貧 困 率 は 13%と 高 く 2013 年 以 降 の 報 酬 比 例 部 分 の 支 給 開 始 年 齢 引 き 上 げの 埋 め 合 わせと して 基 礎 年 金 繰 上 げ 制 度 は 必 ずしも 所 得 確 保 の 万 能 薬 とはならない 可 能 性 が 示 唆 された 第 2 節 年



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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

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(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

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16 日本学生支援機構

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

社 会 保 障 税 一 体 改 革 ( 年 金 分 野 )の 経 緯 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2 月 17 日 閣 議 決 定 ) 国 年 法 等 改 正 法 案 (2 月 10 日 提 出 ) 法 案 を 提 出 する または 法 案 提 出 を 検 討 する と された 事

別紙3

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

Microsoft Word - 【溶け込み】【修正】第2章~第4章

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m07 北見工業大学 様式①

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

経 常 収 支 差 引 額 の 状 況 平 成 22 年 度 平 成 21 年 度 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 4,154 億 円 5,234 億 円 1,080 億 円 改 善 赤 字 組 合 の 赤 字 総 額 4,836 億 円 5,636 億 円 800 億 円 減

ニュースリリース

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (5 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 区 類 団 府 分 似 体 平 均 年 齢

も く じ 1 税 源 移 譲 1 2 何 が 変 わったのか 改 正 の 3 つ の ポイント ポイント1 国 から 地 方 へ 3 兆 円 規 模 の 税 源 が 移 譲 される 2 ポイント2 個 人 住 民 税 の 税 率 構 造 が 一 律 10%に 変 わる 3 ポイント3 個 々の 納

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(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 H H H5.4.1 ( 参 考 値 ) 97.1 H H H H5.4.1 H H5.4.1 ( 参 考

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

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3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額

鳥 取 国 民 年 金 事 案 177 第 1 委 員 会 の 結 論 申 立 人 の 昭 和 37 年 6 月 から 38 年 3 月 までの 国 民 年 金 保 険 料 については 納 付 していたものと 認 められることから 納 付 記 録 を 訂 正 することが 必 要 である 第 2 申

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国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

波佐見町の給与・定員管理等について

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 25 年 4 月 1 日 現 在 ) 1) 一 般 行 政 職 福 島 県 国 類 似 団 体 平 均 年 齢 平

1 ガス 供 給 業 を 行 う 法 人 の 事 業 税 の 課 税 について ガス 供 給 業 を 行 う 法 人 は 収 入 金 額 を 課 税 標 準 として 収 入 割 の 申 告 となります ( 法 72 条 の2 72 条 の 12 第 2 号 ) ガス 供 給 業 とその 他 の 事

FP知年金_-D-_[本文].indb

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 ( 各 年 4 月 1 日 現 在 ) (H25.4.1) (H25.4.1) (H25.7.1) (H25.7.1) (H25.4.1) (H25.7.1)

スライド 1

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

厚 生 年 金 は 退 職 後 の 所 得 保 障 を 行 う 制 度 であり 制 度 発 足 時 は 在 職 中 は 年 金 を 支 給 しないこととされていた しかしながら 高 齢 者 は 低 賃 金 の 場 合 が 多 いと いう 実 態 に 鑑 み 在 職 者 にも 支 給 される 特 別

公表表紙


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5

総論

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子ども手当見直しによる家計への影響~高所得者層の可処分所得は大幅減少に

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損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

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えて さらに 賃 金 の 半 分 の 年 金 減 額 を 行 うことになる 4 したがって 年 金 減 額 を 賃 金 月 額 wと 年 金 月 額 ɑによって 表 すと max(0.5{w+min(ɑ,28)-28},0)+ max(0.5(w-48),0) [1] となる また 高 年 齢 雇

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 2 年 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制 措 置 を 行 う 前 のものです ( 単 位 : ) 3 職 員 の 平 均 給 与 月

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3 職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 及 び の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 ( ベース) ,9 47,78 369,884 崎 県 , , ,

平成16年度

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(2) 支 状 況 保 育 所 ( 定 員 60 人 以 上 ) 支 状 況 は 次 とおりです 1 総 入 構 成 比 は 割 合 が88.1% 活 動 外 入 が2.1% 特 別 入 が9.8%でした 2 構 成 比 は 運 営 費 入 が80.1% 経 常 経 費 補 助 金 入 が17.8%

18 国立高等専門学校機構

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(Microsoft Word - H24\213\213\227^\201E\222\350\210\365\212\307\227\235.doc)

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 161,7 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

プラス 0.9%の 年 金 額 改 定 が 行 われることで 何 円 になりますか また どのような 計 算 が 行 われているのですか A これまでの 年 金 額 は 過 去 に 物 価 が 下 落 したにもかかわらず 年 金 額 は 据 え 置 く 措 置 をと った 時 の 計 算 式 に 基

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている 総 合 的

[ 組 合 員 期 間 等 の 特 例 ] 組 合 員 期 間 等 については 年 齢 職 種 などにより 過 去 の 制 度 からの 経 過 措 置 が 設 けられ ており 被 用 者 年 制 度 の 加 入 期 間 ( 各 共 済 組 合 の 組 合 員 期 間 など)については 生 年 月 日

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

Microsoft Word - 通達(参考).doc

一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 ) ( 単 位 : ) 1 級 級 級 級 5 級 級 1 号 給 の 給 料 月 額 15, 185,8,9 1,9 89,, 最 高 号 給 の 給 料 月 額,7 9, 5, 9,1,5, ( 注 ) 給 料 月 額 は

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 ( 各 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 例 ) ( 例 ) 15 (H2) (H2) (H24) (H24) (H25.4.1) (H25.4.1) (H24) (H24)

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 () 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 年 月 日 現 在 ) 一 般 行 政 職 平 均 給 与 月 額 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額

減 少 率 ) と 平 均 余 命 の 伸 びを 勘 案 した 一 定 率 (0.3%) の 合 計 である スライド 調 整 率 を 差 し 引 いて 年 金 額 の 改 定 が 行 われる( 図 表 ) ただし マクロ 経 済 スライドが 完 全 に 実 施 されるのは 賃 金 や 物 価 があ

3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額


(5) 給 与 改 定 の 状 況 事 委 員 会 が 無 い た め 記 載 し て お り ま せ ん 1 月 例 給 事 委 員 会 の 勧 告 ( 参 考 ) 区 分 民 間 給 与 A 公 務 員 給 与 B 較 差 A - B 勧 告 ( 改 定 率 ) 給 与 改 定 率 国 の 改

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 最 高 号 給 の 給 料 月 額 243,7 37,8 35


平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税

目 次 1 報 酬 給 与 額 事 例 1 報 酬 給 与 額 に 含 める 賞 与 の 金 額 が 誤 っていた 事 例 1 事 例 2 役 員 退 職 金 ( 役 員 退 職 慰 労 金 )を 報 酬 給 与 額 として 申 告 して いなかった 事 例 1 事 例 3 持 株 奨 励 金 を

申 請 免 除 申 請 免 除 ( 学 生 以 外 ) 学 生 納 付 特 例 制 度 若 年 者 納 付 猶 予 制 度 法 定 免 除 世 帯 構 成 図 表 1 国 民 年 金 保 険 料 の 免 除 の 種 類 と 所 得 基 準 本 人 世 帯 主 配 偶 者 の 所 得 に 応 じて 免

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2 職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 (26 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 静 岡 県 国 類 似 団 体 2 技 能 労 務 職 区 41.8 歳 42.6 歳 43.5

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 (H20.4.1) 96.7 (H25.4.1) (H25.7.1) (H25.4.1), (H25.4.1) 参 考 値 98.3 (H25.7.1) (H20.4.1) (H25.4

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 級 の 給 料 月 額 最 高 号 級 の 給 料 月 額 1 級 ( 単 位 : ) 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 9 級 1 級 135,6 185,8 222,9 261,

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制 措 置 を 行 う 前 のものです 3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給

( 注 )1 ラスパイレス 指 数 とは 全 地 方 公 共 団 体 の 一 般 行 政 職 の 給 料 月 額 を 一 の 基 準 で 比 較 するため の 職 員 数 ( 構 成 )を 用 いて 学 歴 や 経 験 年 数 の 差 による 影 響 を 補 正 し の 行 政 職 俸 給 表 (

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

事務連絡

(2) 特 別 障 害 給 付 金 国 民 年 金 に 任 意 加 入 していなかったことにより 障 害 基 礎 年 金 等 を 受 給 していない 障 がい 者 の 方 に 対 し 福 祉 的 措 置 として 給 付 金 の 支 給 を 行 う 制 度 です 支 給 対 象 者 平 成 3 年 3

1 総括

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第 1 章 雇 用 と 年 金 の 接 続 - 就 業 抑 制 と 繰 上 げ 受 給 に 関 する 分 析 - 第 1 節 はじめに 雇 用 者 としての 職 歴 を 経 た 人 々の 60 歳 代 における 所 得 確 保 の 方 法 は 2000 年 代 に 入 り 雇 用 年 金 制 度 の 変 化 により 大 きく 変 貌 した この 制 度 変 化 としては 主 に 5 点 が 挙 げられる 第 一 に 1994 年 の 年 金 制 度 改 正 により 特 別 支 給 の 老 齢 厚 生 年 金 の 定 額 部 分 (1 階 部 分 )の 支 給 開 始 年 齢 は 2001 年 から 2013 年 にかけて 段 階 的 に 65 歳 まで 引 き 上 げられることになった 第 二 に それと 同 時 に 老 齢 厚 生 年 金 受 給 資 格 者 に 対 する 基 礎 年 金 繰 上 げ 制 度 が 導 入 された 第 三 に 2000 年 の 年 金 制 度 改 正 により 特 別 支 給 の 老 齢 厚 生 年 金 のうち 報 酬 比 例 部 分 (2 階 部 分 )の 支 給 開 始 年 齢 が 2013 年 から 2025 年 にかけて 段 階 的 に 65 歳 に 引 き 上 げられることに なった また 60 歳 台 後 半 の 在 職 老 齢 年 金 制 度 も 導 入 (2002 年 施 行 )された 第 四 に これ と 対 応 し 2004 年 の 高 年 齢 者 雇 用 安 定 法 改 正 は 2006 年 4 月 以 降 65 歳 未 満 の 定 年 の 定 め をしている 企 業 は 年 金 受 給 開 始 年 齢 までの 高 年 齢 者 に 雇 用 確 保 措 置 を 講 じることが 義 務 付 け た さらに 2004 年 の 年 金 制 度 改 正 により 2005 年 から 60 歳 台 前 半 の 在 職 老 齢 年 金 制 度 にお いて 一 律 2 割 の 支 給 停 止 部 分 を 2005 年 4 月 から 廃 止 し 就 業 に 対 する 抑 制 要 因 の 一 つを 取 り 除 いた 本 章 の 目 的 は 独 立 行 政 法 人 労 働 政 策 研 究 研 修 機 構 が 中 央 調 査 社 を 通 じて 2009 年 に 実 施 した 高 年 齢 者 に 対 する 調 査 の 個 票 データを 利 用 し 2 つの 問 いに 答 えるものである 第 一 は 在 職 老 齢 年 金 制 度 の 就 業 抑 制 効 果 についてである 第 二 は 老 齢 厚 生 年 金 受 給 資 格 者 の 基 礎 年 金 繰 上 げ 受 給 についてである 60 歳 台 前 半 の 高 年 齢 者 にとって 就 労 できない 場 合 の 所 得 確 保 が 問 題 となるのは 2013 年 からである 現 時 点 では 定 額 部 分 については 支 給 開 始 年 齢 が 引 き 上 げられているが 報 酬 比 例 部 分 については 受 給 可 能 であるため 就 労 できない 場 合 の 所 得 確 保 の 問 題 すなわち 年 金 と 雇 用 の 接 続 の 課 題 はそれほど 顕 在 化 していない 基 礎 年 金 繰 上 げ 制 度 をどのような 人 々が 利 用 しているかを 知 ることで 2013 年 以 降 の 所 得 確 保 に 関 する 課 題 について 知 見 を 得 ることが 期 待 できる しかし 老 齢 厚 生 年 金 における 一 律 2 割 の 支 給 停 止 廃 止 や 老 齢 基 礎 年 金 繰 上 げ 受 給 は い ずれも 比 較 的 近 年 の 制 度 変 更 であるため これらの 効 果 について 定 量 的 分 析 は 筆 者 が 知 る 限 り まだほとんど 行 われていない おそらく 本 章 の 分 析 は これらの 効 果 を 実 証 的 に 確 認 す る 初 期 の 試 みであると 考 えられる 本 章 の 分 析 の 結 果 得 られた 新 たな 知 見 は 3 つある 第 一 に 在 職 老 齢 年 金 制 度 による 就 業 抑 制 効 果 は(63 歳 と 64 歳 の 一 部 の 結 果 を 除 き) 確 認 できない 第 二 に 老 齢 厚 生 年 金 受 給 資 格 者 の 中 で 基 礎 年 金 繰 上 げ 制 度 を 利 用 しているのは 定 年 等 を 契 機 とする 離 職 後 に 失 業 を 経 験 した 人 々である すなわち 自 らの 意 思 に 反 し 勤 労 所 得 が 途 絶 してしまい 雇 用 と 年 金 の 接 続 がうまく 行 かなかった 人 々である 第 三 に 基 礎 年 金 繰 上 げ 制 度 を 利 用 した 人 々の 相 対 的 -18-

貧 困 率 は 13%と 高 く 2013 年 以 降 の 報 酬 比 例 部 分 の 支 給 開 始 年 齢 引 き 上 げの 埋 め 合 わせと して 基 礎 年 金 繰 上 げ 制 度 は 必 ずしも 所 得 確 保 の 万 能 薬 とはならない 可 能 性 が 示 唆 された 第 2 節 年 金 の 就 業 抑 制 および 繰 上 げ 受 給 をめぐる 議 論 1. 年 金 の 就 業 抑 制 をめぐる 議 論 周 知 の 通 り 1965 年 まで 厚 生 老 齢 年 金 は 退 職 が 受 給 要 件 となっていたため 給 付 水 準 の 低 い 年 金 を 就 労 所 得 で 埋 め 合 わせることができず 低 所 得 層 に 留 まる 高 齢 者 が 多 数 いた こう した 退 職 年 金 であった 厚 生 老 齢 年 金 制 度 に 老 齢 年 金 的 性 格 を 導 入 し 年 金 給 付 水 準 の 低 い 高 齢 者 に 就 労 所 得 による 埋 め 合 わせができるよう 工 夫 されたのが 1965 年 の 在 職 老 齢 年 金 制 度 ( 高 在 老 )である 1 在 職 老 齢 年 金 制 度 は 以 後 40 年 間 にわたり 受 給 権 発 生 の 上 限 引 き 上 げを 通 じた 支 給 要 件 緩 和 と 支 給 停 止 方 法 の 改 善 などの 改 革 が 繰 り 返 されていく 2 また,65 歳 以 上 を 対 象 と する 在 職 老 齢 年 金 ( 高 在 老 )は 1985 年 にいったん 廃 止 されるが 2002 年 に 復 活 する この 在 職 老 齢 年 金 制 度 は 定 年 制 とともに 賃 金 額 に 応 じて 年 金 給 付 が 就 業 中 は 全 額 もしく は 一 部 停 止 されることによる 労 働 供 給 側 の 就 業 抑 制 効 果 が 指 摘 されており これまで 数 多 く の 研 究 (Amemiya & Shimono 1989 清 家 1993 清 家 山 田 1996 安 部 1998 小 川 1998a, 1998b 岩 本 2000 大 石 小 塩 2000 三 谷 2001 樋 口 山 本 2002 大 竹 山 鹿 2003 清 家 山 田 2004 石 井 黒 澤 2009 など)で 検 証 されてきた また 労 働 需 要 側 にとっては,こ の 在 職 老 齢 年 金 制 度 は 一 種 の 賃 金 補 助 金 として 機 能 しており 低 賃 金 雇 用 を 促 すこと( 橘 木 下 野 1989) 賃 金 上 昇 による 労 働 供 給 増 加 より 賃 金 補 助 金 としての 在 職 老 齢 年 金 増 大 による 労 働 需 要 増 加 の 影 響 の 方 が 大 きいこと( 小 川 1998b) 在 職 老 齢 年 金 により 若 年 者 との 雇 用 代 替 が 起 きている 可 能 性 ( 金 子 1997)なども 指 摘 されている 在 職 老 齢 年 金 制 度 の 改 革 に 関 する 近 年 の 評 価 は 以 下 の 通 りである 1989 年 改 正 につい ては 安 部 (1998) 岩 本 (2000) 三 谷 (2001)は 就 業 抑 制 に 対 する 改 善 効 果 はなかったと 結 論 付 けている ただし 大 竹 山 鹿 (2003)は 支 給 停 止 前 の 本 来 の 厚 生 年 金 額 が 少 ないグ ループについては 1989 1994 年 改 正 が 就 業 抑 制 効 果 を 和 らげたことを 検 証 している 樋 口 山 本 (2002)と 三 谷 (2001)も 1994 年 改 正 により 就 業 率 上 昇 効 果 があったことを 確 認 して いる しかし 一 方 で 樋 口 山 本 (2002)は 就 業 抑 制 効 果 が 依 然 として 残 っている 3 こと また 清 家 山 田 (2004)も 1994 年 改 正 後 も 8-12 万 円 の 勤 労 収 入 層 にモードがあり 雇 用 慣 行 とし 1 1990 年 代 に 入 ってからもこの 傾 向 は 変 わらず 低 賃 金 階 層 では 年 金 額 ( 在 職 老 齢 年 金 制 度 による 減 額 前 )の 低 さを 勤 労 所 得 で 補 っている とはいえ 減 額 前 厚 生 年 金 額 は 賃 金 階 層 に 対 して U 字 型 となっており 高 賃 金 階 層 では 年 金 額 ( 減 額 前 )も 勤 労 所 得 額 も 高 くなっている( 浜 田 1999, p.) 2 在 職 老 齢 年 金 制 度 の 変 更 については 厚 生 省 (1998a)がまとまっており 参 考 になる 3 ただし 小 川 (1998a, 1998b)と 同 様 樋 口 山 本 (2002)では 在 職 老 齢 年 金 制 度 や 高 年 齢 雇 用 継 続 給 付 が 雇 用 補 助 金 として 労 働 供 給 を 促 進 する 側 面 についても 指 摘 している 浜 田 (2010)も 2008 年 の 独 立 行 政 法 人 労 働 政 策 研 修 機 構 の 企 業 データを 用 い 同 様 の 側 面 が 最 近 でも 確 認 できることを 指 摘 している -19-

て 改 正 前 の 影 響 が 残 っている 可 能 性 を 指 摘 している 2000 年 改 正 による 65-69 歳 への 在 職 老 齢 年 金 制 度 の 再 導 入 の 評 価 については 石 井 黒 澤 (2009)が 試 みているが 利 用 した 高 年 齢 者 就 業 実 態 調 査 (2004 年 ) の 調 査 票 設 計 上 の 問 題 4 もあり 統 計 的 に 有 意 な 結 果 が 得 られ ていない 2001 年 から 始 まった 特 別 支 給 の 老 齢 厚 生 年 金 の 定 額 部 分 支 給 開 始 年 齢 引 き 上 げに ついては 菅 清 家 (2003)や 石 井 黒 澤 (2009)が 制 度 変 更 の 結 果 有 意 に 労 働 供 給 を 増 やしているとの 結 果 を 得 ている 2. 繰 上 げ 受 給 をめぐる 議 論 翻 って 我 が 国 における 公 的 年 金 の 繰 り 上 げ 繰 り 下 げ 受 給 に 関 する 先 行 研 究 はほとんど ない 国 民 年 金 の 未 納 問 題 を 扱 った 論 文 が 比 較 的 多 くあるのと 比 べれば 対 照 的 である そうした 数 少 ない 公 的 年 金 の 繰 り 上 げ 繰 り 下 げ 受 給 要 因 についての 分 析 として まず 厚 生 省 (1998b) 国 民 年 金 被 保 険 者 実 態 調 査 ( 平 成 8 年 ) が 挙 げられる この 統 計 では 繰 り 上 げ 受 給 希 望 者 にその 理 由 を 尋 ねており 55-59 歳 では 長 生 きできると 思 っていないから (41%) 早 く 生 活 費 の 足 しにしたいから(33%) という 理 由 でほぼ 7 割 を 占 める また 1 割 強 の 人 が 自 分 で 自 由 に 使 える 小 遣 いがほしいから という 理 由 を 挙 げている 予 測 寿 命 が 短 い 人 ほど また 所 得 が 不 十 分 であるほど 早 く 年 金 受 給 を 選 択 するので 逆 選 択 と 流 動 性 制 約 が 繰 り 上 げ 受 給 の 二 大 要 因 となっているものと 理 解 される 駒 村 (2007)では 都 道 府 県 別 データを 用 い 女 性 については 平 均 寿 命 が 繰 り 上 げ 受 給 に 有 意 に 負 の 影 響 を 与 えること また 男 性 では 自 営 業 率 と 高 齢 者 のみ 世 帯 率 が 繰 り 上 げ 受 給 に 有 意 に 負 の 影 響 を 与 えることを 指 摘 し それぞれ 逆 選 択 と 流 動 性 制 約 の 存 在 を 指 摘 した さ らに 駒 村 (2009)では 独 自 のインターネット 調 査 を 用 い 逆 選 択 要 因 が 繰 り 上 げ 受 給 に 与 えていること 流 動 性 制 約 要 因 についても 一 部 繰 り 上 げ 受 給 に 影 響 を 与 えていることを 確 認 している さらに 近 視 眼 的 要 因 も 繰 り 上 げ 受 給 に 影 響 を 与 えていることを 示 した 第 3 節 60 歳 からの 所 得 確 保 の 方 法 1.60 歳 代 前 半 の 所 得 確 保 の 方 法 上 述 した 2000 年 代 に 入 ってからの 制 度 変 更 により 社 会 保 障 給 付 ( 特 別 支 給 の 老 齢 厚 生 年 金 )と 組 み 合 わせた 60 歳 代 前 半 の 所 得 確 保 のパターンは 主 に 以 下 の 6 つがある 5 1 報 酬 比 例 部 分 ( 就 労 者 でも 短 時 間 労 働 者 など 厚 生 年 金 の 被 保 険 者 とならなければ 全 額 支 4 高 年 齢 者 就 業 実 態 調 査 (2004 年 ) では 質 問 票 の 内 容 が 簡 素 化 されたため 在 職 老 齢 年 金 額 を 把 握 できなく なった 5 これ 以 外 に 厚 生 年 金 の 長 期 加 入 者 というパターンもある 具 体 的 には 厚 生 年 金 の 被 保 険 者 期 間 (15-65 歳 未 満 )が 44 年 以 上 の 場 合 長 期 加 入 者 となり 満 額 支 給 される なお 被 保 険 者 資 格 の 喪 失 が 要 件 であるため 在 職 老 齢 はない -20-

給 ) 2 報 酬 比 例 部 分 + 老 齢 基 礎 年 金 繰 上 げ 受 給 ( 一 部 ): 定 額 部 分 支 給 開 始 年 齢 から+ 加 給 年 金 3 報 酬 比 例 部 分 + 老 齢 基 礎 年 金 繰 上 げ 受 給 ( 全 部 ): 定 額 部 分 支 給 開 始 年 齢 から+ 加 給 年 金 4 在 職 老 齢 年 金 + 勤 労 所 得 ( 厚 生 年 金 保 険 の 被 保 険 者 の 場 合 ) 一 部 繰 上 げの 場 合 : 報 酬 比 例 部 分 + 定 額 部 分 調 整 額 対 象 6 繰 上 げた 老 齢 基 礎 年 金 に ついては 全 額 支 給 全 部 繰 上 げの 場 合 : 報 酬 比 例 部 分 + 経 過 的 加 算 相 当 額 対 象 7 繰 上 げた 老 齢 基 礎 年 金 については 全 額 支 給 5 在 職 老 齢 年 金 + 勤 労 所 得 + 高 年 齢 雇 用 継 続 給 付 ( 併 給 調 整 有 厚 生 年 金 保 険 の 被 保 険 者 の 場 合 ) 6 雇 用 保 険 基 本 手 当 ( 年 金 は 全 額 支 給 停 止 ) このように 2000 年 代 に 入 り 60 歳 代 における 雇 用 所 得 と 社 会 保 障 給 付 の 組 み 合 わせが 複 雑 になったこと 変 数 の 入 手 可 能 性 を 考 慮 したこと および 先 行 研 究 との 比 較 を 行 うためもあ り 本 章 では 在 職 老 齢 年 金 制 度 の 就 業 抑 制 効 果 については 老 齢 厚 生 年 金 の 受 給 資 格 の 有 無 に 基 づき 計 測 する 2. 厚 生 年 金 の 繰 上 げ 受 給 の 実 態 厚 生 年 金 における 基 礎 年 金 の 繰 上 げ 実 態 について 調 査 実 施 の 2009 年 8 月 1 日 直 前 の 状 況 を 厚 生 労 働 省 (2009a) 事 業 月 報 から 確 認 しよう 2009 年 7 月 末 現 在 の 厚 生 年 金 老 齢 給 付 の 受 給 者 数 は 2,226 万 人 で うち 退 職 者 は 9 割 在 職 者 は 1 割 を 占 める また 新 法 厚 年 分 1,941 万 人 のうち 特 別 支 給 の 老 齢 厚 生 年 金 の 定 額 部 分 ( 以 下 定 額 部 分 )も 老 齢 基 礎 年 金 も 受 給 していない 基 礎 および 定 額 なし は 205 万 人 で 定 額 部 分 または 老 齢 基 礎 年 金 を 受 給 している 基 礎 または 定 額 あり は 1,735 万 人 である 基 礎 または 定 額 あり のうち 定 額 部 分 を 支 給 停 止 とし( 昭 和 16 年 4 月 1 日 以 前 生 は 報 酬 比 例 部 分 も 支 給 停 止 ) 老 齢 基 礎 年 金 を 繰 り 上 げる 基 礎 全 部 繰 上 げ は 86 万 人 で 定 額 部 分 と 老 齢 基 礎 年 金 を 一 体 的 に 繰 り 上 げる 基 礎 一 部 繰 上 げ は 28 万 人 となっている 本 章 のデータでは 厚 生 老 齢 年 金 の 受 給 資 格 をもつ 男 性 60-69 歳 (2009 年 時 点 )で 繰 上 げ 受 給 の 選 択 者 は 約 2 割 存 在 している 6 たとえば 昭 和 18 年 4 月 2 日 から 昭 和 20 年 4 月 1 日 生 まれの 男 性 の 場 合 報 酬 比 例 部 分 は 60 歳 から 支 給 され 定 額 部 分 は 62 歳 から 支 給 される 60 歳 から 62 歳 未 満 の 間 は 報 酬 比 例 部 分 のみとなる この 期 間 を 埋 めるため 定 額 部 分 の 62 歳 から 65 歳 未 満 の 3 年 間 分 を 例 えば 60 歳 から 65 歳 未 満 の 5 年 間 に 平 均 して 受 給 する 場 合 こ れを 定 額 繰 上 げ 調 整 額 と 言 う 7 定 額 部 分 と 厚 生 年 金 期 間 にかかる 老 齢 基 礎 年 金 との 差 額 のことを 経 過 的 加 算 額 と 言 う -21-

第 4 節 使 用 データおよび 変 数 1.サブ サンプルの 設 計 本 章 の 分 析 では 在 職 老 齢 年 金 制 度 の 効 果 分 析 と 繰 り 上 げ 受 給 の 要 因 分 析 という 2 つの 研 究 目 的 に 応 じ 以 下 2 つのサブ サンプルを 用 い 分 析 する 155 歳 当 時 雇 用 者 ( 民 間 ) 男 性 60-69 歳 : 就 業 決 定 賃 金 関 数 の 推 定 に 使 用 2 上 記 限 定 老 齢 厚 生 年 金 の 受 給 資 格 者 : 老 齢 厚 生 年 金 受 給 資 格 者 の 老 齢 基 礎 年 金 の 繰 上 げ 繰 下 げ 受 給 決 定 要 因 の 推 定 に 使 用 第 一 は 55 歳 当 時 に 民 間 企 業 の 雇 用 者 であり 現 在 60-69 歳 の 男 性 である 厚 生 年 金 保 険 に 加 入 していた 可 能 性 の 高 いグループである この 第 一 のサブ サンプルは 在 職 老 齢 年 金 制 度 が 就 業 決 定 に 及 ぼす 影 響 を 評 価 するために 使 用 される また 賃 金 関 数 の 推 定 にも 用 いる 第 二 は 第 一 のサブ サンプルの 部 分 集 合 であり 第 一 のサブ サンプルに 老 齢 厚 生 年 金 の 受 給 資 格 がある という 限 定 を 加 えている この 第 二 のサブ サンプルは 老 齢 厚 生 年 金 受 給 資 格 者 の 老 齢 基 礎 年 金 部 分 の 繰 上 げあるいは 繰 り 下 げ 受 給 の 要 因 分 析 に 用 いられる 2. 使 用 変 数 推 計 方 法 第 一 の 在 職 老 齢 年 金 制 度 の 分 析 に 用 いられる 被 説 明 変 数 は 2009 年 7 月 現 在 収 入 になる 仕 事 をしているかどうかであり 仕 事 をしていない 場 合 を 0 仕 事 をしている 場 合 を 1 とお く 2 値 変 数 である 第 二 の 繰 り 上 げ 受 給 の 要 因 分 析 に 用 いられる 被 説 明 変 数 は 公 的 年 金 受 給 の 繰 り 上 げ(1) 繰 り 下 げ(2) どちらも 選 択 していない(0)という 3 値 のカテゴリー 変 数 である 説 明 変 数 およびその 説 明 については 第 1-4-1 表 に 示 してある 年 齢 から 厚 生 年 金 以 外 の 非 勤 労 所 得 は 留 保 賃 金 あるいは 市 場 賃 金 に 影 響 を 与 える 変 数 であり 第 一 の 在 職 老 齢 年 金 制 度 の 分 析 に 用 いられる なお 勤 続 年 数 55 歳 当 時 雇 われていた 会 社 に 勤 務 および 定 年 (あるいは 定 年 前 ) 職 種 と 同 じ の 3 変 数 は 市 場 賃 金 のみに 関 係 する また 厚 生 年 金 の 受 給 資 格 と 厚 生 年 金 以 外 の 非 勤 労 収 入 は 留 保 賃 金 のみに 関 係 し いずれも 留 保 賃 金 を 上 昇 させる 要 因 として 考 えられる 本 章 の 分 析 において 最 も 重 要 な 説 明 変 数 が この 厚 生 年 金 の 受 給 資 格 である 厚 生 年 金 給 付 実 額 ではなく 受 給 資 格 としたのは 年 金 給 付 実 額 を 説 明 変 数 とした 場 合 の 同 時 決 定 バイアスを 回 避 するためである 8 すなわち 在 職 老 齢 年 金 制 度 では 年 金 受 給 資 格 を 得 た 雇 用 8 この 問 題 を 回 避 するため 本 来 年 金 額 を 使 用 する 方 法 もある しかし 今 回 の 調 査 では 第 1-4-1 表 で 示 す 説 明 変 数 すべてに 完 全 回 答 しているサンプル 中 本 来 年 金 額 を 計 算 するための 質 問 項 目 が 欠 損 値 となってい るサンプルはさらに 4 割 存 在 するため 本 来 年 金 額 を 算 出 して 推 計 に 用 いることが 実 質 的 に 難 しい -22-

者 が 引 き 続 き 厚 生 年 金 被 保 険 者 として 勤 労 所 得 を 得 ると 年 金 と 勤 労 所 得 の 合 計 額 に 応 じて 年 金 額 が 減 額 される すると 年 金 給 付 実 額 は 個 人 の 就 業 決 定 と 独 立 に 決 まる 外 生 変 数 ではな く 就 業 選 択 の 結 果 として 決 まる 内 生 変 数 の 性 格 を 持 つことになる( 清 家 山 田 2004) その ため 先 行 研 究 に 倣 い 就 業 決 定 とは 無 関 係 に 決 まる 受 給 資 格 変 数 を 就 業 抑 制 効 果 の 分 析 に 用 いる 第 1-4-1 表 : 説 明 変 数 一 覧 変 数 名 説 明 年 齢 現 在 ( 調 査 時 点 :2009 年 8 月 1 日 )における 年 齢 健 康 不 良 ふだんの 健 康 状 態 が あまり 良 くない 良 くない 東 京 居 住 ダミー 現 在 の 居 住 地 が 東 京 都 高 校 短 大 卒 / 大 卒 院 卒 最 終 学 歴 中 学 卒 を 基 準 とするダミー 変 数 勤 続 年 数 現 在 の 仕 事 の 勤 続 年 数 定 年 退 職 経 験 55 歳 以 降 現 在 までに 定 年 経 験 したことがある 場 合 を1とおくダミー 変 数 早 期 退 職 優 遇 措 置 経 験 55 歳 当 時 に 雇 われていた 会 社 を 早 期 退 職 優 遇 制 度 を 活 用 して 定 年 前 退 職 した 場 合 を1とおくダミー 変 数 55 歳 当 時 の 企 業 規 模 55 歳 当 時 に 雇 用 されていた 企 業 規 模 100 人 以 上 1000 人 未 満 規 模 企 業 を 基 準 とするダミー 変 数 55 歳 当 時 の 職 種 55 歳 当 時 に 雇 用 されていた 企 業 における 職 種 生 産 工 程 労 務 職 を 基 準 とするダミー 変 数 55 歳 当 時 雇 われていた 会 社 に 勤 務 現 在 の 会 社 が55 歳 当 時 雇 われていた 会 社 と 同 じ 場 合 を1とおく ダミー 変 数 定 年 (あるいは 定 年 前 ) 職 種 と 同 じ 現 在 の 職 種 が 定 年 (あるいは 定 年 前 ) 職 種 と 同 じ 場 合 を1とおくダ ミー 変 数 厚 生 年 金 の 受 給 資 格 老 齢 厚 生 年 金 の 受 給 資 格 がある 場 合 ( 全 額 支 給 停 止 されている 場 合 も 含 む)を1とおくダミー 変 数 厚 生 年 金 以 外 の 非 勤 労 収 入 ( 万 円 ) 企 業 独 自 の 退 職 年 金 国 民 年 金 基 金 個 人 年 金 その 他 ( 労 災 補 償 年 金 など)の 合 計 額 定 額 部 分 支 給 開 始 年 齢 前 離 職 老 齢 厚 生 年 金 ( 特 別 支 給 )の 定 額 部 分 の 支 給 開 始 年 齢 以 前 に 離 職 (55 歳 以 降 )した 場 合 を1とおくダミー 変 数 離 職 後 失 業 離 職 (55 歳 以 降 ) 直 後 に 失 業 して 仕 事 を 探 していた 場 合 を1とお くダミー 変 数 離 職 後 非 労 働 力 離 職 (55 歳 以 降 ) 直 後 に 仕 事 や 求 職 活 動 はしていなかった 場 合 を1とおくダミー 変 数 年 金 額 予 想 予 想 される 将 来 の 公 的 年 金 給 付 額 ( 満 額 受 給 の 場 合 )の 上 昇 下 落 率 (%) 収 入 計 画 有 公 的 年 金 等 を 含 め15 年 先 以 上 の 収 入 計 画 を 立 てている 場 合 を1 とおくダミー 変 数 第 二 の 繰 り 上 げ 受 給 の 要 因 分 析 に 用 いられる 説 明 変 数 は 年 齢 や 定 年 退 職 経 験 以 外 に 定 額 部 分 支 給 開 始 年 齢 前 離 職 から 収 入 計 画 有 までの 5 つの 説 明 変 数 である 定 額 部 分 支 給 開 始 年 齢 前 離 職 離 職 後 失 業 離 職 後 非 労 働 力 はいずれも 流 動 性 制 約 の 代 理 変 数 として 設 定 した また 年 金 額 の 予 想 は 時 間 割 引 率 収 入 計 画 有 9 は 予 測 寿 命 ( 逆 選 択 要 因 )の 代 理 変 数 として 各 々 設 定 した 第 一 の 在 職 老 齢 年 金 制 度 の 分 析 に 用 いられたサブ サンプルおよび 第 二 の 繰 り 上 げ 受 給 の 要 因 分 析 に 用 いられたサブ サンプルの 記 述 統 計 は 各 々 第 1-4-2 表 と 第 1-4-3 表 に 示 9 駒 村 (2009)が 用 いた 調 査 では 予 測 寿 命 を 直 接 尋 ねていた しかし 本 調 査 ではこうした 設 問 項 目 にたいする 調 査 対 象 者 の 心 理 的 抵 抗 を 勘 案 し 予 測 寿 命 を 直 接 尋 ねる 項 目 は 見 送 られることになった -23-

されている 第 1-4-2 表 : 記 述 統 計 表 (55 歳 当 時 雇 用 者 ( 民 間 ) 男 性 60-69 歳 ) 60-64 歳 65-69 歳 非 就 労 就 労 非 就 労 就 労 Mean [Std. dev.] Mean [Std. dev.] Mean [Std. dev.] Mean [Std. dev.] 年 齢 62.033 [1.432 ] 61.736 [1.365 ] 67.069 [1.401 ] 66.717 [1.342 ] 健 康 不 良 0.317 [0.467 ] 0.253 [0.435 ] 0.329 [0.471 ] 0.283 [0.452 ] 東 京 居 住 ダミー 0.067 [0.250 ] 0.057 [0.233 ] 0.074 [0.262 ] 0.090 [0.287 ] 高 校 短 大 卒 0.508 [0.502 ] 0.502 [0.501 ] 0.435 [0.497 ] 0.462 [0.500 ] 大 卒 院 卒 0.250 [0.435 ] 0.230 [0.422 ] 0.231 [0.423 ] 0.186 [0.391 ] 勤 続 年 数 19.789 [16.65 ] 13.531 [14.57 ] 定 年 退 職 経 験 0.700 [0.460 ] 0.521 [0.501 ] 0.750 [0.434 ] 0.621 [0.487 ] 早 期 退 職 優 遇 措 置 経 験 0.058 [0.235 ] 0.034 [0.183 ] 0.051 [0.220 ] 0.021 [0.143 ] 55 歳 当 時 の 企 業 規 模 (1000 人 以 上 ) 0.333 [0.473 ] 0.203 [0.403 ] 0.361 [0.481 ] 0.297 [0.458 ] 55 歳 当 時 の 企 業 規 模 (100 人 未 満 ) 0.358 [0.482 ] 0.444 [0.498 ] 0.343 [0.476 ] 0.414 [0.494 ] 55 歳 当 時 の 職 種 ( 管 理 ) 0.233 [0.425 ] 0.172 [0.378 ] 0.241 [0.429 ] 0.193 [0.396 ] 55 歳 当 時 の 職 種 ( 専 門 ) 0.217 [0.414 ] 0.268 [0.444 ] 0.250 [0.434 ] 0.290 [0.455 ] 55 歳 当 時 の 職 種 ( 事 務 ) 0.067 [0.250 ] 0.054 [0.226 ] 0.060 [0.238 ] 0.055 [0.229 ] 55 歳 当 時 の 職 種 ( 販 売 ) 0.058 [0.235 ] 0.115 [0.320 ] 0.106 [0.309 ] 0.076 [0.266 ] 55 歳 当 時 の 職 種 (サービス) 0.083 [0.278 ] 0.080 [0.273 ] 0.042 [0.200 ] 0.076 [0.266 ] 56 歳 当 時 の 職 種 ( 保 安 ) 0.000 [0.000 ] 0.027 [0.162 ] 0.019 [0.135 ] 0.021 [0.143 ] 56 歳 当 時 の 職 種 ( 農 林 漁 業 ) 0.000 [0.000 ] 0.004 [0.062 ] 0.009 [0.096 ] 0.014 [0.117 ] 55 歳 当 時 の 職 種 ( 運 輸 通 信 ) 0.150 [0.359 ] 0.126 [0.333 ] 0.056 [0.230 ] 0.090 [0.287 ] 55 歳 当 時 雇 われていた 会 社 に 勤 務 0.517 [0.501 ] 0.248 [0.434 ] 定 年 (あるいは 定 年 前 ) 職 種 と 同 じ 0.674 [0.470 ] 0.441 [0.498 ] 厚 生 年 金 の 受 給 資 格 0.808 [0.395 ] 0.762 [0.426 ] 0.884 [0.321 ] 0.876 [0.331 ] 厚 生 年 金 以 外 の 非 勤 労 収 入 ( 万 円 ) 3.992 [6.830 ] 2.965 [6.097 ] 6.779 [9.541 ] 4.061 [10.31 ] 賃 金 率 (ln) 7.203 [0.616 ] 7.116 [0.683 ] N 120 261 216 145 第 1-4-3 表 : 記 述 統 計 表 (55 歳 当 時 雇 用 者 ( 民 間 ) 男 性 60-69 歳 老 齢 厚 生 年 金 受 給 資 格 有 ) 繰 上 繰 下 なし 繰 上 げ 繰 下 げ Mean [Std. Err.] Mean [Std. Err.] Mean [Std. Err.] 説 明 変 数 年 齢 64.544 [2.893 ] 64.393 [2.662 ] 64.139 [2.850 ] 定 年 退 職 経 験 0.682 [0.466 ] 0.615 [0.489 ] 0.750 [0.439 ] 定 額 部 分 支 給 開 始 年 齢 前 離 職 0.581 [0.494 ] 0.475 [0.501 ] 0.472 [0.506 ] 離 職 後 失 業 0.206 [0.405 ] 0.311 [0.465 ] 0.139 [0.351 ] 離 職 後 非 労 働 力 0.173 [0.379 ] 0.148 [0.356 ] 0.056 [0.232 ] 年 金 額 予 想 -4.851 [11.00 ] -4.352 [9.512 ] -4.667 [7.063 ] 収 入 計 画 有 0.147 [0.354 ] 0.115 [0.320 ] 0.194 [0.401 ] 低 所 得 率 0.020 [0.139 ] 0.057 [0.234 ] 0.000 [0.000 ] 等 価 所 得 (7 月 ) 32.13 [26.35 ] 28.30 [25.66 ] 34.10 [25.80 ] N 464 120 30 第 5 節 就 業 決 定 と 繰 上 げ 受 給 決 定 の 要 因 分 析 1. 就 業 確 率 関 数 市 場 賃 金 関 数 市 場 賃 金 が 留 保 賃 金 を 上 回 れば 就 業 を 選 択 するという 理 論 的 枠 組 を 採 用 し また 観 察 され ない 非 就 業 者 による 賃 金 の 切 断 分 布 を 考 慮 するため Heckman モデルを 用 い 就 業 確 率 関 数 お -24-

よび 市 場 賃 金 関 数 を 推 計 した 結 果 が 第 1-5-1 表 に 示 されている 推 計 対 象 は 第 一 のサブ サンプル すなわち 55 歳 当 時 民 間 企 業 の 雇 用 者 であった 男 性 60-69 歳 である 就 業 確 率 関 数 については 偏 微 係 数 を 示 している 1983 年 2000 年 の 推 計 結 果 と 比 較 すると 本 章 の 2009 年 時 点 の 推 計 結 果 は 時 点 的 によ り 近 い 2000 年 の 推 計 と 共 通 する 部 分 が 多 い 年 齢 健 康 不 良 定 年 退 職 経 験 厚 生 年 金 以 外 の 非 勤 労 収 入 については 有 意 に 就 業 を 抑 制 10 する また 東 京 居 住 や 高 学 歴 であることは 賃 金 率 を 上 昇 させる しかし 最 も 興 味 深 いのは 1983 年 や 2000 年 のデータで 確 認 できた 就 業 抑 制 要 因 である 老 齢 厚 生 年 金 の 受 給 資 格 が( 係 数 としてはマイナスであるが)10% 水 準 でも 有 意 でないこと である すなわち 老 齢 厚 生 年 金 の 受 給 資 格 があっても 60-69 歳 の 就 業 確 率 を 下 げるとは 言 えないことを 示 している 厚 生 年 金 以 外 の 非 勤 労 収 入 については 依 然 として 就 業 抑 制 効 果 が 確 認 できるので この 変 化 は 在 職 老 齢 年 金 制 度 の 制 度 変 更 すなわち 一 律 2 割 カットの 廃 止 が 何 らかの 影 響 を 与 えている 可 能 性 を 示 唆 するものである また 1983 年 と 2000 年 では 確 認 できていた 定 年 退 職 経 験 が 市 場 賃 金 率 を 下 げる 効 果 につい ても 今 回 のデータでは 確 認 することができない これは 高 年 齢 者 雇 用 安 定 法 により 定 年 退 職 以 降 も 継 続 雇 用 が 推 進 されたため 定 年 退 職 を 契 機 とした 再 就 職 時 の 賃 金 率 低 下 と 60 歳 以 降 の 継 続 雇 用 後 の 賃 金 率 低 下 の 判 別 が 難 しくなった 可 能 性 を 示 唆 している 第 1-5-1 表 : 就 業 確 率 市 場 賃 金 関 数 ( 男 性 60-69 歳 ) 就 業 確 率 関 数 市 場 賃 金 関 数 1983 年 2000 年 2009 年 1983 年 2000 年 2009 年 df/dx df/dx df/dx Coef. Coef. Coef. 説 明 変 数 年 齢 -0.017 *** -0.027 *** -0.049 *** -0.028 *** -0.029 *** -0.052 健 康 不 良 -0.331 *** -0.316 *** -0.090 ** -0.282 *** -0.152-0.181 ** 東 京 居 住 ダミー 0.056 *** -0.010 0.023 0.211 *** 0.101 ** 0.291 ** 高 校 短 大 卒 0.037 *** -0.021 0.002 0.391 *** 0.184 *** 0.136 * 大 卒 院 卒 0.087 *** 0.008-0.018 0.700 *** 0.620 *** 0.328 *** 定 年 退 職 経 験 -0.177 *** -0.180 *** -0.152 *** -0.361 *** -0.352 *** -0.219 厚 生 年 金 の 受 給 資 格 -0.153 *** -0.127 *** -0.053 厚 生 年 金 以 外 の 非 勤 労 収 入 -0.000 *** -0.004 *** -0.006 ** 定 数 項 1.263 *** 8.897 *** 10.177 *** ラムダ 変 数 0.544 *** 0.323 ** 0.527 注 :*** ** *は 各 々1 5 10% 有 意 1983 年 および 2000 年 の 推 計 値 は 清 家 山 田 (2004)から 引 用 老 齢 厚 生 年 金 の 受 給 資 格 が 就 業 抑 制 効 果 として 有 意 でなくなった 結 果 は 年 齢 階 級 を 60-64 歳 と 65-69 歳 に 分 け 55 歳 当 時 の 職 歴 変 数 を 細 かくコントロールしても 変 わらない( 第 1-5-2 表 ) 2000 年 では 職 歴 変 数 をコントロールしても 老 齢 厚 生 年 金 の 受 給 資 格 は 2 つ の 年 齢 階 級 で 有 意 に 就 業 を 抑 制 する 効 果 を 確 認 できたが 2009 年 ではいずれもそうした 効 果 10 とはいえ 健 康 要 因 の 就 業 抑 制 効 果 については 就 業 しないことの 言 い 訳 として 高 齢 者 が 挙 げることもあり 過 大 推 計 となっている 可 能 性 も 指 摘 されている( 大 石 2000, 濱 秋 野 口 2010) -25-

を 確 認 できない 依 然 として 定 年 退 職 経 験 の 2 つの 年 齢 階 級 における 就 業 抑 制 効 果 を 確 認 で きるのとは 対 照 的 である 第 1-5-2 表 : 職 歴 を 考 慮 した 就 業 確 率 市 場 賃 金 関 数 ( 男 性 60-64 歳 65-69 歳 ) 60-64 歳 65-69 歳 就 業 確 率 関 数 市 場 賃 金 関 数 就 業 確 率 関 数 市 場 賃 金 関 数 2000 年 2009 年 2000 年 2009 年 2000 年 2009 年 2000 年 2009 年 df/dx df/dx Coef. Coef. df/dx df/dx Coef. Coef. 説 明 変 数 年 齢 -0.022 *** -0.039 ** -0.022-0.006-0.029 *** -0.049 ** 0.004 0.028 健 康 不 良 -0.279 *** -0.097 * -0.061-0.057-0.342 *** -0.068-0.050-0.209 東 京 居 住 ダミー -0.020-0.001 0.148 *** 0.239 * -0.015 0.045 0.016 0.080 高 校 短 大 卒 -0.013-0.040 0.049 0.106-0.068 *** 0.085 0.181 *** 0.286 ** 大 卒 院 卒 -0.007-0.077 0.466 *** 0.233 * -0.067 0.067 0.447 *** 0.424 ** 勤 続 年 数 0.006 *** 0.010 *** 0.005 *** 0.006 定 年 退 職 経 験 -0.211 *** -0.173 *** -0.208 ** -0.102-0.123 *** -0.185 *** -0.096 ** -0.284 早 期 退 職 優 遇 措 置 経 験 -0.164 ** -0.298 ** -0.060-0.048-0.049-0.304 ** -0.160 0.600 55 歳 当 時 の 企 業 規 模 (1000 人 以 上 ) 0.051-0.139 ** 0.154 *** 0.220 0.036-0.024 0.128 0.112 55 歳 当 時 の 企 業 規 模 (100 人 未 満 ) 0.162 *** -0.046-0.127 ** -0.111 0.102 *** 0.013 0.053-0.160 55 歳 当 時 の 職 種 ( 管 理 ) 0.165 *** 0.066 0.453 *** 0.365 *** 0.059 0.015 0.366 *** 0.240 55 歳 当 時 の 職 種 ( 専 門 ) 0.136 *** 0.119 0.296 *** 0.178 0.223 *** 0.081 0.363 ** 0.390 ** 55 歳 当 時 の 職 種 ( 事 務 ) 0.092 ** 0.031 0.095 0.019 0.004 0.035 0.202 ** -0.013 55 歳 当 時 の 職 種 ( 販 売 ) 0.167 *** 0.200 ** -0.044-0.132 0.172 *** -0.086-0.085-0.503 ** 55 歳 当 時 の 職 種 (サービス) 0.117 ** 0.019-0.102 0.153 0.176 ** 0.225 * -0.163 0.019 56 歳 当 時 の 職 種 ( 保 安 ) 0.170 (dropped) -0.136 0.190 0.137 0.006-0.138-0.170 56 歳 当 時 の 職 種 ( 農 林 漁 業 ) 0.026 (dropped) -0.198 1.114 * 0.120 0.049-0.141 1.058 ** 55 歳 当 時 の 職 種 ( 運 輸 通 信 ) 0.131 *** 0.052 0.118 0.023 0.051 0.224 * 0.092 0.043 厚 生 年 金 の 受 給 資 格 -0.094 *** -0.023-0.101 *** -0.038 厚 生 年 金 以 外 の 非 勤 労 収 入 ( 万 円 ) -0.006 *** -0.003-0.001-0.007 ** 55 歳 当 時 雇 われていた 会 社 に 勤 務 0.172 ** 0.013 0.072 ** 0.231 定 年 (あるいは 定 年 前 ) 職 種 と 同 じ 0.168 *** 0.254 *** 0.265 *** 0.195 * 定 数 項 8.057 *** 7.025 ** 6.398 *** 4.514 ラムダ 変 数 0.343 ** 0.032-0.007 0.483 Log likelihood.. -217.153.. -225.797 Pseudo R 2.. 0.073.. 0.072 obs. P. 0.624 0.678 0.458 0.402 pred. P... 0.693.. 0.395 Wald test (χ 2 ) 780.300 *** 102.740 *** 592.190 *** 59.110 *** N 2213 381 1381 261 1816 361 831 145 注 :*** ** *は 各 々1 5 10% 有 意 2000 年 の 推 計 値 は 清 家 山 田 (2004)から 引 用 2. 若 干 の 議 論 以 上 のように 老 齢 厚 生 年 金 受 給 資 格 の 就 業 抑 制 効 果 は 2009 年 時 点 では 確 認 できなかった その 理 由 は 何 であろうか 2 つの 可 能 性 を 指 摘 できる 第 一 は 本 章 で 用 いたデータ(2009 年 )のサンプル 数 は 小 さく 2000 年 データの 7 分 の 1 程 度 の 規 模 である そのため 当 該 変 数 の 検 出 力 が 落 ちた 可 能 性 がある 第 二 は 老 齢 厚 生 年 金 制 度 改 正 による 影 響 すなわち 一 律 2 割 の 支 給 停 止 廃 止 および 特 別 支 給 の 老 齢 厚 生 年 金 の 定 額 部 分 引 き 上 げによる 影 響 である この 引 き 上 げにより 在 職 老 齢 年 金 の 支 給 停 止 調 整 は 定 額 部 分 支 給 前 の 年 齢 階 層 にあっては 報 酬 比 例 部 分 にしか 及 ばなく なった また 65 歳 以 上 についても 老 齢 基 礎 年 金 (と 経 過 的 加 算 部 分 )は 支 給 停 止 調 整 の 対 象 とはならない 結 局 支 給 停 止 調 整 が 定 額 部 分 まで 及 ぶのは 調 査 時 点 (2009 年 )では 63-26-

-64 歳 のみである 11 そのため 60 歳 台 前 半 をプールして 推 計 すると 受 給 資 格 の 就 業 抑 制 効 果 を 確 認 できない 可 能 性 がある 第 二 の 可 能 性 を 確 認 すべく 繰 り 上 げを 選 択 しない 限 り 特 別 支 給 の 老 齢 厚 生 年 金 の 定 額 部 分 が 受 給 できない 60-62 歳 と 受 給 可 能 な 63-64 歳 とに 細 分 化 し 就 業 確 率 関 数 を 推 計 し た 結 果 が 第 1-5-3 表 に 示 されている 老 齢 厚 生 年 金 の 受 給 資 格 に 注 目 すると 60-62 歳 で は 有 意 な 効 果 が 観 察 されない 一 方 63-64 歳 では 5% 有 意 水 準 ではあるが 就 業 確 率 を 引 き 下 げる 効 果 が 観 察 された その 引 き 下 げ 効 果 (26%)は 過 去 の 係 数 (1983 年 の 15% 2000 年 の 13%)と 比 較 して 大 きい 特 別 支 給 の 老 齢 厚 生 年 金 の 定 額 部 分 支 給 開 始 に 伴 う (60-62 歳 と 比 べた) 支 給 停 止 額 の 大 きさ 12 が 一 つの 理 由 として 考 えられる とはいえ 職 歴 変 数 を 入 れた 推 計 式 ( 第 1-5-3 表 の 右 2 列 )では いずれも 受 給 資 格 の 就 業 確 率 の 引 き 下 げ 効 果 は 有 意 ではなく こうした 解 釈 について 一 定 の 留 保 が 必 要 である 第 1-5-3 表 : 年 齢 階 級 を 細 分 化 した 就 業 確 率 関 数 ( 男 性 60-62 歳 63-64 歳 ) 職 歴 変 数 なし 職 歴 変 数 あり 60-62 歳 63-64 歳 60-62 歳 63-64 歳 df/dx df/dx df/dx df/dx 説 明 変 数 年 齢 -0.028-0.178 ** -0.043-0.203 ** 健 康 不 良 -0.120 * -0.070-0.127 * -0.120 東 京 居 住 ダミー -0.039 0.035-0.047 0.122 高 校 短 大 卒 0.033-0.091 0.034-0.157 大 卒 院 卒 0.027-0.163-0.004-0.256 定 年 退 職 経 験 -0.205 *** -0.007-0.255 *** 0.105 早 期 退 職 優 遇 措 置 経 験 -0.339 ** -0.215 55 歳 当 時 の 企 業 規 模 (1000 人 以 上 ) -0.146 * -0.122 55 歳 当 時 の 企 業 規 模 (100 人 未 満 ) -0.112 0.162 55 歳 当 時 の 職 種 ( 管 理 ) 0.091 0.029 55 歳 当 時 の 職 種 ( 専 門 ) 0.131 0.088 55 歳 当 時 の 職 種 ( 事 務 ) 0.036 0.081 55 歳 当 時 の 職 種 ( 販 売 ) 0.204 ** 0.236 55 歳 当 時 の 職 種 (サービス) 0.053 0.046 56 歳 当 時 の 職 種 ( 保 安 ) (dropped) (dropped) 56 歳 当 時 の 職 種 ( 農 林 漁 業 ) (dropped) (dropped) 55 歳 当 時 の 職 種 ( 運 輸 通 信 ) 0.131-0.188 厚 生 年 金 の 受 給 資 格 0.023-0.262 ** 0.054-0.215 厚 生 年 金 以 外 の 非 勤 労 収 入 ( 万 円 ) -0.002-0.010-0.002-0.010 Log likelihood -146.537-75.313-138.445-68.444 Pseudo R 2 0.054 0.078 0.096 0.148 obs. P. 0.707 0.640 0.707 0.640 pred. P. 0.719 0.655 0.719 0.655 N 256 125 256 125 注 :*** ** *は 各 々1 5 10% 有 意 11 60-62 歳 で 繰 上 げ 受 給 をしている 場 合 定 額 部 分 については 在 職 老 齢 年 金 制 度 による 支 給 停 止 調 整 の 対 象 と はならない 12 4 割 の 欠 損 値 が 発 生 していた 為 本 章 の 分 析 では 用 いなかったが 参 考 までに 本 来 年 金 額 から 支 給 停 止 さ れた 年 金 額 を 計 算 した その 結 果 60-62 歳 では 支 給 停 止 なし 支 給 停 止 月 額 5 万 円 未 満 支 給 停 止 月 額 5 万 円 以 上 は それぞれ 7 割 2 割 1 割 であった 一 方 63-64 歳 では 同 比 率 は 6 割 1 割 2 割 で あり 支 給 停 止 なし の 割 合 が 低 く かつ 支 給 停 止 月 額 5 万 円 以 上 の 割 合 が 高 かった すなわち 在 職 老 齢 年 金 制 度 と 特 別 支 給 の 老 齢 厚 生 年 金 の 定 額 部 分 の 支 給 開 始 年 齢 を 反 映 し 63-64 歳 の 方 が 支 給 停 止 額 が 大 きい -27-

3. 繰 上 げ 繰 下 げ 受 給 決 定 関 数 本 章 第 二 の 分 析 目 的 である 繰 り 上 げ 受 給 要 因 について 多 項 ロジット モデルの 分 析 結 果 ( 限 界 効 果 )を 示 したのが 第 1-5-4 表 である 先 に 述 べたように 各 変 数 は 定 額 部 分 支 給 開 始 年 齢 前 離 職 離 職 後 失 業 離 職 後 非 労 働 力 のいずれも 流 動 性 制 約 の 代 理 変 数 として 年 金 額 の 予 想 は 時 間 割 引 率 収 入 計 画 有 は 予 測 寿 命 ( 逆 選 択 要 因 )の 代 理 変 数 として 各 々 設 定 している ベース カテゴリーは 繰 上 げ 繰 下 げのどちらも 選 択 してい ない 者 である 第 1-5-4 表 : 繰 上 げ 繰 下 げ 受 給 決 定 関 数 ( 厚 生 年 金 受 給 資 格 有 男 性 60-69 歳 ) 繰 上 げ 繰 下 げ df/dx [Std. Err.] df/dx [Std. Err.] 説 明 変 数 年 齢 -0.001 [0.006 ] -0.004 [0.003 ] 定 年 退 職 経 験 -0.042 [0.045 ] 0.040 [0.018 ] ** 定 額 部 分 支 給 開 始 年 齢 前 離 職 -0.001 [0.042 ] -0.038 [0.021 ] * 離 職 後 失 業 0.098 [0.044 ] ** -0.032 [0.016 ] ** 離 職 後 非 労 働 力 0.015 [0.049 ] -0.044 [0.016 ] *** 年 金 額 予 想 0.001 [0.002 ] 0.000 [0.001 ] 収 入 計 画 有 -0.038 [0.044 ] 0.019 [0.026 ] Log likelihood -424.516 Pseudo R 2 0.024 obs. P. 0.196 0.049 N 614 注 :*** ** *は 各 々1 5 10% 有 意 時 間 割 引 率 や 予 測 寿 命 と 考 えられる 要 因 については 繰 上 げ 繰 下 げについて 有 意 な 効 果 を 認 められない 流 動 性 制 約 要 因 については 55 歳 以 降 において 定 年 あるいは 定 年 前 に 離 職 した 後 失 業 す ると 繰 上 げ 受 給 を 選 択 する 確 率 が 10% 高 くなる すなわち 55 歳 以 降 における 雇 用 と 年 金 の 接 続 の 失 敗 は 繰 り 上 げ 受 給 を 促 進 する 一 方 繰 下 げ 受 給 を 促 進 する 要 因 としては 定 年 経 験 が 挙 げられ 4%ほどその 確 率 を 上 昇 させる 定 額 部 分 支 給 開 始 年 齢 前 離 職 離 職 後 失 業 離 職 後 非 労 働 力 となった 場 合 には いずれも 3%から 4%ほど 繰 下 げ 受 給 確 率 を 下 げること が 分 かる 以 上 のように 特 別 老 齢 厚 生 年 金 の 定 額 部 分 の 支 給 開 始 年 齢 の 引 き 上 げに 伴 う 繰 上 げ 繰 下 げ 受 給 には 流 動 性 制 約 要 因 すなわち 雇 用 と 年 金 の 接 続 の 成 否 がかなり 大 きな 影 響 を 与 えている 可 能 性 が 示 唆 される ただし 繰 上 げ 受 給 者 の 所 得 が 低 くなければ 雇 用 と 年 金 の 接 続 の 失 敗 は 繰 り 上 げ 受 給 により 一 定 額 が 補 填 されていることになり 所 得 確 保 上 の 問 題 とはならないかも 知 れない この 点 について 確 認 するため 繰 上 げ 繰 下 げ 受 給 者 の 相 対 的 貧 困 率 ついて 確 認 しよう 第 1-5-5 図 は 老 齢 厚 生 年 金 受 給 資 格 者 の 定 額 部 分 の 繰 上 げ 繰 下 げ 受 給 有 無 別 に 相 対 的 貧 困 率 を 推 計 した 結 果 を 示 している ここで 相 対 的 貧 困 は 2009 年 7 月 現 在 の 等 価 所 得 が -28-

月 額 10.8 万 円 未 満 と 定 義 されている 等 価 所 得 は 世 帯 規 模 によって 働 く 規 模 の 経 済 性 を 調 整 するため 世 帯 収 入 ( 税 込 み)を 世 帯 員 数 の 0.5 乗 で 割 って 計 算 された 調 整 世 帯 収 入 である 経 済 協 力 開 発 機 構 (OECD)による 所 得 分 配 の 国 際 比 較 研 究 などでも 採 用 されている また 月 額 10.8 万 円 という 数 値 は 厚 生 労 働 省 (2009b)で 公 表 されている 2006 年 の 相 対 的 貧 困 線 (= 中 位 等 価 所 得 の 50%)を 2009 年 価 格 に 変 換 したものである 繰 上 げ 受 給 者 の 相 対 的 貧 困 率 は 明 らかに 繰 下 げ 受 給 者 あるいは 繰 上 げ 繰 下 げのどちら も 選 択 しなかった 人 々と 比 較 して 高 くなっている 繰 下 げ 受 給 者 の 相 対 的 貧 困 率 は 0% そ して 繰 上 げ 繰 下 げのどちらも 選 択 しなかった 人 々の 相 対 的 貧 困 率 は 4%である それに 対 し 繰 上 げ 受 給 者 の 相 対 的 貧 困 率 は 13%であり 繰 上 げ 繰 下 げのどちらも 選 択 しなかった 人 々に 比 べ 3 倍 程 度 高 くなっている ただし 厚 生 労 働 省 (2009)によれば 全 人 口 の 2006 年 の 相 対 的 貧 困 率 は 16%であるので それに 比 べれば 低 いことになる とはいえ 繰 上 げ 受 給 者 の 相 対 的 貧 困 リスクの 高 さは 繰 上 げ 受 給 制 度 が 失 業 等 雇 用 と 年 金 の 接 続 に 失 敗 した 人 々にとって 必 ずしも 所 得 確 保 の 万 能 薬 とはならない 可 能 性 を 示 唆 している 第 1-5-5 図 : 繰 上 げ 繰 下 げ 受 給 別 による 低 所 得 率 ( 厚 生 年 金 受 給 資 格 有 男 性 60-69 歳 ) 注 : 低 所 得 基 準 は 等 価 所 得 (2009 年 7 月 )が 月 額 10.8 万 円 未 満 である 第 6 節 結 びにかえて 本 章 では 独 立 行 政 法 人 労 働 政 策 研 究 研 修 機 構 が 2009 年 に 実 施 した 高 年 齢 者 にたいす る 調 査 の 個 票 データを 利 用 し 在 職 老 齢 年 金 制 度 の 就 業 抑 制 効 果 の 改 善 と 老 齢 厚 生 年 金 の 基 礎 年 金 繰 上 げ 受 給 要 因 について 分 析 した 本 章 の 分 析 の 結 果 得 られた 新 たな 知 見 は 3 つある 第 一 に 在 職 老 齢 年 金 制 度 による 就 業 抑 制 効 果 は(63 歳 と 64 歳 の 一 部 の 結 果 を 除 き) 確 認 できない もし 本 章 のこの 推 計 結 果 が 正 しいとすれば 在 職 老 齢 年 金 制 度 による 就 業 抑 制 効 果 は 特 別 支 給 の 老 齢 厚 生 年 金 の 定 -29-

額 部 分 の 支 給 年 齢 引 き 上 げが 完 了 する 2013 年 には 消 滅 する 可 能 性 がある 第 二 に 老 齢 厚 生 年 金 受 給 資 格 者 の 中 で 基 礎 年 金 繰 上 げ 制 度 を 利 用 しているのは 定 年 等 を 契 機 とする 離 職 後 に 失 業 を 経 験 した 人 々である すなわち 自 らの 意 思 に 反 して 勤 労 所 得 が 途 絶 してしまい 雇 用 と 年 金 の 接 続 がうまく 行 かなかった 人 々である 第 三 に 基 礎 年 金 繰 上 げ 制 度 を 利 用 した 人 々 の 相 対 的 貧 困 率 は 高 く 繰 上 げ 繰 下 げを 経 験 しなかった 人 々の 3 倍 程 である 基 礎 年 金 繰 上 げ 制 度 は 必 ずしも 所 得 確 保 の 万 能 薬 とはならない 可 能 性 が 示 唆 される 本 章 の 分 析 にはいくつかの 留 保 条 件 も 存 在 する 第 一 は 改 正 雇 用 保 険 法 の 影 響 (2003 年 改 革 )を 明 示 的 に 分 析 していないことである 先 行 研 究 では 本 来 年 金 額 などと 共 に 高 年 齢 雇 用 継 続 給 付 の 雇 用 補 助 金 効 果 を 分 析 しているが 今 回 利 用 したデータでは 本 来 年 金 額 を 計 算 するための 項 目 に 欠 損 値 が 多 いため そうした 分 析 を 断 念 せざるを 得 なかった 第 二 は 本 章 で 用 いたデータは 厚 生 労 働 省 高 年 齢 者 就 業 実 態 調 査 と 比 較 してサンプル 数 が 小 さか ったこと(7 分 の 1 程 度 )である このため 推 計 結 果 の 安 定 性 についても 議 論 の 余 地 が 残 されている 参 考 文 献 安 部 由 起 子 (1998) 1980~1990 年 代 の 男 性 高 齢 者 の 労 働 供 給 と 在 職 老 齢 年 金 制 度 日 本 経 済 研 究,No.36,pp.50-82. Amemiya, T. and K. Shimono (1989) An Application of Nested Logit Models to the Labor Supply of the Elderly, Economic Studies Quarterly, Vol.40, No.1, pp.14-22. 石 井 加 代 子 黒 澤 昌 子 (2009) 年 金 制 度 改 正 が 男 性 高 齢 者 の 労 働 供 給 行 動 に 与 える 影 響 の 分 析 日 本 労 働 研 究 雑 誌,No.589, pp.43-64. 岩 本 康 志 (2000) 在 職 老 齢 年 金 と 高 齢 者 の 就 業 行 動 季 刊 社 会 保 障 研 究,Vol.35,No.4, pp.364-376. 小 川 浩 (1998a) 年 金 雇 用 保 険 改 革 と 男 性 高 齢 者 の 就 業 行 動 の 変 化 日 本 労 働 研 究 雑 誌, No.461,pp.52-64. (1998b) 年 金 が 高 齢 者 の 就 業 行 動 に 与 える 影 響 について 経 済 研 究 ( 一 橋 大 学 経 済 研 究 所 ), 第 49 巻 第 3 号,pp.245-258. 大 石 亜 希 子 (2000) 高 齢 者 の 就 業 決 定 における 健 康 要 因 の 影 響 日 本 労 働 研 究 雑 誌, No.481, pp.51-62. 小 塩 隆 士 (2000) 高 齢 者 の 引 退 行 動 と 社 会 保 障 資 産 季 刊 社 会 保 障 研 究, Vol.35,No.4,pp.405-419. 大 竹 文 雄 山 鹿 久 木 (2003) 在 職 老 齢 年 金 制 度 と 男 性 高 齢 者 の 労 働 供 給 国 立 社 会 保 障 人 口 問 題 研 究 所 編 選 択 の 時 代 の 社 会 保 障 所 収 (pp.33-50), 東 京 大 学 出 版 会. 金 子 能 宏 (1997) 企 業 の 高 年 齢 者 雇 用 と 雇 用 政 策 の 効 果 年 金 制 度 の 改 革 が 就 業 引 退 行 動 に 及 ぼす 影 響 に 関 する 研 究 I( 日 本 労 働 研 究 機 構 報 告 第 98 号 ) 所 収 (pp.173-212), -30-

日 本 労 働 研 究 機 構. 厚 生 省 (1998a) 年 金 白 書 社 会 保 研 究 所. (1998b) 国 民 年 金 被 保 険 者 実 態 調 査 ( 平 成 8 年 ). 厚 生 労 働 省 (2009a) 社 会 保 険 事 業 状 況 ( 平 成 21 年 7 月 現 在 ) ( http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/pdf/nenkinhoken-2107.pdf, アクセ ス 日 2010 年 9 月 30 日 ). (2009b) 子 どもがいる 現 役 世 帯 の 世 帯 員 の 相 対 的 貧 困 率 の 公 表 について (http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000002icn.html, アクセス 日 2010 年 9 月 30 日 ) 駒 村 康 平 (2007) 社 会 保 障 制 度 のパラメータに 関 する 分 析 フィナンシャル レビュー, 第 87 号,pp.119-139. (2009) 公 的 年 金 の 繰 り 上 げ 受 給 繰 り 下 げ 受 給 で 逆 選 択 は 発 生 しているのか 清 家 篤 駒 村 康 平 山 田 篤 裕 編 労 働 経 済 学 の 新 展 開 所 収 (pp.319-352), 慶 應 義 塾 大 学 出 版 会. 菅 桂 太 清 家 篤 (2003) 厚 生 年 金 給 付 の 基 礎 年 金 相 当 部 分 が 労 働 供 給 に 与 える 影 響 国 立 社 会 保 障 人 口 問 題 研 究 所 編 選 択 の 時 代 の 社 会 保 障 所 収 (pp.33-50), 東 京 大 学 出 版 会. 清 家 篤 (1993) 高 齢 化 社 会 の 労 働 市 場 - 就 業 行 動 と 公 的 年 金 東 洋 経 済 新 報 社. 山 田 篤 裕 (1996) Pension Rich の 条 件 日 本 経 済 研 究,No.33,pp.38-61. (2004) 高 齢 者 就 業 の 経 済 学 日 本 経 済 新 聞 社. (2009) 高 齢 者 の 就 業 行 動 の 長 期 的 変 化 就 業 構 造 基 本 調 査 (1982-2002 年 ) に 基 づく 実 証 分 析, 清 家 篤 駒 村 康 平 山 田 篤 裕 編 労 働 経 済 学 の 新 展 開 所 収 (pp.9-56), 慶 應 義 塾 大 学 出 版 会. 濱 秋 純 哉 野 口 晴 子 (2010) 中 高 年 者 の 健 康 状 態 と 労 働 参 加 日 本 労 働 研 究 雑 誌,No.601, pp.5-24. 浜 田 浩 児 (1999) 在 職 老 齢 年 金 制 度 の 所 得 再 分 配 効 果 季 刊 社 会 保 障 研 究,Vol.35,No.2, pp.208-220. (2010) 第 4 章 在 職 老 齢 年 金 高 年 齢 雇 用 継 続 給 付 が 企 業 の 継 続 雇 用 者 賃 金 決 定 に 及 ぼす 影 響 継 続 雇 用 等 をめぐる 高 齢 者 就 業 の 現 状 と 課 題 所 収 (pp.120-130), 労 働 政 策 研 究 研 修 機 構. 樋 口 美 雄 山 本 勲 (2002) わが 国 男 性 高 齢 者 の 労 働 供 給 行 動 メカニズム 年 金 賃 金 制 度 の 効 果 分 析 と 高 齢 者 就 業 の 将 来 像 金 融 研 究,2002 年 10 月 号,pp.31-78. 三 谷 直 紀 (2001) 高 齢 者 雇 用 政 策 と 労 働 需 要 猪 木 武 徳 大 竹 文 雄 編 雇 用 政 策 の 経 済 分 析 所 収 (pp.239-250), 東 京 大 学 出 版 会. 山 田 篤 裕 (2000) 引 退 過 程 における 賃 金 低 下 と 所 得 保 障 季 刊 社 会 保 障 研 究,Vol.35,No.4, pp.377-394. -31-

第 2 章 年 金 支 給 開 始 年 齢 引 上 げの 下 での 生 計 と 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 の 機 能 第 1 節 はじめに 厚 生 年 金 の 支 給 開 始 年 齢 は 2013 年 度 には 定 額 部 分 について 65 歳 に 引 き 上 げられ 報 酬 比 例 部 分 についても 引 上 げが 始 まり 60 代 前 半 において 段 階 的 に 年 金 が 全 く 支 給 されなく なる こうしたことも 踏 まえ 2012 年 度 末 までに すべての 企 業 において 確 実 に 65 歳 まで の 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 が 講 じられるようにすることとされている そこで 本 稿 では 60 代 前 半 を 中 心 に 高 齢 者 の 生 計 費 の 賄 い 方 について 65 歳 年 金 支 給 開 始 となった 場 合 の 勤 労 収 入 の 必 要 性 や 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 ( 定 年 の 引 上 げ 継 続 雇 用 ( 再 雇 用 勤 務 延 長 )または 定 年 の 廃 止 )の 機 能 等 の 分 析 を 行 う データは 独 立 行 政 法 人 労 働 政 策 研 究 研 修 機 構 が 2009 年 8 月 に 実 施 した 高 齢 者 の 雇 用 就 業 の 実 態 に 関 する 調 査 の 個 票 により 60 代 前 半 の 高 齢 者 の 生 計 費 収 入 ( 勤 労 収 入 年 金 他 の 非 勤 労 収 入 等 ) 資 産 ( 純 貯 蓄 = 貯 蓄 - 借 入 ) 等 を 求 める 以 下 60 代 前 半 の 高 齢 者 に 関 し 第 2 節 で データ 変 数 等 の 分 析 方 法 について 述 べ 第 3 節 で 高 齢 者 の 生 計 費 の 賄 い 方 や 年 金 が 65 歳 支 給 開 始 とした 場 合 の 収 入 不 足 等 を 推 計 し クロス 集 計 や 分 布 尺 度 に 基 づき 就 業 勤 労 収 入 の 必 要 性 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 の 機 能 等 の 分 析 を 行 う 最 後 に 第 4 節 で 本 稿 の 結 論 を 述 べる 第 2 節 分 析 方 法 60 代 前 半 の 高 齢 者 について 各 自 の 収 入 ( 勤 労 収 入 年 金 他 の 非 勤 労 収 入 等 )や 資 産 ( 純 貯 蓄 = 貯 蓄 - 借 入 )を 生 計 費 と 比 較 し 高 齢 者 の 生 計 費 の 賄 い 方 や 仮 に 厚 生 年 金 が 65 歳 支 給 開 始 とした 場 合 の 収 入 不 足 等 を 推 計 する これらについて 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 の 該 当 状 況 定 年 の 状 況 等 とのクロス 集 計 や 分 布 尺 度 に 基 づき 厚 生 年 金 が 65 歳 支 給 開 始 となった 場 合 の 就 業 勤 労 収 入 の 必 要 性 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 の 機 能 等 の 分 析 を 行 う 1.データ データは 労 働 政 策 研 究 研 修 機 構 高 齢 者 の 雇 用 就 業 の 実 態 に 関 する 調 査 ( 以 下 アンケート 調 査 という)の 個 票 による 同 調 査 は 全 国 の 55~69 歳 の 男 女 5000 人 を 住 民 基 本 台 帳 に 基 づく 層 化 二 段 階 抽 出 法 により 抽 出 し 2009 年 8 月 20 日 ~9 月 15 日 に 訪 問 留 置 き 法 で 実 施 した 有 効 回 答 数 は 3602 回 収 率 は 72.0%である 分 析 対 象 は 60 代 前 半 の 高 齢 者 とし また 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 との 関 係 を 見 るため 55 歳 当 時 民 間 企 業 の 正 社 員 だった 者 に 絞 った このうち 本 稿 の 分 析 に 必 要 な 生 計 費 勤 労 収 入 年 金 他 の 非 勤 労 収 入 資 産 ( 純 貯 蓄 = 貯 蓄 - 借 入 ) 就 業 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 の -32-

状 況 等 のデータが 揃 っているのは 265 サンプルである 2.データ 項 目 本 稿 の 分 析 に 必 要 なデータ 項 目 については まず 生 計 費 は 夫 婦 ( 配 偶 者 がいる 場 合 ) または 本 人 のみの 生 活 費 (アンケート 調 査 問 F9(5))による 勤 労 収 入 は 賞 与 を 除 いた 賃 金 (アンケート 調 査 問 6(3)1)および 年 間 賞 与 見 込 み(アンケート 調 査 問 6(4))による 非 勤 労 収 入 は 仕 事 以 外 からの 収 入 (アンケート 調 査 問 11)により このうち 年 金 は 年 金 額 (ア ンケート 調 査 問 29 30)による 資 産 ( 純 貯 蓄 )は 貯 蓄 (アンケート 調 査 問 F11) 借 入 金 (アンケート 調 査 問 F12)による (1) 生 計 費 生 計 費 ( 月 額 )は 本 人 および 配 偶 者 ( 配 偶 者 がいる 場 合 )の 生 計 費 (アンケート 調 査 問 F9(5))による ただし これは 望 ましい 生 活 費 を 尋 ねているため 回 答 が 高 めになる 可 能 性 がある このため この 回 答 に 比 べて 実 際 の 生 計 費 (アンケート 調 査 問 F9(4))を 世 帯 人 員 の 比 率 (2 人 ( 夫 婦 のみ)または 1 人 ( 本 人 のみ) 実 際 の 世 帯 人 員 )で 換 算 したものが 下 回 る 場 合 は その 額 を 用 いた 1 このため 本 稿 で 用 いる 生 計 費 の 額 は アンケート 調 査 の 回 答 のうち 必 要 最 低 限 の 性 格 がより 強 いものになっている 2 (2) 収 入 1 勤 労 収 入 勤 労 収 入 ( 月 額 )は 賞 与 を 除 いた 収 入 (アンケート 調 査 問 6(3)1)に 年 間 賞 与 見 込 み 額 (アンケート 調 査 問 6(4))の 月 額 換 算 (12 分 の 1)を 加 えて 求 める また 配 偶 者 の 勤 労 収 入 は 仕 事 からの 収 入 (アンケート 調 査 問 F5(4)2)による 2 年 金 年 金 ( 月 額 )は 厚 生 年 金 の 受 給 額 (アンケート 調 査 問 29a)による さらに この 実 際 の 受 給 額 だけでなく 就 業 に 伴 う 減 額 前 の 年 金 月 額 (アンケート 調 査 問 30(1) 12)も 得 られる 3 1 これは 世 帯 の 生 計 費 のうち 本 人 および 配 偶 者 ( 配 偶 者 がいる 場 合 )が 分 担 して 賄 う 分 という 考 え 方 に 基 づ いている ただし 生 計 費 自 体 の 換 算 という 考 え 方 で 見 ると 注 2 のように 過 少 な 額 になると 考 えられる 2 家 計 支 出 は 単 なる 世 帯 員 の 個 人 的 支 出 の 和 ではなく 世 帯 としての 支 出 があるため 家 計 内 公 共 財 の 存 在 等 に より 消 費 に 関 する 規 模 の 経 済 性 があると 考 えられる たとえば 世 帯 員 共 用 のテレビ 冷 蔵 庫 等 については 混 雑 が 生 じるまでは 世 帯 人 員 の 増 加 とともに 利 用 効 率 が 高 まる したがって 世 帯 の 生 計 費 は 世 帯 人 員 の 減 少 ほどは 低 下 しないため 本 稿 のように 世 帯 人 員 の 比 率 で 換 算 すると 生 計 費 が 過 少 になると 考 えられる この 点 でも 本 稿 で 用 いる 生 計 費 の 額 は 必 要 最 低 限 の 性 格 がより 強 いものになっている 3 分 析 対 象 を 1.のように 55 歳 当 時 民 間 企 業 の 正 社 員 だった 者 に 絞 ったため 厚 生 年 金 以 外 の 年 金 額 は 少 ないこ と 厚 生 年 金 についてのみ 就 業 に 伴 う 減 額 前 の 年 金 額 がアンケート 調 査 から 得 られることから 年 金 として は 厚 生 年 金 のみを 取 り 上 げ 他 の 年 金 は 他 の 非 勤 労 収 入 に 含 めた -33-

3 非 勤 労 収 入 他 の 非 勤 労 収 入 非 勤 労 収 入 ( 月 額 )は 仕 事 以 外 からの 収 入 (アンケート 調 査 問 11)による ただし そ の 一 部 である 年 金 等 が 上 回 る 場 合 は 内 訳 の 方 が 正 確 と 考 え その 額 を 用 いた このため 本 稿 で 用 いる 非 勤 労 収 入 の 額 は 高 めに 見 ている 面 がある 他 の 非 勤 労 収 入 は 非 勤 労 収 入 から 上 記 の2 年 金 を 除 いて 求 める 4 世 帯 収 入 世 帯 収 入 ( 月 額 )は 世 帯 の 収 入 (アンケート 調 査 F9(3))による ただし その 一 部 であ る 上 記 の1 勤 労 収 入 と3 非 勤 労 収 入 の 合 計 が 上 回 る 場 合 は 内 訳 の 方 が 正 確 と 考 え その 合 計 額 を 用 いた このため 本 稿 で 用 いる 世 帯 収 入 の 額 は 高 めに 見 ている 面 がある また (1)のように 生 計 費 ( 月 額 )が 夫 婦 のみ( 配 偶 者 がいる 場 合 )または 本 人 のみ( 単 身 の 場 合 )のものであるため 本 稿 の 分 析 対 象 は 世 帯 収 入 が 本 人 と 配 偶 者 ( 配 偶 者 がいる 場 合 )の 収 入 のみの 世 帯 に 限 っている (3) 純 貯 蓄 純 貯 蓄 は 世 帯 の 貯 蓄 (アンケート 調 査 問 F11)から 借 入 金 (アンケート 調 査 問 F12)を 控 除 して 求 める ただし 借 入 金 のうち 住 宅 ローン(アンケート 調 査 問 F12(2))は 除 いた これは 住 宅 ローンには 対 応 する 住 宅 資 産 があることによるが 本 稿 で 用 いる 借 入 金 の 額 は 低 めに したがって 貯 蓄 から 借 入 金 を 差 し 引 いた 純 貯 蓄 は 高 めに 見 ている 面 がある 第 3 節 分 析 結 果 1. 生 計 費 の 賄 い 方 と 年 金 第 2-3-1 表 は 60 代 前 半 の 高 齢 者 について 生 計 費 の 賄 い 方 を 見 たものである 平 均 では 収 入 が 生 計 費 をかなり 上 回 っており 厚 生 年 金 を 除 いても 収 入 が 生 計 費 より 大 きく 資 産 面 でも 貯 蓄 が 借 入 金 を 上 回 り 純 貯 蓄 は 正 である しかし この 中 には 厚 生 年 金 がなければ 収 入 が 生 計 費 を 下 回 り かつ 純 貯 蓄 を 取 り 崩 しても 賄 えない 者 が 15% 程 度 おり その 収 入 不 足 は 平 均 12 万 円 ( 月 額 )となっている 第 2 節 2.のように 生 計 費 の 額 は 必 要 最 低 限 の 性 格 が 強 い 一 方 収 入 と 純 貯 蓄 は 高 めに 見 ている 面 がある このため 少 なくともこの 15% 程 度 の 者 については 年 金 が 65 歳 支 給 開 始 とな った 場 合 の 対 応 が 必 要 と 考 えられる このように 厚 生 年 金 がなければ 生 計 費 を 賄 えない 者 をその 他 の 者 ( 厚 生 年 金 を 除 いても 生 計 費 を 収 入 や 純 貯 蓄 取 崩 しで 賄 える 者 )と 比 べると 生 計 費 にあまり 差 はない 一 方 収 入 が 21 万 円 減 ( 月 額 )と 大 幅 に 少 ない 収 入 の 内 訳 を 見 ると 厚 生 年 金 は 月 額 で 7 万 円 多 いが それ 以 上 に 勤 労 収 入 が 16 万 円 少 なく これが 厚 生 年 金 がなければ 生 計 費 を 賄 えない 主 な 要 -34-

因 と 考 えられる 第 2-3-1 表 生 計 費 の 賄 い 方 と 年 金 第 表 計 年 厚 生 年 金 無 高 年 齢 者 雇 用 確 保 定 年 引 上 廃 止 で 生 計 費 を その 他 の 者 全 体 措 置 の 状 況 の 状 況 賄 えない 者 受 けた 者 その 他 の 者 該 当 者 非 該 当 者 構 成 比 (%) 15% 85% 100% 42% 58% 18% 82% 65 歳 時 の 純 貯 蓄 ( 万 円 ) 84.8 1980.5 1694.3 2037.0 1451.1 2861.4 1442.7 同 厚 生 年 金 のない 場 合 ( 万 円 ) -667.8 1674.5 1321.0 1773.0 1000.2 2764.6 1009.7 収 入 生 計 費 差 ( 万 円, 月 額 ) 0.3 22.5 19.1 26.9 13.6 37.8 15.1 同 厚 生 年 金 のない 場 合 ( 万 円, 月 額 ) -12.2 17.4 12.9 22.5 6.1 36.2 7.9 生 計 費 ( 万 円, 月 額 ) 20.2 19.0 19.2 20.8 18.0 23.2 18.3 収 入 計 ( 万 円, 月 額 ) 20.6 41.5 38.3 47.7 31.6 61.0 33.4 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 2.8 18.9 16.4 26.9 9.0 38.4 11.7 厚 生 年 金 ( 万 円, 月 額 ) 12.5 5.1 6.2 4.4 7.5 1.6 7.2 厚 生 年 金 ( 就 業 に 伴 う 減 額 前 )( 万 円, 月 額 ) 13.0 6.2 7.3 5.9 8.2 2.1 8.4 他 の 非 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 2.6 6.8 6.2 5.2 6.9 6.0 6.2 配 偶 者 の 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 1.4 6.7 5.9 8.4 4.1 12.0 4.6 配 偶 者 の 非 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 1.3 4.0 3.6 2.9 4.1 3.1 3.7 就 業 率 (%) 32% 75% 68% 90% 53% 100% 61% パート アルバイト 比 率 (%) 46% 20% 22% 17% 27% 11% 25% 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 を 受 けた 率 (%) 27% 44% 42% 100% 0% 100% 29% 定 年 引 上 廃 止 該 当 率 (%) 3% 20% 18% 43% 0% 100% 0% 継 続 雇 用 希 望 非 実 現 率 (%) 20% 9% 11% 0% 19% 0% 13% 2. 就 業 と 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 (1) 就 業 率 厚 生 年 金 がなければ 生 計 費 を 賄 えない 者 の 勤 労 収 入 が 賄 える 者 より 大 幅 に 少 ない 要 因 とし ては まず 就 業 率 の 低 さがあげられる 第 2-3-1 表 のように その 就 業 率 は 32%であり 賄 える 者 の 就 業 率 75%に 比 べて 大 幅 に 低 い この 点 については 第 2-3-1 表 のように 生 計 費 を 賄 える 者 より 厚 生 年 金 が 多 いことが 就 業 意 欲 に 抑 制 的 な 影 響 を 及 ぼしている 面 も 考 えられ 年 金 が 65 歳 支 給 開 始 となった 場 合 に は 勤 労 収 入 を 増 やすという 割 合 25%は 厚 生 年 金 がなくとも 生 計 費 を 賄 える 者 の 18%より 多 い 4 しかし その 差 は 就 業 率 の 差 に 比 べて 小 さく 就 業 率 の 低 さは 就 業 意 欲 のような 個 人 の 選 択 だけではなく 個 人 で 左 右 できない 雇 用 環 境 等 の 外 的 要 因 から 受 ける 影 響 も 大 きいと 考 えられる これに 関 し 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 を 受 けた 割 合 を 見 ると 第 2-3-1 表 のように 厚 生 年 金 がなければ 生 計 費 を 賄 えない 者 では 27%であり 賄 える 者 の 44%より 小 さい 逆 に 継 続 雇 用 ( 再 雇 用 勤 務 延 長 )を 希 望 したのに 雇 用 されなかった または 勤 務 先 に 継 続 雇 用 の 制 度 がなかったという 継 続 雇 用 希 望 非 実 現 率 は 賄 えない 者 では 20%であり 賄 える 者 の 9% 4 厚 生 年 金 がなければ 生 計 費 を 賄 えない 者 の 年 金 額 が 賄 える 者 より 多 いことについては 就 業 すると 賃 金 等 に 応 じて 年 金 が 減 額 ( 支 給 停 止 )される 在 職 老 齢 年 金 の 仕 組 みのため 賃 金 の 多 い 後 者 の 年 金 額 が 少 なくなってい る 面 もある しかし 表 1 のように こうした 減 額 前 の 厚 生 年 金 で 見 ても 生 計 費 を 賄 えない 者 の 年 金 額 は 賄 える 者 より 多 い -35-

より 大 きい 厚 生 年 金 がなければ 生 計 費 を 賄 えない 者 の 就 業 率 の 低 さについては こうした 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 の 実 施 状 況 の 差 が 影 響 していることが 考 えられる 第 2-3-1 表 のよ うに 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 を 受 けた 者 の 就 業 率 は 90%であり そうでない 者 5 の 就 業 率 53% に 比 べて 大 幅 に 高 く これを 反 映 して 勤 労 収 入 が 18 万 円 多 いことから 収 入 が 大 幅 に 高 くな っている (2)パート アルバイト 比 率 厚 生 年 金 がなければ 生 計 費 を 賄 えない 者 は (1)のように 就 業 率 が 低 いのに 加 え 就 業 し ている 者 でもパート アルバイトの 比 率 が 高 い 就 業 者 に 占 めるパート アルバイトの 比 率 は 46%であり 賄 える 者 の 20%に 比 べて 大 幅 に 高 い この 点 も 厚 生 年 金 がなければ 生 計 費 を 賄 えない 者 の 勤 労 収 入 が 賄 える 者 より 少 ない 要 因 と 考 えられる パート アルバイトの 者 の 平 均 勤 労 収 入 は 約 14 万 円 で そうでない 者 の 約 27 万 円 に 比 べて 大 幅 に 小 さく その 分 収 入 が 低 くなっている この 点 については (1)と 同 様 に 生 計 費 を 賄 えない 者 の 厚 生 年 金 が 多 いことが 就 業 意 欲 に 抑 制 的 な 影 響 を 及 ぼしている 面 も 考 えられるが 就 業 意 欲 のような 個 人 の 選 択 で 左 右 でき ない 雇 用 環 境 等 の 外 的 要 因 から 受 ける 影 響 も 大 きいと 考 えられる これに 関 し 定 年 の 引 上 げまたは 定 年 の 廃 止 の 該 当 割 合 を 見 ると 第 2-3-1 表 のように 厚 生 年 金 がなければ 生 計 費 を 賄 えない 者 ではわずか 3%であり 賄 える 者 の 20%よりはるか に 小 さい 厚 生 年 金 がなければ 生 計 費 を 賄 えない 者 のパート アルバイト 比 率 の 高 さについ ては こうした 定 年 の 引 上 げ 等 の 実 施 状 況 の 差 が 影 響 していることが 考 えられる 第 2-3- 1 表 のように 定 年 の 引 上 げ 等 のない 者 のパート アルバイト 比 率 は 25%であり 定 年 の 引 上 げ 等 のある 者 のパート アルバイト 比 率 11%に 比 べて 高 い 3. 属 性 別 に 見 た 生 計 費 の 賄 い 方 60 代 前 半 高 齢 者 の 生 計 費 の 賄 い 方 を 年 齢 別 性 別 学 歴 別 に 見 ると 以 下 のようになって いる (1) 年 齢 別 第 2-3-2 表 は 60 代 前 半 の 高 齢 者 について 生 計 費 の 賄 い 方 を 年 齢 別 に 見 たものである 各 年 齢 とも 厚 生 年 金 を 除 いても 収 入 が 生 計 費 より 多 いが その 差 は 年 齢 が 高 まるにつれて 小 さくなり 純 貯 蓄 も 年 齢 が 高 い 方 が 小 さくなる 傾 向 にある これを 反 映 して 厚 生 年 金 が なければ 収 入 が 生 計 費 を 下 回 り かつ 純 貯 蓄 を 取 り 崩 しても 賄 えない 者 の 割 合 は 60 歳 12% 5 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 を 受 けた 者 以 外 のうち 継 続 雇 用 希 望 非 実 現 の 割 合 は 表 1 のように 19%であり 残 る 8 割 程 度 は 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 を 希 望 しなかった 者 となる しかし その 半 分 程 度 は 賃 金 身 分 就 業 時 間 等 への 不 満 があり もともとの 引 退 希 望 というわけではない -36-

61 歳 11% 62 歳 13% 63 歳 18% 64 歳 26%と 年 齢 が 高 い 方 が 大 きくなる 傾 向 にある 第 2-3-2 表 年 齢 別 に 見 た 生 計 費 の 賄 い 方 第 表 年 齢 見 計 費 賄 年 齢 別 全 体 60 歳 61 歳 62 歳 63 歳 64 歳 構 成 比 (%) 19% 25% 23% 17% 16% 100% 65 歳 時 の 純 貯 蓄 ( 万 円 ) 2018.2 1908.2 1584.2 1314.9 1526.4 1694.3 同 厚 生 年 金 のない 場 合 ( 万 円 ) 1872.1 1638.8 1260.5 747.6 851.8 1321.0 収 入 生 計 費 差 ( 万 円, 月 額 ) 22.3 19.9 19.9 16.9 15.5 19.1 同 厚 生 年 金 のない 場 合 ( 万 円, 月 額 ) 19.9 15.4 14.5 7.4 4.3 12.9 生 計 費 ( 万 円, 月 額 ) 19.4 21.0 17.4 18.9 18.9 19.2 収 入 計 ( 万 円, 月 額 ) 41.7 40.9 37.2 35.8 34.4 38.3 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 24.6 18.2 16.8 10.1 9.8 16.4 厚 生 年 金 ( 万 円, 月 額 ) 2.4 4.5 5.4 9.5 11.2 6.2 厚 生 年 金 ( 就 業 に 伴 う 減 額 前 )( 万 円, 月 額 ) 3.2 5.6 5.9 11.6 12.1 7.3 他 の 非 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 4.6 7.0 5.8 6.8 6.8 6.2 配 偶 者 の 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 5.8 8.8 6.2 3.8 3.2 5.9 配 偶 者 の 非 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 4.2 2.5 3.0 5.6 3.3 3.6 就 業 率 (%) 76% 73% 69% 59% 60% 68% パート アルバイト 比 率 (%) 13% 12% 29% 24% 38% 22% 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 を 受 けた 率 (%) 55% 47% 44% 30% 26% 42% 定 年 引 上 廃 止 該 当 率 (%) 35% 20% 18% 9% 2% 18% 継 続 雇 用 希 望 非 実 現 率 (%) 4% 8% 13% 18% 14% 11% こうした 点 については 年 齢 が 高 まるにつれて 勤 労 収 入 が 少 なくなるのを 反 映 して 収 入 が 小 さくなっていくことが 影 響 していると 考 えられる その 要 因 としては まず 就 業 率 が 年 齢 が 高 まるにつれて 低 下 していることがあげられる 就 業 率 の 低 下 については 第 2-3-2 表 のように 厚 生 年 金 が 年 齢 とともに 高 まっていること から 6 その 就 業 意 欲 抑 制 効 果 による 面 も 考 えられる しかし 年 金 が 65 歳 支 給 開 始 となっ た 場 合 には 勤 労 収 入 を 増 やすという 割 合 は 60 歳 18% 61 歳 11% 62 歳 25% 63 歳 34% 64 歳 7%であり 年 齢 とともに 高 まってはいない このため 年 齢 に 伴 う 就 業 率 の 低 下 には 就 業 意 欲 のような 個 人 の 選 択 で 左 右 できない 雇 用 環 境 等 の 外 的 要 因 の 影 響 が 考 えられる これに 関 し 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 を 受 けた 割 合 を 見 ると 第 2-3-2 表 のように 年 齢 が 高 まるにつれて 低 下 している 逆 に 継 続 雇 用 ( 再 雇 用 勤 務 延 長 )を 希 望 したのに 雇 用 さ れなかった または 勤 務 先 に 継 続 雇 用 の 制 度 がなかったという 継 続 雇 用 希 望 非 実 現 率 は 年 齢 が 高 い 方 が 大 きくなる 傾 向 がある 年 齢 に 伴 う 就 業 率 の 低 下 については こうした 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 の 実 施 状 況 の 差 が 影 響 していることが 考 えられる さらに 就 業 している 者 でも 年 齢 が 高 い 方 がパート アルバイトの 比 率 が 高 い 傾 向 があ る この 点 も 年 齢 が 高 まるにつれて 勤 労 収 入 が 少 なくなっていく 要 因 と 考 えられる これ に 関 し 定 年 の 引 上 げまたは 定 年 の 廃 止 の 該 当 割 合 を 見 ると 第 2-3-2 表 のように 年 齢 6 調 査 時 点 では 63 歳 以 上 の 者 は 厚 生 年 金 の 報 酬 比 例 部 分 だけでなく 定 額 部 分 も 受 給 できることを 反 映 して 特 に 63 歳 以 降 で 年 金 額 が 大 きくなっている -37-

が 高 まるにつれて 低 下 している 年 齢 が 高 い 方 がパート アルバイトの 比 率 が 高 い 傾 向 があ ることについては こうした 定 年 の 引 上 げ 等 の 実 施 状 況 の 差 が 影 響 していることが 考 えられ る しかし 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 の 経 過 措 置 ( 実 施 義 務 化 年 齢 の 段 階 的 引 上 げ) 等 を 考 える と 以 上 のような 実 施 状 況 の 差 は 年 齢 による 差 というより 世 代 (コホート)による 差 と みなせるであろう 今 後 65 歳 までの 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 を 普 及 していくことにより 年 齢 に 伴 う 勤 労 収 入 の 低 下 は 小 さくなっていくと 期 待 される その 際 定 年 の 引 上 げまたは 定 年 の 廃 止 という 方 法 が 増 えれば さらに 効 果 的 であろう (2) 性 別 第 2-3-3 表 は 60 代 前 半 の 高 齢 者 について 生 計 費 の 賄 い 方 を 性 別 に 見 たものである た だし 第 2 節 1. のように 55 歳 当 時 民 間 企 業 の 正 社 員 だった 者 について 分 析 しているため 特 に 女 性 は 対 象 が 限 られていることに 注 意 する 必 要 がある 男 女 とも 厚 生 年 金 を 除 いても 収 入 が 生 計 費 より 多 いが その 差 は 女 性 の 方 がやや 大 きく 純 貯 蓄 も 女 性 の 方 が 大 きい これを 反 映 して 厚 生 年 金 がなければ 収 入 が 生 計 費 を 下 回 り かつ 純 貯 蓄 を 取 り 崩 しても 賄 えない 者 の 割 合 は 女 性 で 13%と 男 性 の 16%よりやや 小 さ い 第 2-3-3 表 性 別 に 見 た 生 計 費 の 賄 い 方 第 表 性 計 費 性 別 全 体 男 性 女 性 構 成 比 (%) 77% 23% 100% 65 歳 時 の 純 貯 蓄 ( 万 円 ) 1522.9 2279.9 1694.3 同 厚 生 年 金 のない 場 合 ( 万 円 ) 1119.5 2009.3 1321.0 収 入 生 計 費 差 ( 万 円, 月 額 ) 18.6 21.0 19.1 同 厚 生 年 金 のない 場 合 ( 万 円, 月 額 ) 11.8 16.5 12.9 生 計 費 ( 万 円, 月 額 ) 18.5 21.4 19.2 収 入 計 ( 万 円, 月 額 ) 37.1 42.4 38.3 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 17.7 12.1 16.4 厚 生 年 金 ( 万 円, 月 額 ) 6.7 4.5 6.2 厚 生 年 金 ( 就 業 に 伴 う 減 額 前 )( 万 円, 月 額 ) 7.9 5.0 7.3 他 の 非 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 5.8 7.7 6.2 配 偶 者 の 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 4.4 11.0 5.9 配 偶 者 の 非 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 2.5 7.2 3.6 就 業 率 (%) 70% 62% 68% パート アルバイト 比 率 (%) 21% 24% 22% 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 を 受 けた 率 (%) 44% 33% 42% 定 年 引 上 廃 止 該 当 率 (%) 16% 23% 18% 継 続 雇 用 希 望 非 実 現 率 (%) 12% 7% 11% こうした 点 については 女 性 の 方 が 男 性 より 収 入 がやや 多 いことが 影 響 していると 考 えら れるが これは 配 偶 者 の 勤 労 収 入 が 多 いためであり 本 人 の 勤 労 収 入 は 女 性 の 方 が 少 ない -38-

その 要 因 としては まず 賃 金 水 準 の 格 差 が 考 えられるが 就 業 率 の 低 さもあげられる 女 性 の 就 業 率 は 62%であり 男 性 の 就 業 率 70%に 比 べてやや 低 い この 就 業 率 の 低 さについて は 女 性 が 男 性 より 厚 生 年 金 が 少 ないことから その 就 業 意 欲 抑 制 効 果 によるものとはいえ ず 年 金 が 65 歳 支 給 開 始 となった 場 合 には 勤 労 収 入 を 増 やすという 割 合 も 男 性 19% 女 性 17%で 女 性 の 方 がやや 少 ない 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 の 状 況 については 確 保 措 置 を 受 けた 割 合 は 女 性 で 33%であり 男 性 の 44%より 小 さい しかし 継 続 雇 用 ( 再 雇 用 勤 務 延 長 )を 希 望 したのに 雇 用 されな かった または 勤 務 先 に 継 続 雇 用 の 制 度 がなかったという 継 続 雇 用 希 望 非 実 現 率 も 女 性 で 7%と 男 性 の 12%より 小 さい (3) 学 歴 別 第 2-3-4 表 は 60 代 前 半 の 高 齢 者 について 生 計 費 の 賄 い 方 を 学 歴 別 に 見 たものである 各 学 歴 とも 厚 生 年 金 を 除 いても 収 入 が 生 計 費 より 多 いが その 差 は 大 学 大 学 院 卒 でやや 大 きい これを 反 映 して 厚 生 年 金 がなければ 収 入 が 生 計 費 を 下 回 り かつ 純 貯 蓄 を 取 り 崩 しても 賄 えない 者 の 割 合 は 大 学 大 学 院 卒 で 8%と 学 歴 計 の 15%より 小 さい 第 2-3-4 表 学 歴 別 に 見 た 生 計 費 の 賄 い 方 第 表 学 歴 別 全 体 中 学 卒 高 校 卒 短 大 等 卒 大 学 等 卒 構 成 比 (%) 22% 45% 10% 22% 100% 65 歳 時 の 純 貯 蓄 ( 万 円 ) 1153.2 1703.0 2098.4 2086.0 1694.3 同 厚 生 年 金 のない 場 合 ( 万 円 ) 761.4 1316.3 1721.5 1769.1 1321.0 収 入 生 計 費 差 ( 万 円, 月 額 ) 19.2 18.2 20.6 20.8 19.1 同 厚 生 年 金 のない 場 合 ( 万 円, 月 額 ) 12.6 11.7 14.4 15.5 12.9 生 計 費 ( 万 円, 月 額 ) 15.7 17.8 19.8 25.3 19.2 収 入 計 ( 万 円, 月 額 ) 34.8 35.9 40.4 46.1 38.3 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 17.2 14.4 14.2 21.0 16.4 厚 生 年 金 ( 万 円, 月 額 ) 6.5 6.4 6.3 5.3 6.2 厚 生 年 金 ( 就 業 に 伴 う 減 額 前 )( 万 円, 月 額 ) 7.5 7.6 6.9 6.4 7.3 他 の 非 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 3.4 5.6 8.6 9.2 6.2 配 偶 者 の 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 5.6 5.1 8.4 6.7 5.9 配 偶 者 の 非 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 2.1 4.3 2.9 4.0 3.6 就 業 率 (%) 76% 68% 74% 59% 68% パート アルバイト 比 率 (%) 38% 21% 15% 6% 22% 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 を 受 けた 率 (%) 63% 36% 30% 37% 42% 定 年 引 上 廃 止 該 当 率 (%) 19% 16% 15% 22% 18% 継 続 雇 用 希 望 非 実 現 率 (%) 7% 14% 7% 10% 11% ( 注 ) 短 大 等 卒 : 短 大 高 専 専 門 学 校 卒 大 学 等 卒 : 大 学 大 学 院 卒 こうした 点 については 大 学 大 学 院 卒 の 収 入 が 勤 労 収 入 を 反 映 して 多 いことが 影 響 して いると 考 えられる( 年 金 額 は 多 くない) その 要 因 としては パート アルバイトの 比 率 が 低 いことが 考 えられる 大 学 大 学 院 卒 -39-

では 就 業 率 は 低 いものの 就 業 者 に 占 めるパート アルバイトの 比 率 は 6%であり 学 歴 計 の 22%に 比 べて 小 さい これに 関 し 定 年 の 引 上 げまたは 定 年 の 廃 止 の 該 当 割 合 を 見 ると 大 学 大 学 院 卒 で 22%であり 学 歴 計 の 18%より 高 く その 影 響 が 考 えられる 一 方 中 学 卒 では 就 業 率 は 高 いものの 就 業 者 に 占 めるパート アルバイトの 比 率 が 大 きく 勤 労 収 入 は 大 学 大 学 院 卒 より 低 い 中 学 卒 では 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 を 受 けた 割 合 は 高 いものの 定 年 の 引 上 げまたは 定 年 の 廃 止 の 該 当 割 合 は 学 歴 計 に 近 い 4. 勤 労 収 入 の 要 因 分 析 と 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 の 効 果 以 上 のように 年 金 支 給 開 始 年 齢 の 引 上 げに 対 して 高 齢 者 の 生 計 費 を 賄 うために 勤 労 収 入 は 重 要 であり その 大 きさは 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 や 年 齢 性 学 歴 等 との 関 連 が 見 ら れる そこで 勤 労 収 入 とこれらの 要 因 との 関 係 について 線 形 回 帰 により 分 析 したものが 第 2-3-5 表 である 7 第 2-3-5 表 において 勤 労 収 入 に 対 して 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 の 係 数 は 正 で 有 意 ( 有 意 水 準 1%)であり さらに そのうちの 定 年 の 引 上 げまたは 定 年 の 廃 止 の 係 数 も 正 で 有 意 ( 有 意 水 準 1%)である これは 2.(1)のように 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 を 受 けた 者 の 就 業 率 が 高 く 勤 労 収 入 も 多 いこと さらに 2.(2)のように 定 年 の 引 上 げまたは 定 年 の 廃 止 の 該 当 者 は 勤 労 収 入 の 少 ないパート アルバイト 比 率 が 低 いことを 反 映 していると 考 えら れる 8 この 他 厚 生 年 金 ( 就 業 に 伴 う 減 額 前 )の 係 数 は 負 で 有 意 ( 有 意 水 準 5%)であり 2.(1) で 述 べたように 就 業 意 欲 に 抑 制 的 な 影 響 を 及 ぼしていることがうかがえる また 3.で 述 べた 各 属 性 と 勤 労 収 入 との 関 係 については 女 性 ダミーの 係 数 が 負 で 有 意 で あり 3.におけるクロス 表 による 分 析 と 同 様 である さらに 年 齢 の 係 数 が 負 学 歴 ダミー の 係 数 が 正 であり これらも 3.の 分 析 と 同 様 であるが 有 意 でない 7 各 変 数 の 記 述 統 計 量 は 以 下 のとおりである なお 年 金 額 が 就 業 選 択 に 影 響 を 及 ぼす 一 方 勤 労 収 入 に 応 じて 年 金 が 減 額 されるという 相 互 依 存 ( 内 生 性 )に 対 処 するため 実 際 の 年 金 額 でなく 就 業 に 伴 う 減 額 前 の 年 金 を 説 明 変 数 に 用 いた 記 述 統 計 量 変 数 平 均 標 準 偏 差 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 16.4 21.7 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 ダミー 0.42 0.49 定 年 引 上 廃 止 ダミー 0.18 0.38 継 続 雇 用 希 望 非 実 現 ダミー 0.11 0.31 厚 生 年 金 ( 就 業 に 伴 う 減 額 前 )( 万 円, 月 額 ) 7.3 7.4 他 の 非 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 6.2 9.8 配 偶 者 の 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 5.9 13.2 純 貯 蓄 ( 万 円 ) 937.3 1588.6 女 性 ダミー 0.23 0.42 年 齢 61.9 1.4 高 校 卒 ダミー 0.45 0.50 短 大 等 卒 ダミー 0.10 0.30 大 学 等 卒 ダミー 0.22 0.42 8 継 続 雇 用 ( 再 雇 用 勤 務 延 長 )を 希 望 したのに 雇 用 されなかった または 勤 務 先 に 継 続 雇 用 の 制 度 がなかった という 継 続 雇 用 希 望 非 実 現 の 勤 労 収 入 に 対 する 係 数 は 想 定 通 り 負 であるが 有 意 でない -40-

第 表 勤 第 2-3-5 表 勤 労 収 入 の 要 因 分 析 因 分 析 変 数 係 数 標 準 誤 差 t 値 有 意 確 率 定 数 項 63.65 59.57 1.07 0.286 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 ダミー 8.61 2.99 2.88 0.004 定 年 引 上 廃 止 ダミー 17.15 3.81 4.50 0.000 継 続 雇 用 希 望 非 実 現 ダミー -2.51 3.86-0.65 0.516 厚 生 年 金 ( 就 業 に 伴 う 減 額 前 )( 万 円, 月 額 ) -0.47 0.18-2.57 0.011 他 の 非 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) 0.07 0.12 0.53 0.598 配 偶 者 の 勤 労 収 入 ( 万 円, 月 額 ) -0.04 0.09-0.38 0.702 純 貯 蓄 ( 万 円 ) 0.00 0.00 0.45 0.651 女 性 ダミー -7.61 2.97-2.56 0.011 年 齢 -0.82 0.97-0.84 0.402 高 校 卒 ダミー 0.53 3.03 0.17 0.862 短 大 等 卒 ダミー 2.73 4.50 0.61 0.545 大 学 等 卒 ダミー 4.50 3.56 1.26 0.208 自 由 度 調 整 済 決 定 係 数 0.278 サンプル 数 265 以 上 のように 60 代 前 半 の 高 齢 者 の 勤 労 収 入 に 対 し 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 やその 中 の 定 年 の 引 上 げまたは 定 年 の 廃 止 は 増 加 効 果 があり その 程 度 は 年 齢 性 学 歴 等 の 属 性 の 影 響 に 比 べてかなりのものといえよう 5. 収 入 の 格 差 と 年 金 就 業 の 寄 与 (1) 分 布 尺 度 2.では 厚 生 年 金 がなければ 生 計 費 を 賄 えない 者 について 年 金 が 65 歳 支 給 開 始 となった 場 合 の 収 入 不 足 と 就 業 勤 労 収 入 の 必 要 性 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 の 機 能 等 の 分 析 を 行 っ たが あくまで 平 均 で 見 たものであり 収 入 等 にはばらつきがある しかし その 収 入 階 層 等 の 分 布 を 見 るにはサンプル 数 ( 厚 生 年 金 がなければ 生 計 費 を 賄 え ない 者 は 40 サンプルにすぎない)の 制 約 があるため ここでは 格 差 を 測 る 分 布 尺 度 を 用 いて 分 析 を 行 う 分 布 尺 度 については 勤 労 収 入 年 金 他 の 非 勤 労 収 入 等 は 0 の 場 合 があり 収 入 と 生 計 費 との 差 は 収 入 不 足 の 場 合 には 負 になるため 分 布 尺 度 は 0 や 負 値 についても 定 義 できなければならない(この 点 は タイル 尺 度 やアトキンソン 尺 度 では 満 たせない) また 収 入 等 の 格 差 (ばらつき)に 対 する 勤 労 収 入 年 金 等 の 寄 与 度 を 計 測 するためには 収 入 等 の 分 布 尺 度 がこれらの 構 成 項 目 により 分 解 できなければならない こうした 観 点 から 分 布 尺 度 としては ( 付 1)のような 準 ジニ 係 数 と( 付 2)のような 準 相 対 分 散 ( 準 平 方 変 動 係 数 ) を 用 いる さらに 準 相 対 分 散 は 就 業 者 非 就 業 者 といった 構 成 集 団 による 分 解 ができる ため 就 業 の 影 響 に 関 し 収 入 等 の 格 差 (ばらつき)に 対 する 就 業 者 非 就 業 者 間 格 差 等 の 寄 与 度 が 得 られる -41-

(2) 収 入 等 の 格 差 第 2-3-6 表 は 60 代 前 半 の 高 齢 者 について 準 ジニ 係 数 と 準 相 対 分 散 ( 準 平 方 変 動 係 数 ) に 基 づき 収 入 の 格 差 に 対 する 勤 労 収 入 厚 生 年 金 ( 就 業 に 伴 う 減 額 後 ) 他 の 非 勤 労 収 入 等 の 各 収 入 構 成 項 目 の 寄 与 度 を 計 算 したものである 厚 生 年 金 の 寄 与 度 を 見 ると 準 ジニ 係 数 で-0.014 準 相 対 分 散 で-0.023 と どちらも 負 である このため 年 金 が 65 歳 支 給 開 始 と なった 場 合 にはこの 負 の 寄 与 がなくなって 収 入 の 格 差 が 大 きくなり 生 計 費 を 賄 う 上 で 収 入 不 足 の 大 きい 者 が 生 じる 可 能 性 が 高 くなる 第 2-3-8 表 のように 収 入 と 生 計 費 との 差 ( 収 入 超 過 または 収 入 不 足 )の 格 差 に 対 しても 厚 生 年 金 の 寄 与 度 は 負 であり 年 金 が 65 歳 支 給 開 始 となった 場 合 には 格 差 拡 大 効 果 がある このような 収 入 の 格 差 の 拡 大 を 抑 えるためには 高 齢 者 の 就 業 促 進 等 による 勤 労 収 入 の 格 差 の 低 下 が 重 要 である これに 関 し 準 相 対 分 散 に 基 づいて 勤 労 収 入 の 格 差 に 対 する 就 業 状 況 の 影 響 を 見 ると 第 2-3-6 表 のように 勤 労 収 入 の 格 差 0.691 のうち 就 業 者 非 就 業 者 間 格 差 が 0.149 を 占 めるが 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 を 受 けた 者 では 就 業 者 非 就 業 者 間 格 差 が 0.038 とかなり 小 さい そこで 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 の 普 及 等 により 仮 に 勤 労 収 入 の 就 業 者 非 就 業 者 間 格 差 が 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 を 受 けた 者 の 就 業 者 非 就 業 者 間 格 差 まで 低 下 するとした 場 合 に 収 入 の 格 差 に 対 する 影 響 を 試 算 すると 第 2-3-7 表 のようになる 収 入 の 格 差 に 対 する 寄 与 度 は-0.048 と 格 差 縮 小 効 果 があり 年 金 が 65 歳 支 給 開 始 となった 場 合 の 収 入 の 格 差 拡 大 効 果 0.023 より 大 きい これは すべての 企 業 で 希 望 者 全 員 が 65 歳 ま で 働 けるという 前 提 に 基 づく 試 算 ではあるが 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 がより 普 及 していけば かなりの 格 差 縮 小 効 果 があるといえる これは 第 2-3-9 表 のように 収 入 と 生 計 費 との 差 の 格 差 について 見 ても 同 様 である 9 さらに 勤 労 収 入 の 格 差 0.691 については 前 述 2.(2)のように 就 業 者 内 でもパート アル バイトとそうでない 者 との 格 差 があり 第 2-3-6 表 のように 準 相 対 分 散 で 0.031 となって いるが この 格 差 は 定 年 の 引 上 げまたは 廃 止 に 該 当 する 者 では 0.002 とかなり 小 さい そ こで 定 年 の 引 上 げまたは 廃 止 の 普 及 により 仮 にパート アルバイトとそうでない 者 との 勤 労 収 入 の 格 差 が 定 年 の 引 上 げまたは 廃 止 に 該 当 する 者 における 格 差 まで 低 下 するとした 場 合 に 収 入 の 格 差 に 対 する 影 響 を 試 算 すると 第 2-3-7 表 のようになる 収 入 の 格 差 に 対 す る 寄 与 度 は-0.013 であり 定 年 の 引 上 げまたは 廃 止 がより 普 及 していけば 格 差 縮 小 効 果 が あるといえる これは 第 2-3-9 表 のように 収 入 と 生 計 費 との 差 の 格 差 について 見 ても 同 様 である 9 ただし 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 によって 就 業 者 が 増 加 するのに 伴 い 就 業 者 内 の 収 入 格 差 が 高 まる 可 能 性 があ るが ここでは 就 業 者 内 の 格 差 への 影 響 は 推 計 できず 考 慮 していない -42-

第 2-3-6 表 収 入 の 格 差 に 対 する 寄 与 度 第 寄 与 度 準 ジニ 係 数 寄 与 度 準 相 対 分 散 就 業 者 同, 雇 用 確 保 パート 同, 定 年 引 上 構 成 比 非 就 業 者 間 措 置 該 当 者 その 他 間 廃 止 該 当 者 収 入 計 0.330 0.330 0.507 0.507 0.048 0.013 0.013 0.005 1.000 勤 労 収 入 0.185 0.432 0.296 0.691 0.149 0.038 0.031 0.002 0.429 減 額 後 厚 生 年 金 -0.014-0.088-0.023-0.139-0.069-0.068-0.022 0.006 0.162 他 の 非 勤 労 収 入 0.045 0.281 0.073 0.453-0.031-0.008-0.004 0.002 0.162 配 偶 者 の 勤 労 収 入 0.086 0.562 0.132 0.863 0.066 0.001 0.014 0.017 0.153 配 偶 者 の 非 勤 労 収 入 0.028 0.294 0.028 0.296-0.106-0.024 0.017 0.006 0.094 ( 注 ) 寄 与 度 : 準 ジニ 係 数 または 準 相 対 分 散 構 成 比 パート:パート アルバイト 第 2-3-7 表 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 の 普 及 に 伴 う 勤 労 収 入 の 格 差 縮 小 効 果 第 表 高 年 齢 者 雇 確 保 措 置 普 伴 勤 労 格 差 縮 効 果 寄 与 度 準 相 対 分 散 雇 用 確 保 措 置 の 普 及 に 伴 う 就 業 者 非 就 業 者 間 格 差 の 縮 小 -0.048-0.111 定 年 の 引 上 げ 廃 止 の 普 及 に 伴 うパート その 他 間 格 差 の 縮 小 -0.013-0.030 第 2-3-8 表 収 入 生 計 費 差 の 格 差 に 対 する 寄 与 度 第 表 寄 与 度 準 ジニ 係 数 寄 与 度 準 相 対 分 散 就 業 者 同, 雇 用 確 保 パート 同, 定 年 引 上 構 成 比 非 就 業 者 間 措 置 該 当 者 その 他 間 廃 止 該 当 者 収 入 計 0.588 0.294 1.641 0.819 0.095 0.026 0.016 0.003 2.003 勤 労 収 入 0.348 0.405 1.026 1.195 0.297 0.075 0.037 0.001 0.859 減 額 後 厚 生 年 金 -0.032-0.098-0.080-0.244-0.137-0.133-0.026 0.003 0.325 他 の 非 勤 労 収 入 0.063 0.194 0.202 0.624-0.062-0.016-0.004 0.001 0.324 配 偶 者 の 勤 労 収 入 0.163 0.530 0.385 1.253 0.131 0.002 0.017 0.009 0.307 配 偶 者 の 非 勤 労 収 入 0.046 0.248 0.107 0.572-0.211-0.046 0.020 0.003 0.187 収 入 生 計 費 差 0.601 0.601 1.585 1.585 0.189 0.050 0.018 0.002 1.000 ( 注 ) 寄 与 度 : 準 ジニ 係 数 または 準 相 対 分 散 構 成 比 パート:パート アルバイト 第 2-3-9 表 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 の 普 及 に 伴 う 勤 労 収 入 の 格 差 縮 小 効 果 ( 収 入 生 計 費 差 ベース) 雇 用 確 保 措 置 の 普 及 に 伴 う 就 業 者 非 就 業 者 間 格 差 の 縮 小 定 年 の 引 上 げ 廃 止 の 普 及 に 伴 うパート その 他 間 格 差 の 縮 小 寄 与 度 -0.191-0.031 準 相 対 分 散 -0.222-0.036 以 上 のように 年 金 が 65 歳 支 給 開 始 となった 場 合 収 入 について 格 差 拡 大 効 果 があるが 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 がより 普 及 して 就 業 率 が 高 まっていけば かなりの 格 差 縮 小 効 果 があ る 収 入 の 格 差 拡 大 を 抑 え 生 計 費 を 賄 う 収 入 不 足 の 者 を 減 らすためには 高 年 齢 者 雇 用 確 保 措 置 は 重 要 である さらに 就 業 者 内 の 収 入 の 格 差 についても 定 年 の 引 上 げまたは 廃 止 がより 普 及 していけば 格 差 縮 小 効 果 がある 第 4 節 結 論 本 稿 では 60 代 前 半 を 中 心 に 高 齢 者 の 生 計 費 の 賄 い 方 について 65 歳 年 金 支 給 開 始 と -43-