PowerPoint プレゼンテーション



Similar documents
<96DA8E9F81698D8791CC A2E786C73>

一般用漢方製剤の添付文書等に記載する使用上の注意の一部改正について_3

光 輪 はさみこども 園 学 校 保 健 安 全 法 ( 第 19 条 )に 準 ずる(H24.4 改 定 ) 病 名 感 染 しやすい 期 間 登 園 のめやす 症 状 ( 発 熱 全 身 症 状 呼 吸 器 症 状 )がある 期 間 インフルエンザ ( 発 症 前 24 時 間 ~ 発 病 後

Microsoft PowerPoint _GP向けGL_final

5 月 25 日 2 口 腔 咽 頭 唾 液 腺 の 疾 患 2 GIO: 口 腔 咽 頭 唾 液 腺 の 疾 患 を 理 解 する SBO: 1. 急 性 慢 性 炎 症 性 疾 患 を 説 明 できる 2. 扁 桃 の 疾 患 を 説 明 できる 3. 病 巣 感 染 症 を 説 明 できる 4

Microsoft Word - 通知 _2_.doc

<4D F736F F F696E74202D2093FA8FED906697C382C996F097A782C28ABF95FB2E707074>

<タイトル>DES被害の軌跡(1)

スライド 1

第37回 漢方で見える!聞こえる!(漢方)

アフターケア.indd

5 月 19 日 5 新 生 児 の 呼 吸 障 害 GIO: 新 生 児 期 に 生 じる 呼 吸 障 害 の 病 態 の 特 徴 を 説 明 でき 胸 部 XPから 診 断 できる SBO: 1. 新 生 児 呼 吸 障 害 の 病 態 に 基 づく 症 状 の 特 徴 を 説 明 できる 2.

平成24年度 福島県患者調査の概況(厚生労働省大臣官房統計情報部人口動態・保健社会統計課 保健統計室:H )

各論_1章〜7章.indd

スライド 1

頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

< F2D874491E682528FCD2091E DF C A2E>

Microsoft PowerPoint - 漢方講座.ppt

(Microsoft Word _10\214\216\222\262\215\270\203\212\203\212\201[\203X_\215\305\217I\215e.doc)

抗微生物薬安全性評価基準検討委員会 最終報告(確定版)

- 1 - 総 控 負 傷 疾 病 療 養 産 産 女 性 責 帰 べ 由 試 ~ 8 契 約 契 約 完 了 ほ 契 約 超 締 結 専 門 的 知 識 技 術 験 専 門 的 知 識 高 大 臣 専 門 的 知 識 高 専 門 的 知 識 締 結 契 約 満 歳 締 結 契 約 契 約 係 始

下 記 のような 体 調 変 化 はございますか? 目 のかゆみ 目 のまわりのかゆみ 目 薬 をさしたとき しみること 目 が 充 血 すること 目 が 見 えづらくなる もやがかかったように 見 えること 目 がころころする ショボショボする 涙 が 出 ること 目 のまわりが 黒 くなる まつ

5 月 27 日 4 子 宮 頸 癌 1 GIO: 子 宮 頸 癌 の 病 態 診 断 治 療 について 理 解 する SBO: 1. 子 宮 頸 癌 の 発 癌 のメカニズムや 発 癌 過 程 について 説 明 できる 2. 子 宮 頸 癌 および 前 癌 病 変 の 分 類 ついて 説 明 でき

科 目 名 生 理 学 Ⅱ 講 師 名 山 美 喜 子 開 講 期 前 期 後 期 通 身 体 の 正 常 な 機 能 を 国 家 試 験 の 出 題 内 容 と 関 連 付 けて 理 解 する 成 績 評 価 方 法 試 験 :00 点 受 講 態 度 :0 点 ( 減 点 方 式 ) 生 理 学

首 は 下 あ ご の 骨 の 下 か ら 鎖 骨 の 上 ま で 自 分 の 首 を 両 手 で は さ ん で お さ え て み ま し ょ う 師 首 っ て ど ん な 仕 事 を し て い る か な 子 頭 を の せ て い る 頭 を お さ え て い る 頭 を 動 か し

37 Vol Vol. 111 ノ ロ ゼ 称 最 称 末 梢 筋 肉 起 梗 塞 血 パ キ ソ 発 硬 化 脊 椎 小 変 進 筋 ジ ロ フ ィ 三 叉 例 消 化 吸 臓 種 様 臓 種 発 過 影 響 態 腰 潰 瘍 ピ ギ 鼻 顎 節 管 支 ぜ 26ペ ジ 覧 例 苦

愛 さんの 憂 鬱

●電力自由化推進法案

<4D F736F F F696E74202D2093FA8FED906697C382C996F097A782C28ABF95FB2E707074>

症 状 斑 点 赤 い- 血 熱 血 瘀 白 い- 血 虚 気 滞 発 疹 血 熱 風 風 熱 疱 水 痘 - 湿 熱 膿 疱 - 熱 風 団 ( 皮 膚 面 に 急 に 盛 り 上 がってくるもの)- 風 風 熱 風 寒 落 屑 熱 血 虚 びらん 湿 湿 熱 かさぶた 痂 皮 (かひ) 膿 がた

17 外 国 人 看 護 師 候 補 者 就 労 研 修 支 援 18 看 護 職 員 の 就 労 環 境 改 善 運 動 推 進 特 別 20 歯 科 医 療 安 全 管 理 体 制 推 進 特 別 21 在 宅 歯 科 医 療 連 携 室 整 備 22 地 域 災 害 拠 点 病

診療行為コード

Microsoft Word - ”‚Š¿…V…−†[…YNo19-7.doc

11 切 断 又 は 離 断 変 形 麻 痺 11 切 離 断 部 位 手 関 節 前 腕 肘 関 節 上 腕 肩 関 節 左 リスフラン 関 節 部 位 左 ショパール 関 節 足 関 節 下 腿 膝 関 節 大 腿 股 関 節 左 左 手 ( 足 ) 関 節 手 ( 足 ) 指 の 切 離 断

10w.xdw

Microsoft Word - 保育園管理規程(決定案)

tokutei2-7.xls

アプルウェイ 市販直後調査 発売4ヵ月間の副作用発現状況

目次

神 経 系 統 の 機 能 神 経 系 統 の 機 能 の 著 しい 障 害 とは 脳 の 器 質 障 害 四 肢 その 他 の 神 経 の 損 傷 によって 生 じる 灼 熱 痛 脳 神 経 及 び 脊 髄 神 経 の 外 傷 その 他 の 原 因 による 神 経 痛 等 により 特 に 軽 易

4 ぼうこう又は直腸機能障害


Microsoft Word - conference

監 修 北 辰 会 有 澤 総 合 病 院 内 科 大 八 木 秀 和 1 時 間 目 子 宮 内 膜 症 名 古 屋 大 学 大 学 院 医 学 系 研 究 科 産 婦 人 科 中 原 辰 夫 NAKAHARA Tatsuo 月 経 困 腎 難 不 を 全 訴 とはどのような えて 来 院 される

2 積 極 的 な 接 種 勧 奨 の 差 し 控 え 国 は 平 成 25 年 4 月 から 定 期 接 種 化 したが ワクチン 接 種 との 関 連 を 否 定 できない 持 続 的 な 痛 みなどの 症 状 が 接 種 後 に 見 られたことから 平 成 25 年 6 月 定 期 接 種 と

Microsoft PowerPoint - 筑豊漢方女性.ppt

3_62-95

2 ペインクリニック ペインクリニック 科 に 関 しては 先 ずは 様 々な 痛 みの 症 例 を 正 確 に 診 断 できる 能 力 の 養 成 を 最 大 の 目 標 にします その 過 程 で 薬 物 療 法 神 経 ブロック( 超 音 波 透 視 下 を 含 む) Intervention

(Microsoft Word - \220V\227v\215j\221S\225\266.DOC)

図 表 1 1,000 万 円 以 上 高 額 レセプト ( 平 成 25 年 度 ) 順 位 月 額 医 療 費 主 傷 病 名 順 位 月 額 医 療 費 主 傷 病 名 順 位 月 額 医 療 費 主 傷 病 名 順 位 月 額 医 療 費 主 傷 病 名 順 位 月 額 医 療 費 主 傷

1章A_責了.indd

先行研究のサマリー

( 別 添 )インフルエンザに 伴 う 異 常 な 行 動 に 関 する 報 告 基 準 ( 報 告 基 準 ) ( 重 度 調 査 )インフルエンザ 様 疾 患 と 診 断 され かつ 重 度 の 異 常 な 行 動 を 示 した 患 者 につき ご 報 告 ください ( 軽 度 調 査 )インフ

L006 球 後 麻 酔 及 び 顔 面 頭 頸 部 の 伝 達 麻 酔 ( 瞬 目 麻 酔 及 び 眼 輪 筋 内 浸 潤 麻 酔 を 含 む ) 150 点 L007 開 放 点 滴 式 全 身 麻 酔 310 点 L008 マスク 又 は 気 管 内 挿 管 による 閉 鎖 循 環 式 全 身


 

m07 北見工業大学 様式①

Microsoft PowerPoint - 高齢者.ppt

炎 症 の 定 義 を 説 明 できる 到 達 目 標 自 己 評 価 炎 症 の 分 類 組 織 形 態 学 的 変 化 と 経 時 的 変 化 を 説 明 できる 血 漿 タンパク 質 の 種 類 と 機 能 を 説 明 できる 白 血 球 の 種 類 と 機 能 を 説 明 できる 血 漿 タ

我孫子市小規模水道条例

2-1膠原病.doc

総 合 科 学 研 究 科 ( 留 学 生 担 当 ) 文 学 部 文 学 研 究 科 哲 学 思 想 文 化 学 コース 歴 史 学 コース 地 理 学 考 古 学 文 化 財 学 コース 日 本 中 国 文 学 語 学 コース 翀 欧 米 文 学 語 学 言 語 学 コース 比 較 日 本 文

4 接 種 の 受 け 方 (1) 指 定 医 療 機 関 へ 予 約 (2) 持 ち 物 次 のものを 持 参 のうえ 体 調 の 良 いときに 接 種 を 受 けてください 母 子 健 康 手 帳 ( 他 の 予 防 接 種 との 間 隔 等 の 確 認 接 種 の 記 録 をします) 予 診


<4D F736F F D C93FA967B91E5906B8DD082D682CC91CE899E2E646F6378>

認 し 通 常 の 立 入 検 査 に 際 しても 許 可 内 容 が 遵 守 されていることを 確 認 するこ と 2 学 校 薬 剤 師 業 務 の 兼 任 学 校 薬 剤 師 の 業 務 を 兼 任 する 場 合 の 取 扱 いは 次 のとおりとする (1) 許 可 要 件 1 薬 局 等 の

●労働基準法等の一部を改正する法律案

Ⅶ 東 海 地 震 に 関 して 注 意 情 報 発 表 時 及 び 警 戒 宣 言 発 令 時 の 対 応 大 規 模 地 震 対 策 特 別 措 置 法 第 6 条 の 規 定 に 基 づき 本 県 の 東 海 地 震 に 係 る 地 震 防 災 対 策 強 化 地 域 において 東 海 地 震

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

子 育 てをサポート サポートする 休 暇 等 制 度 1 出 産 前 後 の 休 暇 休 暇 等 名 称 妊 娠 出 産 後 通 院 休 暇 ( 特 別 休 暇 ) 妊 娠 中 の 職 員 及 び 出 産 後 1 年 以 内 の 職 員 が 保 健 指 導 又 は 健 康 審 査 を 受 ける 場

< DB8CAF97BF97A6955C2E786C73>

( 新 ) 医 療 提 供 の 機 能 分 化 に 向 けたICT 医 療 連 携 導 入 支 援 事 業 費 事 業 の 目 的 医 療 政 策 課 予 算 額 58,011 千 円 医 療 分 野 において あじさいネットを 活 用 したICT したICT 導 入 により により 医 療 機 能

(4) 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 との 連 携 1 市 は 国 の 現 地 対 策 本 部 長 が 運 営 する 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 に 職 員 を 派 遣 するなど 同 協 議 会 と 必 要 な 連 携 を 図 る

スライド 1

Microsoft PowerPoint - 大野Dr..ppt [互換モード]

前橋市軽自動車税減免要綱(案)1

Microsoft Word マスターQ&A.doc

untitled

薬食発第●●●号

Microsoft Word - 3大疾病保障特約付団体信用生命保険の概要_村上.docx

栄養管理手順について

製 造 業 者 は 製 造 販 売 業 者 の 管 理 監 督 の 下 適 切 な 品 質 管 理 を 行 い 製 品 を 製 造 します なお 製 造 業 は 製 造 に 特 化 した 許 可 となっており 製 造 業 の 許 可 のみでは 製 品 を 市 場 に 出 荷 することはできま せん

Microsoft Word - ★HP版平成27年度検査の結果

< F2D A C5817A C495B6817A>



国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

<947A957A8E9197BF C E786C73>

Microsoft Word - 目次.doc

人 間 ドックコース( 脳 検 査 がん 検 査 含 む) 298,000 円 / 税 込 その 他 肥 満 症 やせ 症 高 / 低 血 圧 近 視 乱 視 白 内 障 緑 内 障 網 膜 疾 患 外 部 の 音 を 遮 断 したブースで 音 を 聞 き 取 って 調 難 聴 腹 部 超 音 波

○医療用医薬品の使用上の注意記載要領について

2 99% 支 配 言 げ 思 視 点 変 症 状 思 当 肌 荒 大 人 ニ ビ 抜 け 毛 冷 症 肩 頭 痛 便 秘 病 院 行 ほ け ツ 不 そ ほ 実 深 関 係 バ 不 忙 現 代 社 会 そ 子 年 々 増 加 言 換 活 化 バ 整 ば そ 不 悩 格 段 改 善 そ け 整 ば

有 料 老 ホーム ( ) ( 主 として 要 介 護 状 態 にある を 入 居 させるも のに 限 る ) 第 29 条 ( 届 出 等 ) 第 二 十 九 条 有 料 老 ホーム( 老 を 入 居 させ 入 浴 排 せつ 若 しくは 食 事 の 介 護 食 事 の 提 供 又 はその 他 の

Microsoft Word - 1表紙.doc

<6D33335F976C8EAE CF6955C A2E786C73>

地域支援心理研究センター 紀要 第10号

<4D F736F F F696E74202D208CE38AFA8D8297EE8ED288E397C390A CC8A AE98EBA8DEC90AC816A2E707074>

51 胃 腸 薬 3-2 胃 腸 鎮 痛 剤 3 号 A 52 胃 腸 薬 4-2 胃 腸 鎮 痛 剤 4 号 A 53 胃 腸 薬 5-1 健 胃 消 化 剤 1 号 A 54 胃 腸 薬 6-2 胃 腸 鎮 痛 剤 5 号 A 55 胃 腸 薬 7-1 センブリ 重 曹 散 56 胃 腸 薬 8

スライド 1

メイン・サブ記事一覧2

Transcription:

漢 方 基 本 講 座 八 網 六 病 位 気 血 水 五 臓 論 医 療 法 人 財 団 北 聖 会 北 聖 病 院 漢 方 内 科 後 藤 博 三

= I-1. 証 とは 証 とは 患 者 が 現 時 点 で 現 している 症 状 を 陰 陽 虚 実 寒 熱 表 裏 六 病 位 気 血 水 五 臓 などの 漢 方 医 学 上 の 基 本 概 念 をとおして 認 識 し さらに 病 態 の 特 異 性 を 示 す 症 候 を 捕 らえた 結 果 を 総 合 して 得 られる 診 断 であり 治 療 の 指 示 である 西 洋 医 学 東 洋 医 学 診 断 診 断 治 療 病 因 を 解 析 治 療 生 体 の 反 応 を 解 析

I-2. 証 をたてる 生 体 は 種 々の 影 響 により 変 化 していく 流 動 的 な 存 在 である その 病 態 を 東 洋 医 学 の 概 念 を 通 して 診 断 し その 病 態 に 応 じた 漢 方 薬 を 選 択 することが 証 をたてることである 生 体 の 証 流 動 的 生 体 の 東 洋 医 学 的 病 態 ( 陰 陽 気 血 水 など) は 変 化 する 症 状 四 診 陰 陽 虚 実 気 血 水 など の 概 念 生 体 の 証 に 一 致 する 方 剤 を 選 択 する 方 剤 の 証 漢 方 薬 A 漢 方 薬 B 漢 方 薬 C 普 遍 的 漢 方 薬 の 適 応 病 態 は 方 剤 により 不 変

II. 漢 方 の 基 本 概 念 と 診 断 法 八 綱 陰 陽 虚 実 寒 熱 表 裏 六 病 位 太 陽 病 少 陽 病 陽 明 病 太 陰 病 少 陰 病 厥 陰 病 気 血 水 気 虚 気 鬱 気 逆 瘀 血 血 虚 水 滞 五 臓 論 肝 心 脾 肺 腎

II. 漢 方 の 基 本 概 念 と 診 断 法 1. 陰 陽 (いんよう) 種 々の 要 因 により 生 体 の 恒 常 性 が 乱 された 場 合 生 体 の 呈 する 修 復 反 応 の 性 質 が 総 じて 熱 性 活 動 性 発 揚 性 のものを 陽 の 病 態 ( 陽 証 )とい う これに 対 して 総 じて 寒 性 非 活 動 性 沈 降 性 のものを 陰 の 病 態 ( 陰 証 )という 陽 証 暑 がりで 薄 着 を 好 む 首 から 上 に 汗 をかく 冷 水 を 好 んで 多 飲 する 顔 面 が 紅 潮 眼 球 の 充 血 高 体 温 傾 向 脈 が 速 い 陰 証 寒 がりで 厚 着 を 好 む 電 気 毛 布 など 温 熱 刺 激 を 好 む 顔 面 が 蒼 白 低 体 温 傾 向 背 部 腰 部 首 の 周 囲 が 寒 がる 四 肢 末 梢 が 冷 える

II. 漢 方 の 基 本 概 念 と 診 断 法 2. 虚 実 (きょじつ) 実 の 病 態 ( 実 証 )とは 生 体 に 加 わった 外 乱 因 子 が 強 力 で これに 対 し て 動 員 された 気 血 の 力 が 旺 盛 な 病 態 である これに 対 して 動 員 された 気 血 の 力 が 弱 い 病 態 を 虚 の 病 態 ( 虚 証 )という 実 証 虚 証 眼 光 音 声 に 力 がある 脈 が 充 実 腹 力 が 充 実 皮 膚 の 色 つ やがよい 発 赤 腫 脹 の 著 しい 皮 疹 激 しい 疼 痛 便 臭 の 強 い 便 眼 光 音 声 に 力 がない 脈 が 無 力 腹 力 が 軟 弱 皮 膚 の 色 つ やが 悪 い 自 然 発 汗 傾 向 寝 汗 便 臭 の 少 ない 便 胃 下 垂

陰 証 寒 性 傾 向 陰 陽 虚 実 の 概 念 図 実 陽 証 熱 性 傾 向 陰 実 証 生 体 の 反 応 性 が 強 い 陽 虚 証 生 体 の 反 応 性 が 弱 い 虚

陰 陽 虚 実 を 考 慮 した 方 剤 の 選 択 法 1) 陽 実 陽 虚 陰 実 陰 虚 を 判 断 する 2)その 処 方 群 の 中 で 主 症 状 に 対 応 する 方 剤 を 選 択 する 感 冒 に 頻 用 される 方 剤 の 陰 陽 虚 実 における 位 置 実 麻 黄 湯 葛 根 湯 陰 麻 黄 附 子 細 辛 湯 桂 枝 麻 黄 各 半 湯 桂 枝 二 越 婢 一 湯 陽 真 武 湯 虚 桂 枝 湯 小 青 竜 湯

陽 証 と 陰 証 は 生 体 の も つ エ ネ ル ギ ー の 違 い 陽 証 陰 証 実 証 と 虚 証 は 生 体 の 反 応 性 の 違 い 生 体 の 反 応 性 外 因 ( 外 邪 ) 陽 証 では 強 い 外 因 (インフ ルエンザなど)に 対 して 強 実 い 反 応 ( 高 熱 関 節 痛 激 しい 咳 嗽 など)を 示 し 弱 虚 い 外 因 ( 感 冒 など)に 対 し て 弱 い 反 応 ( 軽 い 咽 頭 痛 な ど)を 示 す 虚 陰 証 ではいずれの 外 因 に 対 虚 しても 弱 い 反 応 しか 呈 すこ とができない

症 例 1 20 才 の 男 子 学 生 今 朝 から 少 し 頭 が 重 かったが 講 義 に 無 理 を して 出 ていたところ 夕 方 4 時 頃 から 頭 痛 が 強 まり 熱 感 も 出 てきた 午 後 5 時 来 院 体 温 は 38.5 脈 は 浮 数 実 で 舌 に 著 変 なし 自 然 発 汗 の 傾 向 は なく 後 頭 部 から 肩 甲 間 部 にか けて 背 筋 が 強 くこっている 自 覚 的 にも 後 頭 部 の 緊 迫 感 がある 症 例 2 20 才 の 女 子 学 生 ここ 数 日 精 神 的 なス トレスが 重 なったためか 熟 睡 できなかっ た 今 日 の 昼 頃 から 軽 い 頭 重 感 と 身 体 の 違 和 感 があった 夕 方 になると 咽 頭 痛 と 悪 寒 が 加 わったが 家 庭 教 師 のアルバイ トがあり 無 理 をして 出 かけた これを 終 える 頃 から 本 格 的 に 気 分 が 悪 くなった ため 受 診 脈 はやや 浮 で 弱 舌 には 特 変 がない 手 足 が 冷 えており 顔 色 もさえ ない 日 頃 の 元 気 がすっかり 失 せている 自 汗 の 傾 向 はなく 体 温 が37.4 であ るのに 熱 感 がなく ひたすらゾクゾクと 寒 いという 陽 証 の 病 態 麻 黄 湯 : 喀 痰 咳 嗽 発 熱 葛 根 湯 : 発 熱 咳 嗽 項 背 部 のこり 小 青 竜 湯 : 水 様 鼻 汁 咳 嗽 桂 枝 湯 : 発 熱 頭 痛 陰 証 の 病 態 麻 黄 附 子 細 辛 湯 : 咳 嗽 咽 頭 痛 真 武 湯 : 頭 痛

II. 漢 方 の 基 本 概 念 と 診 断 法 3. 寒 熱 (かんねつ) 生 体 が 外 乱 因 子 によって 恒 常 性 を 乱 された 場 合 生 体 が 呈 する 病 状 が 熱 性 ( 熱 感 充 血 局 所 温 度 の 上 昇 )であるか 寒 性 ( 冷 感 冷 え 血 流 の 低 下 局 所 温 度 の 低 下 )であるか 分 かつ 考 え 方 である 寒 熱 の 認 識 は 陰 陽 の 認 識 の 一 部 を 構 成 する 要 素 であるが もっぱら 局 所 的 な 病 状 の 認 識 法 として 用 いられる 熱 証 の 所 見 として 顔 面 の 充 血 紅 潮 口 渇 頻 脈 灼 熱 性 の 疼 痛 などがあり 寒 証 の 所 見 として 顔 面 蒼 白 徐 脈 四 肢 の 冷 えなどがある 同 一 人 に 寒 熱 が 混 在 することも 多 く 上 熱 下 寒 ( 上 部 に 熱 感 があり 下 半 身 に 冷 えがある)などがその 例 である

熱 真 熱 仮 寒 上 熱 下 寒 黄 連 解 毒 湯 など 白 虎 加 人 参 湯 四 逆 散 など 加 味 逍 遥 散 苓 桂 朮 甘 湯 など 四 肢 厥 冷 寒 真 寒 仮 熱 当 帰 四 逆 湯 など 真 武 湯 人 参 湯 など 四 逆 湯 など

寒 熱 に 基 づいた 方 剤 の 選 択 法 主 訴 ) 蕁 麻 疹 症 例 A) 40 才 男 性 時 々 生 じる 蕁 麻 疹 で 来 院 赤 ら 顔 で 暑 がり 他 覚 所 見 として 脈 候 はやや 沈 実 舌 候 は 紅 舌 黄 苔 腹 候 は 腹 力 実 解 答 : 黄 連 解 毒 湯 ( 少 陽 病 期 実 証 ) 症 例 B) 36 才 女 性 時 々 生 じる 蕁 麻 疹 で 来 院 上 半 身 はそれほどでも ないが 下 肢 は 少 し 冷 える 蕁 麻 疹 発 症 時 に 時 に 熱 感 とたまに カーと 上 半 身 が 熱 くなることがある 他 覚 所 見 として 脈 候 は 弦 で 弱 舌 候 は 紅 舌 白 苔 腹 候 は 腹 力 やや 軟 解 答 : 加 味 逍 遥 散 ( 少 陽 病 期 虚 証 )

II. 漢 方 の 基 本 概 念 と 診 断 法 4. 表 裏 (ひょうり) 表 証 とは 頭 痛 発 熱 項 背 筋 のこわばり 関 節 痛 など 体 表 部 に 症 状 が 表 出 されている 状 態 をいう これに 対 して 裏 証 とは 腹 満 下 痢 便 秘 などの 症 候 から 成 り 立 っている また 咳 嗽 胸 痛 などの 胸 郭 内 症 状 や 悪 心 嘔 吐 など 上 部 消 化 器 症 状 は 半 表 半 裏 (はんぴょうはんり) としてとらえる 次 に 述 べる 六 病 位 に 照 らし 合 わせると 表 証 は 太 陽 病 期 (たいようびょうき) 半 表 半 裏 証 は 少 陽 病 期 (しょうようびょ うき) 裏 証 は 陽 明 病 期 (ようめいびょうき)から 厥 陰 病 期 (けっち んびょうき)に 対 応 する 例 えば 葛 根 湯 陰 陽 では 陽 証 虚 実 では 実 証 寒 熱 では 熱 証 表 裏 では 表 証 六 病 位 では 太 陽 病 気 血 水 では 気 鬱 五 臓 論 では 肺 特 徴 項 背 の 強 ばり

表 証 とは 頭 痛 発 熱 項 背 筋 のこわばり 関 節 痛 など 体 表 部 に 症 状 が 表 出 されている 状 態 半 表 半 裏 (はんぴょうはん り)とは 咳 嗽 胸 痛 などの 胸 郭 内 症 状 や 悪 心 嘔 吐 など 上 部 消 化 器 症 状 裏 証 とは 腹 満 下 痢 便 秘 などの 症 候 から 成 り 立 ってい る

主 訴 ) 下 痢 表 裏 に 基 づいた 方 剤 の 選 択 法 症 例 A) 今 朝 から 頭 痛 悪 寒 発 熱 があり 食 欲 不 振 と 下 痢 がある 他 覚 所 見 として 手 足 は 冷 たく 脈 候 はやや 浮 虚 舌 候 は 紅 舌 白 苔 腹 候 は 腹 力 軟 弱 で 振 水 音 を 認 める 解 答 : 桂 枝 人 参 湯 構 成 生 薬 : 桂 皮 人 参 白 朮 甘 草 乾 姜 症 例 B) 元 来 食 が 細 く 疲 れやすい 数 ヶ 月 前 から 下 痢 を 時 々 生 じるようにな った また 腹 部 を 中 心 に 冷 えを 自 覚 する 他 覚 所 見 として 脈 候 はやや 沈 で 弱 舌 候 は 紅 舌 白 苔 腹 候 は 腹 力 軟 弱 で 振 水 音 を 認 める 解 答 : 人 参 湯 構 成 生 薬 : 人 参 白 朮 甘 草 乾 姜

陰 陽 虚 実 に 表 裏 を 加 えた 概 念 図 ウイルス 性 胃 腸 炎 に 用 いられる 漢 方 薬 実 裏 にちかい 葛 根 湯 黄 芩 湯 表 実 陰 麻 黄 湯 葛 根 湯 真 武 湯 桂 枝 人 参 湯 五 苓 散 陽 陰 麻 黄 附 子 細 辛 湯 桂 枝 麻 黄 各 半 湯 桂 枝 二 越 婢 一 湯 陽 虚 真 武 湯 桂 枝 人 参 湯 虚 桂 枝 湯 小 青 竜 湯 表 証 と 裏 証 の 両 面 をもつ

陰 陽 と 虚 実 寒 熱 表 裏 の 関 係 実 虚 陽 熱 寒 陰 表 裏

II. 漢 方 の 基 本 概 念 と 診 断 法 5. 六 病 位 (ろくびょうい) 疾 病 状 態 は 生 体 の 側 の 気 血 水 の 量 と 外 乱 因 子 の 変 化 に 伴 い 時 々 刻 々と 流 動 するという 理 念 が 六 病 位 による 疾 病 のステージ 分 類 である 疾 病 のステージを 陽 と 陰 に 大 別 し 陽 の 群 を 太 陽 病 期 少 陽 病 期 陽 明 病 期 に 分 け 陰 の 群 を 太 陰 病 期 少 陰 病 期 厥 陰 病 期 に 分 類 する 前 述 した 証 は 時 々 刻 々と 変 化 する というのは この 概 念 に 基 づき 病 態 が 変 化 すると 考 えるからである 例 えば かぜのひき 初 めには 太 陽 病 期 の 症 状 がしばしば 認 められる それが 治 癒 せず 進 行 すると 食 欲 不 振 や 弛 張 熱 などの 症 状 が 現 れ 少 陽 病 期 に 移 行 する さらに 高 熱 が 遷 延 する 陽 明 病 期 や 体 力 の 極 端 に 疲 弊 した 太 陰 少 陰 病 期 に 移 行 し ていく 厥 陰 病 期 は 重 篤 な 肺 炎 などに 移 行 した 末 期 的 な 病 状 である

水 際 病 毒 体 力 内 陸 首 都 圏 首 都 裏 表 半 表 半 裏 太 陽 病 期 少 陽 病 期 陽 明 病 期 太 陰 病 期 少 陰 病 期 厥 陰 病 期

六 病 位 における 主 要 症 状 と 主 な 治 療 方 剤 陰 陽 病 位 主 要 症 候 主 な 治 療 方 剤 陽 証 太 陽 病 期 悪 寒 発 熱 頭 痛 項 背 部 のこわばり 疼 痛 関 節 痛 葛 根 湯 小 青 竜 湯 少 陽 病 期 悪 心 嘔 吐 食 欲 不 振 胸 内 苦 悶 弛 張 熱 小 柴 胡 湯 半 夏 厚 朴 湯 陽 明 病 期 腹 満 便 秘 口 渇 身 体 深 部 の 熱 感 大 承 気 湯 白 虎 加 人 参 湯 陰 証 太 陰 病 期 腹 満 腹 痛 食 欲 不 振 下 痢 腹 の 冷 え 少 陰 病 期 全 身 倦 怠 感 手 足 の 冷 え 背 部 悪 寒 胸 内 苦 悶 下 痢 厥 陰 病 期 全 身 の 冷 え 不 消 化 下 痢 便 口 内 乾 燥 胸 内 苦 悶 小 建 中 湯 当 帰 芍 薬 散 真 武 湯 麻 黄 附 子 細 辛 湯 茯 苓 四 逆 湯

六 病 位 に 基 づいた 方 剤 の 選 択 法 主 訴 ) 咳 痰 症 例 A) 今 朝 から 悪 寒 発 熱 があり 喀 痰 を 伴 う 咳 嗽 がある 自 汗 はない 他 覚 所 見 として 脈 候 は 浮 実 舌 候 は 紅 舌 白 苔 腹 候 は 腹 力 中 等 度 胸 脇 苦 満 を 認 める 解 答 : 麻 黄 湯 ( 太 陽 病 期 陽 証 実 証 表 証 熱 証 ) 構 成 生 薬 : 麻 黄 杏 仁 桂 皮 甘 草 症 例 B) 一 週 間 前 から 喀 痰 を 伴 う 咳 嗽 がある 夕 方 に 熱 っぽい 自 汗 と 口 渇 がある 他 覚 所 見 として 脈 候 はやや 浮 で 弦 実 舌 候 は 紅 舌 白 苔 腹 候 は 腹 力 中 等 度 解 答 : 麻 杏 甘 石 湯 ( 少 陽 病 期 陽 証 実 証 半 表 半 裏 証 熱 証 ) 構 成 生 薬 : 麻 黄 杏 仁 石 膏 甘 草

麻 黄 湯 と 麻 杏 甘 石 湯 麻 黄 杏 仁 + 桂 皮 = 麻 黄 湯 陽 実 表 証 太 陽 病 甘 草 + 石 膏 = 麻 杏 甘 石 湯 陽 実 半 表 半 裏 証 少 陽 病

6. 気 血 水 この 概 念 は 気 血 水 が 生 体 の 基 本 をなすという 東 洋 医 学 の 理 念 に 基 づ き 気 血 水 の 不 調 により 病 気 が 生 ずるとする 考 え 方 である 気 血 水 のいずれが 主 役 となるかで 病 状 も 異 なり 治 療 方 針 も 違 ってくる 以 下 にその 病 状 と 治 療 の 主 体 となる 漢 方 薬 を 概 説 する 1) 気 気 とは 生 命 活 動 を 営 む 根 源 的 なエネルギーである 気 の 異 常 による 病 態 には 次 の3つがある 気 虚 (ききょ): 気 の 量 に 不 足 を 生 じた 病 態 である 生 命 体 としての 活 力 の 低 下 として 表 現 される 治 療 薬 として 薬 用 人 参 を 主 体 とした 人 参 湯 類 と 桂 皮 を 主 体 とした 桂 枝 湯 類 が 用 いられる

気 欝 (きうつ): 本 来 順 調 に 体 内 を 巡 っている 気 の 循 環 に 停 滞 を 来 した 病 態 である 停 滞 した 部 位 により 種 々の 症 状 を 呈 する 治 療 薬 として 香 蘇 散 や 半 夏 厚 朴 湯 などが 用 いられる

気 逆 (きぎゃく): 気 の 循 環 の 失 調 した 病 態 である 腹 部 を 起 点 に 胸 内 に 動 悸 を 生 じ さら に 頭 痛 などを 起 こすもの 胸 部 を 起 点 に 咳 嗽 胸 満 感 を 伴 って 咽 喉 部 絞 扼 感 顔 面 紅 潮 怒 責 などを 起 こすもの 心 窩 部 の 不 快 感 で 発 し 胃 液 を 吐 出 するもの 四 肢 末 梢 を 起 点 として 冷 痛 が 中 枢 側 へ 波 及 するもの が 認 められる 治 療 方 剤 として 桂 皮 甘 草 を 配 剤 する 桂 枝 人 参 湯 苓 桂 甘 棗 湯 桂 枝 加 竜 骨 牡 蛎 湯 や 加 味 逍 遥 散 呉 茱 萸 湯 などが 用 いられる

気 虚 気 欝 気 逆 主 症 状 身 体 がだるい 気 力 がない 疲 れやすい 食 欲 不 振 風 邪 をひきやすい 抑 うつ 傾 向 喉 のつかえ 季 肋 部 のつかえ 感 腹 部 膨 満 感 朝 調 子 が 悪 い 冷 えのぼせ 動 悸 発 作 発 作 性 に 生 じる 症 状 ( 頭 痛 咳 腹 痛 ) 顔 面 紅 潮 臨 床 応 用 消 化 器 疾 患 悪 性 腫 瘍 諸 疾 患 の 重 症 時 高 齢 者 の 諸 疾 患 など うつ 状 態 咽 喉 神 経 症 喘 息 過 敏 性 腸 症 候 群 頭 痛 症 など 片 頭 痛 不 整 脈 喘 息 発 作 過 敏 性 腸 症 候 群 更 年 期 障 害 など 使 用 方 剤 人 参 湯 類 ( 人 参 湯 六 君 子 湯 ) 桂 枝 湯 類 ( 桂 枝 湯 小 建 中 湯 )など 香 蘇 散 半 夏 厚 朴 湯 など 桂 枝 人 参 湯 加 味 逍 遥 散 苓 桂 甘 棗 湯 など

2) 血 血 とは 血 液 のみを 指 すのでなく 東 洋 医 学 では 生 体 の 物 質 的 側 面 を 支 え る 赤 色 の 液 体 を 意 味 する このことから 皮 膚 や 毛 髪 感 覚 器 の 異 常 も 血 の 異 常 として 捉 える 血 の 異 常 による 病 態 には 次 の2つがある 血 虚 (けっきょ): 血 の 量 に 不 足 を 生 じた 病 態 である 消 耗 性 疾 患 外 科 的 侵 襲 消 化 管 出 血 不 正 性 器 出 血 などの 血 の 消 費 の 亢 進 や 成 長 に 見 合 った 血 の 生 成 ができない 薬 物 などにより 血 の 生 成 が 障 害 されるなど によりもたらされる 治 療 方 剤 として 四 物 湯 や 芎 帰 膠 艾 湯 が 代 表 的 であ る 術 後 などで 気 虚 を 伴 う 場 合 は 十 全 大 補 湯 なども 頻 用 されている

瘀 血 (おけつ): 気 とともに 体 内 を 順 調 に 巡 るべき 血 の 流 通 に 障 害 をきたした 病 態 である 外 的 なストレス( 寒 湿 熱 ) 打 撲 手 術 の 他 に 精 神 的 ストレス 運 動 不 足 睡 眠 不 足 便 秘 などによりもたらされる 桃 核 承 気 湯 桂 枝 茯 苓 丸 当 帰 芍 薬 散 などが 代 表 的 な 瘀 血 改 善 薬 である

主 症 状 血 虚 貧 血 肌 荒 れ 脱 毛 眼 精 疲 労 耳 鳴 筋 力 低 下 瘀 血 肩 こり 生 理 不 順 便 秘 しみ そばかす 臨 床 応 用 皮 膚 科 疾 患 神 経 筋 疾 患 術 後 諸 疾 患 に 随 伴 する 貧 血 など 婦 人 科 疾 患 動 脈 硬 化 性 疾 患 皮 膚 科 精 神 科 疾 患 外 傷 など 使 用 方 剤 四 物 湯 芎 帰 膠 艾 湯 など 桃 核 承 気 湯 桂 枝 茯 苓 丸 当 帰 芍 薬 散 など

3) 水 水 とは 生 体 の 物 質 的 側 面 を 支 える 無 色 の 液 体 である この 水 が 偏 在 し た 病 態 を 水 滞 (すいたい)あるいは 水 毒 (すいどく)という 外 乱 因 子 ( 風 寒 湿 )あるいは 気 血 の 異 常 ( 気 虚 瘀 血 ) 五 臓 の 異 常 ( 特 に 腎 )によって 生 じる 水 滞 の 生 じる 部 位 で 適 応 となる 方 剤 も 選 択 される 身 体 の 重 い 感 じ めまいなどを 主 とする 全 身 型 では 五 苓 散 や 真 武 湯 朝 のこわばり 関 節 痛 を 主 とする 皮 膚 関 節 型 では 桂 枝 二 越 脾 一 湯 や 防 己 黄 耆 湯 喘 息 などの 胸 内 型 で 水 様 鼻 汁 を 伴 う 場 合 は 小 青 竜 湯 つわりなどの 悪 心 嘔 吐 などの 心 下 型 では 小 半 夏 加 茯 苓 湯 など がその 例 である

全 身 型 皮 膚 関 節 型 胸 内 型 心 下 型 主 症 状 身 体 がだるい 全 身 のむくみ 下 痢 めまい 感 立 ちくらみ 尿 利 異 常 こわばり 関 節 腫 脹 皮 疹 水 様 鼻 汁 喘 鳴 悪 心 嘔 吐 臨 床 応 用 浮 腫 性 疾 患 自 律 神 経 失 調 症 めまい 症 泌 尿 器 科 疾 患 消 化 器 疾 患 など 頸 椎 症 関 節 リウマチ 変 形 性 膝 関 節 症 皮 膚 疾 患 など アレルギー 性 鼻 炎 気 管 支 喘 息 心 不 全 など 逆 流 性 食 道 炎 機 能 性 胃 腸 症 など 使 用 方 剤 五 苓 散 真 武 湯 など 桂 枝 二 越 脾 一 湯 防 己 黄 耆 湯 など 小 青 竜 湯 など 小 半 夏 加 茯 苓 湯 など

気 血 水 の 概 念 による 処 方 の 選 択 法 1) 主 症 状 を 気 血 水 の 概 念 にあてはめて 処 方 群 を 選 択 する 2)その 処 方 群 の 中 で 陰 陽 虚 実 等 の 概 念 を 導 入 し 処 方 を 絞 る 例 : 生 理 不 順 瘀 血 の 処 方 群 を 選 択 陰 陽 虚 実 から 処 方 を 絞 る 特 異 的 症 候 から 処 方 を 絞 る 例 : 陽 実 証 例 :のぼせ 桃 核 承 気 湯 大 黄 牡 丹 皮 湯 桂 枝 茯 苓 丸 加 味 逍 遥 散 当 帰 芍 薬 散 桃 核 承 気 湯 大 黄 牡 丹 皮 湯 桃 核 承 気 湯

主 訴 )めまい ふらつき 気 血 水 による 処 方 の 選 択 法 症 例 A) 出 産 後 めまい ふらつき 感 が 生 じ 増 悪 傾 向 にある 自 覚 的 には 冷 え 性 で 尿 不 利 雲 の 上 を 歩 いているような 感 じがする 他 覚 所 見 として 脈 候 は 沈 細 舌 候 は 紅 舌 白 苔 腹 候 は 腹 力 軟 臍 上 悸 を 認 める 解 答 : 真 武 湯 陰 虚 証 少 陰 病 期 水 滞 構 成 生 薬 : 茯 苓 芍 薬 白 朮 生 姜 附 子 症 例 B) たまに めまい ふらつき 感 が 生 じ 最 近 増 悪 傾 向 にある 自 覚 的 には 冷 え 性 で 尿 不 利 肩 こりが 著 しい 生 理 は 不 順 傾 向 他 覚 所 見 として 脈 候 は 沈 細 舌 候 は 紅 舌 白 苔 腹 候 は 腹 力 軟 左 右 臍 傍 の 圧 痛 を 認 め る 解 答 : 当 帰 芍 薬 散 陰 虚 証 太 陰 病 期 瘀 血 構 成 生 薬 : 当 帰 芍 薬 川 芎 茯 苓 沢 瀉 蒼 朮

気 血 水 と 方 剤 の 関 係 人 参 湯 類 桂 枝 湯 類 十 全 大 補 湯 など 気 半 夏 白 朮 天 麻 湯 など 血 水 四 物 湯 類 五 苓 散 真 武 湯 など 心 身 一 如 当 帰 芍 薬 散 など 疾 病 の 発 現 と 助 長 において 心 と 身 体 とが 密 接 不 可 分 の 相 関 関 係 にあることを 約 言 した 語 で 東 洋 と 西 洋 とを 問 わず 古 代 医 学 が 本 質 的 に 具 有 した 最 も 重 要 な 理 念 の 一 つ

7. 五 臓 この 概 念 は 体 内 の 諸 器 官 を 五 臓 に 分 け( 現 在 の5つの 臓 器 と 重 なる 部 分 はあるが 同 一 ではない) 各 臓 器 の 異 常 がどのような 病 症 をおこす かにより 成 り 立 つ 考 え 方 である その 五 臓 の 働 きと 失 調 病 態 を 概 説 す る また 五 臓 は 互 いに 影 響 を 及 ぼし 相 生 相 剋 関 係 を 形 成 する 1) 肝 : 肝 は 精 神 活 動 を 安 定 化 させる 新 陳 代 謝 を 行 う 血 を 貯 蔵 し 全 身 に 栄 養 を 供 給 する 骨 格 筋 の 緊 張 を 維 持 するなどの 働 きをする 肝 の 異 常 により 痙 攣 発 作 易 怒 性 栄 養 不 良 眼 精 疲 労 爪 の 成 長 異 常 などが 生 じる 治 療 方 剤 として 抑 肝 散 釣 藤 散 などの 処 方 があ る

2) 心 : 心 は 意 識 水 準 を 保 つ 覚 醒 睡 眠 のリズムを 調 整 する 血 を 循 環 させるなどの 働 きをする 心 の 異 常 により 失 神 不 眠 逆 上 感 不 安 感 動 悸 舌 炎 などが 生 じる 治 療 方 剤 として 黄 連 解 毒 湯 半 夏 瀉 心 湯 などがある 3) 脾 : 脾 は 食 物 を 吸 収 し 水 穀 の 器 を 生 成 する 血 の 流 通 をなめらか にし 血 管 からの 漏 出 を 防 ぐ 筋 肉 の 形 成 維 持 を 行 うなどの 働 きをす る 脾 の 異 常 により 焦 燥 感 抑 うつ 易 疲 労 筋 力 低 下 出 血 傾 向 食 欲 低 下 下 痢 口 角 炎 などが 生 じる 治 療 方 剤 として 人 参 湯 六 君 子 湯 などがある

4) 肺 : 肺 は 呼 吸 により 気 を 取 り 入 れてその 一 部 を 赤 色 化 し 血 を 生 成 し 一 部 を 水 に 転 化 する 皮 膚 の 機 能 を 制 御 し その 防 衛 力 を 保 持 するなど の 働 きをする 肺 の 異 常 により 憂 うつ 易 感 染 性 鼻 閉 呼 吸 困 難 病 的 な 発 汗 などが 生 じる 治 療 方 剤 として 小 青 竜 湯 麦 門 冬 湯 などが ある 5) 腎 : 腎 は 成 長 発 育 生 殖 能 を 制 御 し 骨 歯 牙 の 形 成 と 維 持 水 分 代 謝 の 調 整 呼 吸 能 の 維 持 思 考 力 判 断 力 集 中 力 を 維 持 するなど の 働 きをする 腎 の 異 常 により 易 驚 性 発 育 不 良 インポテンツ 骨 代 謝 異 常 水 分 代 謝 異 常 排 尿 障 害 腟 炎 難 聴 などが 生 じる 治 療 方 剤 として 八 味 地 黄 丸 牛 車 腎 気 丸 などがある

五 臓 論 による 処 方 の 選 択 法 主 訴 ) 全 身 倦 怠 感 症 例 A) 55 才 男 性 最 近 仕 事 が 忙 しく 過 労 気 味 であった 全 身 倦 怠 感 も 自 覚 するようになったため 近 医 で 諸 検 査 を 受 けたが 明 らかな 異 常 所 見 を 認 めず 全 身 倦 怠 感 とともに 食 欲 不 振 冷 えも 生 じてきた ため 当 科 を 初 診 した 他 覚 所 見 として 脈 候 は 沈 細 舌 候 は 紅 舌 白 苔 で 舌 縁 に 歯 痕 を 認 める 腹 候 は 腹 力 軟 心 下 痞 鞕 を 認 める 解 答 : 人 参 湯 陰 虚 証 太 陰 病 期 脾 虚 症 例 B) 70 才 男 性 最 近 全 身 倦 怠 感 が 続 くため 当 科 を 初 診 した 食 欲 は 以 前 と 変 わらない 時 に 腰 痛 を 自 覚 し 夜 間 尿 も 一 晩 に2 回 ほど ある 下 肢 は 冷 える 他 覚 所 見 として 脈 候 は 沈 細 舌 候 は 紅 舌 で 鏡 面 舌 腹 候 は 腹 力 軟 小 腹 不 仁 を 認 める 解 答 : 八 味 地 黄 丸 陰 虚 証 太 陰 病 期 腎 虚

五 臓 の 相 生 相 剋 関 係 木 腹 が 立 つ 肝 水 腎 心 火 イライラ 動 悸 肺 脾 食 欲 低 下 金 土 相 生 関 係 相 剋 関 係

漢 方 の 基 本 概 念 の 臨 床 応 用 八 綱 時 間 経 過 で 考 えやすい 六 病 位 愁 訴 気 血 水 の 概 念 に あてはめやすい 気 血 水 五 臓 の 異 常 ととらえると 考 えやすい 五 臓 論