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きた少数民族が居住する地域も観光対象となることにより様々な影響を受けるようになった 観光者の増加により自然破壊が進むように 観光対象となった民族の伝統的な文化 生活様式が破壊 変化してしまう場合もある こういった観光による弊害の克服に向けて サステイナブル ツーリズム ( 持続可能な観光 ) が目指されるようになった このサステイナブル ツーリズムの具体的な観光形態としてよく挙げられるのがエコツーリズムとエスニック ツーリズムである サステイナブル ツーリズムに関する研究は 主に観光対象を破壊することなく観光を持続させるにはどのようにすべきかといった視点から行われてきた 具体的には 観光者の増加は観光対象にどのような影響を及ぼすか 観光対象への悪影響を少なくするためにはどのような整備を行う必要があるか どのような仕組みや規制が必要か 地域住民はいかにして参画すべきか といった研究である また 観光による適正な利益の確保 配分方法や使途を考えることも重要である これらについては既に数多くの事例研究がなされており 一定の成果が蓄積されている 一方 サステイナブル ツーリズムに関する研究において 観光対象として 持続すべきもの は何か 誰がそれを決めるのか といった基礎的な理論研究はあまりなされてこなかった それは サステイナブル ツーリズムが論じられる際に 持続すべきもの が何かを検討する必要性が低いエコツーリズム ( その理由は後述する ) が念頭に置かれている場合が多いことなどが一因として考えられる エコツーリズムに関しては持続可能なものとするための要件などについて多くの研究がなされてきた しかし いうまでもなくサステイナブル ツーリズムはエコツーリズムに限られた概念ではない 観光対象の種類 性質によっては観光対象として 持続すべきもの からあらためて検討する必要性がある場合もある 本稿で論じるエスニック ツーリズムはその典型的な例といえよう エスニック ツーリズムについては観光対象のオーセンティシティ ( 真正性 ) に関する議論 ( 観光者に呈示される文化が本物か偽物かといった議論 ) は多くなされてきたが サステイナブル ツーリズムとしての視点からの研究は進んでいない 華やかな民族衣装を身にまとって生活している人々の姿や前近代的で伝統的な住居など 生きている人間やその文化が観光対象となる場合 観光対象として 持続すべき文化 を決めることは容易ではない それを 誰が 決めるのかも重要であり十分に検討されなければならない しかし どのような文化を持続していくかは当事者であるその民族自身が決めるべきだといった考え方が自明のものされがちである 確かにその民族のことはその民族自身で決めるという考えはわかりやすい論理である しかし エスニック ツーリズムが行われている現場をみると 持続すべき文化 を当事者である民族が決めているとは考えられない事例や 当事者が決めることが必ずしも良い結果につながるとはいえないような事例も散見されるのである 以上のような問題意識から 本稿ではエスニック ツーリズムにおける観光対象として 持続すべき文化 について 同じくサステイナブル ツーリズムの代表例とされるエコツーリズムの場合と比較しつつ考察していく そして エスニック ツーリズムの特徴を明確にしたうえで サステイナブル ツーリズムとしてのエスニック ツーリズム ( 持続可能なエスニック ツーリ 20

ズム ) の実現に向けた新たな視点を呈示していきたい 2. 用語の定義と若干の考察エスニック ツーリズムやエコツーリズムの定義に関する研究は既に多数行われている しかし ある程度共通理解は形成されているものの まだまだ議論を要する部分が残っている 本稿ではサステイナブル ツーリズムの解釈やエスニック ツーリズムとエコツーリズムの差異について理論的に論じるため はじめにこれらの用語について本稿で使用するうえでの解釈を明確にしておきたい また 用語に関する不明確な点について若干の考察を加えておく (1) エスニック ツーリズムについてエスニック ツーリズムは エスニシティと関連する概念であり ある地域に住む民族の独自... の生活文化を対象とした観光全般を指すものである したがって 語義的には後述する前近代性やエキゾチックであるといった要素はエスニック ツーリズムを規定する要素とはいえない 例えば 朝水 (2001) はエスニック ツーリズムに関する諸研究をまとめているが その中ではオーストラリアやカナダ アメリカなど先進国の移民社会におけるマイノリティ観光に関する研究についても取り上げられている しかし 朝水自身 欧米以外の地域ではエスニック研究の対象にその地域のマジョリティである民族も含まれることを指摘したうえで その理由について 欧米系の観光客から見ると その地域住民の風習等が独特で興味深いため エスニック ツーリズムと表現しているようである と述べている このように本来のエスニシティ概念から離れてエスニック ツーリズムという表現が広く用いられているのが現状である 幸田 (2003) はエスニック ツーリズムを ( 文化観光のうち ) 土着の人びと のエキゾチックな暮らしぶりに関心が向けられるようなもの と定義している これはエスニシティ概念から離れた定義であるが 現実のエスニック ツーリズムが行われている状況を反映したものとなっている ただし エキゾチックな暮らしぶり という表現には注意が必要である もともと エキゾティズム とは 西欧の文化的優位と東洋の文化的劣位を前提 ( 須藤 2005) とした西欧中心主義的視点からの異文化認識である したがって エキゾティズムという要素を加えたエスニック ツーリズムの定義は西欧主体の定義付けであり その点に関する批判もあるだろう しかし エスニック ツーリズムにおいては観光者の多くが西欧諸国および西欧的な近代化を経た日本や韓国もしくはそれらの国々と同等の生活を営む他の国の富裕層であることを考えると妥当であろう また 安村 (1996) はエスニック ツーリズムを [ モダン ] 化が生活様式に全面的に浸透していない 先住民 およびそのエキゾチズムを観光対象とする観光形態 と定義している この定義は幸田と近いが モダン化していない生活様式という要件は具体的でわかりやすい 幸田の場合には前近代性への言及はないが エキゾチックな暮らしぶり という部分に含意されているとも受け取ることができる ただし エスニック ツーリズムが盛んなタイ北部において観光対象とされている山岳民は比較的近年に移住してきた人々で先住民とはいえないことも指摘されており ( 橋本 21

2007) 現状では 先住民 を強調する必要性は低いだろう そこで 本稿ではエスニック ツ ーリズムを 近代的生活様式が全面的に浸透しておらず かつエキゾチックな文化を持つ地域を 対象とする観光 と定義して用いることとする (2) エコツーリズムとエスニック ツーリズムエコツーリズムについては これまでに数多くの定義がなされ エコツーリズムに求められる要件などについても研究がすすめられている (Boo 1991 Hill and Gale 2009 柴崎 永田 2005 など ) 多くの定義に共通する要素は 自然への配慮( 負荷の軽減 ) 自然保護への貢献 観光としての成立 地域経済への貢献 環境教育としての効果などである また エコツーリズムの観光対象は自然だけでなく文化も含むものとされるのが一般的である エコツーリズム ( もしくはエコツアー ) に関する研究の中で少数民族の文化を対象とした観光や遺跡観光について論じられている場合もある ( 佐藤 2006など ) 観光の現場においてもエコツーリズムを掲げた少数民族観光が行われている もちろんエコツーリズムの対象に文化が含まれている以上それが間違いだとはいえない ただし 少数民族の文化を対象とした観光を主に自然が観光対象とされるエコツーリズムに含めてしまうことによって エスニック ツーリズム独自の特徴が曖昧なものとなってしまうおそれがある エスニック ツーリズムの対象となる少数民族は昔ながらの農業を営み 都会に住む人々からすると自然と密接につながった生活を維持していると感じられる場合も多いだろう そのため 自然と共生している ( ように見える ) 彼らの生活文化を対象とした観光をエコツーリズムに含めることも理解できる そのためエスニック ツーリズムをエコツーリズムの一部として扱う方が実際の観光場面やそれに関する研究で有効である場合もあるかもしれない しかし 観光対象が観光者と同じ人間なのか自然なのかという違いは 本稿のテーマであるエスニック ツーリズムにおける 持続すべき文化 を考えるうえで大きな違いとなる ( 詳しくは後述 ) そこで 本稿では両者を観光対象の違いにより明確に区分し エコツーリズムの観光対象を 自然 に限定し そこで生活する少数民族の 文化 が主たる観光対象となる場合は含まないものとする なお これは本研究での議論を明確にするための措置であり エコツーリズムの観光対象に文化を含めることを否定するものではない (3) サステイナブル ツーリズムについてサステイナブル ツーリズムについては 既に別稿 ( 宮本 2009) にて論じているため ここでは本稿の論点に関わる部分のみ確認しておく サステイナブル ツーリズムは 1995 年に世界観光機関 (UNWTO) をはじめとする観光に関わる国際団体が協力して作成し発表した 観光産業のためのアジェンダ21 の中で 未来世代の観光機会を維持 向上させつつ 現在の観光者のニーズを満たすこと と定義されている (WTTC, WTO, Earth Council 1996) これは 1992 年の国連環境開発会議で採択されたアジェンダ21のなかで 観光がサステイナブル ディベロ 22

ップメント ( 持続可能な開発 ) を達成するために積極的に貢献できる経済分野として位置付けられたことをうけて サステイナブル ディベロップメントの考え方に基づいて規定されたものである ただし 観光分野ではサステイナブル ツーリズムという用語が用いられる以前から マス ツーリズムの弊害を克服した新しい観光 ( オルタナティブ ツーリズム ) が模索されていた サステイナブル ツーリズムにはその流れも引き継がれている したがって サステイナブル ツーリズムはマス ツーリズムの弊害を克服し未来世代の観光機会を維持 向上させるような観光を目指すものといえる ここで明確にしておきたいのは 安村 (2003) がオルタナディブ ツーリズムについて述べているとおり 克服すべきはマス ツーリズムの 負の諸効果をもたらす観光 の形態であって 大量の観光現象 ではない ということである したがって サステイナブル ツーリズムは単純にマス ツーリズムを否定した観光を意味するものではない この点は正しく認識しておく必要がある (4) 持続可能なエスニック ツーリズム以上を踏まえて サステイナブル ツーリズムとエコツーリズムおよびエスニック ツーリズムとの関係について若干考察を加えておきたい エコツーリズムは既に確認したとおり その定義に持続可能性を担保するための要件を内包しているため サステイナブル ツーリズムのひとつとして位置付けられる ( ただし 現実としては自然に配慮した観光形態でなくともエコツーリズムを称しているものもあり問題視されている (Stark 2002) ) エスニック ツーリズムもエコツーリズムと並んでサステイナブル ツーリズムのひとつとして挙げられるが エコツーリズムの場合と異なり その定義に持続可能性を担保するための要件が内包されているわけではない 現状ではエスニック ツーリズムは単なる観光対象の種類によるカテゴリーなのであり それ以上の特別の意味は含んでいないのである 自然を対象とした観光 ( ネイチャー ツーリズム ) のうちサステイナブル ツーリズムとしての要件を満たすもののみがエコツーリズムといえるように 少数民族等の文化を対象とした観光 ( 観光対象の種類によるカテゴリーとしてのエスニック ツーリズム) のうちサステイナブル ツーリズムとしての要件を満たすもののみが 持続可能なエスニック ツーリズム といえるものなのである ではなぜエスニック ツーリズムはエコツーリズムと並んでサステイナブル ツーリズムの例とされるのだろうか エスニック ツーリズムが盛んな場所として知られるタイ北部のチェンマイ近郊やベトナム北西部のサパ近郊では その地理的条件や受入れ施設等の関係もあり 少人数グループで少数民族の村々を訪問するトレッキング形態での観光が中心となっている また 宿泊を伴うトレッキングの場合はその民族の伝統的家屋 ( 実際には伝統的家屋風の観光客専用の宿泊施設が主だが ) に宿泊するようにプランニングされている 場合によっては村の人々と交流する機会が設けられている場合もある このような観光形態はマス ツーリズムとは異なるものであり エコツーリズムとほぼ同様の外形を備えている 仮に サステイナブル ツーリズム=マス ツーリズムではないもの なのであれば エスニック ツーリズムはサステイナブル ツー 23

リズムに該当するといえるだろう しかし既に確認したとおり 外形的に マス ツーリズムではない というだけでそれがサステイナブル ツーリズムになるわけではない したがって エスニック ツーリズムを単純にエコツーリズムと同様にサステイナブル ツーリズムのひとつとして位置付けることは妥当ではない 現在のエスニック ツーリズムに持続可能性を担保するための要件 ( エコツーリズムの場合と異なり この要件に関する研究がほとんどなされていない ) を加えてはじめて 持続可能なエスニック ツーリズム となるのである 単なる観光対象の種類によるカテゴリーとしてのエスニック ツーリズムと持続可能なエスニック ツーリズムとの違いは 持続すべき文化 を考えるうえでとても重要なポイントとなる 3. サステイナブル ツーリズムにおける 持続すべきもの (1) サステイナブル ディベロップメントからの演繹次に本題であるサステイナブル ツーリズムにおける 持続すべきもの に関して考察していく 方法としてはサステイナブル ツーリズムの元となる概念であるサステイナブル ディベロップメントから演繹的に論理展開していく手法を採用した この手法を採用したのは 現状としてどのような観光がサステイナブル ツーリズムとして行われているかではなく 概念としてのサステイナブル ツーリズムがもつ特徴を理解するために有効だと考えたからである そのうえで サステイナブル ツーリズムの代表例であるエコツーリズムにおける 持続すべき自然 について考えていく サステイナブル ディベロップメント ( 持続可能な開発 ) は1987 年に国連の環境と開発に関する世界委員会が公表した報告書 Our Common Future のなかで 将来の世代が自らのニーズを充足する能力を損なうことなく今日の世代のニーズを満たすことである と定義されている (WECD 1987) この定義からもわかるとおり サステイナブル ディベロップメントは 将来の世代も現在の世代と同様の権利を持っているのであり現在の世代は将来の世代の権利を侵害しないように配慮しなければならないという考え方 いわゆる世代間倫理に基づいている 特に自然との関係でいえば 世代間倫理は自然保護の理論的根拠となる考え方のひとつなのである ただし これについて森岡 (1996) は このパースペクティヴに捉えられているのは将来世代の人間も含めた 人類 とその 生息環境 であり 人間以外の生命体や自然それ自体の 内在的価値 は基本的に考慮されていないと指摘している サステイナブル ディベロップメントはあくまで人間の利益という観点から自然の価値を判断する人間中心主義的な概念なのである 人間中心主義に基づく自然保護の是非については環境倫理学の分野で長く議論されてきたことであり ここでその是非を論じることはしない ここで明確にしておきたいのは サステイナブル ディベロップメントという考え方において利用者と利用対象という 人間 - 自然 関係を考えた場合に 利用対象である自然を保護すべきなのは利用者である人間が将来利用するためなのであり利用対象自体の内在的価値や利用対象に対する倫理的な側面が考慮されているわけではない ということである 24

この点に注意して サステイナブル ディベロップメントから派生したサステイナブル ツーリズムについて演繹的に考えていく まず サステイナブル ディベロップメントにおける利用者と利用対象という 人間 - 自然 関係は サステイナブル ツーリズムの場合は同じく利用者と利用対象という関係から 観光者 - 観光対象 関係に置き替えることができる この場合 サステイナブル ディベロップメントにおける人間中心主義は サステイナブル ツーリズムにおいては観光者中心主義ということができるだろう そして 人間中心主義に基づくサステイナブル ディベロップメントにおいて利用対象 ( 自然など ) の保護理由を考えるにあたって利用対象の 内在的価値 が基本的に考慮されていなかったということから 観光者中心主義に基づくサステイナブル ツーリズムにおいては利用対象 (= 観光対象 ) の 内在的価値 は考慮されないということになる これらを踏まえれば 利用対象である観光対象を保護していかなければならない理由は 将来の人間 ( 観光者 ) が利用 ( 観光 ) する機会を守るため ということができる これは 観光産業のためのアジェンダ21 で示された 未来世代の観光機会を維持 向上させつつ 現在の観光者のニーズを満たすこと というサステイナブル ツーリズムの定義とも合致するものである この定義自体がサステイナブル ツーリズムを踏まえて作成されたことを考えれば当然の結果である しかし この当然の結果をあえて示したのは 最も一般的なサステイナブル ツーリズムの定義が 観光者中心主義 に基づくものであり 観光対象の保護理由に観光対象の 内在的価値 は考慮されておらず あくまで利用者 ( 観光者 ) 側の視点によるものだということをはっきりと示す必要があったからである ただし 人間中心主義に基づく自然保護の是非について倫理学上で議論されてきたように 観光対象の保護を観光者中心主義に基づくことの是非については議論が必要な部分であろう しかし その議論にかかわらず 少なくとも世代間倫理という人間中心主義的な思想に基づくサステイナブル ディベロップメントから演繹してサステイナブル ツーリズムについて考えた場合に関しては 観光対象を保護すべき理由は観光者側にとっての 利用価値 ( 観光する価値 ) によるものであり観光対象の 内在的価値 によるものではない ということは以上の考察からいえるのである 観光対象として 持続すべきもの およびその決定者を考えるためにはこの点をはっきり理解しておく必要がある (2) エコツーリズムにおける 持続すべき自然 サステイナブル ツーリズムにおける 観光者 - 観光対象 関係は エコツーリズムの場合には観光者が人間であることと観光対象が自然であることを明確にすると 観光者 ( 人間 )- 観光対象 ( 自然 ) 関係と表すことができる これはまさにサステイナブル ディベロップメントにおける 人間 - 自然 関係と同じであり 自然の利用目的を観光に限定した場合を表していることがわかる そして サステイナブル ディベロップメントからサステイナブル ツーリズムに演繹してきた考え方をエコツーリズムの場合に適用すれば 観光対象である自然を保護しなければならない理由は 将来の人間がその自然を観光対象として利用する機会を維持するため だといえる これもまた観光者中心主義 ( 人間中心主義 ) に基づく考え方であり 観光対象として 25

持続すべき自然 は観光者の視点で決められるということになる また サステイナブル ツーリズムとは別の視点からも同じような結果を得ることができる サステイナブル ツーリズムが登場する以前から観光による自然破壊が問題視されていたこともあり エコツーリズムには自然保護に貢献することが期待されている したがって エコツーリズムについては観光の一分野というだけではなく自然保護に向けた取り組みのひとつとしての視点からも考えることができる そのためには一般的な自然保護の文脈における 保護すべき自然 について考えておく必要がある 自然は時とともに変化していくものである では 自然を保護 復元しようとするときに 保護 復元の目標とされる 自然のあるべき姿 はどのような状態だろうか 現状なのか 数年前の状態なのか 数百年 数千年前の状態なのだろうか 時とともに変化していくものにあってどの状態が本来の姿 理想的な姿なのか それを決める根拠を示すことは容易ではない また それは 誰が 決めるべきなのだろうか 仮に 当事者 が決めるべきだとされるならば 自然のあるべき姿を決めるにあたっては 自然の意志 が尊重されなければならない しかし 当然自然には自らの意志を示す能力が無いため 自然のあるべき姿はあくまで人間が決めることになる... 多くの場合 人間からみて現在良好な自然が残っているとされる場合はその状態が保護すべきも... のとされ 人間からみて荒廃が著しいとされる場合は自然が豊かであった頃の状態に戻すことが目指されるであろう ただし 人間が決めるといっても既に述べたとおり自然を保護すべき理由については人間同士の間で必ずしも一致しているわけではない そのため保護すべき自然を決めるにあたってはその根拠付け関して人間同士の間で意見の相違が生じるかもしれない しかし 自然の内在的価値に基づく自然保護であっても 将来の人間が利用するための自然保護であっても 自然を保護しなければならないという現実の方向性は共通するものである この意味で 各論としては細かな利害対立が生じる場合があるとはいえ 総論としては自然保護の重要性そのものは既に広く合意されているといえるだろう 同じ理由により 自然保護に向けた取り組みのひとつという視点からエコツーリズムを捉えた場合も 観光対象として 持続すべき自然 は人間 ( 観光者 ) 側が決めることになる かつ 同様に自然を保護すべき理由の倫理学的根拠の違いにかかわらず 観光対象である自然を保護すべきだとする方向性自体は合意されやすいといえる それは 観光対象かどうかに関わらず 自然保護の重要性についての合意が背後にあるからである したがって 仮に 観光対象として という条件がはずれたとしても それだけでその自然を守るべきだという方向性が変わってしまうわけではない これが後述するエスニック ツーリズムの場合と大きく異なる点であり また はじめにエコツーリズムの場合は 持続すべきもの が何かを検討する必要性が低いと述べた理由でもある ゆえにエコツーリズムの場合は 持続すべきもの に関する理論研究より いかにして対象となる自然の保護と観光利用とを両立させるのかといった具体的な研究が求められる段階なのであり 現実としてそのような研究が広く行われているといえるだろう 26

4. エスニック ツーリズムにおける 持続すべき文化 (1) エコツーリズムの場合との違いエコツーリズムの場合と異なり エスニック ツーリズムの観光対象となるのは観光者と同じ人間 ( およびその文化 ) である 意志表示能力の無い自然とは異なり 自らの意志を持ちそれを示すことができ また自らの生活のあり方 未来を選択する権利と能力を有する存在である 自然のように自らのあるべき姿に関する判断を利用する側に委ねているわけではない この両者の性質の違いにより エスニック ツーリズムの場合はエコツーリズムと同様の 観光者 - 観光対象 関係では捉えきれない部分が生じてくる また 自然を保護することは観光 ( エコツーリズム ) の存在にかかわらずその必要性が広く合意されているのに対し エスニック ツーリズムの観光対象となるその民族の前近代的な伝統的生活様式などは必ずしも守るべきものという合意がされているものではない 伝統的生活様式を守っていくことがその民族にとって良いことであるとも限らない むしろ他の地域が近代化していく流れのなかで エスニック ツーリズムの観光対象であり続けるために伝統的生活様式を維持していくことは それに伴う不便さも甘受しなければならないなどのマイナスの側面もある 今まで前近代的な伝統的生活様式を保持してきた民族であっても グローバル化が進展する中で先進国の人々と交流し 先進国の生活や文化を知るなかで同じような生活スタイルを望むようになることもあるだろう また それを選択する権利もある もちろん 伝統的生活様式を維持していくことを選択する自由もある 前近代的な伝統的生活様式を維持すべきかどうかについては 近代化による利便性の向上への期待 民族として伝統を守りたい気持ちなど様々な感情 その他の利害が絡み合う中で 同じ民族であっても合意を形成することは非常に難しいものであろう さらに そこに 観光対象となる という要素が加われば その民族のなかで観光業に関わろうとする者 まったく観光とは関わらない者 さらに旅行業や宿泊業を営むその民族以外の者など 観光との関わり方 立場の違いにより観光者に呈示する文化のあり方や呈示の仕方などについての考え方は異なってくる ( この点に関しては石井 (2004) が詳しい ) 個人の内面においても 民族としての誇り 伝統を守ることへの責任感 近代化への欲求 観光による収入の増加への期待など様々な感情が入り交じり 葛藤が生じるだろう また 伝統的生活様式を観光対象にするとしても 住民すべてが伝統的生活様式を維持して観光者を迎え入れるのか 観光者の立ち入る区域を制限しその部分でのみ伝統的生活様式を見せるのか さらに観光者を満足させるために伝統文化に演出や創作を加えて呈示していくのかなど様々な選択肢がある 観光者の向けに創作された文化を演じることで後ろめたさを感じる場合も考えられるし 逆に観光者に喜ばれることで自らの文化の価値を認識し 民族アイデンティティが高揚する場合もあるだろう このように エスニック ツーリズムの観光対象として 持続すべき文化 を決めるにあたっては複雑な要素が絡み合ってくる そのためエコツーリズムにおいて 持続すべき自然 を決める場合以上に 持続すべき文化 に関する合意形成は困難なものとなるのである 27

(2) 持続すべき文化 と観光者のまなざしいずれにしても 持続すべき文化 を決めることは 住民の生活 将来に大きな影響を及ぼすものである よって倫理的な意味からもそれを決めるにあたっては当事者である民族の意志が尊重されるべきだということは理解できる しかし 観光対象であり続ける ことを前提とした場合の 持続すべき文化 についても同じであろうか どのような観光地であれ 観光地が観光地であり続けるためには 観光者の存在が不可欠である 観光地側としては観光者を惹きつけるような魅力を維持していかなければならない そのためには 観光者のまなざしに注意を払い 観光者の期待に応えていく必要があるだろう そのために観光地の人々は 観光客ががっかりすることのないよう 昔から伝わる儀式をいっそう美しくしたり 時には変更してみたり 大規模なものにしたりする (Boorstin 1962) のである エスニック ツーリズムの場合 観光者が赤や緑の刺繍で彩られた民族衣装を身にまとった人々の姿やエキゾチックな生活様式 民俗芸能等を見ることができると期待して訪れるならば それを呈示してはじめて観光地として成立する 観光者がそれらの文化が 伝統的 であることを期待するのであれば それを付加しなければ観光者の期待に応えることはできない 仮に それらがその民族にとって真の伝統文化ではなかったとしても である 実際に 伝統的なもの として観光に供されているものであっても 実は観光客の期待に応えるようにアレンジされたり新しく創作されたりしたものが数多くあるという指摘 ( 伊藤 2002 Hobsbawm and Ranger 1983など ) や 民族文化の呈示 ( 伝統舞踊など ) が実は他の民族によって担われているという事例 ( 前田 2003) なども報告されている こうなると 観光対象となっている伝統文化は偽物だといわれるかもしれない しかし このような形で呈示される文化を単に偽物として切り捨てるのではなく 演出された本物 とする捉え方(MacCannel 1976) や 伝統文化とは文脈を異にする 観光文化 としての捉え方 ( 詳しくは 橋本 2007 石井 2007) などが観光研究の分野では示されている 観光文化 として捉える場合は 観光のために演出や創作が加えられた伝統文化が本物か偽物かにこだわるのではなく 観光場面に限定された特殊な文化として位置付けられる また 歴史的にみても文化は様々な要因により他の地域からの影響を受けつつ変化していくものであり 観光による文化の変化のみをいちがいに否定することもできないだろう いずれにしても エスニック ツーリズムの観光対象であり続けるためには 持続すべき文化 は観光者の期待に応えるものでなければならない この意味において エスニック ツーリズムにおける観光対象として 持続すべき文化 は 民族の意志 真の伝統文化から離れて 間接的にではあるが観光者のまなざしが決定するといえるのではないだろうか このように述べると 真の伝統文化の価値 当事者である民族の権利や意志 感情を軽んじるものだと批判されるかもしれない しかし この批判には二つの問題がある 第 1に エスニック ツーリズムの対象であり続けることを前提として 持続すべき文化 を決める場合と 観光という文脈から離れてその民族として 持続すべき文化 を決める場合とを混同しているのではないかという点である 仮に後者の場合に当事者である民族の意志や感情を 28

軽視するとすれば批判を受けて当然だろう しかし 本稿で論じているのはあくまで前者の場合に関してなのである エスニック ツーリズムの観光対象であり続けるための 持続すべき文化 を考える前段階として まずエスニック ツーリズムの対象となるかどうかを決める段階がある そこで 当事者である民族自身が様々なメリットやデメリットを考え 自ら観光対象となる ( 積極的に観光者を呼び込み観光地としてやっていく ) かどうかを決定するのである そして 観光対象になるということが決定されてはじめて 次の段階として実際に観光地として成功するにはどうすればよいか そのためにはどのような文化を観光者に呈示していくべきかを考えることになる 観光者が集まらなければ観光地であり続けることはできない したがって この段階で決める 持続すべき文化 は観光者の期待に応えるものである必要がある 仮に観光対象となることを決めたにもかかわらず観光者の期待にそぐわない文化を呈示し続け 結果として観光者が来なくなれば 観光そのものが消滅するおそれがある それをやむを得ないとするならば もはやエスニック ツーリズムの対象であり続けるという選択自体が意味をなしていないといえる 一方 観光という文脈から離れて 持続すべき文化 を考える場合 エスニック ツーリズムの存続は前提ではない その民族は 観光客のまなざしにかかわらず 自らにとっての伝統文化の意味を考え 自らのために自らの意志で 持続すべき文化 を決めることができる そこで決定されたその民族として 持続すべき文化 が観光者の期待する文化と異なるものであれば 観光対象ではなくなることになるだろう それは 失敗でも 間違いでもない 観光以外の産業を柱とすることで近代的で豊かな生活が実現しているかもしれないし 経済的に豊かにはならなくとも伝統的生活様式を守っていくことで幸せに暮らしているかもしれない もちろん観光とは無関係にその民族として持続していくこととした文化が観光者の興味をひくものであれば 結果として観光者が集まることもあるだろう ただし この結果は副次的なものにすぎない いずれにしても本稿で論じているのは観光対象であり続けることを前提とした場合の 持続すべき文化 についてなのである 第 2に エスニック ツーリズムを規定する要素であった 前近代的生活様式 や エキゾチックな独自の文化 が もともと観光者送出国である西欧諸国のまなざしによるものだという視点が欠如しているのではないか という点である エスニック ツーリズムの観光対象が持つエキゾティズムは 西欧の文化的優位と東洋の文化的劣位を前提とした西欧中心の見方なのであった つまり エスニック ツーリズムというカテゴリー自体が西欧諸国の観光者のまなざしによるものに他ならない したがってエスニック ツーリズムの観光対象であり続けるためには必然的に西欧諸国からの観光者がその地域に期待する前近代的要素とエキゾチックな文化を持続していかなければならないのであり その意味で観光者のまなざしと切り離すことはできないのである これは当事者の権利や意志を軽んじているかどうかとは別種の問題だといえよう 29

(3) 持続可能なエスニック ツーリズム の場合ここまでエスニック ツーリズムの観光対象として 持続すべき文化 について述べてきた ただし 2(4) で述べたとおり エスニック ツーリズムはエコツーリズムと並んでサステイナブル ツーリズムのひとつとして挙げられるとはいえ現状では観光対象の種類によるカテゴリーにすぎず 必ずしもサステイナブル ツーリズムの理念を反映したものではない したがって 観光対象の種類によるカテゴリーとしてのエスニック ツーリズム ( 現在の定義 ) と エスニック ツーリズムのうちサステイナブル ツーリズムとしての要件を含む 持続可能なエスニック ツーリズム とは区別する必要がある そして ここまで 持続すべき文化 について述べてきたことは 最初に定義したとおり観光対象の種類によるカテゴリーとしてのエスニック ツーリズムの場合なのである では 持続可能なエスニック ツーリズム における 持続すべき文化 についてはどのように考えることができるだろうか はじめに これまでと同様にサステイナブル ディベロップメント概念から演繹して考えてみる サステイナブル ディベロップメントは将来の人間が利用するためにその対象 ( エネルギーや自然 ) を持続しなければならないという利用者側の視点に基づく考え方であった そして その流れを受けたサステイナブル ツーリズムにおける 持続すべきもの も観光対象の内在的価値によるのではなく利用者である観光者側の視点で決められるのであった したがってサステイナブル ツーリズムとしての 持続可能なエスニック ツーリズム の場合もまた観光対象として 持続すべき文化 は観光者側の視点に基づいて決定されるといえる つまり 観光者のまなざしに応える文化が観光対象として 持続すべき文化 になるのである これは観光対象の種類によるカテゴリーとしてのエスニック ツーリズムの場合と同じ結果である そうなると 持続可能なエスニック ツーリズムの場合においても 観光者のまなざしに応えるように伝統文化に演出や創作を加え 観光文化 として観光者に呈示していくことも否定すべきことではないということになるだろう しかし このようにサステイナブル ツーリズムとしての 持続可能なエスニック ツーリズム について考えた場合においても観光対象が観光の影響を受けて変化していくことを肯定することには疑問を感じるのではないだろうか なぜなら サステイナブル ツーリズムのひとつであるエコツーリズムの場合では観光対象である自然に対して観光がローインパクトであることが求められているからである ローインパクトであるということは観光開発および観光するにあたってその地域に生息する野生の動植物に対してなるべく傷つけないように配慮するというだけでなく 観光者が野生動物に食べ物を与えたり その地域の固有種ではない動植物を持ち込んだりすることも禁止されるのが一般的である 同じように考えれば 持続可能なエスニック ツーリズムの場合は観光開発や観光者がその地域を訪れることによって観光対象である文化が破壊されたり変化してしまったりすることや 観光者が外部の文化を持ち込むことによってその地域の文化に影響を与えることも避けるべきだといえる 世界観光機関 (UNWTO) は 持続可能な観光開発を行うにあたっては ホストコミュニティの社会文化的真正性を尊重し 文化遺産と伝統的 30

な価値観を守ることが必要だと述べている (UNWTO 2004) ここでは特に 社会文化的真正性を尊重 伝統的な価値観を守る と明記されていることに注目する必要がある この視点に立... てば 仮に観光対象となるその民族の自らの意志であったとしても 観光対象であり続けるために文化を変化させ 真正性や伝統的な価値観が失われることは避けるべきことだといえる つまり 観光者のまなざしに応えるように伝統文化に演出や創作が加えられた 観光文化 は 持続可能なエスニック ツーリズム における 持続すべき文化 としては認められないということになる このようにサステイナブル ディベロップメント概念から演繹した場合とエコツーリズムと同じように考えた場合で 持続可能なエスニック ツーリズム において観光対象となる伝統文化に演出や創作が加えられることに対する考え方に矛盾が生じることになる このような矛盾が生じるのは もともと主にエネルギー資源や自然など人間以外のもの ( 資源 ) を利用対象として念頭に置いていたサステイナブル ディベロップメントという考え方が対象を限定することなく 持続可能な として拡大され 人間自身が対象となる場合もある観光分野に適用されてきたことが一因ではないかと考える ( この点も議論が必要な部分ではあるが 本稿の論点からは外れるため立ち入らないでおく ) しかし 2(3) で述べたとおり サステイナブル ツーリズムはサステイナブル ディベロップメントのみから生まれたわけではなく サステイナブル ディベロップメントが登場する以前から模索されてきたマス ツーリズムの弊害を克服した観光 ( オルタナティブ ツーリズム ) の流れも受け継いでいる そのことを踏まえれば 持続可能なエスニック ツーリズム にはエコツーリズムと同様に観光対象にローインパクトであること 特に観光者のまなざしに応えることによる文化変容を肯定するのではなく 真正性のある伝統文化の保護に貢献するものであることが求められていると考えた方が妥当であろう 5. 結論本稿で整理したエスニック ツーリズムに関する事項をまとめると次のようになる 1 エスニック ツーリズムはエコツーリズムと同じくサステイナブル ツーリズムの例として挙げられるが エコツーリズムと異なり必ずしもサステイナブル ツーリズムとしての要件を含むものではない 2 したがって 観光対象の種類によるカテゴリーとしてのエスニック ツーリズムと そのうちサステイナブル ツーリズムに該当する 持続可能なエスニック ツーリズム とは区別して考える必要がある 3 前者の場合も後者の場合も観光対象であり続けるためには観光者のまなざしに応えなければならない 4 前者の場合は観光対象であり続けるために観光者のまなざしに応えるように伝統文化に演出や創作が加えられて変化していくことも否定すべきことではないが 後者の場合には真正性のある伝統文化の保護に貢献することが求められる 31

これら四つの事項を中心とした本稿での考察によって 持続可能なエスニック ツーリズム を実現させるためには観光者のまなざしを変えていくことが必要だという結論を導くことができる 持続可能なエスニック ツーリズムとなるためには エスニック ツーリズムの観光対象であり続けることが真正性のある伝統文化を守ることにつながらなければならない しかし 観光者が 演出や創作が加えられた真正性を伴わない文化であっても 見た目のエキゾチックさ 華やかさを求めて観光に訪れるのであれば 観光地側は観光者の期待に応えるためにそのような文化を呈示し続けることになる 観光者が真正性のある伝統文化にこそ観光対象としての価値を認めるようになってはじめて 真正性のある伝統文化が観光対象として 持続すべき文化 となり得るのである このように 持続可能なエスニック ツーリズム を実現させるためには観光者のまなざしを変えていくことが必要なのである しかし 橋本 (2007) が述べているとおり 実際の観光場面では 本来の文脈から切り離されて形成された 観光文化 まがいものであっても よく知られたもの が観光対象となっているのが現状である この現状において 観光対象となる文化に真正性を求めるように観光者のまなざしを変えていくことは容易ではないだろう それは観光地での観光者に対するインタープリテーションや観光プログラムの工夫など観光地の人々の努力のみで可能になるものではない 観光者が目的地に出発する前 さらに目的地を決める前の段階で 真正性のある伝統文化を尊重する観光者のまなざしが形成されていなければならない そのためには 観光者が観光地イメージを形成するうえで大きな影響力をもっているガイドブックなどの各種メディアや旅行代理店などによる情報提供のあり方なども考えていく必要がある また 学校教育などを通じてより多くの人に観光が観光対象となる文化に及ぼす影響などについて考える機会を提供していくことが必要であろう 日本は世界有数の観光者送出国であり エスニック ツーリズムの目的地として人気の高い東南アジア地域にも多くの観光者を送り出している この現状を踏まえれば 日本には 持続可能なエスニック ツーリズム の実現に向けて積極的に取り組んでいく責任があるだろう 観光者送出国側として取り組むべき課題はいくつかあるだろうが 本稿の考察によりそのひとつが観光者のまなざしを変えていくことだということを示すことができた そのための具体的な内容 方法を検討していくことが今後の重要な課題となる 引用 参考文献朝水宗彦 (2001) エスニック ツーリズムに関する諸研究のアプローチ 北見大学論集 第 23 巻第 2 号 pp.165-180. Boo, E. (1991) Planning for Ecotourism, PARKS, 2(3).( 薄木三生仮訳 (1992) エコ ツーリズム計画 国立公園 第 501 号 pp.2-7.) Boorstin, D.J. (1962) The Image: or, What Happened to the American Dream, Atheneum Publisher(= 後藤和彦 星野郁美訳 (1974) 幻影の時代: マスコミが製造する事実 東京創元社 ) 橋本和也 (2007) 観光人類学の戦略- 文化の売り方 売られ方 世界思想社. 32

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