ハートクリニック 家 族 教 室 不 安 障 害 について 2013 年 10 月 6 日 ハートクリニック 医 師 田 村 紀 郎
本 日 の 流 れ 不 安 という 感 情 について 不 安 障 害 という 疾 患 について 不 安 障 害 の 治 療 について 不 安 不 安 障 害 と 家 族 について
不 安 の 役 割 について 不 安 は 身 に 迫 った 危 機 に 対 応 するために 必 要 なシステムです 夜 道 で 物 音 がしたときに 身 体 が 硬 くなる 注 意 力 を 高 め 作 業 効 率 をあげる 面 もあります 久 しぶりに 運 転 する 際 に 手 に 冷 や 汗 をかく 試 験 の 前 日 の 夜 中 に 赤 点 をとることを 想 像 してドキドキしながら 勉 強 する
不 安 は 不 安 以 外 の 形 でも 表 現 されます 他 人 に 過 干 渉 になる イライラする 攻 撃 的 になる 仕 事 や 決 断 が 遅 い めまい 頭 痛 など 身 体 症 状 がでる 身 体 の 調 子 を 過 剰 に 気 にする 確 認 行 為 が 増 える ひきこもる
不 安 について 不 安 自 体 は あって 当 然 のものであり 必 要 なものです 程 度 がつよかったり 不 安 が 別 のかたちであ らわれることは 苦 しいことです 不 安 自 体 のみならず 不 安 をかかえているこ ともストレスになります 不 安 は 繰 り 返 すことで 慣 れることも 多 いもの です
不 安 の 悪 循 環 について 不 安 を 繰 り 返 しても 慣 れていかない 場 合 悪 循 環 が 原 因 となっていることがあります 考 えが 堂 々 巡 りをする 思 考 の 悪 循 環 にな ることがあります 不 安 を 刺 激 する 状 況 を 避 けることを 繰 り 返 す 回 避 の 悪 循 環 になることがあります これらの 悪 循 環 を 不 安 障 害 のかたでは 持 つことが 多 いです
不 安 障 害 に 含 まれる 疾 患 について 不 安 障 害 とは パニック 障 害 社 交 不 安 障 害 ( 社 会 不 安 障 害 ) 全 般 性 不 安 障 害 強 迫 性 障 害 など 不 安 が 過 度 になって 治 療 を 必 要 とする 不 安 を 症 状 の 中 心 とする 障 害 をさします
不 安 障 害 はまれではありません うつ 病 の 約 4 割 に 不 安 障 害 が 合 併 するという 報 告 があります 一 生 のあいだに 女 性 の 約 30% 男 性 の 約 20%がなんらかの 不 安 障 害 にかかるという 報 告 があります 不 安 障 害 はまれな 疾 患 ではありません
不 安 障 害 のもつデメリット 本 来 必 要 である 不 安 も 程 度 が 強 くなると 日 常 生 活 や 社 会 生 活 に 支 障 がでたり 苦 痛 を 感 じたりします 心 理 面 では 強 い 不 安 や 緊 張 を 感 じる 行 動 面 では 不 安 を 感 じる 場 面 を 避 けるなどの 影 響 がでます
病 的 な 不 安 か 否 か? 不 安 が 病 的 か 病 的 でないかを 線 引 きするの は 困 難 な 場 合 があります ただし 本 人 が 不 安 により 苦 痛 を 感 じていれば 医 療 の 対 象 となる 可 能 性 があります 少 しでも 迷 ったら 専 門 家 へ 受 診 をすることを おすすめします
家 族 の 受 診 のすすめかた 家 族 が 受 診 をすすめる 際 は 不 安 障 害 だと 思 うけど 治 る 病 気 と 聞 いたから 安 心 だね など 病 気 扱 いすることのメリットを 伝 えましょう 病 気 という 認 識 をすることで 治 療 にプラス になることをするという 意 識 を 持 つことができ ます
パニック 発 作 について パニック 発 作 は 強 い 不 安 とともに 動 悸 発 汗 口 渇 息 苦 しさ めまい 嘔 気 などが 突 発 的 におこる 発 作 です パニック 発 作 自 体 は とても 苦 しいものです 突 発 的 におこりますが 過 労 や 睡 眠 不 足 など 身 体 的 なストレスや 精 神 的 なストレスが 多 いときはおこりやすい 特 徴 があります
パニック 障 害 について パニック 発 作 が 一 回 のみで 終 われば 問 題 に なりません 発 作 を 繰 り 返 すと また 発 作 がおこるのでは ないか と 悩 まされます 特 定 の 状 況 ( 電 車 や 雑 踏 など 発 作 が 起 こったら 逃 げられないと 思 う 場 所 )を 避 けるようになります そうすると 発 作 がない 場 面 でも 苦 しむことに なり 日 常 生 活 への 影 響 もでます この 状 態 に なると パニック 障 害 とよびます
社 交 不 安 障 害 について 社 交 不 安 障 害 は 注 目 を 浴 びるのではな いか という 場 面 で 強 い 緊 張 がでて 苦 痛 を 感 じたり そういった 場 面 を 避 けるようになって 活 動 が 障 害 された 状 態 です 会 議 で 発 表 をする 権 威 ある 人 と 話 す グ ループ 活 動 に 参 加 する 人 前 で 食 事 をするな どの 場 面 で 症 状 が 出 現 します
社 交 不 安 障 害 について 不 安 とともに 赤 面 動 悸 発 汗 口 渇 息 苦 しさ めまいなどがおこります 社 交 不 安 障 害 は 治 療 による 改 善 が 期 待 さ れます 性 格 とみなすのではなく 疾 患 としてとらえる ことが 重 要 です
全 般 性 不 安 障 害 について 全 般 性 不 安 障 害 は 日 常 の 出 来 事 や 問 題 に 関 して 過 剰 な 不 安 が 持 続 する 状 態 です 不 安 だけでなく 頭 痛 耳 鳴 り めまい 口 渇 肩 こり 動 悸 胸 痛 息 苦 しさ 腹 部 不 快 感 排 尿 困 難 感 頻 尿 など さまざまな 身 体 症 状 を 伴 います
強 迫 性 障 害 について 強 迫 性 障 害 は 本 人 の 意 思 と 無 関 係 に 頭 に 思 い 浮 かぶ 一 定 の 考 え( 強 迫 観 念 )や そ れをやわらげようとする 行 動 ( 強 迫 行 為 )に よって 苦 痛 を 感 じたり 生 活 に 支 障 がでたり する 障 害 です
強 迫 性 障 害 について 汚 れていないか 気 になって 何 度 も 手 を 洗 う 鍵 をかけたか 気 になって 何 度 も 確 認 する 他 人 に 危 害 を 与 えるのではないかと 恐 れる 特 定 の 数 字 を 恐 れて 避 ける など 様 々なことへ のこだわりが 生 じます 不 合 理 だと 理 解 していても どうしても 強 迫 観 念 や 強 迫 行 為 が 繰 り 返 しおこります 家 族 を 確 認 に 巻 き 込 む 場 合 もあります
不 安 障 害 以 外 でも 不 安 は 存 在 します 一 見 不 安 障 害 とみえるかたに 別 の 病 気 であるかたもいます 統 合 失 調 症 ADHDは 特 に 注 意 必 要! 統 合 失 調 症 では 幻 覚 妄 想 がでてくる 考 え がまとまらなくなるなどの 症 状 があります ADHDでは 幼 少 期 から 忘 れ 物 が 多 い 授 業 中 に 座 っていられない 順 序 立 てて 行 動 する ことが 苦 手 などの 症 状 があります
不 安 障 害 の 治 療 薬 剤 治 療 と 精 神 療 法 をおこないます 薬 剤 は 不 安 を 減 らすのみならず 不 安 を 減 らすことにより 思 考 の 悪 循 環 や 回 避 の 悪 循 環 を 改 善 するのにも 有 効 です 薬 剤 は 抗 うつ 薬 (SSRI SNRI 三 環 系 抗 う つ 薬 ) が 中 心 になります 抗 不 安 薬 ( 安 定 剤 ) や 睡 眠 剤 も 適 宜 使 用 します
抗 うつ 薬 の 使 用 法 抗 うつ 薬 は 少 量 から 開 始 し 徐 々に 増 量 してい きます 効 果 がでるには 時 間 がかかります ある 薬 で 効 果 がないかたで 別 の 薬 で 効 果 が でるかたもいます 症 状 が 改 善 したあとに 服 用 を 継 続 することが 症 状 の 再 発 を 防 ぎます
抗 うつ 薬 の 副 作 用 副 作 用 には 頻 度 の 多 いものに だるさ 嘔 気 便 秘 軟 便 などがあります 頻 度 が 少 ないけれど 注 意 したい 副 作 用 に 焦 燥 感 高 揚 気 分 などがあります 副 作 用 は 医 師 に 伝 えていきましょう 急 な 中 断 は めまいや 嘔 気 など 強 い 症 状 が 出 現 することがあります 医 師 と 相 談 しながら 中 止 はしていきましょう
抗 不 安 薬 について 抗 不 安 薬 ( 安 定 剤 ) は 日 中 の 不 安 感 を 軽 減 する 不 安 が 強 まった 際 に 頓 服 として 使 用 す るという 目 的 で 使 用 します 根 本 から 治 療 するというより 対 処 療 法 的 な 目 的 で 使 用 します 副 作 用 は ふらつきや 日 中 の 眠 気 があります 用 量 については 自 己 調 節 で 増 やすことはや めましょう
精 神 療 法 について 精 神 療 法 は 暴 露 療 法 を 主 におこないます 暴 露 療 法 は 簡 単 にいうと 不 安 がおこってさ けていた 状 況 に 少 しづつたちむかい 状 況 に 少 しづつなれて 不 安 を 少 なくしていく 方 法 で す 回 避 の 悪 循 環 の 改 善 に 有 効 です
治 療 の 具 体 例 Aさんは パニック 発 作 をくりかえしていたかた です はじめの 発 作 は 東 海 道 線 の 満 員 電 車 でおこりました 発 作 がまたおこるのではない かと 不 安 になり 電 車 に 乗 れなくなり 通 勤 がで きなくなりました その 後 自 宅 でもたびたび 発 作 はおこりました パニック 障 害 と 診 断 されパ キシル( 抗 うつ 剤 )を10mgから 処 方 され 40mgにしたところ 自 宅 でのパニック 発 作 はお さまりました
しかし また 電 車 に 乗 ると 発 作 がおこるので はないか という 不 安 は 続 きました 電 車 でも 特 に 混 雑 していて 一 駅 の 区 間 が 長 い 電 車 に 乗 るのが 不 安 だとのことでした そこで 主 治 医 より まずは 一 駅 の 区 間 が 短 い 京 浜 東 北 線 にラッシュの 時 間 をさけて 乗 車 するよう 指 示 をうけました はじめは 心 配 はありましたが なんとか 無 事 乗 車 できました
くりかえし 乗 車 しても 発 作 はおきず Aさんに 京 浜 東 北 線 なら 大 丈 夫 かなという 感 覚 がでて きました 医 師 と 相 談 したところ 一 人 でやは りラッシュをさけた 東 海 道 線 に 乗 ってみること を 指 示 されました はじめは 不 安 でしたが 一 人 で 乗 っても 大 丈 夫 でした 繰 り 返 しおこなっ ても 発 作 はおきず 続 いての 指 示 でラッシュ の 時 間 に 東 海 道 線 に 乗 りましたが 問 題 ありま せんでした
その 後 繰 り 返 し 東 海 道 線 へ 乗 車 しても 発 作 は おきませんでした 段 々と 電 車 に 乗 ることへ の 不 安 も 軽 くなり 会 社 へも 電 車 で 通 勤 でき るようになりました パキシル40mgでの 内 服 を1 年 間 続 けた 後 徐 々に 減 量 し 薬 剤 はなく なりましたがその 後 発 作 はおきずにすごせて います
臨 床 心 理 士 による 治 療 について じっくりお 話 しをするのが 必 要 なかたには 臨 床 心 理 士 によるカウンセリングをおすすめす ることもあります 当 院 では 臨 床 心 理 士 による 集 団 認 知 行 動 療 法 と リラクセーション もおこなっています 臨 床 心 理 士 による 治 療 については 医 師 より 適 切 なものをすすめさせていただいています
入 院 治 療 について 不 安 障 害 は 外 来 で 治 療 することが 多 いです 症 状 が 生 活 全 般 に 影 響 しており 自 宅 での 加 療 が 難 しい 自 宅 で 症 状 が 強 くでてしまう 暴 力 的 な 行 動 がみられるなどの 場 合 には 入 院 での 治 療 が 必 要 な 場 合 もあります 入 院 に 関 しては 当 院 ソーシャルワーカーと 連 携 をとりすすめさせていただきます
不 安 障 害 に 強 くなる 生 活 習 慣 睡 眠 をしっかりとる 酒 タバコ カフェインに 注 意 する 定 期 的 に 運 動 する 無 理 なダイエットはしない
不 安 障 害 をもつかたの 子 育 てについて 不 安 が 強 いかたの 子 育 てでは 過 保 護 と 批 判 がでやすいといわれています 過 保 護 と 批 判 は 子 供 が 自 身 の 不 安 へ 対 処 していく のを 難 しくするといわれています 親 御 さんが 自 身 の 不 安 を 認 め 対 処 している 姿 をみせること 子 供 に 対 しての 不 安 も 率 直 に 伝 えていくことが 子 供 が 不 安 に 対 処 しや すくするといわれています
不 安 障 害 をもつ 患 者 さんへの 家 族 の 役 割 家 族 がすべきなのは 治 療 ではなく 支 え る 手 助 けする ことと 考 えましょう 話 をよく 聞 き 尊 重 しましょう ゆっくりやろうね 大 丈 夫 など 安 心 させて あげましょう 安 心 という 空 気 で 相 手 を 包 む ことを 意 識 し ましょう
最 後 に 今 日 お 話 ししたことは しなければならない ではなく こうなったらいいな こう 考 えられた らいいな くらいのスタンスでとらえてください まだできていない ことよりも ここまでできる ようになった ことに 注 目 していきましょう できるようになった ことに 注 目 をしていくと 安 心 につながります