講 義 2 乳 幼 児 期 学 童 期 の 気 になるくせ 平 成 27 年 度 子 どもの 心 の 診 療 医 養 成 研 修 会 乳 幼 児 期 学 童 期 の 気 になるくせ 金 生 由 紀 子 東 京 大 学 医 学 系 研 究 科 こころの 発 達 医 学 分 野 東 京 大 学 医 学 部 附 属 病 院 こころの 発 達 診 療 部 2016 年 2 月 11 日 11:30~12:30 平 和 と 労 働 センター 全 労 連 2 階 大 ホール 乳 幼 児 期 学 童 期 の 気 になるくせ 習 癖 とチック チックの 定 義 と 臨 床 特 徴 チック 症 の 診 断 チック 症 の 併 発 症 チックと 併 発 症 の 経 過 習 癖 の 概 要 チック 症 習 癖 の 治 療 と 支 援 20
習 癖 とチック 習 癖 とは 繰 り 返 されることで 身 について 固 定 さ れた 行 動 である オルソンが 習 慣 的 に 身 体 をいじる 動 作 を 神 経 性 習 癖 と 総 称 してから 医 療 において 検 討 される ようになった オルソンはチックを 神 経 性 習 癖 に 含 めたが カナーは 両 者 を 区 別 した 様 々な 習 癖 やチックは 発 達 の 過 程 で 認 められ 併 発 する 場 合 が 少 なくない 習 癖 は 随 意 チックは 不 随 意 とすると 相 違 が 目 立 つが 機 序 を 理 解 して 対 応 する 上 では くせ とまとめた 方 が 好 都 合 と 思 われる 習 癖 の 理 解 の 基 本 かつては 心 因 性 であり 親 の 育 て 方 などに 問 題 があるとされていた 神 経 系 の 発 達 に 対 応 した 好 発 年 齢 があること しば しば 素 因 が 関 与 することなどから 子 ども 側 の 生 物 学 的 要 因 の 関 与 が 大 きいと 考 えられるようになった 家 庭 や 学 校 などの 環 境 がかかわる 心 理 社 会 的 要 因 が 複 合 することがある チックと 共 通 する 理 解 の 仕 方 21
くせやチックの 頻 度 の 年 齢 による 変 化 ( 阿 部 和 彦, 1997) チックの 定 義 と 概 要 チックは 突 発 的 急 速 反 復 性 非 律 動 性 の 運 動 あるいは 発 声 である 運 動 チック 音 声 チック 単 純 チック( 持 続 が 短 く 明 らかに 無 意 味 ) 単 純 運 動 チック まばたき 顔 しかめ 首 ふり 肩 すくめなど 単 純 音 声 チック 咳 払 い 鼻 鳴 らし 奇 声 をあげるなど 複 雑 チック( 持 続 がやや 長 く 意 味 があるように 見 える) 複 雑 運 動 チック 顔 の 表 情 を 変 える 跳 ねる 触 る 地 団 太 を 踏 む 匂 いを かぐなど 複 雑 音 声 チック 状 況 に 会 わない 言 葉 汚 言 症 (コプロラリア) 反 響 言 語 (エコラリア)など 22
チックの 半 随 意 性 と 前 駆 衝 動 (premonitory urges) チックは 一 時 的 また 部 分 的 であればしばしば 随 意 的 抑 制 が 可 能 である 全 くの 不 随 意 とは 言 い 難 い チックには チックをしなくてはいられないとかムズムズする という 感 覚 ( 前 駆 衝 動 )を 伴 うことがある 不 随 意 に 生 じる 感 覚 に 対 する 随 意 的 な 反 応 か? 前 駆 衝 動 の 分 布 前 駆 衝 動 に 気 づいた ら チックがある 程 度 はコントロールできる ようになる 可 能 性 を 示 唆 している (Leckman et al., Am J Psychiatry, 1993) チックの 変 動 性 と 経 過 の 特 徴 チックは 自 然 の 経 過 として 部 位 種 類 頻 度 が 変 動 したり 軽 快 や 増 悪 を 繰 り 返 したりする チックは 心 理 的 要 因 疲 労 などによっても 変 動 することが しばしばある 不 安 や 緊 張 の 大 きな 変 化 ( 増 加 減 少 共 に) 興 奮 疲 労 月 経 前 安 定 した 緊 張 度 作 業 への 集 中 睡 眠 長 期 的 な 経 過 としては 10 歳 から15 歳 くらいにチックの 最 悪 時 を 迎 えて 2/3 以 上 が 成 人 期 初 めまでに 消 失 や 軽 快 に 転 じる 但 し 少 数 では 成 人 まで 重 症 なチックが 続 いたり 成 人 後 に 再 発 したりする 成 人 後 に 本 人 の 中 では 最 も 重 症 となることがある 23
チック 症 の 診 断 (DSM 5) チックの 種 類 運 動 チック 音 声 チック 持 続 期 間 暫 定 的 チック 症 1 年 > 持 続 性 ( 慢 性 ) 運 動 チック 症 1 年 持 続 性 ( 慢 性 ) 音 声 チック 症 1 年 トゥレット 症 ( 多 彩 ) 1 年 ジル ド ラ トゥレットの 最 初 の 報 告 では 汚 言 症 (コプロラリア)や 反 響 言 語 (エコラリア)がトゥレット 症 候 群 の 主 要 な 症 状 とされたが 現 在 では 診 断 に 必 須 ではない 但 し やってはいけないと 思 えば 思 うほどやってしまう 刺 激 につられてやってしまうというトゥレット 症 候 群 における 衝 動 統 制 の 問 題 はこれらの 症 状 によく 表 れている 発 達 障 害 とチック 症 脳 機 能 の 障 害 症 状 が 通 常 低 年 齢 で 発 現 発 達 障 害 者 支 援 法 Neurodevelopmental Disorders 神 経 発 達 症 群 <DSM 5> 自 閉 症 アスペルガー 症 候 群 その 他 の 広 汎 性 発 達 障 害 学 習 障 害 注 意 欠 陥 多 動 性 障 害 その 他 言 語 の 障 害 協 調 運 動 の 障 害 心 理 的 発 達 の 障 害 <ICD 10のF8> 小 児 期 及 び 青 年 期 に 通 常 発 症 する 行 動 及 び 情 緒 の 障 害 <ICD 10のF9> チック 症 が 含 まれる Intellectual Disabilities 知 的 能 力 障 害 群 Communication Disorders コミュニケーション 症 群 Autism Spectrum Disorder (ASD) 自 閉 スペクトラム 症 Attention Deficit/Hyperactivity Disorder (ADHD) 注 意 欠 如 多 動 症 Specific Learning Disorder 限 局 性 学 習 症 Motor Disorders 運 動 症 群 発 達 性 協 調 運 動 症 (DCD) Tic Disorders チック 症 群 24
発 達 障 害 としてのチック 症 の 理 解 典 型 的 な 発 達 障 害 との 相 違 チックは 成 長 の 過 程 で 生 じる 運 動 症 状 であり それ 以 前 に は 認 められない チックはたとえ 慢 性 化 しても 長 期 的 には 軽 快 して 成 人 後 は 治 療 を 要 しない 人 も 多 い 発 達 障 害 としての 特 徴 脳 機 能 の 発 達 の 障 害 症 状 が 低 年 齢 で 発 現 するとの 基 本 的 な 特 徴 に 加 えて 密 接 に 関 連 する 併 発 症 ( 及 びその 症 状 )を 含 めると 長 期 にわたって 持 続 する 診 断 閾 値 に 達 しない 場 合 を 含 めると 他 の 発 達 障 害 を 伴 いやすい 但 し 長 期 にわたって 難 病 としての 対 応 を 要 することも 時 にある まず 病 気 として 対 応 する 次 に 発 達 障 害 として 理 解 して 付 き 合 っていく やがて 上 手 に 付 き 合 えるようになると 発 達 特 性 個 性 として 受 け 入 れられるようになる チック 症 の 併 発 症 の 広 がり 高 率 に 併 発 する 疾 患 強 迫 症 (obsessive-compulsive disorder: OCD) 注 意 欠 如 多 動 症 (attention-deficit/hyperactivity disorder: ADHD) 学 習 障 害 (learning disabilities: LD) 習 癖 や 強 迫 スペクトラム 障 害 に 含 ま れる 疾 患 小 児 期 発 症 流 暢 症 ( 吃 音 ) 抜 毛 症 醜 形 恐 怖 症 摂 食 障 害 衝 動 性 の 目 立 つ 強 迫 スペクト ラム 障 害 には 買 い 物 強 迫 ギャ ンブル 依 存 も 含 まれる 自 閉 スペクトラム 症 (autism spectrum disorder: ASD) その 他 の 疾 患 症 状 不 安 症 気 分 障 害 睡 眠 障 害 怒 り 発 作 25
チック 症 とOCD 小 児 OCDとチック 症 は 相 互 に 高 い 併 発 率 を 示 す 小 児 OCDでは チック 症 が60%に トゥレット 症 候 群 に 限 って も15%に 併 発 していたとの 報 告 もある 一 方 トゥレット 症 候 群 では OCDが30%に 併 発 しており 診 断 基 準 に 達 しない 強 迫 症 状 を 含 めると 併 発 率 は50% 以 上 に なるとされる トゥレット 症 候 群 では チックが10 歳 代 半 ばまでに 最 悪 時 を 迎 えて その 後 はむしろ 強 迫 症 状 の 方 が 問 題 になる 場 合 が 少 なくない チック 症 状 と 強 迫 症 状 ぴったり 感 じるまでチックをしないと 気 がすまない 痛 いと 感 じるまでチックをしないと 気 がすまない 熱 い 物 に 触 ってしまう 壊 れやすい 物 を 叩 いたり 曲 げたりしてしまう( 危 ないとか 大 切 と 思 うと 余 計 に やってしまう) 自 分 を 叩 く 自 分 の 舌 を 噛 む 強 迫 的 なチック( 特 に 複 雑 チック)かチック 的 な 強 迫 か 区 別 しにくい 対 応 にあたっては 区 別 しにくい 特 徴 を 踏 ま えて 本 人 の 大 変 さを 受 け 止 めて 対 応 の 工 夫 を 図 る 26
チック 症 とADHD トゥレット 症 候 群 にはADHDを 併 発 しやすく 海 外 の 報 告 ではその 頻 度 が 約 50%とされる ADHDではチック 症 が8~10%に 併 発 するとされる ADHDを 併 発 してもチック 症 状 はあまり 変 わらないが 衝 動 性 攻 撃 性 が 高 まり 社 会 適 応 に 支 障 をきたしや すくなる 怒 り 発 作 (Rage attack) 状 況 にはとても 過 度 または 不 適 切 にひどく 腹 を 立 ててコントロールできなくなることである 言 葉 による 攻 撃 あるいは 暴 言 器 物 への 物 理 的 な 攻 撃 他 人 への 身 体 的 な 攻 撃 を 含 む 本 人 の 元 来 の 性 格 には 似 つかわしくない 怒 り 発 作 を 有 するトゥレット 症 候 群 では 併 発 症 特 にADHD OCD 反 抗 挑 戦 性 障 害 を 有 することが 多 いとの 報 告 もあるが 一 貫 せず また 不 安 や 抑 うつ 強 迫 性 が 高 い 可 能 性 があり 自 分 の 思 い 通 りにいかずに 自 己 評 価 が 低 下 してい ないか 配 慮 が 望 まれる 27
ASDの 中 核 症 状 とチックとの 鑑 別 の 必 要 性 行 動 興 味 または 活 動 の 限 定 された 反 復 的 な 行 動 様 式 エコラリアがASD 特 有 の 症 状 か 複 雑 音 声 チックか 鑑 別 点 は 出 現 形 態 発 達 水 準 繰 り 返 される 運 動 が 常 同 運 動 かチックか 鑑 別 点 は 運 動 の 部 位 運 動 の 性 状 本 人 の 感 じ 方 心 理 社 会 的 要 因 の 影 響 運 動 の 変 動 性 ASDの 中 核 症 状 とトゥレット 症 候 群 との 関 連 社 会 的 コミュニケーション 及 び 対 人 的 相 互 反 応 における 持 続 的 な 欠 陥 典 型 的 なトゥレット 症 候 群 では 他 者 を 気 遣 って 社 交 的 で 話 し 上 手 であり 大 きく 異 なる 行 動 興 味 または 活 動 の 限 定 された 反 復 的 な 行 動 様 式 トゥレット 症 候 群 全 体 として やってはいけないと 思 えば 思 うほど やってしまうという 衝 動 性 を 伴 う 強 迫 症 状 が 目 立 ち 類 似 している 28
トゥレット 症 候 群 における チックと 併 発 症 の 典 型 的 な 経 過 強 迫 症 状 の 顕 在 化 前 駆 衝 動 の 認 識 明 確 化 強 迫 症 状 の 出 現 前 駆 衝 動 への 気 づき 複 雑 音 声 チック 単 純 音 声 チック 複 雑 運 動 チック 少 数 例 ではこの 後 に 単 純 運 動 チック 成 人 してからも 激 しい チックが 続 く チックの 発 症 ADHD 症 状 がチック の 発 症 前 から 出 現 する 場 合 チ ッ ク の 最 悪 時 ADHD 症 状 がチックの 増 悪 に 伴 って 顕 在 化 する 場 合 幼 児 期 小 学 生 年 代 中 学 生 年 代 高 校 生 年 代 7 歳 10 歳 14 歳 強 迫 の 方 が しばしば 前 景 に 習 癖 の 広 がり 狭 義 の 習 癖 ( 身 体 玩 弄 癖 : 身 体 をいじる 癖 ) 指 しゃぶり 爪 噛 み 舌 なめずり 鼻 耳 ほじり 目 こすり 咬 む こと 引 っ 掻 くこと 性 器 いじり 抜 毛 症 など 律 動 的 反 復 的 動 作 頭 振 り 頭 叩 き 頭 回 し 体 揺 らしなど 睡 眠 の 問 題 夢 中 遊 行 夜 驚 症 など 食 事 に 関 する 問 題 食 思 不 振 過 食 異 食 など 排 泄 に 関 する 問 題 遺 尿 症 遺 糞 症 など 言 語 上 の 問 題 吃 音 症 選 択 性 緘 黙 など 29
身 体 集 中 反 復 行 動 症 (Body focused repetitive behavioral disorder: BFRBD) 自 身 の 身 体 の 一 部 を 目 標 とした 行 動 ( 例 えば 爪 かみ 咬 唇 咬 頬 など)を 繰 り 返 し 本 人 の 努 力 ではやめることができず 臨 床 的 に 著 しい 苦 痛 または 社 会 的 職 業 的 または 他 の 重 要 な 領 域 における 機 能 の 障 害 を 引 き 起 こす 病 態 身 体 玩 弄 癖 とも 呼 ばれた 狭 義 の 習 癖 にほぼ 該 当 する これらの 習 癖 は 相 互 に 合 併 する 率 が 極 めて 高 く 例 えば 以 前 から 抜 毛 癖 のある 小 児 の 半 分 以 上 は 爪 かみや 指 しゃぶり 癖 が ある 強 迫 症 および 関 連 症 群 に 含 まれる 抜 毛 症 や 皮 膚 むしり 症 も 広 義 にはBFRBDの 一 つであるが 臨 床 的 に 重 要 であり あえて その 二 つは 独 立 した 項 目 として 取 り 扱 われている 指 しゃぶり 爪 噛 み 性 器 いじり 指 しゃぶり 子 どもでは 一 般 的 であり その 頻 度 は1 歳 半 で 約 30% 3 歳 で 約 20% 5 歳 で 約 10%と 年 齢 が 上 がるにつれて 減 少 する 基 本 的 には 発 達 の 経 過 中 に 一 過 性 に 見 られる 生 理 的 な 行 動 と 考 えられている 爪 噛 み 指 しゃぶりと 並 んで 高 率 であり 3 歳 過 ぎに 認 められるように なり 6 歳 頃 から 増 加 して 10 歳 頃 にピークを 迎 える 指 しゃぶりと 同 様 に 精 神 病 理 的 な 意 味 があるとは 考 えられな いが 指 しゃぶりがリラックスした 時 に 出 やすいのに 対 して 爪 かみはイライラした 時 にでやすいとの 指 摘 がある 性 器 いじり 乳 幼 児 期 学 童 期 に 認 められる 性 器 いじりには 性 的 意 味 は ないが 周 囲 が 性 的 に 解 釈 して 心 配 しがちである 30
抜 毛 症 (Trichotillomania (Hair Pulling Disorder)) (DSM 5) A. 繰 り 返 し 体 毛 を 抜 き その 結 果 体 毛 を 喪 失 する B. 体 毛 を 抜 くことを 減 らす またはやめようと 繰 り 返 し 試 みる C. 体 毛 を 抜 くことで 臨 床 的 に 意 味 のある 苦 痛 また は 社 会 的 職 業 的 または 他 の 重 要 な 領 域 におけ る 機 能 の 障 害 を 引 き 起 こしている D. 体 毛 を 抜 くこと または 脱 毛 は 他 の 医 学 的 疾 患 ( 例 : 皮 膚 科 学 的 状 態 )に 起 因 するものではない E. 体 毛 を 抜 くことは 他 の 精 神 疾 患 の 症 状 ( 例 : 醜 形 恐 怖 症 における 本 人 に 認 識 された 外 見 上 の 欠 陥 や 傷 を 改 善 する 試 み)によってうまく 説 明 されない DSM 5における 変 更 点 1: 抜 毛 前 の 緊 張 感 と 後 の 解 放 感 の 削 除 抜 毛 直 前 および 抵 抗 時 の 緊 張 感 と 後 の 満 足 感 解 放 感 が そ れぞれDSM Ⅳ TRでは 必 須 とされていたが これらは 必 ずしも 患 者 全 員 に 伴 う 症 状 ではなく 実 際 に 臨 床 上 では 満 たさないこ とも 多 かった また これらを 認 める 患 者 であっても 必 ずしも 毎 回 の 行 為 時 に あるわけではなく 無 意 識 に( 自 動 的 な 一 連 の 行 為 として) 抜 毛 をしている 場 合 も 多 い 従 って DSM 5においては 診 断 基 準 から 外 れて 関 連 特 徴 という 形 での 記 載 に 落 ち 着 いた しかしながら 何 度 も 繰 り 返 す 抜 毛 前 の 緊 張 感 と 後 の 解 放 感 は 自 身 でコントロールできない 衝 動 という 抜 毛 症 の 重 要 な 性 質 をとらえるのに 有 用 である 点 は 事 実 であり 臨 床 上 は 問 診 され るべき 内 容 であることに 変 わりはない 31
DSM 5における 変 更 点 2: 抜 毛 症 をどの 大 分 類 に 含 むべきか DSM IV TR 衝 動 制 御 障 害 病 的 賭 博 放 火 癖 間 歇 性 爆 発 性 障 害 抜 毛 癖 DSM 5 強 迫 関 連 症 の 一 部 としての 抜 毛 症 と 皮 膚 むしり 症 窃 盗 癖 など 一 部 の 衝 動 制 御 障 害 の 患 者 群 で 抜 毛 癖 の 有 病 率 が 有 意 に 上 昇 する 抜 毛 癖 も 衝 動 制 御 障 害 もともに 家 族 内 に 物 質 依 存 の 有 病 率 が 高 いなど 疫 学 的 に 両 者 の 関 連 が 示 唆 されるエビデンスから DSM IV TRでは 抜 毛 癖 は 衝 動 制 御 障 害 の 仲 間 に 入 れられていた ただし 必 ずしも 衝 動 制 御 障 害 すべてにおいて 抜 毛 癖 の 有 病 率 が 上 がるわけではな いこと 抜 毛 癖 に 対 して 一 般 に 有 効 であるハビットリバーサルが 衝 動 制 御 障 害 には 有 効 とはいえないこと など 以 前 からこの 分 類 には 反 論 があった 抜 毛 に 伴 う 緊 張 感 と 満 足 感 はもともと 衝 動 制 御 障 害 の 一 部 に 分 類 された 際 に 他 の 疾 患 との 整 合 性 を 重 視 して 採 用 された 基 準 とされている DSM 5への 改 訂 にあ たってこの 基 準 が 否 定 されたことが 決 定 的 となり 抜 毛 症 は 衝 動 制 御 障 害 からは 外 されることとなった 抜 毛 症 の 主 な 特 徴 関 連 特 徴 不 安 あるいは 退 屈 な 感 覚 が 引 き 金 となり 緊 張 感 の 増 加 ( 体 毛 を 引 き 抜 く 直 前 あるいは 引 き 抜 こうとする 衝 動 に 抵 抗 しよ うと 試 みるときのいずれか)が 先 行 する あるいは 抜 毛 した 時 の 満 足 快 楽 安 堵 感 につながることがある ある 人 は 抜 毛 することに より 集 中 した 注 意 をみせる( 先 行 する 緊 張 とその 後 の 安 堵 感 とともに)が 一 方 他 の 人 はより 自 動 的 な 行 為 をみせる( 十 分 な 自 覚 を 伴 わず 抜 毛 が 起 きて いるようにみえる) 有 病 率 女 性 は 男 性 より 約 10:1の 割 合 で 罹 患 しやすいが 子 どもの 抜 毛 症 は 男 性 も 女 性 も 同 等 に 認 められる 経 過 の 特 徴 抜 毛 は 乳 幼 児 に 認 められることがあるが 典 型 的 には 発 達 早 期 にこの 行 為 はみられなくなる 抜 毛 症 における 抜 毛 の 始 まりはほとんどの 場 合 思 春 期 と 一 致 するか あるいはそれ 以 降 である 32
皮 膚 むしり 症 (Excoriation (Skin Picking) Disorder) (DSM 5) A. 皮 膚 の 損 傷 を 引 き 起 こす 繰 り 返 される 皮 膚 むしり 行 為 B. 皮 膚 むしり 行 為 を 減 らす またはやめようと 繰 り 返 し 試 みてい る C. 皮 膚 むしり 行 為 によって 臨 床 的 に 意 味 のある 苦 痛 または 社 会 的 職 業 的 または 他 の 重 要 な 領 域 における 機 能 の 障 害 を 引 き 起 こしている D. 皮 膚 むしり 行 為 は 物 質 ( 例 :コカイン)の 身 体 的 作 用 または 他 の 医 学 的 疾 患 ( 例 : 疥 癬 )に 起 因 するものではない E. 皮 膚 むしり 行 為 は 他 の 精 神 疾 患 の 症 状 ( 例 : 精 神 病 性 障 害 における 妄 想 または 幻 触 醜 形 恐 怖 症 における 外 見 の 欠 陥 ま たは 欠 点 を 改 善 しようという 試 み 常 同 運 動 症 における 常 同 運 動 または 自 殺 目 的 以 外 の 自 傷 企 図 )によってはうまく 説 明 で きない 習 癖 の 広 がり 睡 眠 狭 義 覚 の 醒 習 障 癖 害 ( 群 身 (DSM 5)の 体 玩 弄 癖 : 身 体 をいじる 癖 ) 睡 眠 指 時 しゃぶり 随 伴 症 群 爪 の 噛 中 み のノンレム 舌 なめずり 睡 眠 からの 鼻 耳 ほじり 覚 醒 障 目 害 こすり 咬 む 睡 こと 眠 時 遊 引 行 っ 掻 症 くこと 型 ( 睡 眠 性 中 器 にベッドから いじり 抜 起 毛 き 上 症 がり など歩 き 回 るエピソードの 反 復 ) 睡 律 眠 動 時 的 驚 愕 反 症 復 型 的 ( 睡 動 眠 作 中 突 然 覚 醒 するというエピソードの 反 復 で 通 常 は 恐 怖 の 頭 叫 振 び 声 り で 頭 始 まる) 叩 き 頭 回 し 体 揺 らしなど 睡 眠 の 問 題 排 泄 症 群 (DSM 5)の 中 の 夢 中 遊 行 夜 驚 症 など 遺 尿 症 (ベッドまたは 衣 服 の 中 への 反 復 性 の 排 食 事 に 関 する 問 題 尿 ; 週 に2 回 以 上 で 少 なくとも 連 続 して3ヶ 月 間 ; 暦 年 齢 は 少 なくとも5 歳 ) 食 思 不 振 過 食 異 食 など 遺 糞 症 ( 不 適 切 な 場 所 に 大 便 を 反 復 して 出 す; 少 排 泄 に 関 する 問 題 なくとも3ヶ 月 間 少 なくとも 毎 月 1 回 ; 暦 年 齢 は 少 なく 遺 尿 症 遺 糞 症 などとも4 歳 ) 言 語 上 の 問 題 不 安 症 群 (DSM 5)の 中 の 選 択 性 緘 黙 吃 音 症 選 択 性 緘 黙 など 神 経 発 達 症 群 (DSM 5)のコミュニケーション 症 群 の 中 の 小 児 期 発 症 流 暢 症 ( 吃 音 ) 33
治 療 のための 評 価 の 視 点 : チック 症 に 伴 う 生 活 上 の 困 難 に 関 連 する 要 因 1.チック 症 の 重 症 度 1)チック 自 体 の 重 症 度 (チックが 直 接 的 に 生 活 に 支 障 をきたす 度 合 い):チックの 頻 度 強 さ 複 雑 さ 行 動 や 発 語 への 影 響 などが 関 連 する 2)チックによる 悪 影 響 の 重 症 度 ( 自 己 評 価 や 社 会 適 応 に 対 するチックの 悪 影 響 の 度 合 い): 子 ども の 性 格 及 び 周 囲 の 理 解 や 対 応 も 関 連 する 3) 併 発 症 状 の 重 症 度 (チックと 密 接 に 関 連 して 伴 いやすい 併 発 症 が 生 活 に 支 障 をきたす 度 合 い) 2. 本 人 及 び 周 囲 の 認 識 と 対 処 能 力 1)チック 症 に 対 する 認 識 2) 全 般 的 な 対 処 能 力 : 子 どもの 性 格 や 長 所 家 庭 や 学 校 のゆとりなどが 含 まれる チック 症 の 治 療 の 基 本 的 な 構 成 家 族 ガイダンスや 心 理 教 育 及 び 環 境 調 整 チックの 重 症 度 にかかわらず 行 うものであり チック 症 の 治 療 の 基 本 である 家 族 や 本 人 に 加 え 学 校 や 職 場 などで 関 わる 人 々の 理 解 を 促 す 薬 物 療 法 重 症 なチックの 治 療 の 柱 である 十 分 なエビデンスの ある 薬 物 は 抗 精 神 病 薬 である チックを 考 慮 しつつ 併 発 症 に 対 して 行 わ れることもある 認 知 行 動 療 法 併 発 症 治 療 で 重 要 な 役 割 を 持 つ チックに 対 する 効 果 が 注 目 され ている 支 持 的 精 神 療 法 家 族 療 法 チックを 持 ちつつ 前 向 きに 生 活 でき るように 支 える 34
チックと 併 発 症 による4 群 別 での 治 療 方 針 チック 軽 症 チック 重 症 併 発 症 軽 症 家 族 ガイダンスと 心 理 教 育 を 行 う 環 境 調 整 については 担 任 教 師 に チックについて 伝 えて 教 師 間 で 共 通 理 解 を 得 る 薬 物 療 法 は 少 なくとも 当 初 は 行 わな い チックについての 本 人 の 気 づきが 明 確 であれば 認 知 行 動 療 法 (CBT) 的 アプローチを 検 討 する 家 族 ガイダンスと 心 理 教 育 に 加 えて 積 極 的 な 環 境 調 整 を 行 う 担 任 教 師 を 介 して 学 校 全 体 で 共 通 理 解 を 得 る と 共 に 同 級 生 やその 保 護 者 などに 理 解 を 促 すことを 相 談 をする 薬 物 療 法 は 抗 精 神 病 薬 を 基 本 とす る ハビットリバーサルを 中 心 とするCBT 的 アプローチを 行 う 併 発 症 重 症 チックと 併 発 症 状 を 総 合 した 問 題 点 を 整 理 して 治 療 の 優 先 順 位 をつける 環 境 調 整 についても 併 発 症 状 を 含 めて 理 解 を 促 す ADHDを 併 発 する 場 合 OCDを 併 発 する 場 合 怒 り 発 作 が 目 立 つ 場 合 などによって 対 応 が 異 なる 主 な 問 題 について 優 先 順 位 をつけて 対 応 を 本 人 及 び 家 族 と 整 理 する それ に 則 って 学 校 などの 関 係 者 に 対 応 へ の 協 力 を 求 める チックと 併 発 症 状 の 両 方 に 対 する 薬 物 療 法 を 検 討 する より 優 先 順 位 が 高 いものに 対 する 薬 物 から 開 始 して 必 要 に 応 じて 追 加 をする CBT 的 アプローチは 標 的 症 状 (チック か 併 発 症 状 か)を 明 確 にして 併 用 する 家 族 ガイダンス 心 理 教 育 以 下 のようなポイントを 伝 えて 家 族 や 本 人 がチックを 理 解 して 適 切 に 対 応 できるように 促 す チックは 運 動 を 調 整 する 脳 機 能 の 特 性 やなりやすさが 基 盤 にあり 親 の 育 て 方 や 本 人 の 性 格 に 問 題 があって 起 こるの ではない チックの 変 動 性 や 経 過 の 特 徴 を 理 解 し 些 細 な 変 化 で 一 喜 一 憂 しない チックを 悪 化 させるかもしれない 状 況 があれば その 対 応 を 検 討 する チックを 本 人 の 特 徴 の 一 つとして 受 容 する チックのみにとらわれずに 長 所 も 含 めた 本 人 全 体 を 考 えて 対 応 する チックや 併 発 症 及 びそれに 伴 う 困 難 を 抱 えつつも 本 人 ができ そうな 目 標 を 立 て それに 向 かって 努 力 することを 勧 める 35
受 診 した 子 どもへの 説 明 例 家 族 はあなたを 大 切 に 思 っているので 動 きや 声 を 心 配 して 病 院 に 相 談 に 来 た 病 院 ではこれらにチックと 名 前 をつけている 動 きや 声 は やろうと 思 っていなくてもやってしまう (つまりわざとやっているのではない)ものであり そのことを 病 院 ではよく 分 かっている しばらくはいくらか 増 えたり 減 ったりすることもある が 気 にしすぎずに 元 気 に 生 活 していると 遅 くとも 大 人 になるまでによくなっていく こわくない( 人 にうつらない 命 にかかわらない 一 般 によくなっていく) 病 気 であり うまくつきあって いくうちに 単 なる くせ のようになる 症 状 を 軽 くする 薬 があり ひどくなったら 使 うことが できる 学 校 での 環 境 調 整 の 進 め 方 の 例 音 量 の 大 きい 音 声 チックがある 物 を 叩 くなど 音 を 出 したり 動 きの 目 立 つ 運 動 チックがある チックについてからかわれたりいじめられたりしないか チック のために 同 級 生 に 迷 惑 をかけるのではないかなどの 本 人 の 不 安 チックを 気 にしたり 抑 えようとしたりして 集 中 できないことによる 本 人 の 学 習 の 停 滞 同 級 生 にとっても 落 ち 着 かない 学 習 環 境 チックについて 同 級 生 にも 説 明 して クラス 全 体 学 校 全 体 で 対 応 することについて 本 人 や 家 族 と 学 校 で 基 本 的 な 認 識 を 一 致 させる 36
学 校 での 環 境 調 整 の 進 め 方 の 例 ( 続 き) いろいろな 子 どもがい てお 互 いに 尊 重 し 合 う ことが 大 切 という 雰 囲 気 を 日 常 的 に 醸 し 出 す 学 校 全 体 で 本 人 の 状 態 や 対 応 に 関 する 認 識 を 共 有 する チックについて 同 級 生 にも 説 明 して クラス 全 体 学 校 全 体 で 対 応 することについて 本 人 や 家 族 と 学 校 で 基 本 的 な 認 識 を 一 致 させる 説 明 の 内 容 や 方 法 は 本 人 の 感 じ 方 やチックの 受 け 入 れ 方 によって 調 整 チックについて 言 及 せずに 個 別 の 配 慮 ( 別 室 でのテスト など)を 要 する 状 態 と 伝 える チックという 症 状 を 持 つと 伝 える チック 症 という 病 気 であると 伝 える など 本 人 のいない 場 所 で 教 師 から 同 級 生 に 伝 える 本 人 のいる 場 所 で 教 師 から 同 級 生 に 伝 える ( 教 師 も 同 席 して) 本 人 から 同 級 生 に 説 明 する 機 会 を 設 定 する など いずれの 場 合 でも 本 人 は 完 全 にはコントロールでき ない 状 況 に 困 りつつもがんばっていることを 伝 える チックに 対 する 各 国 ガイドラインにおける 薬 物 療 法 ( 一 日 推 奨 服 用 量 ) ヨーロッパ カナダ ( 小 児 ) アメリカ 抗 精 神 病 薬 ハロペリドール 0.25 15.0 0.5 3 1 4 ピモジド 1.0 6.0 1 4 2 8 リスペリドン 0.25 6.0 0.25 3 0.75 3.0 フルフェナジン 0.25 3 1.5 10 チアプリド 2 10 mg/kg 100 500 オランザピン 2.5 20.0 2.5 10 2.5 12.5 スルピリド 2 10 mg/kg 100 500 クエチアピン 100 600 25 400 25 200 アリピルラゾール 2.5 15 2 15 2.5 15 非 抗 精 神 病 薬 クロニジン 0.1 0.3 0.025 0.3 0.1 0.4 クロナゼパム 0.25 3 ハロペリドール ピモジドに 次 いで 2014 年 12 月 にアリピプラゾールがトゥレット 症 候 群 の 治 療 薬 として FDAに 承 認 された 体 重 50kg 未 満 : 開 始 量 2mg/ 日 推 奨 量 5mg/ 日 最 高 量 10mg/ 日 体 重 50kg 以 上 : 開 始 量 2mg/ 日 推 奨 量 10mg/ 日 最 高 量 20mg/ 日 37
Comprehensive Behavioral Intervention for Tics (CBIT) 認 知 行 動 療 法 による 支 援 (Woods et al.,2008) 先 行 すること 結 果 内 的 なもの ハビット リバーサル 前 駆 衝 動 不 安 退 屈 など リラクセーション トレーニング 外 的 なもの チック 内 的 なもの 前 駆 衝 動 の 減 少 軽 快 不 安 の 軽 減 など 外 的 なもの 特 定 の 場 所 や 状 況 例 : 他 人 がいる 場 所 帰 宅 直 後 の 家 など 機 能 分 析 進 行 中 の 課 題 を 止 める 周 囲 からの 反 応 を 得 る など 野 中 舞 子 作 成 スライドを 改 変 Habit Reversal Trainingとは? 重 要 な 要 素 (Woods, 1995) 1 気 づきの 促 進 2 拮 抗 反 応 訓 練 3ソーシャル サポート 野 中 舞 子 作 成 スライドを 改 変 38
1 気 づきの 促 進 A) チックについて 説 明 してもらう *チックがどこの,どんな 動 きかを 詳 細 に 聞 く *チックが 出 そうな 感 覚 について 教 えてもらう B) チックが 出 るごとに 合 図 を 出 してもらう *チック 自 体 やチックの 前 に 起 こるシグナルに 気 付 くため C) チックが 出 そうな 時 に 合 図 を 出 してもらう 野 中 舞 子 作 成 スライドを 改 変 2 拮 抗 反 応 の 訓 練 A) 身 体 的 にチックと 同 時 にすることができない 動 き B) 1 分 以 上, 前 駆 衝 動 がなくなるまで 首 のチックが 維 問 持 題 できる ならば, 首 が 動 かないように, C) チックよりも 目 立 たない, 注 遠 くの 意 をひかない 一 点 を 見 続 ける * 教 室 なら 黒 板 や 時 計 深 呼 吸 をする まずは, 毎 日 決 まった 時 間 に 練 習 して もらい, 記 録 をする 野 中 舞 子 作 成 スライドを 改 変 39
3ソーシャル サポート A)チックがない 時 間 や 本 人 がコントロールしたら 褒 める, 報 酬 を 与 える * 親 子 で 練 習 をしてもらい,ポイントをつけてもらうなど B)チックに 対 しては 叱 ったり, 注 意 したりもせずに 無 視 する C)サポートすることと 対 立 することは 別 抑 えることができないチックをコントロールしようとする ことは 大 変 モチベーションを 維 持 するために 重 要 野 中 舞 子 作 成 スライドを 改 変 狭 義 の 習 癖 の 治 療 ー 指 しゃぶり 爪 噛 み 性 器 いじりー 周 囲 が 過 剰 に 心 配 しすぎずに 子 どもが 他 のことに 興 味 を 持 てるように 促 すことが 対 応 の 基 本 である 発 達 障 害 が 基 盤 にあり 習 癖 にふけりやすい 傾 向 が ないかも 留 意 する 該 当 する 場 合 にはそれも 考 慮 し た 介 入 を 考 える 発 達 障 害 ではないのに 年 長 になっても 持 続 している 場 合 本 人 が 止 めたいと 思 っている 場 合 には より 積 極 的 な 介 入 が 必 要 になることがある 行 動 療 法 の 技 法 が 用 いられることもあるが 自 己 コントロールで きるように 成 長 したいという 本 人 の 気 持 ちへの 共 感 も 重 要 だろう 40
狭 義 の 習 癖 の 治 療 ー 抜 毛 症 ー 抜 毛 の 起 こりやすい 状 況 抜 毛 に 対 する 子 どもの 気 持 ち 抜 毛 が 始 まった 経 緯 などを 聞 いて 治 療 の 重 点 を 検 討 することから 始 める 同 時 に 生 活 全 体 を 視 野 に 入 れて 子 どもの 気 持 ちや 状 況 を 確 認 していく 子 どもの 不 安 や 不 満 が 習 癖 として 定 着 している 側 面 が 強 ければ 抜 毛 をやめさせることを 第 一 とせずに その 気 持 ちを 受 けとめる ように 家 族 に 働 きかける 低 年 齢 では 自 分 を 丸 ごと 受 けとめて もらえるという 安 心 感 を 持 てるようにすることが 大 切 である 自 分 の 気 持 ちを 適 切 に 表 現 することを 促 したり 本 人 なりにがん ばっていることを 認 めたりするのもよい 抜 毛 に 焦 点 を 当 てた 行 動 療 法 を 行 う 際 には どのような 行 動 の 流 れで 抜 毛 が 起 こるかを 明 らかにして 対 応 の 仕 方 を 検 討 する 薬 物 療 法 としては セロトニン 再 取 り 込 み 阻 害 作 用 のあるクロミ プラミン 非 定 型 抗 精 神 病 薬 であるアリピプラゾール オランザピ ンなどが 有 効 とされる 家 庭 や 学 校 で 子 どもの 不 安 や 緊 張 を 高 めていることがあれば その 軽 減 も 図 る 発 達 障 害 が 基 盤 にある 場 合 にはそれも 考 慮 した 介 入 を 考 える まとめ 習 癖 とチックは 運 動 または 音 声 や 行 動 を 反 復 するも のである 発 達 の 過 程 で 認 められ しばしば 併 発 する 本 人 の 生 物 学 的 な 要 因 を 基 盤 に 生 じて 家 庭 や 学 校 などの 心 理 社 会 的 要 因 によって 影 響 を 受 ける 習 癖 やチックを 有 する 子 どもの 包 括 的 な 理 解 のために 主 症 状 に 加 えて 併 発 症 さらに 長 所 本 人 や 家 族 の 疾 患 の 認 識 などを 把 握 する 習 癖 やチックの 治 療 の 基 本 は 包 括 的 な 評 価 に 基 づ いた 家 族 ガイダンス 心 理 教 育 及 び 環 境 調 整 である 症 状 の 重 症 度 を 考 慮 して 行 動 療 法 または 認 知 行 動 療 法 や 薬 物 療 法 を 組 み 合 わせる 41