産 業 医 のための 職 域 メンタルヘルス 不 調 の 予 防 と 早 期 介 入 支 援 ワークブ ック 職 場 でよく 見 る 精 神 科 治 療 薬
職 場 でよくみる 精 神 科 治 療 薬 目 次 はじめに 代 表 的 な 向 精 神 薬 の 特 徴 と 使 い 方 抗 うつ 薬 ~SSRIとSNRIの 微 妙 な 違 い~ 気 分 安 定 薬 ~ 双 極 Ⅱ 型 障 害 の 増 加 に 向 けて~ 睡 眠 薬 ~ 不 眠 症 のタイプによる 睡 眠 薬 の 選 び 方 ~ こんな 質 問 に 何 と 答 えますか? 抗 うつ 薬 を 市 販 薬 サプリメントを 一 緒 に 飲 んでいい? うつ 病 に 効 く 漢 方 薬 はありますか? 2 はじめに 一 般 的 な 呼 称 抗 精 神 病 薬 抗 うつ 病 抗 不 安 薬 気 分 安 定 薬 同 意 語 神 経 遮 断 薬 強 力 精 神 安 定 薬 メジャートランキライザー 感 情 調 節 剤 緩 和 精 神 安 定 薬 マイナートランキライザー 抗 躁 薬 双 極 性 感 情 障 害 治 療 薬 抗 うつ 薬 一 般 的 には SSRI のどちらか 一 方 を4 週 間 程 度 十 分 量 服 薬 SNRI SSRIかSNRIを 選 択 する 判 断 基 準 は? ノルアドレナリン 作 動 性 特 異 的 セロトニン 作 動 性 抗 うつ 薬 Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant (NaSSA)とは? 三 環 系 四 環 系 抗 うつ 薬 について よくわかる 精 神 科 薬 物 ハンドブック 風 祭 元 著 より 一 部 改 変 3 4 モノアミンとうつ 病 の 症 状 との 関 連 ( 中 村 純,2008 一 部 改 変 ) SSRIとSNRIの の 使 い 分 け1 うつ 病 を2つに 分 類 ノルアドレナリン セロトニン 無 気 力 興 味 の 喪 失 活 動 性 欠 如 不 安 いらいら 認 知 機 能 低 下 快 楽 喪 失 緊 張 過 敏 不 機 嫌 食 欲 や 性 欲 の 減 退 1 焦 燥 型 うつ 病 ( 不 安 や 焦 燥 心 気 症 状 が 前 景 ) 2 制 止 型 うつ 病 ( 意 欲 低 下 や 思 考 制 止 が 前 景 ) SSRIが 効 果 的 SNRIが 効 果 的 ドパミン 5 中 村 純 よくわかる 精 神 科 薬 物 ハンドブックより 6 1
抗 うつ 薬 一 覧 分 類 一 般 名 商 品 名 SSRIとSNRIの の 使 い 分 け2 選 択 的 セロトニン 再 取 り 込 み 阻 害 薬 (SSRI) セロトニン ノルアドレ ナリン 再 取 り 込 み 阻 害 薬 (SNRI) ノルアドレナリン 作 動 性 / 特 異 的 セロトニン 作 動 性 抗 うつ 薬 フルボキサミン パロキセチン セルトラリン ミルナシプラン デュロキセチン ミルタザピン デプロメール ルボックス パキシル ジェイゾロフト トレドミン サインバルタ レメロン リフレックス 焦 燥 型 うつ 病 意 欲 減 退 や 食 欲 低 下 にも 効 果 あり 制 止 型 うつ 病 1 抑 うつ 気 分 の 症 状 が 全 面 に 出 ている SSRIが 効 果 的 2 気 力 減 退 の 症 状 が 前 面 に 出 ている SNRIが 効 果 的 抑 うつ 気 分 と 気 力 減 退 が 同 じぐらいならば 不 安 の 症 状 について 考 慮 する イミプラミン トフラニール 三 環 系 抗 うつ 薬 四 環 系 抗 うつ 薬 クロミプラミン アミトリプチリン アモキサピン ノルトリプチリン マプロチリン ミアンセリン スルピリド アナフラニール トリプタノール アモキサン ノリトレン ルジオミール テトラミド ドグマチール 7 1 強 迫 的 で 被 害 的 な 内 容 を 伴 う 不 安 がある SSRIが 効 果 的 2 衝 動 性 を 伴 わない 漠 然 とした 不 安 がある SNRIが 効 果 的 8 その 他 トラゾドン デジレル レスリン 姫 井 昭 男 精 神 科 の 薬 が 分 かる 本 より SSRIとSNRIの の 使 い 分 け 軽 度 なうつ 病 で 症 状 が 顕 著 でない 場 合 1 不 安 や 余 裕 のなさが 見 られるとき SSRIが 効 果 的 2やる 気 のなさや 億 劫 感 が 認 められるとき SNRIが 効 果 的 姫 井 昭 男 精 神 科 の 薬 が 分 かる 本 より 9 SSRI 1)フルボキサミン(デプロメール ルボックス ) わが 国 で 最 も 早 く 使 用 できるようになったSSRI 心 気 的 な 不 安 や 焦 燥 が 強 いうつ 病 の 人 に 効 果 が 高 い 強 迫 性 障 害 社 交 不 安 障 害 にも 有 効 50~150mg/ 日 (うつ 病 ) 150mg/ 日 以 上 ( 強 迫 性 障 害 社 交 不 安 障 害 ) 半 減 期 :8~11 時 間 1 日 2 回 の 分 割 投 与 副 作 用 : 嘔 気 嘔 吐 食 欲 不 振 ( 投 与 初 期 1 週 間 程 度 制 吐 薬 初 期 用 量 の 減 量 ) 10 処 方 例 :デプロメール ルボックス 強 迫 性 障 害 に 対 して 21 歳 女 性 大 学 進 学 後 独 居 生 活 を 始 めた 頃 より 水 道 火 の 始 末 戸 締 りなどの 確 認 行 為 が 次 第 に 増 加 し 日 常 生 活 に 支 障 をきたすようになった 不 安 が 強 く 強 迫 行 為 を 自 己 制 御 できなく なり 自 ら 来 院 となる 行 動 療 法 についての 説 明 を 受 けるが 抵 抗 感 が 強 く 薬 物 療 法 のみを 希 望 したため 本 剤 50mg/ 日 より 開 始 し 25~50mg/ 週 の 割 合 で 徐 々に150mgまで 増 量 強 迫 行 為 の 頻 度 は 不 変 であったが それらに 費 やす 時 間 は 減 少 し 以 前 と 比 べて 不 安 やこだわりが 少 なくなってきたことを 自 覚 する こ のため 以 前 提 示 していた 行 動 療 法 を 再 度 勧 めたところ 今 度 は 抵 抗 感 もなく 自 ら 自 主 的 に 取 り 組 むようになり 強 迫 行 為 の 頻 度 は 大 幅 に 減 少 し 発 症 前 に 近 い 状 態 の 適 応 が 可 能 となった 11 SSRI 2)パロキセチン(パキシル ) 不 安 や 焦 燥 が 強 いうつ 病 の 人 に 効 果 が 高 い パニック 障 害 強 迫 性 障 害 にも 適 応 あり 初 期 投 与 量 10~20mg/ 日 <40mg/ 日 (うつ 病 ) 10mg/ 日 から 開 始 <30mg/ 日 (パニック 障 害 ) 20mg/ 日 から 開 始 <50mg/ 日 ( 強 迫 性 障 害 障 害 ) 半 減 期 :14 時 間 1 日 1 回 投 与 で 十 分 副 作 用 : 投 与 初 期 の 嘔 気 嘔 吐 便 秘 口 渇 12 こころの 治 療 薬 ハンドブック 第 6 版 より 2
処 方 例 :パキシル うつ 状 態 に 対 して SSRI 3)セルトラリン(ジェイゾロフト ) 37 歳 男 性 半 年 前 から 不 眠 数 か 月 前 より 気 力 低 下 やうつ 気 分 が 続 い ていた 本 剤 10mgより 開 始 11 週 間 ごとに10mgずつ 増 量 し 3 3 週 目 に30mgまで 増 量 した 4 週 目 より 症 状 の 改 善 を 認 め 継 続 により6 週 目 には 症 状 の 大 半 が 改 善 した こころの 治 療 薬 ハンドブック 第 6 版 より 13 わが 国 で 最 も 遅 く 使 用 できるようになったSSRI 他 のSSRIに 比 べて 弱 いドパミン 再 取 り 込 み 阻 害 作 用 意 欲 減 退 や 食 欲 低 下 を 有 するうつ 病 にも 効 果 あり 心 血 管 系 への 影 響 が 少 なく 高 齢 者 にも 安 全 性 が 高 い 25mg/ 日 から 開 始 <100mg/ 日 で 増 減 150mg/ 日 以 上 ( 強 迫 性 障 害 社 交 不 安 障 害 ) 半 減 期 :22~24 時 間 1 日 1 回 副 作 用 : 嘔 気 嘔 吐 下 痢 ( 高 用 量 投 与 にて) 14 処 方 例 :ジェイゾロフト うつ 病 に 対 して 32 歳 女 性 事 務 職 として6 年 間 就 労 している 2か 月 ほど 前 から 集 中 力 が 低 下 して 不 安 感 が 強 くなり 気 持 ちが 沈 む 不 眠 食 欲 不 振 もみられた うつ 病 の 診 断 で 本 剤 25mgを 就 寝 前 に 投 与 した 1 1 週 間 後 症 状 は 特 に 変 化 なく 副 作 用 も 認 め なかったため50mgまで 増 量 した 増 量 後 約 2 週 間 で 抑 うつ 感 などの 症 状 も 軽 快 したとのことであった 軽 度 の 吐 き 気 を 認 めたが 服 薬 に 支 障 が 出 るほどではな かった 外 来 加 療 開 始 後 約 3カ 月 で 集 中 力 も 回 復 し 仕 事 も 普 通 にこなせるようになった こころの 治 療 薬 ハンドブック 第 6 版 より 15 SNRI ミルナシプラン(トレドミン ) 抑 制 意 欲 低 下 の 強 いうつ 病 の 人 に 効 果 が 高 い 抗 アドレナリン 作 用 を 有 することから うつ 病 の 人 が 訴 え る 様 々な 痛 みに 効 果 があるという 報 告 もある 肝 臓 のチトクロームP450(CYP)の 代 謝 を 受 けない CYPで 代 謝 される 他 の 薬 物 の 血 中 濃 度 に 影 響 なし 25mg/ 日 から 開 始 <100mg/ 日 で 増 減 半 減 期 :8 時 間 1 日 2~3 回 副 作 用 : 抗 コリン 作 用 ( 便 秘 性 機 能 障 害 ) 頭 痛 排 尿 障 害 (NA 刺 激 による) 前 立 腺 疾 患 による 尿 閉 では 禁 忌 16 SNRI デュロキセチン(サインバルタ ) 2010 年 4 月 より 販 売 開 始 となった 日 本 で2 番 目 に 承 認 されたSNRI 他 のSNRIと 比 べるとセロトニン ノルアドレナリンの 再 取 り 込 み 阻 害 の 力 価 が 高 いことが 特 徴 プラセボに 対 する 優 越 性 が 臨 床 試 験 で 認 められている 疼 痛 に 対 する 効 果 も 認 められている 20mg/ 日 から 開 始 一 週 間 以 上 の 間 隔 を 開 けて20mgず つ 増 量 する 17 処 方 例 :トレドミン うつ 状 態 に 対 して 65 歳 男 性 自 営 業 を 営 んでいる 友 人 の 病 死 をきっかけに 抑 うつ 感 食 欲 不 振 不 眠 が 出 現 し 精 神 科 を 受 診 した 本 剤 25mg を 夕 食 後 に 投 与 したところ1 週 間 後 の 外 来 受 診 時 には 不 眠 が 軽 快 した 副 作 用 は 認 められなかったため 朝 食 後 にも 25mgを 投 与 し 1 日 50mgに 漸 増 した 4 週 間 後 には 抑 うつ 感 不 安 感 が 軽 快 し 6 週 間 後 には 仕 事 に 関 する 書 類 にも 目 を 通 すことができるようになった こころの 治 療 薬 ハンドブック 第 6 版 より 18 3
NASSA ミルタザピン(レメロン リフレックス ) 我 が 国 では2009 年 から 使 用 されるようになった 日 本 で 初 めてプラセボに 対 して 抗 うつ 効 果 における 優 越 性 が 検 証 された 投 与 1 週 目 から 優 位 な 改 善 効 果 が 示 され 長 期 投 与 試 験 におい ても 52 週 まで 抗 うつ 効 果 が 維 持 された 効 果 の 早 期 発 現 と 長 期 維 持 を 持 ち 合 わせた 薬 といわれる 15mg/ 日 から 開 始 <45mg/ 日 で 増 減 半 減 期 :20~40 時 間 1 日 1 回 副 作 用 : 吐 き 気 や 便 秘 性 機 能 障 害 は 少 なく 眠 気 倦 怠 感 体 重 増 加 がみられる 19 三 環 系 抗 うつ 薬 セロトニントランスポーターとノルアドレナリントランスポー ターに 作 用 する 以 外 に α1アドレナリン 受 容 体 H1ヒスタ ミン 受 容 体 ムスカリン 性 アセチルコリン 受 容 体 遮 断 作 用 がある 起 立 性 低 血 圧 体 重 増 加 沈 静 口 渇 便 秘 尿 閉 霧 視 記 憶 障 害 心 伝 導 障 害 (QT 延 長 ) せん 妄 高 齢 者 や 前 立 腺 肥 大 症 不 整 脈 や 緑 内 障 などを 合 併 している 場 合 は 使 いにくい 四 環 系 抗 うつ 薬 三 環 系 抗 うつ 薬 と 比 較 して 抗 コリン 作 用 が 少 ない その 鎮 静 作 用 を 利 用 して 睡 眠 薬 として 用 いられる 場 合 もある 20 三 環 系 抗 うつ 薬 の 特 徴 使 用 方 法 副 作 用 一 般 名 商 品 名 特 徴 使 用 方 法 副 作 用 イミプラミン トフラニール 最 も 早 く 開 発 された 三 環 系 抗 うつ 薬 で 気 分 高 揚 作 用 が 強 い うつ 病 以 外 に 遺 尿 症 に 対 しても 有 効 性 あり うつ 病 に 対 しては30~70mg/ 日 を 初 期 投 与 量 とし 200mg/ 日 まで 漸 増 し 分 割 投 与 する 遺 尿 症 に 対 しては30~50mg/ 日 を 症 状 及 び 年 齢 に 応 じて 適 宜 調 整 を 行 う クロミプラミン アナフラニール 点 滴 静 注 投 与 が 可 能 であるため 希 死 念 慮 が 切 迫 しており 急 速 な 抑 うつ 状 態 の 改 善 が 望 まれる 症 例 や 経 口 摂 取 が 困 難 な 場 合 に 使 用 可 能 点 滴 静 注 をする 場 合 には せん 妄 を 惹 起 する 場 合 もあるので ゆっくりと 行 う アミトリプチリン トリプタノール 焦 燥 感 の 強 いうつ 病 に 対 してよく 用 いられる 本 薬 剤 は 三 環 系 抗 うつ 薬 のなかでは 最 も 抗 コリン 作 用 が 強 い アモキサピン アモキサン ドパミン 受 容 体 遮 断 作 用 があるため 精 神 病 性 うつ 病 に 有 効 で あるとの 報 告 や 効 果 発 現 も 比 較 的 早 いという 報 告 もある D2 受 容 体 阻 害 作 用 を 有 するために 錐 体 外 路 症 状 が 出 現 す る 場 合 があり パーキンソン 病 の 患 者 にはその 使 用 を 控 える ノルトリプチリン ノリトレン ノルアドレナリン 再 取 り 込 み 阻 害 作 用 が 強 い 薬 物 である 比 較 的 抗 コリン 作 用 も 少 なく 三 環 系 抗 うつ 薬 の 中 では 高 21齢 者 などにも 比 較 的 使 用 しやすい 四 環 系 抗 うつ 薬 の 特 徴 使 用 方 法 副 作 用 一 般 名 商 品 名 特 徴 使 用 方 法 副 作 用 マプロチリン ルジオミール ノルアドレナリン 再 取 り 込 み 阻 害 作 用 が 強 い 抗 コリン 作 用 は 少 ないが 高 用 量 使 用 時 の 痙 攣 惹 起 作 用 や 薬 疹 の 発 現 頻 度 が 高 いとの 報 告 がある ミアンセリン テトラミド シナプス 間 隙 へのノルアドレナリンの 放 出 を 抑 制 しているシナプス 前 α2 受 容 体 を 遮 断 してノ ルアドレナリンの 放 出 を 促 進 する 高 齢 者 に 対 しても 使 用 しやすい 本 薬 剤 は 抗 ヒスタミン 作 用 があるため 鎮 静 作 用 に 優 れ せん 妄 にたいしても 有 効 であると いう 報 告 もある 22 気 分 安 定 薬 双 極 性 障 害 ( 躁 うつ 病 )に 対 して 双 方 向 性 ( 抗 躁 抗 うつ) の 作 用 をもち また 気 分 変 動 を 抑 制 し 躁 うつ 両 病 相 の 予 防 効 果 をもつ 薬 物 の 総 称 薬 理 学 的 な 作 用 機 序 は 未 だ 明 らかではない 現 在 日 本 で 承 認 されている 気 分 安 定 薬 は 1 炭 酸 リチウム(リーマス ) 2カルバマゼピン(テグレトール ) 3バルプロ 酸 ナトリウム(デパケン ) いずれも 双 極 性 障 害 のうつ 状 態 や 病 相 予 防 効 果 につい ての 承 認 は 得 られていない 23 気 分 安 定 薬 有 効 性 はそれほど 高 くない リチウムの 躁 病 相 に 対 する 治 療 効 果 約 50% リチウムの 病 巣 予 防 効 果 2 年 間 で 約 40~50% それぞれ 気 分 安 定 薬 の 違 いは?(エビデンスはないが ) 1リチウム 多 幸 感 爽 快 気 分 を 伴 う 古 典 的 な 躁 病 相 2カルバマゼピン 精 神 病 症 状 や 錯 乱 が 混 在 している 場 合 3バルプロ 酸 不 機 嫌 相 うつ 混 合 状 態 急 速 交 代 型 自 殺 関 連 行 動 への 影 響 について 双 極 性 障 害 患 者 における 自 殺 率 は 高 い リチウム 自 殺 関 連 行 動 の 防 止 効 果 がある カルバマゼピン バルプロ 酸 自 殺 企 図 の 既 往 および 自 殺 念 慮 のある 躁 病 および 躁 うつ 病 の 躁 状 態 の 患 者 への 投 与 に 対 して 注 意 喚 起 がなされている 24 4
睡 眠 薬 睡 眠 薬 はその 化 学 構 造 によって 1バルビツール 酸 系 薬 物 2 非 バルビツール 酸 系 薬 物 3ベンゾジアゼピン 系 薬 物 4 非 ベンゾジアゼピン 系 薬 物 に 分 けられる 抑 制 性 神 経 伝 達 物 質 であるγ-アミノ 酪 酸 (GABA) 受 容 体 機 能 の 増 強 バルビツール 酸 誘 導 体 が 単 独 でGABA A 受 容 体 のClイオンチャネルを 開 口 させるのに 対 し ベンゾジアゼピンは 内 因 性 のGABA 存 在 下 でのみ 効 果 を 発 揮 する 生 体 にもともと 備 わる 内 因 性 物 質 に 効 果 が 依 存 することが 高 い 安 全 性 の 理 由 25 ベンゾジアゾピン 系 睡 眠 薬 非 ベンゾジアゼピン 系 (New!) ほとんどの 睡 眠 薬 は 覚 醒 段 階 の 時 間 を 減 らし 軽 睡 眠 期 を 増 やす 一 方 深 睡 眠 は 減 らす これらは 深 睡 眠 を 増 やす 筋 弛 緩 作 用 に 伴 う 副 作 用 も 少 ない 26 結 局 どう 使 い 分 けるのか? 神 経 症 的 傾 向 ( 不 眠 の 不 安 )が 弱 い 場 合 ( 抗 不 安 作 用 筋 弛 緩 作 用 が 弱 い 薬 物 ) 入 眠 障 害 ( 超 短 時 間 型 短 時 間 型 ) ゾルピデム(マイスリー) ゾピクロン(アモバン) 睡 眠 維 持 障 害 ( 中 間 作 用 型 長 時 間 型 ) クアゼパム(ドラール) 神 経 症 的 傾 向 ( 不 眠 への トリアゾラム(ハルシオン) フルニトラゼパム(サイレー 恐 怖 )が 強 い 場 合 ( 抗 不 安 作 用 筋 弛 緩 作 用 を 持 つ 薬 物 ) ブロチゾラム(レンドルミ ン) エチゾラム(デパス) ス ロヒプノール) ニトラゼパム(ネルボン) エスタゾラム(ユーロジン) 腎 機 能 障 害 肝 機 能 障 害 がある 場 合 ( 代 謝 産 物 が 活 性 をもたな い 薬 物 ) ロルメタゼパム(エバミー ル ロラメット) ロラゼパム(ワイパックス) 本 多 真 よくわかる 精 神 科 薬 物 ハンドブックより 一 部 改 変 27 新 しい 睡 眠 薬 (メラトニン 受 容 体 アゴニスト) ラメルテオン(ロゼレム ) GABA 受 容 体 機 能 増 強 とは 違 う 機 序 で 働 く ヒトの 視 交 叉 上 核 に 多 数 存 在 しているメラトニン 受 容 体 に 選 択 的 に 結 合 して 薬 理 作 用 を 発 揮 する 体 内 時 計 機 構 に 働 きかけ 睡 眠 覚 醒 のリズムを 整 える 反 跳 性 不 眠 や 退 薬 症 候 がなく 自 然 に 近 い 生 理 的 睡 眠 を 誘 導 する SSRIのフルボキサミン(ルボックス デプロメール)との 併 用 は 禁 忌! 28 参 考 図 書 参 考 文 献 富 田 真 幸 : 内 科 医 が 知 っておくべき 向 精 神 薬 の 知 識. 診 断 と 治 療 vol 95-No.12; 2083-2089. 2007 よくわかる 精 神 科 薬 物 ハンドブック. 風 祭 元 著 うつ 病 心 療 Q&A. 桶 口 輝 彦 著 こころの 治 療 薬 ハンドブック 第 6 版 29 5
職 場 でよくみる 精 神 科 治 療 薬 : 学 習 のポイント (スライドは 管 理 監 督 者 研 修 にも 活 用 できます) スライド 番 号 2 産 業 医 業 務 を 行 う 上 で, 従 業 員 との 個 別 面 談 は 労 働 衛 生 の3 管 理 の 中 で 健 康 管 理 に 当 たり, 産 業 医 としての 主 要 な 職 務 の 一 つである 具 体 的 には, 健 診 後 の 事 後 措 置 としての 面 接 指 導, 長 時 間 労 働 者 に 対 する 面 接 指 導, 健 康 相 談 などがある これらの 面 談 の 中 で, 従 業 員 が 内 服 している 薬 物 について 確 認 することがあるが, 精 神 科 治 療 薬 についてはその 効 果 や 薬 理 学 的 な 機 序 についてピンと 来 ないことが 良 くある そ の 一 因 として 精 神 科 的 治 療 薬 を 実 際 に 処 方 した 経 験 が 乏 しいこと, 精 神 科 領 域 では 複 数 の 薬 剤 を 併 用 されていることが 良 くあること, 副 作 用 が 比 較 的 少 ない 新 薬 の 登 場 で 治 療 薬 選 択 のボー ダレス 化 ( 抗 うつ 薬 を 不 安 障 害 治 療 に 用 いたり, 抗 てんかん 薬 を 双 極 性 障 害 に 用 いたりと 当 初 の 適 応 症 以 外 の 用 途 に 使 用 すること)が 進 んでいることなどが 挙 げられる そうした 中 でも, 産 業 医 は 面 談 相 手 の 内 服 薬 全 般 についてより 深 い 知 識 を 得 ている 必 要 があり, また, 内 服 薬 の 種 類 から 面 談 相 手 の 病 状 や 経 過, 主 治 医 が 処 方 した 意 図 などを 組 み 取 れれば, より 良 い 対 応 ができるものと 思 われる 今 回 は, 職 場 でよくみられる 精 神 科 治 療 薬 について, 薬 理 学 的 な 機 序 やそれぞれの 特 徴, 使 い 分 け 方 等 についてその 概 要 を 述 べる スライド 番 号 3 人 間 の 精 神 に 作 用 して, 普 通 はその 異 常 を 治 療 する 目 的 で 用 いられる 薬 を 向 精 神 薬 という 広 義 の 向 精 神 薬 には, 1 抗 精 神 病 薬 2 抗 うつ 薬 3 気 分 安 定 薬 4 抗 不 安 薬 5 睡 眠 薬 6 抗 てんかん 薬 7 抗 パーキンソン 薬 などがあるが,こられは 治 療 の 対 象 となる 精 神 症 状 別 に 分 類 名 がつけられている しかし, 実 地 臨 床 では, 以 前 から 用 いられていたさまざまな 名 称 が 今 も 使 われておりこれらを 一 覧 表 にしたのが 上 図 である また, 実 際 には 抗 精 神 病 薬 = 統 合 失 調 症 の 治 療 薬, 抗 うつ 薬 =うつ 病 の 治 療 薬 といった 単 純 な 図 式 は 必 ずしも 成 り 立 たず, 病 名 ではなく 精 神 的 な 状 態 像 によって 薬 剤 選 択 がされている
更 に,それぞれの 薬 による 治 療 の 経 験 が 重 なるにつれて,ある 薬 が 最 初 の 適 応 症 と 違 う 病 気 に 効 くことが 分 かる 場 合 がある たとえば,はじめ 抗 てんかん 薬 として 使 われたバルプロ 酸 が, 躁 状 態 に 有 効 であることが 分 か ったり, 抗 うつ 薬 が 抗 不 安 薬 に 代 わって 不 安 障 害 治 療 のファーストラインになったりするなど, いわゆる 治 療 薬 選 択 のボーダレス 化 が 進 んできた 以 上 のような 背 景 から, 精 神 科 患 者 に 対 する 処 方 はより 一 層 複 雑 なものとなり, 精 神 科 専 門 医 以 外 の 医 師 にとってより 理 解 しにくいものとなってきている しかし,このような 現 状 においても, 我 々 産 業 医 は 向 精 神 薬 の 概 要 については 理 解 しておく 必 要 があり,これより 産 業 医 面 談 でよく 目 にする 抗 うつ 薬, 気 分 安 定 薬, 睡 眠 薬 について 概 説 す る スライド 番 号 4 我 が 国 のうつ 病 治 療 アルゴリズムでは, 軽 症 から 中 等 症 のうつ 病 に 対 しては, 選 択 的 セロトニ ン 再 取 り 込 み 阻 害 薬 selective serotonin reuptake inhibitor(ssri)やセロトニン ノルアド レナリン 再 取 り 込 み 阻 害 薬 serotonin noradrenaline reuptake inhibitor(snri)のどちらか 一 方 を 2~4 週 間 程 度, 十 分 量 服 薬 することとなっている しかし,SSRI,SNRI のどちらを 使 用 するかの 判 断 基 準 は 示 されていない 抗 うつ 薬 の 薬 理 作 用 機 序 については,モノアミン 仮 説,モノアミン 受 容 体 のダウンレギュレーション 作 用, 海 馬 神 経 新 生 促 進 作 用 など, 様 々な 仮 説 があり 未 だ 解 明 には 至 っていないのが 現 状 である 今 回 は,モノアミンの 薬 理 学 的 観 点 から 選 択 の 根 拠 の 指 標 を 紹 介 する また,わが 国 では 2009 年 から 使 用 されるようになった,ノルアドレナリン 作 動 性 特 異 的 セロ トニン 作 動 性 抗 うつ 薬 Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant (NaSSA) についても,その 特 徴 を 紹 介 する 最 後 に, 古 くから 使 われていて 従 来 薬 と 称 される, 三 環 系, 四 環 系 抗 うつ 薬 についても,その 概 要 を 述 べる スライド 番 号 5 セロトニンやノルアドレナリン,ドパミン 等 の 各 種 モノアミンは,それぞれにうつ 病 の 症 状 と 関 連 しているとされる セロトニンは 不 安,イライラ 感 ( 焦 燥 ), 緊 張 感 などと 特 に 関 連 しており,ノルアドレナリンは 意 欲 低 下, 興 味 の 喪 失 と 関 連 している また,ドパミンンの 低 下 は 快 楽 喪 失, 食 欲, 性 欲 低 下 などと 関 連 しているとされており, 全 て のモノアミンは, 認 知 機 能 低 下, 不 機 嫌 等 の 精 神 症 状 との 関 連 があるとされている スライド 番 号 6
SSRI と SNRI の 使 い 分 けについて1 中 村 によると,うつ 病 はその 症 状 から, 不 安 や 焦 燥, 心 気 症 状 が 前 景 の 焦 燥 型 うつ 病 と, 意 欲 低 下 や 思 考 制 止 が 前 景 の 制 止 型 うつ 病 に 分 類 出 来 るという 中 村 らは SSRI と SNRI のカテコラミン 神 経 系 への 影 響 と 治 療 反 応 性 に 関 する 検 討 を 行 い,フル ボキサミン(デプロメール )とパロキセチン(パキシル )は 焦 燥 型 うつ 病 に,ミルナシプラン (トレドミン )は 制 止 型 うつ 病 に 効 果 があることを 明 らかにした また,ノルアドレナリンの 主 要 代 謝 産 物 である 血 中 MHPG 濃 度 の 基 礎 値 から,SSRI と SNRI の 使 い 分 けが 可 能 であることも 示 している つまり,フルボキサミンやパロキセチンといった SSRI では 治 療 前 の 血 中 MHPG が 高 く, 不 安 や 心 気 症 状 が 前 景 の 症 状 が 前 景 の 症 例 に 対 して 有 効 性 が 高 いこと,またミルナシプランでは, 治 療 前 の 血 中 MHPG 濃 度 が 低 く, 精 神 運 動 制 止 症 状 が 前 景 のうつ 病 患 者 に 対 して 有 効 性 が 高 かった スライド 番 号 8 SSRI と SNRI の 使 い 分 けについて2 また, 類 似 点 も 多 いが 姫 井 によりセロトニンとノルアドレナリンが 司 る 生 理 機 能 を 考 慮 した 使 い 分 けが 示 されている 姫 井 によると, 抑 うつ 気 分 の 症 状 が 前 面 に 出 ている 場 合 には SSRI を, 気 力 減 退 の 症 状 が 前 面 に 出 ている 場 合 には SNRI を 選 択 しているという この 抑 うつ 気 分 と 気 分 減 退 が 同 じぐらいであるときは, 不 安 の 症 状 について 考 慮 し, 強 迫 的 で 被 害 的 な 内 容 を 伴 う 不 安 がある 場 合 には SSRI を, 衝 動 性 を 伴 わない 漠 然 とした 不 安 のある 場 合 には SNRI を 選 択 しているようである スライド 番 号 9 SSRI と SNRI の 使 い 分 けについて2 また, 軽 度 なうつ 病 で 症 状 が 顕 著 でない 場 合 には, 更 に 大 きな 捉 え 方 をし, 不 安 や 余 裕 のなさが 見 られるときには SSRI を,やる 気 のなさや 億 劫 感 が 認 められるときには SNRI を 選 択 している スライド 番 号 27 睡 眠 薬 の 治 療 薬 選 択 は,まずは 作 用 持 続 時 間 を 参 考 にして 行 われる 入 眠 が 出 来 れば 睡 眠 の 維 持 と 内 容 はほぼ 良 好 という 入 眠 障 害 型 不 眠 症 の 治 療 には, 入 眠 のみを 改 善 させ, 持 ち 越 し 効 果 を 避 けるため 超 短 時 間 ~ 短 時 間 作 用 型 の 睡 眠 薬 が 用 いられる 超 短 時 間 ~ 短 時 間 作 用 型 薬 物 は 急 激 な 血 中 濃 度 低 下 により, 中 途 覚 醒 と 目 覚 めたときの 不 安 を 増 強 さ せる 可 能 性 もある
そこで, 中 途 覚 醒 型 や 熟 眠 障 害 型 の 不 眠 には 短 時 間 ~ 中 間 作 用 型 の 睡 眠 薬, 更 に 早 朝 覚 醒 型 の 不 眠 には 長 時 間 作 用 型 の 睡 眠 薬 も 選 択 肢 に 入 る また, 臨 床 的 な 薬 剤 選 択 法 として, 神 経 症 的 傾 向 の 有 無 と, 肝 機 能 や 腎 機 能 障 害 の 合 併 による 使 い 分 けが 提 案 されている 不 眠 症 の 中 核 をなす 精 神 生 理 性 不 眠 症 は 不 眠 への 恐 怖 ( 神 経 症 的 傾 向 )と, 緊 張 過 覚 醒 が 病 態 の 基 礎 となっており, 抗 不 安 作 用 筋 弛 緩 作 用 を 併 せ 持 つ 睡 眠 薬 の 有 効 性 が 高 い 一 方, 高 齢 者 などで 転 倒 の 危 険 がある 場 合 は,ω1 受 容 体 選 択 性 が 高 く 筋 弛 緩 作 用 が 少 ない 非 BZ 系 睡 眠 薬 が 適 切 である 肝 機 能 障 害 合 併 時 には, 肝 臓 の 薬 物 代 謝 酵 素 チトクロームを 介 さず,1 回 のグルクロン 酸 抱 合 で 排 泄 され, 活 性 代 謝 産 物 をもたないロルメタゼパム(エバミール )が 選 択 となる