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各 国 の 年 金 制 度 国 名 デンマーク 公 的 年 金 の 体 系 被 保 険 者 国 民 年 金 : 全 国 民 ( 一 般 税 によるユニバーサル 制 度 ) ( 強 制 任 意 非 加 入 ) 労 働 市 場 付 加 年 金 (ATP): 被 用 者 ( 週 9 時 間 以 上 勤 務 公 務 員 を 含 む), 失 業 保 険 などの 手 当 受 給 者, 自 営 業 者 保 険 料 率 国 民 年 金 : 一 般 税 により 賄 われる ATP : 勤 務 時 間 により,3 段 階 の 保 険 料 2009 年 現 在,フルタイム( 月 117 時 間 以 上 )で 月 3,240DKK( 約 5.3 万 円 ) このうち1/3を 被 用 者,2/3を 雇 用 主 が 負 担 する 支 給 開 始 年 齢 65 歳 (2024 年 から27 年 にかけて 段 階 的 に67 歳 に 引 き 上 げ その 後 は 平 均 余 命 の 伸 び に 連 動 して 支 給 開 始 年 齢 を 引 き 上 げる) 基 本 受 給 額 国 民 年 金 (2009 年 ) 基 礎 給 付 ( 満 額 ):63,408DKK( 約 103 万 円 ) 加 算 給 付 ( 満 額 ):63,468DKK( 約 103.5 万 円 )( 単 身 者 ) ATP: 拠 出 額 と 運 用 収 入 による 現 在 は 最 大 で 約 2.3 万 DKK( 約 37.5 万 円 )の 年 金 額 で 基 礎 給 付 の36% 程 度 の 水 準 給 付 の 構 造 国 民 年 金 は, 居 住 年 数 による 定 額 給 付 40 年 居 住 で 満 額 給 付 所 得 制 限 付 きで, 加 算 給 付 は 年 間 の 国 民 年 金 以 外 の 総 収 入 が 一 定 額 ( 単 身 者 59,100DKK, 約 96 万 円 ) を 超 えると 超 過 分 の30%を 減 額, 基 礎 給 付 は 本 人 の 稼 働 所 得 が267,800DKK( 約 436 万 円 )を 超 えると 超 過 分 の30%を 減 額 ATPは 拠 出 額 と 運 用 収 入 ( 合 同 運 用 )によって 年 金 額 が 決 まる 拠 出 建 て 年 金 所 得 再 分 配 国 民 年 金 は 一 般 税 による 定 額 給 付 公 的 年 金 の 財 政 方 式 国 民 年 金 は 賦 課 方 式 ATPは 積 立 方 式 ( 拠 出 建 て) 国 庫 負 担 国 民 年 金 は100% 税 で 賄 われる ATPには 国 からの 資 金 はなし 年 金 制 度 における 最 低 保 障 ユニバーサル 制 度 であるため, 最 低 保 障 はなし 無 年 金 者 への 措 置 ユニバーサル 制 度 であるため, 基 本 的 には 無 年 金 者 は 想 定 されない 公 的 年 金 と 私 的 年 金 個 別 企 業 による 設 立 もあるが, 多 くの 場 合, 労 使 による 労 働 協 約 で 定 められた 制 度 ( 労 働 市 場 年 金 )が 設 けられている その 協 約 でカバーされる 被 用 者 は 強 制 加 入 カバー 率 はフルタイム 被 用 者 の90%にのぼる 国 民 への 個 人 年 金 情 報 の 提 - 供 47

各 国 の 年 金 制 度 (デンマーク) デンマークの 年 金 制 度 富 永 洋 子 ( 野 村 総 合 研 究 所 契 約 コンサルタント) 1. 制 度 の 特 色 デンマークは 人 口 553 万 人 の 国 である 年 金 制 度 は3 階 建 ての 構 成 となっている 1 階 部 分 には 通 常, 公 的 年 金 である 国 民 年 金 と, 被 用 者 を 中 心 に 強 制 適 用 される 労 働 市 場 付 加 年 金 (ATP)が 含 まれる 国 民 年 金 は, 居 住 年 数 を 満 たせば 全 ての 国 民 に 定 額 の 年 金 が 支 給 されるユニバ ーサルな 年 金 で, 財 源 は 全 て 税 金 である 条 件 を 満 たせば 外 国 人 にも 支 給 される ATPは, 基 本 的 に 被 用 者 と 雇 用 主 からの 拠 出 金 で 賄 われる 積 立 型 の 年 金 制 度 である 強 制 適 用 され, 拠 出 額 は 所 得 ではな く 勤 務 時 間 によって 決 まることから 1 階 部 分 とされ ることが 多 い 2 階 部 分 は, 労 働 市 場 年 金 などと 呼 ばれる 職 域 年 金 である 民 間 の 場 合, 個 別 の 企 業 年 金 も 存 在 する が, 産 業 別 などの 企 業 団 体 と 労 働 組 合 が 締 結 する 労 働 協 約 で 年 金 についても 決 定 されることが 多 い そ の 協 約 のもとで 働 く 被 用 者 にはすべて 同 じ 制 度 が 適 用 される 3 階 部 分 は 個 人 年 金 である 公 的 年 金 が 定 額 であ るため, 所 得 がある 程 度 以 上 の 層 にとって 従 前 所 得 の 一 定 比 率 を 維 持 する 役 割 は 職 域 年 金 や 個 人 年 金 が 果 たしている 2. 沿 革 デンマークの 公 的 年 金 制 度 創 設 は1891 年 に 遡 ると 言 われる ドイツで 社 会 保 険 方 式 による 年 金 制 度 が 導 入 された2 年 後 である 明 示 的 に 年 金 と 位 置 づけられていたわけではないようだが,60 歳 以 上 の 困 窮 している 高 齢 者 を 対 象 に, 税 を 財 源 として 現 金 給 付 を 行 い, 給 付 を 受 けても 選 挙 権 などの 市 民 権 を 制 限 されることがなくなったことから,この 年 が 年 金 制 度 の 始 まりとされている デンマークでは 当 初 から,ドイツのような 被 用 者 を 対 象 とした 社 会 保 険 方 式 の 制 度 ではなく, 国 民 全 体 を 対 象 とした 税 によ る 制 度 が 採 用 された 1922 年 には, 受 給 資 格 や 給 付 水 準 の 決 定 に, 明 確 なルールが 設 けられている 1956 年,これまでの 制 度 に 替 えて 国 民 年 金 制 度 が 設 けられ,67 歳 以 上 のすべての 人 に 年 金 を 受 け 取 る 資 格 が 与 えられた 1964 年 には, 国 民 年 金 の 給 付 水 準 が 引 上 げられ, 全 ての 国 民 に 定 額 の 年 金 が 支 給 さ れることになった( 完 全 実 施 は1970 年 ) また, 所 得 制 限 付 きの 加 算 給 付 も 設 けられた( 加 算 給 付 は 少 額 だったが, 大 多 数 の 人 が 受 給 できた) さらに, 被 用 者 を 対 象 とするATPが 同 じ 年 に 創 設 された こ の 時 点 で1 階 部 分 については, 現 在 の 制 度 の 原 型 が 完 成 したと 言 うことができる 1998 年 には 所 得 の1%を 強 制 的 に 拠 出 させ 将 来 有 期 年 金 を 給 付 する 個 人 口 座 型 の 特 別 積 立 年 金 (SP) の 制 度 が 設 けられた 2004 年 からは 個 人 消 費 促 進 の ため 拠 出 が 停 止 されていたが, 今 回 の 金 融 危 機 によ り2009 年 に 口 座 からの 引 き 出 しが 認 められ,2010 年 4 月 末 で 制 度 は 廃 止 されることになった 国 民 年 金 の 支 給 開 始 年 齢 は 創 設 以 来 67 歳 とされて いたが,1999 年 の 法 改 正 で65 歳 に 引 き 下 げられた (2004 年 から 実 施 ) しかし, 今 後 の 高 齢 化 の 進 行 に 備 え,2006 年 の 与 野 党 合 意 による 法 改 正 で,2024 ~27 年 にかけて 国 民 年 金 の 支 給 開 始 年 齢 は 再 び67 歳 に 引 上 げられることになった また2030 年 から 支 給 開 始 年 齢 を 平 均 余 命 に 連 動 させる 仕 組 みも 導 入 され る これは2010 年 以 降 の 高 齢 化 率 上 昇 に 向 け, 国 家 財 政 を 安 定 化 させるとともに, 逼 迫 が 見 込 まれる 労 働 力 の 確 保 を 狙 ったものである 3. 制 度 体 系 の 概 要 デンマーク 年 金 制 度 の1 階 部 分 を 構 成 するのは, 国 民 年 金 とATPである 現 在,まだ 職 域 年 金 制 度 の 歴 史 が 浅 いこともあり, 約 6 割 の 年 金 受 給 者 にと って 国 民 年 金 とATPが 所 得 のすべてであると 言 わ れる このうち 純 粋 に 公 的 年 金 といえるのが 国 民 年 金 で ある 受 給 資 格 は,デンマーク 国 籍 で,15 歳 から65 歳 までの 間 に 少 なくとも3 年 間 デンマークに 居 住 し ていること( 居 住 には 海 外 赴 任 や 海 外 留 学 も 含 まれる)だが, 外 国 籍 の 人 にも 定 住 年 数 など 特 定 の 要 件 を 満 たせば 支 給 される 支 給 開 始 年 齢 は65 歳 で, 40 年 間 居 住 で 満 額 を 受 け 取 ることができる 一 方,ATPは, 政 府 から 独 立 した 法 定 機 関 であ るATPによって 運 営 される 積 立 型 の 拠 出 建 て 制 度 である 16 歳 から64 歳 までで 週 9 時 間 以 上 働 く 被 用 57

年 金 と 経 済 Vol. 29 No. 2 者 に 強 制 適 用 される 適 用 される 被 用 者 とその 雇 用 主 はATPに 拠 出 金 を 支 払 わなければならない( 被 用 者 1/3, 雇 用 主 2/3) 拠 出 は 所 得 ではなく 勤 務 時 間 に 応 じた 金 額 となっている 失 業 手 当 や 疾 病 手 当 などの 給 付 を 受 けている 人 も 加 入 義 務 がある 自 営 業 者 は 任 意 加 入 である 積 み 立 てられた 拠 出 金 を ATPがまとめて 運 用 し,65 歳 から 拠 出 額 に 応 じた 年 金 額 を 終 身 年 金 として 給 付 する 仕 組 みであり, 米 国 401(k)プランのような 自 分 で 運 用 指 図 する 個 人 口 座 型 のプランではない このように,デンマークの1 階 部 分 には 所 得 比 例 の 要 素 はない 結 果 的 に 低 所 得 者 には 手 厚 い 制 度 と なっているが,ある 程 度 所 得 の 高 い 人 にとっては 従 前 所 得 代 替 率 が 低 くなる 4. 給 付 算 定 方 式,スライド 方 式 国 民 年 金 は,15 歳 から65 歳 までの 居 住 年 数 で 年 金 額 が 決 まり, 満 額 受 給 のためには40 年 間 居 住 してい ることが 必 要 である それに 満 たない 場 合 は 年 数 に 応 じて 按 分 される 国 民 年 金 には 基 礎 給 付 と 加 算 給 付 があり,2009 年 の 年 間 基 礎 給 付 額 は 約 6.3 万 デン マーククローネ(DKK)( 約 103 万 円 ), 単 身 者 の 加 算 給 付 は 基 礎 給 付 をやや 上 回 る6.35 万 DKK( 約 103 万 円 )である 夫 婦 の 場 合 は 一 人 当 たりの 加 算 給 付 が 約 半 分 になる 国 民 年 金 は 所 得 に 応 じて 減 額 される 仕 組 みとなっ ている 加 算 給 付 は, 国 民 年 金 以 外 の 総 収 入 が 一 定 額 ( 単 身 者 の 場 合 59,100DKK, 約 96 万 円 )を 超 えると, 超 過 分 の30%が 減 額 される つまり ATPや 職 域 年 金, 個 人 年 金 からの 給 付 が 多 くなる と 減 額 されるわけである さらに, 受 給 者 本 人 の 稼 働 所 得 が 一 定 額 (267,800DKK, 約 436 万 円 )を 超 えると 基 礎 給 付 も 超 過 分 の30%が 減 額 される し たがって 稼 働 所 得 が 約 780 万 円 を 超 えると 国 民 年 金 は 支 給 されないことになる 国 民 年 金 は 被 用 者 賃 金 の 伸 びによって 毎 年 改 定 さ れる ただし, 賃 金 上 昇 率 が2.0%を 超 えると 改 定 率 が 抑 制 される 抑 制 幅 は 最 大 0.3%となっている 抑 制 した 分 はプールされ, 低 所 得 者 層 への 年 金 以 外 の 手 当 の 改 善 等 に 当 てられる ATPは, 退 職 時 ( 通 常 65 歳 )までに 積 み 立 てら れた 拠 出 総 額 と 運 用 収 入 の 合 計 額 をもとに, 退 職 時 点 での 平 均 余 命 から 年 金 額 が 算 出 される 支 給 方 法 は 基 本 的 に 終 身 年 金 だが, 年 金 額 が 非 常 に 少 ない( 年 額 2 万 円 程 度 ) 場 合 は, 一 時 金 で 支 給 される フル タイムでATP 創 設 時 から 働 いていた 人 が 現 在 65 歳 で 退 職 すると, 約 2.3 万 DKK( 約 37.5 万 円 )の 年 金 を 受 けられる これは 国 民 年 金 基 礎 給 付 の36% 程 度 で,ATPは 補 足 的 な 給 付 と 位 置 づけられる 5. 負 担, 財 源 国 民 年 金 はすべて 税 で 賄 われている ATPは, 加 入 者 と 雇 用 主 による 拠 出 ( 被 用 者 1/3, 雇 用 主 2/3)で 全 面 的 に 賄 われ, 国 からの 補 助 はない 2010 年 からは65 歳 以 上 でATP 年 金 を 受 け 取 ってい ても, 雇 用 されていれば 拠 出 義 務 が 生 じている 拠 出 額 は 勤 務 時 間 に 応 じ 3 段 階 になっている 月 給 ベ ースの 被 用 者 の 場 合, 月 117 時 間 以 上 だとフル 拠 出 で3,240DKK/ 月 ( 約 5.3 万 円 )となり,これを 被 用 者 と 雇 用 主 で1:2の 割 合 で 負 担 する 78 時 間 以 上 117 時 間 未 満 だとフルの2/3,39 時 間 以 上 78 時 間 未 満 だとフルの1/3,39 時 間 未 満 は 拠 出 なしである 月 給 か 週 給 かで 拠 出 額 は 若 干 異 なる また, 民 間 セ クターか 公 的 セクターかでも 違 ってくる 拠 出 額 は 平 均 賃 金 の1% 程 度 となるように 労 働 協 約 で 改 訂 さ れることになっている ATPや, 民 間 の 年 金 ファンド 生 命 保 険 会 社 の 年 金 商 品 の 運 用 益 には15%の 課 税 が 行 われる なお, デンマークでは 公 的 私 的 にかかわらず, 給 付 され た 年 金 は 一 般 の 課 税 所 得 となる( 一 時 金 給 付 は40% 課 税 ) また,ATPや 私 的 年 金 への 拠 出 金 は 所 得 控 除 される 6. 財 政 方 式, 積 立 金 の 管 理 運 用 国 民 年 金 は 税 を 財 源 とする 賦 課 方 式 である ATP 年 金 は 積 立 方 式 で, 拠 出 金 と 運 用 収 益 によ り 年 金 を 給 付 する 拠 出 建 ての 制 度 である 積 立 金 の 運 用 は 運 営 機 関 であるATPがまとめて 行 っている 毎 年 保 証 利 率 が 設 定 され, 運 用 リターンが 高 ければ ボーナス 配 当 が 行 われる 仕 組 みである ATPの 投 資 資 産 は2009 年 末 で 約 4,200 億 DKK( 約 6.8 兆 円 )である ATPは, 株 式 市 場 の 動 向 にポー トフォリオのリターンが 大 きく 左 右 されないよう, 頑 健 なリスク 管 理 のもと 先 進 的 な 運 用 を 行 っている 58

各 国 の 年 金 制 度 (デンマーク) ことで 知 られる 運 用 コストも 極 めて 低 い 7. 制 度 の 企 画 運 営 体 制 国 民 年 金 制 度 の 管 轄 は 社 会 省 (Ministry of Social Affairs)であるが, 事 務 管 理 は 各 コムーネ( 市 ) によって 行 われる ATPについては, 前 述 の 通 り, 給 付 事 務 から 運 用 まで, 全 て 独 立 の 法 定 機 関 であるATPが 行 って いる(SPの 運 営 管 理 もATPが 行 っていた) 8. 最 近 の 論 議 や 検 討 の 動 向 課 題 1) 高 齢 化 の 進 行 と 早 期 退 職 の 浸 透 デンマークで65 歳 以 上 の 人 が 全 人 口 に 占 める 比 率 は,1990 年 と2008 年 を 比 較 しても,どちらも15.5% 程 度 で, 安 定 的 に 推 移 してきた しかし 人 口 動 態 予 測 によると2020 年 には20.5%,2030 年 には24%と, 今 後 急 激 に 高 齢 化 が 進 行 すると 見 られている 国 民 年 金 をはじめ, 医 療 や 教 育 なども 税 金 で 賄 っている デンマークでは, 働 いて 税 金 を 払 ってくれる 現 役 世 代 の 減 少 は, 国 家 財 政 の 健 全 性 や 社 会 保 障 制 度 の 維 持 という 点 で 重 大 な 問 題 となる デンマークは 労 働 参 加 率 が 男 女 とも 極 めて 高 く 全 体 で80% 近 くに 達 しており,そのため 参 加 率 を 引 上 げて 労 働 力 の 増 強 を 図 ることはなかなか 困 難 である とみられる ただ, 公 的 年 金 受 給 年 齢 前 の60~64 歳 になると 就 労 率 が 大 きく 下 がっており,これまでも 問 題 視 されてきた この 背 景 には 手 厚 い 早 期 退 職 手 当 制 度 の 存 在 がある 早 期 退 職 手 当 は 失 業 保 険 に 基 づく 制 度 で, 保 険 料 を 支 払 っていた 人 は60 歳 から 国 民 年 金 の 受 給 開 始 ま で 手 当 を 受 け 取 ることができる( 制 度 には 国 から 多 くの 補 助 金 が 出 ている) 従 前 所 得 によっては 国 民 年 金 より 高 い 額 を 受 け 取 ることもでき,62 歳 で4 割 弱,63~64 歳 では 半 数 が 早 期 退 職 年 金 を 利 用 して 退 職 している 早 期 退 職 年 金 の 受 給 者 を 減 らし,なる べく 長 く 働 き 続 けてもらうことは, 財 政 面 からも 労 働 力 供 給 の 面 からも 大 きな 意 味 がある 2)2006 年 の 改 革 - 支 給 開 始 年 齢 の 引 き 上 げ 上 述 した 高 齢 化 の 問 題 に 対 処 するため,2006 年 6 月, 政 府 与 党 と 野 党 は 年 金 制 度 等 の 改 正 を 行 うこと で 合 意 に 達 した(The Welfare Agreement) その 大 きな 柱 は 国 民 年 金 と 早 期 退 職 手 当 の 支 給 開 始 年 齢 の 引 き 上 げである 国 民 年 金 の 支 給 開 始 年 齢 は2024 年 から2027 年 にか けて, 現 在 の65 歳 から 段 階 的 に67 歳 に 引 き 上 げられ る 早 期 退 職 手 当 も2019 年 から2022 年 にかけて2 歳 引 き 上 げられ62 歳 からの 受 給 開 始 となる( 受 給 期 間 は 最 大 5 年 間 で 変 わらず) さらに,この 後 は 支 給 開 始 年 齢 が 平 均 余 命 の 伸 び に 連 動 して 引 き 上 げられることも 定 められた 支 給 開 始 年 齢 を 変 更 するかどうかは5 年 ごとに 議 会 によ って 決 められる 国 民 年 金 の 場 合, 具 体 的 には, 支 給 開 始 年 齢 を 60 歳 + 前 年 2 年 間 の 死 亡 率 をベース にした60 歳 の 平 均 余 命 +バッファとして0.6 年 - 国 民 年 金 の 想 定 受 給 期 間 14.5 年 として,0.5 歳 きざみで 算 出 される( 余 命 が 伸 びなければ, 年 齢 を 据 え 置 き) 14.5 年 というのは,60 歳 の 人 の 平 均 余 命 が2004-05 年 と 同 じであった 場 合 の 年 金 受 給 期 間 であり, 将 来 にわたって 受 給 期 間 をこの14.5 年 に 固 定 しようとするものである 早 期 退 職 手 当 ではこれ より5 歳 下 の 年 齢 が 支 給 開 始 年 齢 となる 最 初 の 支 給 開 始 年 齢 変 更 の 決 定 は2015 年 に 行 われ ることになっている 国 民 年 金 では 予 告 期 間 が15 年 ( 早 期 退 職 は10 年 )となっているため,ここで 引 き 上 げが 決 定 されると 実 施 は2030 年 から( 早 期 退 職 は 2025 年 から)になる 今 回 の 改 革 は, 人 々に 長 く 働 き 続 けてもらうと 同 時 に, 高 齢 化 による 年 金 給 付 総 額 の 増 加 を 抑 えるこ とを 目 指 している また,こうした 公 的 年 金 制 度 の 改 革 とは 別 に, 職 域 年 金 や 個 人 年 金 など 積 立 型 年 金 が 成 長 することで, 運 用 益 からの 課 税 収 入 の 増 加 や, 積 立 型 年 金 からの 給 付 が 増 えることによる 国 民 年 金 ( 加 算 給 付 )の 給 付 減 額 対 象 者 の 増 加 が 見 込 まれ,これにより 全 体 として 高 齢 化 が 財 政 に 与 える 影 響 を 緩 和 できるのではないかと 見 られている 9. 職 域 年 金 デンマークにおける 職 域 年 金 は, 個 別 企 業 によっ て 運 営 される 基 金 もあるが, 労 働 協 約 により 産 業 別 等 で 運 営 されるものがほとんどである 協 約 の 範 囲 内 にある 被 用 者 は 強 制 加 入 となるため,カバー 率 は 非 常 に 高 く,フルタイム 従 業 員 の90%が 加 入 してい る 制 度 は 積 立 型 の 拠 出 建 て 制 度 で, 保 険 会 社 に 運 営 が 委 託 されている 場 合 が 多 い 合 同 運 用 され, 退 59

年 金 と 経 済 Vol. 29 No. 2 職 時 の 積 立 額 により 年 金 額 が 決 定 される 拠 出 は 通 常,ATPと 同 様 に, 雇 用 主 が2/3, 加 入 者 が1/3を 支 払 う 2009 年 時 点 では 拠 出 率 が12%と いうのが 典 型 的 だが,これは 各 々の 職 域 年 金 によっ て 異 なる 職 域 年 金 は, 古 くに 設 立 されたものもあるが, 特 に 民 間 では 多 くが1990 年 代 初 めに 設 立 されており, 比 較 的 若 い 制 度 である 拠 出 率 も 設 立 当 初 は1% 程 度 だったが, 段 々と 引 上 げられて10% 以 上 にまで 達 した 公 的 年 金 が 定 額 であるデンマークでは, 所 得 比 例 部 分 を 担 うのは 職 域 年 金 (および 個 人 年 金 )で あり, 今 後 制 度 が 成 熟 するにつれ, 特 に 中 所 得 者 以 上 にとって, 職 域 年 金 は 退 職 後 所 得 の 大 きな 部 分 を 占 めるようになると 予 想 されている (1デンマーククローネ=16.3 円 で 換 算 ) 60