通 じて 固 定 された 自 己 意 識 システムが 出 来 上 がり そこから 文 学 も 生 まれ てくる 仮 に 日 本 文 学 に 他 の 文 学 と 異 なる 部 分 があるとすれば それは 最 終 的 には 日 本 語 という 言 語 に 影 響 を 受 けて 出 来 上 がった 自 己 意 識 のシステムの 問 題 なのである 芭 蕉 の 俳 諧 にしても 志 賀 直 哉 の 心 境 小 説 にしても あるいは 宮 澤 賢 治 の 心 象 スケッチにしても それらを 人 類 の 文 学 として 理 解 するには 上 記 の 脳 科 学 的 理 解 が 必 要 である 脳 科 学 をとおして 日 本 作 家 の 作 品 を 見 る とき そこに 人 類 の 文 学 としての 普 遍 性 と 特 殊 性 とが 見 えてくるのである 比 較 文 学 はアジアと か 東 アジアといった 地 域 文 学 のネットワークを 重 視 しようとするが それだけで 十 分 ではない 生 物 としての 人 類 の 営 為 としての 文 学 を 考 えるのも 比 較 文 学 の 仕 事 であり そのなかで 日 本 文 学 なら 日 本 文 学 の 普 遍 性 と 特 殊 性 とを 明 らかにすることもその 任 務 としているのである 孤 立 した システムとして 日 本 文 学 を 見 ることは 論 外 であるが アジアという 地 域 にこだわりすぎるのも 問 題 となる 人 類 という 生 物 が 複 雑 な 社 会 形 成 によって 自 らを 生 かし かつまた 自 らを 殺 してきた 事 実 が 文 学 にいかに 反 映 されているか これからの 比 較 文 学 はそれを 明 らかにしていくことにな る 11

寄 稿 論 文 大 嶋 仁 : アジア 視 座 からの 日 本 研 究 参 考 文 献 Fitzhugh,William/Dubreuil,Chisato: Ainu, spirit of a northern people, University of Washington Press, 2001 Lotman,Yuri: Universe of the Mind, Indiana University Press, 1990 網 野 善 彦 日 本 論 の 視 座 小 学 館 1993 大 嶋 仁 比 較 文 学 論 考 花 書 院 2011 大 林 太 良 監 修 Northern Peoples 北 方 民 族 博 物 館 1995 小 野 重 朗 南 島 歌 謡 NHKブックス 1977 上 垣 外 憲 一 ハイブリッド 日 本 武 田 ランダムハウスジャパン 2011 金 田 一 京 助 全 集 第 7-8 巻 三 省 堂 1992-93 金 田 一 京 助 訳 ユーカラ 岩 波 文 庫 1977 久 保 寺 逸 彦 アイヌの 文 学 岩 波 新 書 1977 佐 藤 正 英 花 鳥 風 月 としての 自 然 の 成 立 ( 金 子 武 蔵 編 自 然 倫 理 学 的 考 察 所 収 以 文 社 1979) 末 木 文 美 士 中 世 の 神 と 仏 山 川 出 版 社 2003 辰 巳 正 明 詩 の 起 源 笠 間 書 院 2000 谷 川 健 一 南 島 文 学 発 生 論 思 潮 社 1991 知 里 幸 恵 アイヌ 神 謡 集 ( 北 道 邦 彦 注 北 海 道 出 版 企 画 センター 2003) 外 間 守 善 沖 縄 の 言 葉 と 歴 史 中 公 文 庫 2000 吉 川 幸 次 郎 本 居 宣 長 筑 摩 書 房 1977 12

論 文 陳 訪 澤 張 秀 娟 : 同 語 反 復 名 詞 謂 語 句 的 語 義 結 構 和 語 境 特 徵 * 同 語 反 復 名 詞 謂 語 句 的 語 義 結 構 和 語 境 特 徵 A Study on Semantic Structure and Context Feature of the Tautology Noun-Predicate Sentence 陳 訪 澤 (CHEN Fangze) 澳 門 大 學 社 會 科 學 及 人 文 學 院 教 授 University of Macau, Faculty of Social Science and Humanities, Professor 張 秀 娟 (ZHANG Xiujuan) 澳 門 大 學 社 會 科 學 及 人 文 學 院 博 士 生 University of Macau, Faculty of Social Science and Humanities, PhD Student 要 旨 トートロジー は 日 常 会 話 や 文 学 作 品 においてよく 一 種 のレトリックとして 用 いられている トートロジー 名 詞 述 語 文 に 関 するこれまでの 研 究 で 最 も 注 目 されてきたのはその 意 味 解 釈 であ る それらの 研 究 において トートロジー 名 詞 述 語 文 はコピュラ 文 の 特 殊 例 であると 指 摘 されて きたものの これをコピュラ 文 として 扱 うものは 極 めて 少 ない 本 研 究 はトートロジー 名 詞 述 語 文 をコピュラ 文 と 位 置 づけ 西 山 佑 司 (2003)におけるコピュラ 文 の 分 類 に 基 づいて 主 語 と 述 語 に 来 る 名 詞 句 の 意 味 構 造 と 文 脈 特 徴 を 検 討 してみた 考 察 の 結 果 トートロジー 名 詞 述 語 文 は 文 脈 によって 措 定 文 倒 置 同 定 文 定 義 文 に 分 析 されることが 明 らかになった 措 定 文 としてのトートロジー 名 詞 述 語 文 は 物 事 属 性 という 意 味 構 造 を 持 ち 聴 者 にある 物 事 が 持 つ 属 性 に 関 する 共 有 知 識 を 喚 起 させて その 物 事 に 対 する 共 通 認 識 を 達 成 する という 文 脈 特 徴 を 倒 置 同 定 文 としてのトートロジー 名 詞 述 語 文 は メンバー カテゴリー という 意 味 構 造 を 持 ち あるカテゴリーにおけるメンバーはいくら 周 辺 的 ものでも そのカテゴリーから 排 除 し てはいけないことを 強 調 する という 文 脈 特 徴 を 定 義 文 としてのトートロジー 名 詞 述 語 文 は 概 念 定 義 という 意 味 構 造 を 持 ち ある 概 念 について 問 われた 時 何 かの 原 因 でその 概 念 の 真 義 を 解 釈 しようとしない という 文 脈 特 徴 を それぞれ 備 えている 1. 引 言 同 語 反 復 作 為 一 種 修 辭 手 法, 在 日 常 會 話 和 文 學 作 品 中 常 被 使 用 日 語 的 同 語 反 復 根 據 句 中 助 詞 和 反 復 詞 的 不 同, 有 多 種 表 達 句 式 1 2 本 文 以 由 兩 個 相 同 名 詞 短 語 構 成 的 N は N i だ 形 式 的 同 語 反 復 名 詞 謂 語 句 ( 以 下 簡 稱 同 語 反 復 句 ) 為 研 究 對 象 同 語 反 復 句 從 形 式 上 看, 與 系 詞 句 之 一 * 本 文 為 澳 門 大 學 研 究 項 目 MYRG2012( 編 號 No. MYRG101(Y1-L2)-FSH12-CFZ) 的 成 果 之 一 13

論 文 陳 訪 澤 張 秀 娟 : 同 語 反 復 名 詞 謂 語 句 的 語 義 結 構 和 語 境 特 徵 的 A は B だ 相 同 3, 都 是 名 詞 謂 語 句, 因 此 可 以 將 同 語 反 復 句 看 作 是 由 相 同 名 詞 短 語 充 當 主 語 和 謂 語 之 系 詞 句 的 特 殊 句 式 在 日 語 同 語 反 復 句 的 先 行 研 究 中, 最 引 人 注 目 的 便 是 關 於 意 義 理 解 的 考 察 迄 今 為 止 日 語 研 究 者 從 語 法 學 語 義 學 語 用 學 認 知 語 言 學 心 理 語 言 學 等 多 角 度 對 其 意 義 進 行 了 考 察 如 安 井 稔 (1978) 樋 口 萬 里 子 (1988) 小 泉 保 (1990:177) 久 保 智 之 (1992) 水 田 洋 子 (1995) 佐 山 公 一 阿 部 純 一 (1994, 1999) 小 屋 逸 樹 (2002) 西 川 真 由 美 (2003) 等 等 但 是, 將 同 語 反 復 句 作 為 系 詞 句 進 行 考 察 的 學 者 並 不 多 見, 在 筆 者 見 到 的 文 獻 中 僅 有 久 保 智 之 (1992) 和 小 屋 逸 樹 (2002) 久 保 智 之 (1992) 參 照 坂 原 茂 (1990) 關 於 系 詞 句 的 分 類 4, 將 反 復 詞 分 為 普 通 名 詞 專 有 名 詞 和 代 詞 進 行 了 考 察, 最 後 指 出 同 語 反 復 句 的 意 義 應 該 解 釋 成 描 寫 句 ( 記 述 文 ) 5 小 屋 逸 樹 (2002) 首 先 指 出 同 語 反 復 句 具 有 差 異 否 定 の 意 味 和 差 異 強 調 の 意 味 兩 種 意 義, 再 參 照 上 林 洋 二 和 西 山 佑 司 等 人 關 於 系 詞 句 的 先 行 研 究, 提 出 系 詞 句 可 分 為 措 定 句 ( 措 定 文 ) 指 定 句 ( 指 定 文 ) 同 定 句 ( 同 定 文 ) 同 一 性 句 ( 同 一 性 文 ) 定 義 句 ( 定 義 文 ) 等 5 種 句 式, 進 而 對 同 語 反 復 句 與 系 詞 句 之 間 的 關 係 進 行 了 考 察 最 後 指 出 N は N i だ 句 式 應 解 釋 為 定 義 句, 其 中 表 示 差 異 否 定 の 意 味 的 句 子 也 有 解 釋 為 措 定 句 的 可 能 性 以 上 先 行 研 究 中, 久 保 智 之 (1992) 指 出 同 語 反 復 句 的 意 義 只 能 解 釋 成 描 寫 句 ( 相 當 於 措 定 句 ), 小 屋 逸 樹 (2002) 則 認 為 應 解 釋 為 定 義 句, 並 有 解 釋 為 措 定 句 的 可 能 性 但 從 筆 者 收 集 到 的 實 例 來 看, 盡 管 都 是 一 樣 的 N は N i だ 句 式, 其 實 根 據 語 境 的 類 型 可 以 分 別 解 釋 為 措 定 句 倒 置 同 定 句 定 義 句 這 3 種 句 式 類 型 本 文 將 基 於 西 山 佑 司 (2003) 對 系 詞 句 的 分 類, 從 關 聯 理 論 的 角 度 對 同 語 反 復 句 各 種 句 式 的 語 義 結 構 進 行 考 察, 並 指 出 各 種 語 義 結 構 的 語 境 特 徵 2. 西 山 佑 司 (2003) 關 於 系 詞 句 的 分 類 西 山 佑 司 (2003:59-188) 根 據 系 詞 句 中 的 名 詞 短 語 是 否 具 有 指 示 性 意 義, 將 名 詞 短 語 分 為 指 示 性 名 詞 短 語 和 非 指 示 性 名 詞 短 語 進 而 又 將 非 指 示 性 名 詞 短 語 分 為 敘 述 名 詞 短 語 和 變 項 名 詞 短 語 6 在 此 分 類 基 礎 上, 又 根 據 句 中 充 當 主 語 和 謂 語 的 名 詞 短 語 間 的 語 義 結 構 關 係, 將 系 詞 句 分 為 表 1 所 示 的 6 種 句 式 類 型 由 於 本 文 的 研 究 對 象 為 N は N i だ 這 一 形 式 的 同 語 反 復 句, 因 此 在 此 僅 介 紹 其 中 的 措 定 句 倒 置 指 定 句 倒 置 同 定 句 倒 置 同 一 性 句 定 義 句 5 種 句 式 A は B だ B が A だ 1 措 定 文 :あいつは 馬 鹿 だ 2 倒 置 指 定 文 : 幹 事 は 田 中 だ 指 定 文 : 田 中 が 幹 事 だ 3 倒 置 同 定 文 :こいつは 山 田 村 長 の 次 男 だ 同 定 文 : 山 田 村 長 の 次 男 がこいつだ 4 倒 置 同 一 性 文 :ジキル 博 士 はハイド 氏 だ 同 一 性 文 :ジキル 博 士 がハイド 氏 だ 5 定 義 文 : 眼 科 医 (と)は 目 のお 医 者 さんのことだ 6 提 示 文 : 特 におすすめなのがこのワインです 表 1 系 詞 句 的 句 式 類 型 ( 西 山 2003:122) 14

論 文 陳 訪 澤 張 秀 娟 : 同 語 反 復 名 詞 謂 語 句 的 語 義 結 構 和 語 境 特 徵 1) 措 定 句..A 所 指 代 的 對 象, 具 有 B 所 描 述 的 屬 性 A.. 指 示 性 名 詞 短 語 B.. 敘 述 名 詞 短 語 2) 倒 置 指 定 句.. 由 B 來 指 定 滿 足 A 所 表 示 的 含 有 1 個 變 項 的 謂 語 的 值 A は B だ 可 以 轉 換 成 B が A だ A.. 變 項 名 詞 短 語 B.. 指 示 性 名 詞 短 語 3) 倒 置 同 定 句.. 知 道 所 指 代 的 具 體 對 象, 但 不 知 道 其 為 何 物 時, 給 予 相 關 信 息 來 說 明 這 一 類 型 的 句 子 A 與 B 之 間 的 關 係 為..A 必 定 是 滿 足 B 所 描 述 的 特 徵 的 事 物 A は B だ 可 以 轉 換 成 B が A だ A.. 指 示 性 名 詞 短 語 ( 個 別 指 示 ) B.. 指 示 性 名 詞 短 語 ( 類 別 指 示 ) 4) 倒 置 同 一 性 句.. 在 同 一 句 中 A 所 指 代 的 對 象, 必 定 也 是 B 所 指 代 的 A 與 B 具 有 相 同 的 指 示 對 象 A は B だ 可 以 轉 換 成 B が A だ A.. 指 示 性 名 詞 短 語 ( 個 別 指 示 ) B.. 指 示 性 名 詞 短 語 ( 個 別 指 示 ) 5) 定 義 句..A 為 被 定 義 項,B 為 定 義 項 多 以 A とは B のことである A とは B のことを いう 這 兩 種 句 型 出 現 3. 同 語 反 復 句 與 系 詞 句 作 為 系 詞 句 特 殊 句 式 的 同 語 反 復 句, 究 竟 有 哪 些 類 型? 它 們 的 使 用 語 境 又 是 怎 樣 的? 這 是 本 節 所 要 探 討 的 問 題 同 語 反 復 句 在 形 式 上 與 系 詞 句 A は B だ 句 型 相 同, 因 此 在 理 論 上 有 可 能 跟 系 詞 句 一 樣, 可 分 為 措 定 句 倒 置 指 定 句 倒 置 同 定 句 倒 置 同 一 性 句 定 義 句 等 句 式 類 型 但 是 從 筆 者 收 集 到 的 實 例 來 看 7, 同 語 反 復 句 只 能 分 析 為 措 定 句 倒 置 同 定 句 定 義 句 3 種 句 式, 不 能 解 釋 為 倒 置 指 定 句 和 倒 置 同 一 性 句 從 字 面 上 看, 同 語 反 復 句 N は N i だ 表 達 了 N = N i, 即 N 所 指 代 的 對 象 與 N i 所 指 代 的 對 象 相 同 這 一 意 義, 這 與 倒 置 同 一 性 句 的 語 義 結 構 最 接 近 但 是 從 實 例 看, N は N i だ 無 法 解 釋 為 倒 置 同 一 性 句, 其 根 本 原 因 在 於 N 與 N i 所 指 不 同 這 樣 一 來, 解 釋 為 倒 置 同 一 性 句 的 話, N は N i だ 的 意 義 在 任 何 語 境 中 都 無 法 解 釋, 倒 置 指 定 句 也 是 如 此 關 於 這 點, 可 以 看 例 (1) (1)( 田 治 見 左 衛 門 は 村 に 逃 走 してきた 武 士 の 3000 両 の 黄 金 を 睨 んで 村 人 を 神 社 の 前 に 集 めて 皆 で 奪 いに 行 こうと 唆 している 亀 井 だけが 田 治 見 の 命 令 に 反 対 している) 亀 井 : 何 ぼあんだの 命 令 でも 俺 は 反 対 じゃ 田 治 見 :なあ 亀 井 そういうなら くじで 決 めるか 亀 井 :こんなもん くじで 決 めるんものじゃねい 人 としてやっちゃいてはことじ ゃ 田 治 見 :くじはくじじゃ 人 ではのうで ほとけのご 意 志 じゃのうか 亀 井 のほかに 反 対 する 人 がおるか ( 金 田 一 耕 助 シリーズ 八 つ 墓 村 ) 假 如 將 例 (1) 中 的 くじはくじ 解 釋 為 倒 置 同 一 性 句 的 話, 這 句 話 的 意 義 就 變 成 前 一 くじ 所 指 與 後 一 くじ 所 指 是 相 同 的 放 回 到 原 文 中, 則 變 成 くじはそのくじじゃ 人 ではのうで 15

論 文 陳 訪 澤 張 秀 娟 : 同 語 反 復 名 詞 謂 語 句 的 語 義 結 構 和 語 境 特 徵 ほとけのご 意 志 じゃのうか, 很 顯 然 這 句 話 是 無 法 理 解 的 同 樣, 如 果 將 N は N i だ 解 釋 為 倒 置 指 定 句 的 話, 那 麼 充 當 主 語 的 名 詞 短 語 N 為 含 有 wh- 疑 問 句 意 義 的 變 項, 充 當 謂 語 的 名 詞 短 語 N i 則 為 填 充 變 項 的 值 其 問 題 也 同 樣, 在 於 N 與 N i 所 指 不 同 也 就 是 說, 如 果 把 くじはくじ 解 釋 為 倒 置 指 定 句 的 話, 那 麼 充 當 主 語 的 くじ 就 應 解 釋 為 くじはどれかというと 這 一 變 項, 充 當 謂 語 的 くじ 則 為 填 充 變 項 的 值, 整 句 話 意 義 就 變 成 くじはどれかというとくじじゃ 人 ではのうで ほとけのご 意 志 じゃのうか, 顯 然 也 是 解 釋 不 通 的 如 上 所 述, 同 語 反 復 句 的 語 義 結 構 不 可 能 解 釋 為 倒 置 同 一 性 句 和 倒 置 指 定 句 那 麼 同 語 反 復 句 為 何 可 以 解 釋 為 措 定 句 倒 置 同 定 句 定 義 句? 其 語 境 又 有 甚 麼 特 徵? 3.1 同 語 反 復 句 與 措 定 句 據 西 山 佑 司 (2003) 對 措 定 句 所 下 的 定 義, 充 當 主 語 的 名 詞 短 語 為 指 示 性 名 詞 短 語, 可 指 代 可 見 的 具 體 事 物 和 抽 象 事 物, 可 以 是 個 體 名 詞 和 總 稱 名 詞 ; 充 當 謂 語 的 名 詞 短 語 為 敘 述 名 詞 短 語, 用 於 解 釋 主 語 名 詞 短 語 所 指 代 事 物 的 屬 性 特 徵 因 此, 如 果 同 語 反 復 句 要 解 釋 為 措 定 句 的 話, 則 需 要 符 合 以 下 條 件.. 1)N 解 釋 為 指 示 性 名 詞 短 語, 指 代 某 事 物 ; 2)N i 解 釋 為 敘 述 名 詞 短 語, 用 於 說 明 N 所 指 代 事 物 的 屬 性 特 徵 下 面 結 合 具 體 的 例 子 分 析 考 察 同 語 反 復 句 是 否 有 解 釋 為 措 定 句 的 可 能 性 先 看 上 面 例 (1) 假 如 將 例 (1) 中 くじはくじ 解 釋 為 措 定 句 的 話, 那 麼 充 當 主 語 的 くじ 應 解 釋 為 指 示 性 名 詞 短 語 くじというもの, 充 當 謂 語 的 くじ 就 應 解 釋 為 敘 述 名 詞 短 語, 以 說 明 くじ 這 一 事 物 的 屬 性 特 徵 當 然, 每 種 事 物 都 具 有 許 多 的 屬 性 特 徵, くじ 也 不 例 外, 如..ランダム 予 見 できな い 神 意 を 占 う 公 平 ( 隨 機 不 可 預 見 占 卜 神 意 公 平 ) 我 們 應 當 理 解 成 哪 種 屬 性, 必 8 須 要 看 哪 個 跟 語 境 具 有 最 大 的 關 聯 性 根 據 Sperber & Wilson(1995) 關 聯 理 論 中 對 關 聯 性 程 度 大 9 小 的 規 定 可 知, 話 語 與 語 境 假 設 之 間 關 聯 性 程 度 的 大 小 與 語 境 效 果 和 認 知 努 力 有 關 推 理 時 所 付 出 的 認 知 努 力 越 少, 語 境 效 果 越 好, 關 聯 性 越 強 根 據 くじ 所 具 有 的 屬 性, 例 (1) 中 的 話 語 く じはくじじゃ 的 語 義 解 釋 可 形 成 如 下 假 設 集 ( 想 定 集 合 ): くじというのはランダムなものじゃ くじというのは 予 見 できないものじゃ くじというのは 神 意 を 占 うことができるものじゃ くじというのは 公 平 なものじゃ 要 確 定 具 體 解 釋 成 何 種 意 義, 必 須 看 假 設 集 中 哪 一 項 與 語 境 具 有 最 大 關 聯 性, 即 推 理 時 所 需 要 的 認 知 努 力 越 少, 語 境 效 果 越 好 若 將 以 上 各 項 替 換 原 文 くじはくじじゃ, 結 果 如 下 : くじというのははランダムなものじゃ くじというのは 予 見 できないものじゃ くじというのは 神 意 を 占 うことができるものじゃ 人 ではのうで ほとけのご 意 志 じゃのうか くじというのは 公 平 なものじゃ 16

論 文 陳 訪 澤 張 秀 娟 : 同 語 反 復 名 詞 謂 語 句 的 語 義 結 構 和 語 境 特 徵 很 明 顯, 與 後 一 個 小 句 人 ではのうで ほとけのご 意 志 じゃのうか 具 有 最 大 關 聯 性 的 是 第 三 項 くじというのは 神 意 を 占 うことができるものじゃ 與 其 它 項 相 比, 所 需 要 付 出 的 認 知 努 力 最 小, 語 境 效 果 也 是 最 好 的 因 此, 從 例 (1) 中 對 話 的 內 容 和 說 此 句 話 的 人 的 意 圖 來 看, 在 該 語 境 下 應 當 將 充 當 謂 語 的 くじ 理 解 成 可 占 卜 神 明 旨 意 這 一 屬 性, 整 句 話 的 意 思 就 變 成 くじというのは 神 意 を 占 うことができるものじゃ 人 ではのうで ほとけのご 意 志 じゃのうか 這 正 好 與 語 境 相 符 合 再 看 例 (2) (2)( 新 右 衛 門 は 一 休 が 帝 の 御 子 という 正 体 を 一 休 に 教 えた 翌 日 の 朝 安 国 寺 の 前 の 石 段 階 に 座 っている その 時 一 休 が 出 た ) 新 右 衛 門 :おっ これは 一 休 さま 一 休 : 新 右 衛 門 さん 間 違 わないでよ 昨 日 まで 一 休 殿 って 言 ったでしょう お 役 目 はお 役 目 ちゃんと 見 張 ってくださいよ (アニメ 一 休 さん ) 假 如 將 例 (2) 中 的 お 役 目 はお 役 目 解 釋 成 措 定 句 的 話, 那 麼 充 當 主 語 的 お 役 目 就 應 解 釋 為 指 示 性 名 詞 短 語, 即 お 役 目 というもの, 而 充 當 謂 語 的 お 役 目 應 解 釋 為 敘 述 名 詞 短 語 來 說 明 お 役 目 這 一 事 物 的 屬 性 特 徵 而 在 お 役 目 眾 多 屬 性 特 徵 中, 根 據 最 大 關 聯 原 則, 在 該 語 境 下 我 們 應 當 將 お 役 目 理 解 為 役 として 責 任 をもって 果 たさなければならないこと, 將 這 一 解 釋 放 回 原 文 中 則 變 成 お 役 目 というのは 役 として 責 任 をもって 果 たさなければならないこと ちゃんと 見 張 ってくださいよ, 與 上 下 文 和 說 話 人 的 意 圖 相 符 由 此 可 見, 同 語 反 復 句 可 以 解 釋 為 事 物 屬 性 特 徵 的 語 義 結 構 關 係, 其 語 義 結 構 關 係 與 措 定 句 一 致 此 外, 還 有 一 點 需 要 補 充 的 是, 當 N は N i だ 解 釋 為 措 定 句 時, 充 當 主 語 的 N 一 般 解 釋 為 總 稱 名 詞, 而 非 個 體 名 詞 假 如 解 釋 為 個 體 名 詞 的 話, 那 麼 在 N 的 釋 意 之 前 就 可 以 加 上 限 定 词 こ の(その あの) 那 麼 上 述 两 个 例 子 中 的 N 便 可 分 别 解 釋 為 この(その あの)くじは こ の(その あの) 役 目 は 整 句 話 意 思 就 變 成 この(その あの)くじは 神 意 を 占 うことができ るものじゃ 人 ではのうで ほとけのご 意 志 じゃのうか この(その あの) 役 目 は 役 として 責 任 をもって 果 たさなければならないこと ちゃんと 見 張 ってくださいよ 這 两 句 话 分 别 隱 含 了 神 意 を 占 うことができないくじがあるが これはできる 役 として 責 任 をもって 果 たさなくて もいい 役 目 があるが この(その あの) 役 目 こそ 役 として 責 任 をもって 果 たさなければならな いこと ちゃんと 見 張 ってくださいよ 之 义, 这 与 常 识 相 悖, 與 後 句 的 銜 接 也 顯 得 很 不 自 然 因 此, 雖 然 措 定 句 中 充 當 主 語 的 名 詞 短 語 既 可 以 是 個 體 名 詞, 也 可 以 是 總 稱 名 詞, 但 同 語 反 復 句 N は N i だ 中 的 N 一 般 解 釋 為 總 稱 名 詞 比 較 妥 當 當 然, 並 非 所 有 的 同 語 反 復 句 都 能 解 釋 為 措 定 句, 所 以 還 應 當 探 討 當 解 釋 為 措 定 句 時, 其 語 境 具 有 甚 麼 特 徵 從 例 (1) 看, 不 管 是 田 治 見 還 是 龜 井 都 知 道 くじ 是 甚 麼, 具 有 甚 麼 屬 性 特 徵 也 就 是 說 話 雙 方 在 腦 知 識 庫 中 都 貯 存 了 關 於 くじ 的 信 息, 屬 於 雙 方 的 共 有 知 識 從 其 意 義 解 釋 和 說 話 者 意 圖 上 看, 田 治 見 是 為 了 喚 起 龜 井 和 其 他 村 民 對 くじ 這 一 事 物 的 屬 性 特 徵 所 具 有 的 共 有 知 識 從 而 達 成 共 識, 而 用 了 くじはくじじゃ 這 一 修 辭 表 達 例 (2) 也 是 同 樣 的 道 理 因 此, 當 同 語 反 復 句 解 釋 為 措 定 句 時, 其 語 境 特 徵 可 以 概 括 為 喚 起 他 人 顯 映 出 貯 存 於 大 腦 內 文 化 語 言 知 識 庫 中 對 某 一 事 物 屬 性 特 徵 認 知 的 共 有 知 識 從 而 達 成 共 識 17

論 文 陳 訪 澤 張 秀 娟 : 同 語 反 復 名 詞 謂 語 句 的 語 義 結 構 和 語 境 特 徵 3.2 同 語 反 復 句 與 倒 置 同 定 句 在 討 論 同 語 反 復 句 與 倒 置 同 定 句 之 前, 先 看 看 西 山 佑 司 (2003) 對 倒 置 同 定 句 的 闡 釋 西 山 佑 司 認 為 倒 置 同 定 句 的 A は B だ 句 式 中 A 為 個 別 指 示,B 為 類 別 指 示 A 與 B 之 間 的 關 係 是 名 詞 短 語 B 提 供 了 關 於 識 別 A 為 何 物 即 區 別 於 其 他 之 同 定 條 件 的 信 息, A 必 定 是 滿 足 B 所 描 述 的 特 徵 的 事 物 ( 西 山 佑 司 2003:171-172) 由 此 可 見, B 是 對 A 所 指 代 事 物 進 行 描 述 的 名 詞 短 語 通 過 這 一 描 述 以 說 明 A 就 是 B 所 描 述 的 事 物, 而 非 其 他 事 物 簡 而 言 之,A 與 B 之 間 的 語 義 結 構 關 係 在 於 說 明 A 屬 於 B 所 描 述 的 范 疇 的 成 員, 而 非 是 其 他 範 疇 的 成 員 下 面 來 看 看 N は N i だ 是 否 有 解 釋 為 倒 置 同 定 句 的 可 能 性 假 如 可 以, 那 麼 充 當 主 語 的 N 就 應 解 釋 為 指 示 名 詞 短 語, 指 代 會 話 雙 方 都 能 認 定 的 事 物 ; 充 當 謂 語 的 N i 通 過 對 N 進 行 描 述, 從 而 說 明 N 就 是 N i 所 描 述 範 疇 的 事 物, 而 非 其 他 範 疇 的 事 物 即 需 要 符 合 以 下 條 件.. 1)N 解 釋 為 個 別 指 示 指 代 會 話 雙 方 可 認 定 的 對 象 2)N i 解 釋 為 類 別 指 示 對 N 進 行 描 述, 從 而 說 明 N 屬 於 N i 所 描 述 範 疇 的 成 員, 而 不 屬 於 其 他 範 疇 的 成 員 如 果 N は N i だ 能 滿 足 以 上 條 件, 那 麼 同 語 反 復 N は N i だ 在 某 種 語 境 中 就 能 夠 解 釋 為 倒 置 同 定 句 (3)( 一 休 は 川 で 大 根 を 洗 っている その 時 新 右 衛 門 が 通 りかかって 一 休 を 小 僧 と 呼 んだ 一 休 は 腹 が 立 って 新 右 衛 門 をからかおうとしている) 一 休 :では お 侍 さん これは 何 だい ( 大 きい 大 根 を 挙 げて) 新 右 衛 門 : 大 根 だ 一 休 :じゃ この 小 さいのは?( 小 さい 大 根 を 挙 げて) 新 右 衛 門 : 大 人 をからかうか 小 さくとも 大 根 だ 一 休 : 大 きくたって 小 さくたって 大 根 は 大 根 だから 小 さくたって 坊 さんだよ 私 は 小 僧 じゃない (アニメ 一 休 さん ) 例 (3) 中 同 語 反 復 句 大 根 は 大 根 如 果 能 解 釋 為 倒 置 同 定 句 的 話, 那 麼 充 當 主 語 的 大 根 應 當 解 釋 為 個 別 指 示, 即 主 語 大 根 應 理 解 成 指 代 個 體 事 物 的 名 詞 短 語 この(その あの) 大 根 は 在 此 例 中, 因 前 面 的 大 きくたって 小 さくたって 表 示 讓 步, 強 調 形 體 的 大 小, 因 此 應 當 將 主 語 大 根 的 意 義 調 整 為 この 大 きい 大 根 とこの 小 さい 大 根 充 當 謂 語 的 大 根 應 當 解 釋 為 對 N 進 行 描 述, 也 就 是 給 N 定 一 個 範 疇, 從 而 說 明 A 只 屬 於 N i 所 描 述 範 疇 的 成 員, 而 不 屬 於 其 他 範 疇 如 此, 充 當 謂 語 的 大 根 應 解 釋 為 大 根 というものにほかならない 綜 上, 整 句 話 意 義 就 應 解 釋 為 大 きくたって 小 さくたってこの 大 きい 大 根 とこの 小 さい 大 根 は 大 根 というもの にほかならない 這 一 解 釋 與 前 後 文 及 說 話 人 的 意 圖 正 好 吻 合 由 此 可 見, N は N i だ 能 夠 解 釋 為 成 員 範 疇 的 語 義 結 構 關 係 與 倒 置 同 定 句 一 致 那 麼, 解 釋 為 倒 置 同 定 句 的 N は N i だ 又 是 在 甚 麼 樣 的 語 境 下 使 用 呢? 在 例 (3) 中, 一 休 為 了 反 擊 新 右 衛 門 對 自 己 稱 呼 上 的 不 敬, 特 借 用 大 根 來 打 比 方 從 一 休 問 新 右 衛 門 的 兩 個 問 題 以 及 最 後 一 句 話 大 きくたって 小 さくたって 大 根 は 大 根 來 看, 很 明 顯 是 為 了 說 明 形 狀 大 的 蘿 蔔 是 蘿 蔔, 形 狀 小 的 蘿 蔔 也 是 蘿 蔔, 無 論 形 狀 大 小 都 屬 於 蘿 蔔 這 個 範 疇, 而 不 可 能 是 其 他 範 疇 的 東 西 18

論 文 陳 訪 澤 張 秀 娟 : 同 語 反 復 名 詞 謂 語 句 的 語 義 結 構 和 語 境 特 徵 換 言 之, 一 個 範 疇 裏 面 會 有 許 多 形 態 各 異 的 成 員, 既 有 較 為 典 型 的 成 員, 也 有 較 為 邊 緣 性 的 成 員, 但 不 管 怎 樣 都 不 能 夠 將 任 何 一 個 成 員 排 除 出 該 範 疇 一 休 的 話 語 大 きくたって 小 さくたって 大 根 は 大 根 正 是 為 了 強 調 說 明 這 一 事 實 由 此 可 見, 我 們 可 以 將 解 釋 為 倒 置 同 定 句 的 同 語 反 復 句 所 使 用 的 語 境 概 括 為 強 調 某 一 範 疇 的 成 員 不 管 其 形 態 特 徵 怎 樣 都 還 是 該 範 疇 的 成 員, 不 可 將 其 排 除 出 該 範 疇 這 一 特 徵 綜 上 所 述, 可 以 看 出 同 語 反 復 句 的 措 定 句 和 倒 置 同 定 句 之 間 的 差 異 前 者 是 事 物 屬 性 的 語 義 關 係, 後 者 則 是 強 調 成 員 範 疇 的 語 義 關 係 無 論 同 語 反 復 句 解 釋 為 何 種 意 義, 它 們 在 句 式 上 都 相 同, 因 此 我 們 只 能 通 過 所 使 用 的 具 體 語 境 去 判 斷 同 語 反 復 句 的 句 式 類 型 下 面 看 例 (4) (4) おい!とったぞ! 小 さいなあ 黒 谷 は 近 づいて 来 て 言 った しかし とにかくタコはタコだ まあ 夜 の 酢 のものには 充 分 だろう 杉 山 さんは? ( 曽 野 綾 子 太 郎 物 語 ) 例 (4) 中 タコはタコだ 應 該 解 釋 成 措 定 句 還 是 倒 置 同 定 句, 主 要 取 決 於 該 會 話 的 語 境 從 上 下 文 上 看, しかし とにかくタコはタコだ 這 一 話 語 並 非 為 了 說 明 タコ 具 有 軟 體 動 物 腕 很 多 會 噴 墨 汁 以 自 衛 等 其 中 的 某 一 屬 性 特 徵, 而 是 為 了 告 訴 聽 話 者, 抓 到 的 章 魚 雖 然 很 小, 但 總 還 是 章 魚, 不 會 是 其 他 的 生 物 屬 於 強 調 成 員 範 疇 的 關 係 和 語 境 因 此 タコはタコだ 在 該 語 境 中, 應 該 解 釋 為 倒 置 同 定 句 3.3 同 語 反 復 句 與 定 義 句 請 看 下 面 例 (5) 和 例 (6) (5)( 仁 科 弘 枝 ( 女 )と 千 歳 一 ( 男 )は 恋 人 同 士 仁 科 弘 枝 は 千 歳 一 より 10 歳 年 下 飲 み 会 の 後 二 人 は 千 歳 一 の 家 に 戻 った ) 仁 科 弘 枝 :あのう 今 日 泊 まっていちゃだめですか 千 歳 一 :(びっくりして 仁 科 弘 枝 を 見 ている) 仁 科 弘 枝 :だめですか 千 歳 一 :だめ 絶 対 だめ 仁 科 弘 枝 :どうしてですか 千 歳 一 :どうしてって 仁 科 弘 枝 :もう 用 意 してあるんです 千 歳 一 :だからだめだって 仁 科 弘 枝 :だからどうしてですか 千 歳 一 :10 も 違 うんだよ 仁 科 弘 枝 :またそれですか じゃ どうして 私 と 付 き 合 ってるんですか 千 歳 一 :それはそっちが 一 方 的 に 来 たっていうか 断 れなかったっていうか 俺 責 任 持 てないから もし 何 かあったとしたら 責 任 持 てないから 19

論 文 陳 訪 澤 張 秀 娟 : 同 語 反 復 名 詞 謂 語 句 的 語 義 結 構 和 語 境 特 徵 仁 科 弘 枝 : 責 任 って 何 ですか 千 歳 一 :( 消 え 入 りそうな 声 で) 責 任 は 責 任 だから 仁 科 弘 枝 : 私 自 分 の 責 任 は 自 分 で 持 ちます 千 歳 一 :( 頭 を 下 げて 黙 っている) 仁 科 弘 枝 : 意 気 地 なし ( 言 いながら 部 屋 から 飛 び 出 した ) (ドラマ 元 カレ ) (6) 子 供 : 姦 淫 ってなに? 母 親 : 姦 淫 は 姦 淫 子 供 はそんなことは 知 らなくていいの ( 緒 方 2006) 很 明 顯, 例 (5) 中 的 責 任 は 責 任 並 非 是 說 話 人 為 了 喚 起 聽 話 人 對 甚 麼 是 責 任 這 一 抽 象 事 物 屬 性 特 徵 所 具 有 的 認 識 從 而 達 成 共 識, 或 是 強 調 不 管 怎 樣 的 責 任 都 是 屬 於 責 任 這 一 範 疇 的 成 員 所 以 不 能 夠 解 釋 為 措 定 句 或 是 倒 置 同 定 句 關 於 這 點, 例 (6) 更 加 明 顯 孩 子 對 甚 麼 是 姦 淫 這 一 概 念 一 無 所 知, 所 以 媽 媽 的 回 答 姦 淫 は 姦 淫 不 可 能 是 為 了 喚 起 孩 子 顯 映 出 貯 存 於 大 腦 內 文 化 語 言 知 識 庫 中 對 姦 淫 屬 性 特 徵 的 認 知 從 而 達 成 共 識, 也 不 可 能 是 為 了 強 調 不 管 是 甚 麼 樣 的 姦 淫 都 是 屬 於 姦 淫 這 一 範 疇 的 成 員 由 此 可 見, 例 (5) 和 例 (6) 中 的 同 語 反 復 句 與 措 定 句 和 倒 置 同 定 句 有 本 質 的 區 別 那 麼, 上 述 兩 例 句 中 的 同 語 反 復 句 應 當 如 何 解 釋? 筆 者 認 為 可 以 解 釋 為 定 義 句 下 面 結 合 例 (6) 進 行 分 析 西 山 佑 司 (2003:176) 指 出, 定 義 句 是 A 為 被 定 義 項,B 為 定 義 項 假 如 例 (6) 解 釋 為 定 義 句, 那 麼 姦 淫 は 姦 淫 中 充 當 主 語 的 姦 淫 就 是 被 下 定 義 的 概 念, 可 理 解 為 姦 淫 とは 何 かと いうと/ 姦 淫 とは 充 當 謂 語 的 姦 淫 即 為 定 義, 可 解 釋 為 姦 淫 とのことだ 那 麼 整 句 話 則 為 姦 淫 とは 何 かというと 姦 淫 とのことだ 放 入 句 中 會 話 就 成 為 例 (7) (7) 子 供 : 姦 淫 ってなに? 母 親 : 姦 淫 とは 何 かというと 姦 淫 とのことだ 子 供 はそんなことは 知 らなくていいの 從 前 後 文 看 跟 說 話 人 的 意 圖 正 好 相 符 因 此, 筆 者 認 為 在 該 語 境 中 的 同 語 反 復 句 應 該 解 釋 成 概 念 定 義 的 語 義 結 構 關 係, 即 與 定 義 句 一 致 下 面 看 看 該 語 境 有 甚 麼 特 點 例 (6) 中, 孩 子 因 為 不 知 道 甚 麼 是 姦 淫, 所 以 問 媽 媽 姦 淫 ってなに?, 要 求 媽 媽 對 姦 淫 這 個 概 念 下 定 義 媽 媽 因 為 某 種 原 因 ( 如 : 孩 子 還 太 小, 不 適 宜 過 早 知 道 這 個 詞 的 意 思 ; 跟 孩 子 說 這 個 詞 的 意 思 覺 得 很 難 為 情 等 等 ), 無 法 直 接 跟 孩 子 解 釋 姦 淫 的 概 念, 而 用 了 姦 淫 は 姦 淫 來 回 答 孩 子 的 發 問 因 此, 可 將 解 釋 為 定 義 句 的 同 語 反 復 句 所 使 用 的 語 境 概 括 為 面 對 他 人 對 某 概 念 的 發 問, 礙 於 某 種 原 因 不 便 或 是 不 想 直 接 回 答 這 一 語 境 特 徵 綜 上 所 述, 同 語 反 復 句 根 據 其 使 用 的 語 境, 可 以 解 釋 為 措 定 句 倒 置 同 定 句 定 義 句 這 3 種 句 式 類 型 4. 結 語 本 文 以 由 兩 個 相 同 名 詞 短 語 構 成 的 N は N i だ 形 式 的 同 語 反 復 句 為 研 究 對 象, 首 先 將 同 語 反 復 句 定 位 為 由 相 同 名 詞 短 語 充 當 主 語 和 謂 語 的 系 詞 句 的 特 殊 句 式, 然 後 參 照 西 山 佑 司 (2003) 對 系 20

論 文 陳 訪 澤 張 秀 娟 : 同 語 反 復 名 詞 謂 語 句 的 語 義 結 構 和 語 境 特 徵 詞 句 的 分 類, 從 關 聯 理 論 的 角 度 對 同 語 反 復 句 各 句 式 類 型 進 行 了 考 察, 並 分 析 了 各 句 式 類 型 的 語 義 結 構 及 其 語 境 特 徵 通 過 對 實 例 的 分 析, 得 到 了 同 語 反 復 句 可 分 為 措 定 句 倒 置 同 定 句 定 義 句 3 種 句 式 類 型 的 結 論 其 語 義 結 構 的 解 釋, 主 要 取 決 於 該 同 語 反 復 句 出 現 的 語 境 特 徵 當 同 語 反 復 句 使 用 於 喚 起 他 人 顯 映 出 貯 存 於 大 腦 內 文 化 語 言 知 識 庫 中 對 某 一 事 物 屬 性 特 徵 認 知 的 共 有 知 識 從 而 達 成 共 識 這 一 語 境 時, 可 以 解 釋 為 事 物 屬 性 特 徵 語 義 結 構 關 係 的 措 定 句 ; 當 使 用 於 強 調 某 一 範 疇 的 成 員 不 管 其 形 態 特 徵 怎 樣 都 還 是 該 範 疇 的 成 員, 不 可 將 其 排 除 出 該 範 疇 這 一 語 境 時, 可 以 解 釋 為 成 員 範 疇 語 義 結 構 關 係 的 倒 置 同 定 句 ; 當 使 用 於 面 對 他 人 對 某 概 念 的 發 問, 礙 於 某 種 原 因 不 便 或 是 不 想 直 接 回 答 這 一 語 境 時, 則 可 以 解 釋 為 概 念 定 義 語 義 結 構 關 係 的 定 義 句 可 歸 納 成 表 2 句 式 類 型 語 義 結 構 語 境 特 徵 措 定 句 事 物 屬 性 特 徵 喚 起 他 人 顯 映 出 貯 存 於 大 腦 內 文 化 語 言 知 識 庫 中 對 某 一 事 物 屬 性 特 徵 認 知 的 共 有 知 識 從 而 達 成 共 識 倒 置 同 定 句 成 員 範 疇 強 調 某 一 範 疇 的 成 員 不 管 其 形 態 特 徵 怎 樣 都 還 是 該 範 疇 的 成 員, 不 可 將 其 排 除 出 該 範 疇 定 義 句 概 念 定 義 面 對 他 人 對 某 概 念 的 發 問, 礙 於 某 種 原 因 不 便 或 是 不 想 直 接 回 答 表 2 同 語 反 復 句 的 句 式 類 型 語 義 結 構 及 其 語 境 特 徵 參 考 文 獻 Sperber, D. & Wilson, D. (1995) Relevance: Communication and Cognition. 2nd Edition./ 内 田 聖 二 他 訳 (1999) 関 連 性 理 論 伝 達 と 認 知 [ 第 2 版 ] 研 究 社 今 田 水 穂 (2008) 日 本 語 名 詞 述 語 文 の 記 述 的 分 類 の 再 分 析 : 機 能 論 的 観 点 から 筑 波 応 用 言 語 学 研 究 15 緒 方 隆 文 (2006) トートロジー : 背 景 化 による 強 調 筑 紫 女 学 園 大 学 筑 紫 女 学 園 大 学 短 期 大 学 部 紀 要 1 久 保 智 之 (1992) 日 本 語 の 同 語 反 復 コプラ 文 に 関 する 覚 書 : 時 間 は 時 間 だ と 時 間 が 時 間 だ 福 岡 教 育 大 学 国 語 科 研 究 論 文 集 33 小 泉 保 (1990) 言 外 の 言 語 学 : 日 本 語 語 用 論 三 省 堂 小 屋 逸 樹 (2002) トートロジーと 両 義 性 慶 応 義 塾 大 学 言 語 文 化 研 究 所 紀 要 34 坂 原 茂 (1990) 役 割,ガ ハ,ウナギ 文 認 知 科 学 の 発 展 3 佐 山 公 一 阿 部 純 一 (1994) 日 本 語 同 語 反 復 文 の 意 味 解 釈 : 反 復 語 および 文 脈 の 関 わり 心 理 学 研 究 1 21

論 文 陳 訪 澤 張 秀 娟 : 同 語 反 復 名 詞 謂 語 句 的 語 義 結 構 和 語 境 特 徵 佐 山 公 一 阿 部 純 一 (1999) 同 語 反 復 文 の 意 味 はどのように 解 釈 されるか 心 理 学 評 論 1 西 川 眞 由 美 (2003) Tautology の 考 察 :adhoc 概 念 の 視 点 から 語 用 論 研 究 5 西 山 佑 司 (1985) 措 定 文 指 定 文 同 定 文 の 区 別 をめぐって 慶 応 義 塾 大 学 言 語 文 化 研 究 所 紀 要 17 西 山 佑 司 (1990) コピュラ 文 における 名 詞 句 の 解 釈 をめぐって 文 法 と 意 味 の 間 : 国 広 哲 弥 教 授 還 暦 退 官 記 念 論 文 集 西 山 佑 司 (2003) 日 本 語 名 詞 句 の 意 味 論 と 語 用 論 : 指 示 的 名 詞 句 と 非 指 示 的 名 詞 句 ひつじ 書 房 樋 口 万 里 子 (1988) トートロジーの 意 味 理 解 活 水 論 文 集 ( 英 米 文 学 英 語 学 編 ) 31 水 田 洋 子 (1995) トートロジーが 意 味 を 持 つとき 言 語 12 安 井 稔 (1978) 言 外 の 意 味 研 究 社 何 自 然 冉 永 平 編 著 (2001) 語 用 學 概 論 ( 修 訂 版 ) 湖 南 教 育 出 版 社 李 淼 (2003) 日 語 中 的 同 語 反 復 解 放 軍 外 國 語 學 院 學 報 2 註 1 例 如 李 淼 (2003) 根 據 反 復 詞 的 詞 類, 將 日 語 同 語 反 復 分 為 體 言 型 同 語 反 復 和 用 言 型 同 語 反 復 體 言 型 同 語 反 復 句 式 包 括 N は N 型 N が N 型 N も N 型 N という N 型 ; 用 言 型 同 語 反 復 句 式 包 括 V には V 型 V こと(に)は V 型 等 2 3 4 本 文 中 的 名 詞 短 語 是 指 廣 義 上 的 概 念, 也 包 括 名 詞 系 詞 句 有 A は B だ 和 A が B だ 兩 種 句 式 坂 原 茂 (1990) 基 於 心 理 空 間 理 論 (メンタル スペース 理 論 ) 從 語 義 結 構 上 將 系 詞 句 分 成 三 種 類 型 其 中 3 是 2 的 倒 裝 句 1 記 述 文 : A は B だ A: 個 体 か 属 性 B: 属 性 2 同 定 文 : A は B だ A: 役 割 B: 値 3 同 定 文 : B が A だ B: 値 A: 役 割 (2の 倒 置 ) 根 據 西 山 佑 司 (2003:149) 中 圖 (107) 可 知, 上 述 分 類 分 別 與 本 文 表 1 中 的 措 定 文 倒 置 指 定 文 指 定 文 相 對 應 5 如 註 4 所 述, 記 述 文 相 當 於 措 定 文 6 敘 述 名 詞 短 語 又 稱 為 屬 性 名 詞 短 語, 是 表 示 事 物 屬 性 特 征 等 的 名 詞 短 語 如 モーツルトは 天 才 だ, 句 中 天 才 即 為 屬 性 名 詞 短 語, 用 于 說 明 莫 扎 特 變 項 名 詞 短 語 是 指 內 部 隱 含 wh- 疑 問 句 意 義 的 名 詞 短 語 如 花 子 殺 しの 犯 人 はあの 男 だ, 在 理 解 這 句 話 時, 名 詞 短 語 花 子 殺 しの 犯 人 隱 含 花 子 殺 しの 犯 人 は 誰 か 這 一 疑 問 意 義, 即 為 變 項 名 詞 短 語 22

論 文 陳 訪 澤 張 秀 娟 : 同 語 反 復 名 詞 謂 語 句 的 語 義 結 構 和 語 境 特 徵 7 本 研 究 所 採 用 的 實 例 主 要 是 從 日 本 近 現 代 文 學 作 品 青 空 文 庫 相 關 先 行 研 究 論 文 電 視 劇 和 動 漫 臺 詞 ( 筆 者 聽 錄 ) 等 中 收 集 所 得 目 前 共 收 集 到 200 個 以 上 的 實 例 其 中 本 文 所 引 用 的, 主 要 來 源 於 電 視 劇 及 動 漫 的 臺 詞 ( 如 例 (1) (2)) 文 學 作 品 ( 如 例 (4)) 相 關 先 行 研 究 論 文 ( 如 例 (6)) 8 關 聯 理 論 認 為, 人 類 的 交 際 是 一 個 說 話 人 的 明 示 與 聽 話 人 的 推 理 過 程, 即 明 示 推 理 過 程 在 交 際 中, 說 話 人 的 明 示 交 際 行 為 目 的 是 為 了 讓 聽 話 人 明 白 自 己 的 信 息 意 圖, 最 終 實 現 交 際 意 圖 ; 而 聽 話 人 則 應 該 認 為 引 起 自 己 注 意 的 明 示 話 語 具 有 關 聯 性 交 際 雙 方 希 望 的 就 是 說 話 人 的 話 語 與 聽 話 人 的 認 知 語 境 之 間 的 最 佳 關 聯 因 此,Sperber & Wilson 在 1986 年 提 出 了 關 聯 原 則, 并 在 第 二 版 Sperber & Wilson (1995) 中 修 正 如 下 : 關 聯 原 則 : 第 一 原 則 : 人 類 認 知 傾 向 於 同 最 大 關 聯 相 吻 合 第 二 原 則 : 每 一 個 話 語 或 明 示 的 交 際 行 為 都 應 設 想 它 本 身 具 有 最 佳 關 聯 最 佳 關 聯 假 設 : (a) 明 示 刺 激 具 有 足 夠 的 關 聯 性, 值 得 聽 話 人 付 出 一 定 努 力 進 行 處 理 (b) 明 示 刺 激 與 說 話 人 的 能 力 和 偏 愛 相 一 致, 因 而 它 具 有 最 大 關 聯 性 ( 何 自 然 冉 永 平 (2001:228-236,238-243)) 9 Sperber & Wilson (1995)( 内 田 聖 二 等 譯 1999:151) 對 関 連 性 程 度 大 小 規 定 如 下 : 程 度 条 件 1: 想 定 はある 文 脈 中 での 文 脈 効 果 が 大 きいほど その 文 脈 中 で 関 連 性 が 高 い ( 某 假 設 在 語 境 中 的 語 境 效 果 越 大, 它 在 該 語 境 中 的 關 聯 性 就 越 強 ) 程 度 条 件 2: 想 定 はある 文 脈 中 でその 処 理 に 要 する 労 力 が 小 さいほど その 文 脈 中 で 関 連 性 が 高 い ( 某 假 設 在 語 境 中 所 需 要 付 出 的 認 知 努 力 越 少, 它 在 該 語 境 中 的 關 聯 性 就 越 強 ) 23

論 文 劉 金 挙 : 室 生 犀 星 句 の 特 質 について 劣 等 感 コンプレックス 脱 出 の 努 力 室 生 犀 星 句 の 特 質 について 1 劣 等 感 コンプレックス 脱 出 の 努 力 2 Murō Saisei s Haiku Focusing Effort to Dispel Complex 劉 金 挙 (LIU Jinju) 広 東 外 語 外 貿 大 学 日 本 語 学 部 教 授 Guangdong University of Foreign Studies, Department of Japanese, Professor Abstract Murō Saisei, influenced by prevalent haiku writing in his hometown, followed suit in his childhood, an effort to eradicate his inferiority complex by show-off compensation and comforting compensation, which helped lay a solid foundation for his literary career. It is more appropriate to divide his haiku writing into four stages, instead of two as it is traditionally done, from the psychological view and in consideration of haiku s role in his life. In the first stage, his haiku bears noticeable efforts to seek comforting compensation. In the second stage, since the author gained some fame and a long-awaited marriage, there emerged in his haiku more elements of family life and accordingly more efforts to get rid of the inferiority complex. With another round of glorious achievements in novel writing, the author began to pursue feminine and classical beauty in the company of more eager inferiority-eradicating attempts in the third stage. Through the war and hard times in writing, Murō Saisei had realized self-fulfillment and transcendence in the fourth stage. He then popularized his experiences and began to explore subjects like death in pursuit of beauty in ordinary life and classics. The author s haiku writing is a true picture of his journey from seeking to get rid of the inferiority complex to self-fulfillment. [Keywords] Murō Saisei, haiku, complex, self-fulfillment はじめに 俳 句 にはじまり 俳 句 に 終 わった 3 犀 星 にとって 俳 句 は 二 重 の 意 味 において 劣 等 感 コンプ レックスを 解 消 するための 補 償 である 4 それゆえ 生 涯 にわたって 句 作 に 励 んだ 彼 は すば らしい 句 の 世 界 を 築 き 上 げた 室 生 朝 子 は 犀 星 の 作 句 と 断 定 したものを 室 生 犀 星 句 集 魚 眠 洞 全 集 ( 昭 52 北 国 出 版 社 )に 千 七 百 四 十 七 句 収 録 したのに 対 して 星 野 晃 一 は 犀 星 全 句 は 約 千 八 百 もあるとしている 5 十 五 ぐらいの 時 代 から 俳 句 を 作 っていた ( 河 辺 の 初 春 文 章 世 界 ) 自 分 が 俳 句 に 志 し たのは 十 五 歳 の 時 である ( 魚 眠 洞 発 句 集 の 序 )と 幼 い 頃 より 俳 句 を 嗜 んできた 犀 星 であ ったが 二 十 五 歳 位 から 十 年 間 自 分 は 俳 道 から 遠 ざか ( 同 上 )り 俳 句 というものは 一 生 に 二 度 は 出 逢 うことのできる また 二 度 は 出 逢 わなければならないものらしい ( 発 句 道 の 人 々 ) 24

論 文 劉 金 挙 : 室 生 犀 星 句 の 特 質 について 劣 等 感 コンプレックス 脱 出 の 努 力 と 認 識 していた 二 度 にわたった 俳 句 との 出 逢 いを 感 慨 深 く 振 り 返 ったこの 話 では 一 度 目 の 句 作 は 明 治 三 十 六 年 から 大 正 二 年 までのことのようで 彼 の 習 作 時 代 と 言 える 二 期 目 の 句 作 は 関 東 大 震 災 後 の 帰 郷 によって 金 沢 の 俳 友 との 旧 交 に 温 められ 北 声 会 や 中 塚 一 碧 楼 の 金 沢 来 訪 の 折 の 歓 迎 句 会 などにも 出 席 し 大 正 十 三 年 初 頭 から 本 格 的 に 再 開 して ずっと 彼 が 亡 くなるまで の 間 だという 6 が 犀 星 の 言 っているこの 第 二 期 は あまりにも 長 過 ぎてしかも 漠 然 的 な 区 分 な ので その 内 容 及 びその 生 涯 における 働 きから 見 れば 更 に 細 分 できないかと 思 える ここで 犀 星 の 小 説 創 作 は 幼 年 三 部 作 をはじめとする 第 一 期 と 市 井 鬼 物 を 頂 点 とする 第 二 期 と 随 筆 女 ひと をきっかけにして 開 始 した 生 涯 最 高 の 高 揚 期 である 第 三 期 及 びその 間 に 挟 まれた 二 つの 沈 滞 期 という 奥 野 健 男 氏 の 五 期 説 7 を 踏 まえ 室 生 犀 星 句 集 魚 眠 洞 全 集 を 底 本 にし 創 作 時 期 の 断 定 できるものを 対 象 にして 心 理 学 的 立 場 から 犀 星 の 句 作 生 涯 を 第 一 期 ( 明 37~44) 第 二 期 ( 大 13~ 昭 8) 第 三 期 ( 昭 9~13)と 第 四 期 ( 昭 14 年 ~36)に 分 けて 戦 時 下 と 戦 後 の 区 別 をせずに 句 作 におけるコンプレックスを 脱 出 する 努 力 の 表 象 並 びに 自 己 実 現 後 の 表 象 を 分 析 することを 通 じて その 気 魄 を 見 てみようとする 以 下 では 分 析 の 便 の ため 各 時 期 のものをその 特 徴 に 基 づいて 便 宜 的 に 更 に 分 類 して 見 ていく(ただ 一 つの 句 で 重 な る 要 素 があるものもあって ダブル 分 析 するところもある) 1. 犀 星 の 第 一 期 の 句 作 素 直 さを 失 った 子 供 というものは 人 間 よりも 余 計 に 樹 木 や 動 物 に 心 寄 せるものであった ( 弄 獅 子 ) 深 いコンプレックスを 抱 いていたせいで 素 直 さを 失 った 犀 星 少 年 は 人 事 を 遠 ざけ てひたすら 自 然 に 沈 潜 し もっぱら 自 然 に 慰 みを 求 めていた 照 文 の 名 で 投 稿 した 水 郭 の 一 林 紅 し 夕 紅 葉 ( 北 國 新 聞 明 37.10.08)が 活 字 となったのをきっかけに 彼 は 憑 かれたほど 多 く の 句 を 作 り 室 生 犀 星 句 集 魚 眠 洞 全 集 所 収 の 一 期 目 のものだけでも 560 句 もある 1.1 自 然 か ら 求 め た 幽 遠 冬 枯 れや 霜 美 しき 藁 の 屋 根 ( 明 38.12.10) 草 木 が 枯 れ 万 物 はまるで 生 命 力 を 失 ったかのような 寒 い 冬 に 藁 葺 きの 屋 根 に 白 い 霜 が 飾 っ ている 枯 草 木 の 色 屋 根 の 色 霜 の 色 によって 織 り 成 された 一 幅 の 絵 は 静 かさ 穏 やかさの 中 に 美 観 を 呈 している これと 同 じように 百 舌 鳥 鳴 くや 夕 日 燃 ゆる 公 孫 樹 ( 明 39.10 29) 遠 望 の 残 雪 白 し 山 の 皺 ( 明 40.03.22)などのように 幽 遠 という 際 立 った 特 色 は 彼 の 俳 句 の 底 流 をなしている それ は その 後 の 評 論 随 筆 集 芭 蕉 襍 記 に 繋 がる 幽 遠 哀 寂 を 求 めるため 凍 る 絵 筆 解 く 唇 や 冬 の 薔 薇 ( 明 41.11.22) 人 を 待 つ 裏 戸 の 闇 の 藪 蚊 かな ( 明 48.8.27)などの 奇 想 天 外 な 発 想 の 比 喩 を 用 いたものが 50 句 ほどある これは 後 の 犀 星 の 詩 作 と 小 説 創 作 に 大 きな 影 響 を 与 え 犀 星 流 の 比 喩 のもととなり 後 で 見 るように 芥 川 龍 之 介 をも 敬 服 させた 25

論 文 劉 金 挙 : 室 生 犀 星 句 の 特 質 について 劣 等 感 コンプレックス 脱 出 の 努 力 1.2 コ ン プ レ ッ ク ス に 由 来 し た も の 少 年 犀 星 の 自 然 への 沈 潜 は 決 して 心 に 絡 んだコンプレックスを 忘 却 させたのではなく ただ 首 尾 周 到 で 微 を 極 めた 自 然 観 察 の 中 に 無 垢 な 心 に 受 けた 傷 とそれによる 孤 独 感 またそれゆえ の 現 実 遊 離 の 願 望 コンプレックスから 脱 出 の 努 力 を 詠 んだだけであった よって 照 道 少 年 の いらだちの 激 しさ そしてそれとは 対 照 的 な 自 然 草 木 花 鳥 魚 との 深 いかかわりなどに 見 る 静 か さ 穏 やかさ 8 は 彼 の 句 に 見 出 せる 印 象 深 いのは その 中 に 詠 まれた 犀 星 の 気 持 ちと 感 触 で ある 身 につまされた 悲 しみ 芳 ばしくない 出 生 と 悲 しい 育 ちの 犀 星 が 自 然 からよく 感 じ 取 ったのは 悲 しみを 感 じさせる 風 物 であった 末 枯 の 一 軒 寒 し 石 の 怪 ( 明 37.11.28) 草 木 がうら 枯 れた 深 秋 怪 しい 形 の 石 の 林 に 囲 まれた 一 軒 の 家 がぽつんと 立 っている その 寒 さは 時 期 の 寒 さと 人 の 心 に 脅 えを 与 えた 感 覚 とを 兼 ねたもので なんと 寂 しくて 人 に 心 の 底 にまで 冷 え 込 ませるような 冬 景 色 だろう これと 同 じで 人 を 待 つ 橋 の 袂 や 霜 白 し ( 明 39.12.13) 秋 ぢやもの 別 れぢやものを 虫 が 鳴 く ( 明 40.9.5)など いかにも 孤 独 な 人 の 心 に 浸 み 込 ませるようなものは 70 句 ほどあるほか 菊 咲 きて 貧 の 晴 着 も 三 日 哉 ( 明 40.11.3) 蚊 帳 除 けて 天 井 の 穴 懐 かしむ ( 明 41.10.1)な ど 生 活 の 貧 しさを 活 写 したものは 15 句 ほどある か 弱 いものへのいと 惜 しみ 雨 細 き 若 葉 の 裏 の 毛 虫 哉 ( 明 39.1.18) 寒 い 風 の 中 吹 いたばかりの 若 葉 の 裏 にか 弱 い 毛 虫 が 一 匹 這 っていて 身 の 芯 にまで 沁 み 込 む 寒 い 小 雨 を 避 けている どれほど 可 哀 相 な 光 景 であろう これと 合 わせて 虫 を 描 いたものは 十 数 句 ある 詩 人 犀 星 の 小 動 物 に 対 する 愛 は 天 性 に 負 うものでもあろうが その 生 育 環 境 に 因 るところが 大 きいと 考 えられる 彼 の 幼 少 時 の<あはれ 知 るわが 育 ち>( 寺 の 庭 )こそ もっ とも 身 近 な 生 きものとしての<ものいえぬむしけらもの>( 夏 の 庭 )への 共 感 を 生 み 彼 らと の 深 い 絆 を 育 んだのではなかろうか 9 とあるように 同 病 相 哀 れむ 犀 星 は か 弱 いものへ 並 々ならぬ 関 心 を 寄 せ それへの 哀 れみ 憐 憫 を 涌 かせてくれる これと 同 じイメージのもので 注 目 の 対 象 から 言 えば 水 中 生 物 (17 句 ) 雁 (12 句 ) 燕 (5 句 ) 蝿 (5 句 ) 鶯 (4 句 ) 鶉 (3 句 )と ほかの 虫 けらや 生 物 を 描 いた 句 は 100 ほどあり 何 れもか 弱 いものへぬくもりを 注 ぎ その 命 の 弱 さを 哀 れんだものである 跳 んて 跳 んて 跳 ひ 損 ね たる 蛙 哉 ( 明 41.5.14) 斧 揮 つて 入 日 を 戻 す 蟷 螂 哉 ( 明 41.10) 暮 るる 戸 に 離 愁 思 ひは 帰 雁 啼 く ( 明 42.3.10)などは 代 表 的 なものである それは 後 に 中 央 誌 への 初 めての 投 稿 詩 さ くら 石 斑 に 添 えて や 川 魚 の 記 ( 魚 眠 洞 随 筆 所 収 ) 一 冊 のバイブル 虫 寺 抄 虫 か ご ( 木 洩 日 第 十 章 ) 消 えたひとみ お 天 気 博 士 などの 虫 題 材 の 小 説 随 筆 を 経 て ず っと 彼 の 生 涯 を 締 め 括 る 老 いたるえびのうた に 至 るまで 犀 星 文 学 を 貫 いた もっとも 後 で 分 析 するように 自 己 実 現 をなした 後 それは もともとの 劣 等 感 コンプレックスからの 脱 26