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Transcription:

宗 教 改 革 期 の 印 刷 ビラにみる 説 得 的 効 果 - 民 衆 の 心 をつかむレトリック - 芹 澤 円 1. はじめに 現 在 私 たちの 生 活 はさまざまな 情 報 で 溢 れている 一 度 に 不 特 定 多 数 に 向 け て 情 報 を 発 信 するマスメディアとしては 新 聞 やラジオのほか テレビやインタ ーネットがある 大 量 生 産 された 媒 体 を 用 いて 大 量 の 情 報 を 大 衆 に 伝 達 する 行 為 ( 佐 藤 1998 : 4)が 始 まったのは 宗 教 改 革 の 時 代 である このときのメディ アは 紙 媒 体 の 印 刷 ビラ (Flugblatt)および 小 冊 子 (Flugschrift)であり 1) このメディアを 使 って 宗 教 改 革 の 理 念 が 不 特 定 多 数 の 民 衆 に 向 けて 発 信 された 当 時 の 印 刷 ビラと 小 冊 子 は 宗 教 色 が 強 く 出 ていたものの 今 日 の 新 聞 の 祖 型 とも いうべき 報 道 文 学 のたぐい (エンゲルジング 1985 : 204)として 現 在 の 新 聞 の ような 役 割 も 果 たしていた 人 々はより 新 しい 情 報 を 求 めて 印 刷 ビラと 小 冊 子 の 読 み 聞 かせに 参 加 した 本 稿 で 分 析 対 象 とするのは 印 刷 ビラである 印 刷 ビラは 通 常 小 冊 子 とは 異 なり 木 版 画 による 図 像 が 大 きな 部 分 を 占 め その 下 に 言 語 による 説 明 文 が 付 さ れていた 特 に 文 字 を 持 たない 民 衆 にとって 図 像 が 付 いた 印 刷 ビラは 重 要 な 情 報 源 となる 民 衆 の 確 信 をさらに 強 化 し 民 衆 の 心 を 宗 教 改 革 に 向 かわせるた めに 宗 教 改 革 者 たちは 印 刷 ビラの 中 に 図 像 と 言 語 の 両 面 においてさまざまな 工 夫 を 凝 らして 情 報 が 可 能 な 限 り 効 果 的 に 民 衆 に 伝 わるように 努 めた その 際 に 重 要 なのは レトリック( 修 辞 法 )であった 古 代 の 理 論 家 が 良 き 弁 論 の 芸 術 (わざ) (プレット 2000 : 17)と 呼 んだレトリックは 弁 論 に 関 する 方 法 ( 同 上 : 16)であり 納 得 させ 確 信 させる 技 術 ( 同 上 : 17)である 2) 本 稿 1) 印 刷 ビラ と 小 冊 子 の 基 本 的 な 違 いは 1 枚 からなるか 複 数 枚 からなるかであ る 詳 しくは 2.2.を 参 照 2) 説 得 の 作 用 については プレット(2000 : 18-21)を 参 照 1

芹 澤 円 では 宗 教 改 革 期 に 配 布 された 印 刷 ビラ 2 点 を 例 にして 言 語 テクストだけでは なく 図 像 にも 用 いられたレトリックの 分 析 を 行 い 印 刷 ビラの 情 報 がどのよう な 説 得 的 効 果 をめざして 発 信 されたのかを 考 察 するものである 2. 印 刷 術 と 印 刷 ビラ 2.1 印 刷 技 術 1440 年 頃 に マインツで 都 市 貴 族 の 家 系 であるヨハネス グーテンベルク (Johannes Gutenberg)によって 活 版 印 刷 術 が 発 明 された この 発 明 以 前 に 書 籍 を 作 成 するために 欠 かせなかったのは 写 字 であり 文 字 はひとつひとつ 丁 寧 に 人 の 手 で 書 き 写 されていた 例 えば 12 世 紀 から 13 世 紀 にヨーロッパの 各 地 で 誕 生 した 大 学 では 多 くの 筆 耕 による 分 担 書 写 が 行 われていた 3) 修 道 院 や 大 学 での 書 写 に 加 え 当 時 の 学 生 は 大 学 近 辺 にいる 書 写 生 に 料 金 を 支 払 って 筆 写 を 頼 んだりもしていた 4) しかしながらこのような 作 業 では 一 冊 の 本 を 作 るの に 膨 大 な 時 間 がかかると 同 時 に 人 の 手 によるものであるため 写 し 間 違 いが 起 きたことは 言 うまでもない 活 版 印 刷 術 の 発 展 は こうした 書 籍 を 作 成 する 手 順 を より 速 くより 簡 単 にした 1520 年 までには 印 刷 所 は 神 聖 ローマ 帝 国 とスイ スにおいて 都 市 を 中 心 とし 62 カ 所 を 数 えるまでに 成 長 した 5) しかし 書 籍 の 概 念 は 活 版 印 刷 術 が 発 達 してきたとはいえ 現 在 とはずいぶん と 異 なっていた というのも 本 は 高 価 で 貴 重 な 扱 いを 受 けていたからだ つま り 本 は 一 般 的 に 出 回 るものではなかったのと 同 時 に 本 を 所 有 していることが 上 流 階 級 であるというステータスとなっていたことがうかがえる 森 田 はこのこ とに 関 して 書 籍 は 権 威 身 分 のシンボルであり 読 書 はエリートの 行 為 ( 森 田 1993 : 23)であると 述 べている 活 版 印 刷 術 とともに 印 刷 物 の 生 産 向 上 のためになくてはならなかったものは 紙 の 生 産 である それまでの 書 籍 に 使 用 されていたのは 羊 皮 紙 と 呼 ばれる 動 物 の 皮 から 作 られたものだった 文 字 を 皮 の 表 面 に 書 けるようにするためには 何 度 も 繰 り 返 し 皮 をなめす 必 要 があり こちらも 非 常 に 時 間 のかかる 作 業 であった 3) 森 田 (1993 : 23)を 参 照 4) フェーブル マルタン(1985 : 上 巻 51-56)を 参 照 5) 田 辺 佐 藤 (1995 : 100)を 参 照 2

また 一 枚 が 厚 いため 何 百 ページにも 及 ぶ 本 は それだけでかなりの 厚 みと 重 さを 要 し 持 ち 運 びも 困 難 だった さらに 200 ページの 本 を 作 るために 25 頭 もの 羊 が 必 要 であったという 例 もある 6) したがって 羊 皮 紙 は 大 量 消 費 に 適 していたパピルスが 消 滅 して 以 来 一 般 に 使 用 される 筆 記 材 料 となっていたが 生 産 量 や 価 格 の 面 からみて 文 字 文 化 読 書 文 化 の 発 展 を 支 える 力 はなかった (エンゲルジング 1985 : 26) このような 状 況 の 中 で 紙 の 生 産 性 が 向 上 したことは 宗 教 改 革 時 代 に 非 常 に 大 きな 影 響 をもたらした エンゲルジングは 紙 の 値 段 についても 考 察 しており フランクフルト アム マインでは 未 使 用 の 白 紙 の 値 段 が 1376 年 から 1483 年 までに 15% 下 落 し 1438 年 から 1470 年 までに 30% 1470 年 から 1513 年 までに は 実 に 40%も 低 下 したと 推 定 されている とはいえ この 地 で 使 用 されていた 紙 は まだイタリア 産 がほとんどであり この 事 情 は 北 ドイツやスカンジナヴィア についても 同 じであった (エンゲルジング 1985 : 26) と 述 べている 需 要 が 増 加 するにつれ 価 格 も 安 くなることから 紙 の 使 用 量 は かなり 増 えたと 考 えられるわけである 2.2 印 刷 ビラと 小 冊 子 印 刷 技 術 の 向 上 と 紙 の 生 産 量 の 増 加 により 書 籍 の 製 造 をより 速 く そして 安 く 行 うことができるようになった これら 双 方 の 利 点 に 着 目 したのが 宗 教 改 革 者 たちである 彼 らは それ 自 体 で 独 立 完 結 しており 継 続 発 行 されたり 本 の 形 に 綴 じられたりしていない ( 須 澤 井 出 2009 : 159) 形 状 の 印 刷 ビラと 小 冊 子 に 宗 教 改 革 の 思 想 や 意 図 を 表 し 大 量 に 流 布 させることで 民 衆 に 宗 教 改 革 の 意 義 を 示 そうとした 小 冊 子 の 類 いは 1518 年 から 1523 年 の 間 に 3000 点 を 越 えた という 7) 印 刷 ビラは 基 本 的 に 一 枚 刷 りだが 図 像 が 主 体 となっているため ある 程 度 の 6) 永 田 (2004 : 35)を 参 照 7) 田 辺 佐 藤 (1995 : 100)を 参 照 3

芹 澤 円 大 きさが 必 要 となってくる 8) それに 対 して 小 冊 子 は 複 数 枚 からなるが 小 型 で 軽 くて 持 ち 運 びやすく 作 られていた 9) 行 商 する 書 籍 商 が 宿 屋 でも 街 角 でも 簡 単 に 売 ることができたし いざ 官 憲 の 手 入 れなどの 時 にはただちにそれを 隠 す ( 田 辺 佐 藤 1995 : 100)ためである 一 方 で 印 刷 ビラはサイズが 大 きくても 一 枚 刷 りであったために 簡 単 に 小 さく 折 りたたむことが 可 能 だ たたんで 小 さく してしまえば 見 つかりにくい このため 印 刷 ビラは 確 実 に 民 衆 の 間 に 広 まっ ていった このように 印 刷 ビラと 小 冊 子 は 形 態 が 異 なるものの 宗 教 改 革 者 の 理 念 を 広 めるという 点 において 同 等 の 意 味 を 持 っていた 1450 年 から 1550 年 の 時 期 にお ける 小 冊 子 について Schwitalla(1983)が 行 った 次 の 特 徴 づけは 小 冊 子 にも 印 刷 ビラにも 当 てはまるものであるとみなすことができる a) はじめから 綴 じられておらず 表 紙 が 付 けられていなかった b) より 大 きいテクストの 一 部 として 出 版 されずに 独 立 したテクストとし て 出 版 された c) それがある 特 定 の 読 者 層 に 向 けて 書 かれたとしても 根 本 的 には こと ばの 読 み 書 きができる 人 なら 誰 でもそれを 読 み そして 聞 いてよい とい う 意 図 とともに 配 布 された d) それが 受 け 手 に 対 して 特 定 の 意 向 と 見 解 を 伝 えようと 意 図 しているも のであるので 公 益 のための 議 論 をめぐる 時 局 にかなった 問 題 が 扱 われて おり 公 益 のために 社 会 の 重 要 な 問 題 を 解 決 することに 貢 献 しようとし た e) これらの 社 会 問 題 に 関 する 読 者 や 聴 衆 の 立 場 を 固 定 しようとした もし くは 変 えようとした そして 場 合 によっては 具 体 的 に 行 動 するように も しくは 行 動 をやめるように 要 求 した (Schwitalla 1983 : 14) 8) 例 えば 田 辺 佐 藤 (1995)に 収 められている 印 刷 ビラ 75 点 は カタログ 解 説 ( 田 辺 佐 藤 1995 : 116-141)の 記 載 によれば おおよそ 縦 30 センチから 40 センチ 横 20 センチから 30 センチ 程 のものである 9) 田 辺 佐 藤 (1995 : 100)を 参 照 4

3. 文 字 と 声 3.1 民 衆 と 文 字 ドイツでは 16 世 紀 に 入 っても 未 だに 書 籍 に 使 用 されていた 言 語 の 大 部 分 は ラテン 語 であった なぜなら 人 文 主 義 の 時 代 において ラテン 語 はさまざまな 学 問 における 言 語 であり ローマの 伝 統 を 基 盤 とした 法 律 制 度 における 言 語 であ ったからである 10) ドイツで 印 刷 された 書 籍 全 体 のラテン 語 書 籍 とドイツ 語 書 籍 との 割 合 は 1500 年 には ドイツ 語 によるものが 約 80 点 で 全 体 の 5% 未 満 で 残 りの 95% 強 はラ テン 語 で 印 刷 1518 年 においても ドイツ 語 によるものは 約 150 点 で 全 体 の 10% にすぎない ( 須 澤 井 出 2009 : 157) しかしながら 一 般 の 民 衆 が 話 す 言 語 は 当 然 ながらドイツ 語 であった この 時 代 は 修 道 院 や 学 校 などで 習 わなければ ラテン 語 はもちろんのこと ドイツ 語 でさえ 読 み 書 きをすることは 難 しかった さらに 当 時 は 読 み 書 きができるか どうかで 社 会 的 に 階 層 が 区 別 されていた 時 代 でもあった 11) 当 時 の 識 字 率 は 都 市 部 においてもおよそ 10%から 30%ほどで 全 体 としては おそらく 5%を 越 えることはないという 12) このように ほとんどの 民 衆 がまだまだ 文 字 とは 無 縁 であり また 第 2 章 で 述 べたように 書 籍 が 安 くなっていったとしても 一 般 の 民 衆 には 書 籍 を 買 う 余 裕 は ほとんどなかった 13) 文 字 を 持 たない 声 に 依 存 していた 当 時 の 民 衆 の 生 活 を オングは 一 次 的 な 声 の 文 化 primary oral culture(つまり まったく 書 くことを 知 らない 文 化 ) (オ ング 1991 : 5)と 呼 んでいる つまり 当 時 のほとんどの 人 々は 発 せられた 言 語 をとどめておく 術 を 持 っていなかったことになる 3.2 読 み 聞 かせの 機 能 それでは どのように 識 字 率 の 低 い 民 衆 に 印 刷 ビラや 小 冊 子 が 広 まったのだろ 10) ポーレンツ(1974 : 103)を 参 照 11) Scribner (1981 : 2)を 参 照 12) 同 上 同 ページを 参 照 13) 森 田 (1993 : 33)を 参 照 5

芹 澤 円 うか それは 読 み 聞 かせ によるものであった 15 世 紀 における 大 衆 の 読 書 には 主 として 三 つのやり 方 すなわち 自 分 の 目 で 読 むこと 他 人 の 朗 読 を 聴 くこと それに 書 物 を 眺 めることという 三 様 の 方 法 があった 最 初 のやり 方 はまったく 当 たり 前 であり 二 番 目 も 同 じことである しかし ここで 当 時 の 事 情 を 委 しく 説 明 するために 注 釈 しておかねばならないが 15 世 紀 に 出 た 大 衆 向 けの 書 物 には 目 で 読 むことも 耳 で 聴 くことも 書 物 の 内 容 を 取 り 入 れるやり 方 としてはまったく 同 等 であると 説 くものが 多 かったの である (エンゲルジング 1985 : 49) つまり 15 世 紀 から 確 立 されていた 読 書 の 形 態 が 16 世 紀 になってからも 使 用 され 印 刷 ビラと 小 冊 子 に 対 しても 取 り 入 れられたのである 確 かにオングが 言 うように 声 の 文 化 は 人 間 どうしのやりとりにずっと 大 きく 依 存 している (オング 1991 : 145) なぜなら 当 時 の 人 と 人 とのコミュ ニケーションは 言 語 を 介 しており また その 言 語 のコミュニケーションは さらなる 人 々を 結 びつけて 集 団 にする (オング 1991 : 147) 力 を 持 っているか らだ しかしこれとは 逆 に 読 むことは 他 人 を 必 要 としない 単 独 の 行 為 である 読 書 についてオングはさらに 話 すことは 人 々を 一 体 にするが 読 むことは 聴 衆 の 一 体 性 をくずすと 述 べている 14) そうであるならば 大 衆 に 印 刷 ビラや 小 冊 子 を 声 ( 音 声 )を 用 いて 読 み 聴 かせる ことで 聴 衆 の 一 体 感 が 生 みだされ 一 度 に 宗 教 改 革 者 の 意 図 を 伝 えることができることになる この 意 味 において 声 による 読 み 聞 かせを 必 要 とした 民 衆 の 識 字 率 の 低 さが 聴 衆 の 一 体 感 の 形 成 を 促 進 し 宗 教 改 革 に 有 利 に 働 いたと 言 えよう 読 み 聞 かせるという 行 為 は おおよ そ 声 の 文 化 だけにも 文 字 の 文 化 だけにも 属 すことのない いわばこの 二 つの 文 化 の ちょうど 間 に 位 置 する 存 在 ということになる 印 刷 ビラと 小 冊 子 の 読 み 聞 かせは 都 市 を 中 心 として 行 われていた 例 えば ウルム(Ulm)では 市 参 事 会 から 街 角 集 会 (Winkelversammlung)などという レッテルをはられ 苦 情 が 申 し 立 てられるほど 盛 んに 集 団 の 読 み 聞 かせが 行 わ 14) オング(1991 : 157)を 参 照 6

れていた 15) また 読 み 聞 かせだけでなく 民 衆 同 士 による 宗 教 に 関 する 語 り 合 いも 存 在 していた それは 宗 教 という 少 し 重 く 真 剣 なテーマでありながら 飲 み 屋 や 飲 食 店 において 語 り 合 われていた 16) それまで 宗 教 的 な 話 や 説 教 そし て 聖 書 の 内 容 などは 専 ら 教 会 に 行 き そこで 聖 職 者 から 一 方 的 に 話 してもらう という 方 法 が 一 般 的 だった ところが 印 刷 ビラが 広 まってから 民 衆 同 士 の 活 発 な 宗 教 に 対 する 話 し 合 いが 普 及 したのである 印 刷 ビラを 読 み 聞 かせるに 際 して 木 版 画 や 銅 版 画 による 挿 し 絵 が 果 たした 役 割 はきわめて 重 要 である 挿 し 絵 として 印 刷 ビラに 使 用 された 木 版 画 は 多 くの 場 合 本 文 の 内 容 を 端 的 に 示 す[ ] 表 紙 や 挿 し 絵 ( 田 辺 佐 藤 1995 : 100) であった これはつまり 文 字 が 読 めずとも 単 に 木 版 画 を 見 ることによって 民 衆 がビラの 内 容 を 把 握 していた ということになる また 印 刷 ビラにおいて は どちらかといえば 木 版 画 が 主 体 となっている 場 合 が 多 ( 森 田 1993 : 35)く 聴 衆 に 印 刷 ビラを 読 み 聞 かせる 際 には まさに 紙 芝 居 のように 木 版 画 をみせな がら 伝 達 すべき 内 容 を 解 説 した ( 同 上 同 ページ)と 考 えられている このよう に 口 頭 でのコミュニケーションと 視 覚 を 利 用 したコミュニケーションの 両 方 を 用 いることで 聞 き 手 によりわかりやすく 印 刷 ビラの 内 容 を 伝 えようとした のである 次 に 印 刷 ビラの 分 析 を 具 体 的 に 行 っていくことにする 4. 印 刷 ビラ ヨハン フス の 分 析 4.1 基 本 情 報 とテクスト この 章 で 分 析 対 象 とする 印 刷 ビラの 基 本 情 報 とテクストは 次 の 通 りである a. タイトル : Johann Hus / ヨハン フス b. 作 者 : 不 詳 c. 年 17) 代 : 1546 年 頃 d. 翻 訳 : 田 辺 幹 之 助 による 翻 訳 を 元 に 筆 者 が 検 討 を 加 えて 再 度 翻 訳 し 直 した 15) Scribner (1981 : 68)を 参 照 16) 同 上 同 ページを 参 照 17) 1546 年 はルターが 没 した 年 である 7

芹 澤 円 < 図 像 > 資 料 1 出 典 : 田 辺 幹 之 助 佐 藤 直 樹 ( 編 ) (1995) ゴーダ 市 美 術 館 所 蔵 作 品 に よる 宗 教 改 革 時 代 のドイツ 木 版 画 国 立 西 洋 美 術 館. 8

< 言 語 テクスト> (ドイツ 語 の 言 語 テクストは 筆 者 が 文 字 に 起 こした オリジナルの 右 端 が 一 部 切 れているため 文 字 が 判 別 できない 箇 所 については 筆 者 が 前 後 関 係 等 から ドイツ 語 の 再 構 成 を 試 み []を 使 用 して 記 した ) 5 10 15 20 25 Johann Huss Als man thet schreiben Tause[nd Jar] Vierhundert funfftzehn furwar Nach der geburt des Herrn Chr[isti] Wart zu Costnitz auffm Concili Verbrennet / der viel heilig man Johan Hus das er nicht nam an Die abgottisch kirch zu Rom Welche vom Teuffel vrsprung no[m] Er sprach ich gleub allzeit allein Ein Christlich kirch in gemein Welche allein in Christum gleubt Jn welcher Christus ist das heu[bt] Vnd nicht der Babst der Antechri[st] Darumb er wart zur selben frist Vons Sathans Sinagog verbr[ant] War versammelt aus allem landt Dieser Johannes Hus gantz fre[y] Sagt an seim end ein Prophecey Sprach itzt ein Gans ihr braten Vber hundert jar das halt in hut[ 不 明 ] So wert kommen ein weisser sch[wan] Den wert ihr vngebraten lan Wert lieblich singen inn die welt Martinus Lutherus wart geme[lt] Welchen im Geist der heilig man Gesehen hat gantz lobesan Das der solt kommen in dem Ge[ist] ヨハン フス 主 キリストの 誕 生 後 まことに 1415 年 が 記 された 時 コンスタンツにおける 会 議 にて 至 聖 の 人 ヨハン フスが 焚 刑 にあった 彼 は 悪 魔 に 由 来 する 偶 像 崇 拝 のローマ 教 会 を 受 け 入 れなかった 彼 は 言 った 常 に 普 遍 的 なキリスト 教 会 のみを 信 じ る その 教 会 はキリストのみを 信 じ キリストが 長 であり 反 キリストである 教 皇 が 長 ではない それ 故 に 彼 はその 時 に サタンのシナゴーグによって 焼 かれた あらゆる 国 から 集 まった 人 々に 向 かっ て このヨハン フスは 堂 々と 自 身 の 終 わりにあたって 預 言 を 述 べて こう 言 った 今 あなた 方 は 一 羽 の 鵞 鳥 を 焼 くが 100 年 間 その 鵞 鳥 は 守 られる すると 1 羽 の 白 い 白 鳥 がやって 来 るで あろう あなた 方 はその 白 鳥 を 焼 かせることは しないであろう 9

芹 澤 円 30 35 40 Elie welchs er hat beweist Reichlich vber die dreissig jar Gottes wort gepredigt lauter kla[r] Vns allen zu heil vnd fromen Biss ihn Gott hat hingenomen Jn stiller rhw ins Himels stath Wie Johan Hus weissaget hat Drumb seind diese Propheten b[ereit] Heilig zu halten alle zeit Obs schon dem bapst vnd seiner (1 語 欠 ) Vordreust /so bleibes doch ewig (1 語 欠 ) Zu Magdeburgk bey Jörg S( 欠 ) ier bey Sanct Peter. その 白 鳥 は 世 界 に 向 けて 快 く 歌 うだろ う こうしてマルティン ルターが 告 げ 知 ら された 聖 人 は 霊 の 中 に 誉 れ 高 く 見 てとった 彼 がエリアの 霊 のうちに 来 る 定 めにあ ることを そしてそのことを 彼 (ルター)は 証 明 し た 30 年 以 上 の 間 神 の 言 葉 を 偽 らず 明 確 に 伝 え 我 々 全 てに 平 安 と 敬 虔 をもたらした 神 がルターを 平 穏 な 安 らぎの 中 で 天 へ 召 すまで ヨハン フスが 預 言 したように だからこそこれらの 預 言 者 たちは 常 に 神 聖 にし 続 ける 覚 悟 がある たとえ 教 皇 とその(1 語 欠 )には 不 快 で あっても それはしかし 永 遠 にあり 続 ける(1 語 欠 ) マグデブルクにて イェルク S( 欠 ) により( 欠 )ザンクト ペーター 近 郊 4.2 分 析 と 考 察 図 像 ( 巻 末 資 料 1)はビラ 全 体 の 左 3 分 の 2 を 占 めている 中 央 には 黒 い 修 道 服 を 着 たヨハン フスが 横 向 き 姿 勢 全 身 で 描 かれている 右 手 には 紙 を 左 手 は 大 地 と 平 行 に 出 している 彼 の 両 側 には 一 本 ずつ 木 が 並 び その 両 方 に 天 使 がとまっているのが 見 える 図 像 下 には 木 の 根 元 にそれぞれ 白 鳥 と 焼 かれて いる 鵞 鳥 がいる その 鵞 鳥 は 首 を 紐 で 縛 られ 棒 につながれている 第 一 に 目 につくのは 修 道 服 である これは 服 装 による 権 威 付 けであると 言 え る 18) これによってビラを 見 る 側 に フスの 立 場 を 瞬 時 に 理 解 させると 共 に テ 18) チャルディーニ (2007 : 355)を 参 照 10

クストの 内 容 にも 神 の 言 葉 との 関 連 を 連 想 させ さらなる 権 威 を 付 属 させる 聞 き 手 は より 抵 抗 無 くテクスト 内 容 を 聞 き 入 れることにつながり 説 得 されや すい 状 態 になる では フスが 持 つこの 紙 は 何 を 意 味 するだろうか 例 えば 1521 年 や 1522 年 に 出 されたマルティン ルターの 肖 像 画 ビラをはじめとする 3 分 の 2 以 上 のルター 肖 像 画 ビラにおいて 彼 は 聖 書 を 手 にしている 19) これは 福 音 主 義 を 根 底 とするルターにとって 聖 書 が 彼 の 最 大 の 象 徴 であったと 同 時 に ドイ ツ 語 聖 書 を 完 成 させた 人 物 ということからだ 20) このように 考 えていくと この フスが 手 にする 紙 は 活 発 な 執 筆 活 動 を 象 徴 しているのではないかと 思 われる 現 に 哲 学 者 でもあるフスは 1412 年 にヨハネス 23 世 に 対 する 反 贖 宥 状 論 1413 年 には 教 会 について など 皇 帝 や 教 会 に 対 する 批 判 を 書 き 表 している つま り フスが 単 なる 聖 職 者 にとどまることなく 自 らの 生 命 を 危 険 にさらしながら も カトリック 教 会 の 腐 敗 を 積 極 的 に 訴 えたという 当 時 で 言 えば 100 年 以 上 も 前 の 事 実 を この 印 刷 ビラが 配 られた 時 代 の 民 衆 に 知 らしめるために フスに 紙 を 握 らせたと 考 えることができる 次 に 鵞 鳥 と 白 鳥 さらに 木 を 見 ていく これらは 言 語 テクストの 内 容 にあわ せて 描 かれたものだ 鵞 鳥 を 意 味 する 彼 の 名 前 はよくもじって 使 われて ( 田 辺 佐 藤 1995 : 140)いる これはチェコ 語 で 鵞 鳥 を husa と 言 うことからきている 1415 年 のコンスタンツ 宗 教 会 議 によって 焚 刑 にあった 様 子 をここでは 鵞 鳥 によ って 表 していることがわかる また テクスト 内 容 から 鵞 鳥 が 白 鳥 になって 蘇 る ことが 述 べられており 双 方 がフスを 表 している 可 能 性 がある さて この 二 羽 の 背 後 に 位 置 している 木 は 一 見 すると 図 像 における 単 なる 背 景 装 飾 とも 見 てと れる しかし こうも 考 えられないだろうか ここでの 木 は それぞれの 鳥 と 天 をつなぐ 一 本 の 梯 子 のような 役 割 を 果 たしている 鵞 鳥 の 場 合 は 死 後 に 神 に 召 さ れ また 白 鳥 の 場 合 は 生 のある 間 神 の 恩 寵 を 受 ける つまり フスが 神 との 永 遠 のつながりがあることを 表 し 神 から 認 められた 存 在 であることを 示 している 神 とのつながりを 表 すことは フスによるカトリック 批 判 の 活 動 が 正 しいもので あったことを 主 張 している ではここからは 言 語 テクストを 見 ていく まず 読 み 取 れない 単 語 を 除 いた 全 19) Scribner (1981 : 17)を 参 照 20) この 点 について Scribner(1981 : 16)はルターを a man of the Bible と 呼 んでいる 11

芹 澤 円 てにおいて 脚 韻 (Reim)が 使 用 されている 21) 読 み 聞 かせ が 行 われていた 背 景 を 考 えると 聞 きやすさを 得 るために 韻 が 踏 まれていたことは 容 易 に 想 像 が つく 5 行 目 では フスを viel heilig 至 聖 の と 装 飾 することで まずフスを 聖 人 化 し フス 自 身 に 対 する 権 威 付 けを 行 っている さらには 火 刑 の 判 決 は 間 違 いであったこと ひいてはカトリック 教 会 そのものが 間 違 いであることを 主 張 し カトリック 教 会 に 対 する 信 頼 を 聞 き 手 から 喪 失 させようとしている 7 行 目 から 8 行 目 では ローマ カトリック 教 会 (Rom)を 悪 魔 (Teuffel)と 関 連 づけている 悪 魔 は 元 来 聖 書 においてキリストの 敵 とされてきた そのため 当 時 の 民 衆 に とって 一 番 身 近 な 悪 を 代 表 しているのが 悪 魔 だ 悪 魔 は 悪 の 中 でも 絶 対 的 な 位 置 を 占 め 慈 悲 の 余 地 を 与 えない そのため カトリック 教 会 の 堕 落 を 絶 対 に 許 さない 立 場 を 表 明 すると 同 時 に カトリック 教 会 = 悪 魔 というイメージを 聞 き 手 に 植 え 付 けようとしている 9 行 目 には allzeit allein 常 に~のみ という 頭 韻 (Alliteration)を 含 む 誇 張 法 (Hyperbel)が 使 われている 頭 韻 により 聞 き 手 にはリズム 良 く 聞 こえ さ らに 聞 き 手 である 民 衆 に 対 し 常 に 普 遍 的 なキリスト 教 会 のみ と 述 べることで 後 述 されている 反 キリストからの 差 別 化 を 図 っている この 差 別 化 はまた 11 行 目 にもみられる allein にも 当 てはまることである 10 行 目 から 13 行 目 にかけて Christlich キリストの Christum キリスト Christus キリスト Antechrist 反 キリスト という 語 尾 変 化 もしくは 接 辞 を 含 んではいるものの キリスト の 意 味 をあらわす 単 語 が 反 復 (Tautologie)されている ここでは キリストと 反 キリストというコントラストをまず 明 確 に 示 すとともに 団 結 した 反 カトリッ ク への 認 識 を 高 めようとしている 19 行 目 から 24 行 目 まで フスの 預 言 内 容 が 諷 喩 (Allegorie)を 用 いながら 述 べられている ここで 登 場 するのが 図 像 にも 描 かれている 鵞 鳥 と 白 鳥 だ 鵞 鳥 がフスを 表 していることは 図 像 分 析 の 段 階 で 述 べたが ここではさらに 深 く この 二 羽 の 鳥 についてみていく 鵞 鳥 は 野 生 の 雁 を 飼 育 用 に 変 種 させたもので 21) 1 行 目 に 記 した Jar は オリジナルからは( 紙 の 切 断 のため) 読 み 取 ることができない が 同 時 代 の 文 献 である Gölitzsch (1563 : 1) に Als man thet beschreiben Tausent Jar / fünff hundert Dryvndsechßig zwar と 記 されていることから この 言 い 回 しを 類 推 し Jar を 補 っ た 脚 韻 の 関 係 からみても 次 の 行 末 の furwar と Jar はうまく 合 致 する 12

ある 雁 は 神 秘 的 な 預 言 能 力 を 持 つ 鳥 として 知 られており 22) この 預 言 とし ての 相 似 からも 雁 ( 鵞 鳥 )がフスに 当 てはめられたことは 想 像 がつく その 預 言 内 容 によれば 鵞 鳥 は 焼 かれても 100 年 後 に 蘇 る この 100 年 という 具 体 的 な 数 字 は フスが 火 あぶりにされた 年 から 100 年 と 考 えると 1515 年 となり 24 行 目 にあるように マルティン ルターをさしていることがわかる そうである ならば 蘇 った 白 鳥 はルターであることになる ではその 白 鳥 はなんであろうか 聖 書 という 観 点 から 述 べると 白 鳥 は 汚 れた 生 き 物 の 一 つとして 列 挙 されている にすぎず 特 別 な 意 味 は 付 加 されていない 23) キリスト 教 においては 深 い 意 味 のない 白 鳥 は ケルト 人 やゲルマン 人 たちが 伝 えるローカルな 神 話 伝 承 に ギ リシア 神 話 の 重 い 権 威 ( 上 村 1990 : 121)が 混 じりあって 今 日 に 至 るまでの 白 鳥 というシンボルを 形 成 してきた 輝 きをもつ 白 さや 太 陽 など 象 徴 するものは さまざまであるが ここで 興 味 深 いのは 錬 金 術 との 関 わりだ 4 段 階 に 分 かれて いる 賢 者 の 石 の 工 程 のうち それぞれが 色 と 鳥 のコードで 説 明 される その 3 段 階 目 が 白 鳥 による 白 の 過 程 であり 白 く 輝 く 水 銀 が 他 の 金 属 と 素 早 く 結 びつ く 性 質 が 白 鳥 の 白 い 翼 と 連 想 されたことによる この 白 鳥 の 段 階 を 経 ると 不 老 不 死 の 石 を 得 ることが 出 来 る 24) この 不 老 不 死 の 概 念 は 最 終 行 にある ewig 永 遠 に とも 関 係 する さらに 錬 金 術 に 関 連 するのは 雁 も 同 じである ギリシア 人 やケルト 人 の 信 仰 では 雁 は 人 類 に 鉄 の 作 り 方 を 教 えたとして 秘 伝 を 授 ける 鳥 とみなされていた 25) その 上 錬 金 術 はカトリック 教 会 においては 異 端 と 見 な されていた 霊 的 錬 金 術 師 は 賢 者 の 石 をキリストと 同 一 視 するのみならず 自 分 自 身 をもこ の 両 者 と 同 一 化 していく ここに 異 端 性 が 含 まれていることは 明 らかである ル ターは 実 際 の 効 用 のためにも またキリスト 教 の 教 義 を 検 証 するためにも 錬 金 術 を 称 えた 数 少 ない 高 位 の 教 会 人 のひとりである (エリアーデ 2002 : 471) 22) クレベール(1989 : 116)を 参 照 23) ミルワード(1992 : 322)を 参 照 24) 錬 金 術 については 村 上 (1990 : 127-128)を 参 照 25) この 点 については クレベール(1989 : 117)を 参 照 13

芹 澤 円 この 点 においても カトリックとルター 派 の 違 いを 明 らかに 示 す 為 に 錬 金 術 を ほのめかしていると 考 えることができる このようにみていくと 鵞 鳥 と 白 鳥 の 諷 喩 の 根 底 には 民 間 信 仰 と 錬 金 術 とい う 科 学 の 背 景 があるように 思 われる 信 仰 はそれを 信 じる 者 にとっては 権 威 とな り 科 学 的 証 明 も 権 威 を 持 つものである この 二 つの 権 威 をテクスト 内 で 示 すこ とで 聞 き 手 に 対 してフスの 正 当 性 への 信 頼 を 絶 対 的 なものにしようとしたので はないかと 考 えることができる 30 行 目 と 32 行 目 における Gott 神 の 使 用 は キリスト 教 の 中 でも 最 高 の 権 威 付 けを 意 味 しており 神 と 共 にあるのはフスやルターの 側 であることを ここ でもう 一 度 聞 き 手 に 確 認 させる 効 果 を 持 っている 5. 印 刷 ビラ ルターの 敵 対 者 の 分 析 5.1 基 本 情 報 とテクスト この 章 で 分 析 対 象 とする 印 刷 ビラの 基 本 情 報 とテクストは 次 の 通 りである a. タイトル : ルターの 敵 対 者 b. 作 者 : 不 詳 c. 年 代 : 1521 年 頃 d. 翻 訳 : 森 田 安 一 14

< 図 像 > 図 像 資 料 2 出 典 : 森 田 安 一 (1993) ルターの 首 引 き 猫 山 川 出 版 社. < 言 語 テクスト> (ドイツ 語 の 言 語 テクストは 筆 者 が 文 字 に 起 こした ) 図 上 左 から Doctor Murnar. Argentinen. ムルナー 博 士 (Argentinen は 不 明 ) Doctor bock Emser Lips(e)n: Leo papa.r. Antichrist: Doctor Eckius. Ingelstatensis: Doctor Lemp. Tubingensis: 山 羊 博 士 ライプツィッヒのエムザー 教 皇 レオ 反 キリスト インゴールシュタットのエック 博 士 テュービンゲンのレンプ 博 士 図 中 央 左 から Lieber Eck nymm also von mir zu gut Ich waiß noch ein gutten Cardinals hut Magstu den Luther Concludieren Will ich dir dein Servkopff mit ziren 愛 するエックよ さあ わたしからの 好 意 を 受 けなさい 15

芹 澤 円 さらにわたしは 枢 機 卿 の 帽 子 についても 心 得 ている もしあなたがルターを 打 ち 負 かすことができれば わたしはその 豚 の 頭 をそれで 飾 ってあげよう Herr Löw all bübrey vnd faule sachen Kan(n) ich durchs gelt widerumb gerecht mache(n) Mit meiner Sophistrey vnd grossem geschray Haw ich den Luther vnd Gots wort entzrvay レオ 様 すべての 破 廉 恥 な 行 為 といかがわしい 問 題 を わたしは 金 でふたたび 正 しくしてみせます 多 くの 詭 弁 と 仰 々しい 叫 び 声 で わたしはルターと 神 の 言 葉 とをずたずたにわってみせます 図 下 左 から Der Bapst wolt auch ein mauser ban Des nam sich Doctor Murnar an. M( 読 み 取 り 不 可 能 ) auß hin vnd her vnd widerumb Noch ist der Luther gerecht vnd frumm. 教 皇 はネズミも 一 匹 破 門 にしたがっている ムルナーがその 仕 事 をひきうけ あちこちあちこち 動 いたけれど ルターはなお 正 しく 信 仰 深 いのだ Ach junckfraw Bock wie stinckst so hart Nach keu(n)schart in deim langen part. Ich glaub daß dein Theologey Sey merers teyls bocksteitzlerey. ああ 処 女 の 山 羊 さんよ なんでそんなに 強 烈 に 臭 うのか お 前 の 長 い 髭 のなかに 貞 節 の 匂 いが わたしは 思 う お 前 の 神 学 は 16

ほとんど 山 羊 のダラダラ 話 学 だ Der irdisch Got vnd Antichrist Hat vil gepraucht bißher der list. Mit gewalt und geytz falsch Curtisey Ach Christ von hymel mach vns frey. 地 上 の 神 反 キリストは これまで 多 くの 策 略 をめぐらしてきた 暴 力 吝 嗇 (りんしょく) 誤 った 佞 臣 (ねいしん)を 用 いて ああ 天 におられるキリストよ!わたしたちを 自 由 にしてください Recht wie ein Saw lebt Doctor Eck Wan er hat wein vnd eselweck. Sein Lo(g が 抜 けたと 考 えられる)ick thut probieren mer Dan(n) Bibel gschrifft vnd Christus ler. エック 博 士 はまさに 豚 のように 生 きている かれがワインを 飲 み 上 等 パンを 食 べるときには かれの 論 理 は 聖 書 やキリストの 教 え 以 上 に 多 くを 論 証 するという Herr Doctor Lemp Euangelist Mit neyd vnd zorn ein boser Christ. Er wuet vnd pilt recht wie ein hundt. Der gschrifft hat er gar wenig grunde. レンプ 博 士 は 巡 回 説 教 者 妬 みと 怒 り 狂 う 悪 しきキリスト 者 かれはまさに 犬 のように 猛 り 狂 い 吠 えたてるが かれの 主 張 はほとんど 聖 書 に 基 づいていない 17

芹 澤 円 5.2 分 析 図 像 ( 巻 末 資 料 2)において 言 語 テクストは 上 下 段 にわかれて 書 かれており この 印 刷 ビラのおおよそ 7 分 の 4 ほどの 割 合 を 図 像 が 占 めている 一 番 上 に 書 かれているのは それぞれ 描 かれている 5 人 の 人 物 の 名 前 だ そしてその 5 人 と いうのがルターの 敵 対 者 達 だ しかし 頭 の 様 子 が 少 しおかしい 図 像 左 から 頭 が 猫 のトーマス ムルナー(Thomas Murnar) 山 羊 のヒエロニムス エムザー (Hieronymus Emser) ライオンのレオ 10 世 (Leo) 豚 のヨハン エック(Johann Eck) そして 犬 のヤーコブ レンプ(Jakob Lemp)だ これらの 動 物 は 単 に 何 の 理 由 も 無 く 当 てはめられたのではない まずムルナーの 図 像 から 分 析 する 彼 は その 名 前 がオノマトペとして 風 刺 的 にもじられた つまり Murnar の mur は 猫 の 鳴 き 声 であり 26) また nar は Narr という 愚 か 者 を 意 味 し 阿 呆 猫 と 同 じ 発 音 になると 皮 肉 られた 27) ムルナーは フランシスコ 会 の 修 道 士 であっ たため 修 道 服 を 着 ている また これはレオ 10 世 を 除 く 他 の 3 人 にも 当 てはま ることであるが 博 士 を 意 味 するベレー 帽 を 被 っている 28) さらに 口 にはね ずみを 一 匹 くわえているのだが これは 言 語 テクスト 内 で 言 及 されているように ルターを 表 したものだ そして 右 手 には 書 物 ( 聖 書 とは 言 いきれない)を 手 に している ムルナーは 桂 冠 詩 人 神 学 博 士 法 学 博 士 の 肩 書 きをもつ 一 方 市 井 に 交 わって 教 育 啓 蒙 布 教 活 動 ( 新 井 1984 : 6)を 行 い 教 育 的 啓 蒙 的 用 途 の 為 に 書 かれた 専 ら 散 文 的 な 著 述 類 と 時 代 に 共 通 する 性 格 として 教 訓 的 傾 向 を 強 く 帯 びるとはいえ 専 ら 韻 文 で 著 された 文 学 的 作 品 及 び 宗 教 的 意 図 が 前 面 に 出 る 論 争 的 文 書 ( 同 上 同 ページ)という 幅 広 い 著 作 活 動 を 行 っていた また ルター 同 様 非 常 に 高 い 教 育 を 受 け 言 語 の 面 そして 文 学 的 においても かな りの 才 能 を 持 っていた 29) このことを 示 すために 書 物 を 持 たせたと 考 えられる 山 羊 のエムザーは 彼 の 名 と 30) 彼 の 紋 章 に 山 羊 が 描 かれていたことに 由 来 して いる 31) また 牡 山 羊 はきつい 体 臭 や 不 潔 さ あからさまな 獣 性 を 持 ち 32) さら 26) Scribner(1981 : 74)を 参 照 27) ムルナーの 名 のもじりについては 森 田 (1993 : 230)を 参 照 28) Scribner (1981 : 15)を 参 照 29) Nitta (2008 : 174)を 参 照 30) Scribner (1981 : 74)を 参 照 31) 同 上 同 ページと( 森 田 (1993 : 155)を 参 照 32) クレベール(1989 : 77)を 参 照 18

に 中 世 においては 悪 そのものに 置 き 換 えられ 古 典 的 な 悪 魔 をあらわす 図 像 は 山 羊 の 角 と 足 を 持 っている 33) ここからエムザーに 対 し 悪 魔 の 印 象 も 付 随 させる ことができる エムザーは 右 手 に 紙 を 持 っている これは 当 時 彼 が 教 父 そし てエラスムスの 諸 著 書 の 翻 訳 者 として 認 められていたこと 34) そして 1520 年 から 27 年 にかけてルターの 個 々の 著 作 に 対 し 多 くの 反 論 文 書 を 書 いたこと 35) など の 執 筆 活 動 を 示 唆 するものとして 考 えてよいだろう 次 に 中 央 のレオ 10 世 だが これは Leo がラテン 語 でライオンを 意 味 すること またその 残 忍 さが ライオンと 同 義 として 考 えられた 結 果 だと 言 える 36) 教 皇 レ オ 10 世 は 豪 華 な 生 活 を 思 わせるきらびやかな 洋 服 を 身 にまとっている また 頭 には 教 皇 を 象 徴 する 三 重 冠 を 被 り 手 には 王 笏 を 持 っている このレオ 10 世 は 1520 年 に 教 勅 によってルターに 破 門 警 言 し 翌 1521 年 にはルターを 破 門 した 張 本 人 である 37) エックについては 諸 説 あるようだ 彼 の 名 Eck を 様 々にもじり 例 えば Keck として 向 こう 見 ずな Dr. Eck としてそこから Dreck が 導 き 出 され 汚 物 ふ ん 泥 を 連 想 させた もしくは Geck として うぬぼれ 屋 気 どり 屋 などと いう 揶 揄 があったそうだが 一 番 有 力 なのは Eck から Ecker という どんぐり の 単 語 を 結 びつけ どんぐりを 食 べる 動 物 つまり 豚 を 当 てはめたものだ 38) 左 手 にはどんぐりを 握 っているため 39) Ecker というもじりがこの 印 刷 ビラにおい て 示 唆 されていることは 間 違 いないだろう 豚 は 本 質 的 に 汚 い 動 物 とされ 40) れは 旧 約 聖 書 における 汚 れた 動 物 として 特 徴 づけられている 41) 42) 考 えられる さらに どんな 餌 でも 大 量 に 呑 み 込 むという 豚 の 能 力 そ ことに 関 わると も 含 めて 豚 の 汚 さと どんな 物 でも 構 わず 取 り 込 もうとする 貪 欲 な 姿 勢 を エックに 重 ね ている 33) クレベール(1989 : 79)を 参 照 34) シュトゥッペリヒ(1984 : 356)を 参 照 35) キリスト 教 人 名 辞 典 (1986 : 285)を 参 照 36) Scribner (1981 : 75)と 森 田 (1993 : 196)を 参 照 37) キリスト 教 人 名 辞 典 (1986 : 1850)を 参 照 38) エックの 名 のもじりについては 森 田 (1993 : 158)を 参 照 39) Scribner (1981 : 75)を 参 照 40) クレベール(1989 : 130)を 参 照 41) ミルワード(1992 : 322)を 参 照 42) クレベール(1989 : 130)を 参 照 19

芹 澤 円 最 後 にレンプだが 実 際 のところなぜ 犬 が 使 用 されたのかはよくわかっていな い 彼 に 対 する 名 前 もじりの 揶 揄 はある それは Lemp を Lumpen とし ぼろ がらくた とした しかし 犬 とはやはり 結 びつかない 43) Scribner (1981) はこ の 印 刷 ビラにおいて レンプは 手 に 持 つ 骨 に 関 して 喧 嘩 好 きでやかましく 口 論 する 噛 みつく 野 犬 として 描 かれていると 述 べている 44) 確 かに 神 話 の 世 界 では 犬 は 攻 撃 的 な 性 格 を 持 つ 動 物 として 描 かれ 続 けており 45) この 性 格 とレンプの 性 格 を 同 一 視 していると 考 えられる ここまで 見 てきてわかったことは 図 像 全 体 にあるちぐはぐさである 敵 対 者 の 5 人 にはそれぞれ 修 道 服 を 着 せ ベレー 帽 をかぶせ またレオ 10 世 には 豪 華 な 衣 装 を 着 せている さらに きらびやかさを 増 す 額 縁 まで 描 く 一 方 で 5 人 の 頭 は 動 物 に 置 き 換 えられ ここでの 大 きなコントラストが 図 像 の 中 に 滑 稽 さと 皮 肉 を 生 んでいる では 今 度 は 言 語 テクストに 目 を 向 ける ルターの 敵 対 者 の 紹 介 ではまず ムル ナーとエムザー そしてエックとレンプが それぞれ 脚 韻 を 踏 んでいる レオ 10 世 だけがどちらの 脚 韻 とも 合 わないが そうすることで ここではかえって 目 立 っている これはあたかも 彼 の 名 前 を 強 調 させることで レオ 10 世 が 5 人 の 中 でも 特 に 一 番 の 悪 者 であることを 示 しているようだ ムルナー 博 士 に 記 述 され ている Argentinen は 何 を 示 しているのかは 不 明 だ また エムザーは 初 めはル ターに 対 し 友 好 的 であったものの 1519 年 のライプツィヒ 討 論 会 後 は 敵 対 関 係 と なった 46) この 討 論 会 をきっかけとしたために Lips(e)n と 修 飾 したようだ 次 にレオ 10 世 には Antichrist 反 キリスト と 記 述 されている ここで 明 確 に カ トリック 教 会 の 教 皇 はキリストとは 真 逆 の 存 在 であることを 主 張 している また 聞 き 手 は 我 々こそが 正 しいキリスト 教 徒 であるという カトリック 教 会 との 差 別 化 を 図 っている 次 にエックの 名 前 を 見 てみる ライプツィヒ 討 論 会 はルタ ーとエックのための 討 論 であり 当 時 エックはインゴルシュタット 大 学 の 教 授 で あった 47) ことから Ingelstatensis と 修 飾 されたと 考 えることができる またレンプ 43) レンプの 名 のもじりについては 森 田 (1993 : 164)を 参 照 44) Scribner (1981 : 75)を 参 照 45) クレベール(1989 : 23)を 参 照 46) 藤 代 (2006 : 138)を 参 照 47) 藤 代 (2006 : 138)とシュトゥッペリヒ(1984 : 355-6)を 参 照 20

もテュービンゲン 大 学 教 授 であり 48) このことから Tubingensis を 使 用 したと 言 え る では 次 に 図 の 中 央 部 分 を 見 ていく まず 気 がつくのは ここからはどの 言 語 テ クストにも 2 つずつの 脚 韻 が 使 用 されているということだ 左 側 のテクストはレ オ 10 世 からエックに 対 するテクストであり それは 1 行 目 に 使 われている Lieber Eck 愛 するエックよ という 呼 びかけ 表 現 の 中 にうかがえる 2 行 目 には 枢 機 卿 の 帽 子 がメトノミー(Metonymie)として 使 用 されており その 帽 子 はここでは 枢 機 卿 の 地 位 を 意 味 している また この Cardinals 枢 機 卿 も 3 行 目 にある Concludieren 打 ち 負 かす もラテン 語 法 (Latinismus)の 使 用 である 49) 当 時 は 学 識 のある 者 は 皆 ラテン 語 を 使 用 していた ここでラテン 語 法 を 用 いることで レオ 10 世 のことばの 中 に 上 流 階 級 であることを 示 し 崇 高 さではなくて むしろ 皮 肉 を 表 している なぜなら ラテン 語 は 当 時 の 民 衆 にはほとんどなじみがなく 大 衆 性 もない ここではラテン 語 を 使 うような 民 衆 とは 階 級 が 違 う 人 であるか ら 民 衆 のことは 何 にもわかっていない という 意 味 にとらえられている つま り ラテン 語 法 によってレオ 10 世 と 聞 き 手 である 民 衆 の 距 離 をより 大 きくしよ うと 狙 ったのだ 図 像 分 析 の 中 で 述 べたように 豚 は 元 々 汚 らわしい 動 物 である 4 行 目 において 豚 の 頭 を 飾 ると 言 うことで 矛 盾 さに 強 調 を 置 き 聞 き 手 の 注 意 を 惹 きつけている これはつまり 残 忍 な レオ 10 世 によって 汚 れた 貪 欲 な エックでさえも 枢 機 卿 になることができてしまう ということを 民 衆 に 伝 えようとしている 今 度 は Herr Löw レオ 様 という 呼 びかけがあることから エックからレオ 10 世 に 対 するテクストであることがわかる 1 行 目 に all 全 ての を 使 って 次 に 続 くものを 誇 張 している 4 行 目 の Haw は hauen わってみせる の 変 化 形 であ る これは 非 常 に 乱 暴 な 単 語 であり 野 蛮 語 法 (Barbarismus)に 含 むことができ る カトリック 教 会 を 擁 護 する 知 識 ある 大 学 教 授 という 表 の 顔 に 対 し 彼 の 内 面 は 非 常 に 野 蛮 であり 教 養 が 低 いことを この hauen を 使 うことで 暴 きだそうと していると 考 えられる ここから 図 像 の 中 で 一 番 下 に 位 置 しているテクストの 分 析 を 行 っていく こ 48) 森 田 (1993 : 162)を 参 照 49) ラテン 語 法 については ラウスベルク(2001 : 77)を 参 照 21

芹 澤 円 れは 一 番 上 のテクストと 同 様 に ルターの 敵 対 者 たちが 描 かれている 真 下 に 位 置 したテクストが その 人 物 の 説 明 となっている では 左 から 順 に 見 ていく 最 初 はムルナーに 対 するテクストである 3 行 目 に hyn vnd her vnd widerumb あちら こちら と 記 述 されており 冗 語 法 (Pleonasmus)と 言 ってよいだろう ムルナー はルターを 捕 まえるために 俊 敏 な 猫 と 同 様 必 死 にことを 進 めたが ルターを 未 だ 捕 まえられない 様 子 が 強 調 されている つまり ルターには 責 めるべき 事 柄 が 見 つからず 4 行 目 に 書 かれているように 彼 が 常 に 正 しい 行 いをしていること を 強 調 する 効 果 を 持 っている 次 にエムザーを 見 ていく 1 行 目 の 最 初 に Ach ああ という 感 嘆 法 (Ausruf) が 使 用 されている 感 嘆 法 による 情 動 は うわべだけのものであるから 50) 1 行 目 と 2 行 目 に 対 する 皮 肉 への 強 調 と 考 えられる 山 羊 は 淫 蕩 な 性 質 (クレベール 1989 : 79)を 持 つものとしても 知 られており 1 行 目 において Bock オスヤギ を junckfraw 処 女 と 修 飾 する 矛 盾 語 法 (Oxymoron)により さらにエムザー の 本 来 のだらしない 生 活 を 聞 き 手 に 知 らせようとしている これは 2 行 目 にある keu(n)schait 貞 節 にも 当 てはまる 次 のテクストはレオ 10 世 に 対 するものだ ここでも 1 行 目 に Antichrist 反 キ リスト とレオ 10 世 を 名 付 け 聞 き 手 にもう 一 度 レオ 10 世 のキリストとは 真 逆 の 位 置 づけを 確 認 させている これにより Der irdisch Got 地 上 の 神 は 本 来 Got という 単 語 が 持 つキリスト 教 における 最 高 権 威 の 地 位 を 奪 われているだけで なく レオ 10 世 が Antichrist の 中 の Got という 最 も 軽 蔑 すべき 存 在 であること を 示 している 1 行 目 のテクストで 聞 き 手 に 対 するレオ 10 世 への 信 頼 を 根 絶 しよ うとしている また 3 行 目 には gewalt vnd geytz falsch Curtisey 暴 力 吝 嗇 誤 っ た 佞 臣 というように 列 挙 されている これまでレオ 10 世 がいかに 多 くの そし て 誤 った 行 為 を 反 キリスト として 行 ってきたかということを 列 挙 すること で 強 調 している 4 行 目 の 最 初 には エムザーのテクスト 1 行 目 で 使 用 されたよ うに Ach ああ という 感 嘆 法 が 皮 肉 的 に 用 いられている さらに Christ von himel 天 におられるキリスト は 1 行 目 の Der irdisch Got vnt Antichrist 地 上 の 神 反 キリスト と 対 比 的 に 置 かれており 聞 き 手 に 天 にいるキリストこそが 真 のキ リストであることを 強 調 する 効 果 を 持 っている 50) プレット(2000 : 147)を 参 照 22

エックに 対 するテクスト 1 行 目 には Recht wie ein Saw まさに 豚 のように と 述 べられ 直 喩 (Vergleich)が 使 用 されている さらに recht まさに で 修 飾 す ることでより 強 調 し その 信 憑 性 を 高 めようとしている 図 像 分 析 で 豚 の 性 質 に もふれたが テクスト 内 で 明 確 に 豚 とエックの 貪 欲 さの 共 通 性 を 直 喩 を 使 って 述 べることで 聞 き 手 へのより 的 確 なエックの 性 格 理 解 を 促 そうとしている 最 後 にレンプに 関 するテクストを 見 る 2 行 目 には Christ キリスト 者 とあ るが それを 修 飾 しているのが boser 悪 しき であり さらに Mit neyd vnd zorn 妬 みと 怒 り 狂 う で 修 飾 している ここでレオ 10 世 のように Antichrist と 記 さないのは キリスト 者 を 装 った 悪 も 存 在 する ということを 表 すためではな いかと 考 えられる さらに 3 行 目 では エックのときと 同 じように recht wie ein hundt まさに 犬 のように と 直 喩 を 使 い 犬 の 攻 撃 性 や 凶 暴 性 と レンプの 性 格 が 関 連 していることを 表 している 6. 結 び 以 上 2 種 類 の 印 刷 ビラを 分 析 してきたが 図 像 と 言 語 テクスト 双 方 の 随 所 に レトリックの 手 法 が 存 在 していることが 明 らかになった しかし どの 印 刷 ビラ も ただ 単 にレトリックがいくつも 集 積 しているだけではなく それぞれが 有 機 的 に 関 連 し 合 っている 1 番 目 に 分 析 をおこなった ヨハン フス の 印 刷 ビラは カトリック 教 会 に 対 し 自 らの 命 をかけて 批 判 をしつづけたフスを 題 材 として 事 実 を 述 べることで フスの 正 当 性 ひいてはプロテスタントとしての 宗 教 改 革 者 達 の 主 張 の 正 当 性 を 伝 えようとしている その 正 当 性 は 古 くからの 民 間 信 仰 と 科 学 的 権 威 によ って 裏 付 けられることでさらに 高 まる また Christ や Gott の 多 用 も 非 常 に 効 果 的 と 言 える キリスト 教 が 生 活 の 基 盤 であったとも 言 える 当 時 の 民 衆 は キリ ストの 名 や 神 という 表 現 が 関 連 しているだけで 権 威 をもったものと 感 じ ある 種 盲 目 的 に 信 用 していたのであろう そして 同 じような 語 彙 を 反 復 させること でより 聞 きやすさを 与 えた なぜなら 反 復 は 生 のリズムそのもの ( 瀬 戸 2002 : 105)であり 脈 拍 呼 吸 一 歩 一 歩 活 動 と 休 息 ( 同 上 同 ページ)だからだ さらに これとは 逆 の 効 果 を 狙 ったものが Antichrist や Teufel とカトリック 教 会 を 結 びつける 方 法 である このように 明 確 な 対 比 を 用 いることで 聞 き 手 により 23

芹 澤 円 強 く 印 象 づけることができる フスの 印 刷 ビラには 事 実 を 根 底 にしっかりと 据 えて 論 理 的 に 民 衆 を 説 得 しようという 性 格 を 見 てとることができる 2 つ 目 の 印 刷 ビラ ルターの 敵 対 者 では まず 図 像 に 娯 楽 性 を 多 く 含 んでい ることがわかる 5 人 の 敵 対 者 に 動 物 の 頭 をさせることで 笑 いを 誘 う 要 素 とし また 少 々グロテスクさも 加 わえられている インパクトのあるものは 記 憶 への 手 助 けとなることから 51) 人 々を 楽 しませながらこの 印 刷 ビラの 印 象 づけを 行 って いる また この 動 物 の 頭 を 仮 面 と 捉 えることもできる 樋 口 によれば 仮 面 が 人 格 を 支 配 ( 樋 口 2005 : 20)し 仮 面 は 人 格 そのものである ( 同 上 同 ページ) まさにこれらの 動 物 の 仮 面 は 顔 を 覆 い 仮 面 の 下 にある 本 当 の 顔 を 隠 すという 機 能 を 持 っていながら ルターの 敵 対 者 5 人 そのものの 姿 を 表 している のだ さらに 樋 口 によれば 仮 面 を 使 用 することで 隠 すことの 中 に 裏 返 され た 誇 張 法 の 一 端 を 見 る ( 同 上 : 27)ことができる つまり 5 人 の 敵 対 者 に 見 合 った 仮 面 を 被 せることで 誇 張 法 の 働 きが 生 まれ かえってそれぞれ 5 人 の 本 性 を より 際 立 たせて 表 現 することができる さて 言 語 テクストに 目 を 向 けると 揶 揄 が 目 立 つ この 攻 撃 的 な 姿 勢 や 文 体 は 当 時 の 16 世 紀 の 社 会 と 関 係 している 52) 当 時 宗 教 改 革 者 らは 勢 いをつけて きたものの 依 然 としてプロテスタント( 新 教 徒 )はカトリック 教 会 よりも 政 治 的 社 会 的 に 下 に 位 置 づけられていた 53) 不 利 な 立 場 にあった 宗 教 改 革 者 らは カトリック 教 会 の 権 威 と 秩 序 をくつがえすために 教 会 の 地 位 を 強 く 打 ちのめす 必 要 があった 54) そのため 宗 教 改 革 者 たちはカトリック 教 会 側 を 感 情 的 に 刺 激 す るよう 挑 発 的 に そして 直 接 的 に 述 べていた 55) このような 社 会 的 影 響 が 印 刷 ビラにも 反 映 され カトリック 教 会 を 大 いにあざける 印 刷 ビラが 登 場 した ま た その 風 刺 性 は 動 物 メタファーを 多 く 織 り 交 ぜたものでもあり テクスト 内 に おいても 娯 楽 性 が 存 在 すると 同 時 に 皮 肉 で 満 ち 溢 れている この 印 刷 ビラで は 娯 楽 的 要 素 で 民 衆 を 惹 き 付 け 積 極 的 なカトリック 教 会 への 過 度 の 揶 揄 をも って 民 衆 に 教 会 の 腐 敗 を 知 らしめようとしたと 言 える 51) オング(1991 : 149-150)を 参 照 52) Nitta(2008 : 183)を 参 照 53) 同 上 同 ページを 参 照 54) 同 上 同 ページを 参 照 55) 同 上 同 ページを 参 照 24

このように 分 析 してきた 2 つの 印 刷 ビラはそれぞれ カトリック 教 会 = 敵 と 宗 教 改 革 者 = 味 方 という 区 別 をつけ プロテスタントである 宗 教 改 革 者 の 正 当 性 を 主 張 し また カトリック 教 会 の 腐 敗 を 批 判 している 聴 衆 を 納 得 させ るには 激 しい 感 情 をかき 立 てること (プレット 2000 : 20)が 必 要 だ つまり 宗 教 改 革 者 達 は まず 少 しでも 多 くの 民 衆 の 心 を 宗 教 改 革 へと 動 かすことを 目 的 に 民 衆 の 心 を 掻 き 立 てようとした 彼 らの 図 像 とテクスト 双 方 におけるレト リックの 手 法 が 印 刷 ビラの 内 容 を 何 倍 も 効 果 的 に 民 衆 に 示 して 見 せたのだ 参 考 文 献 青 山 四 郎 (1984) ルカス クラナッハとルター グロリヤ 出 版. 新 井 皓 士 (1984) トーマス ムルナーに 関 する 一 考 察 文 化 史 と 文 学 史 の 狭 間 ケンキュウ 備 忘 一 橋 大 学 研 究 年 報. 人 文 科 学 研 究 第 23 巻 S. 6-33. ブリックレ, ペーター (1991) ( 田 中 真 造, 増 本 浩 子 訳 ) ドイツの 宗 教 改 革 教 文 館. チャルディーニ, ロバート B. (2007) ( 社 会 行 動 研 究 会 訳 ) 影 響 力 の 武 器 な ぜ 人 は 動 かされるのか 誠 信 書 房. エリアーデ, ミルチャ 主 編 ローレンス, サリヴァン E. 編 (2002) ( 鶴 岡 賀 雄, 島 田 裕 巳, 奥 山 倫 明 訳 ) エリアーデ オカルト 事 典 法 蔵 館. エンゲルジング, ロルフ (1985) ( 中 川 勇 治 訳 ) 文 盲 と 読 書 の 社 会 史 思 索 社. F. A. Brockhaus (2006): Brockhaus die Enzyklopädie in 30 Bänden. Band 20. Leipzig. フェーブル, リュシアン/マルタン, アンリ ジャン (1985) ( 関 根 泰 子, 長 谷 川 輝 夫, 宮 下 志 郎, 月 村 辰 雄 訳 ) 書 物 の 出 現 上 下 巻 筑 摩 書 房. フランス, ピーター (1992) ( 平 松 良 夫 訳 ) 聖 書 動 物 事 典 教 文 館. 藤 代 幸 一 (2006) ヴィッテンベルクの 小 夜 啼 鳥 ザックス デューラーと 歩 く 宗 教 改 革 八 坂 書 房. 樋 口 桂 子 (2005) メトニミーの 近 代 三 元 社. Gölitzsch, Johannes (1563): Ein erschreckliche Geburt/ vnd augenscheinlich Wunderzeichen des Allmechtigen Gottes/ so sich auff den 4. tag des Christmonats/ dieses 1563. Jars/ in der nacht/ in dem Dorff Werringschleben/ Jn eines Erbarn hochwei- 25

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Rhetorische Mittel der Überredung in Flugblättern der Reformationszeit MADOKA SERIZAWA Gegenwärtig gibt es viele verschiedene Informationsmedien. Wir können gleich ein Ereignis, welches in einem fernen Land passiert ist, erfahren und können sogar, z.b. durch eine Rundfunkübertragung, ein lebendiges Gefühl davon bekommen. Die besondere Form des Massenmediums, einer Menschenmenge Informationen mitzuteilen, geht schon bis auf die Reformationszeit zurück. In der vorliegenden Arbeit untersuche ich das damals neue Papiermedium und analysiere Flugblätter in Hinsicht auf visuelle Informationen und in Hinsicht auf ihre Sprachformen als effektvolle Mittel der Überredung. Ohne die Erfindung der Drucktechnik wäre wohl überhaupt keine Reformation passiert. Nach der Erfindung des Typendruckes durch Johannes Gutenberg um 1440 nahm die Produktion von Druckerzeugnissen sprunghaft zu, und auch die zunehmende Papierproduktion war davon beeinflusst. Wegen dieser beiden Hauptursachen konnte das einfache Volk damals Druckerzeugnisse einfacher und billiger erhalten. Das beachteten die Reformatoren, denn sie versuchten bald mittels Flugblätter zu reformieren. Sie verbreiteten ihre Ideen nicht nur durch den Text, sondern auch durch Holzschnitte oder Kupferdrucke und zwar vor allem als Flugblätter, die sowohl Bild- wie Textelemente umfassen. In dieser Arbeit analysiere ich auch den damaligen Prozentsatz der des Lesens und Schreibens Kundigen. Da dieser recht gering war, muss in Hinsicht auf die damalige Kultur von einer Stimmenkultur gesprochen werden, die ich in Verbindung mit den Flugblätter setze. Damals gab es nur wenige Schriftkundige: zum Beispiel betrug der Prozentsatz der Schriftkundigen sogar in einer Stadt nur ca. 10 bis 30 Prozent. Kurzum: Für den weitaus größten Teil des Volkes wurde das Leben von der Stimmenkultur bestimmt. Ich vermute, dass dieser historische Hintergrund bei der Struktur der Flugblätter 29

芹 澤 円 eine wichtige Rolle spielt, denn in vielen Flugblättern gibt es Hinweise auf das Vorlesen. Zum Beispiel haben die Reformatoren auf den Flugblättern häufig Holzschnitte gedruckt, um damit den Analphabeten die Möglichkeit zu geben, den Inhalt der Flugblätter zu verstehen. Außerdem haben sie oft die Texte in Reime gebracht, weil das sehr nützlich beim Vorlesen war und sich die Zuhörer die Reime leicht merken konnten. Ich habe weiter zu analysieren versucht, welche rhetorischen Mittel sowohl in den Zeichnungen bzw. Bildern und den Texten der Flugblätter benutzt werden. Zuerst bemerkte ich, dass die meisten Zeichnungen fast alle das darstellen, was im Textinhalt auch erwähnt wird. Das ist verständlich, denn die Zeichnung ist für Analphabeten die beste Information. Und wenn man sich die Texte ansieht, dann fällt die Verwendung des Reims ins Auge. In vielen Flugblatttexten werden Reime verwendet, die eine Funktion beim Vorlesen haben und damit Teil der Stimmenkultur sind. Weiter ist auffällig, dass in den Texten, viel mehr als ich erwartet hatte, rhetorische Mittel zu finden sind: Zum Beispiel gibt es Parallelismen, Antithesen, Hyperbeln usw. Häufig wird auch der Name von Christus erwähnt oder treten Bibel-Zitate auf. Damit wollte man sich wohl auf die göttliche Autorität berufen. Aber es gibt nicht nur ernste Flugschriften, sondern andere, die satirische Zeichnungen und spöttische Texte enthalten, die also zur Freude und Belustigung der Zuhörer und Leser dienten. Als Teil der oben erwähnten Stimmenkultur waren Flugschriften der Reformationszeit sehr populär. Diese Popularität machen die Flugblätter meiner Meinung nach zu einem tatsächlichen Massenmedium. Die Methode der Informationsübermittlung war aber, im Unterschied zu heute, dass sich die Menschen einander die Flugblätter vorlasen. Wenn die Reformatoren im Volk ihre Meinungen zu verbreiten versuchten, war es am wichtigsten, Texte und Bilder der Flugblätter auf rhetorisch wirksame Weise besonders effektvoll zu gestalten. 30