348 第 Ⅱ 部 医 療 法 人 の 税 務 第 2 章 医 療 法 人 の 法 人 税 第 1 節 法 人 税 法 上 の 法 人 の 種 類 1 法 人 税 法 上 の 種 類 法 人 税 法 上 の 法 人 は 普 通 法 人 公 共 法 人 公 益 法 人 等 及 び 協 同 組 合 等 に 区 分 され( 法 法 2 五 六 七 九 ) それぞれにおいて 異 なる 課 税 関 係 が 定 められています 医 療 法 人 は 社 会 医 療 法 人 が 収 益 事 業 の 所 得 のみに 課 税 がなされる 公 益 法 人 等 に 該 当 し 他 の 医 療 法 人 は 全 所 得 に 対 して 課 税 がなされる 普 通 法 人 に 該 当 します 国 税 庁 長 官 から 承 認 を 受 けた 特 定 医 療 法 人 ( 措 法 67 の2)は 低 率 課 税 がなされますが 普 通 法 人 と 同 様 に 全 所 得 課 税 です 2 持 分 の 定 めのある 医 療 法 人 と 持 分 の 定 めのない 医 療 法 人 医 療 法 人 には 経 過 措 置 型 医 療 法 人 である 持 分 の 定 めのある 医 療 法 人 と 持 分 の 定 めのない 医 療 法 人 とがあります 持 分 の 定 めのない 医 療 法 人 には 財 団 医 療 法 人 と 持 分 の 定 めのない 定 款 を 定 めた 社 団 医 療 法 人 が 該 当 しま す 持 分 の 定 めのない 医 療 法 人 は 資 本 金 等 の 額 の 定 めのない 法 人 であり 交 際 費 課 税 寄 附 金 課 税 中 小 法 人 の 判 定 法 人 住 民 税 の 均 等 割 などにお いて 持 分 の 定 めのある 医 療 法 人 と 課 税 関 係 が 異 なります 3 内 国 法 人 と 外 国 法 人 法 人 税 法 上 の 法 人 は 国 内 に 本 店 又 は 主 たる 事 務 所 を 有 する 内 国 法 人 ( 法 法 2 三 )と 内 国 法 人 以 外 の 法 人 である 外 国 法 人 ( 法 法 2 四 )とに 区 分 され ますが 国 外 に 本 店 を 設 置 する 医 療 法 人 は 存 在 しません
第 2 章 医 療 法 人 の 法 人 税 349 第 2 節 医 療 法 人 の 資 本 等 1 資 本 金 等 の 額 ⑴ 資 本 金 等 の 額 とは 資 本 金 等 の 額 とは 法 人 が 株 主 等 から 出 資 を 受 けた 金 額 をいいます( 法 法 2 十 六 ) 持 分 の 定 めのある 医 療 法 人 が 出 資 者 から 出 資 を 受 けた 金 額 は 資 本 金 として 経 理 され 法 人 税 法 上 の 資 本 金 等 の 額 となります( 法 令 81 一 ) 持 分 の 定 めのない 医 療 法 人 の 資 本 金 等 の 額 はありません ⑵ 持 分 のある 医 療 法 人 が 持 分 のない 医 療 法 人 に 移 行 した 場 合 1 資 本 金 等 の 額 持 分 の 定 めのある 医 療 法 人 から 持 分 の 定 めのない 医 療 法 人 に 移 行 した 場 合 における 資 本 金 等 の 額 は 定 款 変 更 直 前 の 資 本 金 等 の 額 の 全 額 を 減 額 す るため ゼロとなります( 法 令 81 十 四 ) また 持 分 の 定 めのない 医 療 法 人 で 平 成 20 年 4 月 30 日 前 に 資 本 金 等 の 額 を 有 していた 法 人 についても 同 日 に 資 本 金 等 の 額 を 有 しない 法 人 に なったものとみなして 資 本 金 等 の 額 をゼロとしなければなりません(20 年 改 正 法 令 附 則 52) 2 利 益 積 立 金 額 持 分 の 定 めのある 医 療 法 人 から 持 分 の 定 めのない 医 療 法 人 に 移 行 した 場 合 において 出 資 持 分 の 全 部 ( 払 戻 しを 行 わない 場 合 ) 又 は 一 部 ( 出 資 額 を 下 回 る 額 での 払 戻 しを 行 った 場 合 )の 払 戻 しをしなかったときは 利 益 が 生 ず るとの 理 解 の 下 に その 利 益 は 益 金 不 算 入 となり( 法 令 136 の42) 利 益 積 立 金 額 を 構 成 するものとされています( 法 令 91 一 チ 9の21 一 チ) また 持 分 の 定 めのない 医 療 法 人 で 平 成 20 年 4 月 30 日 前 に 資 本 金 等 の 額 を 有 していたものについても 同 日 に 資 本 金 等 の 額 を 有 しない 法 人 になっ たものとみなして 減 少 させる 資 本 金 等 の 額 と 同 額 の 利 益 積 立 金 額 を 増 加 させます( 法 令 91 五 20 年 改 正 法 令 附 則 63) 平 成 20 年 度 改 正 により 持 分 の 定 めのない 医 療 法 人 は すべて 利 益 積 立 金 額 のみの 法 人 として 整 理 されています
350 第 Ⅱ 部 医 療 法 人 の 税 務 2 基 金 代 替 基 金 ⑴ 基 金 等 の 表 示 基 金 とは 持 分 の 定 めのない 社 団 医 療 法 人 に 拠 出 された 金 銭 その 他 の 財 産 であって 拠 出 者 に 対 して 返 還 義 務 を 負 うものです( 医 法 規 則 30 の 37) 代 替 基 金 とは 基 金 の 返 還 をする 場 合 に 返 還 をする 基 金 に 相 当 する 金 額 を 代 替 基 金 として 貸 借 対 照 表 上 の 純 資 産 額 に 計 上 した 金 額 です 基 金 及 び 代 替 基 金 は 貸 借 対 照 表 上 の 純 資 産 の 部 に 基 金 及 び 代 替 基 金 の 科 目 をもって 計 上 しなければなりません( 医 療 法 人 の 基 金 について 平 成 19 年 3 月 30 日 医 政 発 第 0330051 号 各 都 道 府 県 知 事 宛 厚 生 労 働 省 医 政 局 長 通 知 ) ⑵ 税 務 上 の 基 金 の 取 扱 い 基 金 は 拠 出 者 に 返 還 義 務 を 負 うものであり 株 主 等 から 出 資 を 受 けた 金 額 とは 異 なるため 貸 借 対 照 表 の 純 資 産 の 部 に 計 上 されていても 資 本 金 等 の 額 には 該 当 せず 税 務 上 債 務 とされています ⑶ 税 務 上 の 代 替 基 金 の 取 扱 い 代 替 基 金 も 基 金 と 同 様 に 貸 借 対 照 表 の 純 資 産 の 部 に 計 上 されていても 利 益 剰 余 金 からの 振 替 により 生 ずるものであり 株 主 から 出 資 を 受 けたも のとは 異 なるものであることから 資 本 金 等 の 額 には 該 当 しません 3 同 族 会 社 税 制 の 非 適 用 同 族 会 社 とは 会 社 の 株 主 等 (その 会 社 が 自 己 の 株 式 又 は 出 資 を 有 する 場 合 のその 会 社 を 除 く )の3 人 以 下 並 びにこれらと 政 令 で 定 める 特 殊 の 関 係 のある 個 人 及 び 法 人 がその 会 社 の 発 行 済 株 式 又 は 出 資 (その 会 社 が 有 す る 自 己 の 株 式 又 は 出 資 を 除 く )の 総 数 又 は 総 額 の 100 分 の 50 を 超 える 数 又 は 金 額 の 株 式 又 は 出 資 を 有 する 場 合 その 他 政 令 で 定 める 場 合 におけるそ の 会 社 をいいます( 法 法 2 十 ) 会 社 法 上 の 会 社 である 株 式 会 社 合 名 会 社 合 資 会 社 又 は 合 同 会 社 や 外 国 の 法 令 に 準 拠 して 設 立 された 外 国 会 社 資 産 流 動 化 に 関 する 法 律 上 の 特 定 目 的 会 社 などは 会 社 ですが 医 療 法 人 は 会 社 ではありません このため 役 員 給 与 の 損 金 不 算 入 ( 法 法 34 1 二 三 )や 特 定 同 族 会 社
第 2 章 医 療 法 人 の 法 人 税 351 の 特 別 税 率 ( 法 法 67) 役 員 とみなされる 使 用 人 ( 法 令 71 二 )などの 同 族 会 社 に 関 して 定 められている 法 人 税 法 上 の 規 定 は 医 療 法 人 に 対 しては 適 用 されません 同 族 会 社 等 の 行 為 計 算 の 否 認 規 定 ( 法 法 132 所 法 157 相 法 64)については 医 療 法 人 が 次 のすべての 要 件 に 当 てはまる 場 合 には 適 用 があります 1 3 以 上 の 病 院 その 他 の 事 業 所 を 有 すること 2 その 事 業 所 の2 分 の1 以 上 にあたる 事 業 所 につき その 事 業 所 の 院 長 その 他 の 事 業 主 宰 者 又 はその 親 族 等 が 前 にその 事 業 所 において 個 人 として 事 業 を 営 んでいた 事 実 があること 3 上 記 2の 事 実 がある 院 長 等 がその 医 療 法 人 の 発 行 済 株 式 数 又 は 出 資 の 総 数 の3 分 の2 以 上 を 保 有 すること なお 同 族 会 社 等 の 行 為 計 算 の 否 認 規 定 については 上 記 の 要 件 に 該 当 しない 非 同 族 会 社 であっても その 適 用 が 認 められた 判 決 があります 2 2 広 島 高 裁 昭 和 43 年 3 月 27 日 判 決 ( 昭 和 42 年 ( 行 コ) 第 15 号 法 人 税 更 正 決 定 取 消 請 求 控 訴 事 件 ( 棄 却 )( 確 定 )) 法 人 税 法 が 同 族 会 社 の 行 為 計 算 の 否 認 規 定 を 設 けたのは 同 族 会 社 の 社 員 構 成 の 特 殊 性 によるものであり 同 族 会 社 にあってはとかく 租 税 回 避 行 為 が 行 なわれ がちであるところから 適 正 な 課 税 を 行 おうとする 趣 旨 に 出 たものであって 非 同 族 会 社 について 右 の 如 き 規 定 がないからといつて 経 済 的 合 理 性 を 無 視 した 不 自 然 な 行 為 計 算 をとることにより 法 人 税 を 回 避 軽 減 したこととなるような 場 合 に その 行 為 計 算 の 否 認 が 許 されないと 解 すべき 理 由 はない
352 第 Ⅱ 部 医 療 法 人 の 税 務 第 3 節 所 得 金 額 の 計 算 1 普 通 法 人 に 該 当 する 医 療 法 人 社 会 医 療 法 人 以 外 の 医 療 法 人 は 普 通 法 人 に 該 当 し 各 事 業 年 度 のすべて の 所 得 に 対 して 法 人 税 が 課 税 されます 全 所 得 課 税 という 点 では 特 定 医 療 法 人 も 同 様 であり 他 の 持 分 の 定 め のない 医 療 法 人 と 特 定 医 療 法 人 が 異 なるのは 税 率 のみです 2 公 益 法 人 等 に 該 当 する 医 療 法 人 ( 社 会 医 療 法 人 ) 社 会 医 療 法 人 は 公 益 法 人 等 に 該 当 し 収 益 事 業 から 生 ずる 所 得 に 対 し てのみ 法 人 税 が 課 税 されます 医 療 法 人 が 行 う 医 療 保 健 業 は 収 益 事 業 に 該 当 しますが 社 会 医 療 法 人 が 行 う 医 療 保 険 業 は 収 益 事 業 の 範 囲 から 除 外 されています( 法 令 5 1 二 十 九 チ) なお 社 会 医 療 法 人 が 解 散 した 場 合 には 全 所 得 に 対 して 課 税 が 行 われ ます なぜならば 社 会 医 療 法 人 が 解 散 すると 社 会 医 療 法 人 の 承 認 要 件 であ る 救 急 事 業 等 確 保 事 業 を 実 施 しなくなることから 社 会 医 療 法 人 の 認 定 は 取 り 消 され( 医 法 64 の2) 累 積 所 得 金 額 に 対 する 課 税 がなされた 上 で( 法 法 64 の4) 普 通 法 人 に 移 行 することになるためです
第 2 章 医 療 法 人 の 法 人 税 353 第 4 節 収 益 の 計 上 時 期 1 収 益 の 計 上 時 期 医 療 法 人 が 患 者 に 行 う 医 療 行 為 は 患 者 との 間 で 口 頭 による 治 療 契 約 を 結 んだ 上 で 行 われており 治 療 契 約 は 民 法 上 の 準 委 任 契 約 ( 民 法 656)と 解 されています 準 委 任 契 約 は 委 任 契 約 が 準 用 されますが 委 任 契 約 に ついては 当 事 者 の 一 方 が 法 律 行 為 をすることを 相 手 方 に 委 託 し 相 手 方 がこれを 承 諾 することによって その 効 力 を 生 ずる ( 民 法 643)とされて います そして この 収 益 の 計 上 時 期 は 役 務 の 提 供 ( 医 療 行 為 )が 完 了 した 時 点 となります つまり 入 金 の 有 無 に 関 わらず 患 者 の 診 療 が 終 了 した 段 階 で 収 益 を 計 上 することになります 治 療 費 の 一 部 を 保 険 請 求 できる 場 合 には 病 院 窓 口 で 患 者 の 一 部 負 担 金 のみが 入 金 となるため 残 額 を 未 収 入 金 に 計 上 しな ければなりません 期 中 現 金 基 準 で 売 上 を 計 上 している 場 合 には 期 末 に 未 収 入 金 を 計 上 することになります 2 窓 口 収 入 ⑴ 自 己 負 担 割 合 窓 口 収 入 とは 外 来 患 者 や 入 院 患 者 の 一 部 負 担 金 につき 病 院 の 窓 口 で 入 金 される 金 額 をいいます 入 院 患 者 に 対 しては 定 期 的 に 締 め 日 を 設 け て 請 求 し 口 座 振 込 又 は 窓 口 にて 入 金 してもらうのが 通 例 です 保 険 診 療 の 一 部 負 担 割 合 は 国 保 及 び 社 保 では3 割 老 人 保 健 医 療 では1 割 ( 高 額 所 得 者 は3 割 )となっています また 乳 幼 児 医 療 や 母 子 家 庭 等 の 公 費 受 給 者 証 の 提 示 があれば 国 又 は 都 道 府 県 等 が 患 者 の 一 部 負 担 金 を 負 担 するため 窓 口 収 入 はありません 後 日 国 又 は 都 道 府 県 等 に 請 求 をすることになります 社 会 保 険 の 適 用 の ない 自 由 診 療 の 場 合 には 治 療 費 の 全 額 が 窓 口 収 入 となります ⑵ 入 院 収 入 入 院 患 者 の 一 部 負 担 金 は 定 期 的 に 締 め 日 を 設 けて 請 求 をしているので 期 末 において 未 請 求 のものや 未 入 金 のものがないかの 確 認 が 必 要 です 患 者 へ 請 求 し 未 収 となっているものは 電 子 カルテを 導 入 している 医
354 第 Ⅱ 部 医 療 法 人 の 税 務 療 機 関 では 電 子 カルテのデータを 確 認 することにより 把 握 が 可 能 です また レセプトコンピュータを 導 入 している 医 療 機 関 は レセプトコン ピュータのデータや 未 収 金 台 帳 などにより 把 握 が 可 能 です 期 末 において 診 療 行 為 を 行 ったが 患 者 への 請 求 を 行 っていないという ケースもないとは 限 りませんが このようなものは ヒアリング 等 により 把 握 するしかありません ⑶ 現 金 実 査 窓 口 収 入 はその 大 部 分 が 現 金 であるため 現 金 過 不 足 や 不 正 が 起 こり 易 く 毎 日 きちんと 管 理 ( 実 査 )する 必 要 があります そのため 2 名 で 管 理 する 体 制 をお 勧 めします また 上 司 が 予 告 なく 現 金 実 査 を 行 うことも 不 正 の 防 止 に 効 果 的 です ⑷ 自 由 診 療 報 酬 の 注 意 点 自 由 診 療 報 酬 には 健 康 診 断 診 断 書 作 成 収 入 歯 科 のインプラント 収 益 などがあります これらは 保 険 請 求 の 対 象 とならないため 計 上 漏 れが ないよう 管 理 する 必 要 があります また 消 費 税 の 課 税 取 引 となることに も 注 意 してください ⑸ 一 部 負 担 金 の 免 除 従 業 員 に 対 して 福 利 厚 生 の 一 環 として 一 部 負 担 金 を 免 除 している 医 療 機 関 があります 一 般 的 な 診 療 報 酬 の 値 引 きは 保 険 医 療 機 関 及 び 保 険 医 療 養 担 当 規 則 5 条 により 禁 止 されています また 免 除 分 を 何 も 処 理 せず その 金 額 が 多 額 であるときは レセプトコンピュータのデータから 徴 収 し なかった 金 額 が 把 握 できるため その 原 因 が 税 務 上 問 題 となることがあり ます このため 一 部 負 担 金 の 免 除 をする 場 合 でも 窓 口 では 一 度 支 払 いをしてもらい その 後 給 与 を 支 給 するときに 一 緒 に 返 金 することで 税 務 上 及 び 医 療 法 上 の 問 題 を 回 避 することができます この 場 合 には 福 利 厚 生 費 と 診 療 収 益 の 両 建 ての 会 計 処 理 をしなければなりません 社 会 保 険 診 療 報 酬 が 5,000 万 円 以 下 の 医 療 法 人 はその 社 会 診 療 報 酬 に 係 る 経 費 を 概 算 で 計 算 することができます( 措 法 67)が 両 建 て 処 理 をしなかった 結 果 税 務 調 査 で 免 除 分 の 収 入 計 上 漏 れが 指 摘 され 概 算 計 算 を 否 認 された 事 例 もあります
第 2 章 医 療 法 人 の 法 人 税 355 ( 仕 訳 例 ) ⑴ 従 業 員 の 治 療 費 のうち 自 己 負 担 部 分 3 千 円 は 医 療 法 人 が 負 担 することになっています 現 金 3 千 円 / 外 来 診 療 収 益 3 千 円 ⑵ 翌 月 の 給 与 と 一 緒 に 返 金 します 福 利 厚 生 費 3 千 円 / 現 金 3 千 円 また 理 事 長 など 特 定 の 者 について 従 業 員 と 異 なる 基 準 で 一 部 負 担 金 の 免 除 をしている 場 合 には その 免 除 額 は 税 務 上 の 役 員 賞 与 となるものと 考 えられます 3 社 会 保 険 診 療 報 酬 ⑴ 締 め 日 及 び 入 金 日 医 療 法 人 の 保 険 請 求 の 手 続 きは 毎 月 月 末 に 締 め 翌 月 10 日 までにレセ プト( 診 療 報 酬 明 細 書 )を 保 険 者 へ 提 出 します 請 求 した 金 額 は 請 求 月 の 翌 々 月 に 入 金 がされます このため 期 末 では2か 月 分 の 医 業 未 収 金 が 計 上 されているはずです ⑵ レセプト 返 戻 減 額 査 定 保 険 者 への 請 求 額 は 必 ず2か 月 後 に 入 金 されるとは 限 りません レセ プトの 一 部 に 不 備 があった 場 合 には 審 査 支 払 機 関 ( 社 会 保 険 診 療 報 酬 支 払 基 金 国 民 健 康 保 険 団 体 連 合 会 )から 差 し 戻 され その 部 分 の 入 金 はあ りません これを 返 戻 といいます その 原 因 としては 保 険 証 の 記 号 番 号 の 不 備 診 療 内 容 と 病 名 の 不 一 致 などがあります 返 戻 された 場 合 支 払 が 遅 れるだけで 診 療 報 酬 が 減 らされた 訳 ではありませんので 売 上 を 取 り 消 してはいけません その 後 適 正 な 内 容 に 修 正 し 再 提 出 をすれば 入 金 されます 一 方 請 求 額 から 減 額 減 点 される 場 合 ( 減 額 査 定 )があります この 場 合 の 会 計 処 理 は 減 額 の 通 知 ( 入 金 )があった 月 に 保 険 等 査 定 減 の 科 目 で 売 上 の 取 消 しをします 決 算 月 (3 月 )とその 前 月 (2 月 )の 診 療 報 酬 について2か 月 後 に 減 額 査 定 があった 場 合 3 月 末 の 決 算 調 整 仕 訳 で
356 第 Ⅱ 部 医 療 法 人 の 税 務 売 上 を 取 り 消 します 法 人 税 法 上 事 業 年 度 終 了 の 日 の 現 況 により 適 正 に 見 積 もることになります( 法 基 通 2-1-4)ので 減 額 査 定 後 の 金 額 ( 減 額 された 金 額 のうち 再 請 求 する 金 額 を 含 みます )が 適 正 な 見 積 額 と 解 さ れます その 減 額 査 定 に 不 服 の 場 合 6か 月 以 内 に 再 審 査 請 求 をすること ができます 減 額 査 定 があった 月 の 翌 月 までに 再 請 求 をするかどうかを 検 討 し 再 審 査 請 求 をする 場 合 には 再 審 査 請 求 をした 月 の 診 療 収 益 に 計 上 します ( 仕 訳 例 ) ⑴ 5 月 診 療 6 月 10 日 に 100 万 円 で 請 求 しました 医 業 未 収 金 100 万 円 / 診 療 収 益 100 万 円 ⑵ 7 月 25 日 に 10 万 円 減 額 されて 入 金 されてきました 預 金 90 万 円 / 医 業 未 収 金 100 万 円 保 険 等 査 定 減 10 万 円 / ⑶ 8 月 10 日 に 7 月 診 療 分 110 万 円 と 減 額 された 分 の 10 万 円 を 合 わせて 請 求 しました 医 業 未 収 金 120 万 円 / 診 療 収 益 120 万 円 なお 減 額 査 定 があった 場 合 患 者 の 一 部 負 担 金 も 売 上 の 取 消 しをし 返 還 しないといけません しかし 返 還 請 求 は その 患 者 自 らが 各 健 保 組 合 等 から 送 られてくる 医 療 費 通 知 をもとに 医 療 機 関 に 対 して 行 うことに なっており 医 療 法 人 が 実 際 に 返 還 することはあまり 多 くありません 実 務 上 一 部 負 担 金 については 実 際 に 返 還 請 求 があったときに 売 上 の 取 消 しを 行 うのが 通 例 です 4 自 賠 責 保 険 診 療 による 収 入 自 賠 責 保 険 ( 自 動 車 損 害 賠 償 責 任 保 険 自 動 車 損 害 賠 償 責 任 共 済 )とは 自 動 車 損 害 賠 償 保 障 法 によって 自 動 車 及 び 原 動 機 付 自 転 車 に 加 入 が 義 務 付 けられている 損 害 保 険 です 自 賠 責 保 険 診 療 による 収 入 は 医 療 法 人 か ら 損 害 保 険 会 社 に 治 療 費 を 請 求 するので 患 者 が 窓 口 で 金 銭 を 支 払 うこと はありません 交 通 事 故 でムチ 打 ちになった 場 合 など 治 療 期 間 が 数 週 間 から 数 か 月 に 及 びますが この 場 合 にも 診 療 報 酬 の 計 上 は 毎 回 の 診 療 が 終 了 した 時 と
第 2 章 医 療 法 人 の 法 人 税 357 なります 一 方 保 険 請 求 は 患 者 の 治 療 費 がある 程 度 固 まった 時 点 で 行 われます ので 期 末 においては 保 険 請 求 をしていない 診 療 報 酬 を 集 計 して 未 収 金 に 計 上 する 必 要 があります 保 険 請 求 後 の 入 金 日 について 医 師 会 と 損 害 保 険 協 会 及 び 損 害 保 険 料 率 算 出 機 構 との 申 し 合 わせでは 1 自 賠 責 保 険 のみの 請 求 の 場 合 には 請 求 書 類 の 受 付 日 から2か 月 以 内 に 支 払 を 行 い 2 自 賠 責 保 険 と 任 意 保 険 の 一 括 請 求 の 場 合 には 請 求 書 類 の 受 付 日 から 翌 月 末 日 までに 支 払 うこととなっ ています しかし 多 くの 場 合 保 険 会 社 と 被 害 者 ( 患 者 )との 間 で 過 失 相 殺 をめ ぐり 協 議 中 であったり 被 害 者 が 保 険 料 を 滞 納 しているなどの 理 由 により 決 まった 時 期 に 入 金 されないことも 少 なくありません 定 期 的 に 入 金 がさ れないため 自 賠 責 管 理 台 帳 を 作 成 し 期 末 に 未 収 金 の 計 上 漏 れがないよ うに 日 々 管 理 をする 必 要 があります また 自 賠 責 保 険 収 入 の 入 金 口 座 は 損 害 保 険 会 社 ごとに 指 定 すること ができますが 1つの 口 座 で 管 理 するのがよいでしょう 5 休 日 夜 間 診 療 の 委 託 料 医 療 法 人 は 都 道 府 県 医 師 会 から 委 託 を 受 け 輪 番 で 休 日 夜 間 診 療 を 行 う 場 合 があります この 場 合 診 療 費 は 患 者 負 担 で 診 療 報 酬 は 医 療 法 人 の 売 上 となりますが その 他 医 療 法 人 に 対 し 医 師 会 から 委 託 料 が 支 給 さ れます 医 療 法 人 が 受 け 取 る 委 託 料 は 1 休 日 1 医 療 単 位 を 基 礎 として 計 算 されますので 未 請 求 の 委 託 料 についても 収 益 計 上 しなくてはなりませ ん また 締 め 日 及 び 入 金 日 は 契 約 により 異 なりますので 必 ず 確 認 を してください なお この 委 託 料 は 消 費 税 の 課 税 売 上 となります 6 健 康 診 断 予 防 接 種 の 自 治 体 補 助 金 患 者 が 健 康 診 断 や 予 防 接 種 を 受 ける 場 合 に 市 町 村 が 診 察 料 の 一 部 を 補 助 することがあります この 補 助 金 は 医 療 法 人 が 各 市 町 村 へ 請 求 するの ですが 保 険 請 求 のように 請 求 日 と 入 金 日 が 決 まっていません 医 療 法 人 によっては 3か 月 単 位 6か 月 単 位 に 請 求 しているようです 未 請 求 のまま 期 末 を 迎 えたときは 未 収 入 金 に 計 上 されているか 確 認 が
358 第 Ⅱ 部 医 療 法 人 の 税 務 必 要 です また 各 市 町 村 へ 請 求 をしても 未 入 金 で 期 末 を 迎 えることもあります 各 市 町 村 等 への 請 求 額 は 保 険 請 求 のようにレセプト 総 括 表 の 控 えがない ため きちんと 管 理 をし 売 上 の 計 上 漏 れがないように 気 を 付 けてください その 他 各 自 治 体 に 請 求 するものとして 公 費 負 担 ( 老 人 乳 幼 児 母 子 家 庭 等 )する 治 療 を 行 った 場 合 に 作 成 する 書 類 の 事 務 手 数 料 があります が 上 記 と 同 様 に 請 求 日 と 入 金 日 が 決 まっていませんので 気 を 付 けてく ださい 7 矯 正 歯 科 の 診 療 報 酬 矯 正 歯 科 で 行 われる 歯 列 矯 正 収 入 について 国 税 庁 のホームページの 所 得 税 質 疑 応 答 事 例 で 紹 介 されていますが 基 本 的 には 医 療 法 人 において も 同 じ 取 扱 いと 考 えられます 歯 列 矯 正 には 通 常 数 年 の 治 療 期 間 を 必 要 とします この 場 合 に 治 療 期 間 を 通 じての 基 本 料 金 矯 正 装 置 の 代 金 及 び 装 着 料 を 治 療 の 開 始 時 に 一 括 して 入 金 してもらうことも 少 なくありません この 歯 科 矯 正 の 基 本 料 及 び 矯 正 料 ( 基 本 料 等 といいます )の 収 益 計 上 時 期 は 患 者 との 契 約 に 応 じ 次 のようになります 1 矯 正 装 置 の 装 備 などの 役 務 提 供 が 完 了 したときに 基 本 金 等 の 全 額 に ついて 請 求 し 受 領 することになっている 場 合 には その 役 務 提 供 の 完 了 した 日 2 期 間 の 経 過 又 は 役 務 の 提 供 の 進 捗 に 応 じて 基 本 料 等 を 請 求 している 場 合 には その 期 間 の 経 過 した 日 又 はその 役 務 提 供 の 完 了 した 日 3 上 記 以 外 の 場 合 には 次 によります イ 支 払 日 が 定 められている 場 合 には その 支 払 日 ロ 支 払 日 が 定 められていない 場 合 には その 支 払 を 受 けた 日 又 は 請 求 日 ハ 上 記 イ 及 びロのうち 支 払 日 が 矯 正 治 療 を 完 了 した 日 後 となってい る 場 合 には 矯 正 治 療 の 完 了 した 日 8 仕 入 割 戻 し 医 療 法 人 が 医 薬 品 の 仕 入 れを 行 う 場 合 に 年 度 の 仕 入 高 に 応 じて 仕 入 割 戻 しを 受 けている 場 合 があります この 仕 入 割 戻 しは 雑 収 入 として 収