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公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

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国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

社 会 保 障 税 一 体 改 革 ( 年 金 分 野 )の 経 緯 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2 月 17 日 閣 議 決 定 ) 国 年 法 等 改 正 法 案 (2 月 10 日 提 出 ) 法 案 を 提 出 する または 法 案 提 出 を 検 討 する と された 事

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

資料2 年金制度等について(山下委員提出資料)

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平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

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平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

も く じ 1 税 源 移 譲 1 2 何 が 変 わったのか 改 正 の 3 つ の ポイント ポイント1 国 から 地 方 へ 3 兆 円 規 模 の 税 源 が 移 譲 される 2 ポイント2 個 人 住 民 税 の 税 率 構 造 が 一 律 10%に 変 わる 3 ポイント3 個 々の 納

18 国立高等専門学校機構

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Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

m07 北見工業大学 様式①

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国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

越前米

プラス 0.9%の 年 金 額 改 定 が 行 われることで 何 円 になりますか また どのような 計 算 が 行 われているのですか A これまでの 年 金 額 は 過 去 に 物 価 が 下 落 したにもかかわらず 年 金 額 は 据 え 置 く 措 置 をと った 時 の 計 算 式 に 基

16 日本学生支援機構

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別紙3

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(2) 特 別 障 害 給 付 金 国 民 年 金 に 任 意 加 入 していなかったことにより 障 害 基 礎 年 金 等 を 受 給 していない 障 がい 者 の 方 に 対 し 福 祉 的 措 置 として 給 付 金 の 支 給 を 行 う 制 度 です 支 給 対 象 者 平 成 3 年 3

小山市保育所整備計画

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

申 請 免 除 申 請 免 除 ( 学 生 以 外 ) 学 生 納 付 特 例 制 度 若 年 者 納 付 猶 予 制 度 法 定 免 除 世 帯 構 成 図 表 1 国 民 年 金 保 険 料 の 免 除 の 種 類 と 所 得 基 準 本 人 世 帯 主 配 偶 者 の 所 得 に 応 じて 免

減 少 率 ) と 平 均 余 命 の 伸 びを 勘 案 した 一 定 率 (0.3%) の 合 計 である スライド 調 整 率 を 差 し 引 いて 年 金 額 の 改 定 が 行 われる( 図 表 ) ただし マクロ 経 済 スライドが 完 全 に 実 施 されるのは 賃 金 や 物 価 があ

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

第25回税制調査会 総25-1

公表表紙

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セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

1

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共 通 認 識 1 官 民 較 差 調 整 後 は 退 職 給 付 全 体 でみて 民 間 企 業 の 事 業 主 負 担 と 均 衡 する 水 準 で あれば 最 終 的 な 税 負 担 は 変 わらず 公 務 員 を 優 遇 するものとはならないものであ ること 2 民 間 の 実 態 を 考

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

年 金 払 い 退 職 給 付 制 度 における 年 金 財 政 のイメージ 積 立 時 給 付 時 給 付 定 基 (1/2) で 年 金 を 基 準 利 率 で 付 利 給 付 定 基 ( 付 与 利 の ) 有 期 年 金 終 身 年 金 退 職 1 年 2 年 1 月 2 月 ( 終 了 )

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(2) 国 民 年 金 の 保 険 料 国 民 年 金 の 第 1 号 被 保 険 者 および 任 意 加 入 者 は, 保 険 料 を 納 めなければなりま せん また,より 高 い 老 齢 給 付 を 望 む 第 1 号 被 保 険 者 任 意 加 入 者 は, 希 望 により 付 加 保 険

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スライド 1

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◆併給の調整◆

厚 生 年 金 は 退 職 後 の 所 得 保 障 を 行 う 制 度 であり 制 度 発 足 時 は 在 職 中 は 年 金 を 支 給 しないこととされていた しかしながら 高 齢 者 は 低 賃 金 の 場 合 が 多 いと いう 実 態 に 鑑 み 在 職 者 にも 支 給 される 特 別

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●幼児教育振興法案

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ニュースリリース

資料1-2 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案要綱

新 市 建 設 計 画 の 変 更 に 係 る 新 旧 対 照 表 ページ 変 更 後 変 更 前 表 紙 安 中 市 松 井 田 町 合 併 協 議 会 安 中 市 松 井 田 町 合 併 協 議 会 平 成 27 年 3 月 変 更 安 中 市 6 2. 計 画 策 定 の 方 針 (3) 計

月 収 額 算 出 のながれ 給 与 所 得 者 の 場 合 年 金 所 得 者 の 場 合 その 他 の 所 得 者 の 場 合 前 年 中 の 年 間 総 収 入 を 確 かめてください 前 年 中 の 年 間 総 収 入 を 確 かめてください 前 年 中 の 年 間 総 所 得 を 確 かめ

経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66


[ 組 合 員 期 間 等 の 特 例 ] 組 合 員 期 間 等 については 年 齢 職 種 などにより 過 去 の 制 度 からの 経 過 措 置 が 設 けられ ており 被 用 者 年 制 度 の 加 入 期 間 ( 各 共 済 組 合 の 組 合 員 期 間 など)については 生 年 月 日

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子ども手当見直しによる家計への影響~高所得者層の可処分所得は大幅減少に

5

平成16年度

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3 圏 域 では 県 北 沿 岸 で2の 傾 向 を 強 く 見 てとることができます 4 近 年 は 分 配 及 び 人 口 が 減 少 している 市 町 村 が 多 くなっているため 所 得 の 増 加 要 因 を 考 える 場 合 は 人 口 減 少 による 影 響 についても 考 慮 する

公 的 年 金 等 控 除 額 とは 年 金 収 入 から 差 し 引 くことのできる 金 額 で 差 引 後 の 金 額 が 雑 となります 公 的 年 金 等 収 入 金 額 - 公 的 年 金 等 控 除 額 = 雑 これまでは この 公 的 年 金 等 控 除 額 は 65 歳 以 上 の

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ほかに パート 従 業 員 らの 厚 生 年 金 加 入 の 拡 大 を 促 す 従 業 員 五 百 人 以 下 の 企 業 を 対 象 に 労 使 が 合 意 すれば 今 年 十 月 から 短 時 間 で 働 く 人 も 加 入 できる 対 象 は 約 五 十 万 人 五 百 人 超 の 企 業

国民年金

就 学 前 教 育 保 育 の 実 施 状 況 ( 平 成 23 年 度 ) 3 歳 以 上 児 の 多 く(4 歳 以 上 児 はほとんど)が 保 育 所 又 は 幼 稚 園 に 入 所 3 歳 未 満 児 (0~2 歳 児 )で 保 育 所 に 入 所 している 割 合 は 約 2 割 就 学

Ⅰ 年 金 制 度 昭 和 37 年 12 月 1 日 に 地 方 公 務 員 等 共 済 組 合 法 が 施 行 され 恩 給 から 年 金 へ 昭 和 61 年 4 月 から 20 歳 以 上 60 歳 未 満 のすべての 国 民 が 国 民 年 金 に 加 入 厚 生 年 金 基 金 職 域

第5回法人課税ディスカッショングループ 法D5-4

2 平 均 病 床 数 の 平 均 病 床 数 では 療 法 人 に 対 しそれ 以 外 の 開 設 主 体 自 治 体 社 会 保 険 関 係 団 体 その 他 公 的 の 規 模 が 2.5 倍 程 度 大 きく 療 法 人 に 比 べ 公 的 病 院 の 方 が 規 模 の 大 き いことが

1 はじめに 計 画 の 目 的 国 は 平 成 18 年 度 に 住 生 活 基 本 法 を 制 定 し 住 まいに 関 する 基 本 的 な 計 画 となる 住 生 活 基 本 計 画 ( 全 国 計 画 )を 策 定 し 住 宅 セーフティネットの 確 保 や 住 生 活 の 質 の 向 上

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 26 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 法 人 の 長 副 理 事 長 A 理 事 16,638 10,332 4,446 1,

1. 本 市 の 保 育 所 運 営 費 と 保 育 料 の 現 状 2 (1) 前 回 (5/29 5/29) 児 童 福 祉 専 門 分 科 会 資 料 国 基 準 に 対 する 本 市 の 保 育 料 階 層 区 分 別 軽 減 率 国 基 準 に 対 する 本 市 の 保 育 料 階 層 区

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

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公表資料02【案1】0806印刷用<厚生年金・国民年金の平成26年度収支決算の概要>

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 福 岡 県 技 能 労 務 職 歳 1,19,98 9,9 歳 8,

第14章 国民年金

技 能 労 務 職 平 均 年 齢 歳,7 平 均 給 料 月 額 歳 7,,8, 歳,9,57, 7,7 7,9 9,5 - (8,85) (5,) 類 似 団 体 5. 歳 9,8 9, 85, ( 注 ) 平 均 給 料 月 額 とは 平 成 5 年 月 日 現 在 における

波佐見町の給与・定員管理等について

1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

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ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

Transcription:

年 金 額 分 布 にみられる 公 的 年 金 制 度 の 発 展 の 足 跡 稲 垣 誠 一 ( 一 橋 大 学 経 済 研 究 所 ) ( 要 旨 ) わが 国 の 公 的 年 金 制 度 は 1961 年 の 国 民 年 金 制 度 の 創 設 によって 皆 年 金 制 度 が 実 現 され その 後 の 幾 度 にもわたる 制 度 改 正 とりわけ 1985 年 改 正 による 再 編 を 経 て 今 日 では 高 齢 者 の 生 活 の 主 柱 の 役 割 を 担 う 制 度 に 発 展 してきた 公 的 年 金 制 度 は 数 十 年 という 長 期 にわ たる 制 度 であり その 改 正 の 効 果 は 十 年 二 十 年 後 に 初 めて 現 れるものも 少 なくなく 現 在 の 受 給 者 の 年 金 額 の 分 布 などにも それらの 改 正 の 痕 跡 が 残 されている 本 稿 では 年 金 額 分 布 を 世 代 ごとに 分 析 することによって 公 的 年 金 制 度 の 発 展 の 足 跡 を 定 量 的 に 計 測 した その 結 果 1 無 年 金 低 年 金 の 問 題 が 急 速 に 改 善 していること 2 社 会 保 険 の 性 格 上 現 役 時 代 の 所 得 格 差 が 年 金 額 にも 反 映 されるが 所 得 再 分 配 効 果 によって 相 当 程 度 緩 和 されていること 3 公 的 年 金 制 度 の 充 実 によって 高 齢 者 が 経 済 的 に 自 立 できるようにな ったことが 子 供 との 同 居 率 を 低 下 させていること などが 明 らかとなった ただし 無 年 金 低 年 金 者 の 比 率 は 相 当 程 度 低 下 してきたが 今 日 では 下 げ 止 まりの 感 もあり 今 後 の 年 金 改 正 論 議 の 中 で 重 要 な 論 点 になると 考 えられる 1. はじめに わが 国 は 高 齢 化 の 進 展 が 著 しい 国 民 年 金 が 創 設 され 国 民 皆 年 金 が 実 現 した 1961 年 の 前 年 に 行 われた 国 勢 調 査 によると 日 本 の 総 人 口 9430 万 人 に 対 して 65 歳 以 上 の 高 齢 者 は 540 万 人 (5.7%)に 過 ぎなかったが 1980 年 にはこの 高 齢 者 が 1065 万 人 (9.1%)とほぼ 倍 増 し 2005 年 には 2567 万 人 (20.1%)と 2 割 を 超 え 世 界 で 最 も 高 齢 化 が 進 んだ 国 と なっている さらに 国 立 社 会 保 障 人 口 問 題 研 究 所 の 将 来 推 計 1によれば 近 い 将 来 世 界 に 類 を 見 ない 超 高 齢 社 会 の 到 来 が 予 測 されている 65 歳 以 上 の 高 齢 者 数 は 2030 年 には 3667 万 人 (31.8%)に 増 加 し そのうち 一 人 暮 らしの 高 齢 者 は 2005 年 の 387 万 人 から 717 万 人 に 増 加 し 老 人 ホームなどの 施 設 入 所 者 も 2005 年 の 138 万 人 から 371 万 人 に 増 加 すると 見 込 まれている 2030 年 には 一 人 暮 らしまたは 施 設 に 暮 らす 高 齢 者 が 1088 万 人 と 実 1 日 本 の 将 来 推 計 人 口 (2006 年 12 月 推 計 ) 及 び 日 本 の 世 帯 数 の 将 来 推 計 (2008 年 3 月 推 計 )による 1

に 1 千 万 人 を 超 える 水 準 に 到 達 するものと 予 測 されているのである 一 方 これらの 高 齢 者 の 生 活 の 主 柱 となる 公 的 年 金 制 度 については 1960 年 代 から 70 年 代 にかけて 大 きく 発 展 し 2008 年 3 月 末 における 加 入 者 総 数 は 7003 万 人 老 齢 基 礎 年 金 等 の 受 給 権 者 数 は 2601 万 人 年 間 の 年 金 給 付 額 は 47.3 兆 円 (2006 年 度 )に 上 り 国 民 の 老 後 生 活 の 大 きな 支 えとなっている しかしながら 国 民 年 金 の 未 納 未 加 入 問 題 や 年 金 記 録 問 題 将 来 の 超 高 齢 社 会 における 制 度 の 持 続 性 など 公 的 年 金 制 度 に 対 する 国 民 の 不 安 感 は 根 強 いものがあり 無 年 金 低 年 金 者 に 対 する 年 金 給 付 の 見 直 しも 大 きな 政 策 課 題 となっている それでは 無 年 金 低 年 金 の 高 齢 者 の 状 況 は これまでの 公 的 年 金 制 度 の 発 展 の 中 でど のように 改 善 してきたのであろうか 1985 年 改 正 によって 全 国 民 共 通 の 基 礎 年 金 制 度 が 導 入 されるまでは 被 用 者 年 金 の 加 入 者 に 扶 養 されている 配 偶 者 は 任 意 加 入 であったため それ 以 前 の 高 齢 者 には 年 金 を 受 給 していない 者 も 多 い 実 際 国 民 生 活 基 礎 調 査 によると 1980 年 では 65 歳 以 上 の 高 齢 者 のうち 年 金 を 受 給 していない 者 2が 8.8%( 男 6.8% 女 10.2%)であったが 2007 年 では 4.6%( 男 4.7% 女 4.8%)まで 低 下 し 男 女 差 もほと んど 解 消 されてきている また 国 民 年 金 受 給 権 者 の 平 均 年 金 月 額 3をみると 1980 年 では 22,399 円 であったものが 2007 年 では 48,057 円 と 2 倍 以 上 に 上 昇 しており この 間 の 賃 金 物 価 上 昇 4を 考 慮 しても 年 金 額 の 大 幅 な 底 上 げが 図 られてきていることがわかる このように 30 年 近 く 前 の 高 齢 者 の 公 的 年 金 は 現 在 と 比 べるとかなり 心 もとないもの であったが 彼 らはどのように 生 計 を 立 てていたのであろうか 公 的 年 金 の 少 ない 高 齢 者 は 子 供 夫 婦 と 同 居 することによってその 生 計 を 維 持 していたものと 思 われる 実 際 子 供 夫 婦 と 同 居 している 高 齢 者 は 1980 年 には 52.5%に 上 っていたが 2007 年 では 19.6% にまで 低 下 している これに 対 して 夫 婦 のみで 生 活 する 高 齢 者 は 19.6%から 36.7%に 一 人 暮 らしの 高 齢 者 も 8.5%から 15.7%に いずれも 大 幅 にその 比 率 が 上 昇 している これ は 国 民 意 識 の 変 化 もその 要 因 として 考 えられるが 公 的 年 金 の 充 実 によって 高 齢 者 だけ で 生 計 が 維 持 できるようになったことが 大 きいと 考 えられる 生 計 の 維 持 ができなければ 子 供 とは 別 居 するという 国 民 意 識 の 変 化 も 生 まれる 余 地 が 少 なかったと 考 えられるからで ある 公 的 年 金 制 度 は 数 十 年 という 長 期 にわたる 制 度 であり その 改 正 の 効 果 は 十 年 二 十 年 後 に 初 めて 現 れるものも 少 なくない 1985 年 改 正 では 国 民 年 金 を 全 国 民 に 適 用 拡 大 し 全 国 民 共 通 の 基 礎 年 金 とその 上 乗 せである 報 酬 比 例 の 厚 生 年 金 共 済 年 金 を 支 給 する 制 度 2 社 会 保 険 庁 公 的 年 金 加 入 状 況 等 調 査 によると 2004 年 における 無 年 金 者 の 比 率 は 2.5%である 無 年 金 者 の 比 率 は 調 査 方 法 等 により 異 なるが ここでは 長 期 時 系 列 データ が 得 られる 国 民 生 活 基 礎 調 査 (1986 年 前 は 厚 生 行 政 基 礎 調 査 )の 調 査 結 果 を 用 いた 3 1980 年 は 拠 出 制 国 民 年 金 の 受 給 権 者 の 平 均 年 金 月 額 2007 年 は 基 礎 年 金 のみの 者 の 平 均 年 金 月 額 である 4 2005 年 を 100 とした 1980 年 の 消 費 者 物 価 指 数 ( 総 務 省 統 計 局 )は 76.9 であり この 間 の 物 価 上 昇 率 は 30.0%である 2

とし わが 国 の 年 金 制 度 を 二 階 建 ての 体 系 仕 組 みへ 再 編 が 行 われた この 改 正 によって 女 性 の 年 金 権 が 確 立 される 一 方 給 付 と 負 担 の 適 正 化 による 過 剰 給 付 や 重 複 給 付 の 抑 制 な ど 年 金 額 の 格 差 の 是 正 が 徐 々に 図 られることが 期 待 された この 効 果 は 21 世 紀 に 入 っ て 各 種 の 統 計 データに 明 確 に 現 れてきている 本 稿 では 2001 年 2004 年 及 び 2007 年 の 国 民 生 活 基 礎 調 査 ( 所 得 票 )の 個 票 の 再 集 計 結 果 5を 活 用 することによって この 1985 年 改 正 を 中 心 としたこれまでの 年 金 制 度 の 発 展 が 高 齢 者 の 所 得 にどの 様 な 効 果 をもたらし てきたかについて 詳 細 な 分 析 を 行 い 考 察 を 加 えることとする また あわせて 高 齢 者 の 同 居 家 族 にどのような 影 響 を 与 えているかについても 分 析 を 加 える 2. 1985 年 年 金 制 度 改 正 とその 考 え 方 現 時 点 の 高 齢 者 の 年 金 に 大 きな 影 響 を 与 えているのは 基 礎 年 金 が 導 入 された 1985 年 改 正 6である 1985 年 改 正 が 検 討 されていた 1980 年 頃 は 先 に 述 べたように 高 齢 化 率 は 9.1% に 過 ぎなかったが 本 格 的 な 高 齢 化 社 会 の 到 来 が 予 測 されており 年 金 制 度 の 今 後 のあり 方 について 各 方 面 から 様 々な 意 見 が 出 されていた 時 期 である まず 1977 年 12 月 と 1979 年 10 月 に 社 会 保 障 制 度 審 議 会 が 皆 年 金 下 の 新 年 金 体 系 と 題 して 税 方 式 ( 所 得 型 付 加 価 値 税 )の 基 本 年 金 とそれに 上 乗 せされる 社 会 保 険 方 式 の 年 金 の 二 階 建 て 方 式 とすることが 建 議 された これは 国 民 皆 年 金 と 言 われながら 適 用 漏 れの 者 や 短 期 加 入 によって 少 額 な 年 金 給 付 しか 受 けられない 高 齢 者 が 多 いという 当 時 の 状 況 にかんがみ 無 年 金 や 低 年 金 者 の 存 在 の 問 題 などを 一 挙 に 解 決 しようとする 大 胆 で 魅 力 的 な 構 想 であった しかしながら この 基 本 年 金 制 度 創 設 の 構 想 については 1 社 会 保 険 方 式 による 現 行 制 度 が 成 熟 化 の 段 階 に 入 ってきている 中 での 新 たな 税 方 式 の 年 金 制 度 の 創 設 の 是 非 2 年 金 目 的 税 として 大 型 の 所 得 型 付 加 価 値 税 を 創 設 することについての 慎 重 な 意 見 3 現 行 制 度 からの 円 滑 な 移 行 の 問 題 など 実 現 には 様 々な 疑 問 や 問 題 があり その 論 議 はあまり 深 ま ることはなかったようである これに 対 して 厚 生 大 臣 の 私 的 諮 問 機 関 として 設 置 された 年 金 制 度 基 本 構 想 懇 談 会 は 1979 年 4 月 に わが 国 の 年 金 制 度 の 改 革 の 方 向 長 期 的 な 均 衡 と 安 定 を 求 めて と 題 し て 給 付 と 負 担 の 関 係 が 明 確 な 社 会 保 険 方 式 を 維 持 する 方 向 での 改 革 が 報 告 された この 報 告 は 社 会 保 障 制 度 審 議 会 の 建 議 とは 対 照 的 に 改 革 の 実 現 可 能 性 を 重 視 し 社 会 保 険 5 平 成 20 年 度 厚 生 労 働 科 学 研 究 費 補 助 金 ( 政 策 科 学 推 進 事 業 ) 所 得 資 産 消 費 と 社 会 保 険 料 税 との 関 係 に 着 目 した 社 会 保 障 の 給 付 と 負 担 に 関 する 研 究 ( 国 立 社 会 保 障 人 口 問 題 研 究 所 )において 使 用 が 認 められた( 統 発 第 0219001 号 ) 国 民 生 活 基 礎 調 査 の 再 集 計 を 引 用 活 用 し もっぱら 筆 者 が 行 ったものである 6 これまでの 公 的 年 金 制 度 の 改 正 経 緯 については 吉 原 わが 国 の 公 的 年 金 制 度 中 央 法 規 (2004)が 詳 しい 3

方 式 による 現 行 制 度 の 維 持 を 前 提 に 漸 進 的 段 階 的 に 各 制 度 間 の 整 合 化 を 進 め 給 付 や 負 担 の 不 均 衡 の 是 正 を 図 るというものであった 最 終 的 には 社 会 保 障 制 度 審 議 会 の 建 議 と 年 金 制 度 基 本 構 想 懇 談 会 の 報 告 の 両 方 の 要 素 を 取 り 入 れ 社 会 保 険 方 式 を 維 持 しつつ 各 制 度 共 通 の 一 階 部 分 と 独 自 に 上 乗 せする 二 階 部 分 の 二 階 建 ての 体 系 ( 図 1)に 再 編 するという 方 向 に 収 斂 し 1985 年 の 大 改 正 につなが っていった この 改 正 の 主 要 なポイントは 1 基 礎 年 金 の 導 入 2 給 付 水 準 と 負 担 の 適 正 化 3 女 性 の 年 金 権 の 確 立 4 障 害 年 金 の 充 実 の 四 点 に 集 約 される 図 1 制 度 の 再 編 統 合 被 用 者 の 配 偶 者 ( 任 意 加 入 ) 厚 生 年 金 保 険 船 員 保 険 共 済 年 金 国 民 年 金 被 用 者 の 配 偶 者 ( 全 員 加 入 ) ( 新 ) 厚 生 年 金 保 険 ( 新 ) 共 済 年 金 第 1 号 第 3 号 第 2 号 ( 新 ) 国 民 年 金 ( 基 礎 年 金 ) 第 一 に 基 礎 年 金 の 導 入 である 公 的 年 金 制 度 は 当 時 大 きく 3 種 7 制 度 に 分 立 して いたため 制 度 間 格 差 過 剰 給 付 や 重 複 給 付 就 業 構 造 や 産 業 構 造 の 変 化 に 伴 う 財 政 基 盤 の 不 安 定 化 という 問 題 が 生 じていた 基 礎 年 金 の 導 入 により 就 業 構 造 や 産 業 構 造 の 変 化 に 影 響 されない 安 定 的 な 制 度 運 営 が 可 能 となるとともに 制 度 間 格 差 の 是 正 重 複 給 付 の 整 理 も 図 られることとなった 第 二 に 給 付 水 準 と 負 担 の 適 正 化 である 厚 生 年 金 は 当 時 32 年 加 入 を 前 提 に 平 均 賃 金 月 額 (ボーナスを 除 く)の 68%になるものと 見 込 まれていたが 今 後 40 年 加 入 が 一 般 的 になると 給 付 水 準 が 83%にも 達 し さらにその 妻 が 国 民 年 金 に 40 年 間 任 意 加 入 をしていた とすると 夫 婦 の 年 金 水 準 が 109%にも 達 することと 見 込 まれた 制 度 の 成 熟 化 に 伴 う 平 均 加 入 年 数 の 伸 長 に 合 わせて 定 額 部 分 の 単 価 と 報 酬 比 例 部 分 の 乗 率 を 20 年 かけて 徐 々に 逓 減 していくこととされ 当 時 の 水 準 が 変 化 しないような 措 置 ( 図 2)が 導 入 された 4

図 2 給 付 水 準 の 適 正 化 第 三 に 女 性 の 年 金 権 の 確 立 である 当 時 サラリーマンの 無 業 の 妻 ( 専 業 主 婦 )につ いては 夫 の 年 金 で 保 障 するという 形 をとりつつ 国 民 年 金 への 任 意 加 入 の 形 で 独 自 の 年 金 権 を 確 保 する 仕 組 みであったが 任 意 加 入 していない 者 の 場 合 は 離 婚 したときなどに 十 分 な 年 金 保 障 に 欠 けるといった 問 題 点 が 指 摘 されていた そこで 国 民 年 金 の 適 用 を 全 国 民 に 拡 大 し 加 入 者 一 人 一 人 に 自 分 の 名 義 の 基 礎 年 金 を 支 給 する 仕 組 みに 改 められた 言 い 換 えると 基 礎 年 金 は 従 来 の 厚 生 年 金 の 定 額 部 分 と 加 給 年 金 額 を 夫 と 妻 のそれぞれ の 基 礎 年 金 に 分 化 発 展 させたものということができる 第 四 に 障 害 年 金 の 充 実 である 幼 くして 障 害 を 持 った 者 には 国 民 年 金 の 障 害 福 祉 年 金 が 支 給 されることになってはいたが その 障 害 の 発 生 が 制 度 への 加 入 の 前 であるか 後 であ るかによって 年 金 額 に 大 きな 違 いがあった 国 民 年 金 に 加 入 する 二 十 歳 前 の 障 害 者 にも 障 害 福 祉 年 金 ではなく 障 害 基 礎 年 金 が 支 給 される 仕 組 みとなった このような 改 正 が 二 十 数 年 前 に 実 施 されたが 厚 生 年 金 の 給 付 水 準 については 20 年 間 基 礎 年 金 については 40 年 間 もの 長 期 にわたる 経 過 措 置 が 設 けられていることから その 効 果 が 本 格 的 に 現 れるようになったのは 最 近 のことである まずは 女 性 の 年 金 権 の 確 立 に よる 女 性 の 年 金 水 準 の 改 善 が 図 られている 一 方 男 性 の 年 金 水 準 の 低 下 が 起 きているが これは 夫 婦 の 年 金 を 分 化 させたことによるものである 次 に 厚 生 年 金 の 給 付 水 準 の 適 正 5

化 により 世 代 によって 年 金 水 準 の 差 が 小 さくなってきていることや 受 給 者 間 の 年 金 額 の 格 差 が 縮 小 してきていることがあげられる 次 章 では これらの 改 正 効 果 について 実 証 データをもとにした 定 量 的 な 分 析 していく こととする 1985 年 改 正 以 降 5 年 ごとの 財 政 再 計 算 期 に 様 々な 改 正 が 行 われているが 65 歳 以 上 の 高 齢 者 の 年 金 への 影 響 は 厚 生 年 金 ( 報 酬 比 例 部 分 )の 給 付 水 準 の 5% 引 下 げ や 65 歳 以 上 の 在 職 者 への 緩 やかな 支 給 停 止 の 仕 組 みの 導 入 などがあるが これらは 比 較 的 影 響 が 小 さい なお 2004 年 改 正 においてマクロ 経 済 スライドの 仕 組 みが 導 入 されたが まだ 発 動 されていない 3. 年 金 額 の 分 布 にみられる 制 度 改 正 効 果 3.1. 平 均 的 な 年 金 額 の 推 移 表 1は 2000 年 以 降 について 性 別 年 齢 階 級 別 の 平 均 年 金 受 給 額 の 推 移 をみたもので ある この 平 均 年 金 額 は 国 民 生 活 基 礎 調 査 ( 所 得 票 )の 個 票 を 用 いた 集 計 7であることか ら 厚 生 年 金 や 国 民 年 金 など 個 別 の 制 度 の 平 均 年 金 額 ではなく 個 人 単 位 に 名 寄 せされた 共 済 年 金 や 恩 給 等 を 含 む 公 的 年 金 全 体 の 平 均 年 金 額 である また 所 得 票 では 各 調 査 年 の 前 年 の 年 金 受 給 額 が 調 査 されていることから 実 際 に 受 給 した 年 次 を 表 示 するとともに 年 齢 については 調 査 時 の 年 齢 マイナス 1 歳 とした なお この 間 消 費 者 物 価 指 数 の 低 下 等 による 年 金 額 の 減 額 改 定 8が 行 われているが その 変 動 幅 は 小 さいので 特 段 の 補 正 は 行 っていない 表 1 平 均 年 金 額 の 推 移 ( 万 円 ) 男 女 2000 2003 2006 2000 2003 2006 総 数 194.8 188.9 187.3 96.6 96.2 98.9 65-69 198.4 190.1 187.8 97.6 93.1 94.6 70-74 203.3 193.6 186.4 102.3 100.7 98.0 75-79 188.6 196.2 195.1 92.5 97.2 106.4 80-84 180.0 170.1 185.7 94.2 93.3 97.9 85+ 166.6 158.4 164.0 86.4 93.9 98.8 ( 出 所 ) 筆 者 推 計 7 調 査 時 点 ( 各 年 6 月 1 日 )において 年 金 受 給 者 であるが 前 年 の 年 金 受 給 額 がゼロの 者 については 集 計 対 象 から 除 外 した 8 満 額 の 基 礎 年 金 月 額 は 2000 年 度 67,017 円 2003 年 度 66,417 円 2006 年 度 66,008 円 であり いずれも 年 額 80 万 円 程 度 となっている 6

まず 女 性 の 平 均 年 金 額 をみると 75 歳 以 上 では 上 昇 傾 向 を 75 歳 未 満 では 低 下 傾 向 を 示 しており 全 体 としてはわずかながらの 上 昇 にとどまっている 一 方 男 性 では 75 歳 以 上 85 歳 未 満 は 上 昇 傾 向 75 歳 未 満 は 低 下 傾 向 85 歳 以 上 はほぼ 横 ばいであり 全 体 と しては 低 下 傾 向 を 示 している 男 女 とも 75 歳 未 満 で 平 均 額 が 低 下 しているのは 厚 生 年 金 の 給 付 水 準 の 適 正 化 によって 従 前 の 制 度 では 高 額 となる 年 金 額 が 低 く 抑 えられたためと 考 えられ 必 ずしも 全 体 的 に 年 金 額 が 下 がっているわけではない これは 平 均 値 という 数 値 の 特 性 によるものであり 特 に 分 布 の 形 状 が 左 右 対 称 でない 場 合 には 高 額 の 年 金 受 給 者 の 変 動 の 影 響 がより 大 きく 反 映 されるため 数 字 を 解 釈 する 場 合 は 注 意 が 必 要 である そこで 平 均 値 の 代 わりに 中 央 値 ( 小 さい 順 に 並 べたとき 中 央 に 位 置 する 値 )を 用 い て 推 移 をみたものが 表 2 である 女 性 では 75 歳 以 上 の 上 昇 傾 向 は 同 じであるが 75 歳 未 満 はおよそ 80 万 円 で 横 ばいである これは 満 額 の 基 礎 年 金 とほぼ 同 額 の 年 金 を 受 給 す る 者 が 女 性 として 平 均 的 ( 普 通 の 人 ) であることを 示 しているものと 考 えられる これ を 平 均 年 金 額 と 比 較 すると 20 万 円 ほど 中 央 値 の 方 が 低 くなっている このように 中 央 値 が 平 均 値 に 比 べて 大 きな 差 がある 場 合 には 先 に 述 べたように 少 数 の 高 額 の 年 金 受 給 者 が 平 均 年 金 額 を 引 き 上 げているわけであり 平 均 年 金 額 は 普 通 の 人 の 年 金 水 準 を 示 す 指 標 としては 必 ずしも 適 切 ではない 表 2 年 金 受 給 額 の 中 央 値 の 推 移 ( 万 円 ) 男 女 2000 2003 2006 2000 2003 2006 総 数 190 184 190 80 79 80 65-69 200 192 198 81 80 80 70-74 200 190 191 80 80 81 75-79 180 190 197 70 76 83 80-84 150 145 170 63 70 72 85+ 130 127 131 53 58 70 ( 出 所 ) 筆 者 推 計 また 2006 年 では 75 歳 以 上 79 歳 未 満 の 年 金 額 の 中 央 値 が 最 も 高 くなっている いわ ゆる 普 通 の 人 の 年 金 額 は ほぼ 80 万 円 で 一 定 の 状 態 にあるが 75 歳 以 上 では 死 別 による 遺 族 年 金 の 受 給 者 が 多 くなるため 年 金 額 が 高 くなる 傾 向 にある 実 際 75 歳 以 上 79 歳 未 満 の 女 性 の 受 給 者 のうち 有 配 偶 者 の 中 央 値 が 72 万 円 であることに 対 して 死 別 者 の 中 央 値 は 104 万 円 となっており 30 万 円 以 上 もの 差 がみられる なお 80 歳 以 上 の 女 性 では 有 配 偶 者 の 年 金 額 が 著 しく 低 い(85 歳 未 満 46 万 円 85 歳 以 上 44 万 円 )ため 死 別 者 の 年 金 額 が 高 くても( 同 92 万 円 78 万 円 ) 低 い 水 準 にとどまっている これは 80 歳 以 上 の 女 性 ( 基 礎 年 金 導 入 時 60 歳 以 上 )に 対 しては 1985 年 改 正 における 女 性 の 年 金 権 の 確 立 の 効 7

果 が 及 んでいないためと 考 えられる 一 方 男 性 の 年 金 額 の 中 央 値 は 平 均 値 と 同 様 に 75 歳 以 上 85 歳 未 満 は 上 昇 傾 向 75 歳 未 満 は 低 下 傾 向 85 歳 以 上 はほぼ 横 ばいであるが 全 体 としてはほぼ 横 ばいである 男 性 では 女 性 と 違 って 平 均 値 と 中 央 値 の 間 に 大 きな 差 は 見 られないことから 両 者 の 動 きに 大 きな 差 は 見 られない 3.2. 無 年 金 低 年 金 者 の 比 率 の 推 移 それでは 1985 年 までの 年 金 改 正 等 によって 無 年 金 低 年 金 者 の 比 率 を 減 らすことは できたのであろうか どれくらいの 水 準 を 低 年 金 とすべきかについては 判 断 の 分 かれると ころではあるが ここでは 満 額 の 基 礎 年 金 よりもかなり 低 い 水 準 で きりの 良 い 50 万 円 を 低 年 金 の 基 準 とした 表 3は 年 金 受 給 額 が 50 万 円 未 満 の 者 の 比 率 の 推 移 を 性 別 年 齢 階 級 別 にみたものであ る 男 女 とも 若 い 世 代 ほど 無 年 金 低 年 金 者 の 比 率 が 低 くなっており 改 正 の 効 果 が 着 実 に 現 れている 2000 年 に 85 歳 以 上 の 女 性 では 半 数 近 い 高 齢 者 が 無 年 金 低 年 金 であっ たが 最 近 高 齢 者 の 仲 間 入 りをした 女 性 は この 比 率 が 20%を 下 回 る 水 準 まで 低 下 してい る 一 方 男 性 でも 4 分 の 1 が 無 年 金 低 年 金 であったが 最 近 では 10%を 下 回 る 水 準 ま で 低 下 している なお 2006 年 に 75 歳 未 満 の 男 性 で 若 干 比 率 が 上 昇 しているが これは 65 歳 以 上 の 在 職 者 への 緩 やかな 支 給 停 止 の 仕 組 みの 導 入 により 在 職 者 の 年 金 が 無 年 金 低 年 金 に 分 類 されたことなどが 影 響 しているものと 考 えられる 表 3 年 金 受 給 額 50 万 円 未 満 の 者 の 比 率 の 推 移 男 女 2000 2003 2006 2000 2003 2006 総 数 10.0% 9.3% 9.2% 29.4% 26.8% 23.8% 65-69 8.1% 7.2% 8.1% 21.1% 20.5% 19.1% 70-74 7.6% 8.1% 8.5% 27.4% 22.5% 19.2% 75-79 12.8% 9.6% 8.6% 35.3% 31.4% 22.6% 80-84 12.4% 14.5% 11.8% 35.8% 32.7% 33.9% 85+ 25.1% 20.2% 15.8% 45.8% 41.1% 37.3% ( 出 所 ) 筆 者 推 計 このように これまでの 公 的 年 金 制 度 の 改 正 により 無 年 金 低 年 金 者 の 比 率 は 大 幅 に 低 下 したが 一 方 でほぼ 下 げ 止 まりの 感 もみられる 2006 年 の 女 性 についてみると 65 歳 以 上 70 歳 未 満 では 19.1% 70 歳 以 上 75 歳 未 満 では 19.2%と 世 代 による 差 がほとんど 見 ら れなくなっている 今 後 どうなるかわからない 面 も 多 いが 仮 にこのような 状 況 が 続 くと すると 女 性 ではおよそ 2 割 男 性 でもおよそ 8%は 50 万 円 未 満 の 年 金 しか 受 給 できな 8

いことになり これらの 者 は 公 的 年 金 のみで 基 礎 的 な 支 出 を 賄 うことが 難 しいのではな いかと 考 えられる 3.3. 年 金 額 のジニ 係 数 の 推 移 1985 年 改 正 では 高 額 年 金 の 是 正 などを 意 図 した 年 金 水 準 の 適 正 化 が 行 われたが これ により 受 給 者 間 の 年 金 額 の 格 差 は 縮 小 したのであろうか 表 4 は 年 金 受 給 額 に 関 するジ ニ 係 数 の 推 移 を 性 別 年 齢 階 級 別 にみたものである 一 般 に 女 性 の 方 が 男 性 よりも 年 金 額 の 格 差 が 大 きく 2006 年 のジニ 係 数 を 受 給 者 全 体 でみると 男 性 が 0.317 であることに 対 し て 女 性 は 0.364 とかなり 高 くなっている また 2000 年 から 2006 年 までのわずか 6 年 の 間 に 男 女 とも どの 年 齢 階 級 においても 大 幅 にジニ 係 数 が 低 下 しており 高 額 年 金 の 是 正 や 無 年 金 低 年 金 の 解 消 が 大 幅 に 進 んだことを 示 している 表 4 年 金 受 給 額 に 関 するジニ 係 数 の 推 移 男 女 2000 2003 2006 2000 2003 2006 総 数 0.337 0.326 0.317 0.390 0.373 0.364 65-69 0.314 0.300 0.296 0.350 0.329 0.336 70-74 0.322 0.320 0.303 0.398 0.365 0.341 75-79 0.356 0.331 0.321 0.406 0.402 0.367 80-84 0.382 0.373 0.361 0.415 0.385 0.407 85+ 0.423 0.394 0.380 0.415 0.417 0.405 ( 出 所 ) 筆 者 推 計 わが 国 の 年 金 制 度 は 社 会 保 険 方 式 であり 加 入 期 間 や 納 付 した 保 険 料 に 応 じて 年 金 額 が 決 まるものであることから 基 本 的 には 現 役 時 代 の 所 得 格 差 が 年 金 額 の 格 差 に 反 映 され る 仕 組 みである しかしながら 現 行 の 公 的 年 金 制 度 は 厚 生 年 金 保 険 の 保 険 料 の 上 下 限 や 加 入 期 間 に 比 例 した 給 付 の 基 礎 年 金 制 度 国 民 年 金 の 保 険 料 免 除 制 度 や 第 3 号 被 保 険 者 制 度 基 礎 年 金 給 付 の 2 分 の 1 の 国 庫 負 担 など 相 当 な 水 準 の 所 得 再 分 配 機 能 を 有 してい る たとえば 2006 年 の 現 役 世 代 の 稼 働 所 得 のジニ 係 数 を 算 定 ( 筆 者 推 計 )すると 45 歳 以 上 50 歳 未 満 では 男 性 では 0.368 女 性 では 0.629 となっており 年 金 受 給 額 のジニ 係 数 と 比 べてかなり 大 きな 値 となっている 世 代 が 異 なるため これらのジニ 係 数 の 直 接 的 な 比 較 はできないが 現 役 時 代 の 所 得 格 差 は 公 的 年 金 制 度 を 通 して 老 後 大 幅 に 緩 和 さ れていることが 推 測 される 3.4. 高 齢 者 の 子 供 との 同 居 率 9

高 齢 者 の 子 供 との 同 居 率 は 低 下 し 続 けている これは 子 供 が 両 親 の 老 後 の 面 倒 をみる という 伝 統 的 な 社 会 的 規 範 が 弱 まってきていることのほか 公 的 年 金 制 度 の 充 実 によって 高 齢 者 が 経 済 的 に 自 立 できるようになってきていることがその 理 由 として 考 えられる そ こで 年 金 額 の 多 寡 によって 子 供 との 同 居 別 居 行 動 にどの 程 度 の 差 が 生 じているかに ついて 考 察 する 表 5は 50 万 円 未 満 のいわゆる 無 年 金 低 年 金 の 高 齢 者 と 50 万 円 以 上 の 年 金 を 受 給 し ている 高 齢 者 の 子 供 との 同 居 率 を 比 較 したものである 年 齢 が 高 くなるほど 子 供 との 同 居 率 が 高 くなっていくが 年 金 額 の 多 寡 により 子 供 との 同 居 率 に 大 きな 差 がみられる たとえば 70 歳 代 前 半 では 男 女 とも 10 ポイント 以 上 の 差 がみられ 70 歳 代 後 半 では 若 干 格 差 が 小 さくなっているが 80 歳 以 上 では やはり 10 ポイント 近 くまたはそれ 以 上 の 差 が 計 測 される なお 70 歳 未 満 の 男 性 で 同 居 率 が 逆 転 しているのは 65 歳 以 上 の 在 職 者 に 対 する 老 齢 年 金 の 支 給 停 止 の 仕 組 みが 影 響 していることが 考 えられる 表 5 年 金 額 の 多 寡 別 にみた 子 との 同 居 の 比 率 (2006 年 ) 男 女 50 万 円 未 満 50 万 円 以 上 50 万 円 未 満 50 万 円 以 上 総 数 44.1% 37.7% 54.0% 41.4% 65-69 34.3% 38.6% 43.1% 36.9% 70-74 45.2% 33.5% 47.9% 36.5% 75-79 41.6% 36.6% 45.9% 38.5% 80-84 50.6% 42.2% 61.3% 52.3% 85+ 65.4% 50.7% 78.0% 65.2% ( 出 所 ) 筆 者 推 計 このように 年 金 額 の 多 寡 により 子 供 との 同 居 率 に 大 きな 違 いがみられるのは 高 齢 者 が 経 済 的 に 自 立 できるかどうかが 子 供 との 同 居 別 居 行 動 にかなり 大 きな 影 響 を 与 え ていることがその 理 由 の 一 つと 考 えられる かつての 子 供 が 両 親 の 老 後 の 面 倒 をみるとい う 習 慣 は 社 会 的 規 範 であると 同 時 に 高 齢 者 の 生 活 保 障 的 な 機 能 も 重 要 であったと 考 え られる 高 齢 者 の 子 供 との 同 居 率 の 低 下 は 公 的 年 金 制 度 という 代 替 的 な 機 能 が 整 った 結 果 とも 考 えることができるが 依 然 として 無 年 金 低 年 金 の 高 齢 者 が 少 なからず 存 在 し ていることに 留 意 が 必 要 である 4. おわりに 高 齢 者 の 年 金 額 分 布 を 分 析 することにより わが 国 の 公 的 年 金 制 度 の 発 展 の 歴 史 の 痕 跡 をたどってみた 1985 年 の 大 改 正 を 含 め 今 日 では 無 年 金 低 年 金 者 の 比 率 が 大 幅 に 低 10

下 するなど 高 齢 者 の 生 活 保 障 機 能 として 公 的 年 金 が 大 きな 役 割 を 果 たしていることが 実 績 データからも 明 らかになった このことが 高 齢 者 の 子 供 との 同 居 率 の 低 下 をもたら すこととなったが これは 良 い 意 味 での 別 居 であり 積 極 的 に 評 価 すべきものであろう しかしながら 無 年 金 低 年 金 者 の 比 率 は ほぼ 下 げ 止 まりの 感 もみられる 最 近 の 年 金 改 正 では 国 民 年 金 保 険 料 の 納 付 猶 予 制 度 や 部 分 免 除 制 度 など 負 担 軽 減 の 措 置 の 拡 充 が 行 われ また 受 給 資 格 期 間 の 短 縮 なども 検 討 されている これらの 措 置 の 効 果 が 受 給 者 の 統 計 データとして 現 れるのは 数 十 年 先 のことである さらに これらの 措 置 は 無 年 金 の 解 消 には 役 立 つかもしれないが 低 年 金 の 解 消 にはほとんど 効 果 がないことが 危 惧 さ れる 納 付 した 保 険 料 に 応 じて 給 付 を 行 うという 社 会 保 険 の 仕 組 みを 維 持 する 以 上 ある 程 度 の 無 年 金 低 年 金 の 問 題 は 避 けられない 国 民 年 金 の 納 付 率 が 低 いために 無 年 金 低 年 金 の 問 題 が 生 ずることが 問 題 視 されているが これはおかしな 議 論 である 納 付 率 が 低 いこ とは 社 会 保 険 庁 の 問 題 というよりは 納 付 義 務 がありながら 保 険 料 を 納 付 しない 者 が 相 当 数 に 上 ることが 問 題 であり 皆 年 金 かどうかという 理 念 の 話 ではなく 法 治 国 家 として 由 々しき 問 題 9である 年 金 財 政 への 影 響 の 程 度 の 問 題 は 議 論 のすり 替 えであり 保 険 料 を 納 付 しなかった 者 が 給 付 を 受 けられないのも 当 たり 前 のことである 先 の 統 計 の 定 義 に 基 づくと 無 年 金 低 年 金 者 の 比 率 は 低 下 していくが 男 性 では 10% 弱 女 性 では 20% 弱 が 残 るものと 想 定 される これを 当 然 のことととらえるか 救 済 すべ きことととらえるかは 価 値 観 の 問 題 であり それによって 無 年 金 低 年 金 の 対 策 も 変 わ ってくるであろう ただし 対 策 を 講 ずる 場 合 に 注 意 しなければいけないのは すでに 発 生 している 無 年 金 低 年 金 の 問 題 をどうするのかということである 現 役 世 代 に 対 しての 措 置 は 数 十 年 先 にしか 効 果 が 現 れないからである すでに 発 生 している 無 年 金 低 年 金 の 解 消 のためには 過 去 の 保 険 料 拠 出 とは 無 関 係 に 年 金 額 の 下 支 えをする 必 要 があるが これを 全 受 給 者 に 適 用 することは 公 平 性 の 観 点 か らとても 合 意 が 得 られるものではない 仮 に 下 支 えを 行 うのであれば 一 定 年 齢 (たとえ ば 75 歳 ) 以 上 に 限 定 して 最 低 保 障 年 金 を 適 用 するという 方 策 10が 公 平 性 の 観 点 から 許 容 で きる 最 低 ラインであろう 65 歳 から 74 歳 までの 年 金 給 付 の 格 差 が 過 去 の 保 険 料 拠 出 の 合 計 額 を 上 回 っているため 損 得 による 不 公 平 感 がある 程 度 解 消 できるからである いずれにしても 公 的 年 金 制 度 については 2004 年 改 正 で 残 された 課 題 も 多 く 記 録 問 題 の 解 決 も 急 務 である いずれも 簡 単 な 問 題 ではなく これまでの 改 正 経 緯 や 将 来 の 負 担 や 年 金 財 政 にも 十 分 に 留 意 した 検 討 が 必 要 である エビデンスに 基 づいた 国 民 的 な 議 論 が 行 われることが 望 まれる 9 2008 年 度 の 国 民 年 金 の 未 納 率 は 37.9%であり 強 制 加 入 といえる 状 況 にはない 10 この 方 策 は 他 にも 様 々なメリットがある 詳 細 は 稲 垣 将 来 における 高 齢 者 の 等 価 所 得 からみた 年 金 制 度 のあり 方 75 歳 以 上 高 齢 者 への 最 低 保 障 年 金 の 導 入 について 駒 村 編 年 金 を 選 択 する 慶 應 義 塾 大 学 出 版 会 (2009)pp.233-252 を 参 照 のこと 11