シンセシオロジー 研 究 論 文 人 工 物 工 学 研 究 の 新 しい 展 開 個 のモデリング 社 会 技 術 化 へ 太 田 順 1* 1 西 野 成 昭 2 原 辰 徳 1 藤 田 豊 久 1 2 東 京 大 学 人 工 物 工 学 研 究 センターは 人 工 物 工 学 に 関 する 諸 問 題 を 解 決 するために 設 立 され 現 在 第 Ⅲ 期 に 入 っている 問 題 解 決 シナ リオとして まず 問 題 解 決 を 問 題 設 定 の 側 面 から 扱 う 共 創 的 なアプローチを 採 用 する データ 分 析 法 や 計 算 科 学 シミュレーションを 基 盤 とし 実 験 経 済 学 実 験 心 理 学 的 手 法 を 組 み 入 れたモデル 化 を 指 向 する 個 の 認 識 過 程 認 識 に 基 づく 個 の 活 動 さらには 個 の 価 値 形 成 という3つの 側 面 に 注 目 したモデル 化 を 行 う この 提 案 は マルチステークホルダーの 存 在 による 社 会 技 術 的 な 側 面 と 個 のモ デリングという 人 間 的 な 側 面 の 両 者 を 包 含 しており 製 品 サービスシステムのモデル 化 等 の 新 しい 問 題 設 定 がなされている キーワード: 人 工 物 モデル 化 個 人 社 会 技 術 共 創 New research trends in artifactology - Modeling of individuals and socialization technology - Jun OTA 1 *, Nariaki NISHINO 1,2, Tatsunori HARA 1 and Toyohisa FUJITA 1,2 The aim of Research into Artifacts, Center for Engineering (RACE), the University of Tokyo is to solve problems related to artifactology. The center has entered the third stage. A new approach in the problem-solving process has been proposed in this paper. The scenario for problem solving starts by establishing a problem using the concept of co-creation. Next, models related to artifacts are constructed by integrating the methods used in experimental economics and techniques of experimental psychology into computational science, data analysis, and simulation technology. Modeling of individuals is realized by focusing on three processes: recognition of individuals, activities of individuals based on recognized results, and value construction of individuals. This proposal of RACE includes the sociotechnical viewpoint of multi-stakeholders and the human-centered viewpoint of modeling of individuals. Several new research topics are presented, including novel modeling methodology for product service systems (PSS). Keywords:Artifacts, modelling, individuals, social technology, co-creation 1 はじめに 人 工 物 工 学 が 目 指 すもの 人 工 物 工 学 という 学 問 を 対 象 として 扱 う 東 京 大 学 人 工 物 工 学 研 究 センターが 1992 年 に 設 立 された このセンター の 設 置 目 的 は 人 工 物 工 学 に 関 する 教 育 研 究 を 行 う こ とである 人 工 物 工 学 という 用 語 は 元 東 京 大 学 総 長 吉 川 弘 之 の 人 工 物 工 学 の 提 唱 [1] において 議 論 されている そこでは まず 我 々が 直 面 している 環 境 貧 富 安 全 健 康 等 の 多 くの 困 難 な 問 題 すなわち 現 代 の 邪 悪 なるも の に 共 通 するのは 人 類 の 安 全 と 豊 かさを 求 めてきた 行 為 の 結 果 全 く 予 期 せず 生 じた 点 にある と 述 べている そして 既 存 の 学 問 体 系 は 領 域 性 と 視 点 の 限 定 によって 構 築 されたものであり これらの 問 題 の 解 決 のために 適 用 で きないのはおろか これらの 問 題 を 生 ぜしめた 原 因 となっ ている と 主 張 している そして その 解 決 のためには 人 間 が 創 出 するものすべてを 対 象 とし 領 域 を 否 定 し ど の 視 点 も 取 り 入 れられる 新 たな 学 問 すなわち 従 来 型 の 演 繹 を 基 盤 とする 学 問 ではなく 仮 説 法 則 や 行 為 を 導 出 す るためのアブダクションを 基 盤 とした 学 問 として 人 工 物 工 学 という 学 問 体 系 を 説 明 している この 論 文 では まず 人 工 物 工 学 を 周 辺 学 問 領 域 との 関 係 において 概 観 する そして 人 工 物 工 学 研 究 センターが 提 唱 する 今 後 の 人 工 物 工 学 における 新 しい 課 題 方 向 性 な らびに 研 究 の 方 法 論 を 提 案 する そして 構 築 した 新 しい 方 向 性 方 法 論 に 沿 ってセンターメンバー 間 で 抽 出 した 人 工 物 工 学 に 関 する 具 体 的 課 題 について 述 べる 1 東 京 大 学 人 工 物 工 学 研 究 センター 277-8568 柏 市 柏 の 葉 5-1-5 2 東 京 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 113-8656 文 京 区 本 郷 7-3-1 1. Research into Artifacts, Center for Engineering (RACE), the University of Tokyo 5-1-5 Kashiwanoha, Kashiwa 277-8568, Japan * E-mail: ota@race.u-tokyo.ac.jp, 2. School of Engineering, the University of Tokyo 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku 113-8656, Japan Original manuscript received December 2, 2013, Revisions received May 12, 2014, Accepted July 4, 2014 Synthesiology Vol.7 No.4 pp.211-219(nov. 2014) 211
2 人 工 物 工 学 と 他 の 学 問 領 域 との 関 係 人 工 物 工 学 の 新 たな 課 題 2.1 人 工 物 工 学 の 位 置 付 け 本 節 では 人 工 物 工 学 に 関 連 する 学 問 領 域 を 概 観 する S i mon は システムの 科 学 [2] において 自 然 を 対 象 と しその 解 明 を 試 みる 自 然 科 学 との 対 比 において 人 間 が 作 った 人 工 物 に 関 する 学 問 体 系 構 築 の 試 みを 行 っている そこでは 人 工 物 を 扱 う 学 問 体 系 のカリキュラムを デザ インの 評 価 代 替 案 の 探 索 限 定 合 理 性 等 社 会 をデザイ ンするための 拡 張 という 観 点 から 論 じている 市 川 は 後 向 け 因 果 性 を 前 提 としない 科 学 を 人 工 科 学 と 定 義 してお り [3] その 成 果 が 美 しさと 有 用 さにより 人 間 により 評 価 さ れると 述 べている ギボンズらは 現 代 社 会 における 知 識 生 産 のモードの 変 化 を 探 求 している [4] そこでは 各 々の 学 問 領 域 の 中 で 内 的 論 理 によって 生 み 出 される 従 来 型 の 知 識 をモード 1 と 呼 び( 一 般 的 な 科 学 はモード 1 に 対 応 する) より 社 会 に 開 かれたトランスディシプリナリな 領 域 の 中 で 生 み 出 される 知 識 をモード 2 と 呼 んでいる その 上 でモード 1 とモード 2 の 関 係 について 論 じている また 総 合 工 学 という 学 問 分 野 は 旧 来 の 工 学 には 見 られなかった 工 学 に おける 横 型 分 野 であり あらゆる 工 学 体 系 や 知 識 を 総 動 員 して 設 計 製 造 される 人 工 物 に 関 する 分 野 である [5] と 定 義 されている その 重 要 性 のため 日 本 学 術 会 議 では 第 20 期 (2005 年 )から 総 合 工 学 委 員 会 がスタートしている このように 人 工 物 工 学 的 な 問 題 意 識 は 多 くの 研 究 者 間 に 共 有 されており 対 象 に 依 存 しない 横 型 の 学 問 体 系 の 重 要 性 が 認 識 され 続 けていることが 分 かる 対 象 に 依 存 しない 学 問 領 域 の 中 で 人 工 物 工 学 に 関 連 が 深 いものとして 問 題 解 決 が 存 在 する Smith は 広 義 の 問 題 解 決 を 問 題 の 同 定 定 義 構 造 化 等 から 構 成 さ れる 問 題 設 定 と 診 断 代 替 案 の 生 成 等 から 構 成 される 狭 義 の 問 題 解 決 の 二 つに 分 けて 考 えている [6] 多 くの 場 合 後 者 は 適 切 なモデル 化 と 最 適 化 法 等 により 適 合 解 を 得 ることが 多 い 前 者 はいくつか の 方 法 が 提 案 されてい る [7] が まとめてソフトシステムアプローチ [8] と 呼 ばれる ことが 多 い 代 表 的 な 手 法 がソフトシステム 方 法 論 (Soft Systems Methodology: SSM) [9] で あ る こ こ で は accommodation と 呼 ばれる 複 数 の 問 題 当 事 者 が 他 を 受 け 入 れる 状 況 を 目 指 して 7 つのステージからなるモデルが 提 唱 されているものの 定 性 的 な 議 論 が 多 い 総 合 的 な 問 題 解 決 のためには 両 者 のアプローチの 融 合 が 不 可 欠 であ り さまざまな 試 みがなされている( 例 えば 文 献 [10])が 現 在 確 固 たる 方 法 論 が 確 立 できていない 上 記 の 背 景 を 踏 まえ 人 工 物 工 学 研 究 センターが 取 り 組 んでいる 人 工 物 工 学 の 位 置 付 けを 俯 瞰 したい 日 本 学 術 会 議 新 しい 学 術 体 系 委 員 会 が 2003 年 に 取 りまとめた 対 外 報 告 書 では 人 工 物 工 学 と 関 連 の 深 い 設 計 科 学 につ いて 以 下 の 議 論 がなされている [11][12] あるべきもの の 探 求 を 目 的 とする 知 の 営 みには 広 い 意 味 での 設 計 科 学 という 呼 び 名 がふさわしい 設 計 科 学 は 目 的 や 価 値 を 正 面 から 取 り 込 んだ 新 しい 科 学 でなけ ればならない 設 計 は 人 間 のためのものであるから 設 計 科 学 の 対 象 は 人 工 物 システムである 新 しい 学 術 の 体 系 は 文 と 理 に 共 通 する 秩 序 原 理 という 新 しい 概 念 を 通 して 構 築 される 物 質 界 生 物 界 人 間 界 の 3 つ の 階 層 が そ れ ぞ れ 物 理 科 学 生 命 科 学 人 文 社 会 科 学 に 対 応 する 設 計 科 学 はそれぞれのドメ インに 限 定 された 対 象 を 持 つわけではなく 上 記 3つのド メインのどれにもかかわる 人 工 物 システム を 対 象 とす る 設 計 は 不 変 の 法 則 と 可 変 のプログラムを 組 み 合 わせ ることによって 目 的 を 達 成 し 価 値 を 実 現 する 極 めて 人 間 的 な 行 為 であり 設 計 科 学 はそのための 合 理 的 な 基 盤 を 与 える 人 工 物 システム 科 学 でもある すなわち 人 工 物 工 学 とは 普 遍 的 な 意 味 の 人 工 物 シス テムを 新 しく 作 り 出 す( 設 計 する)ための 学 問 体 系 であり 前 述 した 問 題 解 決 とは 異 なり 人 工 物 を 生 み 出 すことに 重 点 を 置 いていると 言 って 良 い 2.2 人 工 物 工 学 研 究 が 踏 み 出 してきた 領 域 と 新 しい 課 題 人 工 物 工 学 を 扱 う 人 工 物 工 学 研 究 センターがどのような 研 究 を 遂 げてきたかを 以 下 に 述 べる 同 センターは 当 初 設 計 科 学 製 造 科 学 知 能 科 学 の 3 部 門 の 体 制 でⅠ 期 (1992 年 ~ 2002 年 3 月 )がスタートした そこでは 人 工 物 工 学 の 課 題 分 析 とその 一 般 化 ( 研 究 アジェンダの 設 定 ) を 行 い 新 たな 機 能 を 実 現 する 仮 説 と 発 見 の 論 理 構 築 の 基 礎 を 築 き 人 工 物 工 学 教 育 研 究 に 関 するミッションとし て 脱 物 質 化 脱 領 域 化 が 抽 出 された これらは 既 存 のさま ざまな 分 野 を 機 能 性 と 普 遍 性 の 観 点 から 統 一 的 にとらえ 直 すことによって より 発 展 性 のある 新 たな 学 術 分 野 を 構 築 する 理 念 でもある ただⅠ 期 では 課 題 抽 出 が 主 な 成 果 で あり 現 代 の 邪 悪 に 対 処 する 方 法 論 を 構 築 できたとは 言 え なかった そこで Ⅰ 期 の 成 果 の 現 実 問 題 への 適 用 ( 創 出 行 為 の 研 究 )を 目 的 としてⅡ 期 (2002 年 4 月 ~2013 月 3 月 ) がスタートした ミッションを 実 現 する 上 で 攻 究 すべき 4 つ の 分 野 を 提 案 し それぞれを 部 門 とした まず 人 工 物 工 学 における 問 題 や 知 識 表 現 法 としてデジタル 価 値 工 学 を 提 唱 した 次 に 脱 物 質 化 の 方 法 論 として 大 量 生 産 消 費 で はなくリサイクルやメンテナンスを 扱 うライフサイクル 工 学 物 質 の 製 造 ではなく 機 能 の 提 供 という 観 点 から 人 工 物 を 論 212
研究論文 人工物工学研究の新しい展開 太田ほか じるサービス工学 そして個人間の合意形成やそれに伴う 現在 人工物工学研究センターではⅢ期 2013 年 4 月 社会の構築を扱い 脱領域的な観点から上記のライフサイ がスタートしている Ⅱ期での成果 限界を踏まえ Ⅲ期 クル工学とサービス工学を結びつける共創工学を位置づけ では学問対象を人文 社会科学にまで発展させ より包括 [13][14] また 人工物工学にとって重要な概念である価値 的すなわち 対象を物質界から生物界 人間界にまで広げ を扱った価値創成イニシアティブ 住友商事 寄付研究部 た人工物システム科学の学問体系の構築を目指す必要があ 門を 2005 年 12 月から 2010 年 3 月まで継続した Ⅱ期の ると考えた そのために これまでの 4 部門間の融合を深 成果として ライフサイクル工学研究部門では これまで行 め メンバー間の相互作用を促進するという観点ならびに われてきたライフサイクル工学をモニタリング メンテナンス 人工物と人と社会というテーマをインテンシブに扱うため まで拡張した学問体系を確立した サービス工学研究部門 2 部門に再構成した 図 1 に人工物工学に対する人工物工 では物質的機能のみにとらわれないサービスの設計論とそ 学研究センターの取り組みの推移を示す この図は 文献 の産業展開を デジタル価値工学研究部門では知の新たな [15] をベースに議論 作成したものである すなわち より 表現と価値の創出を そして共創工学研究部門では異分野 ミクロな観点から 多様で変動する人への人工物の浸透や や多様な行動主体の共創による問題解決の方法論を求め 相互作用を扱う Human-Artifactology 研究部門 人工物 るとともに 3 つの研究部門を統合する基盤を築いてきた と人との相互作用研究部門 と よりマクロな観点から 寄付研究部門では人間の価値観について扱い そのモデ 多様で変動する社会への人工物の浸透 相互作用を扱う ル化を行った Socio-Artifactology 研究部門 社会の中の人工物工学 研 た Ⅱ期の成果を全体としてとらえると 例えば資源制約や 究部門 からなる体制とした 廃棄を考慮した人工物の設計や大規模複雑シミュレーショ 人工物と人との相互作用研究部門では さまざまな社会 ン基盤の技術等 物質界に重心を置いた設計科学を対象 の問題の解決を目指す中で 人と人工物のかかわりについ とした研究成果を多く出してきたと言える しかしながら構 て研究を行う 第Ⅱ期で得られた価値のモデルとサービス 築した人工物をどのように 多様で変動する人 や 多様 工学研究で得られた知見をベースとして 人に関する重要 で変動する社会 に浸透させるかという観点からの議論は 課題である個のモデリング すなわち人工物の存在により いまだ不十分であり 課題が残されている状態であった 価値観が変動する ダイナミクスまでも考慮した多様な個 のモデリングを目指す 製品サービスシステム設計や人間機 3 人工物工学の新しい方向性 械協調システム設計等の具体的な問題を扱う中で 普遍的 3.1 新しい方向性の提案 観点からの人工物と人とのかかわり方を明らかにしていく 既存 創出 アナリシス 分析 C B シンセシス 蒐集 A 人工物 選択 A 構造化 機能発現 価値創成 人 共創 人工物 サービス C 社会 人間 複雑で動的な 実世界 環境 機能性に優れた人工物が 自然 社会 価値を生むとは限らない 第Ⅱ期 創出行為の研究 複雑で動的な ライフサイクル サービス 実世界 デジタル価値 共創 第Ⅰ期 研究アジェンダ設定 脱物質化 脱領域化 図 1 人工物工学に対する東京大学人工物工学研究センターの取り組みの推移 Synthesiology Vol.7 No.4 2014 213 第Ⅲ期 個の モデリング 創成の社会 技術化
社 会 の 中 の 人 工 物 工 学 研 究 部 門 は さまざまな 社 会 の 問 題 の 解 決 を 目 指 す 中 で 社 会 と 人 工 物 のかかわりについて 研 究 を 行 う 第 Ⅱ 期 で 得 られたライフサイクルシステムの 概 念 共 創 の 概 念 をベースとして 社 会 に 適 用 する 人 工 物 創 成 の 社 会 技 術 化 を 目 指 して 目 的 が 不 明 確 な 問 題 に 対 する 関 係 者 間 の 協 働 による 目 的 確 定 と 解 探 索 とを 組 み 入 れた 人 工 物 システムの 共 創 的 設 計 方 法 論 の 提 案 を 目 指 す [16] ここで 社 会 技 術 とは 自 然 科 学 と 人 文 社 会 科 学 の 複 数 領 域 の 知 見 を 統 合 して 新 しい 社 会 システムを 構 築 していく ための 技 術 [17] を 意 味 する 分 野 として 多 様 性 を 有 する 総 合 工 学 に 属 する 諸 問 題 - 例 えば 複 合 領 域 最 適 設 計 地 球 環 境 問 題 を 扱 う 共 創 技 術 戦 略 -を 扱 う 中 で 社 会 と 人 工 物 のかかわりに 関 する 共 通 構 造 を 明 らかにしていく 上 記 二 部 門 の 連 携 により センター 全 体 の 目 標 を 動 的 に 変 動 す る 個 のモデリングに 基 づく 人 工 物 創 成 の 社 会 技 術 化 と 設 定 し 人 工 物 と 個 社 会 環 境 の 持 続 的 調 和 関 係 の 持 続 的 な 構 築 を 目 指 す 3.2 研 究 の 具 体 的 方 法 論 前 節 で 今 後 は 個 のモデリング 人 工 物 創 成 の 社 会 技 術 化 という 観 点 からアプローチすることを 述 べた ここで は その 具 体 的 な 方 法 論 について 述 べる まず 個 のモデリング について 議 論 する この 問 題 に ついては Ⅱ 期 でも 扱 ったが 個 々の 相 違 のモデル 化 まで の 成 果 が 主 であり その 個 の 変 容 具 合 =ダイナミクスにつ いてはほとんど 扱 っていなかった 実 社 会 の 問 題 において は 行 為 主 体 が 徐 々に 変 容 するのが 通 常 なので この 問 題 は 非 常 に 重 要 である 問 題 解 決 のための 議 論 を 階 層 性 か ら 始 める モデル 化 を 対 象 の 複 雑 さに 着 目 して 人 と 人 工 物 に 対 して 行 う それぞれをモデルとして 記 述 するとお おまかに 図 2 のようになる 身 体 部 位 部 品 等 の 要 素 があっ て 人 や 人 工 物 が 構 成 され それらが 集 まって 集 団 となり 最 終 的 に 社 会 を 構 成 する という 意 味 である 個 々の 四 角 は 二 つ 以 上 の 階 層 から 構 成 されていると 考 えられる それ モデル 化 社 会 集 団 人 工 システム 人 人 工 物 個 の モ デ リ ン グ ぞれの 階 層 でのモデル 化 は 多 く 行 われているが 異 なる 階 層 をつなぐモデル 化 は 一 般 的 に 非 常 に 困 難 である その 理 由 としては 各 々のモデルの 表 現 形 式 が 異 なるということ が 挙 げられる また ある 階 層 のモデルが homogeneous( 均 質 )の 場 合 に それに 隣 接 する 階 層 が heterogeneous( 不 均 質 )となるという 特 徴 を 有 しているという 議 論 がある [18] 階 層 構 造 のモデル 化 についてはすでにいくつかの 手 法 が 提 案 されている [19] ものの 一 般 的 な 知 見 という 観 点 からは 改 善 の 余 地 が 残 されている ここでは 単 純 化 のため あ る 四 角 における 個 はその 最 下 部 で 表 現 されると 考 え それ らが 直 下 の 四 角 の 最 上 位 部 における 均 質 要 素 (おのおの 内 部 状 態 を 有 し その 状 態 量 は 異 なる 値 をとり 得 る) 間 の 相 互 作 用 という 形 式 でモデル 化 する この 際 要 素 の 内 部 状 態 や 相 互 作 用 の 相 違 が 個 の 多 様 性 となり そのダイナミ クスが 個 のダイナミクスとなる 社 会 技 術 に つ い て は す で に 多 くの 研 究 が な さ れ て い る( 例 えば 文 献 [20])が ここでは 問 題 解 決 の 側 面 から 社 会 技 術 化 という 言 葉 をとらえる その 過 程 にはさまざまなも のが 存 在 するが 通 常 は 図 2 で 述 べた 問 題 のモデル 化 を 行 い 導 解 製 造 評 価 保 全 という 段 階 を 踏 んで 物 事 が 進 む( 図 3(a)) ここで 製 造 とは 得 られた 解 を 実 社 会 に 導 入 するという 意 味 であり 実 体 を 作 ることのみに 限 定 せず 広 くとらえている 人 工 物 創 成 も 一 つの 問 題 解 決 過 程 であり 同 様 のプロセスを 踏 むが ここでは 社 会 技 術 化 を 目 指 すということを それらの 前 段 すなわち 問 題 設 定 から 考 えるというようにとらえる( 図 3(b)) これは 前 述 の Smith の 広 い 意 味 での 問 題 解 決 に 対 応 する 良 く 知 ら れていることであるが 人 工 物 を 作 り 出 す 際 には 利 害 関 係 等 が 必 ずしも 一 致 しない 複 数 の 当 事 者 がいる 環 境 すなわ モデル 化 導 解 製 造 評 価 保 全 問 題 設 定 モデル 化 導 解 製 造 評 価 保 全 社 会 技 術 化 身 体 部 位 部 品 (a) 狭 義 の 問 題 解 決 を 重 視 した 設 計 過 程 (b) 社 会 技 術 化 を 含 んだ 設 計 過 程 図 2 モデル 化 の 全 体 像 と 個 のモデリング 図 3 社 会 技 術 化 を 含 んだ 人 工 物 設 計 過 程 214
ちマルチステークホルダー 環 境 を 想 定 する 必 要 があり こ の 構 造 の 問 題 の 定 式 化 ならびに 体 系 化 が 人 工 物 創 成 の 社 会 技 術 化 に 役 立 つものと 考 えている この 問 題 解 決 は 上 田 らが 提 唱 してきたクラスⅢ 問 題 と 深 い 関 係 がある 上 田 によれば 人 工 物 システムの 設 計 の 問 題 は 大 きく3 つのク ラスに 分 けられる [21]-[23] このうち クラスⅢ 問 題 とは 不 完 全 目 的 情 報 問 題 であり 環 境 ばかりでなく 目 的 に 関 す る 情 報 も 観 測 者 には 予 測 できず 問 題 を 完 全 に 記 述 できな い [7] 問 題 と 述 べられている これと 前 段 の 議 論 を 踏 まえて 我 々が 再 解 釈 すると 目 的 や 仕 様 が 曖 昧 な 問 題 を 設 計 者 や 受 給 者 が 協 力 して 目 的 と 仕 様 を 同 時 に 決 定 し 問 題 解 決 するものである となる この 問 題 は 非 常 に 取 り 扱 いが やっかいであり Ⅱ 期 においてはあまり 正 面 から 扱 わなかっ た 問 題 であったが Ⅲ 期 ではいくつかの 実 際 の 社 会 の 問 題 を 解 決 する 上 で この 問 題 ならび 解 法 の 体 系 化 を 目 指 すも のである これらの 問 題 を 含 んだシステムの 解 決 シナリオについて 述 べたい (1)まずは データ 分 析 技 術 やシミュレーション 計 算 科 学 をモデル 化 の 基 盤 として 利 用 する 当 センターのメンバー の 多 くはこれらの 分 野 の 専 門 家 である ここではそれらに 加 えて 比 較 的 少 数 の 行 動 主 体 から 構 成 されるエージェン トの 行 動 原 理 ならびに 相 互 作 用 を 経 済 的 側 面 または 心 理 的 側 面 から 実 験 的 に 導 出 する 実 験 経 済 学 実 験 心 理 学 的 手 法 を 組 み 入 れることを 考 える (2)その 上 で 個 のモデリングをする ここでは 個 をエージェ ントとしてとらえ 個 の 認 識 過 程 認 識 に 基 づく 個 の 活 動 その 活 動 を 生 成 する 基 盤 となる 個 の 価 値 形 成 という 3 つの 側 面 からのモデル 化 を 行 う 上 述 の 相 互 作 用 は 各 側 面 に 対 応 するステップで 表 現 され マルチステークホルダー 同 士 の 相 互 作 用 調 停 が 表 現 できることになる このような モデルを 階 層 ごとにつなぎ 社 会 人 人 工 物 のモデル 化 を 目 指 す (3)(2)で 形 成 されたモデル 化 に 基 づき 問 題 解 決 を 遂 行 する 図 4 は 上 述 の 問 題 解 決 のシナリオの 全 体 像 を 示 し たものである 図 中 左 部 の 手 法 群 を 用 いて 動 的 に 変 動 する 個 のモデル 化 を 行 う それらは 右 側 に 記 述 されている 問 題 解 決 プロセス 全 体 に 貢 献 するが 主 にモデル 化 のフェーズ で 利 用 される ここまででフレームワークの 議 論 ができた 人 工 物 工 学 の 学 問 体 系 化 という 観 点 からは さまざまな 領 域 の 個 々 のアプリケーションを 上 記 のフレームワークに 当 てはめて 記 述 し その 普 遍 性 を 議 論 する 必 要 がある 問 題 設 定 につ いては 社 会 技 術 学 モデル 化 については 機 能 学 導 解 に ついては 構 成 学 製 造 は 製 造 学 評 価 は 評 価 学 そして 保 全 は 保 全 学 という 脱 領 域 型 学 問 体 系 化 を 目 指 す これ は 吉 川 が 提 唱 する 設 計 型 工 学 カリキュラム [24] の 枠 組 みに 沿 ったものである 4 研 究 事 例 と 残 された 課 題 本 章 では 具 体 的 な 研 究 事 例 と 残 された 課 題 を 述 べる 4.1 メンバー 間 の 協 力 による 共 同 研 究 テーマ 設 定 製 品 サービスシステムのモデル 化 を 例 として 製 品 サービスシステムとは 製 品 を 売 るだけではなく 製 品 とサービスの 組 み 合 わせによってユーザーのニーズを 満 たすもの である ここでは 人 工 物 工 学 研 究 センター で 開 発 した 世 界 初 のサービス CAD であるサービスエクス プローラーに 実 験 経 済 学 的 手 法 に 基 づいた 方 法 論 を 組 み 入 れることで サービスを 設 計 するサービス 設 計 者 運 用 するサービス 実 務 者 享 受 するサービス 受 給 者 の 相 互 作 用 のモデルを 構 築 する ここではまず 実 験 経 済 学 的 手 法 に 基 づく 方 法 論 の 一 般 的 な 考 え 方 を 説 明 し 製 品 サービスシ ステムへの 応 用 について 述 べた 後 で それを 当 該 テーマに 適 用 する 方 法 論 について 述 べる 4.1.1 実 験 経 済 学 的 手 法 の 製 品 サービスシステムへの 適 用 実 験 経 済 学 では 統 制 された 社 会 経 済 システムを 図 5 の ような 実 験 室 環 境 に 構 築 し 実 際 の 人 間 を 被 験 者 として 問 題 設 定 実 験 経 済 学 実 験 心 理 学 モデル 化 導 解 個 のモデル 製 造 個 の 認 識 個 の 活 動 個 の 価 値 生 成 評 価 データ 分 析 技 術 シミュレー ション 計 算 科 学 保 全 図 4 問 題 解 決 のためのシナリオ 図 5 実 際 の 経 済 実 験 室 215
そこでの 振 る 舞 いを 観 察 分 析 するものである 特 に 価 値 誘 発 理 論 [25] に 基 づき 実 験 中 で 得 られた 得 点 に 応 じて 報 酬 ( 主 として 国 内 通 貨 を 用 いる)を 与 えることにより 被 験 者 の 選 好 を 統 制 している 点 に 特 徴 がある すなわち 実 験 者 が 定 める 効 用 関 数 を 被 験 者 に 誘 発 するということで あり 効 用 さえも 統 制 した 仮 想 的 な 社 会 システム 内 での 振 る 舞 いを 観 察 し 各 主 体 効 用 の 変 化 や 全 体 の 社 会 的 余 剰 を 見 ることで 価 値 として 明 示 的 に 取 り 扱 うことが 可 能 とな る この 方 法 によって 2 章 で 述 べた 個 の 価 値 生 成 過 程 のモデル 化 が 可 能 となる 被 験 者 実 験 の 手 法 自 体 はこ れまでの 実 験 経 済 学 の 枠 組 みと 同 じであるが 実 際 の 人 間 の 行 動 として 得 られた 結 果 から 個 の 行 動 主 体 (エージェ ント)レベルから 価 値 生 成 過 程 のモデルへ 展 開 するところ に 新 しさがある このためには 実 験 を 行 うためのフレー ムワーク そこで の 行 動 様 式 相 互 作 用 等 を 事 前 に 熟 慮 し 慎 重 に 計 画 する 必 要 がある この 点 についてはサービスエ クスプローラーとの 融 合 によって 初 めて 遂 行 可 能 になる エージェント 単 体 の 時 には 合 理 性 に 基 づき 活 動 をするので モデル 化 しやすいが マルチエージェント 系 の 場 合 には 各 エージェントの 価 値 の 相 互 依 存 関 係 により 各 エージェン トがどう 行 動 するかは 本 質 的 に 難 しい 問 題 である ナッシュ 均 衡 等 の 静 的 な 均 衡 状 態 に 関 する 議 論 はこれまでにも 非 常 に 多 くの 研 究 がなされているが それを 取 り 巻 く 複 雑 な ダイナミクスを 含 むと その 詳 細 については 十 分 に 分 かって いるとは 言 い 難 い 特 に 価 値 の 生 成 という 観 点 からは ほ とんど 良 く 分 かっていない 実 験 経 済 学 を 基 軸 とする 手 法 は その 部 分 のモデル 化 に 貢 献 することができる 以 上 のような 方 法 を 用 いることで 設 計 された 製 品 サー ビスシステムが 実 験 室 の 仮 想 社 会 においてどのように 機 能 するかを 実 社 会 に 適 用 する 前 に 経 済 実 験 という 方 法 で 検 証 することができる 機 能 性 にすぐれた 製 品 サービスシス テムであったとしても ビジネス 環 境 あるいは 消 費 者 の 利 用 局 面 において 十 分 な 価 値 を 見 いだせないことが 経 済 実 験 によって 明 らかになれば 製 品 サービスシステムの 構 造 に ついて 再 設 計 するか あるいは 高 い 価 値 を 生 み 出 すよう な 社 会 システムの 構 造 すなわち 制 度 (メカニズム)として の 構 造 を 変 化 させる 必 要 があることがわかる このように 新 しい 人 工 物 設 計 論 への 展 開 が 可 能 となる 4.1.2 製 品 サービスシステムのモデル 化 製 品 サービスシステムの 設 計 とは 製 品 という 主 たる 人 工 物 単 体 の 設 計 ではなく 製 品 およびサービスの 双 方 による 機 能 創 出 とその 伝 達 方 法 を 設 計 することである それが 故 に 人 や 社 会 との 相 互 作 用 までも 同 時 に 考 慮 した 総 合 的 な システム 設 計 が 必 然 的 に 求 められる そこでは 競 合 商 品 や 他 の 消 費 者 等 社 会 に 存 在 するさまざまな 相 互 作 用 によっ て 変 化 する 限 定 合 理 的 な 受 給 者 の 購 買 利 用 および 参 加 行 動 のメカニズムを 包 含 した 個 のモデリングが 肝 要 で あり これらに 基 づいた 製 品 サービスシステムの 逐 次 作 成 修 正 が 有 効 と 思 われる スマートハウスを 例 にした 本 共 同 テーマの 構 想 を 図 6 に 示 す スマートハウスは 住 宅 電 化 製 品 設 備 機 器 とい う 物 理 的 な 人 工 物 を 中 心 に 構 成 されるが エネルギーの 需 給 により 表 出 する 利 用 を 介 して 生 活 者 のニーズに 応 じたさ まざまなサービス 提 供 の 可 能 性 が 考 えられる 事 例 である 本 構 想 ではまず サービスエクスプローラーを 用 いて 人 工 物 を 中 心 に 据 えた 受 給 者 のモデル 化 と 製 品 サービスシ F 2 経 済 実 験 受 給 者 の 意 思 決 定 メカニズム 人 / 社 会 との 相 互 作 用 留 保 価 格 r i( t, F 2 )= A it+ F 2 U i P 2 I I2 0 t i 製 品 利 用 時 間 * 電 力 会 社 *ハウスメーカ * 各 種 メーカ 制 度 設 計 提 供 製 品 の 提 供 サービスの 提 供 観 測 機 能 の 埋 込 サービス CAD 製 品 /サービスの 機 能 の 設 計 解 機 能 設 計 受 給 * 一 般 家 庭 * 地 域 社 会 受 給 者 のモデル 製 品 /サービスの 機 能 の 利 用 モデル 分 析 利 用 / 結 果 データ 受 給 者 の 生 活 データ 満 足 度 データ 図 6 スマートハウスを 例 にした 製 品 サービスシステム 構 想 216
ステムの 機 能 設 計 を 行 う( 図 6 左 下 ) その 後 前 項 で 述 べた 経 済 実 験 による 受 給 者 の 意 思 決 定 の 観 察 技 術 を 用 い て 認 識 行 動 価 値 に 関 する 個 のモデルを 精 緻 化 すると ともに 製 品 サービスシステムを 修 正 精 緻 化 していく( 図 6 左 上 ) これは 機 能 設 計 にとどまらず 人 と 社 会 との 相 互 作 用 を 考 慮 した 制 度 (メカニズム) 設 計 を 実 験 室 にて 行 うことを 意 味 する その 後 は 実 際 のサービス 提 供 を 通 じ て 得 られるさまざまなデータをフィードバックとして 用 いて より 詳 細 に 分 析 する( 図 6 右 下 ) この 図 6 の 項 目 を 図 4 の 項 目 と 厳 密 に 対 応 させることは 困 難 であるが おおまか には 以 下 のようになる 分 析 が 問 題 設 定 とモデル 化 に 機 能 設 計 と 制 度 設 計 が 導 解 に 提 供 が 製 造 に 受 給 が 評 価 と 保 全 に そ れ ぞ れ 対 応 する す な わ ち 分 析 においてその 直 前 の 受 給 の 結 果 を 踏 まえて 問 題 設 定 ( 社 会 技 術 化 に 相 当 )しつつ 個 のモデリングを 行 うことを 意 味 する 上 記 のうち 図 6 左 下 についてはⅡ 期 の 成 果 の 利 用 が 可 能 である 図 6 左 上 図 6 右 下 がⅢ 期 で 新 たに 扱 うテー マである 4.2 関 連 テーマと 残 された 課 題 その 他 にも 以 下 に 示 すような 共 通 のテーマ 設 定 を 行 い この 解 決 の 中 で 人 工 物 工 学 研 究 センターの 目 的 の 達 成 を 目 指 している CO2 排 出 省 エネルギーの 推 進 燃 料 の 安 定 供 給 等 を 考 慮 した 新 しいエネルギー 政 策 新 しい 人 材 教 育 システム- 産 業 志 向 型 の 社 会 移 行 スキルト レーニング 震 災 時 の 市 民 の 帰 宅 行 動 を 考 慮 した 水 需 要 予 測 と 応 急 給 水 体 制 のあり 方 看 護 学 生 が 多 様 な 患 者 に 対 して 適 切 な 看 護 処 置 を 適 用 で きるようになるための 看 護 技 術 自 習 支 援 システム おのおののテーマは この 論 文 の 最 初 で 述 べた 環 境 貧 富 ( 教 育 は 貧 富 の 問 題 を 解 決 する 有 効 な 手 段 である) 安 全 健 康 という 現 代 の 邪 悪 なるもの の 典 型 的 なもの であり 個 のモデリングという 人 間 的 な 側 面 と マルチステー クホルダーの 存 在 による 人 工 物 創 成 の 社 会 技 術 的 な 側 面 と の 両 者 を 包 含 した 典 型 的 な 問 題 と 言 える これらの 問 題 の 解 決 はⅢ 期 の 大 きな 成 果 となることが 期 待 できる 残 された 課 題 として 最 も 重 要 なものは ある 問 題 に 対 する 解 決 策 を 提 案 できたとして それをどのようにして 他 の 課 題 に 適 用 するかという 横 展 開 の 問 題 である 換 言 すれ ば 脱 領 域 的 な 知 見 をどのように 蓄 積 するかという 問 題 で ある 現 状 では 各 々の 問 題 を 解 く 中 で その 解 法 プロセ スを 俯 瞰 的 に 眺 め で き る だ け 普 遍 的 な 形 で 記 述 する デ ー タベース 化 することが 上 記 の 問 題 解 決 の 第 一 歩 であると 考 えている 5 おわりに 本 稿 は 始 めに 人 工 物 工 学 研 究 の 現 状 と 将 来 構 想 につ いて 述 べた 次 いで 個 のモデリング 人 工 物 創 成 の 社 会 技 術 化 という 観 点 からアプローチすることで 人 工 物 と 個 社 会 環 境 の 持 続 的 調 和 関 係 の 構 築 を 目 指 すという 方 針 に ついて 説 明 した 実 験 経 済 学 的 手 法 を 組 み 入 れた 個 のモ デリング 手 法 を 適 用 するシナリオについて 述 べ 製 品 サービ スシステムのモデル 化 をテーマ 例 として 抽 出 した 我 が 国 の 限 られた 人 的 物 的 リソースを 戦 略 的 に 活 用 す る 観 点 から 研 究 教 育 においても 選 択 と 集 中 が 求 められて いる 研 究 者 自 らが 社 会 連 携 も 含 めた 実 社 会 における 行 動 働 きかけを 積 極 的 に 起 こすとともに その 中 で 得 られ た 知 見 情 報 を 組 織 内 に 場 として 素 早 く 循 環 させていく 仕 組 みの 促 進 が 肝 要 である この 際 考 慮 すべき 重 要 なことと して アウトカム 創 出 の 観 点 からの 評 価 を 取 り 入 れた 研 究 組 織 や 研 究 者 に 対 する 新 しい 評 価 体 系 の 導 入 が 不 可 欠 になる 今 後 は 研 究 成 果 の 新 しい 評 価 の 形 式 について 考 える 必 要 がある 謝 辞 この 論 文 を 執 筆 する 上 で さまざまな 観 点 から 影 響 を 与 えていただいた 東 京 大 学 人 工 物 工 学 研 究 センターの 元 メ ンバー 現 メンバー その 他 関 係 者 の 方 々に 心 より 謝 意 を 表 す 木 村 文 彦 東 京 大 学 名 誉 教 授 ( 現 法 政 大 学 )ならび に 東 京 大 学 人 工 物 工 学 研 究 センター 外 部 評 価 委 員 の 先 生 方 に 御 礼 申 し 上 げる 参 考 文 献 [1] 吉 川 弘 之 : 人 工 物 工 学 の 提 唱 http://www.race.u-tokyo.ac.jp/open/documents/yoshikawa. pdf, Accessed 2013 July 26. [2] ハーバート A サイモン 著, 稲 葉 元 吉, 吉 原 英 樹 訳 : システム の 科 学 第 3 版, パーソナルメディア (1999). [3] 市 川 惇 信 : 人 工 科 学 と 技 術, 計 測 と 制 御, 42 (3), 162-171 (2003). [4] マイケル ギボンズ 著, 小 林 信 一 監 訳 : 現 代 社 会 と 知 の 創 造 モード 論 とは 何 か, 丸 善 (1997). [5] 日 本 学 術 会 議 : 総 合 工 学 分 野 の 展 望, (2010). http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-h-3-7.pdf, Accessed 2013 March 15. [6] G. F. Smith: Defining managerial problems: a framework for prescriptive theorizing, Management Science, 35 (8), 963-981 (1989). [7] 常 田 稔 : 経 営 管 理 問 題 の 設 定 定 式 化, 早 稻 田 社 會 科 學 研 究, 46, 69-95 (1993). [8] 木 嶋 恭 一 : ソフトシステムアプローチ, 社 会 経 済 システム, 23, 51-65 (2002). [9] P. Checkland and J. Scholes: Soft Systems Methodology in Action, John Wiley & Sons Ltd., (1990) [ 妹 尾 堅 一 郎 訳, ソ フト システムズ 方 法 論, 有 斐 閣 (1994)]. [10] マイケル C. ジャクソン, 小 林 憲 正, 高 橋 真 吾, 根 来 龍 之, 吉 田 武 稔 : ホリスティック クリエイティブ マネジメント 21 世 217
紀 COEプログラム:エージェントベース 社 会 システム 科 学 の 創 出 ( 木 嶋 恭 一, 中 條 尚 子 編 著 ), 丸 善 (2007). [11] 日 本 学 術 会 議 : 新 しい 学 術 の 体 系 --- 社 会 のための 学 術 と 文 理 の 融 合 ---, (2003). http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/18pdf/1829.pdf, Accessed 2013 July 26. [12] 日 本 学 術 会 議 : 新 しい 学 術 の 体 系, (2003). http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-18-t995-60-2. pdf, Accessed 2013 July 26. [13] 馬 場 靖 憲 : 人 工 物 工 学 研 究 は 何 ができなかったか: 次 期 へ の 期 待, (2002). http://www.zzz.rcast.u-tokyo.ac.jp/pdf/soukatsu.pdf, Accessed 2013 Feb 18. [14] 福 原 知 宏, 竹 中 毅, 森 下 壮 一 郎, 鈴 木 正 昭, 西 野 成 昭, 藤 井 信 忠, 武 田 英 明 : 人 工 物 工 学 における 価 値 創 成 研 究 : 映 画 を 題 材 として, The 22nd Annual Conference of the Japanese Society for Artificial Intelligence, 3B3-10, 1-4 (2008). [15] K. Ueda, T. Takenaka and K. Fujita: Toward value cocreation in manufacturing and servicing, CIRP Journal of Manufacturing Science and Technology, 1 (1), 53-58 (2008). [16] N. Nishino: Co-creative Value Manufacturing: a methodology for treating interaction and value amongst artefacts and humans in society, Nanotechnology Perceptions, 9 (1), 6-15 (2013). [17] 社 会 技 術 の 研 究 開 発 の 進 め 方 に 関 する 研 究 会 : 社 会 技 術 の 研 究 開 発 の 進 め 方 について, (2000). http://www.ristex.jp/aboutus/pdf/his02.pdf, Accessed 2014 April 26. [18] 伊 藤 正 美 : 自 律 分 散 システムはいかにして 構 成 されるか, 計 測 と 制 御, 29 (10), 877-881 (1990). [19] 阪 口 秀, 草 野 完 也, 末 次 大 輔 編 : 階 層 構 造 の 科 学, 東 京 大 学 出 版 会 (2008). [20] 吉 川 弘 之 : インタビュー 科 学 と 社 会 技 術 の 未 来, 社 会 技 術 研 究 論 文 集, 1, i-viii (2003). [21] 上 田 完 次 : 人 工 物 環 境 の 生 命 論 パラダイム, 技 術 知 の 射 程, 吉 川 弘 之 監 修, 田 浦 俊 春, 小 山 照 夫, 伊 藤 公 俊 編, 東 京 大 学 出 版 会, 129-149 (1997). [22] 上 田 完 次 他 : 創 発 的 シンセシスの 方 法 論, 未 来 開 拓 プロ ジェクト 成 果 報 告 書 (2001). [23] K. Ueda, A. Markus, L. Monostori, H.J.J. Kals and T. Arai: Emergent synthesis methodologies for manufacturing, CIRP Annals - Manufacturing Technology, 50 (2), 535-551 (2001). [24] 日 本 工 学 アカデミーEAJ NEWS: 第 174 回 談 話 サロン 設 計 型 工 学 のカリキュラム, (2012). http://www.eaj.or.jp/eajnews/news147/01.html, Accessed 2013 July 26. [25] V.L. Smith: Experimental economics induced value theory, American Economic Review, 66 (2), 274-279 (1976). 執 筆 者 略 歴 太 田 順 (おおた じゅん) 1989 年 東 京 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 修 士 課 程 修 了 同 年 新 日 本 製 鐵 ( 株 ) 入 社 91 年 東 京 大 学 工 学 部 助 手 94 年 同 講 師 96 年 東 京 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 精 密 機 械 工 学 専 攻 助 教 授 2009 年 6 月 東 京 大 学 人 工 物 工 学 研 究 センター 教 授 この 間 96-97 年 Stanford 大 学 Center for Design Research 客 員 研 究 員 マ ルチエージェントロボット 大 規 模 生 産 / 搬 送 システム 設 計 と 支 援 移 動 知 人 の 解 析 と 人 へのサービスの 研 究 に 従 事 この 論 文 の 総 括 全 体 構 成 具 体 的 内 容 の 構 成 に 貢 献 した 西 野 成 昭 (にしの なりあき) 1999 年 神 戸 大 学 工 学 部 卒 業 2001 年 同 大 学 大 学 院 自 然 科 学 研 究 科 博 士 前 期 課 程 修 了 2004 年 東 京 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 博 士 課 程 修 了 博 士 ( 工 学 ) 同 年 より 東 京 大 学 人 工 物 工 学 研 究 センター 研 究 員 同 センター 助 手 助 教 を 経 て 2009 年 11 月 より 同 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 准 教 授 実 験 経 済 学 やマルチエー ジェントの 手 法 をもとに 社 会 システムに 関 する 研 究 に 従 事 人 工 知 能 学 会 情 報 処 理 学 会 日 本 経 営 工 学 会 サー ビス 学 会 システム 制 御 情 報 学 会 日 本 LCA 学 会 ESA CIRP INFORMS 等 の 会 員 この 論 文 の 社 会 技 術 に 関 する 方 法 論 具 体 的 テーマの 説 明 に 貢 献 した 原 辰 徳 (はら たつのり) 2004 年 東 京 大 学 工 学 部 システム 創 成 学 科 卒 業 2009 年 同 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 精 密 機 械 工 学 専 攻 博 士 課 程 修 了 博 士 ( 工 学 ) 同 専 攻 助 教 を 経 て 2013 年 3 月 より 東 京 大 学 人 工 物 工 学 研 究 センター 准 教 授 サービス 工 学 製 品 サービスシステム 観 光 サービス 等 の 研 究 に 従 事 2009 年 東 京 大 学 学 生 表 彰 工 学 系 研 究 科 長 賞 ( 博 士 )を 受 賞 精 密 工 学 会 日 本 機 械 学 会 情 報 処 理 学 会 サービス 学 会 観 光 情 報 学 会 各 会 員 CIRP Research Affiliate この 論 文 の 個 のモデリングに 関 する 方 法 論 具 体 的 テーマの 説 明 に 貢 献 した 藤 田 豊 久 (ふじた とよひさ) 1995 年 秋 田 大 学 教 授 2003 年 より 東 京 大 学 教 授 2012 年 からは 東 京 大 学 人 工 物 工 学 研 究 センター 長 環 境 資 源 工 学 会 会 長 (2005 ~ 2009 年 ) 専 門 は 資 源 処 理 工 学 環 境 浄 化 機 能 性 流 体 受 賞 約 20 件 特 許 約 60 件 発 表 論 文 等 約 300 件 この 論 文 の 全 体 的 な 概 念 構 成 ならび 方 向 性 に 関 する 議 論 の 主 導 に 寄 与 した 査 読 者 との 議 論 議 論 1 全 体 について コメント( 持 丸 正 明 : 産 業 技 術 総 合 研 究 所 サービス 工 学 研 究 センター) 人 工 物 工 学 の 体 系 を 確 立 し 展 開 していく 方 向 性 と 方 法 論 につい て その 中 核 である 東 京 大 学 人 工 物 工 学 研 究 センターでの 議 論 を 中 心 に 研 究 フレームワークを 提 案 し さらに そのフレームワークに 基 づく 研 究 活 動 事 例 を 示 した 論 文 であると 理 解 しました 人 工 物 工 学 と Synthesiology は 同 根 であり 人 工 物 工 学 の 目 的 とするところは Synthesiology 誌 のスコープと 合 致 しています それゆえ この 論 文 で 提 案 されている 研 究 フレームワークの 議 論 は 本 誌 の 読 者 にとって も 有 益 なものだと 考 えています しかし 現 在 の 章 立 てでは 人 工 物 工 学 の 新 課 題 とそれに 対 応 する 研 究 フレームワーク の 論 文 ではなく 東 京 大 学 人 工 物 工 学 研 究 センターの 第 3 期 の 紹 介 であるかのように 感 じられます 人 工 物 工 学 の 研 究 体 系 を 形 成 することが この 論 文 の 向 かうべき 最 終 目 標 ですので それに 対 する 論 理 展 開 にしたらいかがでしょう 回 答 ( 太 田 順 : 東 京 大 学 ) 貴 重 なコメントありがとうございます 東 京 大 学 人 工 物 工 学 研 究 セ ンターより 人 工 物 工 学 の 進 展 と 言 う 観 点 から 記 述 すべきというのは そのとおりだと 思 いました おっしゃるとおりの 構 成 に 変 更 しなおしま した 218
議 論 2 Ⅱ 期 とⅢ 期 との 関 係 について 質 問 ( 赤 松 幹 之 : 産 業 技 術 総 合 研 究 所 ヒューマンライフテクノロジー 研 究 部 門 ) Ⅲ 期 において 設 置 した Socio-Artifactologyと Human-Artifactology と 二 つの 部 門 についての 説 明 がありますが いずれも Ⅱ 期 での 活 動 をベースに と 書 かれているだけで Ⅱ 期 とⅢ 期 との 関 係 が 明 確 に 書 かれていません マルチステークホルダーの 問 題 や 不 完 全 情 報 での 解 探 索 の 問 題 がライフサイクル 工 学 と 共 創 工 学 ではなぜ 扱 えなかったの か それともライフサイクル 工 学 と 共 創 工 学 を 進 める 中 でこの 問 題 が 大 きく 浮 上 して 来 たのか など 取 り 組 みが 必 要 であると 判 断 した 仮 説 形 成 のプロセスを 書 いていただきたいと 思 います 回 答 ( 太 田 順 ) Ⅱ 期 では 物 理 科 学 ベースの 設 計 科 学 を 対 象 とした 研 究 成 果 を 多 く 出 してきました Ⅲ 期 では 学 問 対 象 を 人 文 社 会 科 学 にまで 発 展 さ せ 人 間 社 会 までも 含 んだものを 対 象 と 考 えています そのような 背 景 の 元 社 会 技 術 化 の 問 題 を 上 田 完 次 先 生 が 提 唱 したクラスⅢの 問 題 と 関 連 付 けて 議 論 しています これはⅡ 期 においてはあまり 正 面 か ら 扱 わなかった 問 題 でしたが Ⅲ 期 ではいくつかの 実 際 の 社 会 の 問 題 を 解 決 するというミッションであり 非 常 に 重 要 であるため この 問 題 ならび 解 法 の 体 系 化 を 目 指 すものです Ⅱ 期 の 成 果 とⅢ 期 の 成 果 の 関 係 が 不 明 瞭 であったため 各 々の 記 述 を より 違 いが 明 確 にな るように 書 き 換 えました 例 えばⅡ 期 の 寄 付 研 究 部 門 の 成 果 を 人 間 の 価 値 観 とする 等 記 述 の 変 更 をしました またⅡ 期 の 成 果 のサマリに 具 体 的 な 内 容 ( 資 源 制 約 や 廃 棄 を 考 慮 した 人 工 物 の 設 計 や 大 規 模 複 雑 シミュレーション 基 盤 の 技 術 )を 書 き 加 えました 個 のモデリングについては Ⅱ 期 でも 扱 いましたが 個 々の 相 違 のモ デル 化 までの 成 果 が 主 であり その 個 の 変 容 具 合 =ダイナミクスにつ いてはほとんど 扱 っていなかったためそれをⅢ 期 で 扱 うことを 考 えて います そのような 内 容 をこの 論 文 に 書 き 加 えました 議 論 3 個 のモデリングについて コメント( 赤 松 幹 之 ) 個 のモデリングについての 記 述 がありますが これだけですと 個 の モデリングが 何 なのか 読 み 取 ることはできませんでした また 実 験 経 済 学 的 アプローチが 事 例 として 挙 げられており これは 個 のモデリ ングを 行 うための 実 験 方 法 として 採 用 したものと 推 察 しますが 個 の モデリングをするために 必 要 な 要 件 が 何 であって それを 満 たすよう にどのような 機 能 を 実 験 システムで 実 現 できるようにしたのか など の 仮 説 構 成 が 書 かれていると センターのミッションを 達 成 するため の 具 体 的 なアプローチとして その 意 義 を 読 者 が 理 解 できると 思 いま す コメント( 持 丸 正 明 ) 個 のモデリング は 第 Ⅲ 期 の 研 究 アプローチにおける 重 要 な 用 語 です ただ 査 読 者 には この 個 のモデリング を 明 快 に 理 解 す ることができませんでした 回 答 ( 太 田 順 ) 個 のモデリングに 関 して まず 階 層 構 造 についての 記 述 を 変 更 しま した 単 純 化 のため ある 四 角 における 個 はその 最 下 部 で 表 現 され ると 考 え それらが 直 下 の 四 角 の 最 上 位 部 における 均 質 要 素 (お のおの 内 部 状 態 を 有 し その 状 態 量 は 異 なる 値 をとり 得 る) 間 の 相 互 作 用 という 形 式 でモデル 化 しました この 際 要 素 の 内 部 状 態 や 相 互 作 用 の 相 違 が 個 の 多 様 性 となり そのダイナミクスが 個 のダイナ ミクスとなります その 上 で 個 をエージェントとして 捉 え 個 の 認 識 過 程 認 識 に 基 づく 個 の 活 動 その 活 動 を 生 成 する 基 盤 となる 個 の 価 値 形 成 という 3 つの 側 面 からのモデル 化 を 行 う と 考 えました 上 述 の 相 互 作 用 は 主 に 個 の 認 識 過 程 個 の 活 動 というステップで 表 現 され マルチステークホルダー 同 士 の 相 互 作 用 調 停 が 表 現 でき ることになります そのような 記 述 を 加 えました これが 個 のモデリ ングです 実 験 経 済 学 的 アプローチについては エージェント 単 体 の 時 には 合 理 性 に 基 づき 活 動 をするのでモデル 化 しやすいですが マルチエー ジェント 系 の 場 合 には 各 エージェントの 価 値 の 相 対 関 係 により 各 エージェントがどう 活 動 するかがよくわかっていません 実 験 経 済 学 的 手 法 は その 部 分 のモデル 構 築 に 貢 献 するものです 実 験 経 済 学 によって 実 験 者 が 定 める 効 用 関 数 を 被 験 者 に 誘 発 するということで あり 効 用 さえも 統 制 した 仮 想 的 な 社 会 システム 内 での 振 る 舞 いを 観 察 し 各 主 体 効 用 の 変 化 や 全 体 の 社 会 的 余 剰 を 見 ることで 価 値 と して 明 示 的 に 取 り 扱 うことが 可 能 となります この 方 法 によって 2 章 で 述 べた 個 の 価 値 生 成 過 程 のモデル 化 が 可 能 となると 考 えます そのような 記 述 をこの 論 文 に 加 えました 議 論 4 社 会 技 術 化 について コメント( 赤 松 幹 之 ) Ⅲ 期 での 取 り 組 みが 実 験 経 済 学 的 研 究 の 説 明 が 中 心 になっている ために 社 会 技 術 化 に 関 する 研 究 のアプローチが 具 体 的 に 主 張 され ていないように 思 われます これから 行 われる 研 究 ですので フレー ムワーク 通 りに 奇 麗 に 整 理 はできないとは 思 いますが 読 者 に 主 張 を 理 解 してもらうためには 論 文 全 体 の 論 理 構 成 がある 程 度 整 合 され ていることが 望 まれます 回 答 ( 太 田 順 ) おっしゃるとおり 社 会 技 術 化 に 関 する 議 論 が 少 なかったので そ れに 関 する 記 述 を 加 えました マルチステークホルダー 環 境 自 体 が 社 会 技 術 化 との 関 わりが 強 いと 考 えられます 図 4 と 図 6 の 対 応 関 係 を 記 述 しました 分 析 が 問 題 設 定 とモデル 化 に 機 能 設 計 と 制 度 設 計 が 導 解 に 提 供 が 製 造 に 受 給 が 評 価 と 保 全 に それぞれ 対 応 します 分 析 においてその 直 前 の 受 給 の 結 果 を 踏 ま えて 問 題 設 定 ( 社 会 技 術 化 に 相 当 )しつつ 個 のモデリングを 行 うこ とを 意 味 します 219