経 済 物 価 情 勢 の 展 望 (2015 年 4 月 ) 基 本 的 見 解 1 < 概 要 > 2015 年 4 月 30 日 日 本 銀 行 2017 年 度 までの 日 本 経 済 を 展 望 すると 2015 年 度 から 2016 年 度 にか けて 潜 在 成 長 率 を 上 回 る 成 長 を 続 けると 予 想 される 2017 年 度 にかけ ては 消 費 税 率 引 き 上 げ 前 の 駆 け 込 み 需 要 とその 反 動 の 影 響 を 受 ける とともに 景 気 の 循 環 的 な 動 きを 映 じて 潜 在 成 長 率 を 幾 分 下 回 る 程 度 に 減 速 しつつも プラス 成 長 を 維 持 すると 予 想 される 2 消 費 者 物 価 の 前 年 比 ( 消 費 税 率 引 き 上 げの 直 接 的 な 影 響 を 除 くベース) は 当 面 0% 程 度 で 推 移 するとみられるが 物 価 の 基 調 が 着 実 に 高 ま り 原 油 価 格 下 落 の 影 響 が 剥 落 するに 伴 って 物 価 安 定 の 目 標 で ある2%に 向 けて 上 昇 率 を 高 めていくと 考 えられる 3 2% 程 度 に 達 す る 時 期 は 原 油 価 格 の 動 向 によって 左 右 されるが 現 状 程 度 の 水 準 か ら 緩 やかに 上 昇 していくとの 前 提 にたてば 2016 年 度 前 半 頃 になると 予 想 される その 後 次 第 に これを 安 定 的 に 持 続 する 成 長 経 路 へと 移 行 していくとみられる 2016 年 度 までの 見 通 しを 従 来 の 見 通 しと 比 べると 成 長 率 の 見 通 しは 概 ね 不 変 である 物 価 の 見 通 しは やや 下 振 れている 物 価 安 定 の 目 標 のもとで 以 上 の 中 心 的 な 見 通 し( 第 1の 柱 )と これに 対 する 上 下 双 方 向 のリスク 要 因 ( 第 2の 柱 )を 点 検 した 4 金 融 政 策 運 営 については 量 的 質 的 金 融 緩 和 は 所 期 の 効 果 を 発 揮 し ており 今 後 とも 日 本 銀 行 は 2%の 物 価 安 定 の 目 標 の 実 現 を 目 指 し これを 安 定 的 に 持 続 するために 必 要 な 時 点 まで 量 的 質 的 金 融 緩 和 を 継 続 する その 際 経 済 物 価 情 勢 について 上 下 双 方 向 のリスク 要 因 を 点 検 し 必 要 な 調 整 を 行 う 1 4 月 30 日 開 催 の 政 策 委 員 会 金 融 政 策 決 定 会 合 で 決 定 されたものである 2 消 費 税 率 については 1 月 の 中 間 評 価 同 様 2017 年 4 月 に 10%に 引 き 上 げられるこ とを 前 提 としている 3 各 政 策 委 員 は 見 通 し 作 成 にあたって 原 油 価 格 の 前 提 を 次 の 通 りとした すなわち 原 油 価 格 (ドバイ)は 1バレル 55 ドルを 出 発 点 に 見 通 し 期 間 の 終 盤 にかけて 70 ド ル 台 前 半 に 緩 やかに 上 昇 していくと 想 定 している その 場 合 の 消 費 者 物 価 ( 除 く 生 鮮 食 品 )の 前 年 比 に 対 するエネルギー 価 格 の 寄 与 度 は 2015 年 度 で-0.7~-0.8%ポイン ト 程 度 2016 年 度 で+0.1~+0.2%ポイント 程 度 と 試 算 される また 寄 与 度 は 当 面 マイナス 幅 を 拡 大 した 後 2015 年 度 後 半 にはマイナス 幅 縮 小 に 転 じ 2016 年 度 前 半 には 概 ねゼロになると 試 算 される 4 物 価 安 定 の 目 標 のもとでの2つの 柱 による 点 検 については 日 本 銀 行 金 融 政 策 運 営 の 枠 組 みのもとでの 物 価 安 定 の 目 標 について (2013 年 1 月 22 日 ) 参 照 1
1.わが 国 の 経 済 物 価 の 中 心 的 な 見 通 し (1) 経 済 情 勢 わが 国 の 景 気 は 緩 やかな 回 復 基 調 を 続 けている 企 業 部 門 では 輸 出 生 産 が 持 ち 直 すとともに 収 益 は 過 去 最 高 水 準 まで 増 加 しており 前 向 き な 投 資 スタンスが 維 持 されている 家 計 部 門 については 雇 用 所 得 環 境 の 着 実 な 改 善 が 続 き 個 人 消 費 も 全 体 としては 底 堅 く 推 移 している 先 行 きを 展 望 すると 国 内 需 要 が 堅 調 に 推 移 するとともに 輸 出 も 緩 や かに 増 加 していくと 見 込 まれ 家 計 企 業 の 両 部 門 において 所 得 から 支 出 への 前 向 きの 循 環 メカニズムが 持 続 すると 考 えられる そうしたもとで わが 国 経 済 は 2015 年 度 から 2016 年 度 にかけて 潜 在 成 長 率 を 上 回 る 成 長 を 続 けると 予 想 される 5 2017 年 度 にかけては 消 費 税 率 引 き 上 げ 前 の 駆 け 込 み 需 要 とその 反 動 などの 影 響 を 受 けるとともに 景 気 の 循 環 的 な 動 きを 映 じて 潜 在 成 長 率 を 幾 分 下 回 る 程 度 に 減 速 しつつも プラス 成 長 を 維 持 すると 予 想 される こうした 見 通 しの 背 景 にある 前 提 は 以 下 のとおりである 第 1に 日 本 銀 行 が 2%の 物 価 安 定 の 目 標 の 実 現 を 目 指 し これ を 安 定 的 に 持 続 するために 必 要 な 時 点 まで 量 的 質 的 金 融 緩 和 を 継 続 する 中 で 金 融 環 境 は 緩 和 した 状 態 が 続 き 景 気 に 対 し 刺 激 的 に 作 用 して いくと 想 定 している 6 第 2に 海 外 経 済 については 先 進 国 が 堅 調 な 景 気 回 復 を 続 け その 好 5 わが 国 の 潜 在 成 長 率 を 一 定 の 手 法 で 推 計 すると このところ 0% 台 前 半 ないし 半 ば 程 度 と 計 算 されるが 見 通 し 期 間 の 終 盤 にかけて 徐 々に 上 昇 していくと 見 込 まれる ただし 潜 在 成 長 率 は 推 計 手 法 や 今 後 蓄 積 されていくデータにも 左 右 される 性 格 のも のであるため 相 当 幅 をもってみる 必 要 がある 6 各 政 策 委 員 は 既 に 決 定 した 政 策 を 前 提 として また 先 行 きの 政 策 運 営 については 市 場 の 織 り 込 みを 参 考 にして 見 通 しを 作 成 している 具 体 的 には 短 期 金 利 について 市 場 は 見 通 し 期 間 を 通 じて 実 質 的 にゼロ 金 利 が 継 続 することを 織 り 込 んでいる 長 期 金 利 について 市 場 は 見 通 し 期 間 を 通 じて 低 位 で 推 移 すると 予 想 しているが こ れは 展 望 レポートに 比 べて 低 い 市 場 参 加 者 の 物 価 見 通 しを 反 映 している 各 政 策 委 員 は こうした 市 場 の 見 方 を 踏 まえ 物 価 見 通 しの 違 いも 勘 案 して 長 期 金 利 の 先 行 きを 想 定 している 2
影 響 が 新 興 国 にも 徐 々に 波 及 する 中 で 緩 やかに 成 長 率 を 高 めていく 姿 を 見 込 んでいる 主 要 国 地 域 別 にみると 米 国 経 済 については 民 間 需 要 を 中 心 とした 成 長 が 続 くと 予 想 される 欧 州 経 済 については 債 務 問 題 に 伴 う 調 整 圧 力 が 残 り 暫 くの 間 低 インフレが 続 くとみられるものの 個 人 消 費 の 回 復 や 輸 出 の 増 加 などに 支 えられ 緩 やかに 回 復 していくと 見 込 ま れる 中 国 経 済 については 当 局 が 構 造 改 革 と 景 気 下 支 え 策 に 同 時 に 取 り 組 んでいく 中 で 成 長 ペースを 幾 分 切 り 下 げながらも 概 ね 安 定 した 成 長 経 路 をたどると 想 定 している 第 3に 公 共 投 資 は 現 在 の 高 めの 水 準 から 緩 やかな 減 少 傾 向 をたどっ た 後 見 通 し 期 間 の 終 盤 にかけては 下 げ 止 まっていくと 想 定 している 第 4に 政 府 による 規 制 制 度 改 革 などの 成 長 戦 略 の 推 進 や そのもと での 女 性 や 高 齢 者 による 労 働 参 加 の 高 まり 企 業 による 生 産 性 向 上 に 向 け た 取 り 組 みと 内 外 需 要 の 掘 り 起 こしなどが 続 くとともに デフレからの 脱 却 が 着 実 に 進 んでいくにつれて 企 業 や 家 計 の 中 長 期 的 な 成 長 期 待 は 緩 やかに 高 まっていくと 想 定 している 以 上 を 前 提 に 見 通 し 期 間 の 景 気 展 開 をやや 詳 しく 述 べると 2015 年 度 から 2016 年 度 にかけては 輸 出 は 海 外 経 済 が 回 復 し これまでの 為 替 相 場 の 動 きも 下 支 えに 働 くことから 緩 やかに 増 加 すると 考 えられる 設 備 投 資 は 企 業 収 益 の 改 善 や 金 融 緩 和 効 果 が 引 き 続 き 押 し 上 げに 作 用 する 中 国 内 生 産 強 化 の 動 きなどもあって しっかりと 増 加 するとみられる 個 人 消 費 は 雇 用 所 得 環 境 の 着 実 な 改 善 が 続 き 賃 金 が 増 加 していくほか 2015 年 度 にはエネルギー 価 格 下 落 による 実 質 所 得 の 押 し 上 げ 効 果 や 駆 け 込 み 需 要 後 の 落 ち 込 みからの 回 復 も 見 込 まれることから 伸 びを 高 めると 予 想 される 7 こうした 内 外 需 要 を 反 映 して 鉱 工 業 生 産 も 緩 やかに 増 加 7 2 回 の 消 費 税 率 の 引 き 上 げが 年 度 毎 の 成 長 率 に 及 ぼす 影 響 を 定 量 的 に 試 算 すると 2013 年 度 +0.5%ポイント 程 度 2014 年 度 -1.2%ポイント 程 度 2015 年 度 +0.3%ポ イント 程 度 2016 年 度 +0.3%ポイント 程 度 2017 年 度 -0.8%ポイント 程 度 となる ただし これらは その 時 々の 所 得 環 境 や 物 価 動 向 にも 左 右 されるなど 不 確 実 性 が 大 き 3
するとみられる 2017 年 度 にかけては 2 回 目 の 消 費 税 率 引 き 上 げ 前 の 駆 け 込 み 需 要 とそ の 反 動 の 影 響 を 受 けるとともに 設 備 投 資 の 増 加 ペースが 資 本 ストックの 蓄 積 に 伴 って 低 下 していくとみられる もっとも 海 外 経 済 の 成 長 などを 背 景 に 輸 出 が 緩 やかな 増 加 を 続 けるとともに 緩 和 的 な 金 融 環 境 と 成 長 期 待 の 高 まりなどを 受 けて 国 内 民 間 需 要 は 底 堅 く 推 移 すると 予 想 される こ の 間 潜 在 成 長 率 は 見 通 し 期 間 を 通 じて 緩 やかな 上 昇 傾 向 をたどり 中 長 期 的 にみた 成 長 ペースを 押 し 上 げていくと 考 えられる このため わが 国 経 済 は 潜 在 成 長 率 を 幾 分 下 回 る 程 度 に 減 速 しつつも プラス 成 長 を 維 持 すると 見 込 まれる 2016 年 度 までの 成 長 率 の 見 通 しを1 月 の 中 間 評 価 時 点 と 比 べると 概 ね 不 変 である (2) 物 価 情 勢 消 費 者 物 価 ( 除 く 生 鮮 食 品 以 下 同 じ)の 前 年 比 は このところ0% 程 度 で 推 移 している 物 価 上 昇 率 を 規 定 する 主 たる 要 因 について 点 検 すると 第 1に 労 働 や 設 備 の 稼 働 状 況 を 表 すマクロ 的 な 需 給 バランスは 着 実 に 改 善 傾 向 をたど っている 8 すなわち 失 業 率 が 緩 やかに 低 下 し3% 台 半 ばになっているな ど 9 労 働 需 給 は 引 き 締 まり 傾 向 が 続 いている こうしたもとで 所 定 内 給 く 相 当 な 幅 をもってみる 必 要 がある 8 マクロ 的 な 需 給 バランスの 推 計 については 1 潜 在 GDPを 推 計 のうえ 実 際 のGD Pとの 乖 離 を 計 測 するアプローチと 2 生 産 要 素 ( 労 働 と 設 備 )の 稼 働 状 況 を 直 接 計 測 するアプローチがある 展 望 レポートにおけるマクロ 的 な 需 給 バランスは 従 来 から 後 者 のアプローチを 採 用 しているため GDP 成 長 率 の 変 化 と 需 給 バランスの 拡 大 縮 小 の 間 に1 対 1の 対 応 関 係 があるわけではない マクロ 的 な 需 給 バランスの 推 計 値 は 推 計 方 法 や 使 用 するデータによって 異 なり 得 るため 相 当 の 幅 をもってみる 必 要 がある 9 労 働 需 給 の 引 き 締 まり 度 合 いを 測 る 際 のひとつの 目 安 として 構 造 失 業 率 がある 労 働 市 場 では 求 人 と 求 職 の 間 にある 程 度 のミスマッチが 常 に 存 在 するため 好 況 時 で あっても 一 定 の 失 業 者 が 存 在 する こうしたミスマッチに 起 因 する 失 業 の 存 在 を 前 提 に 過 剰 労 働 力 が 解 消 した 状 態 に 対 応 する 失 業 率 が 構 造 失 業 率 と 呼 ばれている 構 造 失 業 率 を 一 定 の 手 法 で 推 計 すると このところ3% 台 前 半 から 半 ば 程 度 であると 計 算 され 4
与 が 増 加 するなど 賃 金 の 改 善 も 続 いている また 駆 け 込 み 需 要 の 反 動 の 影 響 が 収 束 してきたことから 設 備 の 稼 働 率 も 高 まっている このため マクロ 的 な 需 給 バランスは 本 年 度 前 半 にプラス( 需 要 超 過 )に 転 じた 後 2016 年 度 にかけてプラス 幅 が 一 段 と 拡 大 し 需 給 面 からみた 賃 金 と 物 価 の 上 昇 圧 力 は 着 実 に 強 まっていくと 予 想 される その 後 2017 年 度 には マクロ 的 な 需 給 バランスは プラスの 水 準 で 横 ばい 圏 内 の 動 きになると 見 込 まれる 第 2に 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 については やや 長 い 目 でみれば 全 体 として 上 昇 しているとみられる こうした 予 想 物 価 上 昇 率 の 動 きは 実 際 の 賃 金 物 価 形 成 にも 影 響 を 及 ぼしていると 考 えられる 例 えば 労 使 間 の 賃 金 交 渉 においては 企 業 業 績 などに 加 え 物 価 動 向 を 賃 金 に 反 映 する 動 きが 拡 がりつつあり 本 年 のベースアップを 含 む 賃 上 げは 昨 年 を 上 回 る 伸 びとなる 見 込 みである 先 行 きも 日 本 銀 行 が 量 的 質 的 金 融 緩 和 を 推 進 し 実 際 の 物 価 上 昇 率 が 高 まっていくもとで 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 も 上 昇 傾 向 をたどり 物 価 安 定 の 目 標 である2% 程 度 に 向 けて 次 第 に 収 斂 していくとみられる 第 3に 輸 入 物 価 についてみると これまでの 為 替 相 場 の 動 きが 輸 入 物 価 を 通 じた 消 費 者 物 価 の 押 し 上 げ 要 因 として 作 用 していく 一 方 原 油 価 格 をはじめとする 国 際 商 品 市 況 の 下 落 は 当 面 物 価 の 下 押 し 圧 力 となる 以 上 を 踏 まえ 消 費 者 物 価 の 前 年 比 ( 消 費 税 率 引 き 上 げの 直 接 的 な 影 響 を 除 くベース)の 先 行 きを 展 望 すると 当 面 0% 程 度 で 推 移 するとみられ るが 物 価 の 基 調 が 着 実 に 高 まり 原 油 価 格 下 落 の 影 響 が 剥 落 するに 伴 っ て 物 価 安 定 の 目 標 である2%に 向 けて 上 昇 率 を 高 めていくと 考 えら れる 2% 程 度 に 達 する 時 期 は 原 油 価 格 の 動 向 によって 左 右 されるが 現 状 程 度 の 水 準 から 緩 やかに 上 昇 していくとの 前 提 にたてば 2016 年 度 前 る ただし 構 造 失 業 率 の 推 計 値 は 時 間 の 経 過 などに 伴 って 変 化 する 性 格 のものであ る 点 には 留 意 が 必 要 である 5
半 頃 になると 予 想 される その 後 は 平 均 的 にみて 2% 程 度 で 推 移 する と 見 込 まれる 10 2016 年 度 までの 消 費 者 物 価 の 見 通 しを1 月 の 中 間 評 価 時 点 と 比 較 すると やや 下 振 れている 2. 上 振 れ 要 因 下 振 れ 要 因 (1) 経 済 情 勢 上 記 の 中 心 的 な 経 済 の 見 通 しに 対 する 上 振 れ 下 振 れ 要 因 としては 第 1に 海 外 経 済 の 動 向 に 関 する 不 確 実 性 がある 先 行 きの 海 外 経 済 を 巡 る リスク 要 因 としては 米 国 経 済 の 成 長 ペースやそれが 国 際 金 融 資 本 市 場 に 及 ぼす 影 響 欧 州 における 債 務 問 題 の 展 開 や 景 気 物 価 のモメンタム 新 興 国 経 済 における 持 続 的 な 成 長 に 向 けた 構 造 調 整 の 進 展 度 合 い 資 源 価 格 下 落 の 影 響 地 政 学 的 リスクなどが 挙 げられる 第 2は 2017 年 4 月 に 予 定 される 消 費 税 率 引 き 上 げの 影 響 である 駆 け 込 み 需 要 とその 反 動 の 影 響 や 実 質 所 得 減 少 の 影 響 は 消 費 者 マインドや 雇 用 所 得 環 境 物 価 の 動 向 によって 変 化 し 得 る 第 3に 企 業 や 家 計 の 中 長 期 的 な 成 長 期 待 は 規 制 制 度 改 革 の 今 後 の 展 開 や 企 業 部 門 におけるイノベーション 家 計 部 門 を 取 り 巻 く 雇 用 所 得 環 境 などによって 上 下 双 方 向 に 変 化 する 可 能 性 がある 第 4に 財 政 の 中 長 期 的 な 持 続 可 能 性 に 対 する 信 認 が 低 下 するような 場 合 には 人 々の 将 来 不 安 の 強 まりや 経 済 実 態 から 乖 離 した 長 期 金 利 の 上 昇 などを 通 じて 経 済 の 下 振 れにつながる 惧 れがある 一 方 財 政 再 建 の 道 筋 に 対 する 信 認 が 高 まり 人 々の 将 来 不 安 が 軽 減 されれば 経 済 が 上 振 れ る 可 能 性 もある 10 2017 年 4 月 に 予 定 される 消 費 税 率 引 き 上 げが 物 価 に 及 ぼす 影 響 について 税 率 の 引 き 上 げ 分 が 現 行 の 課 税 品 目 すべてにフル 転 嫁 されると 仮 定 して 機 械 的 に 試 算 すると 2017 年 度 の 消 費 者 物 価 の 前 年 比 は 1.3%ポイント 押 し 上 げられる 6
(2) 物 価 情 勢 上 述 のような 経 済 の 上 振 れ 下 振 れ 要 因 が 顕 在 化 した 場 合 物 価 にも 相 応 の 影 響 が 及 ぶとみられる それ 以 外 に 物 価 の 上 振 れ 下 振 れをもたらす 要 因 としては 第 1に 企 業 や 家 計 の 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 の 動 向 が 挙 げられる 中 心 的 な 見 通 しでは 賃 金 の 上 昇 を 伴 いながら 実 際 の 物 価 上 昇 率 が 高 まっていく 中 で 人 々の 予 想 物 価 上 昇 率 も 一 段 と 上 昇 し 物 価 安 定 の 目 標 である2% 程 度 に 向 けて 次 第 に 収 斂 していく 姿 を 想 定 してい るが その 上 昇 ペースには 実 際 の 物 価 の 動 きやそれが 予 想 物 価 に 及 ぼす 影 響 の 度 合 いなどを 巡 って 不 確 実 性 がある この 点 では エネルギー 価 格 下 落 の 影 響 から 現 実 の 消 費 者 物 価 の 前 年 比 が 当 面 0% 程 度 で 推 移 すること が 予 想 物 価 上 昇 率 の 上 昇 ペースに 影 響 するリスクがある 第 2に マクロ 的 な 需 給 バランス とくに 労 働 需 給 の 動 向 がある 中 心 的 な 見 通 しでは 労 働 供 給 面 で 近 年 の 高 齢 者 や 女 性 による 労 働 参 加 の 高 まりや 最 近 みられているパート 労 働 の 正 規 雇 用 化 が 今 後 もある 程 度 続 く ことを 前 提 としているが この 点 を 巡 っては 不 確 実 性 がある 第 3に 物 価 上 昇 率 のマクロ 的 な 需 給 バランスに 対 する 感 応 度 すなわ ち 企 業 が 財 サービス 需 給 や 労 働 需 給 の 引 き 締 まりに 応 じて 販 売 価 格 や 賃 金 をどの 程 度 引 き 上 げていくかについて 留 意 する 必 要 がある この 点 労 働 需 給 の 引 き 締 まりを 背 景 として 賃 金 の 改 善 ペースが 上 振 れ 物 価 にも 影 響 を 及 ぼす 可 能 性 がある 一 方 消 費 者 の 物 価 上 昇 に 対 する 抵 抗 感 が 強 い 場 合 や 企 業 の 賃 上 げに 対 する 姿 勢 が 慎 重 な 場 合 販 売 価 格 や 賃 金 の 引 き 上 げがスムーズに 進 まない 可 能 性 もある 第 4に 原 油 価 格 といった 国 際 商 品 市 況 や 為 替 相 場 の 変 動 などに 伴 う 輸 入 物 価 の 動 向 や その 国 内 価 格 への 波 及 の 状 況 によっても 上 振 れ 下 振 れ 双 方 の 可 能 性 がある 7
3. 金 融 政 策 運 営 以 上 の 経 済 物 価 情 勢 について 物 価 安 定 の 目 標 のもとで 2つの 柱 による 点 検 を 行 い 先 行 きの 金 融 政 策 運 営 の 考 え 方 を 整 理 する まず 第 1の 柱 すなわち 中 心 的 な 見 通 しについて 点 検 すると わが 国 経 済 は 2016 年 度 前 半 頃 に2% 程 度 の 物 価 上 昇 率 を 実 現 し その 後 次 第 に これを 安 定 的 に 持 続 する 成 長 経 路 へと 移 行 していく 可 能 性 が 高 いと 判 断 さ れる 次 に 第 2の 柱 すなわち 金 融 政 策 運 営 の 観 点 から 重 視 すべきリスクに ついて 点 検 すると 中 心 的 な 経 済 の 見 通 しについては 海 外 経 済 の 動 向 な どを 巡 る 不 確 実 性 は 大 きいものの リスクは 上 下 にバランスしていると 評 価 できる 物 価 の 中 心 的 な 見 通 しについては 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 の 動 向 などを 巡 って 不 確 実 性 は 大 きく 下 振 れリスクが 大 きい より 長 期 的 な 視 点 から 金 融 面 の 不 均 衡 について 点 検 すると 現 時 点 では 資 産 市 場 や 金 融 機 関 行 動 において 過 度 な 期 待 の 強 気 化 を 示 す 動 きは 観 察 されない 11 もっとも 政 府 債 務 残 高 が 累 増 する 中 で 金 融 機 関 の 国 債 保 有 残 高 は 漸 減 傾 向 が 続 いているが なお 高 水 準 である 点 には 留 意 する 必 要 がある 金 融 政 策 運 営 については 量 的 質 的 金 融 緩 和 は 所 期 の 効 果 を 発 揮 しており 今 後 とも 日 本 銀 行 は 2%の 物 価 安 定 の 目 標 の 実 現 を 目 指 し これを 安 定 的 に 持 続 するために 必 要 な 時 点 まで 量 的 質 的 金 融 緩 和 を 継 続 する その 際 経 済 物 価 情 勢 について 上 下 双 方 向 のリスク 要 因 を 点 検 し 必 要 な 調 整 を 行 う 以 上 11 詳 しくは 金 融 システムレポート ( 日 本 銀 行 2015 年 4 月 )を 参 照 8
( 参 考 ) 2014 年 度 1 月 時 点 の 見 通 し 2015 年 度 1 月 時 点 の 見 通 し 2016 年 度 1 月 時 点 の 見 通 し 2017 年 度 2014~2017 年 度 の 政 策 委 員 の 大 勢 見 通 し 対 前 年 度 比 % なお < > 内 は 政 策 委 員 見 通 しの 中 央 値 消 費 者 物 価 指 数 消 費 税 率 引 き 上 げの 実 質 GDP ( 除 く 生 鮮 食 品 ) 影 響 を 除 くケース -1.0~-0.8 +2.8 +0.8 <-0.9> -0.6~-0.4 <-0.5> +1.5~+2.1 <+2.0> +1.8~+2.3 <+2.1> +1.4~+1.8 <+1.5> +1.5~+1.7 <+1.6> +0.1~+0.5 <+0.2> +2.9~+3.2 <+2.9> +2.7~+3.4 <+3.2> +0.2~+1.2 <+0.8> +0.4~+1.3 <+1.0> +1.2~+2.2 <+2.0> +1.5~+2.3 <+2.2> +0.9~+1.2 <+0.9> +1.4~+2.1 <+1.9> ( 注 1) 大 勢 見 通 し は 各 政 策 委 員 が 最 も 蓋 然 性 の 高 いと 考 える 見 通 しの 数 値 について 最 大 値 と 最 小 値 を1 個 ずつ 除 いて 幅 で 示 したものであり その 幅 は 予 測 誤 差 などを 踏 まえた 見 通 しの 上 限 下 限 を 意 味 しない ( 注 2) 各 政 策 委 員 は 既 に 決 定 した 政 策 を 前 提 として また 先 行 きの 政 策 運 営 については 市 場 の 織 り 込 みを 参 考 にして 上 記 の 見 通 しを 作 成 している ( 注 3) 原 油 価 格 (ドバイ)については 1バレル 55 ドルを 出 発 点 に 見 通 し 期 間 の 終 盤 にかけて 70 ドル 台 前 半 に 緩 やかに 上 昇 していくと 想 定 している その 場 合 の 消 費 者 物 価 ( 除 く 生 鮮 食 品 )の 前 年 比 に 対 するエネルギー 価 格 の 寄 与 度 は 2015 年 度 で-0.7~-0.8%ポイント 程 度 2016 年 度 で+0.1~+0.2%ポイント 程 度 と 試 算 される また 寄 与 度 は 当 面 マイナス 幅 を 拡 大 した 後 2015 年 度 後 半 にはマイナス 幅 縮 小 に 転 じ 2016 年 度 前 半 には 概 ねゼロになる と 試 算 される ( 注 4) 今 回 の 見 通 しでは 消 費 税 率 について 2017 年 4 月 に 10%に 引 き 上 げられることを 前 提 と しているが 各 政 策 委 員 は 消 費 税 率 引 き 上 げの 直 接 的 な 影 響 を 除 いた 消 費 者 物 価 の 見 通 し 計 数 を 作 成 している 消 費 税 率 引 き 上 げの 直 接 的 な 影 響 を 含 む 2017 年 度 の 消 費 者 物 価 の 見 通 しは 税 率 引 き 上 げが 現 行 の 課 税 品 目 すべてにフル 転 嫁 されることを 前 提 に 物 価 の 押 し 上 げ 寄 与 を 機 械 的 に 計 算 したうえで(+1.3%ポイント) これを 政 策 委 員 の 見 通 し 計 数 に 足 し 上 げたものである ( 注 5)2014 年 度 の 消 費 者 物 価 指 数 ( 除 く 生 鮮 食 品 )については 3 月 の 前 年 比 が2 月 と 同 じであ ると 仮 定 して 計 算 しているほか 消 費 税 率 引 き 上 げの 物 価 の 押 し 上 げ 寄 与 は 上 記 同 様 に 機 械 的 に 計 算 している(+2.0%ポイント) ( 注 6) 政 策 委 員 全 員 の 見 通 しの 幅 は 下 表 の 通 りである 実 質 GDP 消 費 者 物 価 指 数 ( 除 く 生 鮮 食 品 ) 対 前 年 度 比 % 消 費 税 率 引 き 上 げの 影 響 を 除 くケース 2014 年 度 -1.0~-0.3 +2.8 +0.8 1 月 時 点 の 見 通 し -0.7~-0.3 +2.9~+3.3 +0.9~+1.3 2015 年 度 +0.8~+2.2 +0.2~+1.3 1 月 時 点 の 見 通 し +1.3~+2.3 +0.3~+1.4 2016 年 度 +0.8~+1.8 +0.8~+2.3 1 月 時 点 の 見 通 し +0.7~+2.0 +0.9~+2.3 2017 年 度 -0.1~+0.6 +2.0~+3.5 +0.7~+2.2 9
政 策 委 員 の 見 通 し 分 布 チャート (1) 実 質 GDP ( 前 年 比 %) ( 前 年 比 %) 4.5 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 実 績 値 -0.5-1.0-1.5-2.0-2.5-3.0-3.5-4.0 2006 年 度 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 4.5 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0-0.5-1.0-1.5-2.0-2.5-3.0-3.5-4.0 (2) 消 費 者 物 価 指 数 ( 除 く 生 鮮 食 品 ) ( 前 年 比 %) 3.0 ( 前 年 比 %) 3.0 2.5 2.5 2.0 2.0 1.5 1.5 1.0 1.0 0.5 0.0 実 績 値 0.5 0.0-0.5-0.5-1.0-1.0-1.5-1.5-2.0 2006 年 度 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 ( 注 1) 上 記 の 見 通 し 分 布 は 各 政 策 委 員 の 示 した 確 率 分 布 の 集 計 値 (リスク バランス チャ ート)について 1 上 位 10%と 下 位 10%を 控 除 したうえで 2 下 記 の 分 類 に 従 って 色 分 けしたもの なお リスク バランス チャートの 作 成 手 順 については 2008 年 4 月 の 経 済 物 価 情 勢 の 展 望 BOXを 参 照 上 位 40%~ 下 位 40% 上 位 30%~40% 下 位 30%~40% 上 位 20%~30% 下 位 20%~30% 上 位 10%~20% 下 位 10%~20% ( 注 2) は 政 策 委 員 の 見 通 しの 中 央 値 を 表 す ただし 2014 年 度 の 消 費 者 物 価 指 数 ( 除 く 生 鮮 食 品 )は 3 月 の 前 年 比 が2 月 と 同 じであると 仮 定 して 計 算 した 値 ( 注 3) 棒 グラフ 内 の 縦 線 は 政 策 委 員 の 大 勢 見 通 しを 表 す ( 注 4) 消 費 者 物 価 指 数 ( 除 く 生 鮮 食 品 )は 消 費 税 率 引 き 上 げの 直 接 的 な 影 響 を 除 いたベース -2.0 10