Microsoft PowerPoint - 08【資料5-2】資料5-2 HPVワクチンのキャッチアップ接種に関する有効性・安全性のエビデンスについて

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現在にいたっております その結果 現在 HPVワクチンは定期接種でありながら 接種対象となる12 歳から16 歳の女子に対する接種がほとんど行われていないのが現状です このような状況は先進国では日本だけで見られていることであり 将来 子宮頸がんの発症が他国に比べて著しく高くなるというような事態が起き

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子宮頸がん死亡数 国立がん研究センターがん対策情報センターHPより

子宮頸部細胞診陰性症例における高度子宮頸部病変のリスクの層別化に関するHPV16/18型判定の有用性に関する研究 [全文の要約]

なお, 世間では HPV ワクチンのことを 子宮頸がんワクチン と呼んでいるが, ワクチンの性格上, 本稿では HPV ワクチン ( 正確には HPV 感染症予防ワクチン ) と表現する HPV 感染と子宮頸がんとの関係子宮頸がんの原因のひとつとして,HPV 感染による細胞の癌化が証明されている H

僕が見た21世紀の 産婦人科医療

新たに定期接種ワクチンとされたことから 本邦における HPV ワクチンによる免疫獲得状況を把握 して 将来の子宮頸癌予防計画に役立つ基盤データを蓄積することを目的に 14 年度から本事業にて HPV16 抗体価の測定調査を実施することとなった 2. 感受性調査 (1) 調査目的ヒトの HPV16 に

避するためには 子宮頸がん検診を定期的に受診することが必要不可欠であること 3 HPV ワクチンの長期成績は未だ確認されていないこと このため 将来的に追加接種が必要となる可能性もあること 4 10 歳未満の小児 妊娠中の女性及び高齢者に対する有効性と安全性は確立されていないこと 5 HPV は性行

子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

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データの取り扱いについて (原則)

婦人科癌 : 具体的には? 卵管癌 子宮体癌 卵管 卵巣癌 体部 頸部 卵巣 腟 外陰

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る反ワクチン団体は 痛みに苦しむ女子や家族をメデイアに登場させ 因果関係があるかのように不安を募らせました WHO は 2013 年 6 月 13 日 HPV ワクチンに関する安全性声明を発表しました 国内では その翌日の 6 月 14 日に厚労省副反応検討部会が開催され 安全性を説明できる十分なデ

C 型慢性肝炎に対するテラプレビルを含む 3 剤併用療法 の有効性 安全性等について 肝炎治療戦略会議報告書平成 23 年 11 月 28 日

0516(資料9-2)【概要】HPVワクチンの有効性

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

方法について教えてください A 妊娠中の接種に関する有効性および安全性が確立されていないため 3 回接種を完了する前に妊娠していることがわかった場合には一旦接種を中断し 出産後に残りの接種を行うようにしてください 接種が中断しても 最初から接種し直す必要はありません 具体的には 1 回目接種後に妊娠

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●子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案

医療従事者の方へ 平成 30 年 12 月 21 日 一般社団法人日本プライマリ ケア連合学会 理事長丸山泉 ヒトパピローマウイルスワクチンに関する日本プライマリ ケア連合学会の考え方 ( この内容は本学会の HPV に関する特別委員会で協議され 理事会で承認されたもの です ) 平成 25 年 4

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サーバリックス の効果について 1 サーバリックス の接種対象者は 10 歳以上の女性です 2 サーバリックス は 臨床試験により 15~25 歳の女性に対する HPV 16 型と 18 型の感染や 前がん病変の発症を予防する効果が確認されています 10~15 歳の女児および

子宮頸がん予防ワクチンとヘルスリテラシー

3-2 全国と札幌市の定点あたり患者報告数の年平均値流行状況の年次推移を 全国的な状況と比較するため 全国と札幌市の定点あたり患者報告数の年平均値について解析した ( 図 2) 全国的には 調査期間の定点あたり患者報告数の年平均値は その年次推移にやや増減があるものの大きな変動は認められなかった 札

科学的根拠に基づいた子宮頸がん予防 井上正樹 * 1. はじめに 子宮頸がん検診 は 我が国では 1982 年に老人健康法が定められ 全国で始められました 子宮頸がん死亡率の低下のみならず がん検診を我が国に定着させた主導的役割は大きいと思われます その後 厚労省も 有効な検診 と評価しています 1

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10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 の相対生存率は 1998 年以降やや向上した 日本で

H30_業務の概要18.予防接種

ヒブ ( インフルエンザ菌 b 型 ) 対象者 : 生後 2ヶ月から5 歳未満までのお子さん標準的な接種開始期間は 生後 2ヶ月から7ヶ月未満です 生後 2ヶ月を過ぎたら 早目に接種しましょう 接種方法 : 接種開始時の年齢により接種方法が異なります 接種開始が生後 2ヶ月から7ヶ月未満の場合 (

4 月 17 日 4 医療制度 2( 医療計画 ) GIO: 医療計画 地域連携 へき地医療について理解する SBO: 1. 医療計画について説明できる 2. 医療圏と基準病床数について説明できる 3. 在宅医療と地域連携について説明できる 4. 救急医療体制について説明できる 5. へき地医療につ

平成 28 年度感染症危機管理研修会資料 2016/10/13 平成 28 年度危機管理研修会 疫学調査の基本ステップ 国立感染症研究所 実地疫学専門家養成コース (FETP) 1 実地疫学調査の目的 1. 集団発生の原因究明 2. 集団発生のコントロール 3. 将来の集団発生の予防 2 1

平成 30 年 9 月 10 日第 11 回ワクチン評価に関する小委員会資料 資料 1-1 肺炎球菌ワクチン (PPSV23) について 経緯平成 22 年 7 月第 11 回感染症分科会予防接種部会において 肺炎球菌ポリサッカライドワクチン ( 成人用 ) に関するファクトシート が報告された 平

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

マンスリー・ヘルシートピックス(2015年4月号)

資料 10 HPV ワクチンの有効性及び安全性に関する疫学研究の概要 1. 研究事業名 厚生労働科学研究費補助金新興 再興感染症及び予防接種政策推進事業 2. 研究課題名 子宮頸がんワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究 3. 研究予定期間 平成 27 年 7 月 7 日から 3 年計画 (

婦人科がん検診Q&A

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日本における子宮頸がん検診の時代的背景 1982 年老人保健法にて 20 年かけて子宮頸がんを半減させる 30 歳以上の女性を対象受診間隔は 1 年に 1 回費用は行政が全額負担 1998 年地方交付税による財源措置に変更費用の一部個人負担が必要となる 2004 年子宮頸がん検診の見直し受診対象年齢

危機管理論 リスクとクライシスのマネジメント

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娠中の母親に卵や牛乳などを食べないようにする群と制限しない群とで前向きに比較するランダム化比較試験が行われました その結果 食物制限をした群としなかった群では生まれてきた児の食物アレルゲン感作もアトピー性皮膚炎の発症率にも差はないという結果でした 授乳中の母親に食物制限をした場合も同様で 制限しなか

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平成 24 年 7 月改定版 すべての予防接種につきましては 次のページに記載してあります 平成 24 年度予防接種日程表 ( 国の通知により 内容が変わる場合があります 毎月の 広報みなみちた でご確認ください 新 麻しん風しん混合 3 期 4 期 ( 個別 ) 対象 :3 期 ( 中学 1 年生

[ 「日本人の乳がん検診に 超音波は有用か」 Sensitivity and specifisity of mammography and adjunctive ultrasonography to screen for breast ancer in the Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trial (J-START): a randomised controlled trial

H22母性保健に関する研究

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試験デザイン :n=152 試験開始前に第 VIII 因子製剤による出血時止血療法を受けていた患者群を 以下のい ずれかの群に 2:2:1 でランダム化 A 群 (n=36) (n=35) C 群 (n=18) ヘムライブラ 3 mg/kg を週 1 回 4 週間定期投与し その後 1.5 mg/k

9 予防接種

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平成 26 年度事業計画書 自平成 26 年 4 月 1 日 至平成 27 年 3 月 31 日 公益財団法人性の健康医学財団

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要望番号 ;Ⅱ-183 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者学会 ( 該当する ( 学会名 ; 日本感染症学会 ) ものにチェックする ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 1 位 ( 全 8 要望中 ) 要望する医薬品

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婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

小児用肺炎球菌ワクチン 対象者 : 生後 2カ月 ~5 歳未満の方接種費用 : 無料ただし 接種開始が2 歳以上の場合は自己負担あり (1100 円 ) 接種回数 : 接種開始年齢によって異なります 接種開始月 年齢接種回数 接種間隔接種費用 生後 2 月から 7 月未満 生後 7 月から 12 月

細胞 THE CELL 2011年6月臨時増刊号 (立ち読み)

世界標準の子宮頸がん予防対策 なぜ日本だけが遅れるのか

未承認の医薬品又は適応の承認要望に関する意見募集について

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も 医療関連施設という集団の中での免疫の度合いを高めることを基本的な目標として 書かれています 医療関係者に対するワクチン接種の考え方 この後は 医療関係者に対するワクチン接種の基本的な考え方について ワクチン毎 に分けて述べていこうと思います 1)B 型肝炎ワクチンまず B 型肝炎ワクチンについて

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事業評価のためのチェックリスト ( 単位 : %) (2) 平成 27 年度の原発がんに対する早期がん割合を把握しましたか 肺がんでは臨床病期 Ⅰ 期がん割合 乳がんでは臨床病期 Ⅰ 期までのがん割合を指す (2-1)

肺炎球菌感染症とワクチン 走査型電子顕微鏡 グラム陽性双球菌 表面は莢膜多糖体 ( ホ リサッカライト ) で覆われている ホ リサッカライト の抗原性による少なくとも 90 種類の血清型が存在 血清型特異抗体と補体が同一血清型あるいは交差血清型の肺炎球菌に対する感染防御を担っている

要望番号 ;Ⅱ-24 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 8 位 ( 全 33 要望中

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資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

<4D F736F F D CB48D655F87562D31926E88E695DB8C928A E947882AA82F F4390B38CE32E646F6378>

1. 今回の変更に関する整理 効能 効果及び用法 用量 ( 添付文書より転載 ) 従来製剤 ( バイアル製剤 ) と製法変更製剤 ( シリンジ製剤 ) で変更はない 効能 効果 用法 容量 B 型肝炎の予防通常 0.5mL ずつ4 週間隔で2 回 更に 20~24 週を経過した後に1 回 0.5mL

Microsoft Word - HPVワクチンの費用対効果に関する見解24日20時30分版

- 日中医学協会助成事業 - 肺炎球菌ワクチンに対する免疫応答性の日中間における比較に関する研究 研究者氏名教授川上和義研究機関東北大学大学院医学系研究科共同研究者氏名張天托 ( 中山大学医学部教授 ) 宮坂智充 ( 東北大学大学院医学系研究科大学院生 ) 要旨肺炎球菌は成人肺炎の最も頻度の高い起炎

がん年齢階級別罹患率 (2012 年女性 ) HPV 型別頻度は? 大腸 子宮頸部 (10 万人あたり16.7 人 ) 歳 2.1 人 歳 12.2 人 歳 21.1 人 歳 28.1 人 歳 32.9 人 歳 27.6 人 5

日本内科学会雑誌第104巻第11号

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日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール

要望番号 ;Ⅱ-286 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 33 位 ( 全 33 要望

ロタウイルスワクチンは初回接種を1 価で始めた場合は 1 価の2 回接種 5 価で始めた場合は 5 価の3 回接種 となります 母子感染予防の場合のスケジュール案を示す 母子感染予防以外の目的で受ける場合は 4 週間の間隔をあけて2 回接種し 1 回目 の接種から20~24 週あけて3 回目を接種生

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 014 年 10 月 1 日版日本小児科学会 乳児期幼児期学童期 / 思春期 ワクチン 種類 直後 6 週 以上 インフルエンザ菌 b 型 ( ヒブ )

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始前に出生したお子さんについては できるだけ早く 1 回目の接種を開始できるように 指導をお願いします スムーズに定期接種を進めるために定期接種といっても 予防接種をスムーズに進めるためには 保護者の理解が不可欠です しかし B 型肝炎ワクチンの接種効果は一生を左右する重要なものですが 逆にすぐに効


DPT, MR等混合ワクチンの推進に関する要望書

インフルエンザ(成人)

子宮頸がん予防ワクチン及びヒブ・小児用肺炎球菌ワクチンの接種助成事業スタート

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日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールの主な変更点 2014 年 1 月 12 日 1)13 価結合型肺炎球菌ワクチンの追加接種についての記載を訂正 追加しました 2)B 型肝炎母子感染予防のためのワクチン接種時期が 生後 か月 から 生直後 1 6 か月 に変更と なりました (

研究実績報告書宮頸部擦過細胞検体から採取された DNA には 病変を形成していない一過性の HPV 感染も検出されてしまうため 結果として複数のハイリスク HPV 型の DNA が検出されることも多く 病変形成に関わった真の HPV 型の同定が困難である そこで 既に診断の得られている子宮頸部腫瘍の

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第 26 回厚生科学審議会予防接種 ワクチン分科会 2021( 令和 3) 年 11 月 15 日 資料 5-2 HPV ワクチンのキャッチアップ接種 に関する有効性 安全性のエビデンスについて HPV ワクチンの積極的な勧奨の差し控えにより接種機会を逃した方への対応

1.HPV ワクチンのキャッチアップ接種に関する有効性のエビデンスについて 2.HPV ワクチンのキャッチアップ接種に関する安全性のエビデンスについて 1

26 歳までの女性における CIN2+, CIN3+ に対する 4 価 HPV ワクチンの有効性 ( 米国 症例対照研究 ) 米国では 13 歳から 26 歳までに初回接種が行われた HPV ワクチン接種がキャッチアップ接種と 定義づけられている 初回接種年齢 接種回数による CIN2+ と CIN3+ の病変のリスクを評価するた め カリフォルニア州における大規模なデータベースを利用して症例対照研究が行われた 4 価ワクチン導入の 2006 年に 26 歳以下であった女性が対象となり 4,357 例の CIN2+ 症例群と 年齢等を考慮してマッチングされた 217,773 例の対照群についての解析が行われた 1 回以上の接種で CIN2+(RR; 0.82, 95%CI: 0.73-0.93) CIN3+(RR; 0.77, 95%CI: 0.64-0.94) の双方 に予防効果を認めた 3 回の接種群において初回接種が 14-17 歳 ( 調整後 RR; CIN2+ で 0.52, 95%CI: 0.36-0.74, CIN3+ で 0.27, 95%CI: 0.13-0.56) で高い有効性 初回接種が 18-20 歳 ( 調整後 RR; CIN2+ で 0.65, 95%CI: 0.49-0.88, CIN3+ で 0.59, 95%CI: 0.36-0.97) でも有効性を認めた一方 21 歳以上で初回接種した群では有 意な効果は見られなかった CIN2+ CIN: 子宮頸部異形成軽度 (CIN1) 中等度 (CIN2) 高度 (CIN3) に分類 CIN3+ 出典 :Michael J. Silverberg et al. Lancet Child Adolesc Health. 2018; 2(10): 707-714. 2

日本の HPV ワクチン接種事業開始以降の高度子宮頸部病変における HPV 16/18 型の陽性率 日本のHPVワクチン接種事業開始以降の子宮頸部病変におけるHPV 型の変化を調査するために 2012 年から2017 年まで 21の医療施設で新たに子宮頸部病変 (CIN1-3, AIS, ICC( )) と診断された16 歳から39 歳の女性 7,709 名を対象として 長期の追跡調査を行った CIN1 及びCIN2-3/AISにおけるHPVウイルス型について 25 歳未満においてはワクチン型 HPV (16/18 型 ) の経時的な減少傾向を認めた (P < 0.0001) が 26 歳以上では同様の傾向は認められなかった 20 歳以下での初回接種群ではCIN2-3/AIS 陽性例におけるHPV16/18 型の陽性率が有意に低下していた (p=0.02) 一方で 21 歳以上での初回接種群では 有意差は認めなかった (p=0.18) CIN: 子宮頸部異形成軽度 (CIN1) 中等度(CIN2) 高度(CIN3) に分類 AIS: 上皮内腺癌 ICC: 浸潤性子宮頸がん 各病変における HPV 16/18 型の保有率の経年変化 各年齢層における CIN2-3/AIS 患者の HPV16/18 型保有率 CIN1 CIN2-3/AIS 出典 :Koji Matsumoto et al. Cancer Science. 2019;110:3811 3820. 3

子宮頸がんに対するHPVワクチンの効果についてのコホート研究 ( デンマーク ) HPVワクチンの子宮頸がんに対する有効性を調査するため デンマークにおいて 2006 年 12 月から2019 年 12 月までの間に在住した17 歳から30 歳までの女性を対象として ワクチンの接種及び子宮頸がんの発症について 国のレジストリに登録された情報を抽出し ワクチン接種の有無における子宮頸がんの罹患率比を算出したコホート研究 対象となった867,689 名の女性のうち 314,852 名 (36.3%) が17 歳になる前に初回のHPVワクチンを接種しており 観察期間中 17-19 歳での初回接種は20,063 名 (2.3%) 20-30 歳での初回接種は167,607 名 (19.3%) であった 接種群における子宮頸がんの罹患率比は接種時の年齢が16 歳以下で0.14(95%CI: 0.04-0.53) 17-19 歳で0.32(95%CI: 0.08-1.28) であった 一方で 20 歳以上では1.19(95%CI: 0.80-1.79) であった 19 歳以下のHPVワクチン接種では子宮頸がんの予防に対する高い効果が認められたが 16 歳以下の接種でより高い有効性が認められ 若年での接種の重要性が示された HPVV 接種の有無で比較した子宮頸がんの罹患率比 子宮頸がんの累積発生率 出典 :Susanne K. Kjaer, Christian Dehlendorff, et al. Journal of the National Cancer Institute 2021. 4

10 歳から 30 歳までの女性の HPV ワクチン接種と浸潤性子宮頸がん発症のリスクについての検討 ( スウェーデン ) 4 価 HPV ワクチンの接種による浸潤性の子宮頸がん発症予防の有効性を調べるために ス ウェーデンの 10 歳から 30 歳の女性 ( 約 167 万人 ) に関する 2006 年から 2017 年のデータを用いて調 査を行った 子宮頸がんの累積発生率は接種群 ( 約 52.8 万人 ) で 10 万人あたり 47 例であったのに対し 非接 種群 ( 約 114.5 万人 ) では 10 万人あたり 94 例であった 非接種群と比較して 接種群の年齢調整による子宮頸がんの罹患率比は 0.51(95%CI: 0.32-0.82) 他の因子も調整した罹患率比は 0.37(95%CI: 0.21-0.57) であった 16 歳以下で接種した群において 非接種群と比較した接種群の罹患率比 ( 多因子調整後 ) は 0.12(95%CI: 0.00-0.34) 19 歳以下で接種した群では 0.36(95%CI: 0.18-0.61) であった 出典 :Jiayao Lei, Alexander Ploner, et al. N Engl J Med 2020, 383; 14: 1340-1348. 5

子宮頸がんとCIN3に対する2 価 HPVワクチンの有効性 ( 英国 ) 英国では 2008 年の2 価 HPVワクチンの導入から10 年以上が経過している 2 価ワクチンの有効性を調査するため 大規模ながん登録データを使用し ワクチン接種群 (12-13 歳の定期接種群 14-16 歳及び16-18 歳の2つのキャッチアップ接種群の3 群 : 合計 1370 万人年 ) と参照群 ( ワクチン導入前の4つの非接種群 ) で子宮頸がん及びCIN3 病変の発生率の比較を行った 接種時の年齢毎の子宮頸がん発生率の減少率は 16-18 歳接種群で34%(95%CI: 25-41%) 14-16 歳接種群で62%(95%CI: 52 71%) 12-13 歳接種群で87%(95%CI: 72-94%) であった CIN3 発生率の減少率は 16-18 歳接種群で39%(95%CI: 36-41%) 14-16 歳接種群で75%(95%CI: 72 77%) 12-13 歳接種群で97%(95%CI: 96-98%) であった 英国では 2019 年 6 月末の時点で ワクチンの接種によって 448 例の子宮頸がん及び17,235 例のCIN3の発生が減少したと推定された HPVワクチン接種プログラムの導入は 英国の子宮頸がん発生の減少に大きく寄与した CIN: 子宮頸部異形成軽度 (CIN1) 中等度(CIN2) 高度(CIN3) に分類出生コホートの分類 (1~7 群 ) の概要各出生コホートにおける子宮頸がんの発生率比子宮頸がんの累積発生率子宮頸がん CIN3 出典 :Milena Falcaro, et al. Lancet November 3, 2021 https://doi.org/10.1016/s0140-6736(21)02178-4. 6

15 歳から 25 歳の女性における CIN3+ に対する 2 価 HPV ワクチンの有効性と安全性 (RCT) 15 歳から 25 歳の女性における HPV ワクチンの有効性 安全性を評価するために 健康な女性 ( 欧米 アジアなど計 14 カ国 ) を対象としたランダム化比較試験 (4 年間のフォローアップ ) 全対象者 (TVC: Total Vaccine Cohort 18,644 名 うちワクチン接種群 9,319 名 ) 及びこのうちの HPV 未感染群 (TVC-naive 11,644 名 うちワクチン接種群 5,824 名 ) における CIN3+/AIS に対する有 効性が主要評価項目とされ 安全性の評価も行われた HPV16/18 関連の CIN3+ に対するワクチンの有効性については TVC-naive では全ての年齢層にお いて 100%(95%CI: 85.5-100) であった一方 TVC では接種時の年齢が 15-17 歳群 (80.5%, 95%CI: 55.6-92.7) から年齢が上がるにつれて低下する傾向 ( ) が見られた 若年でのワクチン接種の重要性が示された一方 25 歳以下の HPV 未感染者では年齢に係わらず CIN3+ に対して高い有効性が示された 重篤な有害事象の発生頻度について ワクチン接種群と コントロール群で差は認めなかった ( )18-20 歳群の CIN3+ に対するワクチン有効性 :56.3%, 95%CI 13.6%-79.1% 21-25 歳群の CIN3+ に対するワクチン有効性 :-10.1%, 95%CI -90.5%-36.1% CIN: 子宮頸部異形成軽度 (CIN1) 中等度 (CIN2) 高度 (CIN3) に分類 AIS: 上皮内腺癌 出典 :Matti Letinen et al. Lancet Oncol 2012;13:89-99. 7

14 歳から 17 歳の女性における HPV 感染に対する 4 価 HPV ワクチンの有効性 ( コロンビア 横断的研究 ) コロンビアでは 2012 年から9 歳から14 歳の女子を対象にHPVワクチンの公費接種が開始され キャッチアップ接種は17 歳までが対象となっている キャッチアップ接種世代のHPVワクチン接種の影響を調査するため コロンビアの地方都市において 4 価 HPVワクチン導入から5 年後にワクチン接種者 (1,986 人 ) と非接種者 (1,287 人 ) におけるHPV 感染率の比較を行なった横断的研究 ワクチン接種群においてHPV 16/18 型の感染率は有意に低く (6.5% vs 15.4%; p < 0.001) 感染に対するワクチン有効性は61.5%(95%CI: 54.3-67.6) であった 性交経験前にワクチンを接種した群での有効率 (91.5%, 95%CI: 86.8-94.5) は経験後の接種群 (36.2%, 95%CI: 23.6-46.7) より有意に高かった HPV 16/18 型への感染について 性交経験前の接種では経験後の接種よりも高い有効性が示された 出典 : Alba L Combita et al. Cancer Prev Res (Phila). 2021 Oct 5;canprevres.0063.2021. 8

26 歳以上の女性における CIN1+ に対する 2 価 HPV ワクチンの有効性 (RCT) 26 歳以上の女性におけるHPVワクチンの有効性 安全性 免疫原性を評価するために アジア太平洋 欧州 北米 ラテンアメリカの12カ国の健康な女性を対象としたランダム化比較試験 ( ワクチン群 vs コントロール群 ) の7 年間のフォローアップが実施された 一次評価項目として HPV16/18 型への持続感染又はCIN1+ の病変に対するワクチン有効性が設定された 対象者は2006 年 2 月から2014 年 1 月まで登録され 有効性の評価には 4,407 名の女性が対象 ( ワクチン群 2,209 名 コントロール群 2,198 名 ) となった 年齢層では 26 歳から35 歳が全体の 43.9% 36 歳から45 歳が45.1% 46 歳以上が11.0% を占めていた 全体の15% でHPVの既感染又は関連疾患への罹患を認めた 接種から84ヶ月の時点で ワクチン接種者における HPV 16/18 型の持続感染 (6ヶ月間) 又は CIN1+ 病変に対するワクチン有効性は90.5%(96.2%CI: 78.6-96.5) であった CIN: 子宮頸部異形成軽度 (CIN1) 中等度 (CIN2) 高度 (CIN3) に分類 出典 :Cosette M Wheeler et al. Lancet Infect Dis 2016; 16: 1154 68. 9

1.HPV ワクチンのキャッチアップ接種に関する有効性のエビデンスについて 2.HPV ワクチンのキャッチアップ接種に関する安全性のエビデンスについて 10

26 歳以上の女性における 2 価 HPV ワクチンの安全性 (RCT) HPVワクチンの有効性 安全性 免疫原性を評価するために 26 歳以上の健康な女性 ( アジア太平洋 欧州 北米 ラテンアメリカの12カ国 ) を対象としたランダム化比較試験 ( ワクチン群 vs コントロール群 ) の平均 40.3ヶ月間のフォローアップが実施された 主たる有効性の解析対象者 (According-to-protocol cohort for efficacy) として 2006 年 2 月から 2010 年 12 月までに4,505 名 ( ワクチン群 2,264 名 コントロール群 2,241 名 ) の女性が登録された 年齢層では 26 歳から35 歳が全体の44% 36 歳から45 歳が45% 46 歳以上が11% を占めていた 解析対象者において HPV 16/18の持続感染 (6ヶ月間) 又はCIN1+ 病変に対するワクチン有効性は81.1%(97.7%CI: 52.1-94.0) であった 安全性について 非接種群と比較して 重篤な副反応 新規に発生した慢性疾患や自己免疫疾 患の発症割合に差は認められなかった CIN: 子宮頸部異形成 軽度 (CIN1) 中等度 (CIN2) 高度 (CIN3) に分類 出典 :S Rachel Skinner et al. Lancet 2014;384:2213-27. 11

18 歳から 26 歳の女性における 4 価 HPV ワクチンの有効性と安全性 ( 日本 RCT) 18 歳から 26 歳の女性におけるHPVワクチンの有効性 安全性を評価するための 健康な日本人女性を対象としたランダム化比較試験 ( ワクチン群 vs コントロール群 : 平均 30ヶ月間のフォローアップ ) 1,021 名の女性が対象 ( ワクチン群 509 名 コントロール群 512 名 ) となった ワクチン接種群はコントロール群と比較して ワクチン型 HPV(6/11/16/18) の持続感染とそれらと関連する性器病変 (CIN 1, CIN2) の罹患率が低かった ( ワクチン有効性 ;87.6%, 95%CI: 59.2-97.6, P < 0.001) ワクチン関連の重篤な有害事象は認められなかった 18 歳から26 歳までの日本人女性における4 価 HPVワクチン接種について ワクチン型 HPVの感染とCIN1, CIN2についての有効性が示され 安全性についても高い忍容性 ( ) が示された ) 医薬品の副作用等が許容できる程度 CIN: 子宮頸部異形成軽度 (CIN1) 中等度 (CIN2) 高度 (CIN3) に分類 出典 :Yoshikawa et al. Cancer Science 2013; 104(4): 465-472. 12