. 先 行 研 究 について この 論 文 を 作 成 するにあたって 山 鹿 八 田 (000)の 通 勤 疲 労 コストと 最 適 混 雑 料 金 の 測 定 を 先 行 研 究 として 参 考 にした そのため 本 論 で 扱 われるモデルは 山 鹿 八 田 (000)で 紹 介 されている



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別紙3

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市 の 人 口 密 度 は 5,000 人 を 超 え 図 4 人 口 密 度 ( 単 位 : 人 /k m2) に 次 いで 高 くなっている 0 5,000 10,000 15,000 首 都 圏 に 立 地 する 政 令 指 定 都 市 では 都 内 に 通 勤 通 学 する 人 口 が 多

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表紙

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経 常 収 支 差 引 額 の 状 況 平 成 22 年 度 平 成 21 年 度 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 4,154 億 円 5,234 億 円 1,080 億 円 改 善 赤 字 組 合 の 赤 字 総 額 4,836 億 円 5,636 億 円 800 億 円 減

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

39_1

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目 次 1 報 酬 給 与 額 事 例 1 報 酬 給 与 額 に 含 める 賞 与 の 金 額 が 誤 っていた 事 例 1 事 例 2 役 員 退 職 金 ( 役 員 退 職 慰 労 金 )を 報 酬 給 与 額 として 申 告 して いなかった 事 例 1 事 例 3 持 株 奨 励 金 を

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( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

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プラス 0.9%の 年 金 額 改 定 が 行 われることで 何 円 になりますか また どのような 計 算 が 行 われているのですか A これまでの 年 金 額 は 過 去 に 物 価 が 下 落 したにもかかわらず 年 金 額 は 据 え 置 く 措 置 をと った 時 の 計 算 式 に 基

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った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

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別紙3

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 135, , , , , ,600

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Transcription:

JR 埼 京 線 の 通 勤 ラッシュについての 実 証 分 析 上 地 さきえ 樋 口 高 明 山 崎 敦 嗣 < 要 約 > 本 稿 では 通 勤 の 疲 労 コストと 最 適 混 雑 料 金 の 測 定 山 鹿 八 田 (000 年 )で 紹 介 されているモデ ルを 用 い JR 埼 京 線 の 通 勤 混 雑 についての 実 証 分 析 を 行 う 山 鹿 八 田 (000 年 )と 同 じ 手 法 を 用 いることによって JR 埼 京 線 における 通 勤 者 の 時 間 費 用 や 疲 労 費 用 を 金 銭 評 価 し 混 雑 の 外 部 不 経 済 を 効 用 関 数 の 限 界 代 替 率 の 概 念 を 用 いることで 適 正 な 混 雑 料 金 の 推 定 を 行 う 推 定 の 結 果 JR 埼 京 線 についての 測 定 結 果 が 山 鹿 八 田 (000 年 )の 中 央 線 について の 測 定 と 大 きく 異 なることが 判 明 した しかしながら 両 者 の 測 定 の 差 を 生 み 出 したものは 中 央 線 と 埼 京 線 のデータの 特 徴 によるものである これらの 分 析 から 埼 京 線 の 通 勤 混 雑 を 緩 和 するための 手 段 と して 混 雑 料 金 の 導 入 はあまり 適 切 でないということが 示 される. はじめに 現 在 日 本 においては 首 都 圏 の 鉄 道 における 朝 の 通 勤 通 学 ラッシュ 時 の 電 車 混 雑 が 大 きな 社 会 問 題 の つとなっている 表 は 首 都 圏 の 鉄 道 のピーク 時 混 雑 率 (ピーク 時 時 間 当 たりの 最 混 雑 区 間 の 混 雑 率 )のワースト 0 を 示 したものである 通 勤 列 車 の 混 雑 はそれだけでも 大 きな 問 題 であるが 過 度 の 混 雑 によって 更 なる 損 害 が 発 生 している それらの 問 題 の 中 でよく 取 り 上 げられるものとして 電 車 内 における 痴 漢 犯 罪 の 発 生 というものがある 痴 漢 の 発 生 件 数 は 電 車 混 雑 が 激 しい 路 線 ほど 多 いという 傾 向 がある グラ フ は 電 車 内 における 年 間 痴 漢 犯 罪 の 路 線 別 被 害 件 数 ワースト 5 を 示 したものである 表 とグラフ から JR 埼 京 線 は 列 車 の 混 雑 が 激 しい 上 に 痴 漢 犯 罪 の 発 生 件 数 が 全 国 で 一 番 多 い 路 線 であるという ことがわかる これらのことから わたしたちは 全 国 でも 通 勤 のストレスが 最 も 大 きいとみられる 埼 京 線 を 分 析 対 象 とすることにした 本 稿 ではまず 山 鹿 八 田 (000)で 用 いられているモデルを 参 考 に JR 埼 京 線 のケースについて 実 証 分 析 を 試 みる つの 分 析 手 法 を 用 いることで 埼 京 線 の 通 勤 ラッシュ 時 における 通 勤 者 の 総 費 用 疲 労 費 用 時 間 費 用 や 各 通 勤 区 間 について 課 されるべき 混 雑 料 金 が 明 らかにされる また 先 行 研 究 と の 推 定 結 果 の 比 較 を 行 うことによって 埼 京 線 の 特 徴 を 示 し 埼 京 線 の 混 雑 緩 和 について 混 雑 料 金 導 入 という 施 策 が 適 切 であるかどうかについての 意 見 を 述 べたいと 思 う

. 先 行 研 究 について この 論 文 を 作 成 するにあたって 山 鹿 八 田 (000)の 通 勤 疲 労 コストと 最 適 混 雑 料 金 の 測 定 を 先 行 研 究 として 参 考 にした そのため 本 論 で 扱 われるモデルは 山 鹿 八 田 (000)で 紹 介 されている ものを 踏 襲 している 先 行 研 究 では JR 中 央 線 沿 線 の 家 賃 データをもとに 東 京 までの 通 勤 時 間 と 通 勤 ラッシュ 時 の 混 雑 率 などを 説 明 変 数 とする 家 賃 関 数 を 推 定 し その 推 定 結 果 を 用 いて つの 分 析 が 行 われている () 通 勤 における 総 費 用 時 間 費 用 疲 労 費 用 を 等 価 変 分 の 概 念 を 用 いて 求 める 求 められた 結 果 から 通 勤 の 総 費 用 に 占 める 疲 労 費 用 と 時 間 費 用 の 割 合 を 示 す () 追 加 的 な 通 勤 者 によってもたらされる 混 雑 悪 化 の 外 部 不 経 済 を 混 雑 率 増 大 の 限 界 費 用 をもとに 算 出 さらに JR 中 央 線 の 通 勤 混 雑 ピーク 時 に 課 すべき 最 適 混 雑 料 金 を 通 勤 区 間 ごとに 求 める 尚 この 分 析 において 通 勤 者 は 通 勤 の 金 銭 的 費 用 を 支 給 され 自 ら 支 払 わないとしている そのため 都 心 から 離 れるに 従 って 家 賃 が 下 がるのは 都 心 から 離 れるにつれて 通 勤 の 時 間 と 疲 労 が 増 大 するため と 考 えられる これらのことから 先 行 研 究 では 家 賃 関 数 を 推 定 することで 通 勤 者 の 効 用 関 数 と 疲 労 乗 数 関 数 のパラメータが 明 らかにされた 3. 分 析 モデル 3-. 通 勤 者 の 効 用 関 数 本 稿 では 大 宮 を 始 発 とする 埼 玉 県 郊 外 から 都 心 である 新 宿 へ 伸 びている JR 埼 京 線 を 考 えていく JR 埼 京 線 沿 線 の 通 勤 者 はすべて 都 心 である 新 宿 で 雇 用 されており 埼 京 線 沿 線 に 居 住 しているとする この 通 勤 者 の 効 用 関 数 を u( h, z, l) h z l () とする h は 住 宅 の 床 面 積 z は 住 宅 以 外 の 合 成 財 l は 余 暇 時 間 である 余 暇 時 間 l は 余 暇 の 初 期 保 有 時 間 から 通 勤 時 間 x を 引 いたものであると 仮 定 し l x () と 表 す 初 期 保 有 時 間 とは 日 に 利 用 可 能 な 総 時 間 から 労 働 時 間 と 睡 眠 や 食 事 など 生 活 する 上 で 最 低 限 必 要 な 時 間 を 引 いたものである なお 通 勤 時 間 x は 片 道 当 たりの 時 間 であるため 本 論 文 で 扱 う 変 数 はすべて 半 日 当 たりの 値 である 以 上 を 踏 まえて 通 勤 者 の 効 用 関 数 を U ( h, z, x) h z ( x) (3)

と 書 きかえることができる しかし (3) 式 だけでは 混 雑 による 疲 労 から 回 復 するための 時 間 が 考 慮 されていない この 事 を 考 慮 す るために (3) 式 を 以 下 のように 書 き 換 える 必 要 がある l ( x a) (4) (4) 式 の a を 疲 労 調 整 時 間 と 定 義 する これは 混 雑 した 電 車 に 乗 ることによって 生 じた 疲 労 から 回 復 す るためには a 分 という 時 間 が 必 要 である 事 を 表 している 通 常 a の 値 は 正 を 取 る しかし 空 いている 電 車 に 乗 れたため 座 席 に 座 って 移 動 できる 等 して 休 憩 が 取 れた 場 合 には a は 負 の 値 をとる このことか ら この x a を 調 整 済 通 勤 時 間 と 定 義 する これによって 通 勤 時 間 が x で 通 勤 混 雑 率 が k のときの 調 整 済 通 勤 時 間 は 関 数 m( x で 表 すことができ x a m( x (5) である 以 上 を 踏 まえて 通 勤 者 の 効 用 関 数 を 以 下 のように 書 き 換 えると U ( h, z, h z ( m( x) 通 勤 者 は 以 下 で 述 べる 予 算 制 約 線 のもと (5) 式 の 効 用 を 最 大 化 させるように 行 動 する (6) 3-. 家 賃 関 数 の 導 出 都 心 から 時 間 距 離 x の 地 点 に 住 む 家 計 は(5) 式 の 効 用 を 予 算 制 約 線 r( x) h z Y (7) のもとで 最 大 化 する ただし r(x) はx 地 点 での 家 賃 Y は 所 得 を 表 す この 予 算 制 約 のもとで 家 計 が 達 成 する 最 大 効 用 レベルを 間 接 効 用 関 数 v ( r( x), Y, (8) とする 通 勤 客 は 通 勤 にかかる 電 車 賃 や 定 期 代 といった 金 銭 的 費 用 を 会 社 から 支 給 されていて 自 ら 支 払 っていない そのため 都 心 ほど 家 賃 が 高 く 郊 外 ほど 家 賃 が 安 いのは 都 心 から 離 れるにつれて 通 勤 にかかる 時 間 と 通 勤 による 疲 労 が 増 大 するためである ここで 都 市 外 での 効 用 水 準 を v とし 都 市 内 の 住 民 は 都 市 外 へ 居 住 の 移 動 が 自 由 であるとすると 都 心 からの 距 離 にかかわらず 効 用 水 準 は v で 一 定 と なる なぜなら 仮 に 都 心 のほうが 通 勤 による 時 間 と 疲 労 費 用 が 尐 ないために 郊 外 よりも 効 用 が 高 いので あれば その 分 家 賃 が 上 昇 し 効 用 の 差 は 相 殺 されてしまうと 考 えられるからである 郊 外 の 場 合 でも 都 心 よりも 家 賃 が 低 いために 効 用 が 高 い 状 態 であるならば その 分 通 勤 による 時 間 と 疲 労 費 用 がかかる ので 家 賃 差 による 効 用 の 上 昇 分 は 相 殺 されてしまうと 考 えられる このような 裁 定 取 引 が 機 能 している と 考 えると 間 接 効 用 関 数 を 以 下 のように 表 すことができる (9) 式 を r(x) について 解 くと v( r( x), Y, v (9) r( x) r *( Y, k, v) (0) となる この 関 数 r*が 家 賃 関 数 である この 家 賃 関 数 を 推 定 することによって 通 勤 者 の 効 用 関 数 と m( 関 数 のパラメータの 推 定 を 行 っていく (6) 式 のように 効 用 関 数 は 特 定 化 されているので (9) 式 で 定 義 される 家 賃 関 数 を 次 のように 具 体 的 に 計 算 することができ 3

r * ( Y, k, v) ( ) Y v [ m( x] () とできる また Y と v が 一 定 であることを 考 慮 して 上 記 の 式 の 定 数 項 としてまとめると とすることができる ただし C r * ( C[ m( ] () ( ) Y v である 次 に 疲 労 乗 数 関 数 m( を 特 定 化 する 疲 労 乗 数 関 数 は 混 雑 率 が 大 きくなるほど 疲 労 感 が 大 きくな ると 考 えられるので この 関 数 は 図 のような 形 状 を 想 定 する m(x) 0 k 図 m( 関 数 の 形 状 例 データとして 得 られる 混 雑 率 は k> となるため 右 上 がりの 部 分 を 近 似 した 関 数 形 を 使 う m( は 増 加 関 数 であるので これを 満 たすものとして べき 乗 関 数 採 用 する m ( k (3) パラメータ は 混 雑 率 k が である 場 合 に 時 間 の 通 勤 時 間 が 何 時 間 の 調 整 済 通 勤 時 間 になるかを 示 す パラメータ はべき 乗 関 数 の 形 状 を 決 定 するものである (3) 式 で 特 定 化 した m ( 関 数 を 考 慮 すると () 式 の 家 賃 関 数 は r * [ k x] C (4) となる 実 際 の 推 計 にあたっては (3) 式 の 初 期 保 有 時 間 を 80 と 置 き 両 辺 の 対 数 をとって 右 辺 にいくつ かの 調 整 変 数 を 加 えた logr* p0 p s p p3 y log[80 ( xw k x)] e (5) s 4

実 際 の 単 位 家 賃 は(4) 式 で 導 き 出 した 家 賃 関 数 の 説 明 変 数 以 外 の 多 くの 変 数 の 影 響 を 受 けているため そ のほかの 要 因 についても 考 慮 する 必 要 がある そのため (4) 式 にいくつかの 調 整 変 数 を 追 加 した (5) 式 には 新 たに 調 整 変 数 として s,, y, xw の 4 つを 追 加 している s は 床 面 積 であり これは 床 面 s 積 の 広 い 物 件 ほど 家 賃 が 高 くなることを 考 慮 している は 床 面 積 の 逆 数 である これは 単 位 家 賃 が s 水 回 り 等 床 面 積 にほとんど 依 存 しない 固 定 的 な 費 用 の 影 響 で 床 面 積 70 平 米 辺 りで 最 も 低 くなる U 字 型 をしているため この 固 定 的 な 費 用 の 影 響 をコントロールするために 追 加 している y とは 築 年 数 の ことである これは 古 い 物 件 であるほど 家 賃 が 安 くなる 傾 向 について 考 慮 している そして x は 最 寄 り 駅 までの 徒 歩 時 間 である 徒 歩 時 間 は 列 車 の 混 雑 率 とは 関 係 がないため 鉄 道 での 所 要 時 間 x とは 分 離 した 形 で 家 賃 関 数 に 組 み 入 れた また 初 期 保 有 時 間 の 値 は 80 として 外 生 的 に 与 えた これは NHK(995)のアンケート 調 査 によ ると 首 都 圏 の 通 勤 者 の 平 日 の 余 暇 の 初 期 保 有 時 間 が ほぼ 6 時 間 であることによる つまり 通 勤 者 はこ の 6 時 間 を 余 暇 と 通 勤 に 振 り 分 けると 考 えられるので モデルの 設 定 に 合 わせて 半 日 当 たり 換 算 した 3 時 間 =80 分 を 採 用 している w 4.データについて まず 家 賃 データの 推 定 にあたり JR 埼 京 線 沿 線 の 個 票 家 賃 データを 用 いる データの 種 類 は 単 位 平 米 あたりの 民 家 借 家 家 賃 サンプルの 立 地 点 から JR 埼 京 線 最 寄 り 駅 までの 徒 歩 の 所 要 時 間 最 寄 り 駅 から 新 宿 駅 までの 所 要 時 間 距 離 埼 玉 県 民 の 平 均 所 得 JR 埼 京 線 の 区 間 ごとの 混 雑 率 である 家 賃 のデータには 埼 京 線 の 駅 が 最 寄 り 駅 で 徒 歩 5 分 圏 内 に 立 地 する LDK の 賃 貸 アパート マン ションの 家 賃 を 採 用 した 家 賃 には 管 理 費 も 含 まれる データは 賃 貸 情 報 ウェブサイト アットホー ムから 収 集 し それを 床 面 積 で 割 った 単 位 家 賃 を 分 析 に 用 いた サンプル 数 は 480 件 である 次 に 通 勤 時 間 距 離 x の 値 は JR 東 日 本 ウェブサイト えきねっとより JR 埼 京 線 の 新 宿 大 宮 間 に ついての 片 道 所 要 時 間 を 採 用 した 各 出 発 駅 から 新 宿 駅 までの 通 勤 区 間 の 片 道 所 要 時 間 である また サンプルの 立 地 点 から 最 寄 り 駅 までの 徒 歩 時 間 データについては 家 賃 データと 同 時 に 得 ることができた 通 勤 電 車 の 混 雑 率 k のデータについては 混 雑 率 を つの 区 間 を 示 すことにより 定 義 する つ 目 の 混 雑 率 が 駅 区 間 混 雑 率 : k である 鉄 道 路 線 には 都 心 の 終 着 駅 までに 最 も 郊 外 にある 始 発 駅 を 含 め I 個 の 駅 が 存 在 する ここで 都 心 の 終 着 駅 を 0 とし 郊 外 へ 向 けて 都 心 側 から 順 に,,,I とする 第 駅 と 第 駅 との 区 間 を 第 駅 区 間 と 呼 ぶ 第 駅 区 間 の 混 雑 率 k は N k (5) K 5

で 定 義 される ただし 第 駅 区 間 の 列 車 本 当 たりの 通 過 人 員 を N 人 その 列 車 の 輸 送 能 力 ( 定 員 数 ) を K とする 列 車 本 当 たりの 通 過 人 数 N は 国 土 交 通 省 駅 別 発 着 駅 間 通 過 人 員 表 および 大 都 市 交 通 センサス( 平 成 7 年 版 )のデータから 推 測 した 値 を 採 用 している 輸 送 能 力 K は 列 車 本 当 た りの 定 員 であり 車 両 当 たり 定 員 が 88 人 で 埼 京 線 は 0 両 編 成 であることから 880 人 で 一 定 であ る 具 体 的 には 埼 京 線 の 通 勤 ラッシュのピーク 時 (7 時 ~9 時 )における 各 駅 の 定 期 券 乗 降 者 数 を 輸 送 能 力 で 割 ることによって 求 めた つ 目 の 混 雑 率 が 通 勤 区 間 混 雑 率 : k である これは 駅 区 間 混 雑 率 を 単 純 に 足 し 合 わせることで は 通 勤 者 の 体 感 する 混 雑 率 をより 正 確 に 把 握 することができないという 問 題 を 解 消 するため 新 しく 定 義 されたものである 第 駅 から 第 0 駅 までの 通 勤 区 間 を 第 通 勤 区 間 とすると 第 通 勤 区 間 混 雑 率 は 駅 から 0 駅 までの 全 ての 駅 区 間 混 雑 率 を 各 駅 区 間 の 乗 車 時 間 をウエイトにして 平 均 化 したも のとして 定 義 される これはすなわち k k =,,,I (6) と 表 すことができる は 駅 区 間 時 間 のウエイトである (6) 式 で 定 義 されたものが 各 最 寄 駅 から 終 着 駅 までの 各 駅 区 間 混 雑 率 の 平 均 を 通 勤 時 間 でならすことで 求 めた 通 勤 区 間 混 雑 率 である これらによ って 最 寄 り 駅 を 第 駅 とする 通 勤 者 の 通 勤 区 間 混 雑 率 k を 得 ることが 出 来 た 郊 外 都 心 第 Ⅰ 駅 第 I- 駅 第 駅 第 - 駅 第 駅 第 0 駅 第 通 勤 区 間 第 駅 区 間 図 駅 区 間 と 通 勤 区 間 5. 家 賃 関 数 の 推 定 以 下 の 式 が(3) 式 を 非 線 型 最 小 二 乗 法 で 推 定 した 結 果 が 以 下 である 尚 括 弧 内 は 標 準 誤 差 である log r *.79 0.00 s 6.7 0. 009 y s (0.35***) (0.00) (4.84***) (0.00***) 0.63log[80 0.75 x w.548 k.8 (0.03***) (0.5***) (0.053***) (0.469***) (6) 6 x

家 賃 関 数 の 推 定 から α/βが 0.63 となることが 判 明 した ここでβは 所 得 に 占 める 家 賃 支 出 の 割 合 であるから 埼 玉 県 統 計 年 鑑 ( 平 成 年 )より 約 0%であることがわかるのでβ=0.0 である βの 値 から 逆 算 を 行 うことで αの 値 はα=0.063 と 分 かる また 疲 労 乗 数 関 数 は 推 定 の 結 果.8 m(.548 k であり その 形 状 は 図 に 示 されている 所 要 時 間 x に 疲 労 回 復 に 必 要 な 調 整 時 間 を 考 慮 した 調 整 済 通 勤 時 間 が m( x であり 疲 労 回 復 に 必 要 な 休 憩 時 間 は 調 整 済 通 勤 時 間 から 所 要 時 間 x を 引 くことで 求 められる これらの 値 は 表 4 の 通 りであ る これによると 南 与 野 駅 から 郊 外 に 向 かうにつれて 疲 労 回 復 のための 休 憩 時 間 は 尐 し 短 縮 されてい ることがわかる これは 南 与 野 駅 あたりまでは 始 発 駅 である 大 宮 から 近 いため 座 席 確 保 の 可 能 性 が 高 いことが 反 映 されているからである また 南 与 野 駅 よりも 都 心 に 近 い 駅 からは 座 席 がすでに 郊 外 か らの 通 勤 者 によって 取 られてしまっているため 乗 車 時 間 は 相 対 的 に 尐 ないものの 疲 労 回 復 に 必 要 な 休 憩 時 間 が 長 くなるということが 分 かった また 推 定 結 果 から 床 面 積 s が 大 きくなれば 家 賃 は 高 くなること また 築 年 数 の 値 が 大 きくなるほど ( 古 い 物 件 であればあるほど) 家 賃 は 安 くなるということが 確 認 できる そして 駅 からの 徒 歩 時 間 が 長 くなるほど また 電 車 混 雑 がひどくなるほど 家 賃 が 安 くなることが 確 認 された これらのことから 家 賃 関 数 の 推 定 結 果 はわたしたちの 実 感 と 近 いものであり 妥 当 なものであると 言 えるだろう 6. 等 価 変 分 を 用 いた 分 析 前 章 において 家 賃 関 数 を 推 定 することが 出 来 疲 労 乗 数 関 数 m ( パラメータα βが 明 らかとなっ たことから 通 勤 者 の 効 用 を 測 定 することが 可 能 となった それを 用 いて 通 勤 によって 生 じる 総 費 用 を 等 価 変 分 の 概 念 を 用 いて 分 析 し さらにそれを 時 間 費 用 と 疲 労 費 用 に 分 解 していく なお ここでは 家 賃 の 変 化 が 起 こらない 短 期 を 想 定 する 6- 総 費 用 まず 通 勤 の 総 費 用 について 考 える ここでは 列 車 による 通 勤 の 必 要 がなくなった 場 合 を 仮 定 する 通 勤 の 必 要 がなくなった 時 は 必 然 的 に 通 勤 の 時 間 費 用 も 疲 労 費 用 もなくなるため 通 勤 者 の 効 用 は 上 昇 する この 上 昇 分 を 相 殺 する 所 得 Y の 変 化 分 が 通 勤 の 総 費 用 を 表 す 等 価 変 分 である 要 するに 列 車 による 通 勤 のなくなった 人 の 効 用 を 通 勤 のある 人 の 効 用 と 等 しくするためには どれだけの 所 得 を 通 勤 のなくなった 人 から 奪 えば 良 いか について 考 えていくのである 仮 にある 地 点 からの 通 勤 が 不 必 要 になった(x=0)とすると その 地 点 の 効 用 は 上 昇 する 今 家 賃 は 変 化 しないとして 上 昇 した 効 用 水 準 を 前 の 通 勤 があった 状 態 で 達 成 するのに 必 要 な 所 得 の 増 分 を c で 表 わすとすれば (0) 式 の 家 賃 関 数 の 式 を 用 いて r ( Y, k, v) r ( Y' c, k, v) (8) 7

と 表 すことができる (8) 式 の 右 辺 は 通 勤 時 間 ゼロの 時 の 効 用 水 準 を 表 している 右 辺 の Y は 通 勤 時 間 がゼロの 時 に 上 昇 す ると 仮 定 している 所 得 で c は 通 勤 がある 時 と 同 じ 効 用 水 準 と 等 しくするために 減 らさなければならない 所 得 分 である これを 解 くと c c(x) が 得 られる この c の 大 きさが 通 勤 の 総 費 用 を 表 す 等 価 変 分 であ る 以 上 から c(x)を x 地 点 における 総 費 用 と 定 義 する 6- 疲 労 費 用 次 に 通 勤 の 疲 労 費 用 について 考 える ここでは 通 勤 による 疲 労 がなくなった 場 合 を 想 定 する これ はつまり m( k ~ ) の 場 合 である m( k ~ ) のもとでは 混 雑 による 疲 労 がなくなる すなわち 調 整 済 通 勤 時 間 が 通 勤 区 間 時 間 と 等 しくなった 時 であり この 場 合 x 地 点 における 与 えられた 家 賃 のもとで の 通 勤 者 の 効 用 は 上 昇 する この 上 昇 分 を 相 殺 する 所 得 Y の 変 化 分 が 通 勤 の 疲 労 費 用 を 表 す 等 価 変 分 で ある この 所 得 Y の 変 化 分 を c とすると f r *( Y, k, v) r *( Y" c, k, v) f (9) が 成 り 立 つ (9) 式 の 右 辺 は 通 勤 による 疲 労 がない 場 合 の 効 用 水 準 を 表 している 右 辺 の Y は 混 雑 に よる 疲 労 がない 場 合 の 所 得 で c は 通 勤 ラッシュによる 疲 労 がある 場 合 と 同 じ 効 用 水 準 を 達 成 するため f に 減 らさなければならない 所 得 分 を 表 している これを 解 くと c f c f (x) が 得 られる この c f (x) は x 地 点 における 通 勤 の 疲 労 費 用 を 表 す 等 価 変 分 である 以 上 より この c f (x) を 疲 労 費 用 と 定 義 する 6-3 時 間 費 用 鉄 道 利 用 において 通 勤 者 は 通 勤 の 金 銭 的 費 用 を 支 給 され 自 ら 支 払 わないとしているとしているの で 通 勤 における 総 費 用 は 疲 労 費 用 と 時 間 費 用 の 和 である このことから 6- で 定 義 した 通 勤 の 総 費 用 から 6- で 定 義 した 通 勤 の 疲 労 費 用 を 引 いた 値 すなわち c( x) c ( x) が 時 間 費 用 であると 定 義 する f 8

7. 混 雑 増 大 の 限 界 費 用 6 章 では 混 雑 による 疲 労 費 用 を 算 出 した 本 章 では 混 雑 率 増 大 による 限 界 費 用 の 算 出 を 行 う 家 賃 関 数 の 推 定 から 効 用 関 数 の 各 パラメータ ならびに 疲 労 乗 数 関 数 である m ( 関 数 が 推 定 されたので 埼 京 線 の 朝 のラッシュ 時 の 通 勤 における 疲 労 費 用 を 家 賃 以 外 の 財 である 合 成 財 z で 換 算 したものを 測 定 できる 疲 労 費 用 を 合 成 財 で 評 価 したものは の に 対 する 限 界 代 替 率 MRS として U k ( h, z, MRS F ( h, z, (0) U ( h, z, z となる ただし U, U は 効 用 関 数 U( h, z, の z, k に 対 する 限 界 効 用 である 合 成 財 z の 価 格 は k z であることから 上 記 (0) 式 の 限 界 代 替 率 は 限 界 的 な 疲 労 の 費 用 を 金 銭 で 評 価 したものとなる すな わち (0) 式 は 混 雑 率 単 位 (%)あたりの 費 用 が 円 換 算 されたものである さらにここでは コブ-ダグラス 型 の 効 用 関 数 を 用 いているため 床 面 積 h と 合 成 財 z の 需 要 量 は 所 得 水 準 Y の 関 数 となる すなわち h h(y ), z z(y ) と 書 ける このことより(0) 式 の 限 界 代 替 率 は 混 雑 率 k と 時 間 距 離 x のみで 表 せる これを 疲 労 費 用 関 数 f ( k, x) として f ( k, x) MRS ( h( Y), z( Y), () と 定 義 できる なお Y は 一 定 である よって (6) 式 から z k に 対 する 限 界 効 用 は U Z F ( x ) h z ( m( ) () U k ( m( x) h z m ( x (3) となる ただし m ( dm( / dk である これらから (0) 式 を 導 出 すると m( x f ( k, x) Y (4) ( m( x) となる (4) 式 に(7) 式 の 推 定 結 果 で 得 られたパラメータ 群 の 値 を 代 入 することにより 限 界 疲 労 費 用 の 具 体 的 な 値 が 各 最 寄 駅 で 得 られる それらを 一 覧 にしたものが 表 4 である F 8. 通 勤 における 外 部 不 経 済 7 章 では (0) 式 の 混 雑 率 増 大 の 限 界 疲 労 費 用 が 求 められた 本 章 では これを 利 用 して 通 勤 の 外 部 不 経 済 を 測 定 する この 外 部 不 経 済 が 測 定 できれば 通 勤 ラッシュ 時 の 最 適 な 混 雑 料 金 を 求 めることがで きる このようにして 埼 京 線 各 駅 から 新 宿 駅 までの 各 区 間 の 最 適 な 混 雑 料 金 の 測 定 を 行 う はじめに 外 部 不 経 済 効 果 を 算 出 する ここにおいて 外 部 不 経 済 とは 混 雑 した 列 車 に 乗 り 込 む 通 勤 者 が 人 追 加 的 に 増 加 することによって その 列 車 に 乗 車 しているすべての 通 勤 者 の 疲 労 を 増 加 させるこ とである したがって 外 部 不 経 済 効 果 の 大 きさは 発 生 した 通 過 人 員 全 員 の 疲 労 費 用 の 増 加 分 を 総 計 し 限 界 代 替 率 の 導 入 にあたり 効 用 関 数 が 満 たすべき 性 質 連 続 性 単 調 増 加 性 強 い 意 味 の 擬 凹 性 連 続 回 微 分 可 能 性 は 仮 定 されているとする 所 得 Y には 埼 玉 県 総 務 部 統 計 課 の 埼 玉 県 統 計 年 鑑 ( 平 成 年 )より 埼 玉 県 の 民 営 借 家 に 居 住 する 世 帯 主 の カ 月 の 定 期 収 入 を 用 いた 9

たものとなる ある 駅 から 追 加 的 な 通 勤 者 が 人 乗 るとする 追 加 的 な 通 勤 者 は 自 分 が 乗 ることによりその 駅 区 間 での 混 雑 率 を 上 昇 させ この 混 雑 上 昇 はその 他 の 区 間 の 通 勤 者 の 感 じる 通 勤 混 雑 にも 影 響 を 与 える こ の 追 加 的 な 通 勤 者 が 乗 り 続 ける 駅 区 間 における すべての 乗 客 の 疲 労 費 用 の 上 昇 を 合 計 したものが 追 加 的 な 通 勤 者 の 及 ぼす 外 部 不 経 済 効 果 の 大 きさである n 人 第 駅 N 人 n 人 k 第 駅 N 人 k 第 0 駅 k ( k, k ) k ( k ) 図 3 各 駅 からの 通 勤 者 の 外 部 不 経 済 ( 駅 区 間 の 場 合 ) ここからは 上 の 図 3 を 使 いながら 示 していく ここでは 分 かりやすく 駅 間 で 考 える まず 第 駅 からの 増 加 した 通 過 人 員 の 与 える 外 部 不 経 済 を 考 える 第 駅 区 間 の 通 過 人 員 が 人 増 えることによる 駅 区 間 混 雑 率 k の 上 昇 分 は dk (5) dn K である 列 車 の 定 員 は 一 定 であるので (5) 式 はどの 駅 区 間 においても 成 り 立 つ 第 駅 区 間 混 雑 率 k の 上 昇 は 第 通 勤 区 間 混 雑 率 kと 第 通 勤 区 間 混 雑 率 k の 両 方 に 影 響 を 与 える この 影 響 を 考 慮 するための 項 が 第 駅 区 間 混 雑 率 の 第 通 勤 区 間 混 雑 率 に 与 える 影 響 第 駅 区 間 混 雑 率 の 第 通 勤 区 間 混 雑 率 に 与 える 影 響 尚 第 駅 区 間 混 雑 率 の 第 区 間 通 勤 混 雑 率 に 与 える 影 響 は dk ( dk k k ( k ( k, k ) k, k k,..., k ) である これらによって 第 駅 区 間 での 通 過 人 員 名 増 加 による 通 勤 区 間 混 雑 率 への 影 響 は と 表 すことができる dk ( k ) dk ( k ) dk dk ( k ) (7) dn dk dn dk K dk ( k, k ) k ( k, k ) dk k ( k, k ) (8) dn k dn k K, によって 求 めることができる 人 の 通 勤 者 の 持 つ 限 界 疲 労 費 用 は 7 章 で 既 に 求 めている 追 加 的 な 通 勤 者 は 列 車 に 乗 車 している 通 0

勤 者 全 員 に 影 響 を 与 えるので 乗 車 している 人 数 を 限 界 疲 労 費 用 と 掛 けることによって 外 部 不 経 済 効 果 を 測 ることができる このことから 第 通 勤 区 間 に 乗 車 している 通 勤 者 への 外 部 不 経 済 効 果 は n f k ( k ), ) ( x f ( k ( k, k ), x 第 通 勤 区 間 に 乗 車 している 通 勤 者 への 外 部 不 経 済 効 果 は n ) である したがって (7)(8) 式 と 第 駅 区 間 での 通 過 人 員 名 の 増 加 が 及 ぼす 外 部 不 経 済 効 果 Eは 第 駅 の 追 加 乗 車 人 数 n 人 が 駅 区 間 混 雑 率 を 通 じて 通 勤 区 間 混 雑 率 に 与 える 影 響 と 同 様 にして 第 駅 から の 通 勤 者 n 人 に 与 える 影 響 を 総 計 して 求 められるので k ( k, k ) dk dk ( k ) dk E n f ( k ( k, k ), x ) n f ( k( k ), x ) (9) k dn dk dn となる この 外 部 不 経 済 Eは 第 駅 からの 通 勤 者 人 が その 列 車 に 乗 り 込 むことによって 他 の 乗 客 に 与 える 迷 惑 の 大 きさを 総 計 したものである 次 に 第 駅 から 追 加 的 な 通 勤 者 が 乗 車 する 場 合 について 考 える まず 第 駅 からの 追 加 的 な 通 勤 者 の 与 える 第 駅 区 間 からの 乗 車 人 員 n 人 に 対 する 外 部 不 経 済 E は k ( k, k ) n f ( k ( k, k ), x ) dk E (30) k dn と 表 される 列 車 にはこの 後 第 駅 へ 移 動 し 第 駅 では 更 に n 人 乗 り 込 んでくる ゆえに 第 駅 から の 追 加 的 な 通 勤 者 の 与 える 外 部 不 経 済 E は (30) 式 に 第 駅 からの 外 部 不 経 済 Eを 合 計 して として 求 められる E k ( k, k ) dk n f ( k ( k, k ), x ) E (3) k dn 以 上 から E, E の 値 について 限 界 運 営 費 用 をゼロとし 各 駅 から 第 0 駅 ( 終 着 駅 )までの 運 賃 とし て 設 定 することにより 適 正 な 混 雑 度 を 達 成 する 混 雑 料 金 水 準 を 得 ることができる ここでの 駅 区 間 の 考 え 方 は 第 I 駅 の 場 合 まで 拡 張 させることができる 最 終 駅 を 第 I 駅 として 第 駅 からの 追 加 的 通 勤 者 の 与 える 外 部 不 経 済 効 果 (つまり 駅 に 課 されるべき) 混 雑 料 金 E は k ( k,, k I j j E E n j f ( k j ( k,, k ), x j ) j k j ) dk dn ただし E 0 0 (,,, I) (3) として 求 めることができる これによって 各 駅 からの 混 雑 料 金 E 算 出 することができる 表 5 は JR 埼 京 線 新 宿 - 大 宮 駅 間 における 各 区 間 についての 混 雑 料 金 を 一 覧 にまとめたものである

9. 測 定 結 果 についての 考 察 本 稿 では 埼 京 線 の 混 雑 について 二 つのアプローチを 用 いて 実 証 分 析 を 行 った まず 測 定 結 果 の 考 察 を 行 う 前 に 実 際 にはどのような 数 値 が 測 定 されたかを 示 し この 測 定 結 果 についての 解 釈 を 述 べる 次 に これを 踏 まえて 先 行 研 究 である 中 央 線 のケースとの 比 較 を 行 い 埼 京 線 ならではの 特 徴 について 論 じたいと 思 う 9-. 等 価 変 分 を 用 いた 分 析 等 価 変 分 の 概 念 を 用 いて 埼 京 線 の 通 勤 者 の 持 つ 各 費 用 を 算 出 した 総 費 用 のピークは 中 浦 和 駅 の 5.50 円 で 疲 労 費 用 のピークは 武 蔵 浦 和 駅 の 477.0 円 である また 全 体 の 傾 向 として 埼 京 線 での 通 勤 の 場 合 では 通 勤 の 時 間 費 用 よりも 疲 労 費 用 が 大 きく 評 価 されていることがわかる 通 勤 の 総 費 用 に 占 める 各 費 用 の 割 合 をとると この 傾 向 はより 鮮 明 に 表 れる 疲 労 費 用 の 割 合 が 80% 台 後 半 から 90% 代 前 半 と 測 定 された 一 方 で 時 間 費 用 は 総 費 用 に 占 める 割 合 が 0% 前 後 という 結 果 となっているからだ 詳 しくは 表 4 の 疲 労 費 用 割 合 の 列 を 参 照 されたい このことから 埼 京 線 の 通 勤 者 にとっては 疲 労 費 用 が 通 勤 に 占 めるコストの 大 部 分 を 占 めていることがわかる 9-. 限 界 代 替 率 を 用 いた 適 正 混 雑 料 金 の 測 定 7 章 で 示 した 方 法 を 用 いて 各 通 勤 者 の 限 界 疲 労 費 用 を 算 出 し そこから 追 加 的 な 通 勤 者 によって 発 生 する 外 部 不 経 済 効 果 を 測 定 した ここで 測 定 された 外 部 不 経 済 効 果 の 大 きさが 埼 京 線 の 通 勤 ラッシュ 時 にかけられるべき 最 適 混 雑 料 金 である 表 5 から 埼 京 線 の 通 勤 ラッシュ 時 にかけられるべき 最 適 混 雑 料 金 は 現 在 の 通 勤 定 期 の 料 金 に 比 べ て 非 常 に 大 きなものとして 測 定 されたことが 容 易 にわかる 定 期 料 金 と 比 べて 一 番 低 い 混 雑 料 金 は 池 袋 駅 の 599 円 であり 倍 率 は 6.97 倍 である また 定 期 料 金 に 比 べて 最 も 高 い 混 雑 料 金 は 浮 間 舟 渡 駅 の 5 円 であり その 倍 率 は 8.78 倍 にも 達 する この 混 雑 料 金 が 大 きく 測 定 された 原 因 としては 追 加 的 な 通 勤 者 が 他 の 通 勤 者 に 与 える 限 界 疲 労 費 用 が 大 きく 測 定 されていることによると 考 えられる このため 外 部 不 経 済 効 果 が 大 きくなり 混 雑 料 金 が 大 きくなってしまうのだ 混 雑 料 金 とは 価 格 を 引 き 上 げることによって 電 車 に 対 する 需 要 過 剰 を 抑 え ようとする 考 え 方 である しかしながら 混 雑 料 金 を 支 払 うのは 混 雑 した 電 車 に 乗 る 通 勤 者 自 身 である ことに 注 意 する 必 要 がある 例 えば 大 宮 駅 からの 通 勤 者 に 課 されるべき 混 雑 料 金 は 369 円 と 測 定 され ているが 果 たしてこの 料 金 設 定 は 現 実 的 なものだろうか 9-3. 中 央 線 のケース( 先 行 研 究 )との 比 較 先 行 研 究 である 山 鹿 八 田 (000)では 中 央 線 の 通 勤 混 雑 について 実 証 分 析 が 行 われている ここ

では 先 行 研 究 で 行 われた 中 央 線 の 通 勤 混 雑 の 実 証 分 析 と 我 々の 行 った 埼 京 線 の 実 証 分 析 の 結 果 を 比 較 することで 埼 京 線 の 特 徴 を 示 したいと 思 う 表 6 から 中 央 線 のケースでは 疲 労 費 用 よりも 時 間 費 用 の 方 が 大 きく 測 定 されていることがわかる 通 勤 の 総 費 用 に 占 める 割 合 としては 疲 労 費 用 の 占 める 割 合 が 5%~8.4%である 一 方 時 間 費 用 の 占 め る 割 合 は 約 70%~90%となっている この 結 果 は 埼 京 線 の 測 定 結 果 と 大 きく 異 なるものである 先 に 述 べた 通 り 埼 京 線 では 通 勤 の 総 費 用 のほとんどが 疲 労 費 用 であると 測 定 されており 先 行 研 究 の 中 央 線 のケースと 比 較 から 両 者 はほぼ 正 反 対 の 測 定 結 果 となっていると 言 えるだろう 次 に 通 勤 ラッシュ 時 にかけられるべき 混 雑 料 金 についての 比 較 を 行 う 表 7から 中 央 線 のケース では 通 勤 ラッシュ 時 にかけられるべき 混 雑 料 金 は 定 期 料 金 の 約 ~3 倍 として 測 定 されていることがわ かる この 結 果 は 比 較 的 現 実 的 な 料 金 設 定 となっていると 言 えるだろう 我 々の 行 った 埼 京 線 のケー スでは 課 すべき 混 雑 料 金 は 定 期 料 金 の 約 6 倍 ~8 倍 となってしまっている これら 二 つの 比 較 から 埼 京 線 のケースと 中 央 線 のケースでは 同 じモデルを 利 用 して 推 定 を 行 ってき たにも 関 わらず 測 定 結 果 に 大 きな 違 いが 生 まれてしまっていることがよくわかる これらの 違 いは 何 が 原 因 で 起 こったのだろうか わたしたちとしては 中 央 線 のケースで 推 定 された 疲 労 乗 数 関 数 と 埼 京 線 のケースで 推 定 された 疲 労 乗 数 関 数 の 違 いが 原 因 ではないかと 考 えている 先 行 研 究 である 中 央 線 のケースで 推 定 された 疲 労 乗 数 関 数 は. m( x 0.807 k x (33) 一 方 埼 京 線 のケースで 推 定 された 疲 労 乗 数 関 数 は.8 m( x.548 k x (34) (33)と(34)は 同 じ 方 法 で 推 定 された 疲 労 乗 数 関 数 であるが その 形 状 は 大 きく 異 なることがわかる つまり (33)の 中 央 線 の 通 勤 者 の 疲 労 乗 数 関 数 は 比 較 的 緩 やかであるのに 対 して (34)の 埼 京 線 の 通 勤 者 の 疲 労 乗 数 関 数 は 相 対 的 に 急 な 形 状 をとっているのだ この 疲 労 乗 数 関 数 の 形 状 の 違 いによって 通 勤 者 の 混 雑 による 疲 労 についての 評 価 に 差 が 生 じたのである また この 混 雑 による 疲 労 についての 評 価 の 違 いは 等 価 変 分 や 限 界 代 替 率 の 概 念 を 用 いて 測 定 された 値 に 影 響 を 与 えたのである (33) 式 と(34) 式 の 関 数 の 形 状 のイメージを 図 示 すると 以 下 のようになる m( m( k k 図 4 (33)の 形 状 イメージ( 中 央 線 ) 図 5 (34)の 形 状 イメージ( 埼 京 線 ) 3

この 疲 労 乗 数 関 数 の 形 状 の 違 いは 中 央 線 と 埼 京 線 のデータの 特 徴 の 差 から 生 まれたものと 考 えられ る 第 一 に 中 央 線 と 埼 京 線 を 比 較 すると その 運 行 距 離 に 大 きな 差 があることがわかる 先 行 研 究 の 調 査 対 象 は 東 京 高 尾 間 であり 乗 車 時 間 は 73 分 であった 一 方 埼 京 線 の 分 析 では 調 査 対 象 は 新 宿 大 宮 間 であり 乗 車 時 間 は 39 分 である この 路 線 の 長 さの 違 いに 加 えて 中 央 線 と 埼 京 線 の 間 には 列 車 の 混 雑 率 にも 大 きな 隔 たりが 存 在 する 通 勤 区 間 混 雑 率 が 50%を 超 えている 区 間 3について 注 目 しよう 中 央 線 の 分 析 では 混 雑 率 が 50%を 超 えている 区 間 は 9 区 間 中 6 区 間 であったのに 対 し 埼 京 線 の 分 析 では 5 区 間 中 4 区 間 が 混 雑 率 50%を 超 えてしまっている つまり 中 央 線 に 比 べ 埼 京 線 は 乗 車 時 間 こそ 短 時 間 ではあるが 通 勤 ラッシュ 時 の 混 雑 は 非 常 に 大 きなものとなっているのである これらのデ ータの 特 徴 の 差 のため 埼 京 線 のケースでは 通 勤 者 の 混 雑 による 疲 労 が 大 きく 測 定 されているのである 0. 結 論 以 上 のようにして 本 稿 では 埼 京 線 の 通 勤 ラッシュについての 実 証 分 析 を 行 ってきた 分 析 の 結 果 か ら 埼 京 線 における 通 勤 の 費 用 は その 大 部 分 が 疲 労 費 用 であるということが 明 らかとなった 埼 京 線 における 通 勤 の 疲 労 費 用 は なんと 通 勤 の 総 費 用 の 約 8 割 ~9 割 を 占 めているのである また 混 雑 増 大 による 外 部 不 経 済 効 果 を 測 定 することによって 求 めた 埼 京 線 の 適 正 混 雑 料 金 は 現 在 の 定 期 料 金 の 約 6 倍 ~8 倍 にも 達 することがわかった もちろんここで 求 めた 混 雑 料 金 は 混 雑 率 が 通 勤 ラッシュのピー ク 時 のものであるため 通 勤 ラッシュのピーク 時 にかけられるべきものである しかしながら 定 期 料 金 の 約 6~8 倍 という 料 金 設 定 は あまり 現 実 的 なものではないことが 明 らかである したがって 単 純 な 混 雑 料 金 の 導 入 は 埼 京 線 の 通 勤 ラッシュ 緩 和 の 解 決 策 としてはあまり 適 切 なものではないと 言 え るだろう 3 詳 しくは 表 5,7 を 参 照 のこと 4

< 参 考 文 献 > アットホーム 株 式 会 社.(00 年 ). 不 動 産 総 合 情 報 サイト at home web(http://www.athome.co.jp/) アットホーム 株 式 会 社. NHK 国 民 生 活 時 間 調 査. (995 年 ). 日 本 人 の 生 活 時 間. NHK 出 版 国 土 交 通 省.(007 年 度 ). 快 適 性 安 心 性 評 価 指 標 の 内 容 と 概 略. 国 土 交 通 省. 国 土 交 通 省.(007 年 度 ). 快 適 性 安 心 性 評 価 指 標 の 計 測 結 果 一 覧. 国 土 交 通 省. 国 土 交 通 省. (00 年 ) 駅 別 発 着 駅 間 通 過 人 員 表. 国 土 交 通 省. 埼 玉 県 総 務 部 統 計 課. (009 年 ). 埼 玉 県 統 計 年 鑑. 埼 玉 県 ( 財 ) 運 輸 政 策 研 究 センター. (005 年 ). 大 都 市 交 通 センサス( 首 都 圏 版 ). 国 土 交 通 省. JR 東 日 本.(00 年 ). えきねっと(JR 東 日 本 ) 駅 時 刻 運 賃 案 内 (http://jreast.ek-net.com/staton-tme/) 八 田 達 夫, 山 鹿 久 木.(000 年 ). 通 勤 の 疲 労 コストと 最 適 混 雑 料 金 の 測 定 読 売 新 聞 社.(005 年 月 8 日 朝 刊 ). 痴 漢 ワーストは 埼 京 線. 読 売 新 聞 社 5

グラフ 路 線 別 の 痴 漢 発 生 件 数 (004 年 ) グラフ 埼 京 線 各 駅 から 新 宿 駅 までの 通 勤 区 間 混 雑 率 6

表 混 雑 率 ワースト 0(007 年 度 公 共 交 通 の 快 適 性 安 心 性 評 価 指 標 について より 作 成 ) 路 線 最 混 雑 区 間 混 雑 率 京 浜 東 北 線 上 野 御 徒 町 09% 総 武 線 ( 各 駅 停 車 ) 錦 糸 町 両 国 06% 3 山 手 線 上 野 御 徒 町 05% 4 埼 京 線 板 橋 池 袋 00% 5 東 西 線 木 場 門 前 仲 町 99% 6 京 葉 線 葛 西 臨 海 公 園 新 木 場 98% 中 央 線 快 速 中 野 新 宿 98% 田 園 都 市 線 池 尻 大 橋 渋 谷 98% 9 京 浜 東 北 線 大 井 町 品 川 97% 0 南 武 線 武 蔵 中 原 武 蔵 小 杉 93% 横 浜 線 小 机 新 横 浜 93% 参 考 00% 乗 客 全 員 が 座 席 に 座 るか つり 革 につかまっている 状 況 50% 肩 が 触 れ 合 う 程 度 で 新 聞 が 楽 に 読 める 80% 体 が 触 れ 合 うが 新 聞 は 読 める 00% 体 が 触 れ 合 い 相 当 圧 迫 感 があるが 週 刊 誌 程 度 なら 何 とか 読 める 表 家 賃 関 数 推 計 に 用 いた 変 数 の 基 本 統 計 量 変 数 平 均 値 月 額 家 賃 ( 万 円 ) 0.98 徒 歩 時 間 ( 分 ) 9.37 都 心 までの 時 間 距 離 ( 分 ).3 通 勤 区 間 混 雑 率.75 床 面 積 (m) 5.7 築 年 数 ( 年 ) 7.0 7

表 3 家 賃 関 数 の 推 定 結 果 変 数 係 数 標 準 誤 差 床 面 積 s 0.00 0.00 / 床 面 積 /s 6.7*** 4.84 築 年 数 y 0.009*** 0.00 α /β 0.63*** 0.03 徒 歩 時 間 0.75*** 0.5 通 勤 混 雑 率 k.548*** 0.053 σ ( 混 雑 率 の 指 数 ).8*** 0.469 定 数 項 -.79*** 0.35 自 由 度 修 正 済 決 定 係 数 0.7405 F 値 97.8505 サンプル 数 480 *** **はそれぞれ %,5% 水 準 で 有 意 であることを 示 す 表 4 データと 等 価 変 分 によって 測 定 された 各 費 用 ( 埼 京 線 ) 最 寄 駅 駅 区 通 勤 休 憩 疲 労 時 間 x m(*x 総 費 用 疲 労 費 用 間 混 区 間 時 間 費 用 費 用 ( 分 ) ( 分 ) ( 円 ) 割 合 雑 率 混 雑 率 ( 分 ) ( 分 ) ( 円 ) 池 袋 5.03.03 39.04 34.04 55. 6.3 7.0 88.4% 板 橋 9.33.6 8.04 7.04 39.9 53.4 3. 9.4% 十 条..7 00.0 89.0 9.49 08.84 6.35 9.% 赤 羽 4.6.7 6.97.97 94. 35.4. 93.3% 北 赤 羽 7.57.06 37.54 0.54 347.76 373.89 6.3 93.0% 浮 間 舟 渡 9.45.00 43.0 4.0 380.87 40.36 9.48 9.8% 戸 田 公 園.37.94 47.53 6.53 4.96 444.86 3.89 9.6% 戸 田 3.5.88 50.34 7.34 43.6 468.94 36.33 9.3% 北 戸 田 5.9.8 5.6 7.6 450.49 490.30 39.8 9.9% 武 蔵 浦 和 8.4.75 55.7 7.7 477.0 5.34 45.5 9.4% 中 浦 和 9 0.98.73 55.73 6.73 475.60 5.50 46.90 9.0% 南 与 野 3 0.9.67 55.09 4.09 465.09 55.5 50.4 90.% 与 野 本 町 34 0.83.60 53.5 9.5 440.74 496.47 55.73 88.8% 北 与 野 36 0.79.55 5.0 6.0 45.0 484.5 59.3 87.8% 大 宮 39 0.75.49 50.07.07 40.73 466.5 64.79 86.% 8

表 5 通 勤 の 限 界 疲 労 費 用 と 最 適 混 雑 料 金 ( 埼 京 線 ) 時 間 限 界 疲 労 費 用 定 期 料 金 混 雑 料 金 ( 分 ) ( 円 ) ( 円 ) ( 円 ) 倍 率 池 袋 5 79.86 86 599 6.97 板 橋 9.80 9,097.97 十 条 338.4 9,340 4.63 赤 羽 4 646.5 5,700 4.84 北 赤 羽 7 99.6 5,978 7.7 浮 間 舟 渡 9,33.0 5,5 8.78 戸 田 公 園,37.08 60,34 4.43 戸 田 3,579.97 60,46 5.35 北 戸 田 5,790.66 60,600 6. 武 蔵 浦 和 8,45.68 06,798 3.57 中 浦 和 9,80.35 06,85 3.83 南 与 野 3,8.04 06,948 4.30 与 野 本 町 34,0.77 46 3,075.49 北 与 野 36,05.47 46 3,55.8 大 宮 39,97.49 46 3,69 3.7 9

表 6 データと 等 価 変 分 によって 測 定 された 各 費 用 ( 中 央 線 : 先 行 研 究 より) 通 勤 休 憩 疲 労 時 間 中 央 線 時 間 駅 区 間 m(*x 総 費 用 疲 労 費 区 間 時 間 費 用 費 用 ( 快 速 ) (x) 混 雑 率 ( 分 ) ( 円 ) 用 割 合 混 雑 率 ( 分 ) ( 円 ) ( 円 ) 中 野 8.376.367 8.3.3 8.8 3.4 94.6.9% 高 円 寺.369.368.9.9 37.3 84.3 47.0 3.% 阿 佐 ヶ 谷 3.73.35 4.8.8 36.9 30.7 73.8.9% 荻 窪 5.07.3 6.4.4 3.5 33.3 300.8 9.5% 西 荻 窪 8.64.30 8.. 8.4 356.6 38. 8.0% 吉 祥 寺 34..8 30.8.8 4.9 395. 370. 6.3% 三 鷹 36.75.66 3.5.5.0 49.7 398.7 5.0% 武 蔵 境 40.79.393 40.8 5.8 84.9 545. 460.3 5.6% 東 小 金 井 4.3.474 47. 9. 39.0 647.8 508.8.5% 武 蔵 小 金 井 44.987.509 5.0.0 70. 7.8 54.7 3.9% 国 分 寺 47.97.559 58. 4. 9.4 839. 609.7 7.3% 西 国 分 寺 49.647.568 63.8 5.8 67.5 946.8 679.3 8.3% 国 立 50.563.568 66.5 6.5 84.3 999.4 75. 8.4% 立 川 53.348.548 70.8 6.8 300.0 087.6 787.6 7.6% 日 野 59.09.5 74.0 6.0 94. 55.4 86.3 5.5% 豊 田 64.04.48 76. 5. 86.3 04.4 98. 3.8% 八 王 子 69 0.89.438 78.5 3.5 6.7 56.9 995. 0.8% 西 八 王 子 7 0.79.394 8.7.7 34.8 33.0 096. 7.6% 高 尾 73 0.497.35 8. 9. 87.6 343.3 55.7 4.0% 0

表 7 通 勤 の 限 界 疲 労 費 用 と 最 適 混 雑 料 金 ( 中 央 線 : 先 行 研 究 より) 限 界 疲 労 時 間 定 期 料 金 混 雑 料 金 費 用 ( 分 ) ( 円 ) ( 円 ) ( 円 ) 倍 率 中 野 8 60 5 0 0.96 高 円 寺 06 6 60 0.99 阿 佐 ヶ 谷 3 9 6 0.30 荻 窪 5 5 6 50.55 西 荻 窪 8 76 07 300.45 吉 祥 寺 34 33 07 340.64 三 鷹 36 338 07 400.93 武 蔵 境 40 40 47 480.94 東 小 金 井 4 47 47 590.39 武 蔵 小 金 井 44 53 47 670.7 国 分 寺 47 604 93 770.63 西 国 分 寺 49 69 93 830.83 国 立 50 739 93 890 3.04 立 川 53 830 338 970.87 日 野 59 96 378 060.80 豊 田 64 938 378 00.9 八 王 子 69 07 44 80.78 西 八 王 子 7 83 44 30.90 高 尾 73 38 487 60.59