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KPMG Insight Vol. 13 / Jul. 2015 1 海 外 に 関 連 した 資 産 税 課 税 制 度 の 変 遷 課 税 強 化 の 動 き - 相 続 税 贈 与 税 の 納 税 義 務 の 範 囲 拡 大 の 経 緯 と 出 国 税 導 入 に 至 るまでの 動 き- KPMG 税 理 士 法 人 AMSグループ パートナー 正 路 晃 シニアマネジャー 出 口 勝 2015 年 1 月 1 日 以 降 の 相 続 より 相 続 税 の 基 礎 控 除 額 が 4 割 減 額 され 相 続 税 の 課 税 ベースが 拡 大 されたほか 税 率 も 引 き 上 げられました その 影 響 もあって か 巷 では 相 続 ( 税 ) 対 策 と 銘 打 つセミナーが 活 況 を 呈 しています 他 方 企 業 の 国 際 化 人 材 の 国 際 化 といった 国 際 化 の 波 に 乗 って 親 世 代 子 世 代 ともに 国 境 を 越 えてグローバルに 活 動 する 時 代 となり 企 業 オーナーや 富 裕 層 を 中 心 に 国 外 財 産 に 関 する 相 続 ( 税 ) 贈 与 ( 税 )についての 相 談 も 多 く 寄 せ られてくるようになりました 国 内 に 住 む 日 本 人 が 同 じく 国 内 に 住 む 子 に 相 続 すれば 国 内 財 産 国 外 財 産 の すべてが 相 続 税 の 課 税 対 象 となります 海 外 に 住 む 外 国 人 が 同 じく 海 外 に 住 む 子 に 相 続 すれば 日 本 に 所 在 する 財 産 のみが 日 本 の 相 続 税 の 課 税 対 象 となりま す では 日 本 国 内 に 住 む 子 が 海 外 に 移 住 した 場 合 あるいは 日 本 国 内 に 住 む 親 子 ともに 海 外 に 移 住 した 場 合 の 相 続 税 贈 与 税 の 課 税 関 係 はどうなるのでしょ うか 本 稿 では 相 続 税 贈 与 税 の 納 税 義 務 の 範 囲 拡 大 の 経 緯 を 紹 介 するとともに 2012 年 度 税 制 改 正 によって 導 入 された 国 外 財 産 調 書 制 度 そして 2015 年 度 税 制 改 正 において 導 入 された 出 国 税 の 概 要 や 注 意 点 等 を 中 心 に 海 外 に 関 連 した 資 産 税 課 税 制 度 の 変 遷 課 税 強 化 の 動 きについて 述 べていきます なお 本 文 中 の 意 見 に 関 する 部 分 は 筆 者 の 私 見 であることをあらかじめお 断 り します ポイント 国 税 当 局 は 近 年 海 外 に 関 連 した 相 続 税 贈 与 税 譲 渡 所 得 税 といったい わゆる 資 産 税 課 税 を 強 化 している 国 税 当 局 は 海 外 資 産 関 連 事 案 について 積 極 的 に 調 査 を 実 施 している 2013 年 度 税 制 改 正 において 相 続 税 贈 与 税 の 納 税 義 務 の 範 囲 が 拡 大 され た これにより たとえ 日 本 国 籍 を 捨 てたとしても 国 外 財 産 に 対 し 日 本 で 相 続 税 贈 与 税 が 課 されることになった 2012 年 度 税 制 改 正 において 国 外 財 産 調 書 制 度 が 創 設 された 2015 年 1 月 1 日 以 後 に 提 出 すべき 国 外 財 産 調 書 からは 故 意 の 調 書 不 提 出 や 虚 偽 記 載 に ついて 1 年 以 下 の 懲 役 又 は 50 万 円 以 下 の 罰 金 が 科 せられる 本 来 提 出 義 務 があるにもかかわらず 未 提 出 の 場 合 には 今 からでも 過 年 度 分 の 国 外 財 産 調 書 の 提 出 を 検 討 すべきである 2015 年 度 税 制 改 正 において 出 国 税 が 導 入 された これは 相 続 や 贈 与 の 局 面 においても 適 用 される 制 度 であるという 点 に 注 意 が 必 要 である しょうじ あきら 正 路 晃 KPMG 税 理 士 法 人 AMSグループ パートナー で ぐ ち まさる 出 口 勝 KPMG 税 理 士 法 人 AMSグループ シニアマネジャー

2 KPMG Insight Vol. 13 / Jul. 2015 Ⅰ 相 続 税 贈 与 税 の 納 税 義 務 の 範 囲 の 拡 大 2. 2000 年 度 税 制 改 正 後 の 相 続 税 贈 与 税 の 納 税 義 務 の 範 囲 1. 2000 年 度 税 制 改 正 前 の 相 続 税 贈 与 税 の 納 税 義 務 の 範 囲 図 表 1は 2000 年 度 税 制 改 正 前 の 相 続 税 贈 与 税 の 納 税 義 務 の 範 囲 を 示 しています このような 制 度 下 においては 国 内 に 住 む 日 本 人 が 国 外 に 財 産 を 移 転 させたうえで 国 外 に 移 住 し た 子 にその 国 外 財 産 を 贈 与 することにより その 国 外 財 産 につ いての 日 本 の 贈 与 税 の 課 税 を 免 れることができます したがっ て 2000 年 度 税 制 改 正 前 には 子 を 海 外 に 居 住 させ 税 制 上 の 制 限 納 義 務 者 としたうえで 国 外 財 産 を 贈 与 するといった 行 為 が 往 々にして 行 われ 子 の 居 住 地 ( 生 活 の 本 拠 )を 巡 ってた びたび 納 税 者 と 国 税 とが 争 うようなことがありました 1で 述 べたような 非 居 住 者 である 子 への 国 外 財 産 の 贈 与 が 問 題 視 され 2000 年 度 税 制 改 正 において 親 世 代 又 は 子 世 代 のい ずれかが 過 去 5 年 以 内 に 日 本 国 内 に 住 所 がある 場 合 には たと え 子 が 非 居 住 者 になったとしても 国 外 財 産 にも 課 税 を 行 うと いう 非 居 住 無 制 限 納 税 義 務 者 という 概 念 が 導 入 され 納 税 義 務 の 範 囲 が 拡 大 されました( 図 表 2 参 照 ) こ れ に よ り 非 居 住 者 である 子 へ 国 外 財 産 を 贈 与 しても 贈 与 税 を 免 れることは できなくなりました 3. 2013 年 度 税 制 改 正 後 の 相 続 税 贈 与 税 の 納 税 義 務 の 範 囲 ( 現 行 ) 2000 年 度 税 制 改 正 により 非 居 住 者 である 子 へ 国 外 財 産 を 贈 与 しても 贈 与 税 を 免 れることができなくなったため あらたに 子 世 代 に 外 国 籍 を 取 得 させた 後 に 国 外 財 産 を 贈 与 するという 図 表 1 2000 年 度 税 制 改 正 前 の 相 続 税 贈 与 税 の 納 税 義 務 の 範 囲 無 制 限 納 税 義 務 者 制 限 納 税 義 務 者 納 税 義 務 者 相 続 若 しくは 遺 贈 ( 死 因 贈 与 を 含 む) 又 は 贈 与 により 財 産 を 取 得 した 個 人 でその 財 産 を 取 得 した 時 に 国 内 に 住 所 を 有 している 個 人 相 続 若 しくは 遺 贈 ( 死 因 贈 与 を 含 む) 又 は 贈 与 により 財 産 を 取 得 した 個 人 でその 財 産 を 取 得 した 時 に 国 内 に 住 所 を 有 していない 個 人 ( 外 国 に 住 所 のある 個 人 ) 課 税 財 産 の 範 囲 国 内 財 産 国 外 財 産 ともに 国 内 財 産 のみ 図 表 2 2000 年 度 税 制 改 正 後 の 相 続 税 贈 与 税 の 納 税 義 務 の 範 囲 子 世 代 親 世 代 被 相 続 人 贈 与 者 相 続 人 受 贈 者 5 年 以 内 に 日 本 国 籍 あり 5 年 超 日 本 国 籍 なし 5 年 以 内 に 5 年 超 国 内 財 産 国 外 財 産 ともに 課 税 国 内 財 産 のみ 課 税 居 住 無 制 限 納 税 義 務 者 非 居 住 無 制 限 納 税 義 務 者 制 限 納 税 義 務 者

KPMG Insight Vol. 13 / Jul. 2015 3 行 為 が 見 受 けられるようになりました 図 表 3は 2013 年 度 に 改 正 された 相 続 税 贈 与 税 の 納 税 義 務 の 範 囲 を 示 したものです 改 正 前 には 国 外 で 出 生 した 孫 に 外 国 籍 を 取 得 させ 国 内 に 住 む 日 本 人 である 親 ( 孫 からみて 祖 父 母 )が 国 外 に 財 産 を 移 転 させたうえで 国 外 に 居 住 する 外 国 籍 の 孫 に 国 外 財 産 を 贈 与 することにより その 国 外 財 産 につ いての 日 本 の 贈 与 税 を 免 れることができました 2000 年 度 税 制 改 正 後 から2013 年 度 税 制 改 正 前 には こうした 子 や 孫 に 外 国 籍 を 取 得 させた 後 に 国 外 財 産 を 贈 与 するという 行 為 が 行 わ れ やはりここでも 子 や 孫 の 居 住 地 ( 生 活 の 本 拠 )を 巡 って 納 税 者 と 国 税 とが 争 うようなことがありました そして 現 在 では 納 税 義 務 の 範 囲 が 図 表 3のように 見 直 され 2013 年 4 月 1 日 以 後 の 相 続 贈 与 については たとえ 日 本 国 籍 を 捨 てたとしても 相 続 税 贈 与 税 が 課 されることになりました したがって 現 行 税 制 下 において 国 外 財 産 を 課 税 対 象 外 に できるのは 親 が 非 居 住 者 となり 日 本 国 籍 を 有 しない 子 に 相 続 贈 与 するか あるいは 親 子 ともに 日 本 を 離 れて5 年 を 超 え てから 相 続 贈 与 するケースのみとなったわけです しかしながら 一 方 で 日 本 国 内 に 住 む 外 国 人 の 相 続 贈 与 については この 税 制 改 正 の 趣 旨 である 子 や 孫 に 外 国 籍 を 取 得 させることにより 国 外 財 産 への 課 税 を 免 れるような 租 税 回 避 行 為 を 防 止 する ( 自 民 党 税 制 調 査 会 資 料 より)というこ とからはいささかかけ 離 れる 場 合 もあるように 思 われます た とえば 外 国 人 が 日 本 において 居 住 者 のポジションで 死 亡 し 外 国 に 居 住 する 相 続 人 に 対 して 国 内 財 産 のみならず 国 外 財 産 を 含 めたところで 相 続 税 が 課 されるといった 場 合 です 実 際 に 改 正 後 の2013 年 4 月 1 日 以 降 において このような 外 国 人 の 相 続 も 発 生 しており 現 在 日 本 に 居 住 している 外 国 人 ま た 今 後 日 本 に 居 住 することを 検 討 している 外 国 人 においては 日 本 居 住 期 間 中 において 相 続 が 発 生 した 場 合 のことを 検 討 し ておく 必 要 があります なお 相 続 税 法 において 居 住 者 であるか 否 か( 住 所 を 国 内 に 有 するか 否 か)の 判 定 は 生 活 の 本 拠 を 国 内 に 有 するか 否 かにより 行 い したがって 単 に 取 得 したビザの 内 容 や 住 民 票 登 録 の 有 無 だけで 決 められるというものではありません これらの 事 実 のほか 国 内 における 住 居 の 有 無 国 内 におけ る 職 業 の 内 容 国 内 に 生 計 を 一 にする 家 族 を 有 するかどうか その 他 国 内 における 財 産 の 有 無 等 の 様 々な 客 観 的 事 実 を 総 合 的 に 考 慮 して 判 断 されることになります また 海 外 留 学 や 海 外 出 張 等 一 時 的 に 国 内 を 離 れている 人 は 国 内 に 住 所 を 有 するとみなされます 図 表 3 2013 年 度 税 制 改 正 後 の 相 続 税 贈 与 税 の 納 税 義 務 の 範 囲 ( 現 行 ) 国 内 国 外 相 続 贈 与 相 続 贈 与 課 税 国 外 財 産 課 税 なし 国 外 財 産 改 正 後 : 課 税 日 本 国 籍 外 国 籍 外 国 で 出 生 日 本 国 籍 取 得 せず 子 世 代 相 続 人 受 贈 者 親 世 代 被 相 続 人 贈 与 者 国 内 に 住 所 あり 5 年 以 内 に 日 本 国 籍 あり 5 年 超 日 本 国 籍 なし 5 年 以 内 に 国 内 財 産 国 外 財 産 ともに 課 税 国 内 財 産 のみ 課 税 改 正 後 : 国 外 財 産 も 課 税 5 年 超 出 典 : 自 民 党 税 制 調 査 会 資 料 を 基 に 筆 者 作 成

4 KPMG Insight Vol. 13 / Jul. 2015 Ⅱ 国 外 財 産 調 書 の 提 出 制 度 2012 年 度 税 制 改 正 により 国 外 財 産 調 書 制 度 が 創 設 され そ の 年 の12 月 31 日 において5,000 万 円 を 超 える 国 外 財 産 を 有 す る 永 住 者 ( 参 照 : 下 記 1. 国 外 財 産 調 書 の 提 出 義 務 者 )は そ の 国 外 財 産 を 報 告 する 国 外 財 産 調 書 を 翌 年 3 月 15 日 までに 提 出 しなければならないこととされました 適 用 初 年 度 の 提 出 者 は5,539 人 で 財 産 総 額 は 約 2 兆 円 強 であっ たことが 国 税 庁 より 公 表 (2014 年 7 月 公 表 )されています また 海 外 に 財 産 を 持 ちながら 法 律 で 義 務 付 けられてい る 国 外 財 産 調 書 を 提 出 せず 税 務 調 査 により 国 外 財 産 に 係 る 所 得 について 申 告 漏 れを 指 摘 され 通 常 より5% 高 い 加 算 税 が 課 されたという 加 算 税 の 加 重 措 置 の 適 用 事 例 も 増 えてきてい ます 加 えて 2015 年 1 月 1 日 以 後 に 提 出 すべき 国 外 財 産 調 書 から は 刑 事 罰 の 対 象 にもなり 1 年 以 下 の 懲 役 か 又 は50 万 円 以 下 の 罰 金 が 科 せられるようになりました 当 然 のことながら 刑 事 罰 ということになれば 社 会 的 信 用 の 喪 失 等 単 なる 税 金 のペ ナルティ( 加 算 税 の 加 重 措 置 )というだけではすみません し たがって 本 来 提 出 義 務 があるにもかかわらず 未 提 出 の 場 合 には 今 からでも 過 年 度 分 の 国 外 財 産 調 書 の 提 出 を 検 討 すべ きであると 考 えます 1. 国 外 財 産 調 書 の 提 出 義 務 者 その 年 の12 月 31 日 において その 価 額 の 合 計 額 が5,000 万 円 を 超 える 国 外 財 産 を 有 する 永 住 者 が 国 外 財 産 調 書 の 提 出 義 務 者 となります この 提 出 義 務 者 の 区 分 は 図 表 4のとおりです ここで 注 意 すべきは 外 国 人 です 図 表 4の と お り 非 永 住 者 の 定 義 は 居 住 者 のうち 日 本 国 籍 を 有 しておらず かつ 過 去 10 年 以 内 において 国 内 に 住 所 又 は 居 所 を 有 していた 期 間 の 合 計 が5 年 以 下 である 個 人 となっていますが これは 比 較 的 最 近 の2006 年 度 税 制 改 正 にて 範 囲 が 見 直 されたところです 以 前 はこの 定 義 は 居 住 者 のうち 日 本 に 永 住 する 意 思 がなく かつ 現 在 まで 引 き 続 いて5 年 以 下 の 期 間 国 内 に 住 所 又 は 居 所 を 有 する 個 人 とされていましたので たとえば 外 資 系 企 業 の 日 本 子 会 社 に 勤 務 する 外 国 人 が 4 年 間 程 日 本 に 勤 務 し 非 永 住 者 として 申 告 を 行 った 後 一 旦 本 国 に 帰 国 し 1 年 程 経 過 して から 再 来 日 してあらためて 非 永 住 者 の 適 用 を 受 けるということ も 可 能 でした しかし 改 正 後 は 過 去 10 年 間 のうちで 累 積 居 住 期 間 が5 年 超 となる 場 合 には 非 永 住 者 ではなく 永 住 者 と されるため 全 世 界 所 得 に 所 得 税 が 課 されるほか 5,000 万 円 を 超 える 国 外 財 産 を 有 していれば 国 外 財 産 調 書 の 提 出 義 務 者 となりますので 外 資 系 企 業 に 勤 務 する 外 国 人 は 特 に 注 意 が 必 要 です なお 所 得 税 の 確 定 申 告 書 の 提 出 義 務 のない 場 合 ( 年 末 調 整 で 所 得 税 の 計 算 が 終 了 する 場 合 等 )であっても 5,000 万 円 を 超 える 国 外 財 産 を 有 する 永 住 者 には 国 外 財 産 調 書 の 提 出 義 務 があります 2. 国 外 財 産 調 書 の 提 出 先 提 出 期 限 国 外 財 産 調 書 は 提 出 義 務 者 の 住 所 地 ( 国 内 に 住 所 がない 場 合 は 居 所 地 )の 所 轄 税 務 署 長 に 翌 年 の3 月 15 日 までに 提 出 しなければなりません 図 表 4 国 外 財 産 調 書 の 提 出 義 務 者 永 住 者 提 出 義 務 者 居 住 者 個 人 非 永 住 者 非 居 住 者 用 語 説 明 居 住 者 国 内 に 住 所 を 有 し 又 は 現 在 まで 引 き 続 いて1 年 以 上 居 所 を 有 する 個 人 非 居 住 者 居 住 者 以 外 の 個 人 永 住 者 非 永 住 者 非 永 住 者 以 外 の 居 住 者 居 住 者 のうち 日 本 国 籍 を 有 しておらず かつ 過 去 10 年 以 内 において 国 内 に 住 所 又 は 居 所 を 有 していた 期 間 の 合 計 が5 年 以 下 である 個 人

KPMG Insight Vol. 13 / Jul. 2015 5 3. 国 外 財 産 の 意 義 国 外 財 産 とは 国 外 にある 財 産 をいい 国 外 か 否 かの 判 定 は 原 則 として 財 産 の 所 在 について 定 める 相 続 税 法 の 規 定 による こととされており 図 表 5に 示 す 基 準 により 判 定 されます 図 表 5 国 外 財 産 の 意 義 加 算 税 修 正 申 告 等 による 納 税 額 課 税 割 合 過 少 申 告 加 算 税 50 万 円 又 は 期 限 内 申 告 税 額 の いずれか 多 い 金 額 を 超 える 部 分 15% 上 記 以 外 10% 無 申 告 加 算 税 50 万 円 を 超 える 部 分 20% 上 記 以 外 15% 動 産 不 動 産 財 産 の 種 類 金 融 機 関 に 対 する 預 貯 金 所 在 の 判 定 その 動 産 不 動 産 の 所 在 受 入 れをした 営 業 所 又 は 事 務 所 の 所 在 国 外 財 産 調 書 制 度 を 推 進 するため 過 少 申 告 加 算 税 及 び 無 申 告 加 算 税 について 以 下 の 特 例 ( 優 遇 措 置 又 は 加 重 措 置 )が 適 用 されます 貸 付 債 権 社 債 株 式 その 債 務 者 の 住 所 又 は 本 店 若 しくは 主 たる 事 務 所 の 所 在 金 融 商 品 取 引 業 者 等 に 預 け 入 れられている 社 債 株 式 その 口 座 が 開 設 された 金 融 商 品 取 引 業 者 等 の 営 業 所 等 の 所 在 上 記 以 外 の 社 債 株 式 その 社 債 株 式 の 発 行 法 人 の 本 店 又 は 主 たる 事 務 所 の 所 在 適 用 される 場 合 優 遇 措 置 期 限 内 に 提 出 された 国 外 財 産 調 書 に 修 正 申 告 等 の 基 因 となる 国 外 財 産 に 係 る 記 載 がある 場 合 加 重 措 置 期 限 内 に 国 外 財 産 調 書 の 提 出 がない 場 合 又 は 期 限 内 に 提 出 された 国 外 財 産 調 書 に 修 正 申 告 等 の 基 因 となる 国 外 財 産 に 係 る 記 載 がな い 場 合 ( 重 要 なものの 記 載 が 不 十 分 である 場 合 を 含 む) 2013 年 度 税 制 改 正 により 国 外 にある 金 融 機 関 の 営 業 所 等 に 設 けられた 口 座 において 管 理 されている 国 内 有 価 証 券 ( 国 内 法 人 等 が 発 行 した 社 債 株 式 等 ) を 国 外 財 産 に 加 えるとともに 国 内 にある 金 融 機 関 の 営 業 所 等 に 設 けられた 口 座 において 管 理 されている 外 国 有 価 証 券 ( 外 国 法 人 等 が 発 行 した 社 債 株 式 等 ) を 国 外 財 産 から 除 外 する 改 正 が 行 われている 対 象 となる 税 額 措 置 の 内 容 国 外 財 産 に 係 る 所 得 税 国 外 財 産 に 対 する 相 続 税 過 少 申 告 加 算 税 又 は 無 申 告 加 算 税 の 課 税 割 合 が 5% 軽 減 される 国 外 財 産 に 係 る 所 得 税 過 少 申 告 加 算 税 又 は 無 申 告 加 算 税 の 課 税 割 合 が 5% 加 重 される 4. 国 外 財 産 の 価 額 国 外 財 産 の 価 額 については その 年 の12 月 31 日 における 時 価 又 は 時 価 に 準 ずるものとして 見 積 価 額 によることとされてい ます 5. 国 外 財 産 の 邦 貨 換 算 国 外 財 産 の 価 額 についての 邦 貨 換 算 は その 年 の12 月 31 日 における 外 国 為 替 の 売 買 相 場 により 行 うこととされています 具 体 的 には 国 外 財 産 調 書 の 提 出 義 務 者 の 取 引 金 融 機 関 が 公 表 するその 年 の12 月 31 日 における 最 終 の 対 顧 客 直 物 電 信 買 相 場 (TTB) 又 はこれに 準 ずる 相 場 ( 同 日 に 当 該 相 場 がない 場 合 には 同 日 前 の 最 も 近 い 日 の 当 該 相 場 )によります 6. 過 少 申 告 加 算 税 無 申 告 加 算 税 の 特 例 納 税 者 が 過 少 申 告 をした 場 合 又 は 申 告 すべき 所 得 等 を 申 告 しなかった 場 合 において 納 税 者 による 修 正 申 告 期 限 後 申 告 書 の 提 出 又 は 国 税 当 局 による 更 正 決 定 ( 以 下 修 正 申 告 等 という)があったときは 原 則 として 修 正 申 告 等 による 納 税 額 に 対 し 次 の 課 税 割 合 を 乗 じた 過 少 申 告 加 算 税 又 は 無 申 告 加 算 税 が 課 せられます なお 国 外 財 産 調 書 が 期 限 後 に 提 出 された 場 合 であっても その 提 出 が 国 外 財 産 に 係 る 所 得 税 又 は 国 外 財 産 に 対 する 相 続 税 についての 調 査 があったことにより 更 正 又 は 決 定 がある べきことを 予 知 してされたものでないときは 上 記 の 特 例 の 適 用 上 その 国 外 財 産 調 書 は 提 出 期 限 内 に 提 出 されたものとみ なされます したがって 提 出 期 限 後 に 国 外 財 産 調 書 を 提 出 した 場 合 であっても 過 少 申 告 加 算 税 等 について 特 例 措 置 ( 優 遇 措 置 )の 適 用 を 受 けることができる 場 合 があります 7. 罰 則 国 外 財 産 調 書 提 出 制 度 において 以 下 の 行 為 をした 場 合 に は 1 年 以 下 の 懲 役 又 は50 万 円 以 下 の 罰 金 に 処 することとされ ています (1) 偽 りの 記 載 をして 国 外 財 産 調 書 の 提 出 をした 場 合 (2) 正 当 な 理 由 がなく 提 出 期 限 内 に 国 外 財 産 調 書 を 提 出 しなかっ た 場 合 等 この 罰 則 規 定 の 適 用 について 国 外 財 産 調 書 の 提 出 制 度 に ついて 十 分 な 周 知 期 間 を 確 保 し 本 制 度 の 円 滑 な 導 入 に 万 全 を 期 す 観 点 から 導 入 初 年 度 については 適 用 が 見 送 られ 導 入 2 年 目 の2015 年 1 月 1 日 以 後 に 提 出 すべき 国 外 財 産 調 書 につ

6 KPMG Insight Vol. 13 / Jul. 2015 いての 違 反 行 為 についてから 適 用 されることになりました Ⅲ 出 国 税 の 導 入 2015 年 度 税 制 改 正 において 出 国 税 が 導 入 され2015 年 7 月 1 日 から 適 用 されることとなりました 制 度 の 詳 細 はバックナン バー(KPMG Insight Vol.12/May2015) 国 外 転 出 時 課 税 制 度 ( 出 国 税 )の 導 入 をご 覧 ください ここでは 出 国 税 が 単 に 出 国 者 に 対 するキャピタルゲイン 課 税 に 留 まらず 相 続 や 贈 与 の 局 面 においても 適 用 される 制 度 であるという 点 等 について 述 べていきます 1. 所 得 税 ( 出 国 税 )と 相 続 税 贈 与 税 の 二 重 課 税 出 国 税 は2015 年 7 月 1 日 以 降 に 国 外 転 出 する 場 合 に 限 らず 1 億 円 以 上 の 株 式 等 を 保 有 する 居 住 者 の 相 続 や 贈 与 によって 非 居 住 者 が 株 式 等 を 取 得 した 場 合 にも 適 用 されます 図 表 6で 示 す 例 において 相 続 税 贈 与 税 の 納 税 義 務 判 定 は 親 の 居 住 地 ポジションが で 子 の 居 住 地 ポ ジションは ですから 子 は 日 本 国 籍 の 有 無 にかかわらず 国 内 財 産 国 外 財 産 ともに 課 税 対 象 となります ( 図 表 3 参 照 ) したがって 株 式 等 が 国 内 財 産 であるか 国 外 財 産 であるかを 問 わず 子 には 相 続 税 贈 与 税 が 課 税 されます さらに 出 国 税 の 導 入 により 株 式 等 を 相 続 させた 又 は 贈 与 を した 親 には 所 得 税 ( 出 国 税 )が 課 税 されることになります 同 一 の 株 式 等 について 相 続 税 贈 与 税 さらに 所 得 税 ( 出 国 税 )も 課 税 されることになりますので ある 意 味 二 重 課 税 のよ うな 状 態 になります 2. 相 続 税 贈 与 税 に 与 える 影 響 等 (1) 今 後 の 相 続 ( 税 ) 贈 与 ( 税 )プランニングに 与 える 影 響 2013 年 度 税 制 改 正 において 子 世 代 に 外 国 籍 を 取 得 させる ことにより 国 外 財 産 への 課 税 を 回 避 することは 防 止 されたわけ ですが 図 表 3のとおり 親 子 世 代 の 両 方 が 海 外 居 住 をし 海 外 居 住 をしてから5 年 超 経 過 していれば 相 続 贈 与 による 子 世 代 への 国 外 財 産 の 移 転 については 相 続 税 贈 与 税 が 課 され ません たとえば 日 本 企 業 の 株 式 等 をコーポレート イン バージョン( 本 社 の 海 外 移 転 )によって 外 国 持 株 会 社 の 株 式 等 に 転 換 し 親 子 世 代 の 両 方 が 海 外 居 住 をし 海 外 居 住 をして から5 年 超 経 過 してから その 外 国 持 株 会 社 の 株 式 等 を 子 世 代 に 贈 与 すれば 贈 与 税 は 課 されず かつ 親 世 代 に 対 するキャ ピタルゲイン 課 税 も 免 れることが 可 能 でした しかしながら 出 国 税 の 導 入 により 少 なくとも 親 世 代 に 対 するキャピタルゲ 図 表 6 所 得 税 ( 出 国 税 )と 相 続 税 贈 与 税 の 二 重 課 税 国 内 国 外 相 続 贈 与 株 式 等 所 得 税 ( 出 国 税 ) 相 続 税 贈 与 税 含 み 益 所 得 税 ( 出 国 税 ) 時 価 相 続 税 贈 与 税 15.315% の 所 得 税 及 び 復 興 税 取 得 価 額 株 式 等 最 高 55%( 超 過 累 進 課 税 ) の 相 続 税 贈 与 税

KPMG Insight Vol. 13 / Jul. 2015 7 イン 課 税 は 完 全 に 免 れることはできなくなったわけです した がって こうしたコーポレート インバージョン 等 のタックス プランニングにも 影 響 を 及 ぼすものと 思 われます Ⅳ まとめ (2) 出 国 税 の 納 税 猶 予 の 期 限 延 長 の 適 用 を 受 ける 場 合 出 国 税 の 課 税 対 象 者 は 原 則 として 出 国 日 又 は 翌 年 3 月 15 日 までに 株 式 等 の 含 み 益 に 対 する 所 得 税 を 申 告 納 付 しなければ なりませんが 例 外 として 担 保 物 の 提 供 等 一 定 の 要 件 を 満 たした 場 合 には 5 年 間 ( 申 請 により10 年 間 )の 納 税 猶 予 が 認 められています ここで 注 意 すべきなのは 納 税 猶 予 期 間 を 申 請 により5 年 から10 年 に 延 長 した 場 合 相 続 税 贈 与 税 の 納 税 義 務 判 定 に おいて 5 年 以 内 に ( 図 表 3 参 照 )とみなされ るという 点 です たとえば 出 国 税 の 課 税 対 象 者 である 親 が 子 を 含 む 家 族 全 員 ( 全 員 日 本 国 籍 とする)で 海 外 に 移 住 したと します 図 表 3のとおり 親 と 子 の 両 方 が 海 外 居 住 をし 海 外 居 住 をしてから5 年 超 経 過 していれば 贈 与 によって 子 へ 国 外 財 産 を 贈 与 してもその 国 外 財 産 について 贈 与 税 は 課 されませ ん しかしながら 出 国 税 の 課 税 対 象 者 である 親 が 出 国 税 に ついて 納 税 猶 予 の 適 用 を 受 け かつ 納 税 猶 予 期 間 を 申 請 に より5 年 から10 年 に 延 長 した 場 合 には 相 続 税 贈 与 税 の 納 税 義 務 判 定 において たとえ 5 年 を 超 えて の 場 合 であっても 5 年 以 内 に とみなされ 海 外 居 住 をしてから5 年 超 経 過 後 の 国 外 財 産 の 贈 与 であっても 贈 与 税 が 課 されることになります 相 続 税 贈 与 税 の 納 税 義 務 の 範 囲 の 拡 大 国 外 財 産 調 書 制 度 の 導 入 そして 今 般 の 出 国 税 の 導 入 と 国 税 当 局 は 海 外 に 関 連 した 相 続 税 贈 与 税 譲 渡 所 得 税 といった 資 産 税 課 税 を 強 化 してきています 実 際 に 国 税 庁 が 公 表 している2013 事 務 年 度 における 相 続 税 の 調 査 の 状 況 (2014 年 11 月 公 表 )では 海 外 資 産 に 係 る 申 告 漏 れ 遺 産 総 額 は163 億 円 と 前 事 務 年 度 の 26 億 円 から 大 幅 に 増 加 しています( 図 表 7 参 照 ) また 現 状 の 租 税 条 約 に 基 づく 情 報 交 換 制 度 に 加 え 2016 年 1 月 から 導 入 されるマイナンバー 制 度 日 米 欧 等 の 主 要 20か 国 (G20)が2018 年 末 までに 開 始 することを 目 指 している 非 居 住 者 の 金 融 口 座 に 関 する 自 動 的 情 報 交 換 制 度 等 国 税 当 局 は 今 後 ますます 国 外 財 産 を 含 む 納 税 者 の 個 人 財 産 情 報 の 把 握 に 力 を 入 れていくものと 思 われます したがって これからの 相 続 ( 税 ) 贈 与 ( 税 )を 考 えるにあ たっては 国 外 財 産 を 含 む 個 人 財 産 情 報 について 国 税 当 局 は 既 に 網 羅 的 に 把 握 している そして 今 般 の 出 国 税 の 導 入 によ り 親 子 ともに 日 本 を 離 れる 場 合 であっても 株 式 等 については 一 旦 譲 渡 益 課 税 が 行 われるということを 十 分 に 理 解 しておく 必 要 があります 図 表 7 2013 事 務 年 度 における 相 続 税 の 調 査 状 況 について 海 外 資 産 関 連 事 案 に 係 る 調 査 事 績 の 推 移 ( 件 ) ( 億 円 ) 140 120 100 85 116 111 113 124 180 160 140 120 80 60 163 100 80 40 20 91 72 59 26 60 40 20 0 21 22 23 24 25 ( 事 務 年 度 ) 0 海 外 資 産 に 係 る 申 告 漏 れ 課 税 価 格 海 外 資 産 に 係 る 申 告 漏 れ 等 の 非 違 件 数 出 典 : 国 税 庁

8 KPMG Insight Vol. 13 / Jul. 2015 KPMG 税 理 士 法 人 AMSグループ の 概 要 KPMG 税 理 士 法 人 AMSグループは 主 に 中 堅 中 小 企 業 向 けの 国 内 税 務 をはじめ 日 本 進 出 アジア 系 企 業 を 対 象 と した 各 種 税 務 サービスを 提 供 しています また 資 産 税 チームを 設 置 し オーナー 企 業 の 事 業 承 継 対 策 相 続 対 策 相 続 税 申 告 税 法 基 準 に 基 づく 株 式 評 価 業 務 などの サービスの 提 供 を 行 っています そのほか 医 療 専 門 チーム を 設 置 し クリニック 及 び 医 療 法 人 に 対 する 各 種 税 務 サー ビスの 提 供 も 行 っています バックナンバー 国 外 転 出 時 課 税 制 度 ( 出 国 税 )の 導 入 (KPMG Insight Vol.12/May 2015) 出 典 国 外 に 居 住 する 相 続 人 等 に 対 する 相 続 税 贈 与 税 の 課 税 の 適 正 化 ( 自 民 党 税 制 調 査 会 ) 平 成 25 事 務 年 度 における 相 続 税 の 調 査 の 状 況 について ( 国 税 庁 ) 本 稿 に 関 するご 質 問 等 は 以 下 の 者 までご 連 絡 くださいま すようお 願 いいたします KPMG 税 理 士 法 人 AMSグループ パートナー 税 理 士 正 路 晃 TEL: 03-3513-4111 akira.shoji@jp.kpmg.com シニアマネジャー 税 理 士 出 口 勝 TEL: 03-3513-4146 masaru.deguchi@jp.kpmg.com

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