火 災 を 受 けた 橋 梁 の 損 傷 とその 対 応 久 田 宗 昌 1 1 名 古 屋 市 緑 政 土 木 局 道 路 建 設 課 ( 460-8508 名 古 屋 市 中 区 三 の 丸 3 丁 目 1-1) 本 稿 は, 主 要 地 方 道 名 古 屋 中 環 状 線 の 庄 内 川 に 架 かる 明 徳 橋 の 桁 下 にて 平 成 25 年 6 月 に 発 生 した 火 災 への 対 応 を 報 告 するものである. 橋 梁 が 火 災 により 損 傷 を 受 けた 事 例 の 報 告 が 全 国 的 に 少 ない 中 で 補 修 方 針 を 決 定 する 必 要 があった. 被 災 状 況 に 応 じた 補 修 を 行 うため に,まずは 詳 細 調 査 を 行 った. 詳 細 調 査 については, 受 熱 温 度 を 推 定 し, 鋼 部 材,コンク リート 部 材 について 部 材 強 度 や 変 形 等 を 調 査 することにより 損 傷 程 度 の 確 認 を 行 った. 補 修 方 針 については, 詳 細 調 査 の 結 果 に 基 づいて, 被 災 程 度 に 応 じて 方 針 を 定 めたことによ り 適 切 な 補 修 方 針 を 決 定 することができた. キーワード: 火 災, 受 熱 温 度, 塗 装 損 傷 調 査, 鋼 桁 補 強, 断 面 修 復 1. はじめに 平 成 25 年 6 月 17 日 早 朝, 主 要 地 方 道 名 古 屋 中 環 状 線 の 明 徳 橋 において, 庄 内 川 右 岸 下 流 側 A2 橋 台 前 の 高 水 敷 付 近 で, 所 有 者 不 明 の 古 タイヤをはじめとする 可 燃 物 よ り 発 災 し 一 時 間 程 度 燃 え 続 ける 火 災 が 発 生 した. A1 3 径 間 連 続 鋼 箱 桁 橋 庄 内 川 ; 火 災 発 生 箇 所, ; 影 響 した 範 囲 図 -1 火 災 発 生 箇 所 及 び 影 響 した 範 囲 単 純 鋼 鈑 桁 橋 L=33.99m 橋 梁 が 火 災 により 損 傷 を 受 けた 事 例 は 全 国 的 に 少 ない. また, 橋 梁 の 受 熱 による 被 災 程 度 の 研 究 は 近 年 端 緒 につ いたところであり, 要 領 やマニュアルについても 全 国 統 一 のものは 整 備 されていない.よって,このような 状 況 の 中 で, 道 路 管 理 者 として 火 災 を 受 けた 橋 梁 に 対 する 安 全 性 をいかに 評 価 するか, 及 び 損 傷 に 対 しての 補 修 方 針 をどのように 決 定 するかが 課 題 であった. 本 稿 では, 被 災 直 後 の 一 次 判 断 及 びその 後 の 詳 細 調 査 についての 内 容 を 整 理 するとともに, 長 期 的 な 安 全 性 の 確 保 のための 補 修 設 計 方 針 決 定 までの 経 緯 及 び 結 果 につ いて 述 べる. P3 A2 2. 被 災 状 況 と 通 行 制 限 実 施 の 判 断 (1) 被 災 状 況 写 真 -1~3 は, 被 災 当 日 に 現 場 確 認 を 行 った 際 に 撮 影 したものである. 橋 梁 下 側 はA2 橋 台 直 近 からかな りの 面 積 に 亘 って 延 焼 している( 写 真 -1). 火 災 前 は 古 タイヤを 始 めとした 蓄 積 物 が 散 乱 していたが,これら が 全 て 火 災 により 延 焼 したものと 考 えられる. 橋 台 のコ ンクリートについては,A2 橋 台 の 前 面 が 火 災 による 煤 により 黒 くなっており, 被 災 した 範 囲 を 示 している( 写 真 -2). 上 部 工 については,A2 橋 台 付 近 では 塗 膜 が 剥 がれる などかなりの 損 傷 を 受 けており( 写 真 -3),A2から 10m~20m 離 れていて 塗 膜 の 剥 がれがない 箇 所 でも 煤 が 付 着 していた. 現 地 確 認 の 結 果, 火 災 により 受 熱 したと 考 えられる 部 材 は, 主 桁 等 の 鋼 材, 床 版 コンクリート,A2 橋 台 前 面 コンクリート, 落 橋 防 止 装 置 及 び 支 承 部 であると 推 測 さ れた. (2) 通 行 制 限 実 施 の 判 断 被 災 当 日 にて 現 地 の 確 認 を 行 った. 前 項 の 通 り, 古 タ イヤを 含 む 集 積 物 からの 発 火 という 状 況 を 考 慮 すると 高 温 度 の 受 熱 があったものと 推 定 された. 比 較 的 高 温 と 推 定 される 火 災 により 塗 膜 が 焼 失 している 状 況 から, 鋼 部 材 の 強 度 が 低 下 している 可 能 性 はあるが,その 数 値 を 把 握 するためには, 硬 さ 試 験 や 引 張 試 験 等 の 実 施 が 必 要 で
写 真 -1 火 元 の 状 況 いと 考 えられる. RC 床 板 も 被 災 を 受 けたが, 顕 著 な 熱 膨 張 ひび 割 れや 剥 離 は 見 られない. 橋 面 の 舗 装 面, 伸 縮 装 置 部 に 顕 著 な 変 状 (ひび 割 れ, 段 差 等 )も 生 じていない. 落 橋 防 止 ( 緩 衝 チェーン 方 式 )は, 大 きく 被 災 し て 機 能 低 下 を 生 じているが, 常 時 荷 重 への 影 響 はない. 2 時 間 の 現 場 確 認 の 間, 特 に 変 わった 振 動 性 状 や 桁 下 音, 変 状 はなかった. 上 記 の 状 況 から 一 般 通 行 を 制 限 しなくても 調 査 及 び 検 討 期 間 中 の 安 全 を 確 保 できると 判 断 した 3. 詳 細 調 査 写 真 -2 被 災 状 況 ( 橋 台 前 面 ) (1) 詳 細 調 査 について 次 に, 火 災 による 損 傷 状 況 を 明 らかにし, 安 全 性 の 評 価 及 び 補 修 方 針 を 確 定 させるため, 詳 細 調 査 を 行 った. 損 傷 を 受 けた 部 材 は, 主 に 桁 部 分 の 鋼 材 と 床 版, 橋 台 部 分 のコンクリートである. 桁 部 分 の 鋼 材 については, 塗 装 の 損 傷 はもちろん, 受 熱 による 引 張 強 度 の 低 下 や 分 子 構 造 の 変 化 による 性 状 の 変 化 等 が 懸 念 された.また, 体 積 膨 張 による 桁 の 変 形 や 溶 接 部 分 の 割 れについても 調 査 を 行 う 必 要 があった. 一 方,コンクリートについては, 受 熱 による 圧 縮 強 度 の 低 下 や 中 性 化 の 進 行 が 懸 念 された.また, 鋼 材,コンク リート 双 方 について, 消 火 に 河 川 水 ( 汽 水 域 のため 海 水 混 じり)を 用 いたことによる 塩 分 の 付 着 が 懸 念 された. 写 真 -3 被 災 状 況 ( 上 部 工 ) ある.しかしながら, 上 記 の 強 度 低 下 が 懸 念 される 箇 所 について 試 験 を 実 施 し, 結 果 を 判 断 するまでには 相 当 時 間 を 要 するため, 当 面 の 通 行 安 全 に 対 しての 緊 急 的 な 判 断 ( 通 行 制 限 を 実 施 する 必 要 があるか)は, 構 造 的 な 視 点 等 から 以 下 の 事 項 を 踏 まえて 行 うこととした. 強 度 低 下 の 懸 念 箇 所 は, 単 純 桁 の 端 部 付 近 で 比 較 的 曲 げモーメントが 小 さい 箇 所 である. 一 部 の 横 構 に 変 形 が 見 られるが,これは 高 温 膨 張 によるそり 変 形 と 考 えられる. 大 きな 横 荷 重 ( 風 や 地 震 )が 作 用 しない 限 り, 常 時 荷 重 ( 鉛 直 荷 重 )に 与 える 影 響 は 小 さいと 考 えられる. 目 視 で 確 認 できる 範 囲 ではフランジのゆがみ 等 の 大 きな 主 桁 の 変 形 は 確 認 されていない.また, 主 桁 のボルト 添 接 部 は, 塗 膜 損 傷 はあるが 残 存 しておりボルト 耐 力 の 極 度 の 低 下 は 生 じていな (2) 鋼 部 材 についての 詳 細 調 査 項 目 一 般 的 に 鋼 材 ( 構 造 用 鋼 材 )は, 受 熱 時 の 温 度 が 600 を 超 える 場 合, 高 力 ボルトについては450 を 超 え る 場 合 に 冷 却 後 の 引 張 強 度 が 低 下 するとされている.ま た, 鋼 材 は 合 熱 処 理 によって 結 晶 構 造 が 変 化 するという 性 質 を 有 しており, 受 熱 温 度 によってはもともと 付 与 さ れた 性 質 が 失 われる 懸 念 がある. 以 上 のことから, 火 災 による 鋼 材 の 損 傷 評 価 にあたっては 受 熱 温 度 の 推 定 が 重 要 になる. 受 熱 温 度 の 推 定 にあたっては, 既 往 の 論 文 等 を 参 考 と して, 塗 装 の 劣 化 状 況 から 推 定 することとした. また, 塗 装 の 劣 化 状 況 については, 塗 膜 状 態 を 目 視 確 認 するとともに 塗 膜 の 健 全 度 については 塗 膜 付 着 試 験 ( 図 -2)にて 評 価 を 行 うこととした. 図 -2 塗 膜 付 着 試 験 方 法 (クロスカット 法 ) 出 展 : 鋼 構 造 物 塗 膜 調 査 マニュアル( 平 成 18 年 6 月 )
図 -3 主 桁 変 形 計 測 位 置 図 次 に, 主 桁 等 の 構 造 部 材 は 受 熱 したことによる 変 形 が 懸 念 される.したがって, 各 部 材 の 変 形 の 計 測 を 行 うこ ととし( 図 -3),その 判 定 については 道 路 橋 示 方 書 Ⅱ ( 鋼 橋 編 )において, 新 設 桁 製 作 工 の はh/250(h = 腹 板 の 高 さ)と 定 められているため, 評 価 はこれに 従 う 方 針 とした. さらに, 受 熱 により 溶 接 の 割 れ 等 の 溶 接 部 の 損 傷 が 懸 念 されため, 主 桁 腹 板 と 下 フランジの 溶 接 部 において 磁 粉 探 傷 試 験 にて 確 認 することとした. その 他, 鋼 部 材 の 調 査 項 目 については 表 -1に 示 す 通 りとした. (3)コンクリート 部 材 についての 詳 細 調 査 項 目 コンクリート 部 材 については, 火 災 により 損 傷 を 受 け たと 考 えられるA2 橋 台 前 面 及 びP3~A2 間 の 床 版 コンク リートについて 行 うこととした. 調 査 項 目 としては, 近 接 目 視 による 点 検,テストハンマーによる 反 発 係 数 の 測 定,ドリル 法 による 中 性 化 測 定,コア 採 取 による 圧 縮 強 度 試 験, 塩 化 物 イオン 濃 度 測 定 である. 調 査 項 目 の 一 覧 を 表 -2に 示 す. b) 塗 装 損 傷 調 査 (クロスカット 試 験 ) 外 観 目 視 調 査 では 塗 膜 の 健 全 性 までは 評 価 できないた め, 健 全 範 囲 を 区 別 するために 塗 膜 付 着 試 験 (クロス カット 試 験 )を 行 った.その 結 果 を 以 下 に 示 す( 図 -5). 塗 装 に 異 常 がある 箇 所 は,C3~A2 間 の 主 桁,G1~G3 端 横 桁 及 び 分 配 横 桁 に 大 別 できる.G4 桁 もC5~A2 間 に 一 部 異 常 が 見 られた. c) 変 形 量 測 定 鋼 上 部 工 の 構 成 部 材 である 主 桁, 端 横 桁 の 平 面 度 測 定 及 び 主 桁 下 フランジの 直 角 度, 端 横 桁 及 び 横 構 の 大 曲 り の 測 定 結 果 を 示 す. 測 定 結 果 を 以 下 に 示 す. 基 準 値 は 新 設 橋 の 平 面 度 管 理 基 準 値 であるh/250(h= 腹 板 の 高 さ)とする.ただし, 既 設 桁 の 補 修 につき 新 設 の 規 格 を 満 足 させるために 加 熱 矯 正 や 外 力 を 無 理 に 加 えれば 鋼 材 の 劣 化 や 残 留 応 力 を 生 じ させることになるため, 補 修 にあたっては, 十 分 考 慮 す る 必 要 がある. 表 -2 コンクリート 部 材 調 査 項 目 一 覧 表 4 調 査 結 果 (1) 鋼 部 材 の 詳 細 調 査 結 果 a) 損 傷 度 の 目 視 確 認 目 視 により 塗 装 の 損 傷 状 態 の 調 査 を 行 った.また, 損 傷 程 度 とその 範 囲 から 部 材 ごとの 塗 装 損 傷 記 録 及 び 被 災 温 度 推 定 マップを 作 成 した.( 図 -4) 表 -1 鋼 部 材 調 査 項 目 一 覧 表 P3 16.5m 5.5m A2 排 水 管 ( 消 滅 ) 8.1m 5.4m 図 -4 被 災 温 度 推 定 マップ
図 -5 クロスカット 試 験 結 果 結 果, 太 字 の 箇 所 について であるh/250を 超 え ていた. 特 にG2 桁 は 被 災 中 心 に 近 く, 熱 影 響 による 変 形 度 合 いが 大 きい( 表 -3) 表 -3 主 桁 腹 板 変 形 量 計 測 結 果 [ 単 位 :mm] 測 点 腹 板 高 G1 G2 G3 G4 1 2 3 1 2 3 1 2 3 1 2 3 S2(A2) 1250 5.0 - - - - - - - - - - - - 1 1260 5.0 +3 +4 +0-3 -13-5 +5 +10 +4 2 1271 5.1 +2 +6 +3-2 -14-8 +2 +8 +6 0-3 -2-1281 5.1 - - - - - - - - - - - - 3 1292 5.2 +3 +1-1 -5-6 -1 0-2 -2 4 1302 5.2 +4 +6 +2 0-2 -3 +2 +6 +1-1 -6-2 - 1313 5.3 - - - - - - - - - - - - 5 1323 5.3 +4 +1 +1-1 -3-1 -2-3 -1-1 -1 0 6 1333 5.3 落 橋 防 止 装 置 補 強 材 があり 計 測 不 能 - 1344 5.4 - - - - - - - - - - - - 7 1354 5.4 +5 +9 +4-6 -11-5 +3 +8 +2 8 1365 5.5 +5 +9 +6-5 -10-5 +3 +7 +3-3 -4-1 C5 1375 5.5 - - - - - - - - - - - - 9 1385 5.5 +1 +2 +1-3 0 +3 +2 +3 +1 10 1396 5.6 +3 +4 +2-4 -8-3 +2 +7 +3-2 -4-1 - 1406 5.6 - - - - - - - - - - - - 11 1417 5.7 +3 +4 +2 +6 +7 +2-5 -7-3 12 1427 5.7 +2 +4 +2 +6 +7 +3 0 0 0-3 -5-2 - 1438 5.8 - - - - - - - - - - - - 13 1448 5.8 +3 +5 +3 +5-8 -5 +2 +3 0 14 1458 5.8 +3 +6 +3 +4-8 -3 +2 +5 +2-2 -4-2 - 1469 5.9 - - - - - - - - - - - - - 1479 5.9 - - - - - - - - - - - - - 1490 6.0 - - - - - - - - - - - - C4 1500 6.0 - - - - - - - - - - - - 主 桁 下 フランジの 直 角 度 主 桁 下 フランジについては, 新 設 橋 の 管 理 項 目 である フランジの w/200(w;フランジ 幅 )を とする. 測 定 の 結 果, 腹 板 を 起 点 とした 山 谷 折 れは 見 受 けら れなかった.G2~G4の4 点 ( 太 字 )で を 上 回 った ( 表 -4). 下 フランジは 引 張 り 部 材 であり,その 傾 きは 構 造 の 強 度 低 下 に 影 響 しないと 考 えることができるため, 補 修 対 象 とはしない. 端 横 桁 の 変 形 量 端 横 桁 については, 主 桁 の 腹 板 変 形 量 の である h/250を 基 準 として 判 断 を 行 う. 測 定 の 結 果, 損 傷 度 の 大 きいG1~G4 間 で 腹 板 の 面 外 変 形 が 起 こっている( 太 字 ). 変 形 が 生 じた 要 因 は, 受 熱 によりG2 桁 に 伸 びが 生 じ,その 影 響 を 受 けたものと 考 えられる( 表 -5). 端 横 桁, 横 構 大 曲 り これらの 圧 縮 材 についての はL/1000(L; 格 間 長 )とした. 測 定 の 結 果, 太 字 の 箇 所 について を 超 えていた. 特 に, の 箇 所 は を 大 幅 に 超 えてい る( 表 -6) d) 溶 接 部 検 査 溶 接 部 については400 以 上 の 受 熱 があった 範 囲 にお いて 割 れが 発 生 していることが 懸 念 されたため, 磁 粉 探 傷 試 験 により 調 査 を 行 った. 試 験 の 結 果, 割 れなどの 有 害 な 欠 陥 は 検 出 されなかった. e) 付 着 塩 分 量 消 火 の 際 に 海 水 が 混 じった 河 川 水 を 使 用 したことから, 被 災 範 囲 の 塩 分 付 着 が 懸 念 されたため 塩 分 濃 度 の 測 定 を 行 った.ほぼ 全 ての 箇 所 で (50mg/m 2 )より 高 い 塩 分 濃 度 が 測 定 された. f) 鋼 材 試 験 火 災 により 損 傷 を 受 けたと 思 われる 鋼 材 について, 引 張 試 験, 硬 さ 試 験, 組 織 観 察 を 行 った.なお, 試 験 に 用 いる 鋼 材 は,600 以 上 の 受 熱 があったと 推 測 されるA2 橋 台 付 近 の 排 水 管 取 付 金 具 とした. フランジの 直 角 度 G1 フランジ G2 G3 G4 フランジ フランジ フランジ 表 -4 直 角 度 計 測 結 果 mm 580 580 520 520 520 380 380 mm 2.9 2.9 2.6 2.6 2.6 1.9 1.9 % 0 0 0 0 0 0 0 mm 0 0 0 0 0 0 0 mm 510 510 420 420 420 350 350 mm 2.55 2.55 2.1 2.1 2.1 1.75 1.75 % 0.5 0.5 0.2 0.2 0 0.9 3 mm 2.55 2.55 0.84 0.84 0 3.15 10.5 mm 510 510 420 420 420 350 350 mm 2.55 2.55 2.1 2.1 2.1 1.75 1.75 % 0 0 0.3 0 0.2 0-0.9 mm 0 0 1.26 0 0.84 0-3.2 mm 520 520 440 440 440 340 340 mm 2.6 2.6 2.2 2.2 2.2 1.7 1.7 % 0.2 0-0.4-0.5-0.5 0.5 0.7 mm 1.04 0-1.8-2.2-2.2 1.7 2.38 表 -5 端 横 桁 平 面 度 計 測 結 果 [ 単 位 :mm] 1G1~G2 間 2G2~G3 間 3G3~G4 間 測 点 腹 板 高 1 2 3 1 2 3 1 2 3 S2 1040 4.2 +2 +12 +10 +6 +15 +18 +2 +5 +5 図 -6 大 曲 り 調 査 位 置 図 表 -6 大 曲 り 計 測 結 果 [ 単 位 :mm] 測 点 L 測 定 値 1 3790 3.8 +2 2 2727 2.7-2 3 3596 3.6 +18 4 4136 4.1 +32 5 2727 2.7 +5 6 2727 2.7-2 7 2727 2.7 +5 8 3596 3.6 +21 9 2727 2.7 +7 10 2727 2.7 +0 11 4136 4.1 +15 12 3596 3.6 +4 13 2727 2.7-2
引 張 試 験 は2つの 供 試 体 (SS400)について 行 った( 写 真 -4). 結 果, 両 者 とも 許 容 値 を 満 足 しており, 火 災 による 影 響 はないと 思 われる( 表 -7). ビッカース 硬 さ 試 験 及 び 鋼 材 組 織 観 察 の 結 果,ビッ カース 硬 さから 算 出 した 引 張 強 度 換 算 値 は 全 て 内 であり また 組 織 観 察 結 果 もいずれの 組 織 もフェライ ト+パーライト 組 織 で 表 面 の 焼 き 入 れ 結 晶 粒 の 異 常 成 長 といった 火 災 の 影 響 を 確 認 できるものはなかった ( 写 真 -5). 写 真 -4 引 張 試 験 体 表 -7 引 張 試 験 結 果 定 箇 所 により 中 性 化 深 さが 異 なり, 損 傷 状 況 と 中 性 化 深 さとの 関 係 は 見 受 けられなかった. コア 採 取 による 試 験 結 果 を 以 下 に 示 す. 圧 縮 強 度 試 験 の 結 果, 床 版 部 が40.1N/mm2, 橋 台 部 が35.3N/mm2であ り, 上 記 の 設 計 強 度 を 満 足 していた. 塩 分 含 有 量 試 験 の 結 果, 塩 化 物 イオン 量 の 測 定 結 果 は 鉄 筋 付 近 で 0.27kg/m3であった. 土 木 学 会 の 鋼 材 腐 食 発 生 限 界 濃 度 は1.2kg/m3であることから, 塩 化 物 による 鉄 筋 腐 食 の 可 能 性 は 低 いと 考 えられる. 4. 今 後 の 対 応 表 -8 コンクリートの 変 色 状 況 と 受 熱 温 度 の 関 係 出 展 : 建 物 の 火 災 診 断 及 び 補 修 補 強 方 法 ( 平 成 16 年 3 月 ) ( 比 較 材 ) 写 真 -5 鋼 材 ミクロ 組 織 ( 被 災 材 ) (2)コンクリート 部 材 の 詳 細 調 査 結 果 コンクリート 部 材 についての 調 査 結 果 を 以 下 に 示 す. 近 接 目 視 による 調 査 の 結 果, 床 版 部 はA2 橋 台 付 近 の 火 元 に 近 い 箇 所 においてピンク 色 に 変 色 していた.また, 微 細 な 亀 甲 状 のひび 割 れも 確 認 された.その 他 はP3 橋 脚 に 向 かい,すすが 付 着 していた.A2 橋 台 のコンクリー トについても, 表 層 の 爆 裂 や 亀 甲 状 のひび 割 れが 発 生 し ていた( 写 真 -7).コンクリートの 変 色 状 況 と 受 熱 温 度 の 関 係 を 表 8に 示 す. 火 元 に 近 い 箇 所 でピンク 色 に 変 色 していたことから, 受 熱 温 度 は300 ~600 となる. シュミットハンマーによる 反 発 硬 度 試 験 の 結 果, 橋 台, 床 版 ともに 設 計 上 の 強 度 である24N/mm2を 満 足 していた. ドリル 法 による 中 性 化 試 験 の 結 果, 床 版, 橋 台 ともに 測 G1 4.0m G2 写 真 -7 A2 橋 台 変 色 状 況 G3 浮 き ピンク 色 に 変 色 (1) 鋼 部 材 における 補 修 方 針 鋼 部 材 における 受 熱 温 度 は 最 高 で600 程 度 と 推 定 で きるが,3 章 に 示 した 通 り 鋼 材 の 性 質 には 特 段 の 変 化 は なかった.よって, 鋼 部 材 における 補 修 を 行 うべき 損 傷 は 主 に 入 熱 による 変 形 及 び 塗 装 の 剥 離 であると 考 えられ る.したがって, 補 修 方 針 については 下 記 のようにした. a) 塗 装 の 補 修 火 災 により 損 傷 を 受 けた 鋼 桁 は, 最 も 損 傷 が 激 しい 部 分 では 下 塗 が 剥 がれており, 腐 食 が 懸 念 される 状 況 で あった.したがって, 損 傷 を 受 けた 箇 所 について 塗 替 塗 装 を 行 う. 損 傷 により 鋼 材 の 素 地 が 露 出 していることを 考 慮 し,ケレンは2 種 とした. 塗 装 仕 様 については, 鋼 道 路 橋 塗 装 防 食 便 覧 (H17.12) を 参 考 として, Rc-Ⅱとした( 表 -9). b) 鋼 桁 の 補 強 火 災 に 伴 う 受 熱 により, 主 桁 及 び 横 桁 の 腹 板 において, 新 設 橋 に 求 められる 平 面 度 であるh/250 以 上 の 面 外 変 形 が 見 られた. 確 かに, 現 場 での 測 定 値 はこの を10 mm 程 度 上 回 るものであり, 僅 かな 変 形 と 考 えられる.し かし, 以 上 の 変 形 が 生 じていれば, 上 部 工 に 生 じ る 荷 重 が 正 しく 下 部 工 に 伝 達 されず, 長 期 に 渡 りこの 状 態 であれば 特 定 の 部 材 に 応 力 が 集 中 して 疲 労 による 損 傷 を 招 くことにもなりかねない.したがって, を 超 える 面 外 変 形 が 生 じている 箇 所 に 対 して 補 強 を 行 うこと とした. 本 事 例 では, 補 剛 材 により 桁 の 補 強 を 行 う 方 法 を 採 用 することとした. 具 体 的 には, 桁 の1 方 向 からL 形 鋼 によ り, 反 対 側 から 平 鋼 により 腹 板 を 挟 み 込 み, 補 剛 材 を 高 力 ボルトで 締 め 付 けることにより 変 形 矯 正 を 行 い, 耐 座
表 -9 旧 塗 膜 と 塗 替 え 塗 装 系 の 組 み 合 わせ 用 いることとする. 出 展 : 鋼 道 路 橋 塗 装 防 食 便 覧 ( 平 成 17 年 12 月 ) 図 -7 補 剛 材 設 置 イメージ 屈 性 能 を 向 上 させ,かつ, 桁 材 に 作 用 する 荷 重 の 一 部 を 負 担 するものである( 図 -7). 桁 材 に 作 用 する 死 荷 重 については 既 設 部 材 により 負 担 できているものと 考 えら れるため, 補 剛 材 により 負 担 する 荷 重 は 活 荷 重 とした. なお, 補 強 方 法 の 検 討 にあたっては, 加 熱 矯 正 を 行 う 方 法 も 検 討 したが, 加 熱 矯 正 に 必 要 な 温 度 は900 程 度 であり, 火 災 による 入 熱 を 上 回 る 温 度 であることから 鋼 材 への 影 響 を 勘 案 して 加 熱 矯 正 を 行 わない 方 針 とした. c) 部 材 取 替 火 災 により 損 傷 を 受 けた 鋼 部 材 のうち, 損 傷 が 重 大 で あり 取 替 が 可 能 なものについては, 取 替 を 行 う 方 針 とし た. 取 替 を 行 う 部 材 は 下 横 構, 落 橋 防 止 装 置 工, 高 力 ボ ルトとした. 下 横 構 については, 風 荷 重 や 地 震 荷 重 に 対 して 抵 抗 して 剛 性 を 確 保 するものであり, 常 時 ( 活 荷 重, 死 荷 重 )の 鉛 直 力 に 対 しては, 直 接 影 響 する 部 材 ではな いことから, 取 替 が 可 能 な 部 材 を 取 替 えることとした. 落 橋 防 止 装 置 工 については, 火 災 により 緩 衝 ゴムがかな り 損 傷 を 受 けているため, 取 替 を 行 うこととした. 高 力 ボルトについては, 既 往 の 論 文 等 によると 受 熱 温 度 450 で 損 傷 を 受 けるとある. 想 定 される 受 熱 温 度 が 最 大 600 であることを 考 慮 し, 影 響 範 囲 について 全 数 取 替 を 行 う 方 針 とした. (2)コンクリート 部 材 における 補 修 方 針 火 災 によるコンクリート 部 材 の 損 傷 は, 浮 き 及 び 微 細 な 亀 甲 状 のひび 割 れであった. 補 修 については,これら の 損 傷 部 をはつり 取 った 上 で 断 面 補 修 を 行 う. 断 面 補 修 の 工 法 については, 厚 さ2~3cm 程 度 の 浮 きであればポリ マーセメントモルタルを 用 いた 左 官 工 法 とし,さらに 深 い 場 合 は 無 収 縮 モルタルを 型 枠 内 に 注 入 する 型 枠 工 法 を (3) 補 修 の 優 先 順 位 鋼 部 材 については, 詳 細 調 査 により 部 材 の 強 度 低 下 は 確 認 されなかった. 補 修 方 針 では, 塗 装 による 防 食 及 び 鋼 桁 の 補 強, 部 材 取 替 えを 挙 げた. 本 事 例 では, 部 材 の 強 度 低 下 が 見 られないこと,また 排 水 管 が 焼 失 し, 橋 面 からの 排 水 が 直 接 主 桁 等 に 当 たり 腐 食 しやすい 環 境 であ るため, 塗 装 による 防 食 を 最 優 先 で 行 い, 鋼 桁 の 補 強 及 び 部 材 取 替 については, 直 ちに 行 う 必 要 はないと 判 断 し た.ただし, 鋼 部 材 に 見 られた 変 形 については, 長 期 に 渡 る 応 力 集 中 等 の 影 響 も 懸 念 されることから, 早 期 に 補 修 することが 望 ましいと 考 えている.なお, 現 状 では 塗 装 塗 替 のみ 昨 年 度 に 実 施 している. コンクリ ト 部 材 は, 詳 細 調 査 により 圧 縮 強 度 の 低 下 等 は 見 られなかった. 補 修 方 針 では 断 面 補 修 を 行 うこと としたが, 直 ちに 行 う 必 要 はないと 考 えている. 特 に 床 版 については, 床 版 補 強 工 事 と 同 時 期 に 補 修 を 行 う 考 え である. 現 状 では,コンクリート 部 材 の 補 修 は 未 実 施 で ある. 5. おわりに 本 稿 では, 明 徳 橋 で 発 生 した 火 災 につき, 通 行 制 限 の 要 否 の 判 断, 詳 細 調 査 の 実 施 方 針, 補 修 方 針 の 決 定 を 述 べた. 全 国 的 に 事 例 が 少 ない 中 で 火 災 を 受 けた 橋 梁 の 安 全 性 を 判 断 し, 詳 細 調 査 や 補 修 方 針 を 決 定 した. 一 次 判 断 としての 通 行 制 限 の 要 否 については, 構 造 的 な 視 点 か ら 通 行 制 限 は 不 要 と 判 断 し, 被 災 の 状 況 と 構 造 的 な 要 素 について 総 合 的 に 判 断 することで, 安 全 性 を 評 価 した 上 で 交 通 に 与 える 影 響 を 最 小 限 にした.また, 詳 細 調 査 に ついては, 鋼 部 材,コンクリート 部 材 それぞれについて あらゆる 観 点 から 調 査 を 行 うことにより, 部 材 の 安 全 性 を 適 切 に 評 価 することができた. 今 後 も 橋 梁 の 維 持 管 理 を 行 う 上 で, 予 期 せぬ 事 故 により 重 大 な 損 傷 が 発 生 した 場 合 の 安 全 性 評 価 及 び 調 査, 補 修 の 方 向 性 を 決 定 する 際 に 本 事 例 は 参 考 になるものと 考 えている. 参 考 文 献 道 路 橋 示 方 書 Ⅱ( 鋼 橋 編 ), 社 団 法 人 日 本 道 路 協 会, 平 成 24 年 3 月 鋼 道 路 橋 防 食 便 覧, 社 団 法 人 日 本 道 路 協 会, 平 成 26 年 3 月 玉 越 隆 史 他 ; 鋼 道 路 橋 の 受 熱 温 度 推 定 に 関 する 調 査, 国 総 研 資 料 第 710 号 平 成 24 年 12 月 今 川 雄 亮 他 ; 合 成 桁 橋 を 含 む 鋼 橋 の 火 災 診 断 マニュア ルの 作 成 と 適 用 例, 橋 梁 と 基 礎 2012-10