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係 に 提 出 する 2 財 形 担 当 係 は 前 項 の 規 定 による 財 形 貯 蓄 等 の 申 込 みがあった 場 合 には 当 該 申 込 みの 内 容 を 点 検 し 財 形 貯 蓄 等 の 契 約 の 要 件 ( 第 6 条 に 規 定 する 基 準 を 含 む )を 満 たしている

参 考 様 式 再 就 者 から 依 頼 等 を 受 けた 場 合 の 届 出 公 平 委 員 会 委 員 長 様 年 月 日 地 方 公 務 員 法 ( 昭 和 25 年 法 律 第 261 号 ) 第 38 条 の2 第 7 項 規 定 に 基 づき 下 記 のとおり 届 出 を します この

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平 成 22 年 12 月 第 5 回 定 例 会 (11 月 26 日 招 集 ) 会 期 日 程 表

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2 出 願 資 格 審 査 前 記 1の 出 願 資 格 (5) 又 は(6) により 出 願 を 希 望 する 者 には, 出 願 に 先 立 ち 出 願 資 格 審 査 を 行 いますので, 次 の 書 類 を 以 下 の 期 間 に 岡 山 大 学 大 学 院 自 然 科 学 研 究 科 等

( 補 助 金 等 交 付 決 定 通 知 に 加 える 条 件 ) 第 7 条 市 長 は 交 付 規 則 第 11 条 に 規 定 するところにより 補 助 金 の 交 付 決 定 に 際 し 次 に 掲 げる 条 件 を 付 するものとする (1) 事 業 完 了 後 に 消 費 税 及 び

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(6) 事 務 局 職 場 積 立 NISAの 運 営 に 係 る 以 下 の 事 務 等 を 担 当 する 事 業 主 等 の 組 織 ( 当 該 事 務 を 代 行 する 組 織 を 含 む )をいう イ 利 用 者 からの 諸 届 出 受 付 事 務 ロ 利 用 者 への 諸 連 絡 事 務

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(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 ( 各 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 例 ) ( 例 ) 15 (H2) (H2) (H24) (H24) (H25.4.1) (H25.4.1) (H24) (H24)

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

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i 日 本 植 物 病 理 学 会 ニュース 第 74 号 (2016 年 5 月 ) 学 会 活 動 状 況 1. 大 会 開 催 報 告 平 成 28 年 度 日 本 植 物 病 理 学 会 大 会 は,3 月 21 日 ( 月 ) か ら 23 日 ( 水 )まで, 晴 れの 国 岡 山 県, 岡 山 市 のコンベン ションセンターで 開 催 されました. 岡 山 大 学 津 島 キャンパ ス( 岡 山 市 )で 2000 年 に 大 会 が 開 催 されており, 今 回 は 16 年 ぶりの 岡 山 開 催 でありました. 本 大 会 は, 大 会 委 員 長 の 岡 山 大 学 自 然 科 学 研 究 科 教 授 多 賀 正 節 先 生, 運 営 委 員 会 幹 事 長 の 一 瀬 勇 規 教 授 の 強 いリーダーシップのもと 準 備 が 進 められてきました.しかし,3 月 上 旬 多 賀 先 生 が 骨 折 の 事 故 に 遭 われ, 急 遽 筆 者 が 代 理 を 務 めることとなりまし た. 幸 い 本 稿 執 筆 時 点 では, 無 事 退 院 され, 快 方 に 向 って いるとのことです. 手 前 味 噌 になりますが, 岡 山 県 は 歴 史 的 に 植 物 病 理 学 研 究 の 盛 んなところで, 先 達 の 方 々は 枚 挙 にいとまがありません. 大 会 の 運 営 は, 岡 山 県 内 の 植 物 病 理 学 関 連 の 9 研 究 機 関 ( 室 ), 岡 山 大 学 自 然 科 学 研 究 科 の 病 理 関 係 の 多 賀 研 究 室, 世 良 研 究 室, 環 境 生 命 科 学 研 究 科 の 一 瀬 研 究 室, 豊 田 研 究 室, 倉 敷 キャンパスの 資 源 植 物 科 学 研 究 所 の 鈴 木 研 究 室,ガリス 研 究 室, 岡 山 県 生 物 科 学 研 究 所 ( 岡 山 大 学 名 誉 教 授 の 白 石 先 生 が 現 所 長 を 務 められて おります)の 向 原 研 究 室, 鳴 坂 研 究 室 と 岡 山 県 農 業 研 究 所 の 病 虫 研 究 室,さらには 瀬 戸 内 海 を 隔 てた 香 川 大 学 の 秋 光 研 究 室, 五 味 研 究 室, 市 村 研 究 室 のスタッフ, 学 生 がその 任 にあたりました. 運 営 委 員 会 幹 事 長,プログラム 委 員 長 の 大 役 は, 岡 山 大 学 津 島 キャンパスの 一 瀬 勇 規 教 授, 秋 光 和 也 教 授 に 担 って 頂 きました. 大 会 期 間 中 は 天 候 にも 恵 まれ,また, 交 通 の 便 が 良 い 岡 山 で 開 催 されたこともあり, 賛 助 会 員 を 含 め 900 名 をこえ る 方 々に 参 加 頂 きました.この 数 字 は 例 年 並 みと 言 えます が, 会 員 数 の 減 少 を 考 慮 すると, 大 勢 の 方 に 参 加 頂 いたの ではと 考 えます. 学 生 優 秀 発 表 賞 の 選 考 対 象 の 演 題 123 題 を 含 め, 総 講 演 題 数 は 366 に 上 りました. 発 表 時 間 が 質 疑 応 答, 演 者 交 替 の 時 間 を 含 め 12 分 と 短 かったにもかかわ らず, 円 滑 な 運 営 にご 協 力 頂 きました 演 者, 座 長 の 方 々に は 感 謝 申 し 上 げます.また, 学 生 優 秀 発 表 賞 の 評 価 にあた られました 28 名 の 評 議 員,48 名 の 座 長 の 方 々には, 大 変 お 世 話 になりました.この 拙 文 が 印 刷 される 頃 には, 学 生 優 秀 発 表 賞 の 受 賞 者 も 決 まっていることでしょう. いつも 言 われていることではありますが, 国 内 / 国 際 学 会 問 わず 科 学 会 議 の 大 きな 目 的 の 一 つにネットワーキング が 挙 げられます. 懇 親 会 はその 目 的 を 達 成 するのには 格 好 の 場 を 提 供 します. 岡 山 県 では 最 も 格 調 高 いホテルの 一 つ であるホテルグランヴィアのフェニックスの 間 で 懇 親 会 は 賑 々しく 開 かれました. 懇 親 会 は, 岡 山 大 学 の 豊 田 和 弘 教 授, 岡 山 県 の 農 業 研 究 所 の 谷 名 光 治 病 虫 研 究 室 長 が, 趣 向 をこらした 企 画, 運 営 にあたられました. 開 始 前 の 待 ち 時 間 を 利 用 して, 国 指 定 重 要 無 形 民 俗 文 化 財 備 中 神 楽 が 20 分 程 度 披 露 されました. 演 目 八 重 垣 の 能 の 大 蛇 退 治 (おろちたいじ)の 場 面 を 演 じて 頂 きました.ストーリー は, 素 戔 鳴 の 神 (スサノオノミコト)が 大 蛇 に 酒 を 飲 ませ て 大 蛇 退 治 を 行 うというものでした.また, 鏡 割 りに 使 われた 清 酒 ( 地 酒 )を 含 め 岡 山 県 の 多 くの 地 酒 が 振 る 舞 われました.お 酒 好 きの 参 加 者 には,こたえられなかった のではと 拝 察 します. 幸 い, 懇 親 会 ではどなたも 退 治 され なかったと 聞 いています. 3 日 間 の 大 会 期 間 中,いたらない 点 も 多 くあったかと 思 いますが, 大 きなトラブルは 運 営 委 員 会 には 届 いておりま せん.これもひとえに, 会 長 初 めとする 学 会 役 員, 評 議 員 の 方 々, 大 会 参 加 者 の 皆 様, 運 営 にあたって 頂 きました 皆 備 中 成 羽 社 による 備 中 神 楽.

ii 様 のご 支 援 の 賜 物 と 思 います.あらためて 厚 く, 厚 くお 礼 申 し 上 げます. ( 大 会 委 員 長 代 理 : 鈴 木 信 弘 ) 2. 研 究 会 談 話 会 等 開 催 報 告 (1) 第 9 回 植 物 病 害 診 断 研 究 会 第 9 回 植 物 病 害 診 断 研 究 会 は, 平 成 27 年 10 月 26 日, 27 日 の 2 日 間 にわたり, 秋 田 県 秋 田 市 秋 田 拠 点 センター ALVE 多 目 的 ホール で 開 催 された. 参 加 者 は 試 験 研 究 機 関, 大 学, 普 及 機 関, 農 業 団 体, 企 業 など, 北 は 北 海 道 か ら 南 は 九 州 熊 本 まで, 人 数 は 126 名 であった. 第 1 セッ ションでは, ワンランク 上 の 診 断 を 目 指 すために とい うテーマで, 平 子 喜 一 氏 ( 福 島 県 植 物 防 疫 協 会 )から 野 菜 病 害 の 上 手 なサンプリング と 題 して, 的 確 なサンプリ ング 方 法,サンプリングの 際 必 要 な 物 品, 持 ち 運 びや 送 付 してもらう 場 合 の 方 法, 保 管 方 法 などについて, 自 身 の 経 験 をもとに 講 演 していただいた. 次 に, 深 谷 雅 子 氏 ( 住 友 化 学 ( 株 ), 元 秋 田 県 果 樹 試 験 場 )から 果 樹 病 害 の 上 手 なサンプリング と 題 して, 枝 幹 病 害 の 特 徴 を 解 説 してい ただくとともに 診 断 のポイント, 採 取 標 本 からの 菌 の 分 離 方 法 について 講 演 していただいた. 次 は, 田 中 和 明 氏 ( 弘 前 大 学 農 学 生 命 科 学 部 )から ワンランク 上 の 顕 微 鏡 写 真 と 題 して,どうやったらきれいな 写 真 が 撮 れるか, 顕 微 鏡 の 上 手 な 使 い 方 を, 学 生 指 導 の 経 験 談 を 交 えながら,これ まで 知 らなかった 染 色 方 法 などをご 紹 介 いただいた. 最 後 に, 重 松 辰 郎 氏 (( 株 )エス ディー エス バイオテック) から 野 菜 病 害 を 上 手 に 再 現 するには と 題 して 薬 剤 効 果 試 験 の 経 験 からの 上 手 な 発 病 方 法 や 試 験 区 の 設 計 法 などに ついて 講 演 いただいた.2 日 目 は, 第 2 セッションとして, これからの 診 断 と 防 除 指 導 ( 診 断 カルテの 作 成 とデータ ベース 共 有 に 向 けて)というテーマで, 佐 藤 幸 生 氏 ( 前 富 山 県 立 大 学 )からは うどんこ 病 ( 菌 )の 何 を 見 ているの か? 病 害 診 断 カード 作 成 に 向 けて と 題 して,うどんこ 病 菌 の 分 類, 特 にキュウリのうどんこ 病 の 発 生 状 況 につい て 講 演 いただいた. 次 に 佐 藤 豊 三 氏 ( 国 立 研 究 開 発 法 人 農 業 生 物 資 源 研 究 所 )から ここを 見 れば 大 丈 夫 ~ 日 本 植 物 病 名 データベースの 活 用 法 ~ と 題 して, 日 本 植 物 病 名 目 録 の 情 報 をデータベース 化 した 病 名 DB の 活 用 方 法 につい て 解 説 していただいた.また, 戸 田 世 嗣 氏 ( 熊 本 県 農 業 技 術 課 農 業 技 術 支 援 室 )からは, 熊 本 県 における ICT を 利 用 した 病 害 虫 診 断 について と 題 して,ICT を 導 入 した 背 景 から, 病 害 虫 診 断 に 実 際 にどのように 活 用 しているのか について 熊 本 県 の 先 進 事 例 をご 紹 介 いただいた. 最 後 に 総 合 討 論 として 鈴 木 啓 史 氏 ( 三 重 県 農 業 研 究 所 )をコーディ ネーターに 奥 田 充 氏 ( 農 研 機 構 中 央 農 業 研 究 センター) 菅 原 敬 氏 ( 山 形 県 病 害 虫 防 除 所 庄 内 支 所 )をパネラーとし て,データベースにより 検 索 機 能 が 向 上 しても, 利 用 者 の 検 出 技 術 判 断 能 力 等 人 材 育 成 が 重 要 なことに 変 わりない ことなどが 討 議 された.いずれのセッションにおいても, 参 加 者 からの 質 問 も 多 く, 有 意 義 な 研 究 会 であった.また, 参 加 者 にはアンケートに 回 答 いただいた.アンケートには 非 常 に 貴 重 な 意 見 が 多 く 寄 せられており, 今 後 の 研 究 会 の 開 催 に 活 かしてゆきたいと 考 えている. 最 後 に, 講 演 者 の 皆 様, 遠 方 よりお 越 しいただいた 参 加 者 の 皆 様 に 感 謝 します.なお, 第 10 回 の 研 究 会 は 静 岡 で 開 催 される 予 定 である. ( 藤 晋 一 ) (2) 第 26 回 殺 菌 剤 耐 性 菌 研 究 会 シンポジウム 報 告 第 26 回 殺 菌 剤 耐 性 菌 研 究 会 シンポジウムは, 平 成 28 年 3 月 24 日 に 岡 山 大 学 で 開 催 され, 公 的 研 究 機 関, 農 薬 メー カーおよび 農 業 団 体 などから 当 初 想 定 を 上 回 る 136 名 の 参 加 が 得 られた. 岡 山 県 からの 話 題 提 供 として, 畔 栁 泰 典 氏 ( 岡 山 県 農 林 水 産 総 合 センター)から 岡 山 県 における 殺 菌 剤 耐 性 菌 の 対 策 と 題 して, 岡 山 県 における 主 な 薬 剤 耐 性 菌 の 紹 介, QoI 剤 耐 性 イネいもち 病 菌 の 迅 速 な 感 受 性 検 定 による 被 害 の 最 小 化 と 現 場 への 指 導,アスパラガス 茎 枯 病 菌 の 薬 剤 感 受 性 検 定 法 の 確 立 とその 結 果 に 基 づく 防 除 体 系 の 検 討 につ いて 報 告 して 頂 いた. 前 回, 前 々 回 に 引 き 続 き QoI 剤 耐 性 いもち 病 菌 をめぐ る 取 り 組 み と 題 して, 櫻 田 史 彦 氏 ( 宮 城 県 古 川 農 業 試 験 場 ), 内 橋 嘉 一 氏 ( 兵 庫 県 立 農 林 水 産 技 術 総 合 センター) から, 両 県 における 耐 性 菌 の 発 生 状 況 と 対 応 策 についてご 紹 介 頂 いた. 宮 城 県 では 2014 年 に 耐 性 菌 の 発 生 が 認 めら れ,その 後 に QoI 剤 の 使 用 自 粛 といもち 病 発 生 時 の 対 応 を 周 知 し,2016 年 には QoI 剤 の 使 用 を 全 面 中 止 とされた. 兵 庫 県 では 耐 性 菌 が 確 認 された 後 に QoI 剤 の 使 用 を 自 粛 し,その 結 果,2015 年 には 耐 性 菌 比 率 の 減 少 が 認 められた. また, 種 子 消 毒 剤 および 抵 抗 性 誘 導 型 箱 処 理 剤 の 効 果 を 検 討 し, 採 種 圃 および 一 般 圃 場 における 効 果 的 な 防 除 体 系 が 提 案 された. 鈴 木 文 彦 氏 ( 農 研 機 構 中 央 農 業 研 究 センター) からは QoI 剤 耐 性 いもち 病 菌 の 新 しい 検 定 技 術 とモニタ リング についてご 講 演 頂 いた.QoI 剤 に 関 する 耐 性 変 異 の 1 塩 基 多 型 (SNP)を 識 別 できるマーカーを 開 発 し,PCR の 伸 長 反 応 時 間 を 1 秒 まで 短 縮 した 1 秒 PCR, QoI 剤 と MBI-D 剤 の 2 つに 対 する 耐 性 菌 の 遺 伝 子 診 断 を 1 回 の PCR で 判 定 できるマーカー(MQ-P)の 開 発 を 紹 介 して 頂 き,また,MST 法 による SSR 遺 伝 子 型 の 系 統 解 析, 耐 性 菌 の 発 生 要 因 についても 紹 介 して 頂 いた. 上 記 3 題 の 講 演

iii 会 場 の 様 子. 質 疑 応 答 の 様 子. の 後 に 全 体 討 議 を 行 った.QoI 剤 耐 性 イネいもち 病 菌 発 生 県 では QoI 箱 処 理 剤 の 使 用 中 止 または 自 粛 により 耐 性 菌 比 率 が 低 くなっている 事 例 があり,また,いもち 病 以 外 の 紋 枯 病 および 穂 枯 性 病 害 を 対 象 とした QoI 剤 の 使 用 再 開 の 要 望 があることから,その 是 非 について 議 論 した.また, 効 果 的 かつ 効 率 的 な 耐 性 菌 の 遺 伝 子 診 断 技 術 が 開 発 されて おり, 今 後 も 技 術 の 共 有 化 および 情 報 交 換 を 図 っていくこ とを 確 認 した. 本 シンポジウムでの 事 例 紹 介 および 議 論 が, 耐 性 菌 未 発 生 県 における 耐 性 菌 の 発 生 を 未 然 に 防 ぎ,また, 万 が 一 耐 性 菌 が 発 生 した 場 合 でも 被 害 を 最 小 限 に 抑 えるた めの 一 助 となることを 期 待 したい. 新 規 殺 菌 剤 関 連 では, 佐 瀬 政 明 氏 (バイエルクロップサ イエンス( 株 ))から フルオピラムの 作 用 機 構 感 受 性 検 定 について と 題 し, 本 剤 がピリジニルエチルベンズア ミドと 呼 ばれる 化 学 グループの 新 規 SDHI 剤 (コハク 酸 脱 水 素 酵 素 阻 害 剤 )であること, 作 用 特 性,ヨーロッパにお ける 感 受 性 モニタリング, 日 本 国 内 における 知 見 等 につい てご 紹 介 頂 いた. 萩 原 寛 之 氏 ( 三 井 化 学 アグロ( 株 ))か ら 新 規 殺 菌 剤 トルプロカルブの 作 用 特 性 と 感 受 性 検 定 と 題 し, 本 剤 がメラニン 生 合 成 経 路 のポリケタイド 合 成 酵 素 を 阻 害 する 新 規 MBI 剤 (MBI-P)であること, 作 用 機 構, 作 用 特 性, 既 存 の 耐 性 菌 に 対 する 効 果, 感 受 性 検 定 等 につ いてご 紹 介 頂 いた. 今 回, ナシにおける 防 除 体 系 と 耐 性 菌 の 考 え 方 と 題 し て, 金 子 洋 平 氏 ( 千 葉 県 農 林 総 合 センター), 菊 原 賢 次 氏 ( 福 岡 県 農 林 業 総 合 試 験 場 )より, 両 県 での 事 例 と 取 り 組 みを 紹 介 して 頂 いた. 金 子 氏 より, 千 葉 県 では 黒 星 病 防 除 を 中 心 とした 防 除 体 系 を 編 成 していること, 効 果 の 高 い 剤 の 使 用 時 期, 予 防 剤 と 治 療 剤 の 組 み 合 わせによる 防 除 例,また, 耐 性 菌 対 策 として 耕 種 的 防 除 の 積 極 的 な 導 入, 予 防 剤 に 軸 足 を 置 いた 防 除 体 系, 薬 剤 情 報 や 耐 性 菌 リスク 情 報 の 把 握 と 現 場 への 提 示, 耐 性 菌 の 網 羅 的 継 続 的 なモニタリング, 他 系 統 剤 の 探 索 および 導 入 等 の 取 り 組 みについてご 紹 介 頂 いた. 菊 原 氏 からは 福 岡 県 におけるナシ 黒 星 病 および 赤 星 病 の 発 生 状 況,DMI 剤 耐 性 菌 の 発 生 状 況, 感 受 性 検 定 法, 各 種 薬 剤 の 防 除 効 果 についてご 紹 介 頂 き,また,ナシ 病 害 の 耐 性 リスク 評 価,これまでの DMI 剤 耐 性 菌 発 生 と 病 害 多 発 の 教 訓 を 生 かして 薬 剤 耐 性 管 理 法 を 現 地 に 普 及 させて いくことの 必 要 性 をご 説 明 頂 いた. 講 演 の 後 に 石 井 英 夫 氏 ( 殺 菌 剤 耐 性 菌 研 究 会 顧 問 )より,ナシ 黒 星 病 菌 の DMI 剤 耐 性 発 達 の 要 因, 耐 性 菌 検 定 上 の 問 題 点, 今 後 とるべき 対 策 等 についてご 説 明 頂 き, 現 場 での 対 応 等 について 議 論 を 行 った. 今 回 のシンポジウムの 開 催 にあたっては, 豊 田 和 弘 先 生 をはじめ 岡 山 大 学 関 係 者 の 皆 様 にご 協 力 を 頂 いた. 改 めて 厚 くお 礼 申 し 上 げます. ( 菊 武 和 彦 ) (3) 第 14 回 バイオコントロール 研 究 会 報 告 第 14 回 バイオコントロール 研 究 会 は, 平 成 28 年 3 月 24 日 ( 木 )に 岡 山 大 学 一 般 教 育 棟 で 約 140 名 の 参 加 を 得 て 開 催 された. 今 回 は, 今 後 ますます 重 要 となる 課 題 とし て, 微 生 物 農 薬 の 研 究 開 発 の 方 向 性 と 研 究 シーズの 融 合 に 向 けて をテーマとして 企 画 された.2 部 制 とし, 基 調 講 演 では, 今 年 度 学 会 賞 を 受 賞 された 相 野 公 孝 会 長 から, 1918 年 の 日 本 植 物 病 理 学 会 報 第 1 巻 から 現 在 までに 報 告 された 研 究 内 容 に 基 づく 生 物 防 除 研 究 の 歴 史 や, 生 物 防 除 ターゲットあるいはエージェントの 観 点 で 見 た 研 究 の 変 遷 についての 解 説 が 行 われ, 今 後 展 開 が 期 待 される 研 究 内 容 等 についても 紹 介 して 頂 いた. 第 一 部 国 内 外 における 微 生 物 農 薬 開 発 の 現 状 と 方 向 性 では,まず, 微 生 物 農 薬 の

iv 研 究 開 発 が 近 年 盛 んな 地 域 での 研 究 動 向 として, 清 水 将 文 氏 より ヨーロッパにおける 微 生 物 農 薬 開 発 研 究 の 現 状 が 報 告 された. 次 に,アジア 諸 国 での 微 生 物 農 薬 関 連 研 究 や 登 録 の 状 況 の 話 題 提 供 として, 橋 本 知 義 氏 に 韓 国 親 環 境 農 業 における 微 生 物 資 材 の 利 用 状 況, 横 山 正 氏 に FNCA バイオ 肥 料 プロジェクトでの 耐 病 性 機 能 を 付 与 し た 多 機 能 バイオ 肥 料 の 開 発 について という 演 題 で 報 告 し て 頂 いた.さらに, 前 田 光 紀 氏 からは 新 規 微 生 物 殺 菌 剤 シュードモナス ロデシア(マスタピース) 水 和 剤 の 開 発 と 生 物 活 性 という 演 題 で 本 製 剤 の 特 性 や 国 内 での 微 生 物 農 薬 開 発 の 動 向 等 についての 報 告 があった. 第 二 部 微 生 物 農 薬 開 発 に 向 けた 研 究 シーズとその 展 開 では, 今 後 の 微 生 物 農 薬 開 発 のシーズとなり 得 るユニークな 研 究 として, はじめに 石 山 佳 幸 氏 から 非 病 原 性 Plectosphaerella sp. 株 を 用 いたセルリー 萎 黄 病 およびイチゴ 萎 黄 病 の 生 物 防 除 の 検 討 について 報 告 されたのに 続 き, 井 上 康 宏 氏 から Xanthomonas 属 細 菌 による 病 害 全 般 に 防 除 効 果 を 持 つ 微 生 物 農 薬 開 発 の 試 み について 報 告 して 頂 いた.さらに, 佐 藤 育 男 氏 からは かび 毒 デオキシニバレノールの 分 解 微 生 物 の 探 索 およびその 活 用 の 可 能 性, 篠 原 弘 亮 氏 からは 有 用 微 生 物 の 探 索 とそれらの 種 子 処 理 技 術 に 関 する 取 り 組 み という 演 題 で 報 告 して 頂 いた. 第 1 部 および 第 2 部 のいずれも, 各 演 者 の 報 告 に 対 して 活 発 な 質 疑 応 答 が 行 わ れ,これらを 通 じて 今 後 の 微 生 物 農 薬 の 開 発 を 効 率 的 に 進 めていく 上 でのヒントや 留 意 点 等 が 数 多 く 得 られたものと 考 える.なお, 本 研 究 会 の 講 演 要 旨 集 (2000 円 )および 第 1 ~ 12 巻 を 収 録 した CD(3000 円 )を 希 望 の 方 は, 吉 田 重 信 氏 ( 農 研 機 構 中 央 農 業 研 究 センター)までご 連 絡 頂 き たい. ( 一 瀬 勇 規 ) 講 演 の 様 子. (4) 第 12 回 植 物 ウイルス 病 研 究 会 平 成 28 年 度 日 本 植 物 病 理 学 会 大 会 は 3 月 21 日 から 23 日 まで 岡 山 市 で 盛 大 に 行 われた. 参 加 者 は 賛 助 会 員 を 含 め 900 名 を 超 えた.その 翌 日 の 24 日 に 倉 敷 で 第 12 回 植 物 ウイルス 病 研 究 会 (12th PSJ Plant Virus Disease Workshop: Interface between plant and fungal viruses II)が 開 催 された. 通 常, 大 会 と 同 じ 場 所 で 開 かれるこの 会 であるが, 今 年 度 は 講 演 者, 座 長, 聴 衆 の 皆 様 には 岡 山 から 倉 敷 までの 移 動 (ローカル 線 )で 御 足 労 をおかけした.タイトルからお 分 かり 頂 けるかと 思 うが, 同 じワークショップタイトルで 2 回 目 となる. 場 所 も 同 じである. 今 回 は,ウイルス 学 会 年 会 にならい, 全 て 英 語 での 講 演 質 疑 応 答 とした. 講 演 者 9 名 の 中 で 外 国 人 招 待 講 演 者 5 名, 日 本 人 講 演 者 5 名,Rick Nelson 博 士 (Noble Foundation, 米 国 ), 海 道 真 典 博 士 ( 京 大 ),Juan Antonio Garcia 博 士 (CSIC,スペイン), 大 島 一 里 博 士 ( 佐 賀 大 ),Peter Nagy 博 士 (University of Kentucky, 米 国 ), 岡 野 夕 香 里 博 士 ( 東 大 ), 森 山 裕 充 博 士 ( 東 京 農 工 大 ),Shyi-Dong Yeh 博 士 (National Chung Hsing University 台 湾 ), 千 葉 壮 太 郎 博 士 ( 名 古 屋 大 )が 英 語 で 格 調 高 い 講 演 をされた. 残 念 なことに, 当 初 予 定 されたス ピーカーDaohong Jiang 博 士 (Huazhong Agricultural University, 中 国 )はヴィザの 取 得 が 間 に 合 わず, 来 日 が 叶 わ なかった.Nelson 博 士 と 海 道 博 士 は, 植 物 ウイルスの 細 胞 内 / 細 胞 間 移 行 について 未 発 表 のデータも 加 え,ご 講 演 頂 いた.Garcia 博 士 と 大 島 博 士 には 異 なる 角 度 から potyvirus 研 究 の 醍 醐 味 についてお 話 頂 いた.Garcia 博 士 は, ウイルス 蛋 白 質 の 一 つ P1 の 複 製 / 宿 主 応 答 での 役 割 につ いて, 一 方, 大 島 博 士 は potyvirus の 時 空 間 的 進 化 に 焦 点 を 当 てられた.Nagy 博 士 はパン 酵 母 を 使 ったウイルス 複 製 に 関 与 する 宿 主 因 子 の 網 羅 的 解 析 とそれらの 植 物 宿 主 で の 検 証 について, 一 方, 岡 野 博 士 は potexvirus,carlavirus のサイレンシング 抑 制 機 構 についてご 講 演 頂 いた. 森 山 博 士 はイネいもち 病 菌 を 宿 主 とするウイルスのゲノム 構 造 や そのユニークな 生 活 環 の 解 明 を 目 指 した 研 究 の 紹 介 を 頂 い た.Yeh 博 士 と 千 葉 博 士 は, 干 渉 作 用 を 利 用 した 植 物 ウイ ルス 病 の 防 除 に 向 けた 研 究, 菌 類 での 風 変 わりな 配 列 非 特 異 的 干 渉 についてそれぞれ 紹 介 頂 いた. 詳 しい 発 表 内 容 は 第 12 回 植 物 ウイルス 病 研 究 会 レポート( 学 会 事 務 局 から 入 手 可 能,byori@juno.ocn.ne.jp)を 参 照 されたい. 良 い 講 演 が 聴 けて, 活 発 な 議 論 を 通 じその 話 題 についての 理 解 を 深 めるのがワークショップの 大 きな 目 的 である. 本 シンポ ジウムでは,どの 講 演 でも 質 疑 応 答 が 活 発 に 行 われ,その 目 的 が 充 分 達 成 された. 座 長 の 佐 々 木 信 光 博 士 ( 東 京 農 工 大 ), 佐 野 輝 男 博 士 ( 弘 前 大 ), 奥 野 哲 郎 博 士 ( 京 都 大 ),

v 植 物 ウイルスミニワークショップでの 情 報 交 換 会 の 様 子. 研 究 会 に 出 席 した 外 国 人 招 待 講 演 者. 情 報 交 換 会 の 参 加 者 一 同. 八 重 樫 元 博 士 ( 東 京 農 工 大 ), 増 田 税 博 士 ( 北 大 )には 心 より 感 謝 申 し 上 げる. 翌 日 25 日 は, 招 待 外 国 人 講 師 も 参 加 し, 関 連 する 植 物 ウイルスミニワークショップ を 開 催 できた.トップバッ ターとして Ida Bagus Andhika 博 士 ( 岡 山 大 植 物 研 )が RNA silencing-mediated antiviral defense in roots, 兵 頭 究 博 士 ( 岡 山 大 植 物 研 )が A role of host second messengers in dianthovirus replication, Arthur Tugume 博 士 (Makerere University, Uganda)が Plant pathology research at the College of Natural Sciences, Makerere University, Uganda: past, present, and future についてそれぞれ 講 演 された.そこでは, 3 名 の 若 手 研 究 者 の 嘱 望 される 将 来 が 垣 間 見 えた. こういうミーティングの 大 きな 目 的 は, 最 新 の 情 報 を 交 換 したり, 共 同 研 究 の 話 をまとめたりする 科 学 的 側 面 と, 一 見 無 関 係 にみえるネットワーキングもその 大 きな 目 的 の ひとつである.ミニワークショップ 終 了 後 の 午 後 は, 場 所 を 近 くの 蓮 台 寺, 由 加 神 社 等 に 移 し, 日 本 文 化 に 触 れなが ら, 研 究 打 ち 合 わせを 行 った.また, 夜 は 温 泉 につかりな がら,ウイルス 研 究 談 義 に 花 が 咲 いた. 温 泉 の 素 晴 らしさ を 言 葉 で 説 明 するのは 難 しいが, 湯 船 につかって 裸 の 付 き 合 いをするのが 手 っ 取 り 早 い 方 法 である. 今 回 は, 本 ワークショップの 開 催 にあたり, 植 物 病 理 学 会, 公 益 財 団 法 人 ( 公 財 ) 大 原 奨 農 会,( 公 財 ) 岡 山 工 学 振 興 会,Elsevier(Virus Research)の 御 支 援 を 頂 いた.そ れにより, 第 一 線 で 活 躍 されている 豪 華 な 顔 ぶれのウイル ス 学 者 をお 招 きすることができた.この 機 会 を 利 用 し, 第 4 回 国 際 マイコウイルスシンポジウム(4th International Mycovirus Symposium, IMS IV)の 紹 介 をさせて 頂 きたい. IMS IV は IUMS2017 がシンガポールで 7 月 に 開 催 される のに 合 わせ, 近 隣 の 国 で 開 かれる 予 定 である. 主 催 者 は 今 回 来 日 が 叶 わなかった Daohong Jiang 博 士 である. 新 しい 情 報 が 入 手 でき 次 第, 随 時, 岡 山 大 学 資 源 植 物 科 学 研 究 所 植 物 / 微 生 物 相 互 作 用 グループのホームページ(http:// www.rib.okayama-u.ac.jp/pmi/index-j.html)にアップするので, 注 目 あれ. 最 後 に, 講 演 者, 座 長 の 皆 様, 倉 敷 までお 越 し 頂 いた 聴 衆 の 皆 様, 本 会 の 運 営 にあたってくれた 岡 山 大 学 資 源 植 物 科 学 研 究 所 植 物 / 微 生 物 相 互 作 用 グループ(PMI)の 諸 氏 に 感 謝 申 し 上 げる. ( 鈴 木 信 弘 ) (5) 第 16 回 植 物 病 原 菌 類 談 話 会 開 催 報 告 第 16 回 植 物 病 原 菌 類 談 話 会 は, 平 成 28 年 度 植 物 病 理 学 会 大 会 終 了 後 の 平 成 28 年 3 月 23 日 の 15:00 ~ 18:30 ま で, 岡 山 大 学 コンベンションセンター 2 階 レセプション ホールにて 開 催 された. 大 学, 公 立 の 試 験 研 究 機 関, 独 立 行 政 法 人, 検 疫 機 関, 農 薬 や 種 苗 会 社, 農 業 団 体 など, 学 生 研 究 者 146 名 の 参 加 があった.

vi 今 回 の 談 話 会 のコーディネーターは 弘 前 大 学 の 田 中 和 明 氏 が 務 め, モルフはもーふるい! 命 名 規 約 の 改 定 に 伴 う 植 物 病 原 菌 類 の 学 名 統 合 の 行 方 について というテーマの 下, 3 名 の 講 師 により 二 重 命 名 法 廃 止 の 経 緯 概 要, 植 物 病 理 学 研 究 への 影 響 ならびに 学 名 の 動 向 をどのように 知 りえる のかが 解 説 された. 講 演 者 およびその 講 演 題 目 は, 青 木 孝 之 氏 ( 農 研 機 構 遺 伝 資 源 センター) 命 名 規 約 の 改 正 に 基 づ いた 菌 類 の 2 重 命 名 法 の 廃 止 による, 有 性 無 性 学 名 の 統 一 問 題 について, 橋 本 陽 氏 ( 弘 前 大 学 ) 植 物 病 名 目 録 にお ける 学 名 統 合 の 影 響, 中 島 千 晴 氏 ( 三 重 大 学 ) 田 中 和 明 氏 ( 弘 前 大 学 ) 病 原 菌 の 学 名 の 動 向 を 把 握 する であった. 菌 類 の 学 名 統 合 は 一 部 の 分 類 学 者 の 問 題 ではなく, 無 効 とされる 学 名 の 使 用 が 植 物 病 原 菌 類 を 扱 う 全 ての 人 の 研 究 に 影 響 を 及 ぼし,ひいては 日 本 植 物 病 名 目 録 および 日 本 植 物 病 理 学 会 学 会 誌 JGPP にまで 影 響 を 及 ぼす. 国 際 藻 類 菌 類 植 物 命 名 規 約 に 基 づき 2013 年 からアナモルフと テレオモルフにそれぞれ 名 前 をつけることが 許 されていた 2 重 命 名 法 が 廃 止 されたにも 関 わらず, 具 体 的 にはどう 学 名 を 扱 えばいいのかということについては 理 解 が 進 んでい ないかもしれない.これを 踏 まえ 各 演 者 から, 重 要 な 植 物 病 原 菌 類 を 具 体 例 として 丁 寧 に 説 明 がなされた. 内 容 は 名 前 を 統 合 する 際 の 規 則 と 特 例, 学 名 統 合 によりどの 程 度 植 物 病 名 目 録 の 変 更 が 必 要 になるか, 実 際 に 学 名 統 合 すると き,あるいは 各 自 が 扱 う 菌 の 学 名 統 合 の 動 向 を 知 りたいと き,どのデータベースを 利 用 するかを 調 べる 際 の 注 意 点 と 知 りえる 限 界 などである. 実 際 の 学 名 ( 主 に 属 名 )の 決 定 は, 詳 細 が 決 定 される 2017 年 の 第 19 回 国 際 植 物 学 会 議 と 2018 年 の 国 際 藻 類 菌 類 植 物 命 名 規 約 の 公 開 を 待 つことになるが,それまで 目 が 離 せない 内 容 であることも 提 示 された. 会 場 からも 活 発 な 質 問 や 討 議 がなされ, 菌 類 の 学 名 統 合 により 生 じる 植 物 病 理 学 研 究 上 の 問 題 点 を 共 有 できた. 本 談 話 会 の 開 催 準 備 から 多 大 なご 支 援 を 頂 いた 岡 山 大 学 の 大 会 事 務 局 の 方 々に 深 く 感 謝 いたします. 来 年 度 も 植 物 病 理 学 会 大 会 にあわせた 本 談 話 会 の 開 催 を 予 定 して います. ( 渡 辺 京 子 ) (6) 技 術 士 ( 農 業 部 門 植 物 保 護 ) 試 験 対 策 セミナー 報 告 平 成 28 年 度 技 術 士 ( 農 業 部 門 植 物 保 護 ) 試 験 対 策 セ ミナーは, 日 本 植 物 病 理 学 会 大 会 ( 岡 山 コンベンションセ ンター)の 会 場 にて, 大 会 2 日 目 (3 月 22 日 )に, 当 学 会 技 術 士 対 応 委 員 会 主 催 のもと 開 催 された. 本 セミナー 開 催 に 当 たっては, 大 会 委 員 長 をはじめとする 大 会 運 営 委 員 会 の 皆 様 には 準 備 にあたり, 特 段 のご 配 慮 をいただいた.こ こに 厚 くお 礼 を 申 し 上 げる. 今 年 度 も, 昨 年 度 に 引 き 続 きセミナーを 第 一 部 (13:00 ~ 13:50)と 第 二 部 (14:00 ~ 15:10)に 分 け, 技 術 士 第 一 次 試 験 と 第 二 次 試 験 のそれぞれを 目 指 す 方 々の 受 講 に 配 慮 し た.また, 新 合 格 者 の 方 々を 講 師 に 招 き, 講 演 ディスカッ ションに 加 わっていただいた. 第 一 部 では, 技 術 士 対 応 委 員 の 濱 本 宏 氏 ( 法 政 大 学 生 命 科 学 部 )より, 技 術 士 制 度 概 要 と 第 一 次 試 験 ( 農 業 部 門 )の 受 験 状 況 と, 具 体 的 に 試 験 の 概 略 と 受 験 申 込 みの 手 順 などについて 説 明 があった. 次 いで, 第 一 次 試 験 合 格 体 験 として 有 波 友 紀 氏 ( 日 本 植 物 防 疫 協 会 ), 新 合 格 者 の 神 頭 武 嗣 氏 ( 兵 庫 県 立 農 林 水 産 技 術 総 合 センター)より, 受 験 の 動 機,どのような 勉 強 を 行 ったか, 当 日 何 を 心 掛 け,どのように 解 答 したのかなど の 話 を 伺 った.さらに, 神 頭, 有 波 の 2 氏 に 加 え, 大 島 研 郎 氏 ( 法 政 大 学 生 命 科 学 部 ), 新 合 格 者 の 吉 田 哲 也 氏 ( 東 京 大 学 大 学 院 農 学 生 命 科 学 研 究 科 )にご 登 壇 いただき, 昨 年 度 の 第 一 次 試 験 問 題 等 を 用 いながら 質 疑 応 答 ディス カッションを 行 った.それぞれ 忙 しい 中 どのように 勉 強 の 時 間 を 捻 出 したのか,など 多 数 の 質 問 が 積 極 的 に 出 され, 活 発 な 議 論 が 行 われた. 第 二 部 では, 先 ず, 本 年 9 名 が 技 術 士 二 次 試 験 に 合 格 し, 植 物 保 護 関 連 5 学 会 の 当 面 の 目 標 であった 農 業 部 門 植 物 保 護 の 技 術 士 100 人 超 えを 達 成 したこと, 今 後 も 受 験 促 進 と 合 格 支 援 を 継 続 し 第 二 次 試 験 ( 植 物 保 護 ) 受 験 者 のさらなる 増 加 を 目 指 したいとの 話 があった. 次 いで 鍵 和 田 聡 氏 ( 法 政 大 学 生 命 科 学 部 )より, 第 二 次 試 験 の 概 略 と 受 験 申 込 みの 手 順 等 について 説 明 が あった. 続 いて, 第 二 次 試 験 対 策 のポイント として, 山 次 康 幸 氏 ( 東 京 大 学 大 学 院 農 学 生 命 科 学 研 究 科 ), 植 原 健 人 氏 ( 中 央 農 業 研 究 センター)から 業 務 経 歴 票, 筆 記 試 験, 口 頭 試 験 について,どのように 準 備 し, 当 日 どのよう な 心 構 えでいかに 答 えたらよいのか,それぞれご 経 験 に 基 づいた 実 戦 的 な 解 説 があった. 最 後 に, 山 次 氏, 植 原 氏 と 栢 森 美 如 氏 ( 北 海 道 立 総 合 研 究 機 構 十 勝 農 業 試 験 場 ), 新 合 格 者 の 桃 井 千 巳 氏 ( 富 山 県 農 林 水 産 総 合 技 術 センター) にご 登 壇 いただき, 総 合 的 な 質 疑 応 答 ディスカッション を 行 った. 本 格 的 な 勉 強 はいつから 始 めたか, 筆 記 問 題 は 用 紙 の 何 割 程 度 書 く 必 要 があるのかといった 具 体 的 な 質 問 も 出 され, 会 場 の 先 輩 技 術 士 の 方 々からの 意 見 もいただき ながらの 活 発 な 議 論 が 行 われ, 盛 況 のうちにセミナーを 終 了 した.なお, 本 セミナーで 配 布 した 資 料 は,これまでに 開 催 したセミナーの 資 料 とともに 会 員 限 定 で 配 布 されてい る. 日 本 植 物 病 理 学 会 のホームページの 技 術 士 の 項 を 参 照 していただきたい.

vii 本 年 で 5 年 連 続 して 開 催 し, 第 6 回 目 の 開 催 であったが, セミナーの 参 加 者 は 企 業, 大 学, 試 験 研 究 機 関 等 から 47 名 を 数 えた. 参 加 者 並 びに 講 演 者 に 対 し, 主 催 者 一 同 心 より お 礼 を 申 し 上 げる 次 第 である. ( 濱 本 宏 ) 3. 技 術 士 対 応 委 員 会 (1) 技 術 士 ( 農 業 部 門 植 物 保 護 )100 名 誕 生 を 迎 えて 5 学 会 技 術 士 育 成 推 進 委 員 会 委 員 長 技 術 士 対 応 委 員 会 委 員 長 難 波 成 任 国 家 資 格 である 技 術 士 の 農 業 部 門 に, 植 物 保 護 分 野 が 2004 年 に 新 設 され, 早 くも 12 年 が 経 ちました. 初 回 1 名 であった 合 格 者 も 徐 々に 増 加 し, 合 格 者 総 数 は 当 初 目 標 としていた 100 名 をついに 達 成 いたしました. 植 物 保 護 関 連 5 学 会 ( 日 本 植 物 病 理 学 会, 日 本 農 薬 学 会, 日 本 応 用 動 物 昆 虫 学 会, 日 本 雑 草 学 会, 植 物 化 学 調 節 学 会 )のこ れまでの 地 道 な 活 動 の 賜 であるとともに, 関 係 各 位 の 本 資 格 への 期 待 の 高 さを 示 すものであり, 心 より 御 礼 申 し 上 げ ます. 技 術 士 植 物 保 護 分 野 は,5 学 会 と 日 本 技 術 士 会 の 御 尽 力 により, 農 業 及 び 蚕 糸 から 独 立 する 形 で 新 設 されま した. 以 来, 当 学 会 の 稲 葉 忠 興 氏, 日 本 技 術 士 会 の 安 東 和 彦 氏 らが 中 心 となり, 植 物 保 護 分 野 の 発 展 に 向 け 献 身 的 な 努 力 が 続 けられて 参 りました.とくに, 関 連 5 学 会 か ら 選 ばれた 委 員 からなる 5 学 会 技 術 士 育 成 推 進 委 員 会 が 組 織 され, 資 格 周 知 と 受 験 促 進, 資 格 取 得 者 の 社 会 にお ける 活 躍 の 場 創 出 に 向 け 様 々な 対 策 が 実 施 されました. 2009 年 には 技 術 士 の 資 質 について が 同 委 員 会 により 発 表 され, 技 術 士 ( 植 物 保 護 )に 求 められる 知 識 技 術 倫 理 など 各 種 資 質 について 具 体 的 に 示 されました.また, 当 学 会 員 に 向 け 積 極 的 に 活 動 を 展 開 するため, 技 術 士 対 応 委 員 会 が 組 織 されました. 技 術 士 試 験 対 策 セミナー の 開 催 はその 一 つであり, 第 1 回 は 2009 年 の 大 会 ( 山 形 ) で 開 催 されました. 当 初 は 隔 年 開 催 の 予 定 でしたが, 好 評 なため 近 年 は 毎 年 開 催 しており, 単 なる 試 験 対 策 の 場 であ るだけではなく, 技 術 士 のめざすものについて 語 り 合 う 場 ともなっています. 他 の 4 学 会 でも, 同 様 の 技 術 士 試 験 対 策 セミナーを 開 催 し, 互 いに 他 学 会 主 催 のセミナーに 会 員 でなくとも 参 加 可 能 とすることで, 受 験 促 進 にこれまで 大 きく 貢 献 して 参 りました. 事 実, 本 セミナーの 受 講 者 から 多 くの 合 格 者 が 生 まれ,その 合 格 者 が 本 セミナーで 講 師 を 務 めるという 良 循 環 が 生 まれております. 当 学 会 では, 植 物 保 護 の 第 二 次 試 験 合 格 者 の 氏 名 と 所 属 を 毎 年,ホームページおよび 学 会 ニュースで 紹 介 しており ます. 合 格 者 の 氏 名 は 官 報 に 公 開 されるので, 関 連 学 会 の 会 員 名 簿 や 口 コミを 活 用 し, 合 格 者 を 絞 り 込 み, 直 接 本 人 に 確 認 し, 氏 名 公 開 の 承 諾 を 得 ております.この 情 報 は 関 連 5 学 会 で 共 有 され, 技 術 士 ( 植 物 保 護 ) 同 士 の 交 流 を 促 進 するだけでなく, 身 近 な 合 格 者 を 知 り, 受 験 の 心 構 えや 対 策 等 を 気 軽 に 入 手 できるため, 大 変 に 役 立 っております. 技 術 士 関 連 の 委 員 会 や 試 験 対 策 セミナー, 植 物 病 害 診 断 研 究 会 などの 集 まりの 場 は, 関 連 学 会 の 技 術 士 や 技 術 士 志 望 者 の 情 報 交 換 議 論 親 睦 相 互 理 解 の 場 として 機 能 し ておりますが, 合 格 された 技 術 士 ( 植 物 保 護 )のなかには, 5 学 会 以 外 の 学 会 や 各 地 域 の 病 害 虫 研 究 会 の 会 員 など, 関 連 5 学 会 に 所 属 していない 方 も 多 く, 合 格 者 の 4 分 の 1 にも 達 することが 判 明 しております.そこで,これらの 技 術 士 ( 植 物 保 護 )が 集 い, 直 接 に 情 報 交 換 できる 場 として,2011 年 より, 学 会 の 垣 根 を 越 えた 組 織 植 物 保 護 士 会 議 を 設 立 し, 技 術 士 ( 植 物 保 護 )が 学 会 の 枠 を 越 え 顔 を 合 わせ 交 流 する 場 として 機 能 して 参 りました. 専 門 技 術 に 関 する 情 報 交 換 だけでなく, 技 術 士 ( 植 物 保 護 )の 将 来 像 に 関 する 意 見 を 忌 憚 なく 議 論 する 場 としても 機 能 して 参 りました. このたび, 合 格 者 が 100 名 を 越 え, 技 術 士 ( 植 物 保 護 ) が 具 体 的 に 社 会 で 活 躍 する 場 を 整 備 していくことは, 喫 緊 の 課 題 となりました.2013 年 4 月 に 農 林 水 産 省 消 費 安 全 局 長 及 び 環 境 省 水 大 気 環 境 局 長 名 による 通 達 住 宅 地 等 における 農 薬 使 用 について により, 病 害 虫 防 除 のため の 農 薬 入 札 責 任 者 の 資 格 要 件 の 一 つとして, 技 術 士 ( 農 業 部 門 植 物 保 護 ) が 明 記 されました.また, 大 学 教 員 の 公 募 にあたり, 技 術 士 ( 植 物 保 護 ) 資 格 を 持 つものが 好 ましいとの 記 述 も 見 かけるようになりました.しかし, 社 会 実 装 はまだまだ 十 分 とは 言 えない 状 況 です. 一 方 で, 他 の 技 術 士 部 門 では 技 術 士 有 資 格 者 を 対 象 とした 民 間 資 格 が 多 数 存 在 します.その 意 味 では,2011 年 に 設 立 された 非 営 利 一 般 社 団 法 人 日 本 植 物 医 科 学 協 会 により, 技 術 士 ( 植 物 保 護 ) 第 二 次 試 験 合 格 者 を 対 象 に, 昨 年 11 月 に 植 物 医 師 の 第 一 回 資 格 認 定 審 査 が 行 われ,60 名 が 合 格 ( 本 年 4 月 資 格 発 効 )したことは, 技 術 士 の 社 会 的 活 躍 の 場 構 築 に 向 けた 第 一 歩 として 特 筆 すべきことです. 技 術 士 ( 植 物 保 護 ) 試 験 合 格 者 は, 都 道 府 県 をはじめ, 国 立 研 究 開 発 法 人, 企 業, 大 学 関 係 者 など 多 岐 に 亘 る 植 物 保 護 関 連 団 体 に 所 属 しています.とくに 最 近, 女 性 合 格 者 が 増 えています.2004 ~ 2008 年 度 まで 5 年 間 の 第 二 次 試 験 合 格 者 19 名 のうち 女 性 はわずか 1 名 でしたが,2014 年 度 の 合 格 者 は 12 名 中 4 名 でした.さらに 増 えることが 期 待 されます. 政 策 研 究 と 現 場 を 結 ぶ 専 門 家 としてのはたらきが 期 待

viii される 技 術 士 ( 植 物 保 護 )の 積 極 的 な 育 成 と 活 躍 の 場 創 出 に 向 けた 関 係 者 の 皆 様 のこれまでの 御 努 力 に 深 く 敬 意 を 表 すると 共 に, 今 後 のさらなる 御 協 力 に 期 待 いたします. (2) 平 成 27 年 度 技 術 士 第 二 次 試 験 ( 農 業 部 門 植 物 保 護 ) で 9 名 が 合 格 平 成 28 年 3 月 1 日 に 平 成 27 年 度 技 術 士 第 二 次 試 験 ( 農 業 部 門 植 物 保 護 )の 合 格 者 が 発 表 され, 次 の 9 名 の 方 が 合 格 されました( 敬 称 略 ). 吉 澤 仁 志 ( 群 馬 県 農 業 技 術 センター), 佐 藤 政 宏 ( 東 洋 グリーン 株 式 会 社 ), 小 俣 良 介 ( 埼 玉 県 茶 業 研 究 所 ), 中 島 隆 ( 農 林 水 産 省, 現 : 農 研 機 構 九 州 沖 縄 農 業 研 究 セ ンター; 本 会 会 員 ), 德 丸 晋 ( 京 都 府 農 林 水 産 技 術 セン ター), 德 永 太 蔵 ( 鹿 児 島 県 大 隅 地 域 振 興 局 ; 本 会 会 員 ), 北 林 聡 ( 長 野 県 野 菜 花 き 試 験 場 ), 長 谷 川 紀 子 (イノチオ ホールディングス 株 式 会 社 ), 桃 井 千 巳 ( 富 山 県 農 林 水 産 総 合 技 術 センター 園 芸 研 究 所 ; 本 会 会 員 ). 今 回 の 合 格 者 を 合 わせ, 技 術 士 第 二 次 試 験 ( 農 業 部 門 植 物 保 護 ) 合 格 者 は 計 103 名 となり,ついに 100 名 を 超 え ました. 引 き 続 き, 試 験 研 究 機 関 や 民 間 企 業, 大 学 など, 多 様 な 組 織 から 多 くの 方 の 受 験 をお 願 いします. 平 成 28 年 度 の 技 術 士 第 一 次 試 験 は 平 成 28 年 10 月 9 日 ( 日 )に 行 われ, 受 験 申 込 締 切 は 平 成 28 年 7 月 1 日 ( 金 )です.また, 技 術 士 第 二 次 試 験 の 筆 記 試 験 は 平 成 28 年 7 月 18 日 ( 月 祝 )に 行 われます( 受 験 申 込 は 4 月 下 旬 に 締 め 切 られてい ます). 詳 細 は 日 本 技 術 士 会 のホームページの 試 験 登 録 情 報 から, 試 験 の 実 施 案 内 を 御 確 認 ください. 平 成 28 年 度 も 多 くの 技 術 士 ( 農 業 部 門 植 物 保 護 )の 誕 生 を 期 待 し ています. 学 会 活 動 予 定 1. 部 会 (1) 北 海 道 部 会 日 程 : 平 成 28 年 10 月 19 日 ( 水 )~ 20 日 ( 木 ) 場 所 :かでる 2 7( 札 幌 市 ) (2) 東 北 部 会 日 程 : 平 成 28 年 9 月 29 日 ( 木 )~ 30 日 ( 金 ) 場 所 :コラッセふくしま( 福 島 市 ) (3) 関 東 部 会 日 程 : 平 成 28 年 9 月 29 日 ( 木 )~ 30 日 ( 金 ) 場 所 : 横 浜 国 立 大 学 ( 横 浜 市 ) (4) 関 西 部 会 日 程 : 平 成 28 年 9 月 29 日 ( 木 )~ 30 日 ( 金 ) 場 所 : グランシップ( 静 岡 県 コンベンションアーツ センター)( 静 岡 市 ) (5) 九 州 部 会 日 程 : 平 成 28 年 11 月 9 日 ( 水 )~ 10 日 ( 木 ) 場 所 :ホテルグランデはがくれ( 佐 賀 市 ) 2. 談 話 会 研 究 会 等 (1) 平 成 28 年 度 植 物 感 染 生 理 談 話 会 日 程 : 平 成 28 年 8 月 10 日 ( 水 )~ 12 日 ( 金 ) 場 所 :シーパル 須 磨 ( 神 戸 市 ) (2) 第 12 回 植 物 病 害 診 断 教 育 プログラム 日 程 : 平 成 28 年 8 月 29 日 ( 月 )~ 9 月 2 日 ( 金 ) 場 所 : 法 政 大 学 ( 東 京 都 小 金 井 市 ) (3)EBC 研 究 会 ワークショップ 2016( 第 12 回 ) 日 程 : 平 成 28 年 9 月 場 所 :JA ビル( 東 京 都 千 代 田 区 ) (4) 第 10 回 植 物 病 害 診 断 研 究 会 日 程 : 平 成 28 年 9 月 28 日 ( 水 ) 場 所 :グランシップ( 静 岡 県 コンベンションアーツ センター)( 静 岡 市 ) (5) 第 27 回 植 物 細 菌 病 談 話 会 日 程 : 平 成 28 年 10 月 24 日 ( 月 )~ 25 日 ( 火 ) 場 所 : 京 都 府 立 大 学 ( 京 都 市 ) (6) 第 28 回 土 壌 伝 染 病 談 話 会 日 程 : 平 成 28 年 11 月 8 日 ( 火 ) 場 所 :ホテルグランデはがくれ( 佐 賀 市 ) 会 員 の 関 連 学 会 等 における 受 賞 のお 知 らせ 川 口 章 氏 ( 岡 山 県 農 林 水 産 部, 現 : 農 研 機 構 西 日 本 農 業 研 究 センター)が, 第 12 回 ( 平 成 27 年 度 ) 日 本 学 士 院 学 術 奨 励 賞 を 受 賞 されました. 日 本 学 士 院 学 術 奨 励 賞 は, 若 手 研 究 者 を 顕 彰 して 今 後 の 研 究 を 奨 励 することを 目 的 と して 創 設 され, 独 立 行 政 法 人 日 本 学 術 振 興 会 の 日 本 学 術 振 興 会 賞 受 賞 者 の 中 から 選 ばれる 賞 です. 受 賞 の 対 象 となっ た 研 究 業 績 は, 植 物 病 害 ブドウ 根 頭 がんしゅ 病 の 生 物 的 防 除 法 の 開 発 です. 書 評 堀 江 博 道 橋 本 光 司 西 尾 健 編 集 植 物 医 科 学 叢 書 No 2 植 物 医 科 学 実 験 マニュアル 植 物 障 害 の 基 礎 知 識 と 臨 床 実 践 を 学 ぶ 504 ページ(うちカラー 口 絵 40 ページ)/ 2016 年 1 月 発 行 大 誠 社 ISBN 978-4-86518-054-1 本 体 価 格 7,222 円 + 税 年 末 に, 日 ごろ 親 しくして 頂 いている 堀 江 博 道 先 生 ( 法

ix 政 大 学 植 物 医 科 学 センター) から,このたび 橋 本 光 司, 西 尾 健 両 先 生 との 3 人 共 編 で 植 物 医 科 学 の 実 験 法 の 本 を 出 版 するので, 学 会 ニュー スに 載 せる 書 評 を 執 筆 して 頂 けませんか,というご 依 頼 があった.お 正 月 の 休 み もあることだし, 日 頃 あり 余 る 時 間 をもてあましてい る 身 なので, 頭 の 体 操 のた めにも 丁 度 よいと 思 い 気 軽 くお 引 き 受 けした 次 第 であった.ところが 送 られてきた 本 書 を 開 いてみて 驚 いた.まず 軽 く 実 験 法 の 教 科 書 と 思 って いたものが 何 と 500 ページもあるずしりと 重 い 大 部 の 立 派 な 書 籍 である.しかも 中 身 を 概 観 してみると, 実 に 微 に 入 り 細 を 穿 って 余 すところなく, 植 物 病 理 学 を 学 びあるい はこれを 活 用 してこれから 本 格 的 に 研 究 しよう,あるいは 農 業 の 現 場 に 立 ってあらゆる 作 物 の,あるいはあらゆる 栽 培 法,それだけではなく 貯 蔵, 流 通 などの 場 面 に 現 れるで あろう 各 種 の 病 害 発 生 に 対 しても, 臨 機 応 変 に 対 応 できる ことが 目 指 されている.それだけではない. 本 書 が 従 来 書 店 で 見 られてきた 類 書 と 決 定 的 に 異 なるのは,きわめて 基 礎 的 でありながらそれに 堕 するのではなく, 基 礎 と 現 場 と さらにこれまで 小 中 高 の 過 程 で 学 んできただけの 若 い 大 学 生 たちも 喜 んで 学 びたくなるような,そんな 幅 広 い 視 点 を 盛 り 込 んだ, 不 思 議 な 魅 力 に 満 ちた 本 になってい ることであった. それでは 次 に 中 身 に 細 かく 入 ってみよう.まずグラビア のページである.そこには 40 ページにもわたって 美 しい カラー 図 版 が 出 て 来 るが, 各 ページに 10 ~ 20 枚 の 美 しい という 言 葉 を 使 いたくなるほどの, 病 徴, 標 徴 等 の 図 が 使 われている.ちなみに 40 ページにわたるグラビアページ の 中 に 何 枚 のカラー 図 があるか 数 えてみた 結 果 591 枚 で あった.しかもその 中 身 たるや 小 は 胞 子 1 個 から, 大 はか なり 大 きな 畑 の 全 景 まで, 種 々さまざまである.その 中 で も 同 学 である 筆 者 が, 思 わずうなったのは 022 ページ 図 1.107 に 示 されている12コマツナ 萎 黄 病 抵 抗 性 品 種 選 抜 試 験 の 図 と, 同 34のトマト 半 身 萎 凋 病 抵 抗 性 品 種 普 及 の ための 展 示 の 図 であった.しかしそれだけではない,むし ろそれに 倍 する 苦 労 の 跡 が 見 える 図 が 山 のようにあるので ある.また 本 書 が 従 来 の 病 気 や 害 虫 などの 小 さく 限 られた 対 象 ではなく, 細 菌 のグラム 染 色 や 鞭 毛 染 色,あるいは 農 薬 の 残 留 分 析 イムノアッセイ 法 の 図 までが 載 せられている ことにも 驚 かされる. つぎにいよいよ 本 文 ( 第 1 編 植 物 医 科 学 の 基 礎 知 識 ) に 入 ってみよう.いままでに 述 べたカラーページの 材 料 が すべて 引 用 されて 本 文 になっているわけであるが,そのす べてにわたって 引 用 することはできないので,ところどこ ろ 大 事 なところをピックアップして 紹 介 してみよう.まず ウイルスを 対 象 にしたとき 欠 かすことのできないのが 電 子 顕 微 鏡 であるが, 幸 いなことに 本 書 では 透 過 型 電 子 頭 微 鏡 (TEM)と 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 (SEM)について 詳 しく 紹 介 されている.これらはどこの 試 験 場, 研 究 所 にもあるもの ではないので, 本 書 での 記 事 を 頼 りにそれぞれの 読 者 が 自 分 の 置 かれた 研 究 環 境 に 合 わせて 十 分 に 工 夫 することがで きるであろう. つぎに 大 事 なのが 123 ページから 180 ページあたりまで の 菌 類 病, 細 菌 病 などの 同 定 法 の 部 分 であろう. 菌 類 病 に ついてはとくに 多 数 の 図 書, 報 告 の 原 著 者 から 貴 重 な 図 や 写 真 を 借 用 し, 非 常 に 分 かりやすい 解 説 とともに 充 実 した ものとなっている.さらに 植 物 ウイルスについて,この 項 に ついては 最 近 出 版 された 植 物 ウイルス 大 事 典 が 非 常 に 詳 しく 正 確 な 情 報 を 記 載 してくれているが, 約 900 ページ を 費 やして 記 述 されている 同 書 の 植 物 ウイルスの 大 部 分 に ついて, 本 書 のこの 項 では, 少 なくとも 実 験 法 の 上 ではカ バーしようとするもので, 両 書 が 奇 しくもほぼ 同 時 期 に 出 版 されたことは,この 分 野 で 永 らく 研 究 や 行 政 に 携 わった 者 として 喜 びに 堪 えない. 両 書 を 研 究 室 であるいは 図 書 室 で 若 い 人 たちが 嬉 々として 活 用 している 姿 が 目 に 浮 かぶよ うである. 最 後 に 第 2 編 植 物 医 科 学 実 験 の 実 際 の 項 に 入 ってみ る.ここは 本 書 を 活 用 する 学 生 たちに,それこそ 教 室 の 若 い 先 輩 たちが 手 を 取 り 足 を 取 りして 教 える 手 引 き 書 と なっている.その 中 からいくつかの 例 を 引 いてみるが,ま ず 果 樹 である. 果 樹 類 に 於 いては 種 子 繁 殖 性 のものが 少 な く, 台 木 の 上 に 必 要 な 同 類 の 穂 木 を 接 いで 苗 木 を 養 成 する のが 通 常 だが,この 性 格 のためにどうしても 厄 介 な 接 ぎ 木 伝 染 性 のウイルスの 問 題 が 生 じてくる. 一 般 的 には,こう いう 重 要 だが 厄 介 な 問 題 を 避 けるために,ここは 果 樹 専 門 の 書 籍 に 任 せがちだが, 本 書 ではこの 問 題 にまで 堂 々と 踏 み 込 んでいる. 一 つの 例 をあげてみよう.まずカンキツウ イルス,ウイロイドの 問 題 である.340 ページにある 表 2. 1 主 なカンキツウイルス ウイロイド バクテリアと 接 ぎ 木 検 定 用 植 物 の 中 には,カンキツウイルス,ウイロイ ド,バクテリアと 接 ぎ 木 検 定 用 植 物 としてカンキツトリス テザウイルス Citrus tristeza virus に 対 しては 検 定 用 植 物 と して Mexican Lime が,カンキツエクソコーテイスウイロ

x イド Citrus exocortis viroid には Etrog Citron が,カンキツタ ターリーフウイルス Citrus tatter leaf virus には Rusk Citrange が,またカンキツグリーニング 病 Candidatus Liberibacter asiaticus には MadamVinous が 上 げられている.さらに 表 2. 2 には 落 葉 果 樹 のウイルスと 接 ぎ 木 検 定 植 物 の 例, 表 2. 3 には 緑 枝 接 ぎにより 検 定 するウイルスの 例 としてブドウや イチゴの 検 定 についても 触 れている.まさに 果 樹 ウイルス 専 門 の 手 引 書 をも 越 えようとする 勢 いである.また 応 用 実 験 のページなどをみると,よくぞここまでと 思 うような 惚 れ 惚 れするような 記 述 がある.たとえば 376 ページや 377 ページのそれぞれ 下 部 にある 図 などであり,またあまり 目 立 たないが 図 2 の 39(418 ページ)の Phytophthora capsici の 遊 走 子 分 化 および 遊 走 子 嚢 からの 遊 出 の 図 であろう.カ ラーでないのが 残 念 だがまさに 本 書 における 白 眉 ともいう べきものになっている.このように 盛 りだくさんな 内 容 に 囲 まれる 学 徒 たちはなんと 幸 せ 者 だろうと 羨 ましく 思 いな がら 筆 を 擱 く. ( 日 本 植 物 病 理 学 会 名 誉 会 員 岸 國 平 ) 出 版 物 の 紹 介 井 上 哲 著 アイビー リーグ コーネル 大 学 大 学 院 植 物 病 理 学 科 菌 学 専 攻 でサバイバル 理 学 修 士 取 得 編 四 六 版 /416 ページ /2015 年 4 月 16 日 ブックウェイ ISBN978-4-907439-87-3 紙 版 定 価 2,916 円 ( 本 体 2,700 円 + 税 )アマゾンで 販 売 Kindle 版 定 価 864 円 ( 本 体 800 円 + 税 ) 電 子 書 籍 取 り 扱 いサイトで 販 売 植 物 病 理 学 では 世 界 で トップクラスのコーネル 大 学 大 学 院 の 教 育 を 知 ってい ただきたく, 私 が 昨 年 出 版 しました 留 学 体 験 記 を 紹 介 いたします. 私 は 1990 年 か ら 1997 年 までの7 年 間, コーネル 大 学 大 学 院 植 物 病 理 学 科 に 留 学 し,M.S.( 修 士 )と Ph.D.( 博 士 )の 学 位 を 取 得 しました.1981 年 に 大 学 を 卒 業 して 高 校 の 教 員 をしながら, 奮 起 してアメ リカの 大 学 の 大 学 院 進 学 を 決 意 して 出 願 準 備,1990 年 に 入 学 して 1993 年 に M.S. を 取 得 までの 奮 闘 記 です. コーネル 大 学 の 植 物 病 理 学 科 には, 日 本 から 多 くの 研 究 者 の 方 々が 客 員 としていらっしゃって 研 究 をされています が, 正 規 の 大 学 院 生 として 学 位 を 取 得 するプログラムに 入 学 し, 実 際 に 経 験 しないとわからないことがたくさんあり ます.アメリカの 大 学 の 大 学 院 へ 出 願 する 際 に 求 められる 条 件, 留 学 生 が 多 い グローバル 大 学 と 呼 ぶにふさわし いコーネル 大 学 での 留 学 生 に 対 する 英 語 のトレーニング, 学 位 取 得 に 関 する アドバイザー 制, 厳 しいコースワー ク( 講 義 )の 履 修,リサーチ アシスタント(RA)やティー チング アシスタント(TA)として 雇 用 され, アシスタ ントシップ という 返 済 不 要 の 奨 学 金 をいただきながらプ ロフェッショナルとして 勉 強, 研 究 するコーネル 大 学 の 大 学 院 生 の 生 活 等, 日 本 にいるとわからないディテールも 書 きました. コーネル 大 学 は,アメリカ 合 衆 国 の 東 部 の 名 門 大 学 アイ ビー リーグの 8 つの 大 学 の 一 つで,ニューヨーク 州 の 中 央, 南 北 に 細 長 い 形 の 幾 つかの 湖 のあるフィンガー レイクス 地 方 のイサカ 市 にあります.1862 年 のモリル 法 によりニュー ヨーク 州 立 の 大 学 設 立 のための 連 邦 の 予 算 と 創 立 者 のエズ ラ コーネル 氏 の 私 費 で 創 立 した, 世 界 でも 珍 しい 州 立 の 学 部 と 私 立 の 学 部 が 混 在 する 大 学 です.よく 知 られているのは ホテル 経 営 大 学 院 です.1880 年 に 設 立 されたジェネーバ 市 (イサカ 市 より 北 に 車 で 1 時 間 程 度 の 距 離 )のニューヨーク 州 農 業 試 験 場 を 合 併 したこともあり, 農 業 分 野 の 研 究, 教 育 では 世 界 のトップです.1877 年 にコーネル 大 学 御 出 身 の 矢 田 部 良 吉 先 生 が 東 京 大 学 初 代 植 物 学 教 授 となるなど, 日 本 の 植 物 学 の 大 学 教 育 との 関 係 も 深 い 大 学 です. コーネル 大 学 の 植 物 病 理 学 は,1868 年, 菌 類 学 担 当 の A.N. プレンティス 先 生 が Parasitic Fungi ( 寄 生 的 菌 類 ) という 授 業 を 教 えたことから 始 まります.1884 年 には, 後 にパデュー 大 学 に 移 りさび 病 の 権 威 となるジョン チャー ルズ アーサー 先 生 が 農 業 試 験 場 に 就 任 しました. H.H. ウェッツェル 先 生 によってイサカ 市 のメインキャン パスに 植 物 病 理 学 科 が 設 立 されたのは 1907 年 です. 以 後 世 界 の 植 物 病 理 学 を 牽 引 する 大 学 になっています. 世 界 一 美 しい 大 学 として 知 られているコーネル 大 学 の 美 しいキャンパスを 紹 介 したいと 思 い,コーネル 大 学 のご 協 力 を 得 ることができ, 多 くの University Photography のカ ラー 写 真 を 使 用 させていただくことができました.オール カラーで 紙 質 を 上 げたので 紙 版 は 値 段 が 高 くなってしまい ましたが Kindle 版 はお 求 め 安 い 価 格 になっています. 2015 年 という,コーネル 大 学 創 立 150 周 年, 日 本 植 物 病 理 学 会 創 立 100 周 年 の 特 別 な 年 に 出 版 できました. 多 く の 日 本 の 方 々に 読 んでいただいて,コーネル 大 学 の 植 物 病 理 学 科 の 世 界 を 楽 しんでいただき, 皆 様 のお 役 に 立 つこと ができれば 嬉 しいです. ( 井 上 哲 )

xi 学 会 ニュース 編 集 委 員 コーナー 本 会 ニュースは 身 近 な 関 連 情 報 を 気 軽 に 交 換 することを 趣 旨 として 発 行 されております. 会 員 の 各 種 出 版 物 のご 紹 介, 書 評, 会 員 の 動 静, 学 会 運 営 に 対 するご 意 見, 会 員 の 関 連 学 会 における 受 賞,プロジェクトの 紹 介 などの 情 報 を お 寄 せいただきたくお 願 いします. 投 稿 宛 先 : 114-0015 東 京 都 北 区 中 里 2-28-10 日 本 植 物 防 疫 協 会 ビル 内 学 会 ニュース 編 集 委 員 会 FAX:03-5980-0282 または 下 記 学 会 ニュース 編 集 委 員 へ: 高 橋 賢 司, 平 塚 和 之, 池 田 健 太 郎, 吉 田 重 信, 越 智 直 編 集 後 記 学 会 ニュース 第 74 号 をお 届 けします. 本 号 は, 昨 年 開 催 された 植 物 病 害 診 断 研 究 会,3 月 開 催 の 大 会 とそのあと に 開 催 された 研 究 会 談 話 会 の 報 告 を 中 心 に 掲 載 しました. 大 会 は,16 年 ぶりに 岡 山 市 で, 交 通 の 便 のよい 岡 山 駅 前 のコンベンションセンターを 会 場 に 開 催 されました. 天 候 にも 恵 まれ, 参 加 者 は 900 名 を 越 し, 講 演 題 数 は 366 題 に も 上 りました. 懇 親 会 も 賑 やかに 行 われ, 大 会 は 盛 会 裏 に 終 了 しました. 大 会 委 員 長 の 多 賀 正 節 先 生, 委 員 長 代 理 の 鈴 木 信 弘 先 生, 運 営 委 員 会 幹 事 長 の 一 瀬 勇 規 先 生,プログ ラム 委 員 長 の 秋 光 和 也 先 生 をはじめ 岡 山 大 学, 岡 山 県, 香 川 大 学 の 大 会 運 営 委 員 の 皆 様 には 大 変 お 世 話 になりました. 準 備, 運 営 のご 尽 力 に 深 く 感 謝 の 意 を 表 したいと 思 います. 大 会 後 には 各 種 の 研 究 会, 談 話 会 が 開 催 されました. 殺 菌 剤 耐 性 菌 研 究 会,バイオコントロール 研 究 会, 植 物 病 原 菌 類 談 話 会 は,いずれも 100 名 を 上 回 る 参 加 者 があり, 興 味 深 い 講 演,それを 受 けた 熱 心 な 質 疑 が 行 われています. 植 物 ウイルス 病 研 究 会 は 2 日 間 にわたって 行 われ,2 日 目 のミニワークショップのあとは, 日 本 文 化 に 触 れながら, また 温 泉 に 浸 かりながら 研 究 談 義 に 花 が 咲 き, 実 のある 集 いとなったようです.また, 昨 年 秋 に 開 催 された 植 物 病 害 診 断 研 究 会 も 全 国 から 126 名 の 参 加 者 があり, 活 発 な 質 疑 が 行 われ 有 意 義 な 研 究 会 となったようです. 研 究 会 談 話 会 を 運 営 されました 幹 事 の 皆 様 に 感 謝 申 し 上 げます. 学 会 活 動 が 活 発 に 継 続 していることを 喜 ばしく 思 います. 平 成 27 年 度 は 9 名 の 方 が 農 業 部 門 植 物 保 護 の 技 術 士 に 合 格 されました. 誠 におめでとうございます. 農 業 部 門 植 物 保 護 の 技 術 士 は,これまでの 合 格 者 数 が 103 名 となり 当 面 の 目 標 である 100 名 を 超 えました. 大 変 喜 ばしい 状 況 です.これも, 受 験 された 皆 様 のご 努 力 とと もに, 技 術 士 対 応 委 員 会 をはじめとする 関 係 皆 様 のご 尽 力 のおかげです. 本 年 も 大 会 中 に 技 術 士 対 応 委 員 会 主 催 で 試 験 対 策 セミナーが 開 催 されました.47 名 の 参 加 者 があり, 先 輩 の 技 術 士 や 新 合 格 者 の 貴 重 な 経 験 談 やアドバイスに 対 して 質 疑 応 答 や 議 論 が 活 発 に 行 われ, 熱 の 籠 もったセミ ナーとなっています. 技 術 士 の 皆 さまの 益 々のご 活 躍 と 今 後 も 多 くの 技 術 士 合 格 を 期 待 します. 今 後 の 学 会 活 動 予 定 として, 部 会 や 今 夏 から 秋 にかけて 開 催 予 定 の 研 究 会 談 話 会 の 開 催 日 程 と 場 所 を 掲 載 しまし た. 多 くの 皆 様 のご 参 加 をお 願 いします. 喜 ばしいお 知 らせです. 川 口 章 氏 が 日 本 学 士 院 学 術 奨 励 賞 を 受 賞 されました. 誠 におめでとうございます. 益 々の ご 活 躍 とご 発 展 を 祈 念 申 し 上 げます. 今 年 1 月 に 刊 行 された 堀 江 博 道, 橋 本 光 司, 西 尾 健 先 生 共 編 の 植 物 医 科 学 実 験 マニュアル を 岸 國 平 先 生 にご 紹 介 いただきました. 大 学 生 向 けの 植 物 病 理 学 実 験 の 教 科 書 として 図 版 や 写 真 が 多 く 使 われ 解 説 もわかりやすく 書 かれ ていますが, 内 容 が 非 常 に 充 実 していることから 専 門 の 実 験 手 引 き 書 として 現 場 でも 広 く 活 用 されるのではないで しょうか. 井 上 哲 氏 が 出 版 された コーネル 大 学 大 学 院 植 物 病 理 学 科 菌 学 専 攻 をご 自 身 で 紹 介 していただきました. 海 外 の 大 学 院 で 奮 闘 した 経 験 が 具 体 的 に 生 々しく 書 かれて おり,これから 海 外 の 大 学 院 へ 留 学 を 志 す 若 い 方 に 参 考 に なるのではないでしょうか. 学 会 ニュース 編 集 委 員 会 のメンバーが 変 わりました. 宇 垣 正 志, 宇 賀 博 之, 松 下 陽 介 が 退 任 し, 平 塚 和 之, 池 田 健 太 郎, 越 智 直 が 新 たに 加 わりました. 新 メンバーで 学 会 ニュースの 編 集 に 新 たな 気 持 ちで 取 り 組 んでまいりますの で, 引 き 続 きのご 愛 読 をよろしくお 願 いいたします. ( 高 橋 賢 司 )