1 家 畜 繁 殖 において 人 工 授 精 (AI)の 成 功 率 を 上 げる" 精 液 のその 場 処 理 技 術 ~ 元 気 な 精 子 の 捕 集 と 性 分 離 の 両 立 独 立 行 政 法 人 産 業 技 術 総 合 研 究 所 生 産 計 測 技 術 研 究 センター 主 任 研 究 員 山 下 健 一
2 本 技 術 のポイント その 場 で 使 える 器 具 元 気 な 精 子 を 従 来 法 の 百 万 倍 の 効 率 で 捕 集 そのまま 人 工 授 精 へ 元 気 な 精 子 を 集 めるだけでなく 性 比 を 偏 らせた 精 液 調 製 技 術 外 国 の 特 許 に 左 右 されず 任 意 の 種 牛 の 精 液 を 処 理 できる 性 選 別 技 術
3 畜 産 における 繁 殖 畜 産 の 中 でも 牛 をターゲット 牛 は 経 済 動 物 法 律 でも 特 別 扱 い 1 年 一 産 で1 頭 しか 生 まない 用 途 により 性 別 要 求 が 異 なる( 肉 牛 乳 牛 ) 繁 殖 のほぼすべてが 人 工 的 な 交 配 で そのうちのほとんどが 体 外 受 精 ではなく 人 工 授 精 ちなみに その 繁 殖 技 術 の 多 くは 人 間 の 不 妊 治 療 の 知 見 を 活 かしている 人 工 授 精 では 体 外 受 精 に 比 して 高 濃 度 高 活 力 多 量 の 精 液 が 必 要 さらに 性 別 の 産 み 分 けも 重 要
繁 殖 技 術 開 発 による 生 産 性 向 上 牛 だって 生 き 物 期 待 通 りに 妊 娠 出 産 してくれるわけではない 一 度 の1 頭 しか 生 まれない 1か 月 子 牛 の 誕 生 が 遅 れると 利 益 が5 万 円 単 位 で 吹 き 飛 ぶ 妊 娠 しないと 牛 乳 出 ないし 牛 は 夏 に 弱 い じゃあ 冬 に 頑 張 って 働 くとか 無 理 どの 季 節 にも 出 荷 し 続 けないといけないし 畜 産 業 における 経 営 の 計 画 性 向 上 の 大 前 提 は 所 望 の 時 期 に 所 望 の 性 別 を 妊 娠 させること 現 状 の 問 題 点 下 がり 続 ける 妊 娠 成 功 率 一 部 の 著 名 な 種 牛 の 精 液 による 人 工 授 精 で 繁 殖 精 液 の 配 布 形 態 は 0.5mL 入 りストローの 凍 結 品 標 準 規 格 解 凍 すると 生 きている 精 子 は2-5 割 死 んだ 精 子 由 来 の 成 分 が 邪 魔 をして 受 胎 率 が 大 幅 に 低 下 妊 娠 中 緻 密 な 繁 殖 計 画 と 収 益 向 上 を 可 能 にする 繁 殖 用 精 液 処 理 技 術 1 元 気 に 動 く 精 子 の 割 合 を 高 め 2 希 望 の 性 の 精 子 を 得 る 技 術 4
5 元 気 な 精 子 の 割 合 を 高 める 技 術 < 従 来 技 術 との 比 較 > これまでにも 元 気 な 精 子 だけを 捕 集 する(または 死 んでいるものを 取 り 除 く) 方 法 の 報 告 や 実 用 技 術 はすでにあった Washing( 含 Centrifugation) 一 旦 全 部 遠 心 で 落 として 展 開 液 元 気 分 けというより 成 分 分 離 生 存 率 気 にしていない Migration 生 きているものだけが 自 力 で 泳 いで 移 動 できる 低 収 率 Migration chamberや WangTube 臨 床 応 用 中 Filtration 充 填 剤 が 高 価 高 収 率 駆 動 力 として 遠 心 が 必 要 そもそも 精 子 を 遠 心 したく ない マイクロ 流 体 を 利 用 したものも 生 きている 精 子 は 横 方 向 に 逃 げ 出 せることを 利 用 したも の せいぜい 数 十 ~ 数 百 程 度 の 精 子 を 対 象 としたものだった ( 体 外 受 精 用 途 ) 一 方 人 工 授 精 用 途 では 数 千 万 の 精 子 が 必 要 このギャップを 克 服 するために 新 しい 発 想 の 流 体 制 御 技 術 を 考 案
研 究 計 画 立 案 に 至 る 知 識 と 経 験 高 分 子 鎖 の 自 発 的 伸 長 と 理 論 的 解 明 DNA 伸 長 下 での 効 率 的 2 本 鎖 形 成 層 流 下 化 学 反 応 の 熱 力 学 的 理 解 特 異 的 酵 素 反 応 の 機 構 解 明 層 流 による 分 子 認 識 制 御 1 R Ct = ln Tm H 4 + S H 層 流 が 分 子 の 形 を 変 える 最 初 の 反 応 性 制 御 の 例 層 流 によるエントロピー 制 御 = 秩 序 性 の 制 御 酵 素 と 基 質 の 効 率 的 な 複 合 体 形 成 を 突 き 止 める DNAの 相 補 配 列 認 識 能 を 層 流 で 制 御 2002 2004 2006 2008 2010 2012 分 析 チップへ 応 用 分 子 の 配 向 状 態 の 分 光 分 析 遅 0 200 250 300 層 流 下 化 学 反 応 の 反 応 速 度 論 解 析 分 子 集 合 体 の 層 流 下 再 構 成 による 均 一 化 精 子 を 流 れで 導 く LD 相 溶 な2 液 の 境 界 を 担 体 として 利 用 -0.0015 速 独 自 の 機 材 開 発 を 通 じた 偏 光 分 析 層 流 による 見 かけの 活 性 化 エネルギーの 制 御 どんなにバラバラからで も 圧 倒 的 再 現 性 自 力 で 運 動 するもの も 層 流 で 操 る 流 れ を 使 った 制 御 技 術 ; 分 子 から 精 子 へ 精 子 はそれ 自 体 が 動 く このことを 積 極 的 利 用 した 流 れ 制 御 精 子 の 染 色 体 を 直 接 観 るわけではない まったく 新 しい 発 想 6
7 ところで マイクロ 流 体 と 層 流 マイクロ 流 路 内 の 流 れは ( 太 さ 数 百 μm 程 度 ) 層 流 乱 流 高 度 な 流 体 制 御 性 可 溶 な 溶 媒 どうしが 併 走 流 れを 流 路 の 形 と 速 さで 完 全 制 御 どこで 何 が 起 こるかを 容 易 に 計 算 可 能 一 方 向 的 応 力 場 環 境 ( 特 殊 な 力 学 的 溶 媒 環 境 ) 異 方 的 な 溶 媒 や 分 子 の 衝 突 一 分 子 中 に 異 なる 流 速 作 用
8 層 流 中 での 精 子 の 動 き これまでと 違 って 精 子 は それ 自 体 が 自 力 で 動 き 回 る 精 子 が 泳 いでいる 方 向 流 れの 方 向 発 表 では 動 画 を 使 用 します 精 子 の 運 動 能 力 と 層 流 の 組 み 合 わせ ランダムに 泳 ぎ 回 る 精 子 は 層 流 中 に 置 かれるこ とで 条 件 次 第 でみんな 一 斉 に 同 一 方 向 へ 泳 ぎだす いわゆる rheotaxis として 知 られる 現 象
9 二 段 階 の 層 流 による 誘 き 寄 せ 基 本 的 な 考 え 方 解 凍 精 液 を 入 れる 液 溜 めと 細 い 流 路 の 間 に 薄 い 層 状 の 領 域 を 設 ける 解 凍 精 液 を 投 入 する 液 溜 め 黒 毛 和 種 の 凍 結 精 液 を 用 いた 場 合 の 結 果 の 一 例! ポイント: 生 存 率 濃 度 = ほぼ 一 定 精 製 前 精 液 生 存 率 21% 濃 度 69 百 万 /ml 精 製 後 精 液 生 存 率 95% 濃 度 12 百 万 /ml 濃 度 は 死 んだ 精 子 も 含 めたもの 精 子 が 泳 いでいる 方 向 運 動 速 度 行 動 性 質 を 設 計 に 反 映 流 れの 方 向 薄 い 層 状 の 領 域 この 部 分 では 遅 い 層 流 渦 をできるだけ 避 け つつ 精 子 の 運 動 特 性 を 最 大 限 に 引 き 出 す 精 液 中 のゴミ( 毛 や 希 釈 液 由 来 物 )などを 取 り 除 き 生 きている 精 子 だけがこの 領 域 に 入 り 込 むことができる ただし 奇 形 や 正 しくない 運 動 をするもの( 例 えば ぐるぐる 回 る)も 含 めて 生 きているものをすべて 捕 集 精 子 が 泳 いでいる 方 向 元 気 な 精 子 だけが 自 力 で 泳 いで 移 動 中
10 流 路 形 状 の 最 適 化 この 部 分 の 形 状 の 最 適 化 で 効 率 百 万 倍! 数 値 流 体 力 学 計 算 設 計 に 反 映 カド 角 があると 渦 ができる カド 角 を 丸 くしても 澱 む 正 対 位 置 から 鳥 瞰 図 計 算 機 上 なら 凝 った 形 状 も 気 軽 に 試 せる + 精 子 の 層 流 中 での 運 動 に 関 する 知 見 遅 速 ゆっくり たくさん 捕 捉 だんだん 速 く 狙 った 運 動 能 力 を 捕 捉 レイノルズ 数 を 低 く 層 流 を 維 持 適 切 な 流 速 分 布 渦 や 澱 みのない 軌 跡 分 布
11 狭 い 流 路 へ 誘 導 される 精 子 発 表 では 動 画 を 使 用 します
運 動 してきた 精 子 の 回 収 発 表 では 動 画 を 使 用 します 12
13 牛 の 雌 雄 産 み 分 け でも XY 分 け 自 体 は 特 に 目 新 しくもない かもしれない 多 くの 報 告 都 市 伝 説 も 発 情 から 受 精 のタイミングが 早 いと 雌 遅 いと 雄 が 多 いらしい? Reprod. Dom. Anim. 38, 224 227, 2003 人 工 授 精 前 に 精 液 を 放 置 しておく 時 間 を 変 えると 性 比 が 変 化 Zygote, 11, 229-235, 2003 時 間 を 変 えて 二 重 層 チューブを 使 ってswim-upすることで 性 比 を 変 化 Reprod. Dom. Anim. in press (DOI:10.111/rda.12252) Swim-upで 長 距 離 泳 げるのはY Int. J. Andrology, 35, 880 886, 2012 精 液 を 遠 心 するだけでYの 割 合 が 上 がる Theriogenology 79, 890 894, 2013 ovsynch 法 でも タイミングで 性 比 に 差 が 付 きますが 季 節 変 動 もあり <タイミング 法 により 70% 程 度 の 産 み 分 けはできている> < 唯 一 の 商 用 技 術 ; 米 国 の 技 術 > フローサイトメトリー 法 によりXY 分 けを 行 った 性 選 別 精 液 長 所 :90%という 高 い 性 選 択 性 短 所 : 低 い 受 胎 率 厳 しいライセンス 条 件 高 価
14 産 み 分 けはなぜできているのか? 性 ごとに 違 う 精 子 の 生 化 学 的 な 性 質 を 調 べてみる Capacitationの 利 用 精 子 は 卵 子 の 突 入 するだけじゃない 多 段 のステージを 突 破 するために 様 々な 生 理 学 的 運 動 機 能 的 変 化 を 経 る XYで 時 間 が 違 う エネルギー 産 生 回 路 の 利 用 栄 養 を 得 るための 代 謝 回 路 の 微 妙 な 違 い を 利 用 する 抗 原 - 抗 体 反 応 の 利 用 Yに 特 異 的 な 抗 原 に 対 する 抗 体 はすでに 市 販 中 MEA1 SRY アフィニティクロ マトや 分 解 酵 素 等 の 利 用 Theriogenology, 55, 3-14, 2001 他 Mol.Reprod. Dev., 72, 201-207, 2005など エネルギー 産 生 回 路 は 複 雑 であるが 性 選 別 の 観 点 から 整 理 された 図 が 米 国 特 許 US2010/0081862や US2010/0087702にある SRY( 性 決 定 遺 伝 子 のひとつ) MEA1( 性 決 定 遺 伝 子 ではないが Y 染 色 体 上 に 特 異 配 列 を 持 つ)
15 XY 分 けのストラテジー Y X 精 子 能 獲 得 Capacitationタイミング 時 間 時 間 Capacitation このタイミングではXもY も 捕 捉 されるが Capacitationを 誘 導 す ることで 雄 を 優 先 的 に 得 られる Capacitation 寿 命 エネルギー 産 生 回 路 の 違 い 精 子 はスタミナが 必 要 X Y 特 異 的 抗 原 の 利 用 キラー 複 合 体 型 アフィニティ クロマト 型 or このタイミングでは X 精 子 の 運 動 能 力 が 優 勢 であり 雌 を 優 先 的 に 得 る ことができる XとYでエネルギー 産 生 回 路 に 違 いあり 阻 害 段 階 を 変 えることで XとY に 運 動 能 力 の 差 をつける 壊 す 方 については EP 2 402 757 A2 に 報 告 あり 運 動 能 力 の 差 で 分 ける という 本 技 術 を XY 分 けの 新 しい 手 法 とする 完 全 停 止 でなくても 少 しだけ 運 動 能 力 に 差 を 付 ければいい
16 精 子 の 運 動 を 利 用 したXY 分 けの 実 例 Capacitationタイミングを 利 用 した 方 法 黒 毛 和 種 A 単 に 一 定 時 間 静 置 後 に 前 述 の 元 気 分 け を 行 うだけ X Y 9 時 間 43% 57% 15 時 間 60% 40% 黒 毛 和 種 B X Y 6 時 間 38% 61% 15 時 間 40% 60% この 方 法 は 本 質 的 にX 狙 いの 方 が 簡 単 牛 によって 狙 いを 定 める 時 間 が 異 なる おそらく 製 造 ロット( 凍 結 までの 放 置 時 間 や 採 精 季 節 など)によっても 違 うと 想 像 ホルスタイン 種 A X Y 3 時 間 50% 50% 15 時 間 57% 43% 性 比 は リアルタイムPCRで 決 定 繰 り 返 し 再 現 性 は CV 値 にしておよそ±10% 現 状 では 濃 度 を 無 視 すれば 7:3くらい は 達 成 Y X 時 間 時 間 Capacitation Capacitation 寿 命
17 精 子 の 運 動 を 利 用 したXY 分 けの 実 例 エネルギー 産 生 回 路 の 違 いを 利 用 した 方 法 ホルスタイン 種 B X Y 条 件 1 36% 64% 条 件 2 35% 65% 黒 毛 和 種 B X Y 条 件 3 35% 65% Yのエネルギー 産 生 を 加 速 する 試 薬 を 添 加 した 場 合 の 結 果 Capacitationによる 方 法 よりは 牛 の 個 性 は 反 映 されにくい 現 状 では 濃 度 を 無 視 すれば 70%くらいは 達 成 Y X
18 新 技 術 の 特 徴 従 来 技 術 との 比 較 従 来 法 の 百 万 倍 の 処 理 効 率 で 人 工 授 精 に そのまま 使 える 高 活 力 精 液 調 製 技 術 生 死 だけではなく 運 動 能 力 ごとに 捕 集 する 技 術 運 動 能 力 別 捕 集 技 術 を 応 用 した 精 子 の 性 分 離 技 術 所 望 の 時 期 に 所 望 の 性 別 で 妊 娠 することに よる 畜 産 の 生 産 性 と 計 画 性 向 上
19 新 技 術 の 特 徴 従 来 技 術 との 比 較 精 子 へのダメージレス お 好 きな 雄 牛 の 精 液 を 必 用 に 応 じて 処 理 圧 倒 的 に 安 価 な 手 法
20 想 定 される 用 途 家 畜 繁 殖 用 精 液 の 性 能 向 上 高 付 加 価 値 化 家 畜 繁 殖 用 精 液 の 製 造 時 に 事 前 処 理 また は 人 工 授 精 等 使 用 時 にその 場 処 理 精 液 の 活 度 と 性 選 別 性 能 のバランスをご 自 由 にチョイス 不 妊 治 療 における 人 工 授 精 (AI)や 体 外 受 精 (IVF)の 精 液 前 処 理 の 簡 略 化
21 実 用 化 に 向 けた 課 題 処 理 量 は 現 状 規 格 ストロー 数 本 分 のプロト タイプ 大 量 処 理 (せいぜい10 倍?) 用 は 必 要 に 応 じて 検 討 性 選 別 精 度 は 一 つの 手 法 で70% 程 度 達 成 さらなる 向 上 のため 既 存 技 術 を 応 用 したア フィニティクロマト 方 式 を 併 用 予 定
22 企 業 への 期 待 簡 便 に 使 用 することのできる ディスポ 器 具 や キットの 製 造 と 販 売 大 規 模 農 場 での 繁 殖 作 業 の 受 託 により 実 効 的 な 出 荷 サイクル 期 間 の 短 縮 効 果
23 本 技 術 に 関 する 知 的 財 産 権 発 明 の 名 称 : 精 子 の 選 抜 部 構 造 及 び 同 精 子 の 選 抜 部 構 造 を 備 えた 精 子 スクリーニング 装 置 並 びに 人 工 授 精 用 精 子 液 の 調 製 方 法 出 願 番 号 : 特 願 2013-219451( 国 内 優 先 権 主 張 出 願 ) 出 願 人 : 独 立 行 政 法 人 産 業 技 術 総 合 研 究 所 発 明 者 : 山 下 健 一 宮 崎 真 佐 也 永 田 Maria Portia B. 前 田 英 明 ならびに 上 記 を 基 礎 出 願 とするPCT 出 願 PCT/JP2014/50013
24 お 問 い 合 わせ 先 独 立 行 政 法 人 産 業 技 術 総 合 研 究 所 イノベーションコーディネーター 犬 養 吉 成 TEL 0942-81-4002 FAX 092-292-5998 e-mail inukai-yoshinari@aist.go.jp